JP4299926B2 - 非水重合体分散液及びこの重合体を含む塗料組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗膜の光沢、仕上り外観を低下させずにタレ抵抗性を塗料に付与できる非水重合体分散液及び該重合体を含有する塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、塗料の高固形分化、耐候性、機械的性質などの物性の向上、及び塗料への構造粘性の付与によるメタリック顔料の配向性やタレ抵抗性の向上などを目的に非水重合体分散液が使用されている。
【0003】
非水重合体分散液としては、12−ヒドロキシステアリン酸の自己縮合物などのポリエステル樹脂、アクリル樹脂、セルロースアセテートブチレートなどを分散安定剤(皮成分)とするものなどが知られている。
【0004】
しかしながら、上記12−ヒドロキシステアリン酸の自己縮合物又はセルロースアセテートブチレートを分散安定剤とする非水重合体分散液は、塗料に構造粘性を付与する効果は大きいものの、トップコート塗料に配合した場合には、基体樹脂と相溶し難く塗膜の光沢低下をもたらすといった問題があった。また、12−ヒドロキシステアリン酸の自己縮合物を分散安定剤とする非水重合体分散液は、乾燥性が悪いため常温硬化型塗料への適用は困難であった。一方、アクリル樹脂を分散安定剤とする非水重合体分散液は、塗膜の光沢を殆ど低下させないが、塗料に構造粘性を付与する効果が十分でなく、タレ抵抗性の向上効果が小さいといった問題があった。また、上記構造粘性付与効果の大きいものとアクリル樹脂を分散安定剤とするものの両タイプの非水重合体分散液を混合使用しても、タレ抵抗性と塗膜の高光沢、仕上り外観とを両立させることは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、塗膜の光沢低下や仕上り外観の低下をもたらすことなく、塗料に構造粘性を付与する効果が大きく、メタリック顔料の配向性やタレ抵抗性の向上を行うことができ、しかも常温硬化型塗料にも適用可能な非水重合体分散液を得ることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、セルロースアセテートブチレート分子鎖及び二重結合を有する分散安定剤と、エチレン性不飽和単量体の共重合体であって二重結合を有する分散安定剤とを混合した分散安定剤の存在下で、重合して得た非水重合体分散液が上記目的を達成できることを見出し本発明を完成させたものである。
【0007】
すなわち本発明は、セルロースアセテートブチレートの分子鎖を含有し、且つ重合性不飽和二重結合を1分子当り平均して1.5個以下有する分散安定剤(A)5〜95重量%と、エチレン性不飽和単量体の共重合体であって、溶解性パラメータ(SP値)が7.5〜9.3であり、かつ1分子当り平均して1.5個以下の重合性不飽和二重結合を有する分散安定剤(B)5〜95重量%とからなる分散安定剤混合物の存在下に、重合性不飽和モノマーは溶解するが該重合性不飽和モノマーから形成される重合体は溶解しない、脂肪族系又は芳香族系炭化水素類、脂肪族炭化水素類及び脂環式炭化水素類から選ばれる有機液体中で、該重合性不飽和モノマーを重合してなる非水重合体分散液を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、樹脂成分として、上記非水重合体分散液、該非水重合体分散液以外の基体樹脂及び硬化剤を含有することを特徴とする塗料組成物を提供するものである。
【0009】
以下に、本発明の非水重合体分散液及び本発明の塗料組成物について詳細に説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の非水重合体分散液について詳細に説明する。
【0011】
本発明の非水重合体分散液は、下記分散安定剤(A)と分散安定剤(B)との混合物の存在下に、重合性不飽和モノマーは溶解するが該重合性不飽和モノマーから形成される重合体は溶解しない有機液体中で、該重合性不飽和モノマーを重合してなるものである。
【0012】
分散安定剤(A)
分散安定剤(A)は、セルロースアセテートブチレートの分子鎖を含有し、且つ重合性不飽和二重結合を1分子当り平均して約1.5個以下、好ましくは0.1〜1.5個、さらに好ましくは0.2〜1.2個有するものであり、重量平均分子量が5,000〜180,000、好ましくは15,000〜100,000の範囲内にあることが適している。
【0013】
セルロースアセテートブチレートは、セルロースの部分アセチル化物をブチルエステル化してなるセルロース誘導体であり、市販品としては、例えば、米国イーストマン・コダック社製の、CAB551−0.01、CAB551−0.2、CAB381−0.5などを挙げることができる。
【0014】
分散安定剤(A)は、セルロースアセテートブチレートに重合性不飽和基を導入することによって得ることができる。この重合性不飽和基の導入方法としては、例えば下記(1)〜(3)の方法などを挙げることができる。
【0015】
(1)セルロースアセテートブチレートは、通常、4個のグルコース単位当り1〜3個の水酸基を有しており、その水酸基に対してイソシアナト基含有エチレン性不飽和化合物をウレタン化反応により付加させる方法。
【0016】
(2)セルロースアセテートブチレートの水酸基に対して酸無水基含有エチレン性不飽和化合物をエステル化反応により付加させる方法。
【0017】
(3)セルロースアセテートブチレートのアセチル部又はブチリル部を、マレイン酸やフマル酸などのエチレン性不飽和基含有ジカルボン酸のモノ又はジ−エステルとエステル交換させる方法。
【0018】
上記(1)の方法において、イソシアナト基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート;イソホロンジイソシアート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネート類と2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水酸基含有エチレン性不飽和化合物との等モル付加物などを挙げることができる。セルロースアセテートブチレートと上記イソシアナト基含有エチレン性不飽和化合物とを、セルロースアセテートブチレート1分子に対して平均してエチレン不飽和基が上記範囲内導入される量的割合にて、例えば両者を、必要に応じて、不活性有機溶剤、ウレタン化触媒の存在下にて、80〜130℃で2〜10時間反応させることによって得ることができる。
【0019】
上記(1)〜(3)の方法のうち、(1)の方法が目的とする分散安定剤(A)を得やすいことから好適である。
【0020】
分散安定剤(B)
分散安定剤(B)は、エチレン性不飽和単量体の共重合体であって重合性不飽和二重結合を1分子当り平均して約1.5個以下、好ましくは0.1〜1.2個、さらに好ましくは0.2〜1.0個有する分散安定剤であり、溶解性パラメータ(SP値)が7.5〜9.3、好ましくは8.0〜9.0の範囲内にあることが適当である。分散安定剤(B)は、重量平均分子量が1,000〜50,000、好ましくは3,000〜20,000の範囲内にあり、水酸基価が0〜160mgKOH/g、好ましくは30〜140mgKOH/gの範囲内にあることが適している。
【0021】
分散安定剤(B)は、例えば、第1の化学反応性基を有する重合性不飽和モノマー(以下、「第1モノマー」と略称することがある)とその他の重合性不飽和モノマー(以下、「その他モノマー」と略称することがある)とからなるモノマー成分を共重合してなる共重合体に、該共重合体中の第1の化学反応性基と反応可能な第2の化学反応性基を有する重合性不飽和モノマー(以下、「第2モノマー」と略称することがある)を反応させて重合性不飽和基を導入したものであることができる。
【0022】
上記第1モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナトエチルメタクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどのイソシアナト基含有重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどの水酸基含有重合性不飽和モノマーなどを挙げることができる。
【0023】
分散安定剤(B)を構成する上記その他モノマーとして代表的なものを例示すると、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート(大阪有機化学社製、商品名、アルキル基が炭素原子数18個の分岐アルキル基であるアクリル酸アルキルエステル)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のエステル類;ビスコート3F、同3MF、同8F、同8MF(以上いずれも大阪有機化学社製、商品名)、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、フッ化ビニルなどの含フッ素ビニル系単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルメタクリルアミドなどの含窒素ビニル系単量体;ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテルなどのビニルエーテル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。本発明において、語尾の「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタアクリレートを意味するものとする。
【0024】
上記共重合体中の第1の化学反応性基と反応して重合性不飽和基を導入するための前記第2モノマーとしては、例えば、第1の化学反応性基がカルボキシ基である場合には、前記エポキシ基含有重合性不飽和モノマー;第1の化学反応性基がエポキシ基である場合には、前記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;第1の化学反応性基がイソシアナト基である場合には、前記水酸基含有重合性不飽和モノマー;第1の化学反応性基が水酸基である場合には、前記イソシアナト基含有重合性不飽和モノマーなどを好適に使用することができる。
【0025】
分散安定剤は、脂肪族炭化水素等の比較的低極性溶剤に溶解可能であることが必要であることなどから、分散安定剤(B)は溶解性パラメータ(SP値)が7.5〜9.3の範囲となるようにモノマー配合が選択される。このため、前記その他モノマーとしては、なかでもエステルのアルキル部分の炭素数が3個(プロピル)以上、好ましくは6個(ヘキシル)以上のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル類を主体とするものが好適である。
【0026】
上記溶解性パラメータ(solubility parameter、「SP値」は略号)は、液体分子の分子間相互作用の尺度を表すものである。重合性モノマーのホモポリマーのSP値は、J. Paint Technology, vol.42, 176 (1970) に記載されている。重合性モノマーの混合物の共重合体ポリマーのSP値は、下記式により計算して求めることができる。
【0027】
SP値=SP1 ×fw1+SP2 ×fw2+………+SPn ×fwn
上記式中、SP1 、SP2 、………SPn は、各重合性モノマーのホモポリマーのSP値を表し、fw1、fw2、………fwnは、各モノマーのモノマー総量に対する重量分率を表す。
【0028】
上記分散安定剤(B)の市販品としては、例えば、「AA−6」(東亜合成(株)製、商品名、アクリル樹脂マクロモノマー)などを挙げることができる。
【0029】
本発明の非水重合体分散液は、前記分散安定剤(A)と上記分散安定剤(B)との混合物の存在下に、下記有機液体中で、重合性不飽和モノマーを重合することによって得ることができる。
【0030】
上記重合に際しての分散安定剤(A)と分散安定剤(B)との混合物における両者の配合比率は、両者の合計固形分に基いて、固形分重量比で下記の範囲内にあることが、塗膜の光沢や仕上り外観の低下をもたらすことなく、塗料に構造粘性を付与する効果が大きい点から適している。
分散安定剤(A):5〜95重量%、好ましくは10〜70重量%、
分散安定剤(B):5〜95重量%、好ましくは30〜90重量%。
【0031】
非水重合体分散液製造の際の、上記分散安定剤(A)と分散安定剤(B)との分散安定剤の合計と単量体との配合比率は、前者/後者の重量比で、一般に10/90〜70/30、好ましくは30/70〜60/40の範囲内である。
【0032】
非水重合体分散液製造の際に用いられる溶媒である有機液体は、重合される上記重合性不飽和モノマーは溶解するが、該重合性不飽和モノマーから形成される重合体は実質的に溶解しないものであり、極性の小さいものが好ましく、例えば、VM&Pナフサ、ミネラルスピリット、ソルベント灯油、芳香族ナフサ、ソルベントナフサなどの比較的溶解力の小さい脂肪族系又は芳香族系炭化水素類;n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソノナン、n−デカン、n−ドデカンなどの脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタンなどの脂環式炭化水素類などが用いられる。必要に応じて、キシレン、トルエン、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系などの極性溶剤を少量の割合で併用することもできる。
【0033】
上記有機液体や分散安定剤混合物の存在下で重合される上記重合性不飽和モノマーとしては、前記分散安定剤(B)を形成する第1モノマー及びその他モノマーとして記載したものと同様のモノマーを使用することができる。なかでも形成される重合体が上記有機液体に実質的に溶解しないことが必要であるため、スチレン、アクリロニトリル及びエステルのアルキル部分の炭素原子数が4個(ブチル)以下のメタアクリル酸のエステル類(特にメチルメタクリレート)を主体とするものが好適である。上記重合性不飽和モノマーの一部として、例えば2種の相互に反応する化学反応性基を有するモノマーを使用し、その化学反応性基を互いに反応させて化学結合を形成させる(例えば、第1モノマーとして、アクリル酸とグリシジルメタクリレートとを使用して反応させる)ことによって、又はジビニルベンゼンなどの多ビニル化合物を使用することによって、得られる重合体を内部架橋させることができる。
【0034】
上記重合性不飽和単量体を重合体粒子に重合するに際しては、重合開始剤を配合して、重合温度を60〜160℃、好ましくは70〜120℃とし、重合時間を通常2〜10時間程度とすることが好ましい。
【0035】
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化カプロイル、t−ブチルパーオクトエート、過酸化ジアセチルなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチルα,α´−アゾイソブチレートなどのアゾ系開始剤;ジイソプロピルペルオキシジカルボネートなどのジアルキルペルオキシジカルボネート;及びレドックス系開始剤などを挙げることができる。重合開始剤の濃度は、重合性不飽和単量体に対して0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%の範囲内であることが好適である。
【0036】
重合体粒子は、性能上及び重合反応における安定性の点などから、ガラス転移温度が−20〜100℃、より好ましくは0〜80℃の範囲内であり、平均粒子径が50〜500nmの範囲内であることが好適である。また重合体粒子内は内部架橋していてもよい。
【0037】
塗料組成物
本発明の塗料組成物は、上記本発明の非水重合体分散液と該非水重合体分散液以外の基体樹脂及び硬化剤を必須成分として含有する。本発明の塗料組成物は、通常、有機溶剤型熱硬化性塗料である。
【0038】
上記基体樹脂としては、硬化剤と反応して良好な塗膜を形成できる樹脂であればよく、例えばエポキシ基、水酸基、カルボキシル基などの反応性基を有する樹脂を挙げることができる。該反応性基を有する樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂(アルキド樹脂も包含する)、フッ素樹脂などを挙げることができる。
【0039】
上記硬化剤としては、上記基体樹脂と反応して硬化塗膜を形成できるものであればよく、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂などのアミノ樹脂;イソシアナト基がブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物;低分子量で高酸価のカルボキシル基含有化合物などを挙げることができる。
【0040】
本発明の塗料組成物を上塗り塗料として使用する場合には、なかでも基体樹脂が水酸基含有アクリル樹脂であり、硬化剤がアミノ樹脂及びブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種である塗料を好適に使用することができる。特に、基体樹脂としての水酸基含有アクリル樹脂が重量平均分子量が1,000〜80,000、水酸基価が30〜180mgKOH/g及び溶解性パラメータ(SP値)が7.5〜9.5の範囲内にあるものを好適に使用することができる。
【0041】
本発明の塗料組成物中に配合される本発明の非水重合体分散液の量は、塗料組成物の全樹脂固形分(非水重合体分散液も含む)100重量部に対して、通常、固形分重量で1〜20重量部、さらに好ましくは3〜10重量部の範囲内であることが塗料へのチキソトロピー性の付与によるタレ防止性の向上、塗膜の仕上がり外観などの点から好適である。
【0042】
本発明の塗料組成物における基体樹脂と硬化剤との配合比率は、良好な硬化塗膜が得られる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、基体樹脂と硬化剤との合計固形分に対して、固形分量で、基体樹脂が50〜90重量%、硬化剤が10〜50重量%の範囲内にあることが好適である。
【0043】
本発明の塗料組成物は、上記非水重合体分散液と上記基体樹脂及び上記硬化剤ならびに有機溶剤を含有し、さらに必要に応じて、硬化触媒、顔料、並びに消泡剤、塗面調整剤、流動性調整剤及び表面滑り性付与剤などのそれ自体既知の塗料添加剤を含有することができる。
【0044】
本発明の塗料組成物は、1コート塗料、下塗塗料、中塗塗料、上塗着色塗料、上塗クリヤ塗料などとして、被塗物に塗装することができる。
【0045】
上記被塗物としては、鉄、アルミニウム、真鍮、銅板、ステンレス鋼板、ブリキ板、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Feなどの)めっき鋼板などの金属;これらの金属表面に燐酸塩処理、クロメート処理などの化成処理を施した表面処理金属板;プラスチック、木材、コンクリート、モルタル等の非金属素材;上記金属、表面処理金属板又は非金属素材にプライマー及び/又は中塗及び/又は上塗ベースを施した塗膜形成被塗物などを挙げることができる。本発明塗料組成物の塗装膜厚は、特に制限されるものではないが、通常、乾燥膜厚で5〜100μmの範囲内であり、特に20〜60μmの範囲内にあることがタレ防止効果を顕著に発揮することができる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。以下、「部」及び「%」は、特に断りのない限り重量基準によるものとする。
【0047】
分散安定剤(A)の製造
製造例1
反応容器中に、酢酸イソブチル133部及びCAB551−0.01(米国イーストマンコダック社製、商品名、セルロースアセテートブチレート)100部を配合し溶解した後、溶剤と系中の水とを共沸させ、水分離器を通して水を除去した。ついで、イソシアナトエチルメタクリレート0.36部及びジブチル錫ジラウレート0.03部を加え120℃にて反応せしめて重合性不飽和基を導入し、不揮発分約43%の分散安定剤(A−1)溶液を得た。分散安定剤樹脂は、1分子中に平均で重合性不飽和基を0.75個有していた。
【0048】
製造例2
反応容器中に、酢酸イソブチル133部及びCAB551−0.2(米国イーストマンコダック社製、商品名、セルロースアセテートブチレート)100部を配合し溶解した後、溶剤と系中の水とを共沸させ、水分離器を通して水を除去した。ついで、IPDI−HEA付加物(注1)0.52部及びジブチル錫ジラウレート0.03部を加え120℃にて反応せしめて重合性不飽和基を導入し、不揮発分約43%の分散安定剤(A−2)溶液を得た。分散安定剤樹脂は、1分子中に平均で重合性不飽和基を1.0個有していた。
【0049】
(注1)IPDI−HEA付加物:イソホロンジイソシアネート1モルと2−ヒドロキシエチルアクリレート1モルとを反応させてなる等モル付加物。
【0050】
分散安定剤(B)の製造
製造例3
反応容器中に、酢酸イソブチル30部、トルエン50部を配合し、この中に還流下にて、下記の単量体及び重合開始剤の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、滴下後、同温度で2時間熟成を行ってアクリル樹脂ワニスを得た。
【0051】
スチレン 10部
イソブチルメタクリレート 30部
t−ブチルメタクリレート 10部
シクロヘキシルメタクリレート 10部
2−エチルヘキシルメタクリレート 18部
メタクリル酸 2部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 20部
2,2´−アゾビスイソブチロニトリル 4.5部
ついで、得られたアクリル樹脂ワニス180部に、グリシジルメタクリレート1.8部、4−tert−ブチルピロカテコール0.02部及びN,N−ジメチルアミノエタノール0.1部を加えて110℃で5時間撹拌し、不揮発分約55%の分散安定剤(B−1)溶液を得た。分散安定剤樹脂は、重合性二重結合を1分子中当り平均して約1.0個有しており、SP値8.83、重量平均分子量約8,000、水酸基価約97mgKOH/g樹脂であった。
【0052】
製造例4
反応容器中に、酢酸イソブチル30部、トルエン50部を配合し、この中に還流下にて、下記の単量体及び重合開始剤の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、滴下後、同温度で2時間熟成を行ってアクリル樹脂ワニスを得た。
【0053】
スチレン 20部
n−ブチルメタクリレート 24部
イソボルニルアクリレート 20部
2−エチルヘキシルメタクリレート 21部
メタクリル酸 1部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 14部
2,2´−アゾビスイソブチロニトリル 2部
ついで、得られたアクリル樹脂ワニス180部に、グリシジルメタクリレート0.2部、4−tert−ブチルピロカテコール0.02部及びN,N−ジメチルアミノエタノール0.1部を加えて110℃で5時間撹拌し、不揮発分約55%の分散安定剤(B−2)溶液を得た。分散安定剤樹脂は、重合性二重結合を1分子中当り平均して約0.3個有しており、SP値8.62、重量平均分子量約21,000、水酸基価約60mgKOH/g樹脂であった。
【0054】
製造例5 (比較用の分散安定剤の製造)
反応容器中に、酢酸イソブチル30部、トルエン50部を配合し、この中に還流下にて、下記の単量体及び重合開始剤の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、滴下後、同温度で2時間熟成を行ってアクリル樹脂ワニスを得た。
【0055】
スチレン 20部
メチルメタクリレート 40部
2−エチルヘキシルメタクリレート 18部
メタクリル酸 2部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 20部
2,2´−アゾビスイソブチロニトリル 4.5部
ついで、得られたアクリル樹脂ワニス180部に、グリシジルメタクリレート1.8部、4−tert−ブチルピロカテコール0.02部及びN,N−ジメチルアミノエタノール0.1部を加えて110℃で5時間撹拌し、不揮発分約55%の分散安定剤(B−3C)溶液を得た。分散安定剤樹脂は、重合性二重結合を1分子中当り平均して約1.0個有しており、SP値9.36、重量平均分子量約8,000、水酸基価約97mgKOH/g樹脂であった。
【0056】
非水重合体分散液の製造
実施例1
反応容器中に、ヘプタン203部、不揮発分約43%の分散安定剤(A−2)溶液58部及び不揮発分約55%の分散安定剤(B−1)溶液136部を配合し、95℃に昇温した。この中に下記の単量体及び重合開始剤の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成させて非水重合体分散液(I)を得た。
【0057】
スチレン 5部
メチルメタクリレート 25部
メチルアクリレート 19部
アクリロニトリル 25部
アクリル酸 1部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 25部
t−ブチルパーオキシオクトエート 3部
得られた非水重合体分散液(I)は、乳白色で、不揮発分約40重量%であり、重合体粒子の粒子径は約170nmであった。この非水重合体分散液(I)は、室温(20℃)で3ケ月間密閉して放置しても貯蔵安定性は良好であった。
【0058】
実施例2〜4及び比較例1〜3
実施例1において、分散安定剤、有機溶剤、ならびに単量体及び重合開始剤の混合物として、下記表1に示す組成配合のものを使用する以外は実施例1と同様に行い、乳白色で、不揮発分約40重量%の各非水重合体分散液を得た。得られた各非水重合体分散液の性状、貯蔵安定性、分散安定剤の固形分比(A/B)、及び重合体粒子形成モノマー/分散安定剤の比率を下記表1に示す。
【0059】
表1における貯蔵安定性は、各例で得た非水重合体分散液を密閉容器に入れ、室温(20℃)で3ケ月間放置した後の非水重合体分散液の液状態を評価した結果である。液状態に変化がない場合を良好とし、分散液がゲル化又は樹脂が沈降し再分散不能の場合を不良と表示した。
【0060】
【表1】
【0061】
アクリル樹脂溶液の合成
合成例1
反応容器にキシレン80部を仕込み、125℃に加熱し、この中に下記の単量体及び重合開始剤の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成させて固形分55%のアクリル樹脂(A)溶液を得た。
【0062】
スチレン 20部
t−ブチルメタクリレート 20部
シクロヘキシルメタクリレート 20部
2−エチルヘキシルアクリレート 21.7部
アクリル酸 0.5部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 17.8部
2,2´−アゾビスイソブチロニトリル 3.3部
得られたアクリル樹脂(A)溶液の樹脂固形分は、SP値8.84、水酸基価86mgKOH/g樹脂、重量平均分子量約11,000を有していた。
【0063】
塗料組成物の製造
実施例5
合成例1で得た固形分55%のアクリル樹脂(A)溶液172.7部、スミジュールN−3500(住友バイエルウレタン(株)製、商品名、ポリイソシアネート化合物)30.1部及び実施例1で得た固形分約40%の非水重合体分散液(I)12.5部を混合し、さらにキシレン/酢酸ブチル=50/50(重量比)の組成のシンナーにて、粘度13〜14秒(フォードカップ#4、25℃、以下同様)に調整した。
【0064】
実施例6〜9及び比較例4〜7
実施例5において、使用する各成分の配合を後記表2に示すとおりとする以外は実施例5と同様に行い、粘度13〜14秒の各塗料組成物を得た。
【0065】
表2中における(註)は、それぞれ下記の意味を有する。
【0066】
(注1)サイメル303:三井サイテック(株)製、商品名、メチル化メラミン樹脂。
【0067】
(注2)Nacure5225:米国、キング・インダストリイズ社製、商品名、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン塩溶液、硬化触媒。
【0068】
試験板の作成
上記実施例5〜9及び比較例4〜7で得た各塗料組成物をほぼ垂直に立てたブリキ板上に乾燥膜厚が約40μmとなるように塗装した。
【0069】
実施例5〜8及び比較例4〜7室温(20℃)で1週間静置して乾燥させて試験板を得た。また、実施例9の塗料組成物の塗装板については、塗装後、ほぼ垂直に立てた状態で、140℃で30分間焼き付けて試験板を得た。得られた試験板について下記試験方法に基づいて仕上がり外観と垂直面の光沢の試験を行った。その試験結果を後記表2に示す。
【0070】
試験方法
仕上がり外観:上記試験板の塗膜のツヤ感、平滑性、透明性を目視にて判定し、下記基準にて評価した。
○:良好
△:やや悪い
×:悪い。
【0071】
垂直面光沢:JIS K5400 7.6(1990)に規定の20度鏡面光沢度に従い、塗膜の光沢の程度を、入射角と受光角とがそれぞれ20度のときの反射率を測定し、鏡面光沢度の基準面を100としたときの百分率で表した。
【0072】
タレ限界膜厚:ブリキ板をほぼ垂直に立て、膜厚が徐々に増加するように膜厚を傾斜させて各塗料組成物を塗装し、ほぼ垂直に立てた状態で、10分間室温(20℃)で放置後の塗装板を観察し、タレが発生し始める膜厚(乾燥膜厚)をタレ限界膜厚とした。
【0073】
【表2】
【0074】
【発明の効果】
本発明の非水重合体分散液は、セルロースアセテートブチレート分子鎖及び二重結合を有する分散安定剤と、エチレン性不飽和単量体の共重合体であって二重結合を有する分散安定剤とを混合した分散安定剤の存在下で、重合して得た非水重合体分散液であって、上記2種類の分散安定剤を使用することによって、塗膜の光沢低下や仕上り外観の低下をもたらすことなく、塗料に構造粘性を付与する効果が大きく、メタリック顔料の配向性やタレ抵抗性の向上を行うことができるものである。また、本発明の非水重合体分散液は、乾燥性にも優れており常温硬化型塗料にも適用可能である。
Claims (6)
- セルロースアセテートブチレートの分子鎖を含有し、且つ重合性不飽和二重結合を1分子当り平均して1.5個以下有する分散安定剤(A)5〜95重量%と、エチレン性不飽和単量体の共重合体であって、溶解性パラメータ(SP値)が7.5〜9.3であり、かつ1分子当り平均して1.5個以下の重合性不飽和二重結合を有する分散安定剤(B)5〜95重量%とからなる分散安定剤混合物の存在下に、重合性不飽和モノマーは溶解するが該重合性不飽和モノマーから形成される重合体は溶解しない、脂肪族系又は芳香族系炭化水素類、脂肪族炭化水素類及び脂環式炭化水素類から選ばれる有機液体中で、該重合性不飽和モノマーを重合してなる非水重合体分散液。
- 分散安定剤(A)が、セルロースアセテートブチレートの水酸基に、イソシアナト基を含有する重合性不飽和化合物を付加してなり、且つ重合性不飽和二重結合を1分子当り平均して0.1〜1.5個有する分散安定剤である請求項1記載の非水重合体分散液。
- 分散安定剤(B)が、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体を一部含有するエチレン性不飽和単量体の共重合体にエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物を付加してなり、且つ重合性不飽和二重結合を1分子当り平均して0.1〜1.5個有する分散安定剤である請求項1又は2記載の非水重合体分散液。
- 分散安定剤(B)が、重量平均分子量1000〜50000及び水酸基価0〜160mgKOH/gを有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水重合体分散液。
- 樹脂成分として、請求項1〜4のいずれか一項に記載の非水重合体分散液、該非水重合体分散液以外の基体樹脂及び硬化剤を含有することを特徴とする塗料組成物。
- 基体樹脂が、重量平均分子量1,000〜80,000及び水酸基価30〜180mgKOH/g及び溶解性パラメータ(SP値)が7.5〜9.5である水酸基含有アクリル樹脂であり、硬化剤がアミノ樹脂及びブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項5記載の塗料組成物。
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