JP2547332B2 - チェーンやベルトなどの緊張装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は自動車等のエンジンのカムシャフトを駆動す
るチェーンあるいはタイミングベルトに、一定の張力を
付与して緊張させる緊張装置に関する。

［従来の技術］ エンジンには一般に、チェーンテンショナあるいはベ
ルトテンショナとして、緊張装置が使用されている。こ
の緊張装置はチェーンやベルトが伸びたり、摩耗したり
して緩みが生じた場合に、これらを直接または間接的に
一方向に押し付けて、これらが一定の張力を維持するよ
うに作用するものである。

第８図はこのような緊張装置の従来例を示す。図示の
通り、雄ねじ部材２と雌ねじ部材３とが螺合されてケー
シング１内に挿入されている。雄ねじ部材２と雌ねじ部
材３との螺合は雄ねじ部材２の前半部分で行われてお
り、ねじ部材２の後半部分にはコイルばね４が外挿され
ている。このコイルばね４は一端4aがケーシング１内に
形成されて長溝1a内に挿入されると共に、他端4bが雄ね
じ部材２のスリット内に挿入されており、これにより雄
ねじ部材２が回転力を付与している。一方、雌ねじ部材
３はケーシング１の開放端（左端）に取り付けられた軸
受５内を貫通しており、その先端（左端）にはキャップ
６が被せられている。雌ねじ部材３が貫通する軸受５の
穴は、例えば対面が平行に削除された小判形状等の非円
形に形成されると共に、雌ねじ部材３の外形も同形状に
成形されている。このような構造では雌ねじ部材３は軸
受５によって回転が拘束されており、雄ねじ部材２から
の回転力は雌ねじ部材３の推進力に変換されて雌ねじ部
材３がケーシング１から抜き出る方向（左方向）に直進
する。従って、雌ねじ部材３の先端のキャップ６がベル
ト，チェーン等を常に押圧しており、これらが一定張力
を維持するように作用するようになっている。図中、７
はケーシング１の開放端をカバーリングする伸縮可能な
ブーツであり、８はケーシング１の基端（右側）に螺合
するシールボルトである。これら、ブーツ７およびシー
ルボルト８はエンジン内外からの埃などがケーシング２
内に侵入するのを防止するためと、ケーシング１内の潤
滑油が外方へ漏洩するのを防止するために装着されるも
のである。

しかしながら、このような構造では雄ねじ部材２が雌
ねじ部材３と螺合する前半部分とコイルばね４が外挿さ
れる後半部分とを必要としており、この雄ねじ部材の寸
法が装置寸法を決定するので結果として装置全体が軸方
向に長くなっている。しかも、この方向はチェーン，ベ
ルト等の張力を調整する方向であり、エンジン等の極め
て狭い場所への取り付けを考慮した場合、短寸法が好ま
しく、長くなることは取付スペース上、致命的な問題と
なっている。

かかる寸法の短縮化を図るため、雄ねじ部材と雌ねじ
部材とコイルばねの３部材を径方向に重なるように組み
合わせた考案が提案されている（実開昭62−115554
号）。しかしながら、このような構造では直進する部材
のストロークを犠牲にするものであり、装置全体の短縮
化が可能であってもチェーンやベルト等の張力調整長さ
が小さくなる。このため、調整可能範囲が狭く、実用性
の乏しいものとなっている。

［発明が解決しようとする問題点］ このように従来技術では、装置が長い場合にはエンジ
ン等への取り付けが難しく、一方、装置の短縮を図る構
造の場合にはストロークが短くなって、張力調整範囲が
狭くなる問題がある。

そこで本発明は、装置の小型化と充分な張力調整範囲
の確保の双方を満足したチェーンやベルト等の緊張装置
を提供することを目的とする。

［問題点を解決するための手段］ 本発明に係るチェーンやベルト等の緊張装置は、雄ね
じ部材と雌ねじ部材とが螺合状態でケーシング内に設け
られ、前記雌ねじ部材がばねの力で回転することにより
前記雄ねじ部材が軸方向に進出する緊張装置において、 雄ねじ部材、雌ねじ部材及びばねが、内側から順次雄
ねじ部材、雌ねじ部材及びばねと同心的三重構造に配設
され、 前記雄ねじ部材のねじ部分の外形々状は、該部材の回
転を拘束する軸受穴の形状に略合致して形成され軸受穴
に挿通されていることを特徴とする。

［作 用］ 本発明は上記の通りに構成されるので、雄ねじ部材は
そのねじ部分も回転を拘束されて軸受穴を摺動すること
が可能となっており、このため装置の張力調整方向の寸
法が短くなるにもかかわらず、雄ねじ部材のストローク
長が充分に確保できる。

［実施例］ 以下、本発明を添付図面により、さらに具体的に説明
する。

第１図は本発明をベルトテンショナーに適用した実施
例の断面図、第２図および第３図はその左側面図および
右側面図、第４図ないし第６図は部品図である。外側に
エンジンへの取付穴11aが形成されたケーシング11に軸
方向の空洞部12が形成され、この空洞部12内に内側より
順次雄ねじ部材20、雌ねじ部材30およびコイルばね40と
同心的三重構造に配設されている。雄ねじ部材20は雌ね
じ部材30内に螺合されており、第１図および第４図に示
すように、雌ねじ部材30に螺合されるねじ21aが刻設さ
れたねじ部分21と、ケーシング11から外方に抜き出され
るヘッド部分22とが軸方向に一体的に形成されている。
一方、雌ねじ部材30は有底円筒体に成形されており、そ
の基部側の底部31がケーシング11に形成された段部内に
ワッシャ15と共に挿入されて回転可能に支持されてい
る。この底部31に連設される円筒部32内面にはねじ部分
33が部分的に形成されて前記雄ねじ部材20のねじ部分21
が螺合している。また、ケーシングの先端部分（左端部
分）には軸受部材50が取り付けられている。軸受部材50
は第６図に示すように、全体が略三角星形状に成形さ
れ、その中央に軸受穴51が開口されると共に、軸受穴51
から外側に延設された部分は後側に屈曲されて嵌着片52
となっている。この嵌着片52はケーシング11先端部分に
嵌着して軸受部材50をケーシング11に固定するものであ
る。このためケーシング11先端部分には第５図々示の通
り、各嵌着片52が挿入される嵌着溝13が形成されてい
る。一方、軸受穴51は雄ねじ部材20が回転拘束されて挿
入されるものである。本実施例では軸受穴51は２本の平
行線と、この平行線の両端を結ぶ円弧線とからなってい
る。雄ねじ部材20のねじ部分21はこの軸受穴51に挿入さ
れて回転が拘束される。このため雄ねじ部材20のねじ21
aが刻設されたねじ部分21の外形々状は軸受穴51に略合
致する形状に成形されている。従って、第４図（Ｃ）に
図示するように、ねじ部分21の外形々状は円形々状から
対向面が平行にカッティングされて軸受穴51に嵌入する
形状に成形されている。このような構造では雌ねじ部材
30の回転がねじ部分21,31の螺合部分から雄ねじ部材20
に伝達されるが、雄ねじ部材20が軸受穴51によって回転
が拘束されているので直線方向の推進力に変換され、雄
ねじ部材20は直進する。これにより雄ねじ部材20のヘッ
ド部分22が直接又は間接的にベルトを押圧して、これら
を所定の緊張状態に維持するようになっている。この場
合、雄ねじ部材20のストローク長は雌ねじ部材30と螺合
するねじ部分21により決定されるが、このねじ部分21の
外形々状全長が軸受穴51に相応する形状に成形されてね
じ部分21全長が軸受穴51に挿通可能となっているので装
置の軸方向の長さを短くしても雄ねじ部材20のストロー
ク長が充分に確保できる。

前記コイルばね40はそのコイル部が雌ねじ部材30に外
挿されており、その一端41がケーシング11の軸方向に折
曲され、ケーシング11の空洞部12に形成された長溝14内
に挿入されている。一方、コイルばね40の他端42は雌ね
じ部材30の底部31に形成されたスリット34内に挿入され
ている。これにより雌ねじ部材30はコイルばね40によっ
て回転されて、雄ねじ部材20が直進駆動するようになっ
ている。このように雄ねじ部材20が雌ねじ部材30内に挿
入され、雌ねじ部材30がコイルばね40に内挿された同心
的三重構造では、装置の軸方向の長さ、すなわち張力調
整方向の長さを短縮することができる。

第１図中、60はケーシング11の先端面に嵌着されるス
ナップリングであり、軸受部材50の外れ止め作用を行
う。61はケーシング11の先端部分を覆うカバー、62はこ
のカバー61に基部が接着されて雄ねじ部材20のヘッド部
分22とケーシング11の先端開口部を覆うブーツである。
63はブーツ62の外れ止めのためのガータスプリンタであ
る。また、ケーシング11の基部側にはシール板64、ワッ
シャ65を介してシールボルト67が螺合されており、基部
側の密封が行われている。さらに、68はケーシング11に
外側から抜き差し可能に挿入されるストッパピンであ
り、その先端が雌ねじ部材30のスリット34内に達するよ
うになっている。ストッパピン68が差し込まれた状態で
は、雌ねじ部材30の回転がロックされている。なお、本
実施例はベルトテンショナーとして空気中で使用される
ものであるから、装置内部には潤滑油が封入される。こ
の潤滑油の円滑な流動を行うため雌ねじ部材30、軸受部
材50には適宜、油穴69が形成されている。また、本実施
例では雄ねじ部材20のヘッド部分22は外部に連通する空
気抜穴23が形成されて、ブーツ62、ケーシング11の内部
の容積変化に対応できるようになっている。そして、本
実施例のものは空気抜穴23から潤滑油が漏洩しないよう
に雄ねじ部材20のヘッド部分22を上方にして使用され
る。

以上のような本実施例の組み立ては、雄ねじ部材20が
螺合した雌ねじ部材30をコイルばね40に内挿し、このコ
イルばね40の他端42を雌ねじ部材30のスリット34に掛止
させると共に、雄ねじ部材20のねじ部分21に軸受部材50
を装着させてサブアッシイを形成する。次に、このサブ
アッシイをケーシング11内に挿入し、ワッシャ15と共に
雌ねじ部材30の底部31をケーシング11に挿入させて支承
し、スナップリング60でサブアッシイの外れ止めを行
う。このスナップリング60はケーシング11の先端部に形
成された溝11bに嵌着される。そして、ブーツ62の一端
を固着したカバーリング61をカシメあるいは接着により
取り付けた後、ガータースプリング63でブーツ62の他端
を雄ねじ部材20のヘッド部22に取り付けてケーシング11
の先端部分を密封する。その後、ケーシング11の基部側
からドライバー等の工具を雌ねじ部材30のスリット34内
に差し込み、雌ねじ部材30を回転させてコイルばね40を
巻き上げてエネルギを蓄積させ、この状態でストッパピ
ン68を差し込んで回転ロックを行う。さらに、ケーシン
グ11内に潤滑油を注入した後、シールボルト67により密
封する。これにより装置の組み立てが終了し、使用箇所
等に固定し、ストッパピン68を抜くと、コイルばね40に
よって雌ねじ部材30が回転して雄ねじ部材20が進出して
ベルトを押圧するものである。

第７図は雄ねじ部材20のねじ21aが刻設されたねじ部
分の変形例を示す。同図（ａ）は所謂Ｄカットが施され
たものであり、同図（ｂ）は四隅部分にねじ山が形成さ
れた略正方形に成形されたものである。また、同図
（ｃ）はねじ山が三方向に形成されており、同図（ｄ）
は全体が略三角形状に成形されている。いずれの変形例
もねじ部分の外周形状が非円形となっており、軸受部材
の軸受穴を同形状に成形することで雄ねじ部材の回転が
拘束される。

なお、上記実施例はケーシング内部に潤滑油を封入す
るが、オートバイのエンジン等においてチェーンテンシ
ョナーとして適用するときは、エンジンオイル内に浸漬
された状態で取り付けられるところから上記潤滑油は不
要となる。この場合にはブーツが不要となるので、この
ブーツを取り付けるための雄ねじ部材20のヘッド部材22
も軸方向に短くすることができ、装置の調整方向の長さ
をより短くすることができる。

［発明の効果］ 以上説明したように本発明は、雄ねじ部材、雌ねじ部
材及びばねが、内側から順次雄ねじ部材、雌ねじ部材及
びばねと同心的三重構造に配設され、かつ張力調整を行
う雄ねじ部材のねじ部分がその回転を拘束する軸受穴の
形状に略合致して形成されるので、雄ねじ部材のストロ
ーク長を犠牲にすることなく、装置の長さを軸方向に短
縮でき、装置の小型化が達成できる、という効果を奏す
る。

【図面の簡単な説明】

第１図、第２図、第３図は本発明の一実施例の断面図、
左側面図、右側面図、第４図（ａ）、（ｂ）、（ｃ）は
雄ねじ部材の断面図、左側面図、右側面図、第５図はケ
ーシングの側面図、第６図（ａ）、（ｂ）は軸受部材の
正面図、側面図、第７図（ａ）〜（ｄ）は雄ねじ部材の
変形例の側面図、第８図は従来装置の断面図である。 11……ケーシング、20……雄ねじ部材、21……ねじ部
分、 30……雌ねじ部材、40……ばね（コイルばね）、 50……軸受部材、51……軸受穴。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】雄ねじ部材と雌ねじ部材とが螺合状態でケ
   ーシング内に設けられ、前記雌ねじ部材がばねの力で回
   転することにより前記雄ねじ部材が軸方向に進出する緊
   張装置において、 雄ねじ部材、雌ねじ部材及びばねが、内側から順次雄ね
   じ部材、雌ねじ部材及びばねと同心的三重構造に配設さ
   れ、 前記雄ねじ部材のねじ部分の外形々状は、該部材の回転
   を拘束する軸受穴の形状に略合致して形成され軸受穴に
   挿通されていることを特徴とするチェーンやベルトなど
   の緊張装置。