JP4306860B2 - 構造用耐食鋼の製造方法 - Google Patents

構造用耐食鋼の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、住宅,土木・建築等で構造用部材として使用され、溶接部の粒界腐食が抑制され、優れた低温靭性を示す構造用耐食鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄骨構造のプレハブ住宅では、柱,梁等に亜鉛めっき鋼板や塗装鋼板が使用されている。柱や梁の接合には、主としてボルト・ナットを用いた機械的固着が採用されているが、部分的な溶接接合が避けられず、工事現場での溶接が余儀なくされている。
また、土木・建築で多用されている鋼矢板は、海岸に近い場所や海面よりも低い場所に使用されることが多く、地下水に海水が混じった腐食性の強い環境に曝され易い。しかも、長期にわたる工事では鋼矢板が腐食性環境に曝されつづけ、或いは工事完了後においても土中に埋設した鋼矢板をそのまま継続使用することもある。この種の鋼矢板も溶接して使用することがあり、耐食性に優れていることが要求される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、亜鉛めっき鋼板や塗装鋼板を溶接して構造体として使用する場合、溶接性を確保するためめっき層や塗膜が部分的に剥離される。めっき層や塗膜が剥離した部分では、下地鋼を保護する作用が失われ或いは劣化しているため、後補修によって耐食性を回復させる必要がある。
後補修には、たとえば亜鉛粉末を主成分とするペイントをめっき層に塗布する方法や、劣化した塗膜の上に新たな塗膜を形成する後塗装が採用されている。しかし、何れの方法によっても、耐食性や耐久性に問題がある。すなわち、塗装前処理を完全に行えない後補修では、後塗装した部分の塗膜密着性が不十分になりやすく、しかもプレめっきやプレコートしたものと同等の耐食性を呈する適切な補修部材がないこと等から、補修した溶接部であっても耐食性が劣る。
また、切断端面や加工部では、めっき層の犠牲防食作用が及ばず、塗膜の破損に起因して防食効果も損なわれている。更には、補修できない部分が裏面側にあり、この部分での耐食性が結果的に構造体全体の耐久性を左右することになる。このように、構造体の耐久性向上に関しては、従来のめっき鋼板や塗装鋼板を使用するものでは限界がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、めっき鋼板や塗装鋼板等でみられた溶接部,切断端面,加工部等において耐食性の低下がほとんどなく、溶接後に後補修も必要とせずに裸使用可能な構造用耐食鋼の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の構造用耐食鋼の製造方法は、その目的を達成するため、C:0.04質量%以下,Si:1.0質量%以下,Mn:0.3〜2.0質量%以下,P:0.08質量%以下,S:0.03質量%以下,Cr:7.0〜16.0質量%,Ni:0.08〜2.0質量%,Cu:2.0質量%以下,N:0.04質量%以下を含み、残部がFe及び不可避的不純物の組成をもち、次式(1)で定義される値γmaxが80以上に調整されている鋼材を、
熱間圧延した後、
700〜850℃に3〜20時間加熱した後徐冷する拡散焼鈍を施すことを特徴とする。
(式1)
γmax=420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn
−11.5(Cr+Si)+189
【0005】
好ましくは、C:0.03質量%以下,Si:0.8質量%以下,Mn:0.5〜1.0質量%,P:0.08質量%以下,S:0.02質量%以下,Cr:10.0〜13.0質量%,Ni:0.08〜1.0質量%,Cu:1.0質量%以下,N:0.03質量%以下の組成範囲に調整される。
この構造用耐食鋼は、熱間圧延した後、拡散焼鈍又は酸洗、或いは拡散焼鈍後に酸洗することにより製造される。拡散焼鈍には、700〜850℃に3〜20時間した後、徐冷する条件が採用される。
熱延後の鋼帯は、ショットブラスト工程を経ずに或いはガラスビーズ又はステンレス鋼ビーズを用いてショットブラストした後、酸洗できる。酸洗には、たとえば組成0.3〜10質量%HF+5〜20質量%HNO,温度40〜60℃の最終酸洗浴が使用される。
【0006】
【実施の態様】
住宅,土木・建築用に使用される鋼材に要求される特性は、基本的に耐食性及び低温靭性である。耐食性に関しては、耐孔食性,溶接部の耐粒界腐食性のほか、用途によっては赤錆流れのないことが必要となる。耐孔食性の向上には、一定量以上のCr添加が有効であり、溶接部の耐粒界腐食性は溶接熱影響部の金属組織において一定量以上のマルテンサイトを含ませることが有効である。本発明者等の調査研究によるとき、前掲した式(1)で定義される値γmax が80以上となるように合金成分を調整するとき、耐粒界腐食性が大幅に改善されることが判った。
【0007】
赤錆流れは、鋼材の製造工程において酸洗を施してミルスケールや酸化スケールを除去することにより抑制される。また、酸洗槽に鋼帯を浸漬する前工程として通常実施されている鋼球を用いたショットブラストが酸洗仕上げ材の耐食性を阻害することから、ショットブラストを省略することによっても耐食性の向上が図られる。
溶接部の靭性は、溶接熱影響部の組織を微細なマルテンサイトが一定量以上含まれるように、鋼成分から計算される値γmax を調整し、且つ軟質のマルテンサイトにするために鋼中のC及びNを低減する必要がある。
【0008】
以下、本発明の耐食鋼に含まれる合金成分、含有量等について説明する。
C:0.04質量%以下
高温に加熱された鋼材のγ領域を広くし、冷却後のマルテンサイト量を増加させるのに有効な合金成分である。Cは、Nと共に溶接熱影響部のマルテンサイト量増加に大きく寄与するが、C及びNの多い鋼種では材質が硬質して靭性を劣化させる。また、耐孔食性に影響を及ぼさないものの、溶接時の加熱,冷却によって炭化物を形成し粒界腐食感受性を高めることから、本発明においてはC含有量の上限を0.04質量%(好ましくは、0.03質量%)に設定した。
【0009】
Si:1.0質量%以下
フェライト形成元素であるSiが多量に含まれると、本発明で必要とされるマルテンサイト量を確保するためにNiやCuの多量添加が必要になり、鋼材のコストを上昇させる原因になる。そこで、本発明においては、Si含有量の上限を1.0質量%(好ましくは、0.8質量%)に設定した。
【0010】
Mn:2.0質量%以下
比較的安価なオーステナイト形成元素であり、マルテンサイト量を確保するために必要な量を添加する。しかし、過剰量のMnが含まれると、鋼中に不純物として存在するSと結合し、化学的に不安定な硫化物MnSを形成して耐蝕性を劣化させる。また、鋼中に固溶するMnも耐蝕性に有害な作用を呈する。そこで、本発明においては、Mn含有量を2.0質量%以下(好ましくは、0.5〜1.0質量%)に設定した。
【0011】
P:0.08質量%以下
耐蝕性の向上に有効な合金成分であり、特にMo等の耐蝕性改善元素を添加することなくCr含有量を下げた鋼種にあっては有用な成分である。しかし、P含有量が過剰になると、粒界に偏析し、高温域での変形能を下げ、熱間加工性を劣化させる影響が現れるので、P含有量の上限を0.08質量%とした。
S:0.03質量%以下
Mnと反応して硫化物MnSを生成し孔食の起点になるものの、孔食の成長を促進させて穴明きに至る原因とはならないことから、本発明では通常のステンレス鋼に許容される量として0.03質量%にS含有量の上限を設定した。
【0012】
Cr:7.0〜16.0質量%
耐蝕性の確保に有効な不動態皮膜を形成する上で、重要な合金成分である。住宅の柱,梁等のように屋内や乾燥した土中等のマイルドな環境で使用される用途にあっては、7質量%程度のCr添加で目標とする耐蝕性が得られる。他方、土木・建築等の比較的腐食性の強い環境で使用される用途にあっては、11質量%以上のCr添加が必要である。耐蝕性はCr含有量の増加に応じて向上するが、過剰のCrを添加するとγmax≧80を維持するためにC,Ni等の添加量を多くすることが必要になり、鋼材のコストを上昇させることになる。したがって、本発明ではCr含有量を7.0〜16.0質量%(好ましくは、10.0〜13.0質量%)の範囲とした。
【0013】
Ni:0.08〜2.0質量%
CやNと同様に高温域でγ領域を広げる作用を呈し、冷却後のマルテンサイト量を増加させる上で有用な合金成分である。しかも、CやNと異なり、軟質なマルテンサイトが得られる。本発明が対象とする鋼種にあっては、Ni,Cuの添加により通常よりもマルテンサイト量を増加させ、耐粒界腐食性や溶接部靭性を確保している。しかし、多量のNi添加は鋼材コストを上昇させる原因となるので、本発明においては、Ni含有量を0.08〜2.0質量%(好ましくは、1.0質量%)に設定した。
【0014】
Cu:2.0質量%以下
Niに比較して安価な合金成分であり、Niと同様な冷却後のマルテンサイト量を増加させる作用を呈する。しかし、過剰量のCu添加は熱間加工性を低下させて熱延板の品質を損なうので、本発明においてはCu含有量の上限を2.0質量%(好ましくは、1.0質量%)に設定した。
N:0.04質量%以下
Cと同様に溶接熱影響部のマルテンサイト量を増加させる。しかし、マルテンサイトを硬質化させて良好な低温靭性が得られないので、本発明においてはN含有量の上限を0.04質量%(好ましくは、0.03質量%)に設定した。
【0015】
γmax =420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn
−11.5(Cr+Si)+189≧80
値γmax は、合金成分と溶接部の金属組織中のマルテンサイト量を合金成分の含有量で表わした指標である。後続する実施例でも説明するように、値γmax が80以上となるように成分調整すると、溶接部の耐粒界腐食性及び低温靭性が改善される。
【0016】
拡散焼鈍:
以上のように成分調整された鋼材は、常法に従った熱間圧延後に拡散焼鈍を施すことが好ましい。拡散焼鈍により、低温靭性が向上する。拡散焼鈍としては、700〜850℃に3〜20時間加熱した後で徐冷する条件が採用される。焼鈍温度が高いほどCの拡散速度が大きくなり焼鈍時間を短縮できるが、焼鈍温度が高すぎてAc変態点(フェライト相からオーステナイト相に変態開始する温度)を超えるとオーステナイト相が生成し、冷却後にマルテンサイトとなるため、本発明では焼鈍温度の上限を850℃に設定した。他方、焼鈍温度が低いとCの拡散速度が遅くなるため、長時間の焼鈍が必要になるので、焼鈍温度の下限を700℃に設定した。焼鈍時間は、高温で短時間,低温で長時間となり、焼鈍温度との関係で選定されるが、工業的な観点から3〜20時間の範囲で設定される。
拡散焼鈍された鋼帯は、次いで酸洗によって表面の酸化スケールが除去される。このとき、鋼球等を用いたショットブラストを施すことなく、焼鈍後の鋼帯を酸洗槽に導入することが好ましい。ショットブラストを施す場合には、ガラスビーズ,ステンレスビーズ等を使用することが好ましい。鋼球やホワイトアランダムをショットに使用すると、ショットの破片がステンレス鋼板に食い込み、耐食性を阻害する虞れがある。酸洗では、具体的にはフッ酸0.3〜10質量%,HNO5〜20質量%の酸液を最終酸洗浴として用い、温度40〜60℃で鋼帯を酸洗する。
【0017】
【実施例1】
表1に示した組成の各Cr含有フェライト系ステンレス鋼を熱間圧延し、板厚4.5mmの鋼板を製造した。表1において、鋼種番号1〜3は比較鋼、鋼種番号4,5は本発明に従った耐食鋼、鋼種番号6はSUS409L鋼である。
【0018】
Figure 0004306860
【0019】
各フェライト系ステンレス鋼をMAG溶接し、長手方向に沿って板幅中央に溶接ビードがくるように試験片を切り出した。各試験片をJIS G0575に既定されている「 ステンレス鋼の硫酸・硫酸銅腐食試験方法」 に供し、溶接部の耐粒界腐食性を調査した。粒界腐食試験では、本発明が対象とする鋼種ではCr含有量が少ないことから母材が腐食しないように、60℃に下げた試験温度を採用した。
表1の試験結果にみられるように、粒界腐食は鋼材のγmax と密接に関連していた。すなわち、それぞれの合金成分の含有量が本発明で既定した条件を満足していても、γmax が80未満の鋼材1〜3では粒界腐食に起因する割れが発生した。他方、γmax が80以上の本発明鋼4〜5では粒界腐食による割れが発生していなかった。なお、鋼種番号6のSUSH409Lでは、TiでCを固定しクロム炭化物の析出を抑制しているため粒界腐食が発生していなかった。
【0020】
また、熱延まま材及び拡散焼鈍材から切り出した試験片を用いて、−25℃のシャルピー衝撃試験により、母材の靭性を調査した。なお、拡散焼鈍材は、鋼のAC1変態点以下の750℃に6時間加熱した後、炉冷することにより用意した。シャルピー衝撃試験では、構造材用途で多用されている炭素鋼の同じ温度−25℃における衝撃値70J/cm2 を基準にした。各試験片ごとに試験を3回繰り返し、試験結果の平均値を表1に示した。
表1にみられるように、衝撃値も鋼材のγmax に関連しており、何れの鋼材も焼鈍材に比較して熱延まま材の方が若干低い衝撃値を示した。また、γmax が80未満の鋼材1〜3では、SUSH409Lを含め目標値70J/cm2 に達しなかった。以上の結果から、γmax を80以上とすることにより、溶接施工を伴う構造材に要求される耐粒界腐食性及び低温靭性の双方共に要求特性を満足する鋼材が得られることが判った。
【0021】
更に、表1の鋼種番号5の鋼材から、拡散焼鈍で酸化スケールが生成したもの,拡散焼鈍後に鋼球を用いてショットブラストし酸洗したもの,ショットブラストすることなく酸洗したものの3種類の試験片を用意した。図1に示す人工海水噴霧→湿潤→乾燥→降雨→乾燥を繰り返すサイクル試験(CCT)で、各試験片の耐孔食性を調査した。このサイクル試験は、60サイクルが国内の一般海岸における1年間の曝露に相当する。なお、酸洗では、8%の硝酸に1%のフッ酸を添加した温度50〜60℃の酸洗液に試験片を90秒間浸漬した。
図1の試験結果にみられるように、孔食による侵食深さは、拡散焼鈍まま材>ショットブラスト+酸洗材>ショットブラストしない酸洗材の順になっている。侵食深さの挙動をみると、初期段階では試験サイクルが多くなるに従って漸次増加しているが、150サイクル前後で侵食深さがほぼ一定になる傾向が見られた。これは、実際の曝露試験でみられる2〜3年で孔食深さが一定になる挙動と一致している。拡散焼鈍材で侵食深さがもっとも大きくなっていることから、酸化スケールによって耐孔食性が低下することが示されている。また、酸洗材であっても、鋼球でショットブラストしたものでは侵食が深くなっている。これは、ショットブラストの際に鋼球の破片が母材に食い込み、結果として酸洗で酸化スケールを完全に除去できなかったことが原因であると考えられる。
以上の結果から、孔食深さの許容範囲を強度への影響が無視できるレベルとして板厚の5%までとすると、屋外の使用ではショットブラストすることなく酸洗した材料が好ましいことが判る。
【0022】
【実施例2】
表2に示した組成をもち、拡散焼鈍したままの熱間圧延板から試験片を切り出し、耐土壌腐食性を調査した。比較材としては、JIS A5528に既定されている熱間圧延鋼矢板を使用した。
【0023】
Figure 0004306860
【0024】
耐土壌腐食性試験では、図2に示すように真砂を充填した樹脂製容器に2枚の試験片をそれぞれ異なる深さで埋設した。上水に試薬特級のNaClを加えてCl- 濃度を100PPMに調製した試験液を用意し、下部の試験片2が漬かるように試験液を樹脂製容器に注入した。そして、2枚の試験片1と2の間に流れる腐食電流を測定し、測定値に基づいて耐蝕性を評価した。
図3の試験結果にみられるように、従来の鋼矢板では、下部の試験片2にアノード電流が継続して流れ、腐食が進行していることが判る。これに対し、本発明の耐食鋼では、下部の試験片2に流れるアノード電流が極めて小さく、腐食の発生又は成長がほとんどみられない。この結果から、本発明に従った耐食鋼は、海岸又はそれに近い土壌に埋設されて使用される用途においても優れた耐蝕性,耐久性を示すものといえる。
【0025】
【実施例3】
本実施例では、表3に示す鋼材を用い、機械的性質,溶接部靭性,住宅内の環境をシミュレートした腐食試験における耐蝕性を調査した。表3において、鋼種番号8はγmax が80以上であるがC量が本発明で既定した範囲を外れる比較鋼,鋼種番号9及び10は本発明鋼,鋼種番号11はSUS409Lである。何れの鋼材も板厚4.5mmに熱間圧延し、鋼種番号10,11を除き拡散焼鈍を施した後、ショットブラストせずに酸洗した。鋼種番号10,11では、950℃に急速加熱して冷却する短時間焼鈍を施した。また、比較のため、めっき付着量が片面当たり90g/m2 の溶融亜鉛めっき鋼板を鋼種番号12として使用した。
【0026】
Figure 0004306860
【0027】
構造材としてはめっきの下地鋼としてSS400が多用されているので、SS400の引張強さ400〜510N/mm2 を目安として各種鋼材の機械的性質をみると、表4にみられるように熱延ままの状態では引張強さが著しく高く、加工性を重視した用途では拡散焼鈍の必要なことが判る。なお、比較材である鋼種番号11は、引張強さが400N/mm2 に届かず、構造材用途としては強度が不足している。
【0028】
Figure 0004306860
【0029】
MAG溶接では、309LCを溶接芯線に用い、溶接入熱10kJ/cm程度の条件で溶接した。溶接された各鋼材から、靭性が最も低くなる熱影響部に切り欠き位置を設定したシャルピー試験片を切り出した。シャルピー試験は−25℃で3回行い、その平均値を衝撃値として求めた。
表4の試験結果にみられるように、SS400の熱影響部での衝撃値は、鋼種番号12で示すようにほぼ60J/cm2 であるから、構造材として用いる場合にはこの程度の衝撃値が必要とされる。
鋼種番号8は、γmax が80以上の鋼材であるが、C量が高いために衝撃値が60J/cm2 に達していない。他方、本発明に従った鋼種番号9及び10では、溶接熱影響部のマルテンサイト量が90%以上となっており、熱影響部の衝撃値は何れもSS400と同等以上の値を示し、靭性に優れていた。また、鋼種番号11では、溶接部の靭性が著しく低く、構造材としての用途には適さなかった。
【0030】
更に、住宅環境用構造材として要求される特性を調査するため、図4に示す試験方法で耐蝕性を評価した。この試験方法では、MAG溶接材を試験片として用い、沖縄の海岸沿いに位置する住宅の床下部材に付着する海塩粒子の100年分に相当する海塩粒子量を予め試験片に付着させて乾燥・湿潤するサイクルを50回繰り返した。
試験後の各試験片に発生した孔食の深さを測定し、耐孔食性を調査した。表4の試験結果にみられるように、Cr含有量が11〜12重量%の鋼種番号8〜11では、腐食形態が孔食であって、何れも0.1mm程度の浅い食孔であった。しかも、溶接部に孔食が集中することがなく、母材部,溶接部共に耐蝕性が優れていた。これに対し、亜鉛めっき鋼板では、腐食が溶接部に集中し、深さ0.5mmの侵食が発生していた。このことから、めっき層の耐久性評価は難しいが、亜鉛めっき鋼板では溶接後に補修が必要であるといえる。
【0031】
更に、住宅環境用構造材として要求される特性を調査するため、図4に示す試験方法で耐蝕性を評価した。この試験方法では、MAG溶接材を試験片として用い、沖縄の海岸沿いに位置する住宅の床下部材に付着する海塩粒子の100年分に相当する海塩粒子量を予め試験片に付着させて乾燥・湿潤するサイクルを50回繰り返した。
試験後の各試験片に発生した孔食の深さを測定し、耐孔食性を調査した。表4の試験結果にみられるように、Cr含有量が11〜12質量%の鋼種番号8〜11では、腐食形態が孔食であって、何れも0.1mm程度の浅い食孔であった。しかも、溶接部に孔食が集中することがなく、母材部,溶接部共に耐蝕性が優れていた。これに対し、亜鉛めっき鋼板では、腐食が溶接部に集中し、深さ0.5mmの侵食が発生していた。このことから、めっき層の耐久性評価は難しいが、亜鉛めっき鋼板では溶接後に補修が必要であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 屋外での使用を想定した複合サイクル試験における侵食深さの変化を表わしたグラフ
【図2】 土壌腐食試験の説明図
【図3】 土壌腐食試験結果のグラフ
【図4】 住宅内の腐食環境を模擬した試験方法の説明図

Claims (3)

  1. C:0.04質量%以下,Si:1.0質量%以下,Mn:0.3〜2.0質量%,P:0.08質量%以下,S:0.03質量%以下,Cr:7.0〜16.0質量%,Ni:0.08〜2.0質量%,Cu:2.0質量%以下,N:0.04質量%以下を含み、残部がFe及び不可避的不純物の組成をもち、次式(1)で定義される値γmaxが80以上に調整されている鋼材を、
    熱間圧延した後、
    700〜850℃に3〜20時間加熱した後徐冷する拡散焼鈍を施すことを特徴とする、構造用耐食鋼の製造方法。
    (式1)
    γmax=420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn
    −11.5(Cr+Si)+189
  2. C:0.03質量%以下,Si:0.8質量%以下,Mn:0.5〜1.0質量%,P:0.08質量%以下,S:0.02質量%以下,Cr:10.0〜13.0質量%,Ni:0.08〜1.0質量%,Cu:1.0質量%以下,N:0.03質量%以下を含み、残部がFe及び不可避的不純物の組成をもち、次式(1)で定義される値γmaxが80以上に調整されている鋼材を、
    熱間圧延した後、
    700〜850℃に3〜20時間加熱した後徐冷する拡散焼鈍を施すことを特徴とする、構造用耐食鋼の製造方法。
    (式1)
    γmax=420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn
    −11.5(Cr+Si)+189
  3. 拡散焼鈍した鋼帯を、ショットブラスト工程を経ずに或いはガラスビーズ又はステンレス鋼ビーズを用いてショットブラストした後、酸洗する請求項1又は2記載の構造用耐食鋼の製造方法。
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