JP4294380B2 - 車両用操舵装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用操舵装置、特にステアバイワイヤ式の車両用操舵装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7は公知のステアバイワイヤ式車両用操舵装置の概念図を示したものである。操舵機構部500では、図示しない操舵角センサがドライバの操作する操舵ハンドル510の操舵角を検出し、ギヤ比変換部540は操舵角に基づいて転舵位置指令を生成し、転舵機構部600に伝達する。転舵機構部600は操舵機構部500から与えられる転舵位置指令に従って転舵モータ610を駆動し、転舵軸620を介して操舵輪Tを転舵する。転舵軸力推定部700は路面から転舵軸620に加わる転舵軸力を外乱オブザーバ部710によって推定し、操舵ハンドル510上で提示すべき反力トルク指令を反力トルク指令生成部720によって生成する。操舵機構部500の反力モータ制御部530は転舵軸力推定部700から与えられる反力トルク指令に従って反力モータ520を駆動し、反力トルクをドライバに伝達する。
【0003】
図8は、転舵機構部600の転舵モータ制御部630の制御ブロック図を示したものである。この制御ブロック図では、操舵機構部500から与えられる転舵位置指令に基づいて、単位を換算した転舵モータ位置指令値θr*が入力される。転舵モータ位置制御部631では転舵モータ位置指令値θr*と転舵モータ実位置θrとの偏差Δθrに基づいて、転舵モータ610へのモータ電流指令値I*を生成する。電流制御部632ではモータ実電流値Iがモータ電流指令値I*と一致するように、すなわち、モータ電流指令値I*とモータ実電流値Iとの電流偏差ΔIが0となるようにPWM駆動部633を介してモータ印加電圧VPWMを制御する。転舵軸力推定部700の外乱オブザーバ部710では、特許文献1に見られるように、転舵モータ610の実位置θrを微分して得られる角速度ωrと転舵モータ610の電流指令値I*から、公知の外乱オブザーバ部710を用いて転舵軸620に加わる転舵軸力Fdisを演算(推定)している。なお、外乱オブザーバ部の構成例を以下の式(1)、式(2)に示す。
【0004】
【数1】
Figure 0004294380
なお、Fdis:転舵軸力、Tdis:転舵モータの外乱トルク、s:ラプラス演算子、g:オブザーバ極、J:転舵モータのイナーシャ、Kt:転舵モータのトルク定数、ωr:転舵モータの角速度、I*:転舵モータへのモータ電流指令値である。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−274405号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来は転舵機構部600の電流制御部632(図8参照)はほぼ理想的に動作しているという前提の下に、モータ電流指令値I*とモータ実電流値Iとは等しいと考えて、モータ実電流値Iの代わりにモータ電流指令値I*を用いて転舵軸力を演算(推定)していた。そして、この転舵軸力に応じた反力トルク指令を生成していた。しかし、電流制御部632のゲインが十分高くない場合には、必ずしもモータ電流指令値I*とモータ実電流値Iとが等しいとは限らないため、そのような場合にモータ電流指令値I*を用いて転舵軸力を推定すると誤差を生じることがあった。一方、転舵モータ位置制御部631のゲインを高くして転舵モータの位置制御性能を向上させた場合には、転舵モータ610にかかる転舵軸力が反転する時に、転舵モータ610と転舵軸620との間に設けたボールねじのバックラッシュや摩擦の影響によってモータ電流指令値I*が振動的になることがある。このような電流指令値I*を用いて転舵軸力の推定を行うと、推定した転舵軸力(以下、推定転舵軸力という)にモータ電流指令値I*の振動が混入してしまうため、反力トルクにも振動が生じるという問題があった。図9は、電流指令値I*を用いて生成した反力モータトルク指令が振動した場合を示している。図において、A,及びB部分が振動している。
【0007】
又、転舵軸620が路面側から大きな転舵軸力を受けた状態でドライバが操舵を続けた場合には、以下のような問題があった。転舵軸620が路面側から大きな転舵軸力を受けた時、例えば、操舵時に操舵輪Tが縁石等に衝突して大きな抵抗を受けた時には、転舵モータ610の実位置と転舵位置指令との間に大きな誤差が一時的に生じる。転舵モータ位置制御部631ではこの偏差をなくすために、より大きなモータ電流指令値を生成する。この結果、電流偏差ΔIも一時的に大きくなり、転舵モータの実モータ電流Iがモータ電流指令値I*に一致しない状態となる。この時、電流制御部632ではPWM駆動部633を介してモータ印加電圧VPWMを上昇させ、指令値通りの実電流を流そうとする。
【0008】
ここで、路面側から受けた転舵軸力が大きい場合は、より大きな電流が必要となる。しかし、転舵モータに印加可能な電圧の最大値はバッテリ電圧VBで制限されているため、PWM制御のデューティ比が100%となってバッテリ電圧VBが印加された状態(電圧飽和状態)に達してしまうと、もはやそれ以上の電流を流すことはできなくなる。この結果、モータ電流指令値I*と転舵モータのモータ実電流値Iとは一致しなくなる。転舵モータのモータ実電流値Iがモータ電流指令値I*に一致しなくなれば、転舵モータの位置制御性能も低下し、転舵モータの実位置は転舵位置指令に追従できなくなる。なお、このような場合においても転舵軸力そのものは式(1)において、モータ電流指令値I*の代わりに、モータ実電流値Iを用いれば正しく推定できる。しかし、モータ印加電圧VPWMがバッテリ電圧VBに達していて、これ以上の切り増し操舵に対しては転舵モータ610が正しく追従できないという情報はドライバには全く伝わらないため、ドライバが何も知らされないまま、さらに切り増し操舵を続けると、転舵モータ610が追従できなくなるという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、推定転舵軸力にモータ制御系ゲインの影響による誤差や振動が生じることを防止するとともに、PWM制御におけるモータ印加電圧が飽和した場合に反力トルクを適切に増大させて、ドライバのそれ以上の切り増し操舵を抑制することが可能な車両用操舵装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、操舵ハンドルと機械的に非連結であって、転舵軸を駆動する転舵モータを備えた転舵機構部と、前記操舵ハンドルの操舵位置に応じて、前記転舵モータのモータ電流指令値を生成し、前記モータ電流指令値に基づいて電流フィードバック制御を行うことにより、前記転舵モータを介して前記転舵機構部の転舵位置を制御する転舵モータ制御手段と、前記転舵モータのモータ電流指令値に応じて転舵モータに印加されるモータ端子間電圧が所定電圧に達したか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に応じて、前記転舵モータのモータ実電流値、又は、前記転舵モータの前記モータ電流指令値のいずれかを選択し、選択した電流値に基づいて前記転舵軸の転舵軸力を推定する軸力推定手段と、前記推定した転舵軸力に基づいて、前記操舵ハンドルに反力を付与する反力モータを制御する反力モータ制御手段とを備えたことを特徴とする車両用操舵装置を要旨とするものである。
【0011】
請求項2の発明は、操舵ハンドルと機械的に非連結であって、転舵軸を駆動する転舵モータを備えた転舵機構部と、前記操舵ハンドルの操舵位置に応じて、前記転舵モータのモータ電流指令値を生成し、前記モータ電流指令値に基づいて電流フィードバック制御を行うことにより、前記転舵モータを介して前記転舵機構部の転舵位置を制御する転舵モータ制御手段と、前記転舵モータのモータ電流指令値に応じて転舵モータに印加されるモータ端子間電圧が所定電圧に達したか否かを判定する判定手段と、前記転舵モータのモータ実電流値に基づいて前記転舵軸の転舵軸力を推定する軸力推定手段と、前記所定電圧に達する以前に推定した転舵軸力に基づいて前記操舵ハンドルに付与する反力よりも大きな反力を付与する反力データを記憶する反力データ記憶手段と、前記判定手段の判定結果に応じて、前記推定した転舵軸力に基づいて、又は、前記反力データに基づいて前記操舵ハンドルに反力を付与する反力モータを制御する反力モータ制御手段とを備えたことを特徴とする車両用操舵装置を要旨とするものである。
【0012】
請求項3の発明は請求項1又は請求項2において、前記所定電圧は、モータ端子間電圧が飽和した電圧であることを特徴とする。さらに、請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、前記判定手段は、前記モータ電流指令値と前記転舵モータのモータ実電流値の偏差が所定閾値に達したか否かにより、モータ端子間電圧が所定電圧に達したか否かを判定することを特徴とする。又、請求項5の発明は、請求項2において、前記反力データ記憶手段は、前記所定電圧に達する以前に推定した転舵軸力に基づいて前記操舵ハンドルに付与する反力よりも大きな反力を付与する反力データと、前記操舵ハンドルの操舵角速度のマップを記憶しており、前記反力モータ制御手段は、前記判定手段の判定結果に応じて、前記反力データに基づいて前記操舵ハンドルに反力を付与する際に、前記操舵ハンドルの操舵角速度に応じて前記反力データ記憶手段が記憶している前記マップから前記反力データを割出し、該反力データに基づいて前記操舵ハンドルに反力を付与する反力モータを制御することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を車両に搭載されるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置(以下、単に操舵装置という)に具体化した一実施形態を図1及び図2に基づいて詳細に説明する。図1は本実施形態の操舵装置の概念図を示している。操舵装置は、ステアリングホイール10(操舵ハンドル)を含む操舵機構部100と、転舵機構部200と、制御部300を備えている。操舵機構部100のステアリングホイール10は、図示しない車両に対して回転可能に支持された操舵軸11に連結されている。ハウジング12には、反力モータ14が取付固定されている。反力モータ14は、本実施形態では単相ブラシ付きDCモータからなる。反力モータ14の出力軸は、減速機構15を介して操舵軸11と作動連結されている。トルクセンサ18は操舵軸11の操舵トルクが検出可能に配置されている。トルクセンサ18は第2システムSY2の第2ECU320に電気的に接続されている。操舵角センサ19は操舵軸11の操舵量、即ち操舵角(操舵位置)を検出可能に配置され、第1システムSY1の第1ECU310に接続されている。操舵角センサ19は本実施形態では、パルスエンコーダから構成されている。
【0014】
(転舵機構部200)
次に転舵機構部200を説明する。転舵機構部200のハウジング201は、図示しない車両のボディに対して支持されている。ハウジング201内において、転舵モータ211,212は、本実施形態では三相ブラシレスDCモータからなり、同軸上に配置されている。本実施形態では、転舵モータ211,212は、ハウジング201内周面に配置された図示しないステータと、同ステータ内に回転自在に配置された図示しない筒状をなす共通のロータとから構成されている。そして、前記ロータ内に、転舵軸としてのシャフト213がその軸線の周りで回転不能かつ軸線方向に移動可能に配置されている。シャフト213と前記ロータは、同ロータの回転運動をシャフト213の直線運動に変換するように構成され、転舵モータ211,212の回転を操舵輪Tのトー角の変化に変換することにより転舵角を変化させる公知の運動変換機構により構成されている。本実施形態では前記運動変換機構はボールネジ機構にて構成されている。この結果、シャフト213の動きは、シャフト213の両端部側に配置された図示しないタイロッドとナックルアームを介して左右の前輪(操舵輪T)に伝達される。
【0015】
転舵モータ211,212は第1PWM駆動部301及び第2PWM駆動部302にてそれぞれ制御される。なお、第1PWM駆動部301及び第2PWM駆動部302は三相ブラシレスDCモータを駆動制御するため、複数のMOS−FETからなるインバータから構成された公知の構成を含み、それぞれ図示しないバッテリ電源が接続されている。そして、第1PWM駆動部301及び第2PWM駆動部302のデューティ制御によって、転舵モータ211,212に印加することの可能な最大電圧は、バッテリ電圧までとされている。第1回転角センサ221,第2回転角センサ222は転舵モータ211,212のロータの軸線方向に沿って並設されており、転舵モータ211,212のそれぞれの回転角を検出する。第1回転角センサ221,第2回転角センサ222はロータリーエンコーダにて構成されている。
【0016】
両回転角センサは、それぞれロータの回転に応じてπ/2ずつ位相の異なる2相パルス列信号と基準回転位置を表す零相パルス列信号を第1ECU310及び第2ECU320に入力する。以下、前記両回転角センサが検出し、出力する信号を単に、検出信号(2相パルス列信号及び零相パルス列信号を含む)ということがある。又、第1回転角センサ221及び第2回転角センサ222からの検出信号は、所定のサンプリング周期で第1ECU310及び第2ECU320に入力されている。そして、第1ECU310及び第2ECU320は入力された検出信号に基づいて転舵モータ211,212におけるロータのステータに対する回転角が演算される。この演算された回転角は、操舵輪Tの転舵角の実位置(実転舵角)に相当する。前記実位置(実転舵角)は、転舵機構部200の転舵位置に相当する。
【0017】
(制御部300)
次に、モータ制御系としての制御部300について説明する。制御部300は、第1ECU310、第2ECU320、第1PWM駆動部301、第2PWM駆動部302及び第3PWM駆動部303とを備えている。第3PWM駆動部303は、単相ブラシ付きDCモータを駆動制御するため、複数のMOS−FETからなるインバータを含んでいる。又、第1PWM駆動部301及び第2PWM駆動部302は、転舵モータ211,212をそれぞれ駆動するためのものである。
【0018】
図2に示すように、電流センサ316及び電流センサ326は、転舵モータ211,212の各相のモータ実電流値を検出するように設けられている。そして、電流センサ316及び電流センサ326が検出した各相のモータ実電流値は、d−q変換部318,329(3相/2相変換部)により、それぞれ2相(d軸、q軸)のモータ実電流値に変換される。以下、電流センサ316及び電流センサ326が検出した三相のモータ実電流値に対応する、この2相分(d軸及びq軸)を含んだモータ実電流値を、それぞれ単に実電流値Ir1,Ir2という。又、第3PWM駆動部303は、反力モータ14を駆動するためのものである。図2に示すように、電流センサ327は反力モータ14のモータ実電流値を検出するように設けられている。
【0019】
第1ECU310及び第2ECU320はそれぞれマイクロコンピュータを含んだ電子制御ユニットにて構成されており、両ECUにより、転舵モータ制御手段が構成されている。又、第1システムSY1は、第1ECU310、操舵角センサ19、第1PWM駆動部301及び転舵モータ211などから構成されている。第2システムSY2は、第2ECU320、第2PWM駆動部302及び転舵モータ212などから構成されている。第1システムSY1の第1ECU310は、操舵角センサ19が検出した操舵角(操舵位置)に基づいて、操舵輪Tの目標位置を求め、同目標位置(目標転舵角)と、操舵輪Tの実転舵角との偏差に基づいて転舵モータ211,212の電流指令を求め、これを所定の配分比にて配分するようにしている。そして、両システムの各ECUはそれぞれ配分された電流指令等に基づいて転舵モータ211,212を駆動制御するようにしている。以下、詳細に説明する。
【0020】
(第1ECU310)
第1ECU310において、図2の一点鎖線内は第1ECU310が前記制御プログラムにより実現している各手段(各部)を示し、目標位置演算部312、位置制御部313、電流分配部314、電流制御部315を備える。なお、図2における一点鎖線内の第1ECU310及び第2ECU320内は制御ブロックを示し、ハード構成を示すものではない。第1ECU310は、操舵角センサ19が検出した操舵角に対応する操舵輪Tの転舵角が得られるように、かつ、そのためにシャフト213に必要な推力が得られるように第1PWM駆動部301を介して転舵モータ211の舵取制御を実行する。
【0021】
詳説すると、目標位置演算部312は、操舵角に基づいて、図示しない記憶手段(例えば、ROM)に格納したマップ等を参照して操舵輪Tの目標位置(目標転舵角)を示す位置指令を生成し、位置制御部313にその位置指令を出力する。位置制御部313は、位置指令と第1回転角センサ221の検出信号に基づいて演算された回転角(操舵輪Tの転舵角の実位置(実転舵角)に相当)とを入力して、位置フィードバック制御を行い速度指令を生成する。そして、位置制御部313は、同速度指令と微分器317が前記回転角に基づいて算出して入力した角速度ωrとに基づき、速度フィードバック制御を行い電流指令I*(なお、電流指令I*には、d軸及びq軸の2相分の電流指令を含む)を生成して、電流指令I*を電流分配部314に出力する。なお、本実施形態では、電流指令I*のうち、d軸の電流指令(d軸電流指令)は常に0としている。
【0022】
電流分配部314に出力される電流指令I*はモータ電流指令値に相当する。電流分配部314は供給された電流指令I*を所定の分配比で分配し、分配した電流指令I1*(d軸及びq軸電流指令を含む。以下同じ)と電流指令I2*(d軸及びq軸電流指令を含む。以下同じ)とをそれぞれ第1システムSY1の電流制御部315と第2システムSY2の電流制御部321に供給する。本実施形態では、車両のエンジン始動時(始動時制御モード)での分配比は50:0(=I1*:I2*)とされ、車両の正常時での制御(正常時制御モード)の分配比は50:50(=I1*:I2*)とされている。
【0023】
すなわち、本実施形態では、電流制御部315と電流制御部321に供給する車両のエンジン始動時(始動時制御モード)でのq軸電流指令の分配比は50:0とされ、車両の正常時での制御(正常時制御モード)の分配比は50:50とされている。なお、車両のエンジン始動時(始動時制御モード)及び車両の正常時での制御(正常時制御モード)に関わらず、電流制御部315と電流制御部321に供給するd軸電流指令はいずれの場合も常に0である。第1ECU310による転舵モータ211の舵取制御は、転舵角が操舵角と対応するように制御する位置制御と、そのためにシャフト213に必要な推力、即ち、出力トルクを得るための電流制御とが含まれる。電流制御部315は、電流制御、すなわち、電流フィードバック制御を実行するためのものである。
【0024】
始動時制御モード及び正常時制御モードでは、電流制御部315は、電流指令I1*と、第1回転角センサ221の検出信号(回転角)、及びd−q変換部318にて変換された転舵モータ211の実電流値Ir1を入力する。そして、電流制御部315は、電流指令I1*(d軸及びq軸電流指令を含む)と実電流値Ir1の各軸の電流偏差をそれぞれ算出する。さらに、電流制御部315は、前記各軸の電流偏差を比例積分制御して、d軸及びq軸電圧指令値を求め、d軸及びq軸電圧指令値を三相変換して、三相の電圧指令に変換する。この三相の電圧指令に基づいてPWMしたモータ駆動信号を出力する。そして、第1PWM駆動部301は、第1ECU310から出力されたモータ駆動信号に制御されてスイッチング動作し、転舵モータ211への通電と断電制御(PWM制御)を繰り返し、電流指令I1*に一致したモータ駆動電流を流して転舵モータ211を回転駆動する。なお、実際には、電流指令I1*に含まれるd軸電流指令は0であるため、q軸電流指令に一致したモータ駆動電流が流れて転舵モータ211が回転駆動することになる。
【0025】
(第2ECU320)
一方、第2ECU320において、図2の一点鎖線内は第2ECU320が制御プログラムにより実現している各手段(各部)を示し、電流制御部321、外乱オブザーバ部322、反力トルク指令生成部323、トルク制御部324、電流制御部325、d−q変換部329、切換器330、判定部331を備える。外乱オブザーバ部322、及び反力トルク指令生成部323とにより転舵軸力推定部335が構成されている。
【0026】
始動時制御モード及び正常時制御モードでは、電流制御部321は、分配された電流指令I2*と、第2回転角センサ222の検出信号(回転角)及び電流センサ326が検出した転舵モータ212の各軸(d軸とq軸)の実電流値Ir2を入力する。第2ECU320による転舵モータ212の舵取制御は、シャフト213に必要な推力、即ち、出力トルクを得るための電流制御が含まれる。電流制御部321は、電流制御、すなわち、電流フィードバック制御を実行するためのものである。電流制御部321は、電流指令I2*と、第2回転角センサ222の検出信号(回転角)、及びd−q変換部329にて変換された転舵モータ212の2相(d軸及びq軸)の実電流値Ir2を入力する。そして、電流制御部321は、電流指令I2*(d軸及びq軸電流指令を含む)と実電流値Ir2の各軸の電流偏差をそれぞれ算出する。さらに、電流制御部321は、前記各軸の電流偏差を比例積分制御して、d軸及びq軸電圧指令値を求め、d軸及びq軸電圧指令値を三相変換して、三相の電圧指令に変換する。この三相の電圧指令に基づいてPWMしたモータ駆動信号を出力する。そして、第2PWM駆動部302は、第2ECU320から出力されたモータ駆動信号に制御されてスイッチング動作し、転舵モータ212への通電と断電制御(PWM制御)を繰り返し、電流指令I2*に一致したモータ駆動電流を流して転舵モータ212を回転駆動する。なお、実際には、電流指令I2*に含まれるd軸電流指令は0としているため、q軸電流指令に一致したモータ駆動電流が流れて転舵モータ212が回転駆動することになる。
【0027】
そして、このようにして、転舵モータ211,212が駆動制御され、これらのモータの出力が合わさることにより、転舵機構部200にて操舵輪Tの目標転舵角への舵取が行われる。なお、上記説明は両システムが共に正常の場合の両転舵モータの制御について説明したが、一方のシステムが故障時には、残った正常側のシステムのECUが、目標位置演算部312〜電流制御部315の機能を実現するように、制御プログラムが実行される。この場合、トルクセンサ18や操舵角センサ19等の各システムに入力される各センサからの検出信号は、必要な場合には、故障側のシステムのECUから正常側のシステムのECUに対して送信される。そして、正常側のシステムは、制御対象の転舵モータの出力を、両システムが共に正常時の場合よりも高めるように制御する。
【0028】
(反力付与)
次に、ステアリングホイール10に反力を付与するための構成について説明する。第1ECU310の微分器317は、第1回転角センサ221が検出した回転角を微分して、角速度ωrを求め、求めた角速度ωrを第2ECU320の外乱オブザーバ部322に入力する。又、d−q変換部318及びd−q変換部329は、転舵モータ211,212の実電流値Ir1,Ir2を、切換器330を介して外乱オブザーバ部322に入力する。
【0029】
判定部331は、電流制御部321で演算した各軸の電流偏差のうち、q軸の電流偏差が、所定閾値以下か否かを判定する。本実施形態の所定閾値は、この所定閾値に基づいて、電流制御部321が電圧指令を生成し、第2PWM駆動部302がこの電圧指令に基づいてPWMしたモータ駆動信号を出力したとき、第2PWM駆動部302を介して転舵モータ212に印加されるモータ端子間電圧がバッテリ電圧に達する値とされている。前記バッテリ電圧は、本発明の所定電圧に相当する。なお、q軸の電流偏差が、所定閾値以下か否かを判定する理由は、q軸電流が転舵モータの出力トルクを決定する電流であるからである。
【0030】
(電流偏差が所定閾値以下の場合)
そして、判定部331は、電流制御部321で演算した各軸の電流偏差のうち、q軸の電流偏差が前記所定閾値以下の場合、切換器330を介して、前記転舵モータ211,212の実電流値Ir1,Ir2を外乱オブザーバ部322に入力するように接続する。外乱オブザーバ部322は、入力した角速度ωr及び実電流値Ir1,Ir2に基づいてシャフト213に働く転舵軸力を推定する。すなわち、外乱オブザーバ部322は、角速度ωrと、実電流値Ir1,Ir2のq軸の実電流値Iqr1,Iqr2を下記の式(3)及び式(4)に代入することによって、転舵軸力を演算する。
【0031】
【数2】
Figure 0004294380
なお、本実施形態の式において、Fdisは転舵軸力、Tdisは両転舵モータの外乱トルクの和、sはラプラス演算子、gはオブザーバ極、J1は転舵モータ211のイナーシャ、Kt1は転舵モータ211のトルク定数、ωrは転舵モータ211の角速度、Iqr1は転舵モータ211のq軸の実電流値である。又、J2は転舵モータ212のイナーシャ、Kt2は転舵モータ212のトルク定数、Iqr2は転舵モータ212のq軸の実電流値である。従って、式(4)から分かるように、角速度ωrが負の場合は、正の場合よりもTdisが大きくなるため、式(3)によって算出された転舵軸力Fdisも大きくなる。
【0032】
(電流偏差が所定閾値を超える場合)
一方、判定部331は、電流制御部321で演算した各軸の電流偏差のうち、q軸の電流偏差が所定閾値を超える場合、切換器330を介して、前記転舵モータ211,212の分配された各電流指令I1*及び電流指令I2*を外乱オブザーバ部322に入力するように接続する。従って、この場合、外乱オブザーバ部322は、入力した角速度ωrと、分配された両電流指令I1*及び電流指令I2*に基づきシャフト213に働く仮想の転舵軸力を演算する。すなわち、外乱オブザーバ部322は、角速度ωrと、電流指令I1*,I2*のq軸電流指令Iq1*,Iq2*を下記の式(5)に代入して、両転舵モータの外乱トルクを合計し、前記式(3)式にて仮想の転舵軸力を演算する。
【0033】
【数3】
Figure 0004294380
なお、式(5)において、Iq1*は転舵モータ211のq軸電流指令、Iq2*は転舵モータ212のq軸電流指令である。反力トルク指令生成部323は、外乱オブザーバ部322が推定又は演算した前記転舵軸力に基づき、図示しない記憶手段に格納した反力マップ等を参照して反力を得るのに必要な反力トルクを反力トルク指令として求め、求められた反力トルク指令を、トルク制御部324に出力する。トルク制御部324は、トルクセンサ18から入力した操舵トルクと、反力トルク指令との偏差を演算し、その偏差を反力トルクの電流指令として電流制御部325に付与する。即ち、トルクフィードバック制御が行われる。このように制御部300の第2ECU320は、トルクセンサ18より得られる操舵トルクにより、トルクフィードバック制御を行う制御ループを備える。電流制御部325は、前記反力トルクの電流指令と、電流センサ327が検出した反力モータ14のモータ実電流値を入力する。電流制御部325は、モータ実電流値と前記電流指令との偏差を解消するように電流指令に一致したモータ駆動電流を流して反力モータ14を回転駆動する。このようにして、反力モータ14が駆動制御され、ステアリングホイール10に、その操舵方向とは逆方向の反力トルクが付与される。この結果、ステアリングホイール10の回転操作には、反力モータ14が発生する反力に抗する操舵トルクを加える必要がある。
【0034】
(作用)
次に、上記のように構成された操舵装置の作用について説明する。図3は、本実施形態の第2ECU320が実行する軸力推定制御プログラムのフローチャートであり、所定周期毎に実行処理される。この制御プログラムの処理に入ると、S10(ステップをSで表す)では、電流制御部321で算出したq軸の電流偏差を読み込む。S20では、読み込みしたq軸の電流偏差が所定閾値以下か否かを判定する。S20は、前記判定部331及び切換器330が行う処理である。S20で、q軸の電流偏差が所定閾値以下の場合には、S30で、q軸の実電流値Iqr1,Iqr2を用いた前述の転舵軸力の推定を行い、この制御プログラムを終了する。一方、このS20で、電流偏差が所定閾値を超える場合にはS40に移行し、両電流指令I1*,I2*を使用した前述の仮想の転舵軸力を演算する。
【0035】
従って、上記の構成によって、ステアリングホイール10の操舵時にモータ端子間電圧が、飽和状態となった場合は、S10,S20,S40に移行して電流指令を用いた仮想の転舵軸力の演算がなされる。そして、増大した電流指令を用いて演算された仮想の転舵軸力に基づいて反力モータ14を駆動制御するため、ステアリングホイール10に付与される反力トルクが増加し、それ以上の切り増し操舵を抑制することができる。
【0036】
本実施形態によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1) 本実施形態のステアバイワイヤ式の操舵装置では、ステアリングホイール10(操舵ハンドル)の操舵角(操舵位置)に応じて、転舵モータ211,212のq軸電流指令Iq1*,Iq2*を生成するようした。そして、q軸電流指令Iq1*,Iq2*に基づいて、電流フィードバック制御を行うことにより、転舵モータ211,212を介して操舵輪Tの転舵角の実位置(転舵機構部200の転舵位置)を制御する第1ECU310及び第2ECU320(転舵モータ制御手段)を備える。さらに、第2ECU320は、判定手段として、転舵モータ212の電流指令に応じて転舵モータ212に印加されるモータ端子間電圧が増加してバッテリ電圧(所定電圧)に達することにより、q軸の電流偏差が生じて所定閾値を超えているか否かを判定するようにした。又、第2ECU320は、軸力推定手段として前記判定結果に応じて転舵モータ211,212のq軸の実電流値Iqr1,Iqr2、又は転舵モータ211,212のq軸電流指令Iq1*,Iq2*のいずれかを選択するようにした。そして、第2ECU320は、選択した電流値に基づいてシャフト213(転舵軸)の転舵軸力を演算するようにした。さらに、第2ECU320は反力モータ制御手段として、演算した転舵軸力に応じて、ステアリングホイール10に反力を付与する反力モータ14を制御するようにした。この結果、速い操舵をした際にモータ端子間電圧が、操舵時に所定電圧に達した場合には、反力モータにより反力を増大させて、それ以上の切り増し操舵を抑制することができる。
【0037】
(2) 第1実施形態の操舵装置においては、第2ECU320(判定手段)は、q軸電流指令Iq2*と転舵モータ212のq軸の実電流値Iqr2の偏差が所定閾値に達したか否かにより、モータ端子間電圧がバッテリ電圧(所定電圧)に達したか否かを判定するようにした。この結果、上記(1)の作用効果を容易に実現できる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図5及び図6(a)を参照して説明する。なお、図5における一点鎖線内の第1ECU310及び第2ECU320内は制御ブロックを示し、ハード構成を示すものではない。又、第1実施形態と同一構成及び相当する構成については、同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成を説明する。第2実施形態では、第1実施形態の切換器330が省略されている。そして、外乱オブザーバ部322には、従来と同様に、実電流値Ir1(q軸の実電流値Iqr1),Ir2(q軸の実電流値Iqr2)が入力可能にされており、第2実施形態では、切換器340と、読出部350、記憶部360とを備えている。
【0039】
記憶部360は、反力データ記憶手段として機能するROM等からなる記憶手段にて構成されており、規定反力設定値が予め記憶されている。規定反力設定値は、第1実施形態で説明した所定電圧(バッテリ電圧)に達する直前まで反力トルク指令生成部323で生成した反力トルク指令よりも大きな値となるように予め設定されている。なお、第2実施形態では、規定反力設定値は固定値である。判定部331は、第1実施形態と同様に電流制御部321で演算したq軸の電流偏差が、所定閾値以下か否かを判定する。そして、q軸の電流偏差が、所定閾値以下の場合には、判定部331は、切換器340を介して、反力トルク指令生成部323の出力をトルク制御部324に出力する。又、q軸の電流偏差が、所定閾値を超える場合には、判定部331は、切換器340を介して、読出部350が読み出した記憶部360の規定反力設定値をトルク制御部324に出力するようにされている。
【0040】
(作用)
次に、上記のように構成された操舵装置の作用について説明する。図6(a)は、第2実施形態の第2ECU320が実行する反力トルク指令生成制御プログラムのフローチャートであり、所定周期毎に実行処理される。この制御プログラムの処理に入ると、S110では、電流制御部321で算出したq軸の電流偏差を読み込む。S120では、読み込みしたq軸の電流偏差が所定閾値以下か否かを判定する。S120は、前記判定部331及び切換器340が行う処理である。S120で、q軸の電流偏差が所定閾値以下の場合には、S130で、q軸の実電流値Iqr1,Iqr2を用いた転舵軸力の推定及び反力マップにより反力トルク指令を求め、この求めた反力トルク指令をトルク制御部324に出力してこの制御プログラムを終了する。一方、このS120で、q軸の電流偏差が所定閾値を超える場合にはS140に移行し、規定反力設定値を反力トルク指令として、トルク制御部324に出力してこの制御プログラムを終了する。従って、上記の構成によって、ステアリングホイール10の操舵時にモータ端子間電圧が、飽和状態となった場合は、S110,S120,S140に移行して規定反力設定値による反力トルク指令を用いて得られた反力トルクが反力モータ14にてステアリングホイール10に付与される。従って、ステアリングホイール10に付与される反力トルクを、増加させることができる。
【0041】
第2実施形態によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1) 本実施形態のステアバイワイヤ式の操舵装置では、ステアリングホイール10(操舵ハンドル)の操舵角(操舵位置)に応じて、転舵モータ211,212のq軸電流指令Iq1*,Iq2*を生成するようした。そして、q軸電流指令Iq1*,Iq2*に基づいて、電流フィードバック制御を行うことにより、転舵モータ211,212を介して操舵輪Tの転舵角の実位置(転舵機構部200の転舵位置)を制御する第1ECU310及び第2ECU320(転舵モータ制御手段)を備える。さらに、第2ECU320は、判定手段として、転舵モータ212の電流指令に応じて転舵モータ212に印加されるモータ端子間電圧が増加してバッテリ電圧(所定電圧)に達することにより、q軸の電流偏差が生じて所定閾値を超えているか否かを判定するようにした。又、第2ECU320は、軸力推定手段として転舵モータ211,212のq軸の実電流値Iqr1,Iqr2に基づいてシャフト213(転舵軸)の転舵軸力を推定するようにした。そして、記憶部360は、反力データ記憶手段として、所定電圧(バッテリ電圧)に達する直前までに推定した転舵軸力に応じてステアリングホイール10に付与する反力よりも大きな反力を付与する規定反力設定値(反力データ)を記憶するようにした。さらに、第2ECU320は反力モータ制御手段として、前記判定結果に応じて、推定した転舵軸力に応じて、或いは、規定反力設定値に基づいてステアリングホイール10に反力を付与する反力モータ14を制御するようにした。
【0042】
この結果、モータ端子間電圧が所定電圧に達するまではモータ制御系ゲインの影響を受けない安定した推定軸力を得ることができる。さらに、操舵時にモータ端子間電圧が、所定電圧に達した場合には、反力モータにより反力を増大させて、それ以上の切り増し操舵を抑制するようにすることができる。
【0043】
なお、本発明の実施形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、次のように変更してもよい。
(1) 第1実施形態では、判定部331は、電流制御部321で算出した電流偏差が所定閾値以下か否かを判定したが、判定部331を第1ECU310側に設け、電流制御部315で算出した電流偏差に基づいて判定するようにしてもよい。
【0044】
(2) 第1実施形態では、第2ECU320は、電流偏差で判定したが、モータ端子間電圧で判定するようにしてもよい。すなわち、電流制御部315で出力する電圧指令に基づいて出力電圧が所定電圧か否かを判定するようにする。この場合、図4に示すように、フローチャートは、S10,S20の代わりにS10A,S20Aのように変更する。S10Aでは、出力電圧を読込し、S20Aでは、読込した出力電圧が所定電圧か否かを判定する。他のステップは、第1実施形態と同様である。
【0045】
(3) 所定電圧は、前記各実施形態ではバッテリ電圧としたが、必ずしもバッテリ電圧に限定するものではない、バッテリ電圧をVbとしたとき、Vb−αの値を所定電圧としてもよい。この場合、αは、例えば、0.5Vのように1Vよりも小さな値とする。
【0046】
(4) 第2実施形態では、第2ECU320は、電流偏差で判定したが、モータ端子間電圧で判定するようにしてもよい。すなわち、電流制御部321で出力する電圧指令に基づいて出力電圧が所定電圧か否かを判定するようにする。この場合、図6(b)に示すように、フローチャートは、S110,S120の代わりにS110A,S120Aのように変更する。S110Aでは、出力電圧を読込し、S120Aでは、読込した出力電圧が所定電圧か否かを判定する。他のステップは、第2実施形態と同様である。
【0047】
(5) 第2実施形態では、規定反力設定値は、固定値としたが、固定値に限定するものではなく、可変値であってもよい。例えば、操舵角速度に応じて、異なる反力トルク指令が得られるように、操舵角速度と、反力データとをマップ化して、該マップを記憶部360に格納する。そして、ステアリングホイール10の操舵角を操舵角センサ19にて検出し、前記操舵角を微分器370(図5参照)にて微分して、操舵角速度を求め、得た操舵角速度を読出部350に入力して、その操舵角速度に応じて反力データを割り出すようにしてもよい。この場合においても、反力データとしての規定反力設定値は、所定電圧(バッテリ電圧)に達する以前において、推定した転舵軸力に基づいて得られるステアリングホイール10に付与する反力よりも大きな反力を付与する値とする。
【0048】
【発明の効果】
以上、詳述したように、請求項1乃至請求項5に記載の発明によれば、モータ端子間電圧が所定電圧に達するまではモータ制御系ゲインの影響を受けない安定した推定軸力を得ることができる効果を奏する。すなわち、モータ制御系ゲインの影響による誤差や振動が生じることを防止できる。さらに、操舵をした際にモータ端子間電圧が、所定電圧に達した場合には、反力モータにより、反力を増大させて、それ以上の切り増し操舵を抑制するようにすることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態の操舵装置の全体を示す概略図。
【図2】 同じく制御ブロックの概念図。
【図3】 第2ECUが実行する軸力推定制御プログラムのフローチャート。
【図4】 第1実施形態の変形例における第2ECUが実行する制御プログラムのフローチャート。
【図5】 第2実施形態の同じく制御ブロックの概念図。
【図6】 (a)は第2ECUが実行する反力トルク指令生成制御プログラムのフローチャート、(b)は第2実施形態の変形例における第2ECUが実行する反力トルク指令生成制御プログラムのフローチャート。
【図7】 公知のステアバイワイヤ式車両用操舵装置の概念図。
【図8】 従来技術の転舵機構部600の転舵モータ制御部630の制御ブロック図。
【図9】 反力モータトルク指令のタイムチャート。
【符号の説明】
10…ステアリングホイール(操舵ハンドル)
14…反力モータ
19…操舵角センサ
200…転舵機構部
211,212…転舵モータ
213…シャフト(転舵軸)
300…制御部(モータ制御系)
310…第1ECU(転舵モータ制御手段)
320…第2ECU(転舵モータ制御手段、判定手段、軸力推定手段、反力モータ制御手段)
360…記憶部(反力データ記憶手段)
T…操舵輪
SY1…第1システム
SY2…第2システム

Claims (5)

  1. 操舵ハンドルと機械的に非連結であって、転舵軸を駆動する転舵モータを備えた転舵機構部と、前記操舵ハンドルの操舵位置に応じて、前記転舵モータのモータ電流指令値を生成し、前記モータ電流指令値に基づいて電流フィードバック制御を行うことにより、前記転舵モータを介して前記転舵機構部の転舵位置を制御する転舵モータ制御手段と、前記転舵モータのモータ電流指令値に応じて転舵モータに印加されるモータ端子間電圧が所定電圧に達したか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に応じて、前記転舵モータのモータ実電流値、又は、前記転舵モータの前記モータ電流指令値のいずれかを選択し、選択した電流値に基づいて前記転舵軸の転舵軸力を推定する軸力推定手段と、前記推定した転舵軸力に基づいて、前記操舵ハンドルに反力を付与する反力モータを制御する反力モータ制御手段とを備えたことを特徴とする車両用操舵装置。
  2. 操舵ハンドルと機械的に非連結であって、転舵軸を駆動する転舵モータを備えた転舵機構部と、前記操舵ハンドルの操舵位置に応じて、前記転舵モータのモータ電流指令値を生成し、前記モータ電流指令値に基づいて電流フィードバック制御を行うことにより、前記転舵モータを介して前記転舵機構部の転舵位置を制御する転舵モータ制御手段と、前記転舵モータのモータ電流指令値に応じて転舵モータに印加されるモータ端子間電圧が所定電圧に達したか否かを判定する判定手段と、前記転舵モータのモータ実電流値に基づいて前記転舵軸の転舵軸力を推定する軸力推定手段と、前記所定電圧に達する以前に推定した転舵軸力に基づいて前記操舵ハンドルに付与する反力よりも大きな反力を付与する反力データを記憶する反力データ記憶手段と、前記判定手段の判定結果に応じて、前記推定した転舵軸力に基づいて、又は、前記反力データに基づいて前記操舵ハンドルに反力を付与する反力モータを制御する反力モータ制御手段とを備えたことを特徴とする車両用操舵装置。
  3. 前記所定電圧は、モータ端子間電圧が飽和した電圧であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用操舵装置。
  4. 前記判定手段は、前記モータ電流指令値と前記転舵モータのモータ実電流値の偏差が所定閾値に達したか否かにより、モータ端子間電圧が所定電圧に達したか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の車両用操舵装置。
  5. 前記反力データ記憶手段は、前記所定電圧に達する以前に推定した転舵軸力に基づいて前記操舵ハンドルに付与する反力よりも大きな反力を付与する反力データと、前記操舵ハンドルの操舵角速度のマップを記憶しており、
    前記反力モータ制御手段は、前記判定手段の判定結果に応じて、前記反力データに基づいて前記操舵ハンドルに反力を付与する際に、前記操舵ハンドルの操舵角速度に応じて前記反力データ記憶手段が記憶している前記マップから前記反力データを割出し、該反力データに基づいて前記操舵ハンドルに反力を付与する反力モータを制御することを特徴とする請求項2に記載の車両用操舵装置。
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