JP4314538B2 - 封止用エポキシ樹脂成形材料及び電子部品装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、封止用エポキシ樹脂成形材料、特に環境対応の観点から要求されるノンハロゲン、ノンアンチモン系の封止用エポキシ樹脂成形材料で、耐湿性、耐リフロークラック性、高温放置特性など厳しい信頼性を要求されるVLSIの封止用に好適な成形材料及びその成形材料で封止した素子を備える電子部品装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、トランジスタ、ICなどの電子部品封止の分野ではエポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性などの諸特性にバランスがとれているためである。これらのエポキシ樹脂成形材料の難燃化は主にテトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル等のブロム化樹脂と酸化アンチモンの組合せにより行われている。
また、ブロム化樹脂や酸化アンチモンを用いずに難燃化を達成する手法としては、特開平9−227765号に開示されている赤燐を用いたもの、特開平9−235449号に開示されている燐酸エステル化合物を用いたもの、特開平8−225714号に開示されているホスファゼン化合物を用いたもの、特開平9−241483号に開示されている金属水酸化物を用いたもの、特開平9−100337に開示されている金属水酸化物と金属酸化物を併用して用いたもの、さらには特開平7−82343号に開示されている充填剤の割合を高くしたもの等の手法が主に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、環境保護の観点からダイオキシンの問題に端を発し、デカブロムをはじめハロゲン化樹脂についても規制の動きがある。同様にアンチモン化合物も毒性面から規制の動きがあり、封止用エポキシ樹脂成形材料についても脱ハロゲン化(脱ブロム化)、脱アンチモン化の要求が出てきている。また、プラスチック封止ICの高温放置特性にブロムイオンが悪影響を及ぼすことが知られており、この観点からもブロム化樹脂量の低減が望まれている。
この脱ハロゲン、脱アンチモン化の要求に対して、燐化合物、窒素化合物及び金属化合物等、種々の難燃剤が検討されている。しかし、先に示した特開平9−227765号に開示されているような赤燐を用いた組成物は耐湿信頼性の低下や赤燐の打撃発火性に起因する安全性の問題、特開平9−235449号に開示されているような燐酸エステル化合物を用いた組成物や特開平8−225714号に開示されているホスファゼン化合物を用いた組成物は可塑化による成形性の低下や耐湿信頼性の低下の問題、特開平9−241483号に開示されている金属水酸化物を用いた組成物や特開平9−100337に開示されている金属水酸化物と金属酸化物を併用して用いた組成物、さらには特開平7−82343号に開示されている充填剤の割合を高くした組成物は流動性の低下の問題がそれぞれあり、いずれの場合もブロム化樹脂と酸化アンチモンを用いた組成物と同等の成形性、信頼性を得るに至っていない。
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、脱ハロゲン化、脱アンチモン化で、成形性が良好で、かつ高温保管特性等の信頼性の優れた封止用エポキシ樹脂材料を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂成形材料に特定の硬化剤と硬化促進剤を配合することにより上記の目的を達成しうることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂、(B)次式(I)で示される1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を持つ化合物、
【化5】
(ここで、R1〜R9は互いに同一でも異なっていてもよく、水素、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシル基、アリール基及びアラルキル基から選ばれ、nは0〜10を示す。)
(C)第三ホスフィンとキノン化合物との付加物、(D)無機充填剤、を必須成分とし、ハロゲン及び/又はアンチモンを含む化合物を含まない封止用エポキシ樹脂成形材料、
(2)(A)成分が次式(II)で示されるエポキシ樹脂であることを特徴とする上記(1)記載の封止用エポキシ樹脂成形材料、
【化6】
(ここで、R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシル基、アリール基及びアラルキル基から選ばれ、nは0〜3を示す。)
(3)(C)成分が次式(III)で示される第三ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の封止用エポキシ樹脂成形材料、
【化7】
(ここで、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、mが2または3の場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。)
(4)(C)成分がトリス(4−メチルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物である上記(1)または(2)記載の封止用エポキシ樹脂成形材料、
(5)(A)成分のエポキシ基と(B)成分のフェノール性水酸基との当量比((B)/(A))が1.0〜1.5であることを特徴とする上記(1)〜(4)記載のいずれかの封止用エポキシ樹脂成形材料、
(6)(D)成分の含有量が成形材料全体に対して80〜95重量%であることを特徴とする上記(1)〜(5)記載のいずれかの封止用エポキシ樹脂成形材料、
(7)(D)成分の含有量が成形材料全体に対して88〜95重量%であることを特徴とする上記(1)〜(5)記載のいずれかの封止用エポキシ樹脂成形材料、
(8)次式(IV)で示されるアミノシラン(E)をさらに含有することを特徴とする上記(1)〜(7)記載のいずれかの封止用エポキシ樹脂成形材料、
【化8】
(ここで、R1は水素、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜2のアルコキシ基から選ばれ、R2は炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基、R3はメチル基またはエチル基で、nは1〜6の数を示し、mは1〜3の整数を示す。)
(9)上記(1)〜(8)記載のいずれかの封止用エポキシ樹脂成形材料により封止された素子を備える電子部品装置、
である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる(A)成分のエポキシ樹脂は、封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているもので特に限定はないが、たとえば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換または非置換のビフェノール等のジグリシジルエーテル、フタル酸、ダイマー酸などの多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸などのポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノ−ル類の共縮合樹脂のエポキシ化物、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、ナフトールアラルキル樹脂のエポキシ化物、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸などの過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、及び脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを適宜何種類でも併用することができる。中でも難燃性、流動性の観点からは次式(II)で示されるビスフェノールF型エポキシ樹脂が好適に用いられる。
【化9】
ここで、R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素、炭素数1〜10のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、及び、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基から選ばれ、中でも水素とメチル基が好ましい。nは0〜3を示す。
これを例示するならば、次式(V)のものが挙げられ、市販品としてはn=0を主成分とするものが商品名ESLV−80XY(新日鉄化学社製)として入手可能である。
【化10】
(ここで、nは0〜3を示す。)
【0007】
本発明において用いられる(B)成分の1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物は、エポキシ樹脂の硬化剤であり、次式(I)で示される化合物である。
【化11】
ここで、R1〜R9は互いに同一でも異なっていてもよく、水素、炭素数1〜10のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、及び、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基から選ばれ、中でも水素とメチル基が好ましい。nは0〜10を示す。
これを例示するならば、次式(VI)のものが挙げられる。
【化12】
ここで、式中のnは0〜10を示し、溶融粘度の観点からは、nが1以上の縮合体を50重量%以上含む縮合体の混合物が好ましい。このような化合物としては、市販品として明和化成(株)製MEH−7851が挙げられる。
【0008】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料及び電子部品装置には、上記(B)成分の硬化剤以外に従来公知の硬化剤を併用してもよい。例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂、フェノール類とジシクロペンタジエンやテルペン類との付加物または重付加物、ポリパラビニルフェノール樹脂、フェノール類とジメトキシパラキシレンから合成されるキシリレン基を有するフェノール・アラルキル樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種類以上併用してもよい。
これら硬化剤を併用する場合、(B)成分の硬化剤は硬化剤全量に対し60重量%以上使用することが好ましい。60重量%未満では難燃性に対して効果が小さいためである。
【0009】
(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分のフェノール化合物の当量比((B)/(A))は、1.0〜1.5の範囲に設定することが好ましい。1.0未満であると難燃性が低下し、1.5より大きい場合はパッケージの成形性が低下しがちである。
【0010】
本発明において用いられる(C)成分の第三ホスフィンとキノン類との付加物は、エポキシ樹脂とフェノール性水酸基を有する化合物との硬化反応を促進する硬化促進剤であり、(A)成分、(B)成分との併用において、良好な硬化性と流動性を得ることができる。
(C)成分に用いられる第三ホスフィンとしては特に限定するものではないが、ジブチルフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメチル−4−エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−エトキシフェニル)ホスフィンなどのアリール基を有する第三ホスフィンが好ましい。特には成形性の点からトリス(4−メチルフェニル)ホスフィンが好ましい。
また(C)成分に用いられるキノン類としてはo−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、ジフェノキノン、1,4−ナフトキノン、アントラキノンなどが挙げられ、なかでもp−ベンゾキノンが耐湿性、保存安定性の点から好ましい。
【0011】
(C)成分の付加物の製造方法としては特に限定はされないが、原料となる第三ホスフィンとキノン類がともに溶解する溶媒中で両者を撹拌混合する方法等が挙げられる。この場合の製造条件としては、室温から80℃の範囲で、原料の溶解度が高く生成した付加物の溶解度が低いメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン類などの溶媒中で、1時間〜12時間撹拌し、付加反応させることが好ましい。
【0012】
本発明の主目的である成形性、高温放置特性に良好な(C)成分としては、次式(III)で示される第三ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物が好ましく 、次式(VII)で示される構造のもの等が挙げられる。
【化13】
【化14】
ここで、上記式(III)及び式(VII)中のRは炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基で、mは1〜3の整数を示す。mが2または3の場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0013】
この付加物を例示すると、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物、トリス(4−エチルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物、トリス(4−プロピルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物、トリス(4−ブチルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物、トリス(2,4−ジメチルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物、トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物、トリス(2,6−ジメチル−4−エトキシフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物、トリス(4−エトキシフェニル)とp−ベンゾキノンとの付加物等が挙げられ、中でもパッケージの成形性という観点からはトリス(4−メチルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物が好適に用いられる。
これらは、単独でも2種以上併用して用いても良い。
【0014】
これら(C)成分の硬化促進剤の構造を例示すると、次式(VIII)〜(X)が挙げられ、中でも式(VIII)が好適である。
【化15】
【0015】
また本発明の成形材料には、(C)成分以外に、エポキシ樹脂とフェノール性水酸基を有する化合物の硬化反応を促進する硬化促進剤として一般に用いられているものを1種以上併用することができる。これらの硬化促進剤としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などのジアザビシクロアルケン及びその誘導体、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレートなどのテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などがある。
【0016】
これらの硬化促進剤を併用する場合、(C)成分の配合量は、全硬化促進剤量に対して60重量%以上が好ましく、さらに好ましくは80重量%以上である。(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分のフェノール化合物を使用した成形材料においては、上記第三アミン類は(C)成分を用いた場合と比較し耐湿性、保存安定性が悪くなり、上記有機ホスフィン類は酸化による硬化性低下の影響を受けやすい欠点があり、上記テトラフェニルボロン塩を用いた場合は接着性に欠点が出やすいため、(C)成分の配合量が60%未満であると本発明の効果が少なくなる。
(C)成分を含む硬化促進剤の全配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に限定されるものではないが、成形材料全体に対して0.005〜2重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0017】
本発明の(D)成分の無機充填剤は、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上のために成形材料に配合されるものであり、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などを1種類以上配合して用いることができる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が上げられ、これらを単独または併用して用いることもできる。上記の無機充填剤の中で、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましく、充填剤形状は成形時の流動性及び金型摩耗性の点から球形が好ましい。
無機質充填剤の配合量としては、難燃性の観点、成形性、吸湿性、線膨張係数の低減及び強度向上の観点から80〜95重量%が好ましく、88〜95重量%がより好ましい。80重量%より少ない場合は難燃性が低下し、95重量%より多い場合はパッケージの成形時における流動性の低下する傾向がある。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて樹脂成分と充項剤との接着性を高めるために、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤添加剤を添加することができるが、特に次式(IV)で示されるアミノシラン(E)を用いることが好ましく、カップリング剤全量の60重量%以上を(E)成分のアミノシランとすることが好ましい。
【化16】
(ここで、R1は水素、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜2のアルコキシ基から選ばれ、R2は炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基、R3はメチル基またはエチル基で、nは1〜6の数を示し、mは1〜3の整数を示す。)
【0019】
(E)成分のアミノシランを例示すると、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノメチルトリメトキシシラン、γ−アニリノメチルトリエトキシシラン、γ−アニリノメチルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノメチルメチルジエトキシシラン、N−(p−メトキシフェニル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(p−メトキシフェニル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(p−メトキシフェニル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(p−メトキシフェニル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、単独で用いても2種以上併用してもよい。中でも、パッケージの成形性という観点からはγ−アニリノプロピルトリメトキシシランが好適に用いられる。
【0020】
(E)成分以外のカップリング剤を例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、あるいはイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられ、1種以上併用することができる。
【0021】
(E)成分のアミノシランを含むカップリング剤の全配合量は、(D)成分の無機充填剤に対して0.05〜5.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜2.5重量%である。0.05重量%未満ではフレームとの接着性が低下しやすく、5.0重量%を超える場合にはパッケージの成形性が低下しがちである。
【0022】
また、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、従来公知の難燃剤を添加することができる。たとえば、赤燐、下記一般式(XI)で示されるようなリン酸エステル等の燐含有化合物、メラミン、メラミン誘導体、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体、下記一般式(XII)で示されるようなメラミン変性フェノール樹脂等の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等の燐/窒素含有化合物、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、フェロセン等の金属化合物等がある。
【化17】
(式中の8個のRは炭素数1〜4のアルキル基を示し、全て同一でも異なっていてもよい。Arは芳香族環を示す。)
【化18】
ここで、R1はエチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシル基などの炭素数1〜4の炭化水素基を示し、R2はアミノ基、または、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などの炭素数1〜10の炭化水素基を示し、m、nはそれぞれ1〜10の整数を示す。
【0023】
さらに、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、ICの耐湿性を向上させる観点から陰イオン交換体を添加することもできる。陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマスから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独またはいくつでも併用して用いることができる。中でも、次式(XIII)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
【化19】
Mg1-XAlX(OH)2(CO3)X/2・mH2O ……(XIII)
(0<X≦0.5、mは正数)
【0024】
その他の添加剤として高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、エステル系ワックス、ポリオレフィン系ワックス等の離型剤、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイルやシリコーンゴム粉末等の応力緩和剤などを必要に応じて配合することができる。
【0025】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は、各種原材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化すると使いやすい。
【0026】
リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハなどの支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタなどの能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイルなどの受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の封止用成形材料で封止して、電子部品装置を製造することができる。このような電子部品装置としては、たとえば、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の成形材料で封止したTCPを挙げることができる。また、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤーボンディング、フリップチップボンディング、はんだなどで接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタなどの能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイルなどの受動素子を、本発明の成形材料で封止したCOBモジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュールなどを挙げることができる。
本発明の封止用成形材料を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【0027】
【実施例】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
実施例2、3、参考例1、4、5、比較例1〜4
エポキシ樹脂として、エポキシ当量186、融点75℃のビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄化学製;ESLV−80XY)、エポキシ当量196、融点106℃のビフェニル型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ製;エピコートYX−4000H)、またはエポキシ当量375、軟化点80℃、臭素含量48重量%のブロム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノール性水酸基をもつ化合物として、水酸基当量199、軟化点80℃のビフェニル骨格含有フェノール樹脂(明和化成製;MEH−7851)、または軟化点70℃のフェノール・アラルキル樹脂(三井東圧製;ミレックスXL−225)、硬化促進剤として、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物(硬化促進剤1)、またはトリフェニルホスフィン(硬化促進剤2)、無機充填剤として平均粒径17.5μm、比表面積3.8m2/gの球状溶融シリカ、カップリング剤としてγ−アニリノプロピルトリメトキシシラン(アニリノシラン)、またはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシシラン)、その他の添加剤としてカルナバワックス、カーボンブラック、三酸化アンチモンをそれぞれ表1に示す重量比で配合し、混練温度80〜90℃、混練時間10分の条件でロール混練を行い、実施例2、3、参考例1、4、5と比較例1〜4の成形材料を作製した。
【0029】
【表1】
【0030】
作製した合計9種類の実施例、参考例、比較例の成形材料を、次の各試験により評価した。
(1)スパイラルフロー(流動性の指標)
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて成形し、流動距離(cm)を求めた。
(2)熱時硬度直径50mm×厚さ3mmの円板状に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計を用いて測定した。
(3)耐リフロークラック性8×10mmのシリコーンチップを搭載した外形寸法20×14×2mmの80ピンフラットパッケージをトランスファ成形により作製し、85℃/85%の条件で加湿して所定時間毎に240℃/10秒の条件でリフロー処理を行い、クラックの有無を観察し、不良パッケージ数/測定パッケージ数で評価した。なお、フラットパッケージは、トランスファプレスにて180±3℃、6.9±0.17MPa、90秒の条件で成形材料を成形し、その後180±5℃、5時間後硬化を行って作製した。
(4)耐湿性線幅10μm、厚さ1μmのアルミ配線を施した6×6×0.4mmのテスト用シリコーンチップを搭載した外形寸法19×14×2.7mmの80ピンフラットパッケージをトランスファ成形により作製し、前処理を行った後、加湿して所定時間毎にアルミ配線腐食による断線不良を調べ、不良パッケージ数/測定パッケージ数で評価した。なお、フラットパッケージはトランスファプレスにて180±3℃、6.9±0.17MPa、90秒の条件で成形材料を成形し、その後180±5℃、5時間後硬化を行って作製した。前処理は85℃、85%RH、72時間の条件でフラットパッケージを加湿し、215℃、90秒間ベーパーフェーズリフロー処理を行った。その後、加湿試験は2.02×105Pa、121℃の条件で行った。
(5)高温放置特性外形サイズ5×9mmで5μmの酸化膜を有するシリコンサブストレート上にライン/スペースが10μmのアルミ配線を形成したテスト素子を使用して、部分銀メッキを施した42アロイのリードフレームに銀ペーストで接続し、サーモニック型ワイヤボンダにより、200℃で素子のボンディングパッドとインナリードをAu線にて接続した。その後、トランスファ成形により、16ピン型DIP(Dual Inline Package)を作製し、得られた試験用ICを200℃の高温槽に保管し、所定時間毎に取り出して導通試験を行い、不良パッケージ数を調べ、測定パッケージ数に占める割合で評価した。なお、試験用ICは、トランスファプレスにて180±3℃、6.9±0.17MPa、90秒の条件で成形材料を成形し、その後180℃±5℃、5時間後硬化を行って作製した。
(6)難燃性厚さ1/16インチの試験片を成形する金型を使用し、トランスファプレスにて180±3℃、6.9±0.17MPa、90秒の条件で成形材料を成形し、その後180±5℃、5時間後硬化を行い、UL−94試験法に従って難燃性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
本発明における(C)成分の硬化促進剤1(トリス(4−メチルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物)を用いない比較例1は流動性と熱時硬度が低いために成形性が劣っている。また、本発明における(B)成分の硬化剤を用いない比較例2、3は難燃性が劣っている。さらには、ブロム化エポキシ樹脂、三酸化アンチモンを用いた比較例4は高温放置特性が劣っている。これに対して、(A)〜(D)成分を全て含み、ノンハロゲン、ノンアンチモンの実施例2、3は、流動性、熱時硬度、耐リフロークラック性、耐湿性、高温放置特性のいずれも良好であり、難燃性も全てV−0と良好である。
【0033】
【発明の効果】
本発明によって得られる封止用エポキシ樹脂成形材料は実施例で示したようにノンハロゲン、ノンアンチモンで難燃化を達成でき、これを用いてIC、LSIなどの電子部品を封止すれば成形性が良好であり、耐湿性、高温放置特性などの信頼性及び成形性に優れた製品を得ることができ、その工業的価値は大である。
Claims (6)
- (A)1分子中に2個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂、(B)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を持つ化合物である硬化剤、
(C)第三ホスフィンとキノン化合物との付加物、(D)無機充填剤、を必須成分とし、ブロム及び/又はアンチモンを含む化合物を含まない封止用エポキシ樹脂成形材料であって、
前記(A)成分が次式(II)で示されるエポキシ樹脂であり、
前記(B)成分として、次式(I)で示される化合物のみが配合され、
前記(D)成分の含有量が成形材料全体に対して90〜95重量%であることを特徴とする封止用エポキシ樹脂成形材料。 - (C)成分がトリス(4−メチルフェニル)ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物である請求項1または請求項2に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
- (A)成分のエポキシ基と(B)成分のフェノール性水酸基との当量比((B)/(A))が1.0〜1.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料により封止された素子を備える電子部品装置。
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