本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
[参考構成例]
参考構成例を図1ないし図4に基づいて説明する。図1は電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略正面図である。この画像形成装置は、複写機能と、これ以外の機能、例えばプリンタ機能、ファクシミリ機能とを有する画像形成装置であり、操作部のアプリケーション切替えキーにより複写機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能を順次に切替えて選択することが可能である。複写機能の選択時には複写モードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリントモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
まず、複写モードでは、次のように動作する。自動原稿送り装置(以下ADFという)101においては、原稿台102に原稿がその画像面を上にして置かれる原稿束は、操作部上のスタートキーが押下されると、一番下の原稿が給紙ローラ103、給送ベルト104によってコンタクトガラスからなる原稿台105上の所定の位置に給送される。ADF101は1枚の原稿の給送完了毎に原稿枚数をカウントアップするカウント機能を有する。原稿台105上の原稿は、画像入力手段としての画像読取装置106によって画像情報が読取られた後に、給送ベルト104、排送ローラ107によって排紙台108上に排出される。
原稿セット検知器109にて原稿台102上に次の原稿が有ることが検知された場合には、同様に原稿台102上の一番下の原稿が給紙ローラ103、給送ベルト104によって原稿台105上の所定の位置に給送される。この原稿台105上の原稿は、画像読取装置106によって画像情報が読み取られた後に、給送ベルト104、排送ローラ107によって排紙台108上に排出される。ここに、給紙ローラ103、給送ベルト104及び排送ローラ107は搬送モータによって駆動される。
給紙手段としての第1給紙装置110、第2給紙装置111、第3給紙装置112は、選択された時に各々第1トレイ113、第2トレイ114、第3トレイ115に積載された転写材としての転写紙を給紙し、この転写紙は縦搬送ユニット116によって感光体117に当接する位置まで搬送される。感光体117は、ドラム状感光体が用いられており、メインモータにより回転駆動される。
画像読取装置106にて原稿から読込まれた画像データは図示しない画像処理手段を介して書込手段としての書込みユニット118によって光情報に変換され、感光体117は図示しない帯電器により一様に帯電された後に、書込みユニット118からの光情報で露光されて静電潜像が形成される。この感光体117上の静電潜像は現像装置119により現像されてトナー像となる。
搬送ベルト120は、用紙搬送手段及び転写手段を兼ねていて電源から転写バイアスが印加され、縦搬送ユニット116からの転写紙を感光体117と等速で搬送しながら感光体117上のトナー像を転写紙に転写させる。この転写紙は、定着装置121によりトナー像が定着され、排紙ユニット122により排紙トレイ123に排出される。感光体117はトナー像転写後に図示しないクリーニング装置によりクリーニングされる。ここに、感光体117、帯電器、書込みユニット118、現像装置119、転写手段は画像データにより画像を転写紙上に形成するプリンタエンジンを構成している。
以上の動作は通常のモードで用紙の片面に画像を複写する時の動作であるが、両面モードで転写紙の両面に画像を複写する場合には、各給紙トレイ113〜115の何れかより給紙されて表面に上述のように画像が形成された転写紙は、排紙ユニット122により排紙トレイ123側ではなく両面入紙搬送路124側に切替えられ、反転ユニット125によりスイッチバックされて表裏が反転され、両面搬送ユニット126へ搬送される。
この両面搬送ユニット126へ搬送された転写紙は、両面搬送ユニット126により縦搬送ユニット116へ搬送され、縦搬送ユニット116により感光体117に当接する位置まで搬送され、感光体117上に上述と同様に形成されたトナー像が裏面に転写されて定着装置121でトナー像が定着されることにより両面コピーとなる。この両面コピーは排紙ユニット122により排紙トレイ123に排出される。
また、転写紙を反転して排出する場合には、反転ユニット125によりスイッチバックされて表裏が反転された転写紙は、両面搬送ユニット126に搬送されずに反転排紙搬送路127を経て排紙ユニット122により排紙トレイ123に排出される。
プリントモードでは、上記画像処理手段からの画像データの代りに外部からの画像データが書込みユニット118に入力されて上述のプリンタエンジンにより転写紙上に画像が形成される。さらに、ファクシミリモードでは、上記画像読取手段からの画像データが図示しないファクシミリ送受信部により相手に送信され、相手からの画像データがファクシミリ送受信部で受信されて上記画像処理手段からの画像データの代りに書込みユニット118に入力されることにより、上述のプリンタエンジンにより転写紙上に画像が形成される。
次に定着装置121の構成例について図2を参照して説明する。図2は定着装置121の概略構成例を示す正面図である。本参考構成例の定着装置121は誘導加熱方式の定着装置として構成されている。まず、通常のハロゲンヒータ方式等と同様に記録材である転写紙Pの搬送経路に対して、トナーの転写された転写紙P上のトナーを加熱溶解して転写紙P上に定着させるための定着ローラ201とこの定着ローラ201に対向配置されて転写紙Pに圧力をかけてトナーを定着させるための加圧ローラ202とが設けられている。また、定着ローラ201から離間した位置には定着用加熱部材である加熱ローラ203が設けられ、これらの加熱ローラ203と定着ローラ201との間には定着ベルト204が掛け渡されている。この定着ベルト204は誘導加熱巻線=励磁コイル(以下、適宜IHコイルともいう)205によって誘導加熱されるものであり、加熱金属部(金属導電体)、非熱伝導部当を含む数層構造からなる。励磁コイル205に交流電流を流すことで定着ベルト204内部の誘導電流損失によって定着ベルト204が発熱する。即ち、励磁コイル205は定着ベルト204を渦電流で誘導加熱するためもので、本参考構成例では、外部加熱方式とされ、加熱ローラ203部分にてその外周面を半周程度覆う形状の基体6において渦巻状にコイルが巻回された構造とされている。この半周程度の励磁コイル205と加熱ローラ203との相互の対向部位により誘導加熱部207が形成されている。なお、加熱ローラ203中には、励磁コイル205からの磁束を有効に利用するための磁束制御部材(フェライトコア)208が半周程度設置されている。
ちなみに、励磁コイル205を加熱ローラ203の外周近傍に対向配置させるのに代えて加熱ローラ203内に設け(括弧書き符号205参照…この場合も、励磁コイル205と加熱ローラ203とは相互の対向部位を有する)、かつ、磁束制御部材(フェライトコア)208を加熱ローラ203の外周近傍に対向配置させて設け(括弧書き符号208参照)ることにより誘導加熱部207を形成するようにしてもよい。
このような励磁コイル205は後述するインバータ回路により任意の周波数特性を持った電流が通電され、その電流により発生した磁束を受けて加熱ローラ203には渦電流が流れ加熱される。この加熱ローラ203の熱が回転移動する定着ベルト204に伝達され、その熱と定着ローラ201、加圧ローラ202のニップ圧力により定着ローラ201と加圧ローラ202との間を回転方向に進む転写紙P上のトナーは転写紙Pに定着される。
また、定着ベルト204の温度は常に近接したサーミスタ(温度センサ)209により監視され、制御温度に対して低ければ励磁コイル205への電流供給は継続され、高ければ供給を停止する。温度制御は後述する本体制御回路で行なわれるが、制御不能で過昇温度になった場合はサーモスタット210により直接電源を遮断する安全装置も実装されている。
なお、定着ローラ201はモータ211などの動力源により回転駆動され、定着ベルト204はその動力により移動回転する。加熱ローラ203は定着ベルト204の移動により懸架駆動し回転する従動ローラである。
また、加熱ローラ203の軸上には、定着ベルト204が回転していることを検知するためのセンサとして機能するエンコーダ212が設けられており、定着ローラ201を回転させているにも関わらず加熱ローラ203が回転しない場合には、ベルト切れ、或いは、ベルト滑りと判断し、インバータ回路の動作を遮断させることで励磁コイル205でのベルト異常温度上昇による焼損を防止し得る構成とされている。
さらに、本参考構成例においては、励磁コイル205と加熱ローラ203との対向部位よりも当該加熱ローラ203の回転方向上流側直前の位置で加熱ローラ203(定着ベルト204)の表面に対向させてこの加熱ローラ203(定着ベルト204)の表面からの反射光量を受光検知する光反射型センサ213が設置されている。
なお、214は定着装置121から排紙側へ排紙搬送される転写紙Pを検出するための機械的なスイッチである。
次に、定着ベルト204や励磁コイル205やサーミスタ209を含むIHコイルユニット220に対する制御系、即ち、定着制御装置の構成例を図3及び図4に示す概略ブロック図を参照して説明する。まず、図3に示すように、本参考構成例で対象とする定着制御の他に各駆動源の駆動制御、周辺機制御、電子写真プロセス制御、省エネ制御等の画像形成装置全体の制御を司る主中央処理装置としての本体CPU221が搭載されたエンジン制御基板(本体制御回路)222が設けられている。ここに、定着ベルト204の温度を検知するサーミスタ209のセンサ信号は本体CPU221に入力され、そのA/Dコンバータによってアナログデジタル変換され、温度信号の取り込みに供され、例えば、ソフト的に温度監視を行うように構成されている。また、このサーミスタ209のセンサ信号はエンジン制御基板222に入力され、本体CPU221に依存せずハード的に定着ベルト204の高温異常を検出するための高温異常検出回路223にも入力されている。この場合、本体CPU221によるソフト監視温度<高温異常検出回路223によるハード監視温度の関係に設定されており、定着温度を二重に監視することにより、万一、ソフトが暴走しても回路を遮断できるように構成されている。この遮断処理等については後述する。
また、定着ベルト204を誘導加熱する励磁コイル205に対して電流を供給するための電源装置として機能するインバータ回路224を搭載したIH制御基板(誘導加熱制御回路)225が設けられている。インバータ回路224は交流電源を全波整流した後、IGBTやFET等のスイッチング制御素子によって高周波スイッチングした電流をコイル電流として励磁コイル205とコンデンサ(図示せず)とに供給し共振させることによって交流磁界を作り、定着ベルト204を渦電流で加熱する。このIH制御基板225上には前述の本体CPU221とは別個独立した副中央処理装置としてのIH用CPU226が搭載されている。このIH用CPU226にはサーミスタ209が接続されており、定着ベルト204の温度情報を取得可能とされている。ここに、IH用CPU226は本体CPU221から信号線227を通して送信される温度指示信号のみにより制御指示を受け、この温度指示信号と、取得した定着ベルト204の温度情報と、検知された電流検知信号及び電圧検知信号とに基づいてインバータ回路224に対する電力制御値を算出してインバータ制御信号として出力する誘導加熱制御動作を受け持つ。この温度指示信号は、基本的には、定着ベルト204の目標温度をIH用CPU226に対して与えるものであり、例えば、PWM信号で与える場合には、デューティによる温度指示換算値として与えられる。もっとも、頻繁に目標温度を変更する必要のない場合であれば、PWM信号に代えてシリアル通信信号を利用してもよい。また、インバータ制御信号はインバータ回路224における高周波スイッチングのデューティを変化させるものであり、これにより励磁コイル205に流す電流を変化させ発熱量をコントロールする。何れにしても、本参考構成例のIH用CPU226は、誘導加熱制御に関して温度制御と電力制御とを受け持つ。温度制御は、本体CPU221から指示された温度指示信号なる目標温度とサーミスタ209で検出された定着ベルト204の温度とが一致するように制御する処理であり、目標温度への追従性をよくし、偏差を少なくするためにはPI制御などが利用される。また、電力制御は、温度制御値を電力制御値に変換する処理であり、その出力値(インバータ制御信号)としてはPWM値となる。そして、インバータ回路224をPWM信号により制御することによって励磁コイル205に流れる電流を可変制御する。また、本参考構成例のIH用CPU226は、定着ベルト204の温度をサーミスタ209を通じて取得し、異常に温度が上昇した場合にはインバータ回路224の動作を停止させるためのソフト監視機能も付加されている。何れにしても、IH用CPU226としては、本参考構成例の場合、誘導加熱制御のみを行うので、本体CPU221よりも処理能力が低くてローコストなワンチップCPUを使用することができる。この場合、当該IH用CPU226の機能としては、A/Dコンバータ、インターバルタイマ、シリアル通信(UART)、I/Oの各機能を備え、さらには、ROM内蔵のものが好ましい。
また、インバータ回路224で使用されているIGBTは壊れやすいので、入力電圧、入力電圧を絶えずモニタし壊れないように制御する必要があるために、電流検知信号及び電圧検知信号が用いられるものであり、これらの信号はIH用CPU226のA/Dコンバータでアナログデジタル変換されIH用CPU226内部で処理される。
次に、本参考構成例における安全対策について図4を参照して説明する。まず、IHコイル205駆動用のインバータ回路224に対するAC供給は画像形成装置本体内に設けられている電源ユニット(PSU)231のリレー232のリレー接点232a及びIH制御基板225内に設けられているリレー233のリレー接点233aを介して行うように通電経路が設定されている。常閉のリレー接点232aはエンジン制御基板222内の本体CPU221からリレーON/OFF信号としてOFF信号が出力された時に通電されるリレーコイル232bにより強制的に開放されるように設定されている。ここに、電源ユニット231中にはメインスイッチ234を介してDC電源部235が設けられ、本体CPU221等で用いる+5V電源、直流負荷で用いる+24V電源等を生成するように構成されている。この+24V電源ラインには、画像形成装置の前ドア等を開放させた場合に安全のために当該+24Vを切るためのインタロックスイッチ236が接続されている。
一方、エンジン制御基板222中には、図3中に示したように、定着ベルト204の温度を検出するサーミスタ209からの温度信号と予め設定されている基準温度対応の基準信号とをアナログコンパレータにより比較し、基準温度以上になった場合にインバータ回路224の動作を停止させる高温異常信号を出力する高温異常検出回路223が設けられている。また、本体CPU221とIH用CPU226との間は各種情報を授受するために相互に通信を行うための信号線237によっても接続されており、本体CPU221は、ステータス授受の一つとして、IH用CPU226から当該IH用CPU226が正常に動作していることを示す確認信号を定期的に受信するように設定されている。ここに、本参考構成例では、本体CPU221がこの確認信号の受信状態によってIH用CPU226の暴走を検出し、その他のエラー信号として出力する。高温異常検出回路223からの高温異常信号と本体CPU221からのその他のエラー信号とが入力されるOR回路238が設けられている。このOR回路238の出力は、強制OFF用の加熱イネーブル信号としてIH制御基板225に出力される。IH制御基板225中には図4に示すように加熱イネーブル信号を受信して遮断信号を出力する強制オフ回路239が設けられている。この強制オフ回路239の出力側には、常閉のリレー接点233aを強制的に開放させるためのリレーコイル233bが接続されており、OR回路238から高温異常信号又はその他のエラー信号に基づく加熱イネーブル信号が出力された場合にはリレー接点233aを強制的に開放させてインバータ回路224側への電源供給を強制的に断つように構成されている。
このような構成において、本参考構成例における転写紙Pの定着部での巻き付き検出について説明する。所定タイミングで定着装置121の定着ニップ部に進入した転写紙Pは、正常な場合には、そのまま直進して排紙ユニット122側に搬送され排紙される。一方、定着ローラ201周りで剥離不充分で当該定着ローラ201(定着ベルト204)に巻き付いた場合にはそのまま定着ベルト204の回転移動に従い加熱ローラ203側まで送られ、遂には、対向配置された加熱ローラ203と励磁コイル205との間の経路(対向部位相当部分…ちなみに、励磁コイル205を加熱ローラ203内に配置し磁束制御部材(フェライトコア)208を外部に配置させた場合には、対向配置された加熱ローラ3と磁束制御部材(フェライトコア)208との間の経路)中に侵入する異常を生ずる。
ここに、このような誘導加熱部207の対向部位よりも回転方向上流側直前の位置には光反射型センサ213が設けられており、加熱ローラ203(定着ベルト204)の表面からの反射光量を適宜検出している。この際、当該部分に転写紙Pが存在する場合と存在しない場合とでその反射光量が異なるので、当該光反射型センサ213の検出出力を例えばエンジン制御基板222中の本体CPU221にA/D変換器を介して取り込み、その反射光量の変化の様子を監視することにより(状態監視手段)、誘導加熱部分に転写紙Pが侵入するような異常が生じているか否かを確実に検出することができる。誘導加熱部分に転写紙Pが侵入するような異常が検出された場合には、インバータ回路224側を強制的にオフさせるような対策により安全が確保される。
このような本参考構成例においては、定着装置121として、熱が拡散せず、極狭い範囲、即ち加熱対象部分に集中させることができる誘導加熱方式を用いているので、加熱ローラ203部分への転写紙Pの巻き付き検知のために耐熱性の低い光反射型センサ213を加熱ローラ203直近に配置させて利用することができ、よって、この光反射型センサ213により検出される反射光量の変化を監視することで当該加熱ローラ203への転写紙Pの巻き付きを簡単かつ確実に検出することができる。この結果、転写紙Pが定着装置121において正しい搬送経路に送られているか否かを検出することもできる。
この際、光反射型センサ213の検出出力は常に監視するようにしてもよいが、転写紙Pの加熱ローラ203への巻き付きが起こり得る給紙タイミングに応じた所定のタイミング時のみ当該反射光量の変化を監視させるようにすれば、語検出を防止したり、システム制御全体における効率化を図ることもできる。
[第一の実施の形態]
本発明の第一の実施の形態を図5ないし図7に基づいて説明する。前記参考構成例で示した部分と同一部分は同一符号を用いて示し説明も省略する。本実施の形態の定着装置121は図2に示す構成例に準ずるが、光反射型センサ213は省略され、かつ、IH制御基板225上に搭載するインバータ回路224として前述の非特許文献1に示される部分共振ZVS補助スイッチを用いた直列負荷共振形高周波ZCSインバータを利用するようにしたものである。
図5に部分共振ZVS補助スイッチを用いた直列負荷共振形高周波ZCSインバータを利用したインバータ回路224Aの構成例を示す。図5において、逆阻止ダイオードを持つ主スイッチS1,S2及び補助スイッチSauxにはスイッチング素子としてIGBTが用いられている。L1-Dp1,L2-Dp2は一方向性ロスレスインダクタであり、負荷インダクタL0とともに主スイッチS1,S2を流れる電流の連続性を確保することで、主スイッチS1,S2のZCSを実現している。L0-R0直列回路は励磁コイル205部分等の誘導加熱負荷系の等価直列回路であり、Csは直列負荷共振用キャパシタ(共振用コンデンサ)である。また、このCsは補助スイッチSauxのロスレススナバキャパシタとしての機能も果たす。
図6にこのようなインバータ回路224の各スイッチS1,S2,Sauxに入力されるゲートパルス信号vG1,vG2,vG3と各部定常動作波形例を示す。補助スイッチSauxを動作させない状態でインバータ電力が最小となるように設定している。
高周波インバータの入力電流i1は、誘導性負荷(L0-R0)と直列負荷共振キャパシタCsとによって決まる正弦波減衰振動電流となって負荷に供給される。このため、入力電流i0はゼロクロスするが、直列負荷共振キャパシタCsを適正なタイミングで補助スイッチSauxによりゼロ電圧クランプするように動作させると、負荷電流i0(=i1)は、直列負荷共振キャパシタCsが充電されないことから非共振動作モードとなる。この動作モードでは、負荷電流i0は正弦波減衰振動することなく誘導性負荷(L0-R0)で決まる時定数でもって増大する。補助スイッチSauxによって直列負荷共振キャパシタCsがゼロ電圧クランプされている期間が長いほど、直列負荷共振キャパシタCsの充電電流i0(=i1)がゼロクロスするタイミングが遅れ、負荷電流i0が増大する。従って、このインバータ回路224においては、高周波インバータ電力は主スイッチS1,S2のスイッチング周波数を変化させることなく、一定周波数条件下で補助スイッチSauxのPWM制御、つまり、補助スイッチSauxのゼロ電圧クランプ期間制御によって連続的に制御される。補助スイッチSauxをターンオンすると、直列負荷共振キャパシタCsが充電されることからi1(=i0)は直列共振による正弦波減衰振動電流が流れ、ゼロクロスする。入力電流i1が確実にゼロクロスできる範囲内で補助スイッチSauxの導通期間を設定することで主スイッチS1のZCSターンオフを実現している。また、補助スイッチSauxについては直列負荷共振キャパシタCsによりターンオン・ターンオフともにZVS動作が実現される。
即ち、主スイッチS1,S2のスイッチング周波数を一定周波数として、補助スイッチSauxのPWM制御によって高周波インバータ電力が連続的に制御される。これは、後述するデューティと出力との関係である。いま、直流電圧源EdにL0-R0-Csを接続した場合の電流応答から決まる直列共振角周波数ω0は、0<R0<2√(L0/Cs)の条件内であれば、正弦波減衰振動となるため、
ω0=√{(1/L0Cs)−(R0/2L0)} ……(1)
となる。この際、(1)式の根号内の第1項及び第2項は、各々1/L0Cs≒3.7×1010、R02/4L02≒6.3×108の如く設定され、第2項は第1項に比べ充分に小さく無視できるので、(1)式は次の(2)式
ω0=√(1/L0Cs) …………(2)
のように置換えることができる。
ここで、図6について補足説明すると、a〜hの9通りの動作モード中、主スイッチS1はモードaでオン、主スイッチS2はモードeでオン、補助スイッチSauxはモードhでオンする。この時の各々の電流i1,i2の波形は0から始まっており、ZCSされている。また、直列負荷共振キャパシタCsの電圧Vcsが0Vで補助スイッチSauxの電流iauxの波形が立上り、ZVSされている。i0は励磁コイル205と誘導加熱部材を一体とする等価回路であるIH−Loadに流れる負荷電流であり、これによって電力が得られる。
このような構成において、補助スイッチSauxの動作周期をT0、補助スイッチSauxのオン時間をtauxとしたときのデューティDuty=taux/T0とその時に得られる出力電力との関係を図7に示す。図7に示す特性図によれば、デューティDutyに比例して出力電力が大きくなっていることがわかる。つまり、補助スイッチSauxのデューティDutyによって出力電力を制御できることがわかる。
このような特性によれば、(2)式からも明らかなように、インダクタンス成分L0が変われば共振周波数が変わるため、PWM特性が変わることとなる。つまり、励磁コイル205と誘導加熱部材(加熱ローラ203や定着ベルト204、磁束制御部材208等)との間に物、例えば、転写紙Pが入り込めば、L0,R0の値が変化するので、補助スイッチSauxに所定のデューティDutyを与えても、所定の出力電力が得られないこととなる。
本実施の形態では、このようなインバータ回路224におけるPWM制御特性に着目し、出力電力とデューティDutyとの関係をIH用CPU226においてモニタ(監視)することで、加熱ローラ203周りへの転写紙Pの巻き付きの発生の有無(異常の有無)を判定するようにしたものである。同様にして、励磁コイル205と誘導加熱部材(加熱ローラ203や定着ベルト204、磁束制御部材208等)との間の距離が変化すれば、L0,R0の値が変化し、PWM特性が変化するので、出力電力とデューティDutyとの関係をIH用CPU226においてモニタ(監視)することで、加熱ローラ203が励磁コイル205に対して所定の位置に正しく設置されているか否かの設置位置の適否(異常の有無)も判定するようにしたものである。
この場合、両者の区別として、転写紙Pの給紙に至っていない動作開始時には当該モニタ動作により加熱ローラ203が所定の位置に正しく設置されているか否かの設置位置の適否に関する判定処理を行い、その後の動作時には途中では加熱ローラ203等に位置変動はないものとみなし、その後の実動作時には、所定のタイミングで定着ニップ部に送り込まれる転写紙Pが巻き付けにより加熱ローラ203周りに到達する可能性のある所定のタイミング時にのみ当該モニタ動作により加熱ローラ203周りへの転写紙Pの巻き付きの発生の有無(異常の有無)に関する判定処理をその都度行わせるようにすればよい。
このような処理制御を実現するため、本実施の形態では、インバータ回路224に対する制御系が例えば図5に示すように構成されている。まず、各々のスイッチS1,S2,Sauxを対応する動作モードa,e,hに応じてオンさせるためのゲートドライバ251,252,253が設けられており、基本的には、マイクロコンピュータとしてのIH用CPU226内の制御回路254によりタイミング制御される。ここに、補助スイッチSauxはPWM制御によりオン・オフ制御されるため、ゲートドライバ253に対してはPWM信号を出力するIH用CPU226内蔵のパルス幅制御手段255によって制御される。つまり、制御回路254はパルス幅制御手段255に対してPWM信号をコマンドとして出力する。さらに、補助スイッチSaux部分に流れる電流iauxを検出する電流検出回路256や直列負荷共振キャパシタCsの両端電圧Vcsを検出する電圧検出回路257も設けられ、各々の検出電流、検出電圧がIH用CPU226内においてA/D変換器258,259を介して取り込まれ、演算回路260において必要な演算処理、例えば出力電力を算出する演算処理が施され、制御回路254等に付与される構成とされている。
このような構成において、当該装置の動作開始時の初期制御としては、制御回路254はゲートドライバ251,252,253等を介して主スイッチS1,S2を一定周波数で駆動させる一方補助スイッチSauxをPWM制御によりオン・オフ駆動させることによりインバータ回路224としての動作を開始させる。この時の電流iaux、電圧Vcsを各々検出回路256,257により検出し、検出された電流iaux、電圧Vcsに関して演算回路260で演算処理することによりこの時の出力電力を算出し、この出力電力が予め設定されている所定の出力電力に一致するようにパルス幅制御手段255は補助スイッチSauxに対するPWM制御を行い、適宜パルス幅を可変設定する。そして、所定の出力電力となるように制御された状態で、その時のPWM制御状態としてデューティ、即ち、補助スイッチSauxをPWM制御するパルス幅の値を制御回路254においてモニタする(監視する)(状態監視手段)。ここに、通紙前の動作開始時の初期制御においては、加熱ローラ203の設置位置の適否を判定するものであり、加熱ローラ203と励磁コイル205等との位置関係(距離)が適正であれば予め設定されているL0,R0に変更がなく補助スイッチSauxに対するPWM制御にも変更がなく(或いは、殆どなく)、パルス幅の制御としては所定のパルス幅範囲内に収まるため、制御回路254は加熱ローラ203の設置位置が正常であると判定し、後続の処理に移行する。
一方、加熱ローラ203が励磁コイル205等に対して適正な位置に設置されておらず、例えば離れすぎていたりすると、予め設定されているL0,R0に変化が生じ、所定の出力電力を得るために補助スイッチSauxに対するPWM制御に変更が生じ、パルス幅の制御が所定のパルス幅範囲を超えることとなるため、制御回路254は加熱ローラ203の設置位置が適正ではないと判定し、インバータ回路224に対する通電停止等の異常時処理を行い、加熱ローラ203等の位置設定のし直し等を促す。
このような動作開始時の初期制御を経た後、実際の画像形成動作実行時においては、制御回路254はゲートドライバ251,252,253等を介して主スイッチS1,S2を一定周波数で駆動させる一方補助スイッチSauxをPWM制御によりオン・オフ駆動させることによりインバータ回路224としての動作を開始させる。この時の電流iaux、電圧Vcsを各々検出回路256,257により検出し、検出された電流iaux、電圧Vcsに関して演算回路260で演算処理することによりこの時の出力電力を算出し、この出力電力が予め設定されている所定の出力電力に一致するようにパルス幅制御手段255は補助スイッチSauxに対するPWM制御を行い、適宜パルス幅を可変設定する。そして、所定の出力電力となるように制御された状態で、定着位置に対する給紙タイミングに応じた所定のタイミングにおいて、その時のPWM制御状態としてデューティ、即ち、補助スイッチSauxをPWM制御するパルス幅の値を制御回路254においてモニタする(監視する)(状態監視手段)。ここに、画像形成動作時の制御においては、加熱ローラ203に対する転写紙Pの巻き付きの有無(記録材の侵入の有無)を判定するものであり、加熱ローラ203と励磁コイル205等との間に物(転写紙P)の侵入がなければ予め設定されているL0,R0に変更がなく補助スイッチSauxに対するPWM制御にも変更がなく(或いは、殆どなく)、パルス幅の制御としては所定のパルス幅範囲内に収まるため、制御回路254は加熱ローラ203に対する転写紙Pの巻き付きはない(記録材の侵入はない)と判定し、後続の画像形成処理に移行する。
一方、加熱ローラ203周りに対して転写紙Pの巻き付きが生ずると、予め設定されているL0,R0に変化が生じ、所定の出力電力を得るために補助スイッチSauxに対するPWM制御に変更が生じ、パルス幅の制御が所定のパルス幅範囲を超えることとなるため、制御回路254は加熱ローラ203周りに転写紙Pの巻き付きが生じていると判定し、インバータ回路224に対する通電停止等の異常時処理を行い、巻き付いた転写紙Pの取り除き処理等を促す。
なお、本実施の形態では、IH用CPU226に内蔵のパルス幅制御手段255や状態冠手段(制御回路254)を利用するようにしたが、このようなCPUを利用する構成・方法に限らず、例えば補助スイッチSauxに対するPWM制御におけるパルス幅(デューティ)の値を積分回路等を通じて検出し、検出されたパルス幅(デューティ)の値を比較器において所定の基準値と比較することにより、上記のような判定を行わせるようにしてもよい。
また、本実施の形態では、PWM特性の変化を利用して、加熱ローラ203周りへの転写紙Pの侵入(巻き付け)の有無、加熱ローラ203の設置位置の適否を監視・判定するようにしたが、これらの要因により補助スイッチSauxの共振周波数が変化すれば当該補助スイッチSauxの電流iauxの波形や電圧Vcsの波形が変化するので、これらの電流iaux又は電圧Vcsを出力状態に関する情報として検出回路256又は257により検出し、A/D変換器258,259を介してIH用CPU226内に取り込み、これらの値が予め設定されている正常時の所定の出力範囲内にあるか否かをモニタ(監視)することで、これらの異常の有無を判定するようにしてもよい。この際、電流iauxと電圧Vcsとを同時にIH用CPU226内に取り込み、演算回路260による演算処理で出力電力値を算出し、出力状態としてこの出力電力値が所定の出力範囲内にあるか否かをモニタ(監視)するようにしてもよい。この場合についても、IH用CPU226のA/D変換器258,259等を用いずに、OPアンプ等を用いたアナログ回路構成の下に所定値と比較することで出力状態(出力電流又は出力電圧)をモニタ(監視)し、これらの異常の有無を判定するようにしてもよい。
[第二の実施の形態]
本発明の第二の実施の形態を図8に基づいて説明する。前記参考構成例で示した部分と同一部分は同一符号を用いて示し説明も省略する。本実施の形態の定着装置121は図2に示す構成例に準ずるが、光反射型センサ213は省略され、かつ、IH制御基板225上に搭載するインバータ回路224及びその制御回路として特許文献4に示されるような共振用コンデンサを備えて誘導加熱制御をPWM方式で行うインバータ回路224B及びその制御回路を利用するようにしたものである。
図8に示す回路構成について説明する。インバータ回路224Bに給電する直流電源回路271は、交流入力回路272の出力を整流するとともに、その整流出力を平活用チョークコイル273を介して直流電源ライン間に与えるように構成され、この直流電源ライン間には平滑コンデンサ274が接続されている。インバータ回路224Bは、例えばシングルエンド方式とされ、直流電源ライン間に励磁コイル205及びIGBTによるスイッチング素子275のコレクタ・エミッタ間を直列に接続するとともに、フライホイールダイオード276をスイッチング素子275と逆並列状態に接続し、さらに、励磁コイル205と並列に共振用コンデンサ277を接続することにより構成されている。
制御回路(IH用CPU226)側は、インバータ回路224Bのスイッチング素子275をPWMパルス並びに駆動回路278を介してオン・オフ制御するもので、例えば、電圧検出回路279が検出した励磁コイル205/スイッチング素子275間の接続点の電圧(即ち、共振電圧)の0VのタイミングでPWMパルスの1周期の始点を定め、この始点でスイッチング素子275をオンさせる。即ち、電圧検出回路279が与える共振電圧の0Vのタイミングで発振回路280がオン指示パルスを発生して出力制御回路281に与える。
電流検出回路282はインバータ回路224B内の電流トランス283の電流検出電圧に基づいてスイッチング素子275のスイッチ電流を検出するとともにその検出電流値に応じた電圧レベルの電流検出信号Sinを出力制御回路281と平滑電流検出レベル回路284とに与える。
平滑電流検出レベル回路284は電流検出信号Sinを平滑化して電流検出信号Sinの時系列包絡レベルを表す電圧を発生して出力制御回路281に与えるが、ここではその詳細は省略する。
回生電流検出回路285は、フライホイールダイオード276に流れる電流を検出するように介在された電流トランス286の誘起電圧に基づいて回生電流を検出し、回生電流レベルに比例する電圧の回生電流検出信号Skを出力制御回路281に与える。
さらに、サーミスタ209が定着ベルト204の温度を検出し、温度信号を演算回路287に与える。演算回路287は、予め設定されている目標温度(データ)に対する検出温度の偏差を算出し、温度偏差信号Srefを出力制御回路281に与える。ここで、温度偏差信号Srefは目標温度に対して検出温度が低いほど低く、検出温度が高くなるに従い高くなる電圧として与えられる。
このような構成において、その動作制御例の詳細は、特許文献4に記載されているため、省略するが、回生電流検出回路285により検出される回生電流の値は、特許文献4中の図10等に示されているように、加熱対象とその材質とに依存して変化する。この原理を利用すれば、励磁コイル205と加熱ローラ203との間に異物、例えば転写紙Pが侵入すれば(巻き付けば)、転写紙Pがない場合とで、回生電流の値が変化することが判る。そこで、本実施の形態では、このような原理を利用し、インバータ回路224Bの出力状態として回生電流を回生電流検出回路285(出力状態検出手段)により検出し、検出された回生電流の値が所定の出力範囲内にあるか否かを出力制御回路281(状態監視手段)により監視することで、加熱ローラ203周りへの転写紙Pの巻き付きの有無を判定するようにしたものである。
また、励磁コイル205の近くに加熱対象が存在しない場合には電力消費がないので、過大な回生電流が流れる。この原理を利用すれば、励磁コイル205と加熱ローラ203との間の距離が正規の位置関係でなく、例えば、加熱ローラ203の設置位置が励磁コイル205から離れているような場合には、正規の位置設定の場合とで、回生電流の値が変化することが判る。そこで、本実施の形態では、このような原理を利用し、インバータ回路224Bの出力状態として回生電流を回生電流検出回路285(出力状態検出手段)により検出し、検出された回生電流の値が所定の出力範囲内にあるか否かを出力制御回路281(状態監視手段)により監視することで、加熱ローラ203の設置位置の適否を判定するようにしたものである。
さらに、図8に示す制御系でも、スイッチング素子275に対してPWM制御を用いているので、前述の第一の実施の形態の場合と同様に、出力制御回路281から出力されるこのPWM信号のデューティ(パルス幅)と出力との関係をモニタ(監視)し、加熱ローラ203周りへの転写紙Pの巻き付けの有無や加熱ローラ203の設置位置の適否を当該デューティ(パルス幅)が所定のパルス幅範囲内に収まっているか否かにより判定することもできる。