JP4849290B2 - 封止用エポキシ樹脂成形材料及び電子部品装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、封止用エポキシ樹脂成形材料、特に環境対応の観点から要求されるノンハロゲンかつノンアンチモンで難燃性の封止用エポキシ樹脂成形材料で、厳しい信頼性を要求されるVLSIの封止用に好適な成形材料及びこの成形材料で封止した素子を備えた電子部品装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、トランジスタ、IC等の電子部品装置の素子封止の分野では生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性などの諸特性にバランスがとれているためである。これらの封止用エポキシ樹脂成形材料の難燃化は主にテトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル等のブロム化樹脂と酸化アンチモンの組合せにより行われている。
近年、環境保護の観点からダイオキシン問題に端を発し、デカブロムをはじめとするハロゲン化樹脂やアンチモン化合物に量規制の動きがあり、封止用エポキシ樹脂成形材料についてもノンハロゲン化(ノンブロム化)及びノンアンチモン化の要求が出てきている。また、プラスチック封止ICの高温放置特性にブロム化合物が悪影響を及ぼすことが知られており、この観点からもブロム化樹脂量の低減が望まれている。
そこで、ブロム化樹脂や酸化アンチモンを用いずに難燃化を達成する手法としては、赤リンを用いる方法(特開平9−227765号公報)、リン酸エステル化合物を用いる方法(特開平9−235449号公報)、ホスファゼン化合物を用いる方法(特開平8−225714号公報)、金属水酸化物を用いる方法(特開平9−241483号公報)、金属水酸化物と金属酸化物を併用する方法(特開平9−100337号公報)、フェロセン等のシクロペンタジエニル化合物(特開平11-269349号公報)、アセチルアセトナート銅(加藤寛、機能材料、11(6)、34(1991))等の有機金属化合物を用いる方法などのハロゲン、アンチモン以外の難燃剤を用いる方法、充填剤の割合を高くする方法(特開平7−82343号公報)等が試みられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、封止用エポキシ樹脂成形材料に赤リンを用いた場合は耐湿性の低下の問題、リン酸エステル化合物やホスファゼン化合物を用いた場合は可塑化による成形性の低下や耐湿性の低下の問題、金属水酸化物や金属酸化物を用いた場合や、充填剤の割合を高くした場合は流動性の低下の問題がそれぞれある。また、有機金属化合物を用いた場合は、硬化反応を阻害し成形性が低下する問題がある。以上のようにこれらノンハロゲン、ノンアンチモン系の難燃剤では、いずれの場合もブロム化樹脂と酸化アンチモンを併用した封止用エポキシ樹脂成形材料と同等の成形性、信頼性を得るに至っていない。
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、ノンハロゲンかつノンアンチモンで、成形性、耐リフロー性、耐湿性及び高温放置特性等の信頼性を低下させずに難燃性が良好な封止用エポキシ樹脂材料、及びこれにより封止した素子を備えた電子部品装置を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のエポキシ樹脂及び硬化剤を配合した封止用エポキシ樹脂成形材料により上記の目的を達成しうることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は
(1)(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を必須成分とし、(A)エポキシ樹脂が下記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂及び結晶性エポキシ樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を含有し、一般式(I)で示されるエポキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂の配合比率は、一般式(I)で示されるエポキシ樹脂/結晶性エポキシ樹脂の重量比で80/20〜40/60で、(B)硬化剤が下記一般式(II)で示されるフェノール樹脂、(C)硬化促進剤としてホスフィン化合物とキノン化合物の付加物を含有する封止用エポキシ樹脂成形材料、
【化3】
(ここで、R1、R2及びR3は全て水素原子を示し、m、nは0〜10の整数で、m/n=0.5〜5となる組合せを示す。ただし、m、nが同時に0の場合を除く。)
【化4】
(ここで、R1、R2及びR3は全て水素原子を示し、m、nは1〜10の整数で0.5≦m/n<5を示す。)
(2)(D)無機充填剤をさらに含有する上記(1)に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料、並びに
(3)上記(1)又は(2)に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止された素子を備えた電子部品装置、に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる(A)エポキシ樹脂は、下記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂及び結晶性エポキシ樹脂を含有することが必要である。
【化5】
ここで、R1、R2及びR3は全て水素原子を示し、m、nは0〜10の整数でm/n=0.5〜5となる組合せを示す。ただし、m、nが同時に0の場合を除く。(R2)4は4個のR2を示し、(R3)4は4個のR3を示す。
上記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂は、( )m及び( )nで示される繰り返し単位の共重合体であるが、これらの繰り返し単位がランダムに結合したランダム共重合体であっても、交互に結合した共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわないが、難燃性の観点からはランダム共重合体又は交互共重合体が好ましい。また、共重合比m/nは特に制限はないが、重量比が10〜0.1が好ましく、5〜0.5がより好ましい。重量比m/nが0.1未満の場合は難燃性が低下する傾向にあり、10より大きい場合は成形性が低下する傾向にある。
上記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するために(A)エポキシ樹脂全量に対して10重量%以上とすることが好ましく、40重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。
【0007】
また、結晶性エポキシ樹脂としては、結晶性を有するエポキシ樹脂であれば特に限定はないが、耐リフロー性の観点からは、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0008】
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられ、スチルベン型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられ、硫黄原子含有エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化6】
(ここで、R1〜R8は水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【化7】
(ここで、R1〜R8は水素原子及び炭素数1〜5の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜10の整数を示す。)
【化8】
(ここで、R1〜R8は水素原子、置換又は非置換の炭素数1〜10のアルキル基及び置換又は非置換の炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【化9】
(ここで、R1〜R8は水素原子、置換又は非置換の炭素数1〜10のアルキル基及び置換又は非置換の炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【0009】
上記一般式(III)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂としては、たとえば、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル又は4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと4,4’−ビフェノール又は4,4’−(3,3’,5,5’−テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。
上記一般式(IV)で示されるスチルベン型エポキシ樹脂は、原料であるスチルベン系フェノール類とエピクロルヒドリンとを塩基性物質存在下で反応させて得ることができる。この原料であるスチルベン系フェノール類としては、たとえば3−t−ブチル−4,4′−ジヒドロキシ−3′,5,5′−トリメチルスチルベン、3−t−ブチル−4,4′−ジヒドロキシ−3′,5′,6−トリメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−6,6’−ジメチルスチルベン等が挙げられ、なかでも3−t−ブチル−4,4′−ジヒドロキシ−3′,5,5′−トリメチルスチルベン、及び4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベンが好ましい。これらのスチルベン型フェノール類は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(V)で示される硫黄原子含有エポキシ樹脂のなかでも、R1、R4、R5及びR8が水素原子で、R2、R3、R6及びR7がアルキル基であるエポキシ樹脂が好ましく、R1、R4、R5及びR8が水素原子で、R2及びR7がメチル基で、R3及びR6がt−ブチル基であるエポキシ樹脂がより好ましい。このような化合物としては、YSLV−120TE(新日鐵化学社製)等が市販品として入手可能である。
上記一般式(VI)で示されるビスフェノールF型エポキシ樹脂のなかでも、R2、R4、R5及びR7が水素原子で、R1、R3、R6及びR8がアルキル基であるエポキシ樹脂が好ましく、R2、R4、R5及びR7が水素原子で、R1、R3、R6及びR8がメチル基であるエポキシ樹脂がより好ましい。このような化合物としては、YSLV−80XY(新日鐵化学社製)等が市販品として入手可能である。
【0010】
これらのビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組合わせて用いてもよいが、その配合量は、その性能を発揮するために(A)エポキシ樹脂全量に対して合わせて10重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上とすることがさらに好ましい。
【0011】
上記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂の配合比率は、特に限定はないが、一般式(I)で示されるエポキシ樹脂/結晶性エポキシ樹脂の重量比で90/10〜10/90とすることが好ましく、80/20〜40/60がより好ましい。90/10よりも結晶性エポキシ樹脂が少ない場合は流動性が低下する傾向にあり、10/90よりも一般式(I)で示されるエポキシ樹脂が少ない場合は難燃性が低下する傾向にある。
【0012】
また、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料及び電子部品装置には、上記の一般式(I)で示されるエポキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂以外に従来公知のエポキシ樹脂を併用してもよい。たとえば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールS等のジグリシジルエーテル、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノ−ル類の共縮合樹脂のエポキシ化物、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、硬化性の観点からはノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、低吸湿性の観点からはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましく、耐熱性及び低反り性の観点からはナフタレン型エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0013】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化10】
(ここで、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜10の整数を示す。)
上記一般式(VII)で示されるノボラック型エポキシ樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させることによって容易に得られる。なかでも、一般式(VII)中のRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。nは0〜3の整数が好ましい。上記一般式(VII)で示されるノボラック型エポキシ樹脂のなかでも、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0014】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化11】
(ここで、R1及びR2は水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基からそれぞれ独立して選ばれ、nは0〜10の整数を示し、mは0〜6の整数を示す。)
上記式(VIII)中のR1としては、たとえば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基置換アルキル基、メルカプト基置換アルキル基などの炭素数1〜5の置換又は非置換の一価の炭化水素基が挙げられ、なかでもメチル基、エチル基等のアルキル基及び水素原子が好ましく、メチル基及び水素原子がより好ましい。R2としては、たとえば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基置換アルキル基、メルカプト基置換アルキル基などの炭素数1〜5の置換又は非置換の一価の炭化水素基が挙げられ、なかでも水素原子が好ましい。
【0015】
ナフタレン型エポキシ樹脂としてはたとえば下記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられ、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂としてはたとえば下記一般式(X)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
下記一般式(IX)で示されるナフタレン型エポキシ樹脂としては、l個の構成単位及びm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体が挙げられ、これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、下記一般式(X)で示されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂としては特に制限はないが、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂が好ましい。
【化12】
(ここで、R1〜R3は水素原子及び置換又は非置換の炭素数1〜12の一価の炭化水素基から選ばれ、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。pは1又は0で、l、mはそれぞれ0〜11の整数であって、(l+m)が1〜11の整数でかつ(l+p)が1〜12の整数となるよう選ばれる。iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示す。)
【化13】
(ここで、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは1〜10の整数を示す。)
これらのナフタレン型エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂はいずれか1種を単独で用いても両者を組合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明において用いられる(B)硬化剤は、下記一般式(II)で示されるフェノール樹脂を含有することが必要であり、なかでも難燃性の観点からは、下記一般式(II)のR1、R2及びR3が全て水素原子である。
【化14】
ここで、R1、R2及びR3は全て水素原子を示し、m、nは1〜10の整数で、0.5≦m/n<5を示す。(R2)4は4個のR2を示し、(R3)4は4個のR3を示す。
上記一般式(II)で示されるフェノール樹脂は、( )m及び( )nで示される繰り返し単位の共重合体であるが、これらの繰り返し単位がランダムに結合したランダム共重合体であっても、交互に結合した共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわないが、難燃性の観点からはランダム共重合体又は交互共重合体が好ましい。また、共重合比m/nは特に制限はないが、重量比が10〜0.1が好ましく、5〜0.5がより好ましい。重量比m/nが0.1未満の場合は難燃性が低下する傾向にあり、10より大きい場合は成形性が低下する傾向にある。
一般式(II)で示されるフェノール樹脂の配合量は、その性能を発揮するために(B)硬化剤全量に対して50重量%以上とすることが好ましく、60重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。
【0017】
また、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料及び電子部品装置には、上記フェノール樹脂以外に従来公知の硬化剤を併用してもよい。例えばフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のジクロペンタジエン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて併用してもよい。
なかでも、耐リフロー性及び硬化性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂が好ましく、低吸湿性の観点からはジシクロペンタジエン型フェノール樹脂が好ましく、耐熱性、低膨張率及び低そり性の観点からはトリフェニルメタン型フェノール樹脂が好ましく、硬化性の観点からはノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
【0018】
アラルキル型フェノール樹脂としては、たとえばフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等が挙げられ、下記一般式(XI)で示されるフェノール・アラルキル樹脂が好ましく、一般式(XI)中のRが水素原子で、nの平均値が0〜8であるフェノール・アラルキル樹脂がより好ましい。具体例としては、p−キシリレン型フェノール・アラルキル樹脂、m−キシリレン型フェノール・アラルキル樹脂等が挙げられる。
【化15】
(ここで、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜10の整数を示す。)
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂としては、たとえば下記一般式(XII)で示されるフェノール樹脂等が挙げられる。
【化16】
(ここで、R1及びR2は水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基からそれぞれ独立して選ばれ、nは0〜10の整数を示し、mは0〜6の整数を示す。)
トリフェニルメタン型フェノール樹脂としては、たとえば下記一般式(XIII)で示されるフェノール樹脂等が挙げられる。下記一般式(XIII)で示されるトリフェニルメタン型フェノール樹脂としては特に制限はないが、たとえば、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、o−ヒドロキシベンズアルデヒド型フェノール樹脂、m−ヒドロキシベンズアルデヒド型フェノール樹脂等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組合わせて用いてもよい。なかでもサリチルアルデヒド型フェノール樹脂が好ましい。
【化17】
(ここで、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは1〜10の整数を示す。)
ノボラック型フェノール樹脂としては、たとえば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等が挙げられ、なかでもフェノールノボラック樹脂が好ましい。
【0019】
(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との当量比、すなわち、エポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する硬化剤中の水酸基数の比(硬化剤中の水酸基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために0.5〜2の範囲に設定されることが好ましく、0.6〜1.3がより好ましい。成形性及び耐リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料を得るためには0.8〜1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0020】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、(C)硬化促進剤を配合する。(C)硬化促進剤は、たとえば、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等のホスフィン化合物に1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物などが好ましい。これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、硬化性及び流動性の観点からは、ホスフィン化合物及びホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が好ましく、トリフェニルホスフィン等の第三ホスフィン化合物及びトリフェニルホスフィンとキノン化合物との付加物がより好ましい。
【0021】
(C)硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限はないが、封止用エポキシ樹脂成形材料に対して0.005〜2重量%が好ましく、0.01〜0.5重量%がより好ましい。0.005重量%未満では短時間での硬化性に劣る傾向があり、2重量%を超えると硬化速度が速すぎて良好な成形品を得ることが困難になる傾向がある。
【0022】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、必要に応じて(D)無機充填剤を配合することができる。(D)無機充填剤は、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上のために成形材料に配合されるものであり、たとえば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましく、充填剤形状は成形時の流動性及び金型摩耗性の点から球形が好ましい。
(D)無機充填剤の配合量は、難燃性、成形性、吸湿性、線膨張係数低減及び強度向上の観点から、封止用エポキシ樹脂成形材料に対して70〜95重量%が好ましく、75〜92重量%がより好ましい。70重量%未満では難燃性及び耐リフロー性が低下する傾向があり、95重量%を超えると流動性が不足する傾向がある。
【0023】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、IC等の半導体素子の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、必要に応じてイオントラップ剤をさらに配合することができる。イオントラップ剤としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、たとえば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマスから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、下記組成式(XIV)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
【化18】
Mg1-XAlX(OH)2(CO3)X/2・mH2O ……(XIV)
(0<X≦0.5、mは正の数)
イオントラップ剤の配合量は、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉できる十分量であれば特に制限はないが、流動性及び曲げ強度の観点から(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜30重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましく、1〜5重量%がさらに好ましい。
【0024】
また、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、樹脂成分と無機充填剤との接着性を高めるために、必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を添加することができる。これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記カップリング剤の配合量は、(D)無機充填剤に対して0.05〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2.5重量%がより好ましい。0.05重量%未満ではフレームとの接着性が低下する傾向があり、5重量%を超えるとパッケージの成形性が低下する傾向がある。
【0026】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には従来公知のノンハロゲン、ノンアンチモンの難燃剤を必要に応じて配合することができる。たとえば、赤リン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の無機物及び/又はフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等で被覆された赤リン、リン酸エステル等のリン化合物、メラミン、メラミン誘導体、メラミン変性フェノール樹脂、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体等の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等のリン及び窒素含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及び下記組成式(XV)で示される複合金属水酸化物などが挙げられる。
【化19】
p(M1aOb)・q(M2cOd)・r(M3cOd)・mH2O (XV)
(ここで、M1、M2及びM3は互いに異なる金属元素を示し、a、b、c、d、p、q及びmは正の数、rは0又は正の数を示す。)
上記組成式(XV)中のM1、M2及びM3は互いに異なる金属元素であれば特に制限はないが、難燃性の観点からは、M1が第3周期の金属元素、IIA族のアルカリ土類金属元素、IVB族、IIB族、VIII族、IB族、IIIA族及びIVA族に属する金属元素から選ばれ、M2がIIIB〜IIB族の遷移金属元素から選ばれることが好ましく、M1がマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛から選ばれ、M2が鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛から選ばれることがより好ましい。流動性の観点からは、M1がマグネシウム、M2が亜鉛又はニッケルで、r=0のものが好ましい。p、q及びrのモル比は特に制限はないが、r=0で、p/qが1/99〜1/1であることが好ましい。なお、金属元素の分類は、典型元素をA亜族、遷移元素をB亜族とする長周期型の周期率表(出典:共立出版株式会社発行「化学大辞典4」1987年2月15日縮刷版第30刷)に基づいて行った。)また、酸化亜鉛、錫酸亜鉛、硼酸亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、ジシクロペンタジエニル鉄等の金属元素を含む化合物などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0027】
さらに、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、その他の添加剤として、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、エステル系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、ポリエチレン、酸化ポリエチレン等の離型剤、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム粉末等の応力緩和剤などを必要に応じて配合することができる。
【0028】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は、各種原材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化すると使いやすい。
【0029】
本発明で得られる封止用エポキシ樹脂成形材料により封止した素子を備えた電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止した、電子部品装置などが挙げられる。このような電子部品装置としては、たとえば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いてトランスファ成形等により封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、マザーボード接続用の端子を形成したインターポーザ基板に半導体チップを搭載し、バンプまたはワイヤボンディングにより半導体チップとインターポーザ基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で半導体チップ搭載側を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などが挙げられる。また、プリント回路板にも本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は有効に使用できる。
【0030】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【0031】
【実施例】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1〜4、参考例1〜8、比較例1〜9
エポキシ樹脂として、下記一般式(XVI)で示されるアラルキル型エポキシ樹脂で、重量比m/nが5でエポキシ当量が273であるエポキシ樹脂1、重量比m/nが1でエポキシ当量が260であるエポキシ樹脂2、及び重量比m/nが0.1でエポキシ当量が243であるエポキシ樹脂3、エポキシ当量280、軟化点60℃のビフェニレン基を含有するアラルキル型エポキシ樹脂4(日本化薬株式会社製NC−3000)、エポキシ当量196、融点106℃のビフェニル型エポキシ樹脂5(油化シェルエポキシ株式会社製商品名エピコートYX−4000H)、エポキシ当量210、融点130℃のスチルベン型エポキシ樹脂6、エポキシ当量245、融点110℃の硫黄原子含有エポキシ樹脂7(新日鐵化学株式会社製商品名YSLV−120TE)、エポキシ当量190、融点75℃のビスフェノールF型エポキシ樹脂8(新日鐵化学株式会社製商品名YSLV−80XY)、又はエポキシ当量195、軟化点65℃のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂9(住友化学工業株式会社製商品名ESCN−190)、硬化剤として下記一般式(XVII)で示されるアラルキル型フェノール樹脂で、重量比m/nが5で水酸基当量が195であるフェノール樹脂1、重量比m/nが1で水酸基当量が187であるフェノール樹脂2、及び重量比m/nが0.1で水酸基当量が177であるフェノール樹脂3、水酸基当量199、軟化点80℃のビフェニレン基を含有するアラルキル型フェノール樹脂4(明和化成株式会社製商品名MEH−7851)、水酸基当量175、軟化点70℃のフェノール・アラルキル樹脂(フェノール樹脂5、三井化学株式会社製商品名ミレックスXL−225)、又は水酸基当量106、軟化点80℃のフェノールノボラック樹脂(フェノール樹脂6、明和化成株式会社製商品名H−1)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物(硬化促進剤1)、又は1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のフェノールノボラック樹脂塩(硬化促進剤2)、無機充填剤として平均粒径17.5μm、比表面積3.8m2/gの球状溶融シリカ、難燃剤として、水酸化アルミニウム及びフェノール樹脂で被覆された赤リン(燐化学工業株式会社製商品名ノーバエクセル140)、又は、三酸化アンチモン及びエポキシ当量375、軟化点80℃、臭素含量48重量%のビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(住友化学工業株式会社製商品名ESB−400T)、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシシラン)、その他の添加剤としてカルナバワックス(クラリアント社製)及びカーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名MA−100)をそれぞれ表1及び表2に示す重量部で配合し、混練温度80℃、混練時間10分の条件でロール混練を行い、実施例1〜4、参考例1〜8及び比較例1〜9の封止用エポキシ樹脂成形材料を作製した。
【化20】
【化21】
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
作製した実施例及び比較例の封止用エポキシ樹脂成形材料を、次の各試験により評価した。結果を表3及び表4に示す。
なお、封止用エポキシ樹脂成形材料の成形は、トランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また、後硬化は180℃で5時間行った。
(1)難燃性
厚さ1/16インチの試験片を成形する金型を用いて、封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で成形して後硬化を行い、UL−94試験法に従って難燃性を評価した。
(2)スパイラルフロー(流動性の指標)
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。
(3)熱時硬度
封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計を用いて測定した。
(4)保存安定性
封止用エポキシ樹脂成形材料を30℃、湿度40%RHの環境で所定時間保管して、上記(2)と同様にしてスパイラルフロー(流動距離)を測定し、保管前の流動距離に対して90%になる保管時間を求めた。
(5)耐リフロー性
8mm×10mm×0.4mmのシリコーンチップを搭載した外形寸法20mm×14mm×2mmの80ピンフラットパッケージを、封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて上記条件で成形、後硬化して作製し、85℃、85%RHの条件で加湿して所定時間毎に240℃、10秒の条件でリフロー処理を行い、クラックの有無を観察し、試験パッケージ数(5)に対するクラック発生パッケージ数で評価した。
(6)耐湿性
線幅10μm、厚さ1μmのアルミ配線を施した6mm×6mm×0.4mmのテスト用シリコーンチップを搭載した外形寸法19mm×14mm×2.7mmの80ピンフラットパッケージを、封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて上記条件で成形、後硬化して作製し、前処理を行った後、加湿して所定時間毎にアルミ配線腐食による断線不良を調べ、試験パッケージ数(10)に対する不良パッケージ数で評価した。
なお、前処理は85℃、85%RH、72時間の条件でフラットパッケージを加湿後、215℃、90秒間のベーパーフェーズリフロー処理を行った。その後の加湿は0.2MPa、121℃の条件で行った。
(7)高温放置特性
上記(7)と同様に作製した試験用パッケージを200℃の高温槽に保管し、所定時間毎に取り出して導通試験を行い、試験パッケージ数(10)に対する導通不良パッケージ数で、高温放置特性を評価した。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
本発明における一般式(I)で示されるエポキシ樹脂、結晶性エポキシ樹脂及び一般式(II)で示されるフェノール樹脂を含まない比較例はいずれも、本発明の特性を満足していない。すなわち、比較例1、3〜5及び7は難燃性に劣り、UL−94でV−0を達成していない。比較例2は流動性、耐リフロー性に劣る。また、赤リン系難燃剤を使用した比較例6は耐湿性に劣る。臭素系難燃剤と三酸化アンチモンを使用した比較例8、9は高温放置特性に劣る。
これに対して、実施例1〜4は、いずれもUL−94でV−0を達成しており、また、流動性、熱時硬度、耐リフロー性、耐湿性及び高温放置特性のいずれも低下せずに良好である。
【0039】
【発明の効果】
本発明になる封止用エポキシ樹脂成形材料は実施例で示したようにノンハロゲンかつノンアンチモンで難燃化を達成でき、これを用いてIC、LSI等の電子部品を封止すれば成形性が良好であり、耐リフロー性、耐湿性及び高温放置特性等の信頼性が良好な製品を得ることができ、その工業的価値は大である。
Claims (3)
- (A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を必須成分とし、(A)エポキシ樹脂が下記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂及び結晶性エポキシ樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を含有し、一般式(I)で示されるエポキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂の配合比率は、一般式(I)で示されるエポキシ樹脂/結晶性エポキシ樹脂の重量比で80/20〜40/60で、(B)硬化剤が下記一般式(II)で示されるフェノール樹脂、(C)硬化促進剤としてホスフィン化合物とキノン化合物の付加物を含有する封止用エポキシ樹脂成形材料。
- (D)無機充填剤をさらに含有する請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
- 請求項1又は2に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止された素子を備えた電子部品装置。
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