JP4303848B2 - 直動駆動機構のシール装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、送りねじ、ボールねじ等の直動駆動機構のシール装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のボールねじは、ねじ軸とナットとの間に多数の循環するボールを配置した構成となっており、例えば高精度な位置決めに多用されている。そして、この種のボールねじはナットの内部に潤滑剤を保有しているため、この潤滑剤の洩出を防止するためのシール装置を備えている。
【0003】
一方、ボールねじのねじ軸には塵埃が付着する場合が多く、この場合にはねじ軸に付着した塵埃がナット内に侵入し易い。塵埃がナット内に侵入した場合には、ねじ軸、ボール、ナット等が摩耗し、ボールねじの動作が不良となり、ボールねじの寿命が低下する。この問題に対処するため、シール装置はワイパ機能を有し、潤滑剤がナット内から洩出することを防止している上に、塵埃がナット内に侵入することを防止している。
【0004】
例えば、従来のボールねじは図10〜図12に示すようにねじ軸1とナット2の間にボール3が配置され、ナット2の両端にシールリング4が配置されている。そして、実開平6−45150号公報が示す図10ではシールリング4が止めねじ5により固定され、図11ではシールリング4が軸方向張出部6aと径方向張出部6bを有するC字形状の止め輪6により固定され、図12ではシールリング4がガータスプリング7により締め付けられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来のボールねじは、ねじ軸1に多量の塵埃が付着し易い環境にある場合には、ねじ軸1にシールリング4を強固に密着させてシール力を高めることが望ましい。これに対し、ねじ軸1に多量の塵埃が付着しない比較的清浄な環境にある場合には、回転トルクの低減を優先して、ねじ軸1とシールリング4の密着度を緩めることが好ましい。
【0006】
しかしながら、図10に示すボールねじでは、止めねじ5によってシールリング4の外周面が押圧されているため、シールリング4の内周面の止めねじ4によって押圧されている部分だけがねじ軸1に圧接している。従って、シールリング4の内周面がねじ軸1に均等に圧接せず、シール力が十分ではない状態になっている。
【0007】
また、図10、図11に示すボールねじでは、シールリング4のねじ軸1に対する締付力は一定となっているため、シールリング4が摩耗した場合にねじ軸1とシールリング4の間に隙間が発生し、潤滑剤がナット2内から洩出する上に塵埃がナット2内に侵入する可能性がある。そして、図12に示すボールねじでは、ガータスプリング7の締付力によりシール力を維持している反面で、塵埃の多少による環境の変化に対応したり、ナット2の回転トルクの低減を優先したりすることが不可能な構造になっている。
【0008】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、シールリングが摩耗しても良好なシール力を維持し得る直動駆動機構のシール装置を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、使用中のシールリングを交換することなくシール力を調整し得る直動駆動装置のシール装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る直動駆動機構のシール装置は、ねじ軸を螺合したナットの両端面に取り付ける直動駆動機構のシール装置において、前記ナットに取り付けるシールホルダと、該シールホルダの内部に収容する2個のシールリングと、これらのシールリングの間に掛け渡すことにより前記シールリングにねじ軸の回転方向の引張力を与えるシール力付与手段とから成ることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る直動駆動装置のシール装置は、ねじ軸を螺合したナットの両端面に取り付ける直動駆動機構のシール装置において、前記ナットに取り付けるシールホルダと、該シールホルダの内部に収容する2個のシールリングと、これらのシールリングの間に掛け渡すことによりねじ軸の回転方向の引張力を与えるシール力付与手段とから成り、該シール力付与手段は前記引張力を調整可能としたことを特徴とす。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明を図1〜図9に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は部分断面図であり、例えばボールねじの螺旋溝11を有するねじ軸12は、ナット13に多数の循環するボール14を介して螺合されており、ナット13の両端部にはシール装置15が例えば係止構造により装着されている。シール装置15は、ナット13に係止されるシールホルダ16と、このシールホルダ16の内部に保持される2個のシールリング17と、これらのシールリング17間に掛け渡すことによりねじ軸12の回転方向の引張力を与える引張コイルばね18とから構成されている。
【0013】
ナット13には、シール装置15の回転を防止するためのノックピン21が圧入されるピン孔22と、シールホルダ16を係止するための凹部23と環状溝24とが形成されている。また、ナット13には、環状溝24と外部を連通してナット13とシールホルダ16の係止を解除するための道具を挿通する図示しない道具挿通孔が形成され、この道具挿通孔にはナット13内の潤滑油の洩出を防止する図示しないシール用プラグが挿着されている。
【0014】
図2はシールホルダ16の正面図、図3はシールホルダ16の縦断面図であり、シールホルダ16は2個のシールリング17を収容する円筒状のシール保持部25を有しており、シール保持部25の内径はシールリング17が嵌合される大きさとされ、シール保持部25の外径はナット13の外周面と略一致する大きさとされている。シール保持部25には、奥側のシールリング17をシールホルダ16に固定するための止めねじ26が螺合される例えば2個のねじ孔27が等間隔で形成されている。
【0015】
シール保持部25のナット13側には、ノックピン21が圧入されるピン孔28と、内向きのフランジ29とが設けられている。フランジ29には、ナット13の凹部23に挿入される例えば4つの係止突起30が周方向に等間隔で形成され、各係止突起30にはナット13の環状溝24に係合される係止爪31が設けられている。
【0016】
図4は外側のシールリング17の側面図、図5はそのシールリング17の一部を切欠した背面図であり、奥側のシールリング17は外側のシールリング17を反転して使用されている。シールリング17のリング状のシール本体部32の内周面には、ねじ軸12の螺旋溝11に螺合されるリップ部33が形成されており、シールリング17の外周面の一部には円弧状の切欠部34が設けられている。そして、切欠部34には例えば3つのポスト用孔35a〜35cが周方向に並設されており、これらのポスト用孔35a〜35cは切欠部34の周方向の中心から偏心した切欠部34の隅部に形成されている。
【0017】
シール装置15を組み立てる際には、図6の側面図、図7の一部を切欠した正面図、図8の一部を切欠した背面図に示すように、一方のシールリング17のポスト用孔35a〜35cと他方のシールリング17のポスト用孔35a〜35cとを離間させ、かつ双方の切欠部34を一致させるようにして、双方のシールリング17を密着させる。
【0018】
そして、ねじ軸12に与えるべきシール力を考慮し、例えば中央のポスト用孔35bにポスト36を植設し、双方のポスト36の首部36aに引張コイルばね18のフック18aを引っ掛ける。この状態で、双方のシールリング17をシールホルダ16のシール保持部25に嵌合し、止めねじ26をねじ孔27に螺合し、奥側のシールリング17をシールホルダ16に固定する。
【0019】
このように組み立てたシール装置15をナット13に装着する際には、先ずノックピン21がピン孔28に圧入されたシールホルダ16を把持し、奥側のシールリング17のリップ部33をねじ軸12の螺旋溝11に係合させる。次に、シールホルダ16を回転すると、奥側のシールリング17はシールホルダ16に止めねじ26により固定されているので、奥側のシールリング17はシールホルダ16と一体に回転し、奥側のシールリング17のリップ部33がねじ軸12の螺旋溝11に螺合する。そして、外側のシールリング17はねじ軸12との間の摩擦力により静止しようとするが、奥側のシールリング17と共に回転する引張コイルばね18の引張力により引っ張られ、外側のシールリング17のリップ部33もねじ軸12の螺旋溝11に螺合する。
【0020】
双方のシールリング17のリップ部33がねじ軸12の螺旋溝11に螺合した後に、ノックピン21をナット13のピン孔22に対向させるようにシールホルダ16を把持し、ねじ軸12を回転する。これにより、シールホルダ16がナット13側に移動し、ノックピン21がナット13のピン孔22に嵌合する。同時に、シールホルダ16の係止突起30がナット13の凹部23内に進入し、係止爪32が環状溝24に係合する。
【0021】
このように、実施例ではシール装置15の引張コイルばね18が2個のシールリング17にねじ軸12の回転方向の引張力を与えるので、シールリング17はねじ軸12を締め付けてねじ軸12の全周に均等なシール力を与え、良好なシール力を維持する。また、シールリング17が摩耗した場合にも、シールリング17はねじ軸12との間に隙間を与えず、初期のシール力を維持できる。
【0022】
一方、シールリング17が過剰に摩耗した場合、或いはボールねじの環境が変化した場合には、シール装置15のシール力を最適に調整する。この際には、先ずナット13の道具挿通孔に挿着したシール用プラグを取り外し、道具を道具挿通孔に挿入して係止爪32を押圧し、シールホルダ16をナット13から取り外す。その後に、双方のシールリング17をシールホルダ16から取り出し、引張コイルばね18をポスト36から外す。
【0023】
そして、シールリング17が過剰に摩耗した場合や、シール装置15のシール力を強める場合には、一方又は双方のポスト36を最外側のポスト用孔35aに移植し、引張コイルばね18のフック18aを掛け直す。これにより、引張コイルばね18の引張力が増加し、シールリング17がねじ軸12を強く締め付け、シール力が復活或いは増加する。
【0024】
これに対し、ナット13の回転トルクを減少させる場合や、シール装置15のシール力を弱める場合には、一方又は双方のポスト36を最内側のポスト用孔34cに植設し、引張コイルばね18のフック18aを掛け直す。これにより、引張コイルばね18の引張力が減少し、シールリング17がねじ軸12を締め付ける力が減少する。
【0025】
なお、実施例ではボールねじについて説明したが、上述のシール装置15を送りねじに適用できることは云うまでもない。また、実施例ではシール装置15をナット13に係止構造により装着したが、図9に示すようにシール装置15’をナット13’に螺合構造により装着することも可能である。即ち、ナット13’に設けた雄ねじ部13aにシールホルダ16’に設けた雌ねじ部16aを螺合し、ナット13’とシールホルダ16’を止めねじ37により固定するように構成することもできる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る直動駆動機構のシール装置では、シール力付与手段がシールリングにねじ軸の回転方向の引張力を与えるので、シールリングがねじ軸を締め付け、ねじ軸の全周を均等にシールする。また、シールリングが摩耗した場合でも、シールリングがねじ軸を締め付けるので、ねじ軸とシールリングの間に隙間が発生することはなく、良好なシール力を維持することができる。
【0027】
更に、本発明に係る直動駆動機構のシール装置では、シール力付与手段が引張力を調整可能であるので、使用中のシールリングを交換することなく、環境の変化や回転トルクの増減に対応したシール力を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の部分断面図である。
【図2】シールホルダの正面図である。
【図3】シールホルダの縦断面図である。
【図4】シールリングの側面図である。
【図5】シールリングの一部を切欠した背面図である。
【図6】双方のシールリングを引張コイルばねにより連結した状態の側面図である。
【図7】一部を切欠した正面図である。
【図8】一部を切欠した背面図である。
【図9】変形例の部分断面図である。
【図10】従来例の断面図である。
【図11】従来例の断面図である。
【図12】従来例の断面図である。
【符号の説明】
12 ねじ軸
13、13’ ナット
15、15’ シール装置
16、16’ シールホルダ
17 シールリング
18 引張コイルばね
18a フック
35a〜35c ポスト用孔
36 ポスト
Claims (4)
- ねじ軸を螺合したナットの両端面に取り付ける直動駆動機構のシール装置において、前記ナットに取り付けるシールホルダと、該シールホルダの内部に収容する2個のシールリングと、これらのシールリングの間に掛け渡すことにより前記シールリングにねじ軸の回転方向の引張力を与えるシール力付与手段とから成ることを特徴とする直動駆動機構のシール装置。
- 前記シール力付与手段は前記シールリングの略周方向を向いて前記シールリング同士を連結する引張コイルばねとした請求項1に記載の直動駆動機構のシール装置。
- ねじ軸を螺合したナットの両端面に取り付ける直動駆動機構のシール装置において、前記ナットに取り付けるシールホルダと、該シールホルダの内部に収容する2個のシールリングと、これらのシールリングの間に掛け渡すことによりねじ軸の回転方向の引張力を与えるシール力付与手段とから成り、該シール力付与手段は前記引張力を調整可能としたことを特徴とする直動駆動機構のシール装置。
- 前記シール力付与手段は前記シールリングの略周方向を向いて前記シールリング同士を連結する引張コイルばねの連結位置を変化させることにより前記引張力を調整可能とした請求項3に記載の直動駆動機構のシール装置。
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