JP4312102B2 - 成形品の製造方法及び成形品 - Google Patents
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Description
本発明の成形品の製造方法によれば、工程(4)において、インク受容層と成形される樹脂とが一体化する一方、インク受容層とプライマー層との接着力が低下し、成形後にインクジェット記録されたインク受容層のみが残り、再現性よく模様が転写される。またインク受容層は成形品と一体化しており、耐水性も良好である。
基材は、インクジェットプリンタによる搬送性と熱可塑性を備えた材料からなり、具体的には、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂からなるプラスチックシート又はフィルムを用いることができる。特にプリンタの搬送性、ハンドリング性、被転写材の凹凸面への転写性などの点で、比較的剛性があり収縮しにくい、熱可塑性ポリエステル樹脂又はポリプロピレンからなるシート又はフィルムが好適である。
基材の厚みは特に限定されないが、インクジェット記録時の搬送性および転写後の剥離のしやすさの観点から5〜300μm程度が好適である。
バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミドなどの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの親水性樹脂などを用いることができるが、特に成形時の熱又は架橋により耐水化する親水性樹脂が好ましい。このような樹脂として、具体的には、ケン化度70%以上のポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタンなどを挙げることができる。ケン化度70〜90%のポリビニルアルコール部分ケン化物及びケン化度90%以上のポリビニルアルコール完全ケン化物は架橋により耐水化し、ケン化度90%以上のポリビニルアルコール完全ケン化物、ポリビニルピロリドン及びポリウレタンは熱により耐水化する。特に重合度1000〜3000、ケン化度70〜90%の部分ケン化タイプのポリビニルアルコールが好ましい。また特にポリビニルアルコール等には、グリオキザール、ジメチロール尿素、トリメチロールメラミンなどの架橋剤を添加するか、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂などの架橋剤として機能する熱硬化性樹脂と併用することにより耐水化することも可能である。
顔料の含有量は、バインダー100重量部に対し100重量部以下、好ましくは5〜50重量部であることが望ましい。顔料の含有量を5重量部以上とすることにより、ブロッキングを防止できる。また100重量部以下とすることにより、転写時に塗膜を凝集破壊しにくくすることができる。
インク受容層は、上述した樹脂及び顔料のほかに、インクジェット記録性及び被転写材との接着性を阻害しない範囲で、レベリング剤、紫外線吸収剤、耐水化剤、酸化防止剤、キレート剤等の公知の添加剤を含むことができる。
このインク受容層は、物理的な構造によってインク受容性をもたせたものであり、樹脂と必要に応じて顔料とからなり、水性インク、油性インクのいずれに対してもインク受容性を有する。樹脂としては、第1のインク受容層と同様の加熱又は架橋により耐水化する親水性樹脂或いは耐水性の樹脂を用いることができる。耐水性の樹脂としては、親水性樹脂を耐水化した樹脂やスチレンマレイン酸共重合物、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどの樹脂を用いることができる。
プライマー層は、インク受容層と基材との接着性を高めるとともに、転写時にはインク受容層に対する剥離層としても機能する層で、具体的には、イソシアネート系化合物及びイソシアネート系化合物と相溶性のよい樹脂から成る。イソシアネート系化合物と相溶性のよい樹脂として、具体的には、ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、基材の材料に応じて適宜選択して用いることができる。例えば、基材としてポリエステルフィルムを用いる場合には、ポリエステル樹脂が好適である。またインク受容層が第1の態様による親水性樹脂を主体とする層の場合には、イソシアネート系化合物と相溶性のよい樹脂が水酸基価1〜30を有し、イソシアネート系化合物のイソシアネート基(NCO基)とイソシアネート系化合物と相溶性のよい樹脂の水酸基とのモル比が1:1〜10:1の範囲であることが好ましい。NCO基と水酸基とのモル比は、イソシアネート系化合物と水酸基を有する樹脂との混合比を調節することにより上述した範囲にすることができる。
プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.1〜5μm程度が好ましい。
本発明の方法は、圧縮成形、射出成形のいずれにも適用でき、成形品の用途や用いる樹脂に応じて選択することができる。但し、インク受容層の樹脂として熱により耐水化する親水性樹脂を用いた転写シートを用いる場合には、加熱を伴う圧縮成形が好適である。またインク受容層が多孔構造を有する転写シートを用いた場合には射出成形、圧縮成形のいずれにも好適である。以下、圧縮成形及び射出成形の場合を説明する。
成形材料としては粉末又は顆粒状の或いはそれをプレフォームしたものを用いる。樹脂の種類は成形品の用途等によって適宜選択されるが、例えば尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−メラミン共縮合樹脂などのアミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが用いられる。特にアミノ樹脂は、上述した転写シートとの密着性に優れ堅牢な転写成形品を得ることができる。
[参考例1]
厚み75μmのポリエステルフィルムからなる基材上に、以下のようにプライマー層、インク受容層を順に形成し、転写シートを作製した。
<プライマー層>
ポリエステル樹脂(バイロン200:東洋紡社、水酸基価3)1重量部をメチルエチルケトン9重量部に溶解させ、その溶解液10重量部にイソシアネート(タケネートD110N:三井武田薬品工業社、有効成分75%)を0.2重量部加えて液を調整した。調整した液を基材上に塗布乾燥し、厚み0.5μmのプライマー層を得た。なお、調整した液のイソシアネートのイソシアネート基とポリエステル樹脂の水酸基のモル比は1.7:1.0であった。
ポリビニルアルコール(ゴーセノールKM-11:日本合成化学工業社、重合度1100、ケン化度78%、有効成分100%)を10%水溶液に調整し、プライマー層上に塗布乾燥し、厚み15μmのインク受容層を得た。
インク受容層を以下のものに変更した以外は、参考例1と同様にして転写シートを作製した。
下記の材料を混合、分散させて塗布液を調整し、プライマー層上に塗布乾燥し、厚み30μmで平均孔径約0.5〜3μmの連続気泡を有する多孔構造のインク受容層を得た。
・ポリビニルアセタール 0.7重量部
(KS−1:積水化学工業社、有効成分100%)
・シリカ 0.3重量部
(ミズカシルP78A:水澤化学社)
(平均粒子径3.3μm、細孔径17.8nm)
・トルエン 4.5重量部
・エタノール 4.5重量部
インク受容層を以下のものに変更した以外は、参考例1と同様にして転写シートを作製した。
下記の材料を混合、分散させて塗布液を調整し、プライマー層上に塗布乾燥し、厚み30μmで平均孔径約1〜3μmの連続気泡を有する多孔構造のインク受容層を得た。
・ポリビニルピロリドン 0.8重量部
(K−90:ISP社、有効成分100%)
・シリカ 0.2重量部
(ミズカシルP78D:水澤化学社)
(平均粒子径8μm、細孔径18.3nm)
・水 9重量部
厚み75μmのポリエステルフィルムからなる基材上に、ヒドロキシエチルセルロース(SP200:ダイセル化学工業社、有効成分100%)を8%水溶液に調整した塗布液を塗布乾燥し、厚み15μmのインク受容層を形成し、転写シートを作製した。
基材として厚み97μmの水系易接着ポリエステルフィルム(メリネックス535:帝人デュポンフィルム社)を使用した以外は、比較例1と同様にして、転写シートを作製した。
厚み97μmの水系易接着ポリエステルフィルム(メリネックス535:帝人デュポンフィルム社)からなる基材上に、以下のインク受容層を形成し、転写シートを作製した。
下記の材料を混合させて塗布液を調整し、基材上に塗布乾燥し、厚み30μmのインク受容層を得た。
・ポリビニルアセタール 1.0重量部
(KS−1:積水化学工業社、有効成分100%)
・トルエン 4.5重量部
・エタノール 4.5重量部
厚み100μmの水系易接着ポリエステルフィルム(メリネックス535:帝人デュポンフィルム社)からなる基材上に、以下のインク受容層を形成し、転写シートを作製した。
微細シリカ(サイロジェットP612:グレースデビソン社、平均一次粒子径9nm)を水に分散させた20%の分散液100重量部に、塩化ナトリウムの10%水溶液を0.5重量部、及びポリビニルアルコール(PVA-140:クラレ社、重合度4000、ケン化度98.5%)の10%水溶液を40重量部混合し、水を加え16.0%の塗布液とし、基材上に20g/m2になるように塗布乾燥し、厚み30μmで平均孔径45〜60nmの連続気泡を有する多孔構造のインク受容層を得た。
厚み75μmのポリエステルフィルムからなる基材に、コロナ放電処理を施し、実施例3と同様のインク受容層を形成し、転写シートを作製した。なお、コロナ放電処理の条件として、コロナ放電処理機はVETAPHONE社のものを用い、放電ノズル先端からフィルム表面までの距離は50mmとし、放電処理速度は150M/minであり、その出力を2.6kWとした。また、コロナの発生ガスには空気を用いた。
参考例1、実施例1,2および比較例1〜4で得られた転写シートに、インクジェットプリンタ(デザインジェット5000CP染料インク:ヒューレットパッカード社)で印字し、印字部分を充分乾燥させた後、尿素樹脂のペレットに重ね、金型で挟み込み、140℃で2分間熱プレスした。得られたボタンを冷却させた後、基材を剥離し、ボタンを得た。
この成形における転写シートの転写性、得られた画像の画質、ボタンの耐水性及び耐擦傷性を下記のように評価した。その結果を表1に示す。
インク受容層が基材からきれいに剥離して、ペレットに転写されたものを「○」、インク受容層が基材から剥離せず、ペレットに転写されなかったものを「×」とした。
ボタンの印字画質を目視で評価し、印字画質が良好なものを「○」、濃度が沈んでしまい印字画質が不良のものを「×」とした。なお、比較例2、6、7については、転写シートの基材を通して見える画質の評価を行なった。
ボタンを、沸騰水に15分浸漬し、インク受容層(画像)に変化がないものを「○」、インク受容層が溶ける又は画像に異常を生じたものを「×」とした。
爪型治具に荷重1kgをかけ100mm/sの速度で傷をつけた際に、素地の露出のないものを「○」、露出してしまったものを「×」とした。
参考例1及び実施例1,2で得られたボタンを衣服に取り付け、市販の全自動洗濯機により繰り返し洗濯し、転写の耐久性をテストした。
また転写後の画質(最終画質)については、参考例1のものは、インク受容層中に顔料を含んでいないのでインク受容層が透明であり、最終画質に優れていた。実施例1,2のものは、インク受容層が多孔構造で不透明であるが、転写時にインク受容層の連続気泡に被転写材が入り込んだことにより、気泡が塞がれ透明性が向上し、最終画質に優れていた。
また気泡が塞がれることにより、気泡が塞がれていない比較例7に比べて耐擦傷性が向上した。
なお、表には記載していないが、参考例1及び実施例1,2のボタンについて実際の洗濯機を用いて耐久性テストを行なった結果、30回繰り返し洗濯してもインク受容層(画像)が剥離することがなかった。
比較例2のものは、基材として易接着フィルムを使用したため、通紙性及び印字画質は良好であったものの、成型後容易に膜を剥離できず、転写性に劣るものであった。
比較例4のものは、インク受容層に連続気泡を有しているものの、その平均孔径が細かいため、印字画質が良好であったが、転写時に膜が割れてしまい、それ以降の評価はできなかった。
比較例5のものは、ポリエステルフィルムからなる基材とインク受容層とが強固に接着していないことから、マウントフィルムでボタンに貼り合わせた後に、インク受容層を基材から剥離することはできたが、加熱及び/又は加圧による転写工程を経ないため、多孔構造内に樹脂が入り込んだり、インク受容層の樹脂が耐水化することができず、最終画質、耐水性、耐擦傷性に劣るものであった。
Claims (4)
- 加熱及び/又は加圧により金型間にある樹脂を成形すると同時に成形品に転写画像を形成する方法であって、前記樹脂は、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂、ABS樹脂及びポリ乳酸樹脂から選択されるいずれかの樹脂であり、
(1)基材上に、イソシアネート系化合物及びポリエステル樹脂から形成され、前記ポリエステル樹脂が水酸基価1〜30を有し、且つ前記イソシアネート系化合物のイソシアネート基と前記ポリエステル樹脂の水酸基とがモル比1:1〜10:1の範囲であるプライマー層と、前記プライマー層の上に形成され、耐水性樹脂或いは加熱による変性または架橋剤による架橋硬化により耐水化する親水性樹脂を含み、連続気泡で構成された多孔構造を有するインク受容層とを備え、成形時の前記プライマー層と前記インク受容層との接着性が成形時の前記インク受容層と前記成形品との接着性よりも小である転写シートにインクジェット記録する工程、
(2)インクジェット記録後の転写シートを一対の金型の間に位置付ける工程、
(3)前記インク受容層と直接接触するように金型間に樹脂を供給する工程、
(4)加熱及び/又は加圧により金型間にある樹脂を成形するとともにインク受容層と一体化する工程、及び
(5)成形品から前記転写シートの基材及びプライマー層を剥離する工程を含む成形品の製造方法。 - 前記成形する工程(4)は、圧縮成形工程または射出成形工程であることを特徴とする請求項1記載の成形品の製造方法。
- 請求項1又は2記載の製造方法により製造された成形品。
- 前記成形品が、ボタンである請求項3記載の成形品。
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