JP4316320B2 - ディスクドライブ装置のディスクガイド部品 - Google Patents

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Description

本発明は、CD、DVD等のディスクドライブ装置におけるディスクガイド部品に関する。更に詳しくは、特定の樹脂材料で形成したディスクガイド部品に関する。
スロットインタイプのディスクドライブ装置においては、主としてポリカーボネート樹脂を基体とする記録ディスクの挿入及び/又は排出を案内する為のガイド部品が設けられている。かかるディスクガイド部品は、フィードローラと協働してその間にディスクを挟むようにして搬送するためのものであり、ディスクの挿入或いは排出の際に、ディスクの外周近辺を押える事によりディスクのガタツキを抑制し、ディスクの円滑な挿入或いは排出を助ける働きを持つ。
従来、かかるディスクガイド部品は樹脂材料で形成され、特にポリアセタール樹脂の汎用グレードがそのまま使用される事が多かった。
尚、ディスクガイド部品を形成する素材に言及した文献は数少なく、ディスクガイドが樹脂製であることを記載した程度の文献が僅かに見られるだけである(特許文献1)。
特開2003−59151号公報([0006]欄)
しかしながら、従来使用されてきた樹脂材料で形成されたディスクガイド部品では、そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、ディスクの挿入或いは排出を繰り返す間にディスクに微細な傷がつく場合があった。このような傷は、ディスクの記録面ではなく、その反対面、いわゆるレーベル面のディスクの外周付近に生じやすいため、ディスクの記録・再生性能に特に影響を及ぼす可能性は少ないと考えられるが、例えば、ヒューマンエラーなどで、上下逆に挿入/排出をしてしまうと、記録面に傷が発生する可能性もある。又、これらの傷の発生は、商品価値や見栄えを損なうものであり、その改善が求められていた。
本発明者らは、かかる要求に応え得るポリアセタール樹脂組成物製ディスクガイド部品を得るべく鋭意検討した結果、特定の脂肪酸エステルを配合したポリアセタール樹脂組成物製ディスクガイド部品が、ポリカーボネート製ディスクに対する傷つきの発生を非常に少なくすることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に、炭素数5〜32の脂肪酸とグリセリン又はポリグリセリンとの脂肪酸エステル(B)0.05〜10重量部を配合してなるポリアセタール樹脂組成物で形成したことを特徴とするスロットイン式ディスクドライブ装置のディスクガイド部品である。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明におけるスロットイン式ディスクドライブ装置のディスクガイド部品1とは、概ね図1の如き断面形状を有し、記録ディスク2の挿入及び/又は排出にあたり、ゴム製ロール3等と共同して記録ディスクを図2のような形で案内するものである。かかるディスクガイド部品は、図1の如く一体的な形状のものが一般的であるが、分割した形状とし、ディスクとの接触部周辺のみをガイドする構成にすることも可能である。
本発明は、かかるディスクガイド部品を、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に、炭素数5〜32の脂肪酸とグリセリン又はポリグリセリンとの脂肪酸エステル(B)0.05〜10重量部を配合してなるポリアセタール樹脂組成物で形成したことを特徴とするものである。かかる構成からなるガイド部品の効果は、記録ディスクがポリカーボネート樹脂を基体とするものである場合に特に顕著である。
まず、本発明に用いられるポリアセタール樹脂(A)は、オキシメチレン基(−CH2O−)を主たる構成単位とする高分子化合物で、実質的にオキシメチレン基の繰り返しのみからなるポリオキシメチレンホモポリマー、オキシメチレン基以外に他の構成単位を少量含有するポリオキシメチレンコポリマー(ブロックコポリマーを含む)、ターポリマーの何れにてもよく、又、分子が線状のみならず分岐、架橋構造を有するものであってもよい。
一般に、ホモポリマーは、無水ホルムアルデヒドの重合、もしくはホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサンの重合により製造される。通常、末端キャップにより、熱分解に対して安定化されている。
コポリマーは−CH2O−反復基約85〜99.9%に、一般式:
Figure 0004316320
(式中、R1およびR2はそれぞれ水素、低級アルキルおよびハロゲン置換低級アルキル基よりなる群から選ばれ、またR3はメチレン、オキシメチレン、低級アルキルおよびハロアルキル置換メチレン、ならびに低級アルキルおよびハロアルキル置換オキシメチレン基よりなる群から選ばれ、mは0〜3の整数であり、各低級アルキル基は炭素数の1〜2のものである)で示される基が散在してなる、重量平均分子量が5000以上の高分子化合物であり、一般的には、ホルムアルデヒド又は一般式(CH2O)〔但し、nは3以上の整数〕で表されるホルムアルデヒドの環状オリゴマー、例えばトリオキサンと環状エーテル化合物及び/又は環状ホルマール化合物とを共重合することによって製造され、通常、加水分解によって末端の不安定部分を除去して熱分解に対して安定化される。共重合のための環状エーテル又は環状ホルマールとしては、例えばエチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール等が用いられる。又、上記成分の他に分子量を調整する成分を併用することも可能である。分子量調整をする成分としては、不安定末端を形成することのない連鎖移動剤、即ち、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラール、オキシメチレンジ−n−ブチルエーテルの如きアルコキシ基を有する化合物の1種または2種以上が例示される。又、ターポリマーは上記共重合において、更にジグリシジルエーテル化合物等の多官能性化合物を加えて重合することにより製造される。
次に本発明においては、(B)成分として炭素数5〜32の脂肪酸とグリセリン或いはポリグリセリンとの脂肪酸エステルが用いられる。本発明のディスクガイド部品を形成する樹脂材料として、ポリアセタール樹脂にかかる特定の限定された脂肪酸エステルを配合した場合にのみ、記録ディスクに対する傷付きが顕著に改善されることは、驚くべきことであった。
かかる脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の例としては、カプロン酸、カプリル酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、リグノセン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸など飽和脂肪酸、或いはオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プラシジン酸、エルカ酸、リシノール酸などの不飽和脂肪酸等が挙げられる。本発明の効果に対して、好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等である。
ポリグリセリンの例としては、グリセリンの2〜10量体のものであり、好ましくはグリセリンの2〜5量体のものである。
中でも対ディスク摺動性能の面から、グリセリンのエステルとしては、好ましくはグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンモノオレート等が挙げられる。ポリグリセリンのエステルとしては、ポリグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンジステアレート、ポリグリセリンモノラウレート、ポリグリセリンモノオレート等が挙げられる。
本発明において、かかる脂肪酸エステル(B)の添加量は、ポリアセタール樹脂100重量部に対し0.05〜10重量部である。0.05重量部より少ない量では傷つき性改良効果は期待できず、又、逆に10重量部より多い量では基体樹脂であるポリアセタールの性質が大幅に損なわれる場合がある。特に好ましくは0.1〜5重量部が配合される。
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、必要に応じて選択される各種の安定剤を配合するのが好ましい。安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、窒素含有化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等のいずれか1種又は2種以上を挙げることができる。更に、本発明の目的・効果を阻害しない限り、必要に応じて、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、或いは、有機高分子材料、無機または有機の繊維状、粉体状、板状の充填剤等を1種又は2種以上添加することができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、評価は以下の方法で行った。
〔ポリカーボネート樹脂製ディスクへの傷つき性〕
まず、評価すべき樹脂材料(ポリアセタール樹脂組成物)で、図3に示す評価用試験片(φ5mm×15mm、先端形状はr=2.5mmの半球状)を成形した。
次に、鈴木式摩擦・摩耗試験機を用い、上記評価用試験片とポリカーボネート樹脂製CD−Rディスク(maxell製 MQ−74)とを図4のように配置し、荷重9.8N、回転速度10mm/sで1000秒間摺動させ、CD−Rディスクに付いた傷を目視評価した。判定は以下の基準に従い、5段階で行った。
1:摺動痕、線傷等の発生は認められない
2:極微小な摺動痕、線傷が発生する
3:摺動痕、線傷が摺動部の一部部位に発生する
4:摺動痕、線傷が摺動部全体に発生する
5:摺動痕、線傷が摺動部全体に激しく発生する
実施例1〜7、比較例1〜5
ポリアセタール樹脂(ポリプラスチックス(株)製、商品名ジュラコン(登録商標)M90)に、以下に示すグリセリンの脂肪酸エステル(B-1〜B-5)を表1に示す割合で配合し、シリンダー温度200℃の押出機で溶融混練してペレット状の組成物を調製した。次いで、このペレット状の組成物から射出成形機を用いて図3に示す評価用試験片を成形し、ポリカーボネート樹脂製ディスクへの傷つきを評価した。
また、比較の為、グリセリンの脂肪酸エステルを配合しない場合、グリセリン以外のアルコールと脂肪酸とのエステル(B-6〜B-9)を配合した場合について、同様にして試験片を成形し、ポリカーボネート樹脂製ディスクへの傷つきを評価した。これらの結果を表1に示す。
尚、使用した(B)成分は以下の通りである。
B-1:グリセリンモノベヘネート(理研ビタミン(株)製、リケマールB-100)
B-2:グリセリンモノステアレート(理研ビタミン(株)製、リケマールS-100)
B-3:グリセリントリステアレート(理研ビタミン(株)製、VT)
B-4:グリセリンモノオレート(理研ビタミン(株)製、OL-100E)
B-5:グリセリンモノアセトモノステアレート(理研ビタミン(株)製、ポエムG-508)
B-6:ステアリルステアレート(日本油脂(株)製、ユニスターM9676)
B-7:エチレングリコールジモンタネート(東洋ペトロライト(株)製、LUZA WAX-EP)
B-8:エチレングリコールジステアレート(理研ビタミン(株)製、試作品)
B-9:ペンタエリスリトールテトラステアレート(日本油脂(株)製、ユニスターH476)
Figure 0004316320
実施例8〜16、比較例6〜9
ポリアセタール樹脂(ポリプラスチックス(株)製、商品名ジュラコン(登録商標)M90)に、以下に示すポリグリセリンの脂肪酸エステル(B-10〜B-16)を表2に示す割合で配合し、シリンダー温度200℃の押出機で溶融混練してペレット状の組成物を調製した。次いで、このペレット状の組成物から射出成形機を用いて図3の評価用試験片を成形し、ポリカーボネート樹脂製ディスクへの傷つきを評価した。
又、比較の為、他の潤滑剤(B-17〜B-20)を配合した場合についても同様にして試験片を成形し、ポリカーボネート樹脂製ディスクへの傷つき評価を実施した。これらの結果を表2に示す。
尚、使用した(B)成分は以下の通りである。
B-10:ジグリセリンモノステアレート(理研ビタミン(株)製、リケマールS-72)
B-11:トリグリセリンモノステアレート(理研ビタミン(株)製、リケマールAF-70)
B-12:テトラグリセリンモノステアレート(理研ビタミン(株)製、ポエムJ-4081)
B-13:デカグリセリンモノステアレート(理研ビタミン(株)製、ポエムJ-0081H)
B-14:テトラグリセリンモノオレート(理研ビタミン(株)製、ポエムJ-4581)
B-15:デカグリセリンモノオレート(理研ビタミン(株)製、ポエムJ-0381)
B-16:デカグリセリンモノラウレート(理研ビタミン(株)製、ポエムJ-0021)
B-17:ポリオキシエチレンモノステアレート(日本油脂(株)製、ノニオンS-40)
B-18:エチレンビスステアリン酸アマイド(花王(株)製、カオーワックスEB-G)
B-19:ポリジメチルシロキサン(東レダウコーニングシリコーン(株)製、SH-200)
B-20:ポリエチレンワックス(三洋化成(株)製、サンワックス165-P)
Figure 0004316320
ディスクの挿入或いは排出方向から見たディスクガイド部品の略示断面図である。 ディスクの挿入或いは排出時の状態を示す略示断面図である。 ディスクへの傷つき性を評価するための評価用試験片の略示図である。 ディスクへの傷つき性の評価方法を示す略示図である。
符号の説明
1…ディスクガイド部品
2…記録ディスク
3…ゴム製ロール

Claims (6)

  1. ポリアセタール樹脂(A)100重量部に、炭素数5〜32の脂肪酸とグリセリン又はポリグリセリンとの脂肪酸エステル(B)0.05〜10重量部を配合してなるポリアセタール樹脂組成物で形成したことを特徴とするスロットイン式ディスクドライブ装置のディスクガイド部品。
  2. 脂肪酸エステル(B)が、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノオレート及びグリセリンモノアセトモノステアレートから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載のディスクガイド部品。
  3. 脂肪酸エステル(B)が、ポリグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンジステアレート、ポリグリセリンモノラウレート及びポリグリセリンモノオレートから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載のディスクガイド部品。
  4. 脂肪酸エステル(B)が、グリセリンの2〜10量体であるポリグリセリンの脂肪酸エステルである請求項3記載のディスクガイド部品。
  5. ディスクガイド部品が、ポリカーボネート樹脂を基体とする記録ディスクの挿入及び/又は排出を案内するためのものである請求項1〜4の何れか1項に記載のディスクガイド部品。
  6. ディスクドライブ装置が車載用である請求項1〜5の何れか1項に記載のディスクガイド部品。
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