JP4311437B2 - D級増幅装置 - Google Patents
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Description
このD級増幅回路は、デジタル信号である音信号に対してPWM(Pulse Width Modulation)変調を施し、当該変調により得られる変調信号を矩形波のまま増幅し、その後LPF(Low Pass Filter)を介してスピーカに出力するようになっている。
この種のD級増幅回路は、電源投入時や電源遮断時に、いわゆるポップアップノイズが発生することが知られている。このポップアップノイズは、D級増幅回路の入力部から出力部までの各種の回路の動作状態が不安定となることに起因しており、大きなノイズとして出力されると聴感上耳障りである他にスピーカなどの各種の装置に支障をきたすこともある。
従来、このようなポップアップノイズの発生を抑制するD級増幅装置としては、アナログのローパスフィルタの出力にポップアップノイズ抑制回路を設け、アナログ的に当該ローパスフィルタの出力電圧を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、このD級増幅回路は、ポップアップノイズを抑制する回路がアナログ回路であり、増幅回路自体の起動及び停止に所定の時間(例えば、300ms)が必要なことから、電源投入時から正常に動作を開始するまでの起動開始期間及び動作終了時から電源が完全に遮断されるまで起動終了期間の時間の変更を容易に行うことができず、特に、短時間における起動及び停止を行うことができない。
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、デジタル波形を用いることによって簡易な構成にてポップアップノイズを防止することができるとともに、小型化、部品点数の削減に基づく製造コストの低減、及び、波形の容易な設定又は調整に基づく操作性の向上やシステムを構築する際の柔軟性を実現することができるD級増幅装置を提供することを目的とする。
さらに、波形データを構成する波形の基本周波数を可聴帯域外とするので、特定期間においてポップアップノイズを抑圧することが可能となる。ここで、可聴帯域とは、人の聴覚によって音を認識できる範囲であり、20Hz〜20KHzの周波数帯の意味である。また、波形データを構成する波形に歪みが存在する場合には、基本周波数の3倍の高調波成分が可聴帯域外となるように波形データの周波数を設定すればよい。
本実施形態のD級増幅装置100は、入力端子10を介して外部から供給されるPCM形式のオーディオデータ(以下、単に「PCMデータ」という。)をチャンネル毎にオーバーサンプリング処理を行うオーバーサンプリング部110と、D級増幅装置100の動作開始の指示がなされた時(以下、「起動時」という。)又は動作停止の指示がなされた時(以下、「停止時」という。)の所定のタイミングにポップアップノイズを防止するために用いられ、余弦波をデータとして生成する余弦波生成回路120と、チャンネル毎にノイズシェーピング処理を行うノイズシェーパ130と、を備えている。
さらに、このD級増幅装置100は、PWM信号又は専用PWM信号の信号レベルを各チャンネル毎に増幅するドライブ回路170と、チャンネル毎にPWM信号と専用PWM信号のドライブ回路170への出力を切り換える第2スイッチング部180と、PWM信号に対してローパスのフィルタ処理を行うことによって駆動信号を生成し、当該生成した駆動信号を出力端子20を介して出力するローパスフィルタ190と、を備えている。
ローパスフィルタ190には、ドライブ回路170にて増幅されたPWM信号が入力されるようになっている。そして、このローパスフィルタ190は、入力された駆動信号に対して高域遮断処理(ローパスフィルタ190処理)を実行してヘッドホン又はスピーカなどの図示しない外部に接続された機器を駆動するための駆動信号を生成し、当該駆動信号を出力端子20を介して外部に出力する。なお、ヘッドホン又はスピーカなどの外部機器は、出力端子20を介してローパスフィルタ190から出力された駆動信号が入力されると、当該入力された駆動信号に基づいて放音する。
しかしながら、このようなシングルエンド方式のD級増幅回路は、例えば、停止状態から起動状態にその状態を変化させる際に、PWM信号をデューティー比50%の矩形波パルスに切り換えるなど矩形波のデューティー(Duty)比を調整し、ローパスフィルタ190へのPWM信号の入力を制御した場合には、ローパスフィルタ190の出力電圧が0[V]から(VDD/2)[V]に急激に変化してノイズ(いわゆるポップアップアップノイズ)が発生することになる。これは、出力電圧の波形が可聴帯域の周波数成分を有するからである。
ここで、(式1)に示される漸化式について説明する。
通常、上述のように、サンプリング周期を「T」、角周波数を「ω」とすると、余弦波の「n」番目のサンプルy[n]は(式2)となり、余弦波の「n+1」及び「n−1」番目のサンプルy[n+1]及びy「n−1」は、(式3)によって表すことができるようなっている。
通常、ノイズシェーピング処理は、ナイキスト周波数帯域全体で一様に分布している量子化ノイズを可聴周波数帯域内において低減させるため、m(mは自然数)ビットのデータをn(nはm>nの自然数)ビットのデータに変換する。例えば、PWM信号(64レベルのPWM信号)が6ビットにて構成される場合、図6(a)に示すように、0[V]から(VDD/2)[V]までのローパスフィルタにおける出力電圧が32段階のみにて規定されることとから、量子化する際に可聴帯域内に量子化ノイズとしてノイズが発生する。このため、PCMデータ等の入力されるデータに対して当該量子化ノイズを低減するためのノイズシェーピング処理を実行する必要がある。これにより、量子化ノイズの分布を可聴帯域外にシフトすることができる。
その一方、ノイズシェーピング処理の演算において、アンダーフローやオーバーフローが発生すると、波形情報が失われるため、可聴帯域内にノイズ成分が発生してしまう。このように演算処理によって波形情報が失われる信号レベルの範囲を不感帯という。図6(b)に示すように、PCMデータ等の入力されるデータに対してノイズシェーピング処理を実行すると、ローパスフィルタの出力電圧が0[V]付近となる不感帯の領域においては、アンダーフローが発生し、ノイズシェーピング処理の効果を発揮させることができずに可聴帯域内においてノイズが生成されてしまう。
また、このノイズシェーパ130は、誤差データに対して1サンプリング周期毎の遅延時間を与える複数の遅延回路133(133-1〜133-4)と、所定の係数を有し、各遅延回路133から出力されたデータに対して当該係数を乗算する複数の係数器134(134-1〜134-4)と、一サンプル周期毎に遅延された誤差データを入力されたデータに順次加算する複数の加算器135(135-1〜135-4)とを備え、所定のタイミングにおいて又は入力された波形データの値に基づいて、各係数器134の係数を切り換えるようになっている。
通常、ローパスフィルタ190の出力電圧は、当該ローパスフィルタ190の駆動電圧をVDD、PWM信号におけるハイレベル期間をton、及び当該PWM信号におけるローレベル期間をtoffとすると、ローパスフィルタ190の出力電圧(Vout)は、(式7)に示すように、期間(ton)と期間(toff)の比によって定まる。
具体的には、本実施形態の専用PWM信号生成部160は、図11(a)に示すように、余弦波データ(例えば、値が正となる際の上位13ビット)を、サンプリング周期を基準に加算し、当該加算された値がオーバーフローした場合に、所定の幅(最小幅)を有する専用PWM信号を生成し、PWM信号生成部150に代えて、生成したPWM信号を専用PWM信号として第2スイッチング部180を介してドライブ回路170及びローパスフィルタ190に出力するようになっている。
比較器163は、入力処理部161にて整形された13ビットのビットデータと基準値Drefとを比較し、ビットデータが基準値Dref以下のときは、「0」を出力し、ビットデータが基準値Drefを上回るときは、当該ビットデータを出力する。
また、上述した専用PWM信号生成部160において、加算器164及び遅延回路162-3は、波形データを1サンプリング周期毎に累算して累算データを生成し、累算データの値が所定の値を超えるとオーバーフローして累算データの値をゼロにリセットする手段として機能し、判定部165及び生成部166はオーバーフローを検出して1サンプリング周期だけPWM変調信号のレベルをハイレベルに設定する手段として機能する。
この結果、本実施形態のD級増幅装置100は、起動時又は停止時に出力回路における急激な出力電圧の変化に伴い発生するノイズを抑制することができるとともに、デジタル波形を用いることによって簡易な構成にてポップアップノイズの防止及び容易に波形の設定又は変更を行うことができるので、小型化や部品点数の削減に基づく製造コストを低減すること、及び、波形の容易な設定又は調整に基づく操作性の向上やシステムを構築する際の柔軟性を実現することができる。
Claims (5)
- 第1レベルと第2レベルとの2値の出力電圧を出力するD級増幅装置であって、
増幅動作の開始直前の開始期間又は増幅動作の終了直後の終了期間の少なくも一方を特定期間とし、前記第1レベルと前記第2レベルとの中心のレベルを中心レベルとしたとき、前記特定期間において前記第1レベルと前記中心レベルとの間でレベルが次第に変化する波形を示すn(nは自然数)ビットの波形データを所定のサンプリング周期で生成するデータ生成部と、
前記波形データにノイズシェーピング処理を施してm(mはn>mの自然数)ビットの変換データを生成するノイズ除去部と、
前記変換データをパルス幅変調してパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調部と、
前記パルス幅変調信号をシングルエンド形式で増幅して前記出力電圧を出力する出力部とを備え、
前記ノイズ除去部は、前記ノイズシェーピング処理において不感帯で演算が行われないように前記波形データの値に応じて前記ノイズシェーピング処理の次数を変更する、
D級増幅装置。 - 第1レベルと第2レベルとの2値の出力電圧を出力するD級増幅装置であって、
増幅動作の開始直前の開始期間又は増幅動作の終了直後の終了期間の少なくも一方を特定期間とし、前記第1レベルと前記第2レベルとの中心のレベルを中心レベルとしたとき、前記特定期間において前記第1レベルと前記中心レベルとの間でレベルが次第に変化する波形を示すn(nは自然数)ビットの波形データを所定のサンプリング周期で生成するデータ生成部と、
前記波形データにノイズシェーピング処理を施してm(mはn>mの自然数)ビットの変換データを生成するノイズ除去部と、
前記変換データをパルス幅変調してパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調部と、
前記パルス幅変調信号をシングルエンド形式で増幅して前記出力電圧を出力する出力部とを備え、
前記ノイズ除去部は、前記ノイズシェーピング処理において不感帯で演算が行われないように前記特定期間の開始からの時間に応じて前記ノイズシェーピング処理の次数を変更する、
D級増幅装置。 - 前記パルス幅変調部は、前記波形データの値が所定値未満の場合に、前記パルス幅変調信号のハイレベル期間とローレベル期間との比であるデューティー比を次第に変化させることを特徴とする、
請求項1又は2に記載のD級増幅装置。 - 前記パルス幅変調部は、前記特定期間の予め定められた時刻間にて、前記パルス幅変調信号のハイレベル期間とローレベル期間との比であるデューティー比を次第に変化させることを特徴とする、
請求項1又は2に記載のD級増幅装置。 - 前記パルス幅変調部は、
前記波形データを1サンプリング周期毎に累算して累算データを生成し、前記累算データの値が所定の値を超えるとオーバーフローして前記累算データの値をゼロにリセットする累算部と、
前記累算部のオーバーフローを検出して1サンプリング周期だけ前記PWM変調信号のレベルを前記第2レベルに設定する生成部とを備え、
前記生成部からハイレベル期間とローレベル期間との比であるデューティー比を次第に変化させる前記パルス幅変調信号を取り出す、
請求項3又は4に記載のD級増幅装置。
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