JP4305103B2 - 自動車足回り用Fe−Cr系合金 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車足回り部材に適したFe−Cr系合金、特にZn含有塗料塗布型Fe−Cr系合金に関する。
自動車足回り部材に要求される特性のうち主なものは下記の通りである。
(1) 車体等に溶接されるため、溶接構造部材としての溶接部靭性が必要である。特に溶接熱影響部(HAZ)の特性は、鋼そのものの特性の影響を受けるので、HAZの特性を良好にすることが重要である。
(2) 自動車足回り部材は、その成形や組立てによって、隙間部が形成されるので、実使用環境下においては、その隙間部に路面からの水や泥、海塩粒子、融雪塩等が付着、浸透するので、塩害環境における、特に隙間腐食という観点からの耐食性確保が必要である。
(3) 構造部材のため引張強度(TS)が450〜650MPa 程度の高強度の必要がある。
要するに、従来、自動車足回り部材は、少なくとも溶接部靭性、耐食性(特に隙間部耐食性)、強度(特に溶接部強度)の全てに優れた素材が求められていた。例えば、普通鋼の高張力鋼に、防錆塗料を電着塗装したり、めっきを施して自動車足回り部材を製造する場合、塗装やめっき等に起因して発錆しないような防錆仕様を十分な品質管理下で行う必要があった。そのため、加工後の端部、傷部、溶接部等に塗装やめっき等の斑がないように防錆処理を施すための大型設備が必要になり、生産性が低下し、塗装費用の増加、塗装負荷の増大が避けられなかった。
そこで、塗装またはめっき工程を簡略化でき、しかも防錆仕様の簡略化が可能で、耐食性に優れた高強度ステンレス鋼が自動車足回り部材として注目されるようになった。
例えば、溶接部強度と靭性を向上させたCr含有ステンレス鋼(例えば、特許文献1)、さらなる耐食性の向上を目的として、Vを添加したステンレス鋼(例えば、特許文献2)のように、鋼の成分を調整して、各種特性を改善する方法が種々検討されてきた。
しかし、これらの従来技術は、そもそも無塗装で鋼の耐食性を向上させることを前提としている。したがって、塩害環境における耐食性確保のためには相当多量なCrを含有させる必要があった。また、自動車足回り部材としての強度・靭性を確保するために、鋼をマルテンサイト組織にする場合、オーステナイト安定化元素であるNi、Cu等の高価な合金元素を含有させる必要があった。
特開平55−21566号公報 特開2002−20844号公報
安価な低Cr鋼を、自動車足回り部材に適用する場合、耐食性が不足するので、簡便な耐食性の向上手法の開発が望まれていた。本発明は、耐食性、強度、加工性、靭性、溶接性に優れ、自動車足回り部材に適用可能なFe−Cr系合金を提供することを目的とする。
本発明者は、Znの犠牲防食効果に注目し、低Cr鋼の加工品の隙間部、溶接部、異種金属接合部に部分的または全体的にZn含有塗料を塗布することで、Znの犠牲防食によりCrやMoなどの合金元素を過度に含有させることなく、従来の高価な高耐食性ステンレス鋼に代替可能なFe−Cr系合金(低Cr鋼)を見出し、本発明を完成した。
本発明は、質量%でC:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.5〜5.0%、P:0.05%以下、S:0.020%以下、Cr:6〜15%、Al:1.0%以下、Mo:0.1%以上3.0%以下、Ni:0.1%以上1.0%以下N:0.03%以下およびCu:2.0%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、引張強度(TS)が450〜650MPaを有するFe−Cr系合金に、塗膜中のZn含有量(X)が下記式(1)で規定される範囲となるZn含有塗料を厚さ5〜50μmになるように塗布し、加工品の隙間部の耐食性を向上させたことを特徴とするZn含有塗料塗布型自動車足回り用Fe−Cr系合金である。
70≧X≧70−{2.7×(Cr+3.3Mo)}・・・・・(1)
ただし、Xは塗膜中のZn含有量(質量%)、
CrはFe−Cr系合金中のCr含有量(質量%)、
MoはFe−Cr系合金中のMo含有量(質量%)。
前記Fe−Cr系合金は、さらに質量%でB:0.0003〜0.005%を含有することが好ましい。
前記自動車足回り用Fe−Cr系合金のZn含有塗料のZnの平均粒子径は、3μm以下であることが好ましい。
本発明によると、隙間部の耐食性を塗料中のZnの犠牲防食により補うことで、高価なCr、Niなどを多量含有させたFe−Cr系合金に代わり、Cr、Ni含有量を低めに押さえた安価なFe−Cr系合金を、塩害環境における高耐食性、高強度、良好な加工性、高い靭性および良好な溶接性と、それらの良好なバランスが要求される自動車足回り部材として適用可能になった。
本発明の自動車足回り部材に使用されるFe−Cr系合金は、引張強度(TS)が450〜650MPa である。TSが450MPa 未満であると、強度が不足し、自動車足回り用部材に適用できない。逆にTSが650MPa を超えると、鋼が硬質化し、曲げなどの加工がむずかしくなる。本発明に使用されるFe−Cr系合金の成分と含有量(質量%)は下記の通りである。
Cr: 含有量6〜20%
Cr含有量が6%未満であると、屋内、屋外の大気環境で無塗装使用された場合、赤錆の発生が著しく、Zn含有塗料を塗布しても隙間部や飛び石部、端面での十分な耐食性確保が難しい。また、Cr、Moの含有量を減少させたことに対して、それを補うための塗料費用が高くなり、上記Zn含有塗料の効果が十分発揮されないため下限を6%とした。なお、好ましくはFe−Cr系合金としての耐食性をある程度確保できる11%以上が好ましい。なお、20%を超えるとFe−Cr系合金そのものの耐食性が向上し、赤錆発生が見られず、塗料塗布の必要性が少なくなるので、好ましい範囲は11〜15%である。
Si: 含有量1.0%以下
Siは脱酸作用があり、製鋼上必要な成分である。その効果を得るためには、0.1%以上の添加が好ましい。Si含有量が1.0%を超えると鋼が硬質化(固溶強化)するとともに、HAZに生成するマルテンサイト相の生成を阻害するため1.0%以下とした。好ましくは0.1〜0.5%である。
Mn: 含有量0.5〜5.0%
Mnは高温でのγ(オーステナイト)相を安定化させて焼き入れ性を高めるために必要な元素であるため、Mn含有量を0.5%以上とした。一方、Mn含有量が5.0%を超えると鋼が硬質化するとともに、HAZ靭性が低下するので上限を5.0%とした。好ましいのは1.0〜2.0%である。
P: 含有量0.05%以下
P含有量は、加工性、耐食性の点から極力低減した方が好ましい。低減することで鋼中に微細析出し、硬質化するリン化物の析出を抑制する効果もある。ただし、過度な低減は精錬負荷を増大し、生産性を低下させるため、0.05%以下、好ましくは0.01〜0.03%とした。
S: 含有量0.020%以下
S含有量は、耐食性確保のため極力低減することが好ましいが、製鋼時、脱S処理に懸かる経済的制限から上限を0.020%とした。好ましくは0.001〜0.01%である。
Al: 含有量1.0%以下
Alは製鋼上脱酸剤として重要な成分である。その効果を得るためには、0.01%以上の添加が好ましい。Al含有量が1.0%を超えると酸化物系介在物が生成しやすくなり、靭性を低下するためAl含有量の上限を1.0%とした。なお、加工性と脱酸効果を考慮すると0.02〜0.1%が好適である。
C: 含有量0.02%以下、
N: 含有量0.03%以下
C、NはFe−Cr系合金の加工性、耐食性、溶接部靭性に影響を与える元素である。特に、Cを0.02%を超え、Nを0.03%を超えて含有させると耐食性低下、硬質化が著しいため上限を定めた。なお、溶接部特性をも考慮すると、いずれも0.005%以下が好適である。
前記元素に加えて、さらに下記元素をそれぞれの観点から添加させるのが好ましい。
Mo: 含有量3%以下、
Cu: 含有量2%以下、
Mo、Cuは耐食性向上に有効な元素である。その効果を得るためには、それぞれ0.1%以上の添加が好ましい。ただし、Mo、Cuとも、Fe−Cr系合金を硬質化するとともに、Fe−Cr系合金の生産性を低下させるので、Moについては3.0%、Cuについては2.0%を上限とした。なお、加工性、耐食性の観点からMoは2.0%以下、Cuは0.5%以下が好適範囲である。
Ni: 含有量9.0%以下
Niは耐食性向上に有効な元素である。Niはオーステナイト生成元素であり、高Cr鋼でマルテンサイト組織を得るためには有効な元素である。その効果を得るためには、0.1%以上の添加が好ましい。しかしながら、Niは高価な元素であり含有量が多くなると、Znの犠牲防食効果が不要となるため上限を9.0%とした。なお、加工性、耐食性の観点から1%以下が好適である。
B: 含有量0.0003〜0.005%
Bは二次加工脆性改善に有効な元素である。特に自動車足回り部材は複雑な形状、形態に成形加工され、しかも氷点下の寒冷地で使用されることも多い。また、Bは粒界強度を高めることにも有効である。ただし、その効果を得るには、含有量を0.0003%以上とする必要がある。一方、0.005%を超えると、Fe−Cr系合金の加工性、靭性を損なうので、その範囲は0.0003〜0.005%である。好ましくは0.0005〜0.002%である。
なお、本発明の自動車足回り用Fe−Cr系合金においては、前記の各成分のほかに、Coを耐二次加工脆性改善の観点から、0.3%以下含有してもよい。また、不可避的不純物としてZr:0.5%以下、Ca:0.1%以下、Ta:0.3%以下、W:0.3%以下、Sn:0.3%以下、Mg:0.03%以下の範囲で含有していても、本発明の効果を減じるものではない。
本発明に使用されるFe−Cr系合金の製造方法は特に限定されないが、汎用鋼に適用されている製造方法をそのまま適用してもよい。製造方法の好適な1例について説明する。
連続鋳造して得られた、前記成分を前記の量で含有する鋼素材は、必要に応じて所定の温度に加熱され、熱間圧延により所定の板厚の熱延板にされ、続いてこの熱延板は、要求される強度レベルに応じて600〜900℃の温度範囲で箱焼鈍または800〜1100℃の温度範囲で連続焼鈍される。その後そのままもしくは必要に応じて酸洗して、加工品の成形に使用される。また、さらに焼鈍後の熱延板は、所定の板厚に冷間圧延され、その冷延板は、好ましくは700〜1050℃、より好ましくは700〜900℃の連続焼鈍、酸洗を経て、Fe−Cr系合金の冷延鋼板とされる。
なお、前記製造方法は、1例に過ぎず適宜変更することができる。
本発明に使用されるZn含有塗料は、通常、バインダー、添加剤および溶剤または希釈剤からなるが、その組成、調製方法は特に限定されない。Zn含有塗料を塗布して常温放置または必要に応じて加熱(焼付け)して乾燥すると、バインダー、添加剤とZnとからなる硬化した塗膜が形成される。前記添加剤は、塗料の分散あるいは塗膜の乾燥、硬化、諸物性の改良のために添加されるものであり、乾燥剤、硬化剤、可塑剤、乳化剤等である。
Zn含有塗料には、常温硬化型と加熱硬化型がある。バインダーとしては、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等やこれらの樹脂の組合わせ等が用いられる。無機バインダーとしては、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、ケイ酸ソーダ等が用いられる。
Zn粒子: 平均粒子径3μm以下
Znは犠牲防食によりFe−Cr系合金の耐食性を確保するために重要な元素である。Znは金属粒子であり、その平均粒子径は3μm以下である。平均粒子径が3μmを超えると、塗膜が薄い場合には、塗膜のFe−Cr系合金への密着性が悪くなる。またZn粒子が塗膜中に微細に分散していた方が、Znの犠牲防食性能が向上する傾向にあり、この点からも平均粒子径が3μm以下であるのが好ましい。好ましい平均粒子径は0.5〜2.0μmである。
なお、Zn粒子の粒子径は、1個のZn粒子の細大粒子径と最小粒子径を測定し、これを加算して2で割った値である。平均粒子径は塗布後の乾燥塗膜の断面を電子顕微鏡を用い、観察倍率400倍で、各5視野観察し、視野中の全ての各Zn粒子の粒子径を求め、これらを算術平均して求めた。
Fe−Cr系合金の耐食性は、孔食指数(Cr+3.3Mo)と正の相関があることが知られている。そこで、本発明者は、塗膜中のZn含有量と前記孔食指数の関係を調査した結果から、塗膜中のZn含有量が、70−{2.7×(Cr+3.3Mo)}以上である場合に、耐食性が十分に発揮され、Fe−Cr系合金の加工品の隙間部に要求される耐食性をも満足できることを見出した。
一方、Zn含有量が、乾燥塗膜全体の質量で70%を超えるとFe−Cr系合金表面への一次密着性が乏しくなる。特に飛び石等を受けた場合、塗膜そのものが剥離しやすく、また密着性も乏しくなり有効Zn量を確保することが難しい。また、Zn量が多くなるとZnが塗料の下に沈殿し、絶えず攪拌しないと塗料が不均一になるため、塗布作業の効率が悪くなる。そこで、効率よくZnを用いるためにZn含有量は耐食性と密着性の観点からその上限を70%と決定した。
以上の状況から、塗膜中のZn含有量(X)は下記の実験式(1)式で規定される範囲であることが重要である。
70≧X≧70−{2.7×(Cr+3.3Mo)}・・・・・(1)
ただし、Xは塗膜中のZnの含有量(質量%)で、
CrはFe−Cr系合金のCr含有量(質量%)であり、
MoはFe−Cr系合金のMo含有量(質量%)である。
塗膜中のZn含有量は、前記したように孔食指数、換言すれば、Fe−Cr系合金の耐食性に依存するので、耐食性の高い場合には、塗膜中のZn含有量をより少なくできるが、耐食性の低い場合には、塗膜中のZn含有量をより多くする必要がある。
ただし、Fe−Cr系合金中のCr含有量が20質量%を超えると、中性塩化物環境での耐食性が十分となり、塗膜が不要となるので、本発明が対象とするFe−Cr系合金は、前述したように、Cr含有量が20%以下の場合に限られる。
乾燥塗膜中のZn粒子の含有量(質量%)は、乾燥塗膜が鋼板に付着した状態で鋼板質量(W1 )を測定し、その後、塗膜剥離剤、例えば「ネオリバーSP−751」(三彩化工(株))を使用して、鋼板と塗膜を剥離分離し、鋼板を乾燥し、鋼板の質量(W2 )を測定した。続いて、除去した塗膜を硫酸または過塩素酸で溶解し、その溶液を原子吸光法で分析してZnの質量(W3 )を求めた。そして、W3 /(W1 −W2 )×100から乾燥塗膜中のZn粒子含有量を算出した。
防食塗膜: 乾燥膜厚5〜50μm
防食塗膜の膜厚はFe−Cr系合金の耐食性とZn含有塗膜のFe−Cr系合金に対する密着性の観点から決定される。すなわち、乾燥膜厚が5μm以下だとZn含有量が多くなるのに伴い密着性を確保することが難しくなる。また、Znの犠牲防食能力は塗膜の単位面積当たりのZn含有量に依存するが、乾燥膜厚が5μm以下だと有効Zn含有量を十分確保できない。一方、乾燥膜厚が50μmを超えると、品質過剰になるとともに、塗膜の乾燥時間が長くなり作業効率を低下させる。なお、過度な乾燥膜厚は密着性にも悪影響を及ぼすことがある。好ましい乾燥膜厚は10〜50μm、特に好ましい乾燥膜厚は15〜30μmである。なお、乾燥膜厚の測定は、塗布後の乾燥塗膜の断面を、観察倍率400倍で各5視野観察し、各視野について3か所膜厚を求め、これを平均したものを平均膜厚とし、さらに5視野の平均乾燥膜厚を平均して求めた。
本発明に使用される塗料のFe−Cr系合金への塗布方法は、スプレー塗装、刷毛塗り、塗料中への浸漬など、特に限定されない。構造体の生産ラインに合わせて適宜選択すればよい。
塗料は、硬化剤の種類によって常温硬化型と加熱硬化型に分けられる。常温硬化型の場合は、塗布後、常温放置する。また加熱硬化型の場合は、加熱して乾燥(焼付け)する。バインダーとZn粒子と添加剤からなる硬化膜、すなわち、耐食性に優れる塗膜が形成される。
本発明においては、Zn粒子を含有する塗膜をFe−Cr系合金の構造体表面に形成するが、その範囲は構造体に形成された隙間部を含む範囲であれば、構造体の局部の面であっても、構造体の全面であっても構わない。前記塗膜によって耐食性を高める必要があるのは特に隙間部であるから、その部分が最低限被覆されていれば、Fe−Cr系合金構造体全体の耐食性も十分である。
このように、Zn含有塗料をFe−Cr系合金の加工品に塗布して得られたZn含有塗料塗布型Fe−Cr系合金は、強度・溶接部特性・加工性・耐食性に優れ、かつこれらのバランスがよいので、自動車足回り部材への適用が可能である。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
例7〜37)
表1に示す成分組成の4種類のFe−Cr系合金を連続鋳造し、通常の熱間圧延条件で3.0mm厚の熱延板(板厚3mm)を製造した。この熱延板を700℃で8時間焼鈍した後、酸洗し、図1に示す断面形状の試験部材(長さ300mm、底面の幅60mm、高さ40mm、上面の幅10mm)にプレス加工した。
つぎに、試験部材の全面に、表2に示す乾燥塗膜でのZn含有量の塗料(バインダーはエポキシ樹脂、硬化剤は常温硬化型硬化剤)を表2に示す乾燥膜厚になるようにスプレー塗布し、1時間放置し乾燥して、塗膜を硬化させ、Zn含有塗料塗布型ステンレス鋼の試験部材1を得た。この試験部材1に、耐食性などを測定するための加工、処理を下記の要領で実施し、図2に示す状態の試験部材1を得た。なお、乾燥塗膜の膜厚とZn含有量および平均粒子径の測定は、前記同様に行った。
試験部材1の表面(Zn含有塗料の塗布あり)に、プラスチックと金属の隙間部を形成するために、プラスチッククリップ3を被せた。
試験部材1の底面に、JIS B7729およびJIS B7777に規定されたエリクセン試験機と試験方法に準拠し、直径15mm、高さ8mmのポンチを使用して、貫通孔(塗料の塗布なし)4を設けた。
試験部材1の底面(幅60mm、長さ80mm)に、玄武岩砕石(粒子径8〜12mm)100gを、常温20℃、圧力7kgf/cm2 で、垂直に投石して、底面に飛び石による傷を付け、グラベロ部5を設けた。グラベロ部5の形成はASTM D3170に準じた装置を用いて実施した。
試験部材1の長辺方向の端面(Zn含有塗料の塗料を塗布していない)2をTIG溶接した。
つぎに、試験部材1の5部分、すなわち、グラベロ試験(常温)によるグラベロ部5の部位、15mmφの貫通孔4、プラスチッククリップ3による隙間部、端面2およびTIG溶接部6を対象に、塩乾湿複合サイクル試験(CCT)により、図3に示すサイクルを120サイクル繰返した後の、錆発生状況を目視観察し、下記のような5段階で耐食性(腐食性)を評価した。結果を表2に示した。
1: 赤錆(直径1mmを超える点錆)・・・・・不合格
2: 軽微な赤錆(直径1mm以下の点錆)・・・不合格
3: しみ錆(直径1mmを超える点錆)・・・・合格
4: 軽微なしみ錆(直径1mm以下の点錆)・・合格
5: 錆なし・・・・・・・・・・・・・・・・合格
なお、前記評価試験において、飛び石試験は、飛び石、傷などの外部からの衝撃などによる塗膜密着性および耐食性を評価するものである。隙間部評価は、加工品の組立て時に形成された隙間部、または加工品が他部材と接触した時に形成された隙間部の耐食性を評価することを目的としている。
耐食性評価試験の結果、評点1が1個以上ある場合を不合格とした。
Figure 0004305103
Figure 0004305103
Figure 0004305103
Figure 0004305103





試験部材の形状を示す見取り図(a)と側面図(b)。 試験部材の外側表面(裏面)に耐食性等の評価のために施した前処理状況を示す説明図(a)と側面図(b)。 試験部材の塩乾湿複合サイクル試験のフローと条件を示す図。
符号の説明
1: 試験部材
2: 端面
3: プラスチッククリップ(隙間部)
4: 貫通孔
5: グラベロ部
6: TIG溶接部

Claims (3)

  1. 質量%でC:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.5〜5.0%、P:0.05%以下、S:0.020%以下、Cr:6〜15%、Al:1.0%以下、Mo:0.1%以上3.0%以下、Ni:0.1%以上1.0%以下N:0.03%以下およびCu:2.0%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、引張強度(TS)が450〜650MPaのFe−Cr系合金に、塗膜中のZn含有量(X)が下記式(1)で規定される範囲となるZn含有塗料を厚さ5〜50μmになるように塗布し、加工品の隙間部の耐食性を向上させたことを特徴とするZn含有塗料塗布型自動車足回り用Fe−Cr系合金。
    70≧X≧70−{2.7×(Cr+3.3Mo)}・・・・・(1)
    ただし、Xは塗膜中のZn含有量(質量%)、
    CrはFe−Cr系合金中のCr含有量(質量%)、
    MoはFe−Cr系合金中のMo含有量(質量%)。
  2. 前記Fe−Cr系合金が、さらに質量%でB:0.0003〜0.005%を含有することを特徴とする請求項に記載のZn含有塗料塗布型自動車足回り用Fe−Cr系合金。
  3. 前記Zn含有塗料のZnの粒子径が3μm以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のZn含有塗料塗布型自動車足回り用Fe−Cr系合金。
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