以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下では本発明の一実施形態としてレーザビームプリンタを例にとって説明する。ただし、本発明はレーザビームプリンタに限定されるものではなく、電子写真プロセスを使用した画像形成装置全般に適用することができる。
<本実施形態のレーザビームプリンタの概略構成例>
図1は、本発明の実施形態に係るレーザビームプリンタ100の概略構成を示す図である。このレーザビームプリンタ100は、黒画像(Bk),イエロー画像(Y),マゼンタ画像(M),シアン(C)画像の各色ごとに画像形成部を設けている、いわゆるタンデムタイプのプリンタである。
それぞれの画像形成部は、感光体ドラム18、感光ドラムを一様に帯電する一次帯電器16、感光体ドラム上に潜像を形成するスキャナユニット11、潜像を現像して可視像とする現像器14、可視像を転写紙に転写する転写器19、感光体の残留トナーを除去するクリーニング装置15等で構成される。尚、参照番号の最後は、a:イエロー、b:マゼンタ、c:シアン、d:ブラックの構成要素を表わしている。
(スキャナユニット:図2)
ここで、スキャナユニット11の構成について説明しておく。図2は、スキャナユニット11の構成を示す図である。
パーソナルコンピュータ等の図示しない外部機器からの画像形成指示があると、レーザビームプリンタ100内のコントローラ(図示せず)において、画像情報が露光手段であるレーザビームをオン/オフするための画像信号(VDO信号)101に変換される。この画像信号(VDO信号)101は、スキャナユニット11内のレーザユニット102に入力される。103は、レーザユニット102によりオン/オフ変調されたレーザビームである。104は、回転多面鏡(ポリゴンミラー)105を定常回転させるスキャナモータである。106は、ポリゴンミラーによって変更されたレーザビーム107を、被走査面である感光ドラム108上に焦点を結ばせる結像レンズである。
この構成により、画像信号101により変調されたレーザビーム103が感光ドラム108上を水平走査(主走査方向への走査)し、感光ドラム108上に潜像が形成される。
109はビーム検出口で、スリット状の入射口よりビームを取り入れる。この入射口より入ったレーザビームは、光ファイバ110内を通って光電変換素子111に導かれる。光電変換素子111により電気信号に変換されたレーザビームは、増幅回路(図示しない)により増幅された後、水平同期信号となる。
説明を図1に戻す。カセット22から給紙される記録媒体としての転写紙は、画像形成部とタイミングをとるために、レジストローラ21で待機する。
また、レジストローラ21の近傍には、給紙された転写紙の先端を検知するためのレジセンサ24が設けてある。画像形成部を制御する画像形成制御部(以下の画像形成制御回路に相当)は、レジセンサ24の検出結果により、紙の先端がレジストローラ21に到達したタイミングを検知する。上の先端を検知すると、1色目(図の例ではイエロー色)の像を、像担持体である感光ドラム18a上に形成するとともに、定着器23のヒータ(本例では、以下の定着ベルト501)温度が所定の温度になるよう制御する。
29は吸着ローラであり、このローラの軸に吸着バイアスを印加し、転写紙を搬送ベルト20上に静電的に吸着させる。
レジストローラ21で待機した転写紙は、レジセンサ24の検出結果と像形成プロセスとのタイミングをとって、各色画像形成部を貫通するように配置された転写ベルト20上を搬送されるとともに、転写器19aにより1色目の画像が転写紙上に転写される。
同様に、2色目(図の例ではマゼンタ)の像は、レジセンサ24の検出結果と、2色目像形成プロセスとのタイミングをとって、転写ベルト20上を搬送される転写紙上の、1色目の像の上に重畳転写される。以降同様に、3色目(図の例ではシアン)の像,4色目(図の例では黒色)の像が、各像形成プロセスとのタイミングを取って、転写紙上に順次重畳転写される。
そして、トナー画像が転写された転写紙は定着器23へと搬送され、その転写紙が定着器23におけるニップ部N(詳細は後述する)を通過することにより、トナーが加圧、加熱されて転写紙に溶融定着される。定着器23を通過した転写紙は機外に排紙されフルカラーの画像形成が終了する。
(定着器の構成例:図3乃至図5)
本実施形態における定着器23では、ハロゲンランプを熱源として用いた熱ローラ方式よりも高効率な、電磁誘導加熱方式を採用する。ここでは、図3乃至図5を参照して定着器23の構造例を説明する。尚、図3は定着器23の要部の横断面構造を示す構成図、図4は定着器23の要部の正面構造を示す構成図、図5は定着器23を構成する定着ベルトガイド部材を示す斜視図である。
501は、電磁誘導発熱層(導電体層、磁性体層、抵抗体層)を有する電磁誘導発熱性の回転体としての円筒状の定着ベルトである。この定着ベルト501の具体的な構造例については後述する。
516aは横断面略半円弧状樋型のベルトガイド部材であり、円筒状の定着ベルト501はこのベルトガイド部材516aの外側にルーズに外嵌させてある。 ベルトガイド部材516aは基本的に以下の役目を果たす。
(1) 後述する加圧ローラ530との圧接により形成される定着ニップ部Nへの加圧、
(2) 磁場発生手段としての励磁コイル506および磁性コア505の支持、
(3) 定着ベルト501の支持、
(4) 定着ベルト501の回転時の搬送安定性の確保。
これらの役目を果たすため、ベルトガイド部材516aには、高い荷重に耐えられ、絶縁性に優れ耐熱性のよい材質のものを使用することが望ましい。例えば、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂、LCP樹脂などを選択するとよい。
ベルトガイド部材516aは、磁場発生手段としての磁性コア(芯材505a,505b,505cによりT字型に構成される)と励磁コイル506を内側に保持している。また、ベルトガイド部材516aには、図3に示すように、紙面垂直方向長手の良熱伝導部材(例えばアルミニウム材)540がニップ部Nの加圧ローラ530との対向面側で、定着ベルト501の内側に配設してある。良熱伝導部材540は、長手方向の温度分布を均一にする効果がある。
図4に示されるフランジ部材523a,523bは、ベルトガイド部材516aのアセンブリの左右両端部に外嵌している。そして、ベルトガイド部材516aの左右位置を固定しつつ回転自在に取り付け、定着ベルト501の回転時にその定着ベルト501の端部を受けて定着ベルト501のベルトガイド部材長手方向に沿う寄り移動を規制する役目をする。
530は加圧部材としての弾性加圧ローラであり、定着ベルト501を挟ませてベルトガイド部材516aの下面と所定の圧接力をもって所定幅の定着ニップ部Nを形成させて相互圧接させてある。ここで、上記磁性コア505は、定着ニップ部Nに対応位置させて配設してある。加圧ローラ530は、芯金530aと、芯金530a周りに同心一体にローラ状に形成被覆させた、シリコンゴム、フッ素、フッ素樹脂などの耐熱性・弾性材層530bとで構成されている。この加圧ローラ530は、芯金530aの両端部を装置の不図示のシャーシ側板金間に回転自在に軸受け保持させて配設してある。加圧用剛性ステー510の両端部と装置シャーシ側のバネ受け部材529a,529bとの間にそれぞれ加圧バネ525a,525bを縮設することで、加圧用剛性ステー510に押し下げ力を作用させている。これにより、ベルトガイド部材516aの下面と加圧ローラ530の上面とが定着ベルト501を挟んで圧接して所定幅の定着ニップ部Nが形成される。
加圧ローラ530は、駆動モータMにより矢示の反時計方向に回転駆動される。この回転駆動による加圧ローラ530と定着ベルト501の外面との摩擦力によって、定着ベルト501に回転力が作用する。これにより、定着ベルト501は、その内面が定着ニップ部Nにおいてベルトガイド部材516aの下面に密着して摺動しながら、矢示の時計方向に加圧ローラ530の回転周速度に略対応した周速度をもってベルトガイド部材516aの外回りを回転する(加圧ローラ駆動方式)。また、図5に示すように、ベルトガイド部材516aの周面に、その長手に沿い所定の間隔を置いて凸リブ部516eを形成具備させている。これにより、ベルトガイド部材516aの周面と定着ベルト501の内面との接触摺動抵抗を低減させて定着ベルト501の回転負荷を少なくしている。
励磁コイル506は、コイル(線輪)を構成させる導線(電線)として、一本ずつがそれぞれ絶縁被覆された銅製の細線を複数本束ねたもの(束線)を用い、これを複数回巻いて励磁コイルを形成している。絶縁被覆は、定着ベルト501の発熱による熱伝導を考慮して耐熱性を有する被覆を用いるのがよい。例えば、アミドイミドやポリイミドなどの被覆を用いるとよい。励磁コイル506には外部から圧力を加えて密集度を向上させてもよい。
励磁コイル506の形状は、図3に示すように、発熱層の曲面に沿うようにしている。本実施形態では、定着ベルト501の発熱層と励磁コイル506との間の距離は略2mmになるように設定した。
磁性コア505a,505b,505c及び励磁コイル506と定着ベルト501の発熱層との間の距離をできる限り近付けた方が、磁束の吸収効率が高い。この距離が5mmを超えるとこの効率が著しく低下するため、5mm以内にするのがよい。また、5mm以内であれば定着ベルト501の発熱層と励磁コイル506との距離が一定である必要はない。励磁コイル506の励磁コイル保持部材としてのベルトガイド部材516aからの引出線、すなわち506a,506b(図5)については、束線の外側に絶縁被覆を施している。
励磁コイル506は、図8及び図9で後述する定着制御回路(励磁回路)から供給される交番電流によって交番磁束を発生する。図6は、交番磁束の発生の様子を模式的に表した図である。
磁束Cは発生した交番磁束の一部を表す。磁性コア505a,505b,505cに導かれた交番磁束Cは、磁性コア505a,505cと、磁性コア505a,505bにより、図3のSa,Sbの領域に集中的に分布し、定着ベルト501の電磁誘導発熱層1に渦電流を発生させる。この渦電流は、電磁誘導発熱層1の固有抵抗によって電磁誘導発熱層1にジュール熱(渦電流損)を発生させる。
ここでの発熱量Qは、電磁誘導発熱層1を通る磁束の密度によって決まり、図6の右側のグラフのような分布を示す。図6の右側のグラフは、縦軸が磁性コア505aの中心を0とした角度θで表した定着ベルト501における円周方向の位置を示し、横軸が定着ベルト501の電磁誘導発熱層1での発熱量Qを示す。ここで、発熱域H(図3のSa,Sbの領域に対応する)は、最大発熱量をQとした場合、発熱量がQ/e以上の領域と定義する。これは、定着に必要な発熱量が得られる量である。
定着ニップ部Nの温度は、温度センサ405,406を含む温調系により励磁コイル506に対する電流供給が制御されることで、所定の温度が維持されるように温調される。図3及び図4に示される温度センサ405は、例えば、定着ベルト501の温度を検知するサーミスタなどで構成され、本実施形態においては、温度センサ405で測定した定着ベルト501の温度情報を基に、定着ニップ部Nの温度を制御するようにしている。
(定着ベルトの構成例)
図7は、定着ベルト501の層の構成例を示す図である。
定着ベルト501は、図7に示すように、基層となる電磁誘導発熱性の金属ベルト等で構成された発熱層501Aと、その外面に積層した弾性層501Bと、その外面に積層した離型層501Cとの複合構造となっている。発熱層501Aと弾性層501Bとの間の接着、弾性層501Bと離型層501Cとの間の接着のため、各層間にプライマ層を設けてもよい。略円筒形状である定着ベルト501において、発熱層501Aが内面側であり、離型層501Cが外面側である。
上述したように、発熱層501Aに交番磁束が作用することで発熱層501Aに渦電流が発生して発熱層501Aが発熱する。その熱が弾性層501B,離型層501Cを介して定着ベルト501を加熱し、定着ニップ部Nに通紙される被加熱材としての被記録材Pを加熱して、トナー画像の加熱定着がなされる。
(定着器の動作例)
本実施形態における定着器23の構造は概ね上記のとおりであるが、その動作の概略は次のとおりである。
加圧ローラ530が回転駆動され、それに伴って円筒状の定着ベルト501がベルトガイド部材516aの外回りを回転する。そして、励磁回路から励磁コイル506への給電により上記のように定着ベルト501の電磁誘導発熱がなされて、定着ニップ部Nが所定の温度に立ち上がって温調された状態となる。この状態で、図1の転写ベルト20により搬送された、未定着トナー画像tが形成された転写紙が、定着ニップ部Nの定着ベルト501と加圧ローラ530との間に、画像面が上向き、即ち定着ベルト面に対向して導入される。次に、定着ニップ部Nにおいて画像面が定着ベルト501の外面に密着して、定着ベルト501と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送されていく。この定着ニップ部Nを定着ベルト501と一緒に転写紙が挟持搬送されていく過程において、電磁誘導発熱で加熱された定着ベルト501により転写紙上の未定着トナー画像tが加熱定着される。転写紙は、定着ニップ部Nを通過すると、回転中の定着ベルト501の外面から分離して排出搬送されていく。
なお、本実施形態ではトナーに低軟化物質を含有させたトナーを使用したため、定着器23にオフセット防止のためのオイル塗布機構を設けていないが、低軟化物質を含有させていないトナーを使用した場合には、オイル塗布機構を設けてもよい。また、低軟化物質を含有させたトナーを使用した場合にもオイル塗布や冷却分離を行ってもよい。
<本実施形態の給電制御系の構成例>
図8は、本実施形態におけるレーザビームプリンタ100の給電制御系の構成を示す図である。
商用電源301からの交流電圧は、定着器23に交番電流を供給する励磁回路(誘導加熱制御部)として機能する定着制御回路330と、スイッチング電源回路470とに供給されるような構成となっている。スイッチング電源回路470は、商用電源の交流電圧を画像形成部等で使用する24V等の直流電圧に降圧して供給している。スイッチング電源回路470からの出力電圧Veは画像形成を制御する画像形成制御回路316を動作させるための電圧、出力電圧Vaは負荷460に電圧を供給している。
ここで、負荷460とは、発熱体としての励磁コイル506以外の画像形成部における負荷のことであり、例えば4つの感光体ドラム18a〜18dをそれぞれ個別に駆動する4つのDCブラシレスモータ(図示せず)、搬送ベルト20を駆動する1つのDCブラシレスモータ(図示せず)を含む。これらの計5個のDCブラシレスモータは、感光体ドラム18と当接したベルト20の表面が擦れないように、画像形成制御回路316により同時に回転駆動/停止の制御がなされる。また、これらのモータが駆動力を供給する感光体ドラム18a〜18d等は、レーザビームプリンタ100の使用し始めと耐久後とでそのトルクが変動することが分かっている。従って、DCブラシレスモータのトルクや供給する電力も耐久後のトルクアップを見越して設計する必要がある。
456は充電回路であり、スイッチング電源回路470から供給された電圧Vaを受け、画像形成制御回路316からの充電指令により、所定電圧Vb(ここではVb≒Va)を蓄電器455に供給する。蓄電器455は、例えば複数個の電気二重層コンデンサ素子で構成され、充電回路は蓄電器455を所定電圧Vc(≒Vb)に充電する。電気二重層コンデンサは、その容量が数F以上と大きく、二次電池と比べて充電効率が良く長寿命であるため、近年多くの分野において注目されている素子である。
蓄電器455の充電電圧Vcは、蓄電器電圧検出回路457によって検出され、その検出結果は、例えばアナログ信号として画像形成制御回路316内にあるCPU(後述の図13A参照)のA/Dポートに送信される。画像形成制御回路316は、この蓄電器電圧検出回路457の検出結果に応じて充電回路456への充電要否の判断を行う。
定電圧制御回路458は例えばスイッチング方式の昇圧コンバータであり、蓄電器455の充電電圧Vcを、負荷460の駆動に必要な電圧Vd(Vd≒Va−Vf,ただし、 Vd>Vc, Vf=ダイオード453の順方向電圧:約0.6V)に昇圧制御する。電圧Vdは、スイッチ463を介して負荷460に供給され、モータの駆動等に用いられる。スイッチ463は、商用電源301または蓄電器455のいずれかを負荷460への電力供給源として選択する選択手段として機能する。すなわち、スイッチ463をオフにすれば、商用電源301が負荷460への電力供給源となり、逆にスイッチ463をオンにすれば、蓄電器455が負荷460への電力供給源となる。スイッチ463にはオン/オフ耐久性の理由から、FET等の半導体スイッチを使用するのが好ましいものの、オン/オフ回数などの寿命が問題なければリレー等のメカニカルスイッチを用いても構わない。また、ダイオード453は、蓄電器455から定電圧制御回路458を介して電圧Vdを供給している際に、スイッチング電源回路470からの出力Vaが負荷460へ供給されないようにするものである。
<定着制御回路330の構成>
まず、図3の定着器23の構成図を参照されたい。本実施形態では、図3に示すように、定着ベルト501の発熱域Sa(図6の発熱域Hに対応する)に対向する位置に温度検知素子としてのサーモスイッチ502を非接触で配設している。
定着制御回路330は、例えば暴走時の励磁コイル506への給電を遮断すべく、このサーモスイッチ502の動作に応じて励磁コイル506への給電を制御する。ここではサーモスイッチ502のオフ動作温度を220℃に設定した。また、サーモスイッチ502と定着ベルト501との間の距離は略2mmとした。これにより、定着ベルト501にサーモスイッチ502の接触による傷が付くことがなく、耐久による定着画像の劣化を防止することができる。
なお、この温度検知素子としては、サーモスイッチ502の代わりに温度ヒューズ等を用いてもよい。
図9は、本実施形態における定着制御回路330の構成を示すブロック図である。この定着制御回路330は、サーモスイッチ502を+24VDC電源及びリレースイッチ303に直列に接続している。サーモスイッチ502が切れるとリレースイッチ303への給電が遮断され、リレースイッチ303がオープンして定着制御回路330への給電が遮断されることにより、励磁コイル506への給電を遮断するという構成をとっている。
図9に示した定着制御回路330の構成をその動作と共に詳述する。整流回路304は、交流入力から両波整流を行うブリッジ整流回路と高周波フィルタを行うコンデンサとで構成されている。第1および第2のスイッチ素子308,307はそれぞれ電流のスイッチングを行う。カレントトランス(CT)311は、第1および第2のスイッチ素子308、307でスイッチングされたスイッチング電流を検出するトランスである。
先述したとおり、定着器23には、励磁コイル506、温度検出サーミスタ405,406、過昇温を検出するサーモスイッチ502が設けられている。
ドライバ回路315は、ゲートトランス306,305をそれぞれ介して第1および第2のスイッチ素子308,307を駆動する。このドライバ回路315は、カレントトランス311の出力電圧をフィルタリングするフィルタ325、発振回路328、コンパレータ等の比較器327、基準電圧Vs供給部326、クロック生成部329で構成される。クロック生成部329は、温調制御を行うためのクロックを生成する。同時に、定着ベルト501と加圧ローラ530との相互圧接部の検出温度が規定温度を超過した場合に、画像形成制御部316からの信号により励磁コイル506への駆動パルスを停止し、定着器23への電力供給を停止する制御を行っている。
画像形成制御回路316は、定着器23に設けられているサーミスタ405,406の温度検出値に基づき、目標温度と比較しながら制御量をコントロールする。ドライバ回路315は、画像形成制御回路316からの制御信号を受けて、ゲートトランス305,306へのスイッチングクロックを生成し、高周波インバータ装置の制御形態に相応しい制御を行う。
第1および第2のスイッチ素子308,307としては、パワー用電力スイッチ素子が最適であり、FETもしくはIGBT(+逆導通ダイオード)により構成されている。第1および第2のスイッチ素子308,307は共振電流を制御するため、定常時の損失及びスイッチ損失が小さいもので、なおかつ高耐圧、大電流タイプのものがよい。
電源ライン入力端子301から交流入力電源を受け、リレー303を介して整流回路304に交流電源が印加されると、この整流回路304の両波整流ダイオードにより脈動化直流電圧が生成される。その後、第2のスイッチ素子307がスイッチングを行うようにゲート制御トランス305をドライブすることにより、励磁コイル506と共振コンデンサ309で構成された共振回路に交流パルス電圧が印加される。この結果、第1のスイッチ素子308の導通時には励磁コイル506に脈動化直流電圧が印加され、励磁コイル506のインダクタンスと抵抗とにより定まる電流が流れ始める。ゲート信号に従って第1のスイッチ素子308がターンオフすると、励磁コイル506は電流を流し続けようとする。そのため、励磁コイル506の両端に共振コンデンサ309と励磁コイル506とにより定まる共振回路の尖鋭度Qにより、フライバック電圧と呼ばれる高電圧が発生する。この電圧は電源電圧を中心に振動し、そのままオフ状態を保っておくと電源電圧に収束する。
フライバック電圧のリンギングが大きく、第1のスイッチ素子308のコイル側端子の電圧が負になる期間は逆導通ダイオードがターンオフし、電流が励磁コイル506に流入する。この期間中、励磁コイル506と第1のスイッチ素子308の接点は0Vにクランプされることになる。このような期間に第1のスイッチ素子308をオンすれば、第1のスイッチ素子308は電圧を背負うことなくターンオン可能なことが一般に知られており、ZVS(Zero Voltage Switching)と呼ばれている。このような駆動方法により第1のスイッチ素子308のスイッチングに伴う損失を最小とすることができ、効率の良い、ノイズの少ないスイッチングが可能になる。
次に、図9のカレントトランス311を用いた励磁コイル506の電流の検出について説明する。検出波形の一例を図10に示す。
カレントトランス311は、第1のスイッチ素子308のエミッタ(FETの場合はドレイン)から整流回路304のマイナス端子及び整流回路304の後段のフィルタコンデンサ(図示略)へ流れる電流を検出すべく構成されている。1:nの巻線を有するカレントトランス311の1ターン側にパワー側の電流を流し、nターン側に設けた検出抵抗により電圧情報として検出する。スイッチング電流波形は、図10のように、スイッチング周波数(20k〜500kHz)に対応した鋸歯状波を示しており、その電流ピーク値の包絡線は商用周波数(例えば50Hz)の正弦波を全波整流した形となっている。
カレントトランス311で検出した検出電流は、フィルタ325においてピークホールド整流される。フィルタ325でフィルタリングされた電流検出(電圧)値は比較器327の(−)入力端子へ、所定の基準電圧Vs326は比較器327の(+)入力端子へそれぞれ送信され、比較器327により双方の値を比較する。比較器327は、電流検出値が基準電圧Vs326よりも大きい場合には、基準電圧Vs326に対応する電流以上に大きなスイッチング(ピーク)電流が流れないように、ローレベルをクロック生成部329へ出力する。したがって、クロック生成部329からゲートトランス305,306へ送信されるクロックのオン時間が、パルスバイパルスで制限されスイッチング(ピーク)電流が制限される。
図11は、図10に示したAの時間範囲について拡大表示したものである。
この例では、第1のスイッチング素子308を駆動するパルスのオン時間がtonaの場合、流れるスイッチング電流の検出電圧のピーク値は、所定電圧Vsに達していない。一方、定着器23への投入電力が増加した場合等において、オン時間がtonbとなった場合、この例では、流れるスイッチング電流の検出電圧のピーク値は、所定電圧Vsに達している。このため、クロック生成部329は、比較器327からの出力によりオン時間がtonbよりも長くならないように制限をかけている。つまり、スイッチング電流のピーク値を所定値に抑えることで、定着器23に投入される電力の最大電力を制限するリミッタ動作を行う構成となっている。大電流が流れる場合等、異常電流検出時はこのような保護を行っている。
次に、定着器23に投入される最大電力(初期電力)の電圧依存性について説明する。電流制御を全く行わない系においては、ACライン電圧に対し出力電力はACライン電圧の2乗で変動していくことになる。これに対し、電流検出によりリミットをかける本構成によれば、出力電力を入力電圧に線形依存するようにすることができる。
このような回路を構成し、実験を行った結果を図12に示す。
図12の「制御無し領域」は、電流制御を行わない場合の実験結果であり、入力電圧の2乗で電力変化がみられ、電源電圧による電力依存性が大きい。一方、「ピーク一定制御領域」は、レーザビームプリンタ100に用いられる電圧を含む入力電圧範囲内において、検出したピーク電流が一定になるよう制御した場合の実験結果である。図12より、電源電圧による電力変動が少ないことを示している。つまり、検出したピーク電流に基づいて電力制御回路の最大出力値を制御することにより、ACライン電流検出結果により電力制御幅の最大値(最大投入可能電力)を制御し、最大供給可能な電力がACライン電圧に依存し難くなるよう制御している。
電流を検出し電力を制御するということから、定着器23の励磁コイル506に電流を流す時間、即ち第1のスイッチ素子308のオンしている時間の最大値は、ACラインを流れる電流と供給可能な電力とにより定める。画像形成制御回路316からの制御信号はその時間の最大値を超えない範囲となっている。また、最小時間についても規定する構成をとってよい。
<本実施形態の電力制御動作例>
(電力制御の概略)
以下では、本実施形態における電力制御について説明する。
画像形成装置は一般に大電力を消費する。その電力消費の多くは、定着器によるものである。そこで、動作モードとして、プリント要求の待機状態が一定時間以上続いた場合に、定着器への供給電力を落として待機するいわゆる省エネルギーモードあるいはスリープモードに移行する、という電力制御が行われるのが一般的である。本実施形態におけるレーザビームプリンタ100も、動作モードとしてこの省エネルギーモードを有している。省エネルギーモードでは、当然、定着器の温度は下がる。そうすると、電源スイッチ投入時だけでなく、省エネルギーモードから復帰する時(通常モードに移行する時)にも、定着器が冷えていると考えられる。定着器が冷えた状態からスタンバイ状態の温度に達するまでの時間(ウォームアップ時間)を短縮することが課題となっていることは先述したとおりであるが、この課題は以下に説明する本実施形態の電力制御によって解決される。
画像形成制御回路316は、まず、省エネルギーモード時あるいは蓄電器455からの電力供給が不要な時は、スイッチ463をオフにするとともに、充電回路456を動作させて蓄電器455を充電しておく。
一方、電源投入または省エネルギーモードからの復帰でプリント要求を受けた時や画像形成動作開始時等の定着器23を使用する際には、画像形成制御回路316は、スイッチ463をオンにして、蓄電器455からの電力により負荷460を駆動する。したがって、蓄電器455からの電力供給により負荷460で消費する電力分が、商用電源から消費されなくなるため、商用電源の最大電流から規定される最大電力に対して余力ができることになる。
例えば、定着器23の温度立ち上げ時において、定着制御回路330の一次側(AC側)で11Aの電流が流れており、スイッチング電源回路470の一次側(AC側)で3Aの電流が流れているとする。定着制御回路330での入力電圧に依存する電力等のバラツキを約1Aと見込むと、その合計電力は、(定着制御回路330とスイッチング電源回路470の力率cosθが共に1であると仮定すると)、15A(=11A+3A+1A)となり、商用電源の最大電流15A以内、つまり許容電力1500W(=100V×15A)内に収まる。
このような条件の下、蓄電器455から負荷460への電力供給により、スイッチング電源回路470の一次側(AC側)での電流値が2A軽減したとすると、蓄電器455からの電力により負荷460を駆動している間、この2A分の電力(200W=100V×2A)が商用電源から消費されなくなるため、商用電源の最大供給電流に対して余力ができることになる。
このため、画像形成制御回路316は、定着制御回路330のドライバ315内の基準電圧Vs326をこの2Aに相当する分上昇させ、定着器23への投入電力制限値を高くする。したがって、定着制御回路330の一次側(AC側)で13A、スイッチング電源回路470の一次側(AC側)で1A、バラツキは変わらず約1Aであり、その合計電流は同様に15A(=13A+1A+1A)で、商用電源の最大許容電力内に収まる。なお、当然のことながら、実際の設計時には設計バラツキを考慮して、商用電源の最大供給可能な電流を超えないようにしておく必要がある。
このように、蓄電器455から負荷460への給電状態、すなわち、選択手段としてのスイッチ463の状態、に応じて基準電圧Vs326を調整することにより、定着器23への投入電力制限レベルを調整することができる。
また、上記のように蓄電器455を用いることにより、定着器23の温度立ち上げ時において約200W(=100V×2A)の電力を定着器23へ供給することが可能な場合には、オンデマンド定着を実現できる可能性が出てくる。すなわち、図22において、上記同様に蓄電器455の利用により200Wの電力を定着器23へさらに供給することで、図中のプリント温度までに達する時間が30sec(点Wa)が15sec (点Wb)となる。このように、定着器23の温度立ち上げ時間を短縮することが可能となる。
(電力制御の詳細)
本実施形態における電力制御動作は概ね上記のとおりであるが、以下では、さらにプリント要求の有無及び/又は蓄電器455の充電状態及び/又は定着器23の温度を加味した電力制御について説明する。
図13Aは、画像形成制御回路316の構成例を示す図である。尚、図13Aには、プログラム制御されるコンピュータにより実現した例を示したが、以下の図13Bのフローチャートに示す手順は、ハードウエアのロジック回路により実現してもよい。
図13Aで、131は演算制御用のCPU、132は固定のプログラム及びパラメータを格納するROM、133はCPU131が動作中にデータを一時記憶するRAMである。
ROM132は、プログラム記憶領域として、図13Bに示す電力制御プログラムの記憶領域132aを有する。データ記憶領域として、定着器23の動作可能な下限の温度であるTLの記憶領域132b、定電圧制御回路458を介して負荷460の駆動に必要な電圧Vdにまで昇圧可能な蓄電器455の下限の電圧VLの記憶領域132cを有する。又、本実施形態で定着消費電力の増加値WFを実現する、比較器327の(+)入力端子の基準電圧Vs326を対応付けて記憶するWF/Vsテーブルの記憶領域132d、商用電源301の最大消費電流値の記憶領域132eを有する。尚、商用電源301の最大消費電流値は、本例では14A(=15A−1A:1Aは入力電圧に依存する電力等のバラツキ)である。
RAM133は、データの一時記憶領域として、サーミスタ496(405)で測定された定着器23の測定温度であるTHb(THa)の記憶領域133a、蓄電器電圧検出回路457で検出された蓄電器455の蓄電電圧Vcの記憶領域133bを有する。又、定着器23が現在消費している電力に対応する定着制御回路330の一時側電流値の記憶領域133c、負荷460が現在消費している電力に対応するスイッチング電源回路470の一時側電流値の記憶領域133dを有する。更に、本実施形態で蓄電器455の電力が負荷460に供給されている時の、定着器23への増加可能な消費電力値の記憶領域133eを有する。
尚、ROM132及びRAM133の構成は、本実施形態の動作に関連の深いもののみを示したものである。
134は、CPU131が電力制御プログラムを実行するに際して必要とする入力信号のインタフェース、135は、CPU131が電力制御プログラムを実行して電力制御をするための制御信号のインタフェースである。
入力信号としては、サーミスタ405よりの温度信号THa、サーミスタ406よりの温度信号THb、蓄電器電圧検出回路457からの蓄電器455の蓄電電圧信号が含まれる。又、定着制御回路330あるいはスイッチング電源回路470が消費している商用電源301からの一次電流値、電源ON(あるいは省エネルギーモードからの復帰)を示す信号、プリント要求を示す信号を含む。尚、図13Aでは、電源ON信号やプリント要求信号を入力信号のインタフェースを介するように示したが、直接CPU131にインタラプト信号として入力されてもよい。
出力制御信号としては、リレー303を制御するためのリレー制御信号、クロック生成部329を制御するクロック生成制御信号、基準電圧Vs326を制御する制御信号が含まれる。又、スイッチ463を制御して蓄電器からの電力の負荷への接断を制御する蓄電器接続制御信号、蓄電器455を充電する充電回路456を制御する充電回路制御信号が含まれる。
尚、かかる入力及び出力信号も、本実施形態の動作に関連の深いもののみを示したものである。
(本実施形態の電力制御の手順例1)
図13Bは、上記構成の画像形成制御回路316による、プリント要求の有無及び/又は蓄電器455の充電状態を加味した電力制御の動作手順例1を示すフローチャートである。本処理は、電源投入または省エネルギーモードからの復帰でプリント要求を受けた時に開始する。
まず、ステップS401で、プリンタ電源のオン、あるいは省エネルギーモードからの復帰を判定する。プリンタ電源のオン、あるいは省エネルギーモードからの復帰であれば、ステップS402で蓄電器455を充電回路456に接続する。
ここで、画像形成装置は、ステップS403でプリント要求の有無を検知する。プリント要求が無いと検知した場合には、そもそも蓄電器455から電力を供給して定着器23の急速立ち上げを行う必要はないので、ステップS411に進む。ステップS411は、スイッチ463をオフすることで蓄電器455を負荷460から切断する処理であるが、この場合には元々スイッチ463はオフ状態に維持されている。ステップS412で電源OFFの指示か所定時間プリント要求が無いかを判定し、その間はステップS403に戻ってプリント要求を待つ。電源OFFの指示か所定時間プリント要求が無い場合は、ステップS413で電源OFFの処理、あるいは省エネルギーモードに移行して、本処理を終了する。
一方、ステップS403で、画像形成装置へのプリント要求が有ると検知した場合には、ステップS404に進み、画像形成制御回路316は、定着器23に設けられているサーミスタ406の温度検出値THbを入力し(図9を参照)、その温度検出値THbが定着可能な下限の温度TL以上であるか否かを判断する。定着器23の温度が既に定着可能な下限の温度TL以上ある場合には、そもそも蓄電器455から電力を供給して定着器23の急速立ち上げを行う必要はない。その場合はステップS410に進み、スイッチ463のオフ状態を維持することで商用電源301から通常の電力WLを定着器23に供給する。続くステップS411はスイッチ463をオフすることで蓄電器455を負荷460から切断する処理であるが、この場合には元々スイッチ463はオフ状態に維持されている。
ステップS404において、温度検出値THbが定着可能な下限の温度TL未満である場合には、ステップS405に進む。ステップS405では、蓄電器電圧検出回路457によって検出される蓄電器455の充電電圧Vcが、定電圧制御回路458が負荷460の駆動に必要な電圧Vdにまで昇圧可能な下限の電圧VL以上であるか否かを判断する。ここで、蓄電器455の充電電圧VcがVLに満たない場合は、充電が不十分であるとみなして、ステップS410に進む。この充電が不十分なままスイッチ463をオンして蓄電器455からの電力を供給しても、定着器23の急速立ち上げに寄与しないばかりか、かえってその立ち上げに支障をきたすおそれもあるからである。
ステップS405において、充電電圧VcがVL以上ある場合にはステップS406に進み、蓄電器455を負荷460に接続すべくスイッチ463をオンする。したがって、負荷460は蓄電器455からの電力によって駆動することになる。これにより、商用電源の最大電流から規定される最大電力に対して余力ができ、その余力を定着器23に回すことが可能になることは、先述したとおりである。
そこで本実施形態では、ステップS407において、定着器23への供給電力を、上記商用電源の最大電力に対する余力の電力WFだけ増加させる。具体的には、例えば、定着制御回路330のドライバ315内の基準電圧Vs326(図9を参照)を、電力WFに相当する分上昇させ、定着器23への投入電力制限値を高くすることで、供給電力の増加を実現できる。これにより、定着器23に供給される電力は、商用電源301からの通常の電力WL+増加電力WFとなる。なお、このとき定着器23に供給される電力(WL+WF)は、商用電源301の電圧範囲内での最低電圧(例えば、電圧範囲を100〜127Vとすると、その下限電圧である100V)に合わせて設定するのが望ましい。
上記のステップS406,S407によって蓄電器455からの電力が負荷460に供給されている間は、ステップS408で、蓄電器電圧検出回路457によって検出される蓄電器455の充電電圧Vcが、定電圧制御回路458が負荷460の駆動に必要な電圧Vdにまで昇圧可能な下限の電圧VL以上に維持されているかどうかを監視する。更に、ステップS409で、サーミスタ406の温度検出値THbが、定着器23が定着可能な下限の温度TL以上になったかどうかを監視する。
ここで、蓄電器455の充電電圧VcがVLを下回ったとき(ステップS408でNO)、または、サーミスタ406の温度検出値THb(すなわち、定着器23の温度)がTL以上になったとき(ステップS409のYES)は、ステップS410に進む。ステップS410では、定着器23への供給電力を通常電力WLに戻す。具体的には、例えば、定着制御回路330のドライバ315内の基準電圧Vs326(図9を参照)を、ステップS407で増加した電力WFに相当する分降下させ、定着器23への投入電力制限値を低くすることで、通常電力WLへの降下を実現できる。
そして、ステップS411で、スイッチ463をオフすることで蓄電器455を負荷460から切断する。
(本手順例1による電力制御の効果)
以上説明した、プリント要求の有無及び/又は蓄電器455の充電状態及び/又は定着器23の温度を加味した電力制御の効果を説明する。
図14は、本実施形態と、蓄電器を使用しない従来例のそれぞれについて、定着器への電力供給量の時間推移を示している。図14中、(B)の実線aは、本実施形態における定着器23への電力供給量を示しており、(C)の破線bは、蓄電器を使用しない従来例における定着器への電力供給量を示している。また、(A)の実線cと破線dはそれぞれ、定着器への電力供給に伴う本実施形態の定着器の温度の時間遷移、従来の定着器の温度の時間遷移を示している。
図14に示すように、定着器が定着可能な下限の温度TLよりも低い温度から立ち上げる場合、従来の画像形成装置では、定着器に商用電源の通常電力WLだけを供給し、その定着器の温度がTLに達するまでに時間t2を要していたところ、本実施形態のレーザビームプリンタ100においては、定着器23への電力供給量をWFだけ増加させているので、その定着器の温度がTLに達するまでの時間は、t2より短いt1で済む。
なお、上述の充電状態及び/又は定着器の温度を加味した電力制御では、ステップS407のように、蓄電器455を負荷460から切断する条件を、定着器23の温度が定着可能な下限の温度を上回ったこととしたが、定着器23への供給電力、上昇温度および降下温度と時間の関係が予め分かっている場合には、ステップS407のような条件の代わりに、経過時間あるいは総供給電力量で設定することも可能である。
以上のように、レーザビームプリンタ100内に蓄電器455を設け、定着起動時に蓄電器455から定着器23以外のモータ等の負荷460に電力を供給する。そのため、蓄電器455からの負荷460への電力供給が行われている間、余剰電力に相当する分、定着器23への電力制限値を増加させることが可能となる。その余剰電力を定着器23の立ち上げ電力として有効活用することで、定着器23の立ち上げ時間を短縮することができる。また、定着器23内には、主ヒータ、副ヒータといった複数の熱源を必要としないため定着器の構成を簡素化することができるとともに、画像形成装置の構成や印字速度等の性能によってはオンデマンド定着の実現が可能となる。
更に、上記の効果に加え、プリンタの電源オンまたは省エネルギーモードからの復帰時に、蓄電器455の充電状態を確認するとともに、プリント要求の有無を確認する。このとき、レーザビームプリンタ100の立ち上げへの電力供給を、蓄電器455の充電よりも優先させることで、蓄電器455の充電により、レーザビームプリンタ100の立ち上げへの電力供給が阻害されるのを防止できる。また、プリント要求の有無を確認するとき、プリント要求が無いと判断された場合、蓄電器455の充電状態が不十分であれば、ただちに蓄電器455の充電過程に入るので、次のプリントに備え、素早く蓄電器455を使用可能な状態にすることができる。
以上、本発明の第1の実施形態を説明した。以下では、別の実施形態をいくつか説明する。それぞれ、画像形成装置の概略構成をはじめ各部の構成および動作も上述した第1の実施形態と概ね同様であるが、給電制御系の構成に特徴的な違いを呈するものである。そこで以下の実施形態では、第1の実施形態で用いた図面を援用すると共に、新たに用いる図面については、第1の実施形態と共通する構成には同一の参照番号を付してそれらの説明は省略し、他の実施形態と相違する構成または動作について説明することにする。
(本実施形態の電力制御の手順例2)
図15は、本実施形態における画像形成制御回路316による、プリンタの電源オンまたは省エネルギーモードからの復帰時の電力制御の動作例2を示すフローチャートである。
第1の手順例(図13B)との違いは、蓄電器455の充電電圧Vcが略一杯(≒VH)になるまで、プリント要求の有無を所定のタイミングで検知し続けている点である。本処理は、プリンタの電源オンまたは省エネルギーモードからの復帰でプリント要求を受けた時に開始する。
まず、ステップS701で、プリンタ電源のオン、あるいは省エネルギーモードからの復帰を判定する。プリンタ電源のオン、あるいは省エネルギーモードからの復帰であれば、ステップS702で蓄電器455を充電回路456に接続する。
ステップS703で、画像形成装置におけるプリント要求の有無を検知する。プリント要求が無いと検知した場合には、そもそも蓄電器455から電力を供給して定着器23の急速立ち上げを行う必要はないので、ステップS713に進む。ステップS713はスイッチ463をオフすることで蓄電器455を負荷460から切断する処理である。この場合には元々スイッチ463はオフ状態に維持されているのでステップS714に進み、蓄電器455が略一杯(≒VH)かどうかを蓄電器電圧検出回路457で検出する。蓄電器455が略一杯であれば、ステップS715に進んで充電を終了する。ステップS716で電源OFFの指示か所定時間プリント要求が無いかを判定し、その間はステップS703に戻ってプリント要求を待つ。電源OFFの指示か所定時間プリント要求が無い場合は、ステップS713で電源OFFの処理、あるいは省エネルギーモードに移行して、本処理を終了する。
蓄電器455が略一杯でなければ、ステップS703に戻りプリント要求の有無を検知する。プリント要求が無い場合には、同様にステップS713に進み、ステップS703−S713−S714を繰り返す。
一方、ステップS703で、プリント要求が有ると検知した場合には、手順例1と同様にステップS704に進み、画像形成制御回路316は、定着器23に設けられているサーミスタ406の温度検出値THbを入力し(図9を参照)、その温度検出値THbが定着可能な下限の温度TL以上であるか否かを判断する。定着器23の温度が既に定着可能な下限の温度TL以上ある場合には、そもそも蓄電器455から電力を供給して定着器23の急速立ち上げを行う必要はない。従って、ステップS711に進みスイッチ463のオフ状態を維持することで、商用電源301から通常の電力WLを定着器23に供給する。続くステップS712はスイッチ463をオフすることで蓄電器455を負荷460から切断する処理であるが、この場合には元々スイッチ463はオフ状態に維持されている。
ステップS704において、温度検出値THbが定着可能な下限の温度TL未満である場合には、ステップS705に進む。ステップS705では、蓄電器電圧検出回路457によって検出される蓄電器455の充電電圧Vcが、定電圧制御回路458が負荷460の駆動に必要な電圧Vdにまで昇圧可能な下限の電圧VL以上であるか否かを判断する。ここで、蓄電器455の充電電圧VcがVLに満たない場合は、充電が不十分であるとみなして、上記ステップS704で定着器23の温度が既に定着可能な下限の温度TL以上ある場合と同様にステップS711に進む。この充電が不十分なままスイッチ463のオンして蓄電器455からの電力を供給しても、定着器23の急速立ち上げに寄与しないばかりか、かえってその立ち上げに支障をきたすおそれもあるからである。
ステップS705において充電電圧VcがVL以上ある場合には、ステップS706に進みで蓄電器455を充電回路456から遮断し、ステップS707に進む。ステップS707において、蓄電器455を負荷460に接続すべく、スイッチ463をオンする。したがって、負荷460は蓄電器455からの電力によって駆動することになる。これにより、第1の手順例と同様に、商用電源301の最大電流から規定される最大電力に対して余力ができ、その余力を定着器23に回すことが可能になる。
そこで第1の手順例と同様に、本手順例2では、ステップS708において、定着器23への供給電力を、上記商用電源の最大電力に対する余力の電力WFだけ増加させる。具体的には、例えば、定着制御回路330のドライバ315内の基準電圧Vs326(図9を参照)を、電力WFに相当する分上昇させ、定着器23への投入電力制限値を高くすることで実現できる。これにより、定着器23に供給される電力は、商用電源301からの通常の電力WL+WFとなる。なお、このとき定着器23に供給される電力(WL+WF)は、商用電源301の電圧範囲内での最低電圧(例えば、電圧範囲を100〜127Vとすると、その下限電圧である100V)に合わせて設定するのが望ましい。
上記のステップS707,S708によって蓄電器455からの電力が負荷460に供給されている間は、ステップS709で、蓄電器電圧検出回路457によって検出される蓄電器455の充電電圧Vcが、定電圧制御回路458が負荷460の駆動に必要な電圧Vdにまで昇圧可能な下限の電圧VL以上に維持されているかどうかを監視する。更に、ステップS710で、サーミスタ406の温度検出値THbが、定着器23が定着可能な下限の温度TL以上になったかどうかを監視する。
ここで、蓄電器455の充電電圧VcがVLを下回ったとき(ステップS709のNO)、または、サーミスタ406の温度検出値THb(すなわち、定着器23の温度)がTL以上になったとき(ステップS710のYES)は、ステップS711に進み、定着器23への供給電力を通常電力WLに戻す。具体的には、例えば、定着制御回路330のドライバ315内の基準電圧Vs326(図9を参照)を、ステップS708で増加した電力WFに相当する分降下させ、定着器23への投入電力制限値を低くすることで実現できる。
そして、ステップS712で、スイッチ463をオフすることで蓄電器455を負荷460から切断する。
(本手順例2による電力制御の効果)
本手順例2においては、蓄電器455の充電電圧Vcが略一杯になるまで、任意の間隔で検知することにより、蓄電器455の過充電を防止することができる。また、蓄電器455が使用可能な充電状態になるまで、プリント要求の有無を任意の間隔で確認し続けることにより、速やかに蓄電器455の充電が行なえると同時に、レーザビームプリンタ100の立ち上げ時には、レーザビームプリンタ100の立ち上げへの電力供給を、蓄電器455の充電よりも優先させることで、蓄電器455の充電により、レーザビームプリンタ100の立ち上げへの電力供給が阻害されるのを防止できる。
(本実施形態の電力制御の手順例3)
図16は、本実施形態における画像形成制御回路316による、プリンタの電源オンまたは省エネルギーモードからの復帰時の電力制御の動作手順例3を示すフローチャートである。
第1の手順例(図13B)では、定着器23の温度THbが定着可能な下限の温度TLに到達しているかどうかで、蓄電器455を使用するかどうかを決定する。しかし、手順例3では、蓄電器455を使用せずにウォームアップタイムが15sec以内である定着器23の温度TL1に到達しているかどうかで、蓄電器455を使用するかどうかを決定する。ちなみに、本手順例3において、蓄電器455を使用せずにウォームアップタイムが15sec以内である場合の定着器23の温度TL1は、120℃である。本処理は、プリンタの電源オンまたは省エネルギーモードからの復帰でプリント要求を受けた時に開始する。
まず、ステップS801で、プリンタ電源のオン、あるいは省エネルギーモードからの復帰を判定する。プリンタ電源のオン、あるいは省エネルギーモードからの復帰であれば、ステップS802で蓄電器455を充電回路456に接続する。
ステップS803で、画像形成装置においてプリント要求の有無を検知する。プリント要求が無いと検知した場合には、そもそも蓄電器455から電力を供給して定着器23の急速立ち上げを行う必要はないので、ステップS813に進む。ステップS813はスイッチ463をオフすることで蓄電器455を負荷460から切断する処理であるが、この場合には元々スイッチ463はオフ状態に維持されている。従って、ステップS814に進み、蓄電器455が略一杯かどうか蓄電器電圧検出回路457で検出する。蓄電器455が略一杯であれば、ステップS815に進み、充電を終了する。ステップS816で電源OFFの指示か所定時間プリント要求が無いかを判定し、その間はステップS803に戻ってプリント要求を待つ。電源OFFの指示か所定時間プリント要求が無い場合は、ステップS813で電源OFFの処理、あるいは省エネルギーモードに移行して、本処理を終了する。
蓄電器455が略一杯でなければ、ステップS803に進み、プリント要求の有無を検知する。プリント要求が無い場合には、同様にステップS813に進む。
一方、ステップS803で、プリント要求が有ると検知した場合には、手順例2と同様にステップS804に進み、画像形成制御回路316は、定着器23に設けられているサーミスタ406の温度検出値Hbを入力し(図9を参照)、その温度検出値VHbが定着可能な下限の温度TL1以上であるか否かを判断する。定着器23の温度が既に定着可能な下限の温度TL1以上ある場合には、そもそも蓄電器455から電力を供給して定着器23の急速立ち上げを行う必要はない。従って、ステップS811に進み、スイッチ463のオフ状態を維持することで商用電源301から通常の電力WLを定着器23に供給する。続くステップS812はスイッチ463をオフすることで蓄電器455を負荷460から切断する処理であるが、この場合には元々スイッチ463はオフ状態に維持されている。
ステップS804において、温度検出値が定着可能な下限の温度TL1未満である場合には、ステップS805に進む。ステップS805では、蓄電器電圧検出回路457によって検出される蓄電器455の充電電圧Vcが、定電圧制御回路458が負荷460の駆動に必要な電圧Vdにまで昇圧可能な下限の電圧VL以上であるか否かを判断する。ここで、蓄電器455の充電電圧VcがVLに満たない場合は、充電が不十分であるとみなして、上記ステップS804で定着器23の温度が既に定着可能な下限の温度TL1以上ある場合と同様に、ステップS811に進む。この充電が不十分なままスイッチ463をオンして蓄電器455からの電力を供給しても、定着器23の急速立ち上げに寄与しないばかりか、かえってその立ち上げに支障をきたすおそれもあるからである。
ステップS805において、充電電圧VcがVL以上ある場合には、ステップS806に進んで蓄電器455を充電回路456から遮断し、ステップS807に進む。ステップS807において、蓄電器455を負荷460に接続すべく、スイッチ463をオンする。したがって、負荷460は蓄電器455からの電力によって駆動することになる。これにより、手順例1及び2と同様に、商用電源301の最大電流から規定される最大電力に対して余力ができ、その余力を定着器23に回すことが可能になる。
そこで第1、第2の手順例と同様に、本手順例3では、ステップS808において、定着器23への供給電力を、上記商用電源の最大電力に対する余力の電力WFだけ増加させる。具体的には、例えば、定着制御回路330のドライバ315内の基準電圧Vs326(図9を参照)を、電力WFに相当する分上昇させ、定着器23への投入電力制限値を高くすることで実現できる。これにより、定着器23に供給される電力は、商用電源301からの通常の電力WL+WFとなる。なお、このとき定着器23に供給される電力(WL+WF)は、商用電源301の電圧範囲内での最低電圧(例えば、電圧範囲を100〜127Vとすると、その下限電圧である100V)に合わせて設定するのが望ましい。
上記のステップS807,S808によって蓄電器455からの電力が負荷460に供給されている間は、ステップS809で、蓄電器電圧検出回路457によって検出される蓄電器455の充電電圧Vcが、定電圧制御回路458が負荷460の駆動に必要な電圧Vdにまで昇圧可能な下限の電圧VL以上に維持されているかどうかを監視する。又、ステップS810で、サーミスタ406の温度検出値VHbが、定着器23が定着可能な下限の温度TL1以上になったかどうかを監視する。
ここで、蓄電器455の充電電圧VcがVLを下回ったとき(ステップS809のNO)、または、サーミスタ406の温度検出値(すなわち、定着器23の温度)がTL1以上になったとき(ステップS810のYES)は、ステップS811に進む。ステップS811では、定着器23への供給電力を、通常電力WLに戻す。具体的には、例えば、定着制御回路330のドライバ315内の基準電圧Vs326(図9を参照)を、ステップS808で増加した電力WFに相当する分降下させ、定着器23への投入電力制限値を低くすることで実現できる。
そして、ステップS812で、スイッチ463をオフすることで蓄電器455を負荷460から切断する。
(本手順例3による電力制御の効果)
以上説明したプリント要求の有無及び/又は蓄電器455の充電状態及び/又は定着器23の温度を加味した電力制御の効果を説明する。
図17は、本実施形態の定着器23の温度<TL1と、本実施形態の定着器23の温度≧TL1のそれぞれについて、定着器への電力供給量の時間推移を示している。図17中、(B)の実線aは、本実施形態の定着器23の温度<TL1における定着器23への電力供給量を示しており、(C)の破線bは、本実施形態の定着器23の温度≧TL1における定着器への電力供給量を示している。また、(A)の実線c及び破線dはそれぞれ、定着器への電力供給に伴う本実施形態の定着器23の温度<TL1における定着器の温度の時間遷移、本実施形態の定着器23の温度≧TL1における定着器の温度の時間遷移を示している。
定着器23の温度を検出し、レーザビームプリンタ100の立ち上げ速度を予測することで、定着器23の温度が定着可能な下限の温度TLより低い場合でも、TL1以上の場合、通常電力WLのみで蓄電器455を使用せず、ウォームアップタイム15sec以内で定着可能な下限の温度TL以上になるので、蓄電器455の充電状態が不十分である場合におけるレーザビームプリンタ100のオンデマンド立ち上げ可能な機会を大幅に増加させることが可能となる。また、蓄電器455を無駄に使用することを防止でき、省エネルギーにつながる。
[他の実施形態]
上述の各実施形態では、電磁誘導加熱方式の定着器23を使用したが、その他の方式の定着器を使用することも可能である。本実施形態では、セラミック面状発熱ヒータ方式の定着器について説明する。
(本実施形態の定着器の構成例)
図18は、本実施形態におけるセラミック面状発熱ヒータ方式の定着器600の横断面構造を示す図である。
610はステーであり、このステー610はセラミックヒータ640を露呈させて支持した横断面U字状の本体部611と、該本体部を対向する加圧ローラ620側へ加圧する加圧部613とで構成されている。ここで、セラミック面状発熱ヒータは、発熱体が後述のニップ部と反対側であっても、発熱体がニップ部側であっても構わない。614はステー610に外嵌させてある横断面円形の耐熱性フィルム(以下、「フィルム」と略称する)である。
加圧ローラ620は、セラミックヒータ640との間にフィルム614を挟んで圧接ニップ部(定着ニップ部)Nを形成し、且つフィルム614を回転駆動させるフィルム外面接触駆動手段として作用する。このフィルム駆動ローラ兼加圧ローラ620は、芯金620aとシリコンゴム等よりなる弾性体層620bと、最外層の離形層620cとよりなる。そして、不図示の軸受け手段・付勢手段により所定の押圧力をもってフィルム614を挟ませてセラミックヒータ640の表面に圧接させて配設してある。この加圧ローラ620は、モータMによる回転駆動により、この加圧ローラ620とフィルム614の外面との摩擦力で該フィルムに搬送力を付与する。
図19は、セラミック面状発熱ヒータ640の具体的な構造例を示す図である。図19の(a)はセラミック面状発熱ヒータ640の断面図であり、図19の(b)は発熱体601が形成されている面を示している。
セラミック面状発熱ヒータは、SiC、AlN、Al2O3等のセラミックス系の絶縁基板607と絶縁基板面上にペースト印刷等で形成されている発熱体601と、発熱体保護しているガラス等の保護層606とから構成されている。保護層上には、セラミック面状発熱ヒータの温度を検出する温度検出素子としてのサーミスタ605、及び過昇温を防止する手段として例えば温度ヒューズ602が配置されている。サーミスタ605は発熱体601に対して絶縁距離を確保できるように、絶縁耐圧を有する絶縁物を介して配置されている。もっとも、過昇温を防止する手段としては温度ヒューズの他にサーモスイッチ等を使用してもよい。
発熱体601は、電力が供給されると発熱する部分と、その発熱部分に接続した導電部603と、コネクタを介して電力が供給される電極部604とから構成され、発熱部601は通紙可能な最大の記録紙幅LFとほぼ同じ長さとしている。2つの電極604のうち1つへは、交流電源のHOT側端子が温度ヒューズ602を介して接続されている。電極部は発熱体を制御するトライアック639に接続され、交流電源のNEUTRAL端子に接続される。
図20は、本実施形態における定着制御回路630の構成を示す図である。この定着制御回路630はセラミック面状発熱ヒータ方式によるものであるが、図9では定着制御回路330と置き換えることができるものである。
本実施形態におけるレーザビームプリンタ100は、商用電源301をACフィルタ(図示せず)を介してセラミック面状発熱ヒータ640の発熱体601へ供給することによりセラミック面状発熱ヒータの発熱体601を発熱させる。この発熱体601への電力供給は、トライアック639によって通電・遮断が制御される。抵抗631,632はトライアック639のためのバイアス抵抗であり、フォトトライアックカプラ633は一次、二次間を隔離するためのデバイスである。フォトトライアックカプラ633の発光ダイオードに通電することにより、トライアック639をオンする。抵抗634はフォトトライアックの電流を制限するための抵抗であり、トランジスタ635によりオン/オフする。トランジスタ635はドライバ回路650および抵抗636を介して画像形成制御回路316から送られるオン信号に従って動作する。ドライバ回路650は、電流実効値検出回路652、発振回路655、コンパレータ等の比較器653、654で示される基準電圧Vs、クロック生成部651で構成される。
また、ACフィルタ(図示せず)を介して、交流電源は、ゼロクロス検出回路618に入力される。ゼロクロス検出回路618では、商用電源301があるしきい値以下の電圧になっていることをクロック生成部651に対してパルス信号により報知する。以下、クロック生成部651に送信されるこの信号をZEROX信号と呼ぶ。クロック生成部651はZEROX信号のパルスのエッジを検知する。
サーミスタ605によって検出される温度は、抵抗637とサーミスタ605との分圧として検出され、画像形成制御回路316にTH信号としてA/D入力される。セラミック面状発熱ヒータ640の温度は、TH信号として画像形成制御回路316において監視され、画像形成制御回路316の内部で設定されているセラミック面状発熱ヒータの設定温度と比較した結果を画像形成制御回路316のD/Aポートからのアナログ信号またはPWMによってクロック生成部651に送信される。
クロック生成部651は、エンジン制御回路316から送られた信号からセラミック面状発熱ヒータを構成する発熱体601に供給するべき電力を算出し、その供給する電力に対応した位相角θ(位相制御)に換算する。ゼロクロス検出回路618はZEROX信号をクロック生成部651へ出力し、クロック生成部651は同期をとってトランジスタ635にオン信号を送信し、所定の位相角θaにてヒータ640へ通電する。
図21は、その通電状態の波形を示している。
ZEROX信号は、商用電源周波数(50Hz)から決まる周期T(=1/50sec)の繰り返しパルスで、これが画像形成制御回路316へ送信されており、パルスの中央部が商用電源の位相0°,180°と電圧が0V(ゼロクロス)となるタイミングを示している。
画像形成制御回路316は、上記のようにゼロクロスタイミングから所定のタイミングを経てトライアック639をオンするオン信号を送信し、商用電源電圧(正弦波)の半波において所定の位相角θaにて発熱体(ヒータ)601への通電が開始されるように制御している。トライアック639は、次のゼロクロスタイミングにてオフとなり、次の半波においてオン信号により同位相角角θaで発熱体601への通電が開始される。さらに、次のゼロクロスタイミングにてオフとなる。
発熱体601は抵抗体であるため、発熱体の両端に印加される電圧波形は流れる電流波形と等しくなり、図21に示すように1周期において正負対称の電流波形を示す。ヒータへの電力供給を増加させる場合には、ゼロクロスからオン信号を送信するタイミングを早め、逆に電力供給を低減させる場合には、ゼロクロスからオン信号を送信するタイミングを遅くする。この制御を1周期あるいは必要に応じて複数周期ごとに行うことでセラミック面状発熱ヒータ640の温度をコントロールしている。
図20の625は、定着器600のセラミック面状発熱ヒータ640へ流れる電流を検出するためのカレントトランスである。カレントトランス625で検出した検出電流は、電流実効値を検出するIC等で構成される電流実効値検出回路652によって実効値が測定され、検出された電流(電圧)値は比較器653の(−)入力端子へ、所定の基準電圧Vs654は比較器653の(+)入力端子へそれぞれ送信され、比較器653により双方の値を比較する。比較器653は、電流検出値が基準電圧Vs654よりも大きい場合には、基準電圧Vs654に対応する電流以上に大きくならないように、ゼロクロスタイミングからオン信号を送信するまでの時間を予め定めた時間(所定の位相角)以上にするようにクロック生成部651へ出力する。
以上のように、画像形成制御回路316は常時電流をモニタし、検出された平均電流より所定の最大実効電流を超えないような位相角を演算により決定し、セラミック面状発熱ヒータ640への最大電力の制御を行っている。
万一、画像形成制御回路316等の故障により、発熱体が熱暴走に至り温度ヒューズ602が所定の温度以上になると、温度ヒューズ602がオープンとなる。温度ヒューズ602のオープンにより、セラミック面状発熱ヒータ640への通電経路が遮断され、発熱体601への通電が断たれることにより、故障時の保護がなされている。
(本実施形態の電力制御例)
以上のような構成において、本実施形態では次のように電力制御を行う。
画像形成制御回路316は、レーザビームプリンタ100の待機時あるいは蓄電器455からの電力供給が不要な時は、スイッチ463をオフにするとともに、充電回路456を動作させ蓄電器455を充電しておく。
画像形成動作開始時等の定着器23の使用時においては、画像形成制御回路316はスイッチ463をオンにして、蓄電器455からの電力により負荷460を駆動する。したがって、蓄電器455からの電力供給により負荷460で消費する電力分が、商用電源から消費されなくなるため、商用電源の最大電流から規定される最大電力に対して余力ができることになる。
たとえば、定着器23の温度立ち上げ時において、定着制御回路630の一次側(AC側)で11Aの電流が流れており、スイッチング電源回路470の一次側(AC側)で3Aの電流が流れているとする。定着制御回路630での入力電圧に依存する電力等のバラツキを約1A見込むと、その合計電力は、(定着制御回路630とスイッチング電源回路470の力率cosθが共に1であると仮定すると、)15A(=11A+3A+1A)となり商用電源の最大電流15A以内、つまり許容電力1500W(=100V×15A)内に収まる。
このような条件の下、蓄電器455から負荷460への電力供給により、スイッチング電源回路470の一次側(AC側)での電流値が2A軽減したとすると、蓄電器455からの電力により負荷460を駆動している間、この2A分の電力(200W=100V×2A)が商用電源から消費されなくなるため、商用電源の最大供給電流に対して余力ができることになる。
このため、画像形成装置制御回路316は、定着器600への投入電力制限値に相当するセラミック面状発熱ヒータ640への通電位相角をこの2Aに相当する分0°側へ小さくし、定着器23への投入電力制限値を高くする。したがって、定着制御回路630の一次側(AC側)で13A、スイッチング電源回路470の一次側(AC側)で1A、バラツキは変わらず約1Aとすると、その合計電流は同様に15A(=13A+1A+1A)で商用電源の最大許容電力内に収まる。なお、当然のことながら、実際の設計時には設計バラツキを考慮して、商用電源の最大供給可能な電流を超えないようにしておく必要がある。
以上のように、本実施形態のようなセラミック面状発熱ヒータ方式の定着器を用いた構成においても、電磁誘導加熱方式の定着器の場合と同様、レーザビームプリンタ100内に蓄電器455を設け、定着器600の起動時に蓄電器455から定着器600以外のモータ等の負荷460に電力を供給する。そこで、蓄電器455からの電力供給が行われている間、余剰電力に相当する分、定着器600への電力制限値を増加させることが可能となる。その余剰電力を定着器600の立ち上げ電力として有効活用することで、定着器の立ち上げ時間を短縮することができる。
そして、上記第1〜第3の手順例で説明したのと同様に、「プリンタの電源オン又は省エネルギーモードからの復帰」時において、適宜、プリント要求の有無及び/又は蓄電器455の充電状態及び/又は定着器600の温度を加味した電力制御を行なう。これにより、蓄電器455の充電電圧Vcが略一杯になるまで任意の間隔で検知し、蓄電器455の過充電を防止することができる。
また、蓄電器455が使用可能な充電状態になるまで、プリント要求の有無を任意の間隔で確認し続け、速やかに蓄電器455の充電が行なえる。同時に、レーザビームプリンタ100の立ち上げ時には、レーザビームプリンタ100の立ち上げへの電力供給を蓄電器455の充電よりも優先させ、蓄電器455の充電により、レーザビームプリンタ100の立ち上げへの電力供給が阻害されるのを防止できる。更に、定着器600の温度を検出してレーザビームプリンタ100の立ち上げ速度を予測する。そして、定着器600の温度が定着可能な下限の温度TLより低い場合でもTL1以上の場合、通常電力WLのみで蓄電器455を使用せず、ウォームアップタイム15sec以内で定着可能な下限の温度TL以上になる。従って、蓄電器455の充電状態が不十分である場合におけるレーザビームプリンタ100のオンデマンド立ち上げ可能な機会を大幅に増加させることが可能となる。
また、蓄電器455を無駄に使用することを防止でき、省エネルギーにつながる。蓄電器455から、定着器600以外のモータ等の負荷460に電力を供給することで、蓄電器455からの電力供給が行なわれている間、余剰電力に相当する分、定着器600への電力制限値を増加させることが可能となる。その余剰電力を定着器600の立ち上げ電力として有効活用することで、定着器600の立ち上げ時間を短縮することができる。また、定着器600内には主ヒータ、副ヒータといった複数の熱源を必要としないため、定着器の構成を簡素化することができるとともに、画像形成装置の構成や印字速度等の性能によってはオンデマンド定着の実現が可能となる。