JP4306422B2 - セメントキルン抽気ダストの処理方法 - Google Patents

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本発明は、セメントキルンの塩素、アルカリ、及び硫黄の循環に低減するために、塩素バイパス等の抽気装置を用い焼成ガスの一部を抽気した際に同伴する、セレンを含むダスト(以下、抽気ダストと称す)の処理方法に関するものである。
塩素、アルカリ、硫黄含有物の多いセメント原料を使用した場合、セメントクリンカー中に含まれる塩素、アルカリ、硫黄の量が多くなり、セメントの品質に悪影響を与えるだけでなく、塩素、アルカリ、硫黄は蒸気圧の高い化合物を形成し、セメント装置内においてガス化して循環する前に、装置内の比較的温度の低い部分で凝縮してコーティングを形成するため、セメント製造上のトラブルの原因ともなっている。
この問題を解決するために、セメントキルンの窯尻部分から焼成ガスの一部を抽気して、セメント製造内を循環する塩素、アルカリ、硫黄の量を低減することが行われている。
しかし、このような焼成ガスの抽気を行うと、塩素、アルカリ、硫黄の含有量が多い抽気ダストが必然的に同伴し、このダストの処理方法が新たに問題になってくる。即ち、抽気ダストには塩素、アルカリ、硫黄以外にも鉛、カドミニウム、クロム、マンガン、鉄、セレンなど、水質汚濁防止法で規制された有害物質が含まれており、抽気ダストを未処理のまま埋め立て、廃棄を行えば環境汚染を引き起こすため、適切な方法で処理する必要がある。また、抽気ダストを廃棄するのではなく、セメント原料として再利用する場合にも、抽気ダスト中に含まれるアルカリ、塩素の量を低減した後に原料系に戻す必要がある。
抽気ダストに含まれるアルカリ、塩素化合物は水溶性であるから、除去するには水洗処理が最も適しているのは当然であり、既に公知である(例えば特許文献1及び2)。しかしながら、本文献では、第1鉄塩化物の添加量を制御する方法が明記されていなく、溶存している6価のセレン量が変動する抽気ダストの場合、実用化が困難になる恐れが生じる。
特開2002−273455号公報 特開平6−79286号公報
本発明は、セメントキルン抽気ダストを水洗処理し、固形分はセメント原料として再利用し、通常の3価の鉄イオンでは処理できないセレンが含有している水洗液を、水質汚濁防止法に係る排水基準値以下に除去して放流廃棄を可能にする処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、上記目的を達成し得ることを知見した。
すなわち、本発明は、以下の各工程からなることを特徴とするセメントキルン抽気ダストの処理方法に関する。
(1)セメントキルン抽気ダストに水を加えてスラリー化した後、固液分離する第1工程、
(2)第1工程で得られた固液分離後の液相(以下、原水と称す)に、該液相の酸化還元電位が−600mV以下になるまで第一鉄塩化合物を添加した後、pHを8〜10に調節し、高分子凝集剤を添加し、固液分離を行う第2工程であり、前記第2工程の第一鉄塩化合物が、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、又はこれらの水和物であり、
(3)第2工程で得られた固液分離後の液相に、第二鉄塩化合物を添加し、pHを8〜12に調節した後、高分子凝集剤を添加し、固液分離を行う第3工程であり、
前記第3工程の第二鉄塩化合物が、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、又はこれらの水和物であり、該第二鉄塩化合物の添加量が、前記原水中の全セレンに対して50〜300倍モル量であり、
前記第2工程及び第3工程の高分子凝集剤が、ポリアクリルアミド又はポリアクリル酸ソーダを含む高分子凝集剤であり、該高分子凝集剤の添加量が0.2〜4mg/lである。
本発明のセメントキルン抽気ダストの処理方法を実施すると、除去が極めて困難な6価セレンを4価に還元し固相として捕集し、固液分離後の液相中の全セレン(4価セレン、6価セレン)を水質汚濁防止法に係る排水基準値を充分クリアする程度まで低減することができ、放流が可能になる。
また、還元剤として用いる第一鉄塩化合物の必要量がその場で判断可能であり、過剰添加を避けられるため、少量の高分子凝集剤の添加で沈降分離が短時間で容易になる。その為、固相である含水量の多いスラッジ量が少なくなりスラッジの脱水処理も容易になる。
さらに、固形分は、セメント原料としての再利用が可能になる。
以下に本発明を詳細に説明する。また、本発明に係るセメントキルン抽気ダストの処理方法のフローを図1に示す。
本発明の第1工程は、セメントキルン抽気ダストに水を加えてスラリー化した後、固液分離する工程である。この工程で、塩化カリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カルシウム等のアルカリ金属塩を溶出させ固相として捕集する。抽気ダストの主成分は、アルカリ金属塩であることから、生成スラリーは高pH値を示す。水の添加量は固液分離した液相の塩素濃度が2質量%以下になるように加える。一般に海水の塩素濃度は0.005〜2質量%であり、液相の塩素濃度が2質量%以下であれば、処理排水をそのまま放流可能である。
本発明の第2工程は、第1工程で固液分離した液相(原水)に、該液相の酸化還元電位が−600mV以下になるまで第一鉄塩化合物を添加した後、pHを8〜10に調節し、高分子凝集剤を添加し、固液分離を行う工程である。この工程で、原水中の6価セレン(セレン酸)を3価の水酸化鉄と共沈し易い4価セレン(亜セレン酸)に還元させる。
第一鉄塩化合物としては、例えば、塩化第一鉄、塩化第一鉄・二水和物、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄・四水和物、硫酸第一鉄・五水和物、硫酸第一鉄・七水和物、ポリ硫酸第一鉄等が挙げられる。
第一鉄塩化合物の添加量は、該液相の酸化還元電位が−600mV以下、好ましくは−650mV以下になるまで添加する。液相の酸化還元電位が−600mV以下でないと
6価のセレンが4価に還元され難くなり、第3工程で生成する3価の水酸化鉄と共沈され難い6価のセレンが上澄み液に残るため好ましくない。
液相のpH調節剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。pHは8〜10、好ましくは9〜10に調節する。
本発明の第3工程では、第2工程で得られた固液分離後の液相に、第二鉄塩化合物を添加し、pHを8〜12に調節した後、高分子凝集剤を添加し、固液分離を行う工程である。
第二鉄塩化合物としては、例えば、塩化第二鉄、塩化第二鉄・六水和物、硫酸第二鉄、硫酸第二鉄・三水和物、硫酸第二鉄・六水和物、硫酸第二鉄・七水和物、ポリ硫酸第二鉄等が挙げられる。
第二鉄塩化合物の添加量は、原水に溶存している全セレン量に対し、鉄イオン換算で50〜300倍モル量、好ましくは100〜250倍モル量である。
液相のpH調節剤としては、第2工程同様、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。pHは8〜12、好ましくは9〜11に調節する。
本発明の第2及び第3工程で添加する高分子凝集剤は、水酸化鉄を主成分とする沈殿の凝集を促進して固液分離を容易にする効果を示す。高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド、又はポリアクリル酸ソーダを含む高分子凝集剤であれば良く、ノニオン系、カチオン系、アニオン系を問わずに使用できる。また高分子凝集剤の添加量は、0.2〜4mg/l、好ましくは0.5〜2mg/lである。
本発明の第1〜3工程で行う固液分離する方法は、一般に行われている方法、例えば、ろ過法、遠心分離法、沈降分離法等を利用することができる。
第4工程の固液分離で重金属およびセレンを排水基準値以下に低減させた液相は、そのpHを中性付近にまで低下させた後、放流することができる。また、第1〜3工程で得られた固相は、鉄を含むため、鉄源としてセメント原料に再利用可能である。
以下に具体例を示し、本発明を詳細に説明する。また、以下の実施例、比較例の結果を表1に示す。
(実施例1)
抽気ダスト250gに水2500gを加え、3時間攪拌しスラリー化した。スラリーは1μmの孔径のメンブランフィルターで固液分離を行い、得られたろ液(以下、原水1と称す)のpHは13.0、酸化還元電位は−117mVであった。
この原水1に含まれる全セレンは、JIS K 0102に準拠し、以下の方法で定量した。
即ち、原水1に硫酸及び硝酸を添加し、加熱し硫酸白煙発生後、室温まで放冷し、塩酸を加え、90〜100℃で10分間加熱し、放冷し、試料液とした。この試料液を水素化合物発生原子吸光分析装置にて全セレンの定量を行った。また、4価セレンは原水を前処理せず、水素化合物発生原子吸光分析装置にて定量を行った。6価セレンは、全セレンから4価セレンを差し引いた値とした。
全セレン(4価セレンと6価セレン)および6価セレンの含有量は夫々13、12mg/lであった。
上記原水1(250ml)のpHが8になるように水酸化ナトリウムを添加し、硫酸第一鉄・七水和物を添加した。この硫酸第一鉄・七水和物の添加量はこの液相の酸化還元電位が−656mVになるまで添加し、その後30分間攪拌混合した。
次いで上記高分子凝集剤を2mg/l添加して10分間攪拌混合し、静置10分後にこの処理液を5種Aのろ紙でろ過した。
上記ろ液に1mol/lの塩化第二鉄・六水和物を10.2ml(原水1に溶存している全セレン13mg/lの248倍モル量)添加して、水酸化ナトリウムを添加することによりpHを10に調節して30分間攪拌混合した。次いで高分子凝集剤を2mg/l添加して10分間攪拌混合し、静置10分後にこの処理液を5種Aのろ紙でろ過した。
上記ろ液を原水1の分析方法により定量を行った。全セレンは0.01mg/lであり、水質汚濁防止法に係る排水基準値の0.1mg/lをクリアした。
(実施例2)
抽気ダスト250gに水2500gを加え、3時間攪拌しスラリー化した。スラリーは1μmの孔径のメンブランフィルターで固液分離を行い、得られたろ液(以下、原水2と称す)のpHは12.0、酸化還元電位は−103mVであった。
この原水2に含まれる全セレンは、原水1の分析方法で定量した。
全セレン(4価セレンと6価セレン)および6価セレンの含有量は夫々49、4mg/lであった。
上記原水2(250ml)のpHが10になるように水酸化ナトリウムを添加し、硫酸第一鉄・七水和物を、液相の酸化還元電位が−706mVになるまで添加した。その後30分間攪拌混合した。
次いで上記高分子凝集剤を2mg/l添加して10分間攪拌混合し、静置10分後にこの処理液を5種Aのろ紙でろ過した。
上記ろ液に1mol/lの塩化第二鉄・六水和物を15.5ml(原水2に溶存している全セレン49mg/lの100倍モル量)添加して、水酸化ナトリウムを添加することによりpHを10に調節して30分間攪拌混合した。次いで高分子凝集剤を1mg/l添加して10分間攪拌混合し、静置10分後にこの処理液を5種Aのろ紙でろ過した。
上記ろ液を原水2の分析方法により定量を行った。全セレンは0.04mg/lであり、水質汚濁防止法に係る排水基準値の0.1mg/lをクリアした。
(比較例1)
抽気ダスト250gに水2500gを加え、3時間攪拌しスラリー化した。スラリーは1μmの孔径のメンブランフィルターで固液分離を行い、得られたろ液(以下、原水3と称す)のpHは13.0、酸化還元電位は−114mVであった。
この原水3に含まれる全セレンは、原水1の分析方法で定量した。
全セレン(4価セレンと6価セレン)および6価セレンの含有量は夫々13、12mg/lであった。
上記原水3(250ml)のpHが8になるように水酸化ナトリウムを添加し、硫酸第一鉄・七水和物を、液相の酸化還元電位が−537mVになるまで添加した。その後30分間攪拌混合した。
次いで上記高分子凝集剤を2mg/l添加して10分間攪拌混合し、静置10分後にこの処理液を5種Aのろ紙でろ過した。
上記ろ液に1mol/lの塩化第二鉄・六水和物を10.2ml(原水1に溶存している全セレン13mg/lの248倍モル量)添加して、水酸化ナトリウムを添加することによりpHを10に調節して30分間攪拌混合した。次いで高分子凝集剤を2mg/l添加して10分間攪拌混合し、静置10分後にこの処理液を5種Aのろ紙でろ過した。
上記ろ液を原水1の分析方法により定量を行った。全セレンは0.22mg/lであり、水質汚濁防止法に係る排水基準値の0.1mg/lをクリアしなかった。
(比較例2)
抽気ダスト250gに水2500gを加え、3時間攪拌しスラリー化した。スラリーは1μmの孔径のメンブランフィルターで固液分離を行い、得られたろ液(以下、原水4と称す)のpHは12.0、酸化還元電位は−111mVであった。
この原水4に含まれる全セレンは、原水1の分析方法で定量した。
全セレン(4価セレンと6価セレン)および6価セレンの含有量は夫々49、4mg/lであった。
上記原水4(250ml)のpHが10になるように水酸化ナトリウムを添加し、硫酸第一鉄・七水和物を、液相の酸化還元電位が−532mVになるまで添加した。その後30分間攪拌混合した。
次いで上記高分子凝集剤を2mg/l添加して10分間攪拌混合し、静置10分後にこの処理液を5種Aのろ紙でろ過した。
上記ろ液に1mol/lの塩化第二鉄・六水和物を15.5ml(原水2に溶存している全セレン49mg/lの100倍モル量)添加して、水酸化ナトリウムを添加することによりpHを10に調節して30分間攪拌混合した。次いで高分子凝集剤を1mg/l添加して10分間攪拌混合し、静置10分後にこの処理液を5種Aのろ紙でろ過した。
上記ろ液を原水1の分析方法により定量を行った。全セレンは0.25mg/lであり、水質汚濁防止法に係る排水基準値の0.1mg/lをクリアしなかった。
Figure 0004306422
図1は本発明に係るセメントキルン抽気ダストの処理方法を示すフロー図である。
符号の説明
1 第1工程
2 第2工程
3 第3工程
4 抽気ダスト
5 セメント原料
6 放流水

Claims (1)

  1. 以下の各工程からなることを特徴とするセメントキルン抽気ダストの処理方法。
    (1)セメントキルン抽気ダストに水を加えてスラリー化した後、固液分離する第1工程、
    (2)第1工程で得られた固液分離後の液相(以下、原水と称す)に、該液相の酸化還元電位が−600mV以下になるまで第一鉄塩化合物を添加した後、pHを8〜10に調節し、高分子凝集剤を添加し、固液分離を行う第2工程であり、前記第2工程の第一鉄塩化合物が、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、又はこれらの水和物であり、
    (3)第2工程で得られた固液分離後の液相に、第二鉄塩化合物を添加し、pHを8〜12に調節した後、高分子凝集剤を添加し、固液分離を行う第3工程であり、
    前記第3工程の第二鉄塩化合物が、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、又はこれらの水和物であり、該第二鉄塩化合物の添加量が、前記原水中の全セレンに対して50〜300倍モル量であり、
    前記第2工程及び第3工程の高分子凝集剤が、ポリアクリルアミド又はポリアクリル酸ソーダを含む高分子凝集剤であり、該高分子凝集剤の添加量が0.2〜4mg/lである。
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