JP3840989B2 - 封止用エポキシ樹脂組成物および電子部品装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、特にノンハロゲンかつノンアンチモンで難燃性であり、VLSIの封止用に好適な封止用エポキシ樹脂組成物、およびこの組成物で封止した素子を備えた電子部品装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、トランジスタ、IC等の電子部品装置の素子封止の分野では生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、封止用の樹脂組成物の中では、エポキシ樹脂組成物が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性にバランスがとれているためである。これらの封止用エポキシ樹脂組成物の難燃化は主にテトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル等のブロム化樹脂と酸化アンチモンの組み合わせにより行われてきた。
近年、環境保護の観点からダイオキシン問題に端を発し、デカブロムをはじめとするハロゲン化樹脂やアンチモン化合物に規制の動きがあり、封止用エポキシ樹脂組成物についてもノンハロゲン化(ノンブロム化)およびノンアンチモン化の要求が出てきている。また、プラスチック封止ICの高温放置特性にブロム化合物が悪影響を及ぼすことが知られており、この観点からもブロム化樹脂量の低減が望まれている。
【0003】
そこで、ブロム化樹脂や酸化アンチモンを用いずに難燃化を達成する手法としては、赤リンを用いる方法(特開平9−227765号公報)、リン酸エステル化合物を用いる方法(特開平9−235449号公報)、ホスファゼン化合物を用いる方法(特開平8−225714号公報)、金属水酸化物を用いる方法(特開平9−241483号公報)、金属水酸化物と金属酸化物を併用する方法(特開平9−100337号公報)、フェロセン等のシクロペンタジエニル化合物を用いる方法(特開平11-269349号公報)、アセチルアセトナート銅等の有機金属化合物を用いる方法(加藤寛、機能材料、11(6)、34(1991))等のハロゲン、アンチモン以外の難燃剤を用いる方法、充填剤の割合を高くする方法(特開平7−82343号公報)等が試みられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、封止用エポキシ樹脂組成物に赤リンを用いた場合は耐湿性の低下の問題、リン酸エステル化合物やホスファゼン化合物を用いた場合は可塑化による成形性の低下や耐湿性の低下の問題、金属水酸化物や金属酸化物を用いた場合は離型性や流動性の低下の問題、充填剤の割合を高くした場合は流動性の低下の問題がそれぞれある。また、アセチルアセトナート銅等の有機金属化合物を用いた場合は、硬化反応を阻害し成形性が低下する問題がある。
以上のようにこれらノンハロゲン、ノンアンチモン系の難燃剤では、いずれの場合もブロム化樹脂と酸化アンチモンを併用した封止用エポキシ樹脂組成物と同等の成形性、信頼性を得るに至っていない。
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、特に環境対応の観点から要求されるノンハロゲンかつノンアンチモンで、成形性、耐リフロー性、耐湿性および高温放置特性等のVLSIの封止用に好適な信頼性を低下させずに難燃性が良好な封止用エポキシ樹脂組成物、およびこの樹脂組成物により封止した素子を備えた電子部品装置を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、複合金属水酸化物および特定の離型剤成分を配合した封止用エポキシ樹脂組成物により上記の目的を達成しうることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填剤、(E)複合金属水酸化物、(F)重量平均分子量が4,000以上、酸価が30〜50mg/KOHの直鎖型酸化ポリエチレン、および(G)炭素数5〜30のα−オレフィンと無水マレイン酸との共重合物を炭素数5〜25の一価のアルコールでエステル化した化合物、を必須成分とすることを要旨とする。
【0007】
特に、(F)成分および(G)成分の少なくとも一方が、(A)成分の一部または全部と予備混合されているのが好ましい。
【0008】
また、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、(E)複合金属水酸化物が下記組成式(I)で示される化合物であるのが好ましい。
【化2】
m(M1 aOb)・n(M2 cOd)・h(H2O) (I)
(ここで、M1およびM2は互いに異なる金属元素を示し、a、b、c、d、m、nおよびhは正の数を示す。)
【0009】
また、組成式(I)中のM1とM2が同一とならないようにM1が第3周期の金属元素、IIA族のアルカリ土類金属元素、IVB族、IIB族、VIII族、IB族、IIIA族およびIVA族に属する金属元素から選ばれ、M2がIIIB〜IIB族の遷移金属元素から選ばれるのが好ましい。
ここで、該M1がマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛から選ばれ、該M2が鉄、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛から選ばれるのが好ましい。M1がマグネシウムで、M2が亜鉛又はニッケルであること、組成式(I)中のM1 aObおよびM2 cOdのモル比m/nが99/1〜50/50であることが、より好ましい。
【0010】
また、(A)エポキシ樹脂がビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂およびトリフェニルメタン型エポキシ樹脂の少なくとも1種を含有すること、(B)硬化剤がビフェニル型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂およびノボラック型フェノール樹脂の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明は、上記のいずれかの封止用エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えた電子部品装置を要旨とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物の必須成分について説明する。
本発明において用いられる(A)エポキシ樹脂は、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限はない。
たとえば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類および/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のジグリシジルエーテル(ビスフェノール型エポキシ樹脂);アルキル置換又は非置換のビフェノール等のジグリシジルエーテル(ビフェニル型エポキシ樹脂);スチルベン型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);ナフタレン環を有するエポキシ樹脂(ナフタレン型エポキシ樹脂);フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;テルペン変性エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;脂環族エポキシ樹脂;硫黄原子含有エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
中でも、耐リフロー性の観点からはビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂および硫黄原子含有エポキシ樹脂が好ましく、硬化性の観点からはノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、低吸湿性の観点からはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましく、耐熱性および低反り性の観点からはナフタレン型エポキシ樹脂およびトリフェニルメタン型エポキシ樹脂が好ましい。
上記のビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂およびトリフェニルメタン型エポキシ樹脂の好ましい7種のエポシキ樹脂から、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの配合量はエポキシ樹脂全量に対して合せて50重量%以上とすることが好ましく、60重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。
【0014】
ビフェニル型エポキシ樹脂としてはたとえば下記一般式(II)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられ、スチルベン型エポキシ樹脂としてはたとえば下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられ、硫黄原子含有エポキシ樹脂としてはたとえば下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化3】
(ここで、R1〜R8は水素原子および炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【化4】
(ここで、R1〜R8は水素原子および炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【化5】
(ここで、R1〜R8は水素原子、置換又は非置換の炭素数1〜10の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【0015】
上記一般式(II)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂としては、たとえば、4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル又は4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3´,5,5´−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと4,4´−ビフェノール又は4,4´−(3,3´,5,5´−テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。中でも4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3´,5,5´−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。
【0016】
上記一般式(III)で示されるスチルベン型エポキシ樹脂は、原料であるスチルベン系フェノール類とエピクロルヒドリンとを塩基性物質存在下で反応させて得ることができる。この原料であるスチルベン系フェノール類としては、たとえば3−t−ブチル−4,4′−ジヒドロキシ−3′,5,5′−トリメチルスチルベン、3−t−ブチル−4,4′−ジヒドロキシ−3′,5′,6−トリメチルスチルベン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´,5,5´−テトラメチルスチルベン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジ−t−ブチル−5,5´−ジメチルスチルベン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジ−t−ブチル−6,6´−ジメチルスチルベン等が挙げられ、中でも3−t−ブチル−4,4′−ジヒドロキシ−3′,5,5′−トリメチルスチルベン、および4,4´−ジヒドロキシ−3,3´,5,5´−テトラメチルスチルベンが好ましい。これらのスチルベン型フェノール類は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
上記一般式(IV)で示される硫黄原子含有エポキシ樹脂の中でも、R1〜R8が水素原子、置換又は非置換の炭素数1〜10のアルキル基および置換又は非置換の炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれるエポキシ樹脂が好ましく、R2、R4、R5およびR7が水素原子で、R1、R3、R6およびR8がアルキル基であるエポキシ樹脂がより好ましく、R2、R4、R5およびR7が水素原子で、R1およびR8がメチル基で、R3およびR6がt−ブチル基であるエポキシ樹脂がさらに好ましい。このような化合物としては、YSLV−120TE(新日鐵化学社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0018】
これら3種のエポキシ樹脂はいずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、その配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量に対して合わせて20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上とすることがさらに好ましい。
【0019】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化6】
(ここで、Rは水素原子および炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜10の整数を示す。)
上記一般式(V)で示されるノボラック型エポキシ樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させることによって容易に得られる。中でも、一般式(V)中のRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。nは0〜3の整数が好ましい。上記一般式(V)で示されるノボラック型エポキシ樹脂の中でも、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
ノボラック型エポキシ樹脂を使用する場合、その配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量に対して20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましい。
【0020】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化7】
(ここで、R1およびR2は水素原子および炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基からそれぞれ独立して選ばれ、nは0〜10の整数を示し、mは0〜6の整数を示す。)
上記式(VI)中のR1としては、たとえば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基置換アルキル基、メルカプト基置換アルキル基等の炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基が挙げられ、中でもメチル基、エチル基等のアルキル基および水素原子が好ましく、メチル基および水素原子がより好ましい。R2としては、たとえば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基置換アルキル基、メルカプト基置換アルキル基等の炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基が挙げられ、中でも水素原子が好ましい。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を使用する場合、その配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量に対して20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましい。
【0021】
ナフタレン型エポキシ樹脂としてはたとえば下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられ、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂としてはたとえば下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化8】
(ここで、R1〜R3は水素原子および置換又は非置換の炭素数1〜12の一価の炭化水素基から選ばれ、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。pは1又は0で、h、mはそれぞれ0〜11の整数であって、(h+m)が1〜11の整数でかつ(h+p)が1〜12の整数となるよう選ばれる。iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示す。)
上記一般式(VII)で示されるナフタレン型エポキシ樹脂としては、h個の構成単位およびm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体が挙げられ、これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化9】
(ここで、Rは水素原子および炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは1〜10の整数を示す。)
【0022】
これら2種のエポキシ樹脂はいずれか1種を単独で用いても両者を組み合わせて用いてもよいが、その配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量に対して合わせて20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上とすることがさらに好ましい。
【0023】
本発明において用いられる(B)硬化剤は、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限はない。たとえば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類および/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;フェノール類および/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;フェノール類および/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
中でも、難燃性の観点からはビフェニル型フェノール樹脂が好ましく、耐リフロー性および硬化性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂が好ましく、低吸湿性の観点からはジシクロペンタジエン型フェノール樹脂が好ましく、耐熱性、低膨張率および低そり性の観点からはトリフェニルメタン型フェノール樹脂が好ましく、硬化性の観点からはノボラック型フェノール樹脂が好ましく、これらのフェノール樹脂の少なくとも1種を含有していることが好ましい。
【0025】
ビフェニル型フェノール樹脂としては、たとえば下記一般式(IX)で示されるフェノール樹脂等が挙げられる。
【化10】
上記式(IX)中のR1〜R9は全てが同一でも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6〜10のアリール基、および、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数6〜10のアラルキル基から選ばれ、中でも水素原子とメチル基が好ましい。nは0〜10の整数を示す。
上記一般式(IX)で示されるビフェニル型フェノール樹脂としては、たとえばR1〜R9が全て水素原子である化合物等が挙げられ、中でも溶融粘度の観点から、nが1以上の縮合体を50重量%以上含む縮合体の混合物が好ましい。このような化合物としては、MEH−7851(明和化成株式会社製商品名)が市販品として入手可能である。
ビフェニル型フェノール樹脂を使用する場合、その配合量は、その性能を発揮するために硬化剤全量に対して30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。
【0026】
アラルキル型フェノール樹脂としては、たとえばフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等が挙げられ、下記一般式(X)で示されるフェノール・アラルキル樹脂が好ましく、一般式(X)中のRが水素原子で、nの平均値が0〜8であるフェノール・アラルキル樹脂がより好ましい。具体例としては、p−キシリレン型フェノール・アラルキル樹脂、m−キシリレン型フェノール・アラルキル樹脂等が挙げられる。これらのアラルキル型フェノール樹脂を用いる場合、その配合量は、その性能を発揮するために硬化剤全量に対して30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上がより好ましい。
【化11】
(ここで、Rは水素原子および炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜10の整数を示す。)
【0027】
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂としては、たとえば下記一般式(XI)で示されるフェノール樹脂等が挙げられる。
【化12】
(ここで、R1およびR2は水素原子および炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基からそれぞれ独立して選ばれ、nは0〜10の整数を示し、mは0〜6の整数を示す。)
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂を用いる場合、その配合量は、その性能を発揮するために硬化剤全量に対して30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上がより好ましい。
【0028】
トリフェニルメタン型フェノール樹脂としては、たとえば下記一般式(XII)で示されるフェノール樹脂等が挙げられる。
【化13】
(ここで、Rは水素原子および炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは1〜10の整数を示す。)
トリフェニルメタン型フェノール樹脂を用いる場合、その配合量は、その性能を発揮するために硬化剤全量に対して30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上がより好ましい。
【0029】
ノボラック型フェノール樹脂としては、たとえばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等が挙げられ、中でもフェノールノボラック樹脂が好ましい。ノボラック型フェノール樹脂を用いる場合、その配合量は、その性能を発揮するために硬化剤全量に対して30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上がより好ましい。
【0030】
上記のビフェニル型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂およびノボラック型フェノール樹脂は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、その配合量は硬化剤全量に対して合わせて60重量%以上とすることが好ましく、80重量%以上がより好ましい。
【0031】
(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との当量比、すなわち、エポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する硬化剤中の水酸基数の比(硬化剤中の水酸基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために0.5〜2の範囲に設定されることが好ましく、0.6〜1.3がより好ましい。成形性および耐リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物を得るためには0.8〜1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0032】
本発明において用いられる(C)硬化促進剤は、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限はないが、たとえば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物およびこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類およびこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類およびこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等のホスフィン化合物およびこれらのホスフィン化合物に無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩およびこれらの誘導体等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、硬化性および流動性の観点からは、ホスフィン化合物およびホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が好ましく、トリフェニルホスフィン等の第三ホスフィン化合物およびトリフェニルホスフィンとキノン化合物との付加物がより好ましい。第三ホスフィン化合物を用いる場合にはキノン化合物をさらに含有することが好ましい。
また、保存安定性の観点からは、シクロアミジン化合物とフェノール樹脂との付加物が好ましく、ジアザビシクロウンデセンのフェノールノボラック樹脂塩がより好ましい。
【0033】
(C)成分の硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではないが、封止用エポキシ樹脂組成物に対して0.005〜2重量%が好ましく、0.01〜0.5重量%がより好ましい。0.005重量%未満では短時間での硬化性に劣る傾向があり、2重量%を超えると硬化速度が速すぎて良好な成形品を得ることが困難になる傾向がある。
【0034】
本発明において用いられる(D)無機充填剤は、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上および強度向上のために組成物に配合されるものであり、たとえば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましく、充填剤形状は成形時の流動性および金型摩耗性の点から球形が好ましい。
(D)無機充填剤の配合量は、難燃性、成形性、吸湿性、線膨張係数低減および強度向上の観点から、封止用エポキシ樹脂組成物に対して60重量%以上が好ましく、70〜95重量%がより好ましく、75〜92重量%がさらに好ましい。60重量%未満では難燃性および耐リフロー性が低下する傾向があり、95重量%を超えると流動性が不足する傾向がある。
【0035】
本発明において用いられる(E)複合金属水酸化物は難燃剤として作用するもので、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、下記組成式(I)で示される化合物が好ましい。
【化14】
m(M1 aOb)・n(M2 cOd)・h(H2O) (I)
(ここで、M1およびM2は互いに異なる金属元素を示し、a、b、c、d、m、nおよびhは正の数を示す。)
【0036】
上記組成式(I)中のM1およびM2は互いに異なる金属元素であれば特に制限はないが、難燃性の観点からは、M1とM2が同一とならないようにM1が第3周期の金属元素、IIA族のアルカリ土類金属元素、IVB族、IIB族、VIII族、IB族、IIIA族およびIVA族に属する金属元素から選ばれ、M2がIIIB〜IIB族の遷移金属元素から選ばれることが好ましく、M1がマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛から選ばれ、M2が鉄、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛から選ばれることがより好ましい。さらに、流動性の観点からは、M1がマグネシウム、M2が亜鉛又はニッケルであることが好ましく、M1がマグネシウムでM2が亜鉛であることがより好ましい。M1 aObおよびM2 cOdのモル比m/nは本発明の効果が得られれば特に制限はないが、m/nが99/1〜50/50であることが好ましい。
なお、金属元素とは、半金属元素といわれるものも含めるものとし、非金属元素を除く全ての元素をさす。金属元素の分類は、典型元素をA亜族、遷移元素をB亜族とする長周期型の周期律表(出典:共立出版株式会社発行「化学大辞典4」1987年2月15日縮刷版第30刷)に基いて行った。
複合金属水酸化物の市販品としては、例えばタテホ化学工業株式会社製商品名エコーマグZ10を入手できる。
【0037】
(E)複合金属水酸化物の形状は特に制限はないが、流動性の観点からは、平板状より、適度の厚みを有する多面体形状が好ましい。複合金属水酸化物は、金属水酸化物と比較して多面体状の結晶が得られやすい。
(E)複合金属水酸化物の配合量は特に制限はないが、封止用エポキシ樹脂組成物に対して0.5〜20重量%が好ましく、0.7〜15重量%がより好ましく、1.4〜12重量%がさらに好ましい。0.5重量%未満では難燃性が不十分となる傾向があり、20重量%を超えると流動性および耐リフロー性が低下する傾向がある。
【0038】
本発明において用いられる(F)重量平均分子量が4,000以上の直鎖型酸化ポリエチレン(以下、(F)成分という。)は、離型剤として働くものである。ここで、直鎖型ポリエチレンとは、側鎖アルキル鎖の炭素数が主鎖アルキル鎖の炭素数の10%程度以下のポリエチレンをいい、一般的には、針入度が2以下のポリエチレンとして分類される。
また、酸化ポリエチレンとは、酸価を有するポリエチレンをいう。
(F)成分の重量平均分子量は、離型性の観点から4,000以上であることが必要で、接着性、金型・パッケージの汚れ防止の観点からは30,000以下であることが好ましく、5,000〜20,000がより好ましく、7,000〜15,000がさらに好ましい。ここで、重量平均分子量は、高温GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した値をいう。
また、(F)成分の酸価は、特に制限はないが、離型性の観点から2〜50mg/KOHであることが好ましく、10〜35mg/KOHがより好ましい。
【0039】
(F)成分の配合量は、特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して0.5〜10重量%が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。配合量が0.5重量%未満では離型性が低下する傾向にあり、10重量%を超えると接着性及び金型・パッケージ汚れの改善効果が不充分となる場合がある。
【0040】
本発明において用いられる(G)炭素数5〜30のα−オレフィンと無水マレイン酸との共重合物を炭素数5〜25の一価のアルコールでエステル化した化合物(以下、(G)成分という。)も、離型剤として働くもので、(F)成分の直鎖型酸化ポリエチレンおよび(A)成分のエポキシ樹脂のいずれとも相溶性が高く、接着性の低下や金型・パッケージ汚れを防ぐ効果がある。
【0041】
(G)成分に用いられる炭素数5〜30のα−オレフィンとしては、特に制限はないが、たとえば、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−トリコセン、1−テトラコセン、1−ペンタコセン、1−ヘキサコセン、1−ヘプタコセン等の直鎖型α−オレフィン、3−メチル−1−ブテン、3,4−ジメチル−ペンテン、3−メチル−1−ノネン、3,4−ジメチル−オクテン、3−エチル−1−ドデセン、4−メチル−5−エチル−1−オクタデセン、3,4,5−トリエチル−1−1−エイコセン等の分岐型α−オレフィン等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも炭素数10〜25の直鎖型α−オレフィンが好ましく、1−エイコセン、1−ドコセン、1−トリコセン等の炭素数15〜25の直鎖型α−オレフィンがより好ましい。
【0042】
(G)成分に用いられる炭素数5〜25の一価のアルコールとしては、特に制限はないが、たとえば、アミルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール等の直鎖型または分岐型の脂肪族飽和アルコール、ヘキセノール、2−ヘキセン−1−オール、1−ヘキセン−3−オール、ペンテノール、2−メチル−1−ペンテノール等の直鎖型または分岐型の脂肪族不飽和アルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の脂環式アルコール、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール等の芳香族アルコール、フルフリルアルコール等の複素環式アルコール等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも炭素数10〜20の直鎖型アルコールが好ましく、炭素数15〜20の直鎖型脂肪族飽和アルコールがより好ましい。
【0043】
本発明の(G)成分における炭素数5〜30のα−オレフィンと無水マレイン酸との共重合物は、特に制限はないが、たとえば、下記一般式(XIII)で示される化合物、下記一般式(XIV)で示される化合物等が挙げられ、市販品としては、1−エイコセン、1−ドコセンおよび1−トリコセンを原料としたニッサンエレクトールWPB−1(日本油脂株式会社製商品名)が入手可能である。
【化15】
(一般式(XIII)および(XIV)で、Rは炭素数3〜28の一価の脂肪族炭化水素基から選ばれ、nは1以上の整数、mは正の数を示す。)
上記一般式(XIII)および(XIV)中のmは、無水マレイン酸1モルに対しα−オレフィンを何モル共重合させたかを示し、特に制限はないが、0.5〜10が好ましく、0.9〜1.1がより好ましい。
【0044】
(G)成分の共重合物の製造方法としては、特に制限はなく、一般的な共重合法を用いることができる。反応には、α−オレフィンと無水マレイン酸が可溶な有機溶媒等を用いてもよい。有機溶媒としては特に制限はないが、トルエンが好ましく、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミン系溶媒等も使用できる。反応温度は、使用する有機溶媒の種類によっても異なるが、反応性、生産性の観点から、50〜200℃とすることが好ましく、80〜120℃がより好ましい。反応時間は、共重合物が得られれば特に制限はないが、生産性の観点から1〜30時間とするのが好ましく、2〜15時間とするのがより好ましく、4〜10時間とするのがさらに好ましい。反応終了後、必要に応じて、加熱減圧下等で未反応分、溶媒等を除去することができる。その条件は、温度を100〜220℃、より好ましくは120〜180℃、圧力を13.3×103Pa以下、より好ましくは8×103Pa以下、時間を0.5〜10時間とすることが好ましい。また、反応には、必要に応じてアミン系触媒、酸触媒等の反応触媒を加えてもよい。反応系のpHは、1〜10程度とするのが好ましい。
【0045】
(G)成分の共重合物を炭素数5〜25の一価のアルコールでエステル化する方法としては、特に制限はなく、共重合物に一価のアルコールを付加反応させる等の一般的な方法を用いることができる。共重合物と一価のアルコールの反応モル比は、特に制限はなく、任意に設定可能であるが、この反応モル比を調整することによって親水性の度合いをコントロールすることができるので、目的の封止用エポキシ樹脂組成物に合わせて適宜設定することが好ましい。反応には、共重合物が可溶な有機溶媒等を用いてもよい。有機溶媒としては特に制限はないが、トルエンが好ましく、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミン系溶媒等も使用できる。反応温度は、使用する有機溶媒の種類によっても異なるが、反応性、生産性の観点から、50〜200℃とすることが好ましく、80〜120℃がより好ましい。反応時間は、特に制限はないが、生産性の観点から1〜30時間とするのが好ましく、2〜15時間とするのがより好ましく、4〜10時間とするのがさらに好ましい。反応終了後、必要に応じて、加熱減圧下等で未反応分、溶媒等を除去することができる。その条件は、温度を100〜220℃、より好ましくは120〜180℃、圧力を13.3×103Pa以下、より好ましくは8×103Pa以下、時間を0.5〜10時間とすることが好ましい。また、反応には、必要に応じてアミン系触媒、酸触媒等の反応触媒を加えてもよい。反応系のpHは、1〜10程度とするのが好ましい。
【0046】
(G)成分のα−オレフィンと無水マレイン酸との共重合物を一価のアルコールでエステル化した化合物としては、たとえば、下記の式(a)または(b)で示されるジエステル、および式(c)〜(f)で示されるモノエステルから選ばれる1種以上を繰り返し単位として構造中に含む化合物等が挙げられ、式(g)または(h)で示されるノンエステルを含んでいてもよい。このような化合物としては、
(1)主鎖骨格が式(a)〜(f)のいずれか1種単独で構成されるもの、
(2)主鎖骨格中に式(a)〜(f)のいずれか2種以上をランダムに含むもの、規則的に含むもの、ブロック状に含むもの、
(3)主鎖骨格中に式(a)〜(f)のいずれか1種または2種以上と式(g)および(h)の少なくとも一方とをランダムに含むもの、規則的に含むもの、ブロック状に含むもの、
等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(4)主鎖骨格中に式(g)および(h)をランダムに含むもの、規則的に含むもの、ブロック状に含むもの、と
(5)主鎖骨格が式(g)または(h)のいずれか単独で構成されるもの、
との、いずれかまたは両方を含んでいてもよい。
【化16】
【化17】
【化18】
(上記式(a)〜(h)で、R1は炭素数3〜28の一価の脂肪族炭化水素基、R2は炭素数5〜25の一価の炭化水素基から選ばれ、mは正の数を示す。)
上記式(a)〜(h)中のmは、無水マレイン酸1モルに対しα−オレフィンを何モル共重合させたかを示し、特に制限はないが、0.5〜10が好ましく、0.9〜1.1がより好ましい。
【0047】
(G)成分のモノエステル化率は、(F)成分との組み合わせにより適宜選択可能であるが、離型性の観点から20%以上とすることが好ましく、(G)成分としては式(c)〜(f)で示されるモノエステルのいずれか1種または2種以上を併せて20モル%以上含む化合物が好ましく、30モル%以上含む化合物がより好ましい。
また、(G)成分の重量平均分子量は、金型・パッケージ汚れ防止及び成形性の観点から5,000〜100,000とすることが好ましく、10,000〜70,000がより好ましく、15,000〜50,000がさらに好ましい。重量平均分子量が5,000未満では金型・パッケージ汚れを防ぐ効果が低い傾向にあり、100,000を超えると化合物の軟化点が上昇し、混練性等に劣る傾向がある。ここで、重量平均分子量は、GPCで測定した値をいう。
【0048】
(G)成分の配合量は、特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して0.5〜10重量%が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。配合量が0.5重量%未満では離型性が低下する傾向にあり、10重量%を超えると耐リフロー性が低下する傾向にある。
【0049】
耐リフロー性や金型・パッケージ汚れの観点から、本発明における離型剤である(F)成分および(G)成分の少なくとも一方は、本発明のエポキシ樹脂組成物の調製時に(A)成分のエポキシ樹脂の一部または全部と予備混合することが好ましい。(F)成分および(G)成分の少なくとも一方を(A)成分と予備混合すると、これらのベース樹脂中での分散性が上がり、耐リフロー性の低下や金型・パッケージ汚れを防ぐ効果がある。
予備混合の方法は、特に制限するものではなく、(F)成分および(G)成分の少なくとも一方が(A)成分のエポキシ樹脂中に分散されればいかなる方法を用いてもよいが、たとえば、室温〜220℃で0.5〜20時間撹拌する等の方法が挙げられる。分散性、生産性の観点からは、温度を100〜200℃、より好ましくは150〜170℃、撹拌時間を1〜10時間、より好ましくは3〜6時間とすることが好ましい。
予備混合するための(F)成分および(G)成分の少なくとも一方は、(A)成分の全量と予備混合してもよいが、一部と予備混合することでも十分な効果が得られる。その場合、予備混合する(A)成分の量は、(A)成分の全量の10〜50重量%とすることが好ましい。
また、(F)成分と(G)成分とのいずれか一方を(A)成分と予備混合することで、分散性向上の効果が得られるが、(F)成分および(G)成分の両方を(A)成分と予備混合した方がより効果が高く好ましい。予備混合する場合の3成分の添加順序は、特に制限はなく、全てを同時に添加混合しても、(F)成分と(G)成分とのいずれか一方を先に(A)成分と添加混合し、その後残りの成分を添加混合してもよい。
【0050】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、上記必須成分の他、以下のような成分を含むことができる。
【0051】
(E)複合金属水酸化物に加えて、従来公知のノンハロゲン、ノンアンチモンの難燃剤を必要に応じて配合することができる。たとえば、赤リン、リン酸エステル等のリン含有化合物、メラミン、メラミン誘導体、メラミン変性フェノール樹脂、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体等の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等のリンおよび窒素含有化合物、酸化亜鉛、錫酸亜鉛、硼酸亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、ジシクロペンタジエニル鉄等の金属元素を含む化合物等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
また、(F)成分および(G)成分に加えて、従来公知の離型剤を必要に応じて配合することができる。たとえば、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレン、酸化ポリエチレン等の酸化型または非酸化型のポリオレフィン系ワックス等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、IC等の半導体素子の耐湿性および高温放置特性を向上させる観点から、必要に応じてイオントラップ剤をさらに配合することができる。イオントラップ剤としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、たとえば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびビスマスから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記組成式(XV)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
【化19】
Mg1-XAlX(OH)2(CO3)X/2・mH2O ……(XV)
(0<X≦0.5、mは正の数)
イオントラップ剤の配合量は、ハロゲンイオン等の陰イオンを捕捉できる十分量であれば特に制限はないが、成形性、耐湿性および高温放置特性の観点から、(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜30重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましく、1〜5重量%がさらに好ましい。
【0054】
また、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、樹脂成分と無機充填剤との接着性を高めるために、必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を添加することができる。
カップリング剤の配合量は、(D)成分の無機充填剤に対して0.05〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2.5重量%がより好ましい。0.05重量%未満ではフレームとの接着性が低下する傾向があり、5重量%を超えるとパッケージの成形性が低下する傾向がある。
【0055】
上記カップリング剤を例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
さらに、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、その他の添加剤として、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム粉末等の応力緩和剤等を必要に応じて配合することができる。
【0057】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、各種原材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。上記したように(F)成分または(G)成分のいずれか一方を(A)成分と予備混合する場合の手法は、特に制限はなく、室温下でミキサー等を用いて混合しても、溶融混合してもよい。離型性の観点からは(A)成分の硬化点以上の温度で溶融混合することが好ましい。
また、成形条件に合うような寸法および重量でタブレット化すると使いやすい。
【0058】
本発明で得られる封止用エポキシ樹脂組成物により封止した素子を備えた本発明の電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止した、電子部品装置等が挙げられる。
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【0059】
本発明の電子部品装置としては、具体的には、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を用いてトランスファ成形等により封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package);配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子および/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール;ハイブリッドIC;マルチチップモジュール;裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプまたはワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で素子を封止したBGA(Ball Grid Array);CSP(Chip Size Package)等が挙げられる。また、プリント回路板にも本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は有効に使用できる。
【0060】
【実施例】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
(離型剤合成例)
α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合物として1−エイコセン、1−ドコセンおよび1−トリコセンの混合物と無水マレイン酸との共重合物(日本油脂株式会社製商品名ニッサンエレクトールWPB−1)、一価のアルコールとしてステアリルアルコールを用い、これらをトルエンに溶解して100℃で8時間反応させた後、160℃まで段階的に昇温しながらトルエンを除去し、さらに減圧下160℃で6時間反応させて未反応分を除去し、重量平均分子量34,000、モノエステル化率70モル%のエステル化化合物((G)成分:離型剤5)を得た。
別に、α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合物としてプロピレンと無水マレイン酸との共重合物(共重合比1/1)を用いた以外は上記と同様にして、重量平均分子量23,000、モノエステル化率70モル%のエステル化化合物(離型剤6)を得た。また、一価のアルコールとしてプロピルアルコールを用いた以外は上記と同様にして、重量平均分子量20,000、モノエステル化率30モル%のエステル化化合物(離型剤7)を得た。ここで、重量平均分子量は、溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いてGPCで測定した値である。
【0062】
(実施例1〜4、比較例1〜10)
(A)エポキシ樹脂としてエポキシ当量192、融点105℃のビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:油化シェルエポキシ株式会社製商品名エピコートYX−4000H)、エポキシ当量210、軟化点130℃のスチルベン型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2:住友化学工業株式会社製商品名ESLV−210)、エポキシ当量195、軟化点65℃のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂3:住友化学工業株式会社製商品名ESCN−190)、エポキシ当量244、融点118℃の硫黄原子含有エポキシ樹脂(エポキシ樹脂4:新日鐵化学株式会社製商品名YSLV−120TE)を用意した。
(B)硬化剤として水酸基当量172、軟化点70℃のフェノール・アラルキル樹脂(硬化剤1:三井化学株式会社製商品名ミレックスXL−225)、水酸基当量199、軟化点80℃のビフェニル型フェノール樹脂(硬化剤2:明和化成株式会社製商品名MEH−7851)を用意した。
(C)硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物を、(D)無機充填剤として平均粒子径17.5μm、比表面積3.8m2/gの球状溶融シリカを用意した。
難燃剤として作用する(E)複合金属水酸化物として、下記組成式(I)中のM1がマグネシウム、M2が亜鉛で、mが7、nが3、hが10で、a、b、cおよびdがいずれも1である複合金属水酸化物(タテホ化学工業株式会社製商品名エコーマグZ10)を用意した。
【化20】
m(M1 aOb)・n(M2 cOd)・h(H2O) (I)
(ここで、M1およびM2は互いに異なる金属元素を示し、a、b、c、d、m、nおよびhは正の数を示す。)
また、離型剤として重量平均分子量8,800、針入度1、酸価30mg/KOHの直鎖型酸化ポリエチレン((F)成分:離型剤1:クラリアント社製商品名PED153)、重量平均分子量3,600、針入度1、酸価15mg/KOHの直鎖型酸化ポリエチレン(離型剤2:クラリアント社製商品名PED121)、重量平均分子量3,100、針入度5、酸価25mg/KOHの分岐型酸化ポリエチレン(離型剤3:クラリアント社製商品名PED522)、重量平均分子量12,000、針入度1の直鎖型非酸化ポリエチレン(離型剤4:クラリアント社製商品名PED190)、および上記合成例で得られた離型剤5〜7を用意した。ここで、離型剤1〜4の重量平均分子量は、溶媒としてオルソジクロロベンゼンを用いて140℃で測定した、高温GPCによる測定値である。
【0063】
その他の難燃剤として水酸化マグネシウム、三酸化アンチモンおよびエポキシ当量375、軟化点80℃、臭素含量48重量%のビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(住友化学工業株式会社製商品名ESB−400T)、その他の離型剤としてモンタン酸エステル(クラリアント社製商品名Hoechst−Wax E)、その他の添加剤としてエポキシシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製商品名KBM403)およびカーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名MA−100)を用意した。
これらをそれぞれ表1に示す重量部で配合し、混練温度80℃、混練時間10分の条件でロール混練を行い、実施例1〜4および比較例1〜10の封止用エポキシ樹脂組成物を作製した。なお、エポキシ樹脂と各離型剤は、ロール混練前に170℃、6時間の条件で予備混合して用いた。
【0064】
【表1】
【0065】
作製した各実施例および比較例の封止用エポキシ樹脂組成物を、次の各試験により評価した。結果を表2に示す。
なお、封止用エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また、後硬化は180℃で5時間行った。
【0066】
(1)難燃性
厚さ1/16インチの試験片を成形する金型を用いて、封止用エポキシ樹脂組成物を上記条件で成形して後硬化を行い、UL−94試験法に従って難燃性を評価した。
(2)スパイラルフロー
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、封止用エポキシ樹脂組成物を上記条件で成形し、流動距離を求めた。
(3)熱時硬度
封止用エポキシ樹脂組成物を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちに金型内の成形品をショアD型硬度計を用いて測定した。
【0067】
(4)せん断離型性
縦50mm×横35mm×厚さ0.4mmのクロムめっきステンレス板を挿入し、この上に直径20mmの円板を成形する金型を用いて、封止用エポキシ樹脂組成物を上記条件で成形し、成形後直ちに該ステンレス板を引き抜いて最大引き抜き力を記録した。これを同一のステンレス板に対して連続で10回繰り返し、2回目から10回目までの引き抜き力の平均値を求めて評価した。
【0068】
(5)耐リフロー性
8mm×10mm×0.4mmのシリコーンチップを搭載した外形寸法20mm×14mm×2mmの80ピンフラットパッケージ(QFP)を、封止用エポキシ樹脂組成物を用いて上記条件で成形、後硬化して作製し、85℃、85%RHの条件で加湿して所定時間毎に240℃、10秒の条件でリフロー処理を行い、クラックの有無を観察し、試験パッケージ数(5)に対するクラック発生パッケージ数で評価した。
【0069】
(6)耐湿性
5μm厚の酸化膜上に線幅10μm、厚さ1μmのアルミ配線を施した6mm×6mm×0.4mmのテスト用シリコーンチップを搭載した外形寸法20mm×14mm×2.7mmの80ピンフラットパッケージ(QFP)を、封止用エポキシ樹脂組成物を用いて上記条件で成形、後硬化して作製し、前処理を行った後、加湿して所定時間毎にアルミ配線腐食による断線不良を調べ、試験パッケージ数(10)に対する不良パッケージ数で評価した。
なお、前処理は85℃、85%RH、72時間の条件でフラットパッケージを加湿後、215℃、90秒間のベーパーフェーズリフロー処理を行った。その後の加湿は0.2MPa、121℃の条件で行った。
【0070】
(7)高温放置特性
5μm厚の酸化膜上に線幅10μm、厚さ1μmのアルミ配線を施した5mm×9mm×0.4mmのテスト用シリコーンチップを、部分銀メッキを施した42アロイのリードフレーム上に銀ペーストを用いて搭載し、サーモニック型ワイヤボンダにより、200℃でチップのボンディングパッドとインナリードをAu線にて接続した16ピン型DIP(Dual Inline Package)を、封止用エポキシ樹脂組成物を用いて上記条件で成形、後硬化して作製して、200℃の高温槽中に保管し、所定時間毎に取り出して導通試験を行い、試験パッケージ数(10)に対する導通不良パッケージ数で、高温放置特性を評価した。
【0071】
【表2】
【0072】
本発明における(E)複合金属水酸化物、(F)重量平均分子量が4,000以上の直鎖型酸化ポリエチレン、および(G)炭素数5〜30のα−オレフィンと無水マレイン酸との共重合物を炭素数5〜25の一価のアルコールでエステル化した化合物、のいずれかを含まない比較例1〜9では、せん断離形性に劣り、本発明の目的を満足しない。また、ブロム化エポキシ樹脂およびアンチモン化合物を含んだ比較例10では、耐湿性および高温放置特性に劣る。
これに対して、本発明の(A)〜(G)成分を全て含む実施例1〜4では、せん断離形性、耐湿性および高温放置特性のいずれも良好であり、かつ、UL-94試験でV−0を達成し難燃性にも優れる。また、スパイラルフロー、熱時硬度、耐リフロー性にも問題がない。
【0073】
【発明の効果】
本発明による封止用エポキシ樹脂組成物は実施例で示したようにノンハロゲンかつノンアンチモンで難燃化を達成でき、これを用いてIC、LSI等の電子部品を封止すれば成形性が良好であり、耐リフロー性、耐湿性および高温放置特性等の信頼性にも優れた製品を得ることができ、その工業的価値は大である。
Claims (10)
- (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填剤、(E)複合金属水酸化物、(F)重量平均分子量が4,000以上、酸価が30〜50mg/KOHの直鎖型酸化ポリエチレン、および(G)炭素数5〜30のα−オレフィンと無水マレイン酸との共重合物を炭素数5〜25の一価のアルコールでエステル化した化合物を必須成分とする封止用エポキシ樹脂組成物。
- (F)成分および(G)成分の少なくとも一方が、(A)成分の一部または全部と予備混合されてなる請求項1記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
- 組成式(I)中のM1が第3周期の金属元素、IIA族のアルカリ土類金属元素、IVB族、IIB族、VIII族、IB族、IIIA族およびIVA族に属する金属元素から選ばれ、M2がIIIB〜IIB族の遷移金属元素から選ばれる請求項3記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
- 組成式(I)中のM1がマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛から選ばれ、M2が鉄、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛から選ばれる請求項4記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
- 組成式(I)中のM1がマグネシウムで、M2が亜鉛又はニッケルである請求項5記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
- 組成式(I)中のM1 aObおよびM2 cOdのモル比m/nが99/1〜50/50である請求項3〜6のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
- (A)エポキシ樹脂がビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂およびトリフェニルメタン型エポキシ樹脂の少なくとも1種を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
- (B)硬化剤がビフェニル型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂およびノボラック型フェノール樹脂の少なくとも1種を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えた電子部品装置。
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