JP4294195B2 - トナー用樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、副反応に伴う不純物の生成が少なく所望の重量平均分子量を有するトナー用樹脂を製造することができるトナー用樹脂の製造方法に関する。
【0001】
【従来の技術】
スチレン系単量体を主成分とした低重量平均分子量のビニル系重合体は、電子写真のトナー用樹脂として用いられ、トナーを加熱溶融させて紙上に定着させる際、トナー用樹脂の熱流動性を向上させて定着性を向上させる目的で用いられる。
【0002】
上記低重量平均分子量のビニル系量重合体はラジカル重合反応によって合成され、低重量平均分子量のビニル系重合体の重合方法としては、例えば、ビニル系単量体を有機溶媒中においてラジカル重合開始剤の存在下で重合させる溶液重合法、ビニル系単量体とラジカル重合開始剤のみの存在下にラジカル重合反応を行なう塊状重合法、有機溶媒中において或いは有機溶媒の非存在下においてビニル系単量体をラジカル重合開始剤を用いることなく熱重合反応によってラジカル重合させる熱重合法等が挙げられる。
【0003】
上記低重量平均分子量のビニル系重合体の具体的な製造方法としては、例えば、特開昭61−114246号公報にはラジカル重合開始剤を多量に使用する方法が開示され、特開昭58−86558号公報には連鎖移動剤等の分子量調整剤を添加する方法が開示され、これら製造方法の他にビニル系単量体の反応濃度を低くする方法等が挙げられる。
【0004】
しかしながら、上記特開昭61−114246号公報に記載の製造方法では、重合開始剤を多量に用いることからラジカル重合開始剤の副反応に伴う不純物やラジカル重合開始剤残渣が多くなって好ましくなく、しかも、高価なラジカル重合開始剤を多量に用いることから製造コストが上昇するといった問題があり、特開昭58−86558号公報に記載の製造方法では、臭気やオリゴマーの発生等の問題があり、しかも、上記と同様に高価な連鎖移動剤を用いることから製造コストが上昇するといった問題があり、ビニル系単量体の反応濃度を低くすると一度の製造工程で得られる低重量平均分子量のビニル系重合体の生産効率が低下し好ましくないといった問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、不純物が少なく効率的にトナー用樹脂を製造することができるトナー用樹脂の製造方法に関する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のトナー用樹脂の製造方法は、ビニル系単量体を有機溶媒中でラジカル重合開始剤の存在下でラジカル重合させるトナー用樹脂の製造方法であって、ラジカル重合温度が170℃以上であるとともに、前記ラジカル重合開始剤のうちの20モル%以上が下記式2を満たし、かつ該ラジカル重合開始剤は化学式R−O−OH(Rは炭素数6以上の脂肪族又は芳香族炭化水素)で示されることを特徴とする。
【0007】
【式2】
(式2)
【0008】
上記ビニル系単量体としては、従来からトナー用樹脂に用いられているものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−スチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ter−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;2−クロロエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メチル−α−クロロ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ビスグリシジルメタクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリロキシエチルホスフェート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、α−エチル(メタ)アクリル酸等のα−アルキル誘導体、クロトン酸等のβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸並びにそのモノエステル誘導体及びそのジエステル誘導体、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノメタクリロイルオキシエチルエステル、(メタ)アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられ、スチレン系単量体を単独で或いはスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを併用するのが好ましい。なお、上記(メタ)アクリル酸エステルの中では、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0009】
上記ラジカル重合開始剤としては、ラジカル重合温度に応じて上記式2の条件を満たす10時間半減期温度を有するラジカル重合開始剤を適宜選択して用いればよく、このようなラジカル重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレラート等のパーオキシケタール類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキソアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類などがあげられ、その他にも、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド等のR−O−OH(Rは炭素数6以上の脂肪族又は芳香族炭化水素)で示される化合物等の過酸化物系ラジカル重合開始剤、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2、4,4−トリメチルペンタン)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等のアゾ系ラジカル重合開始剤等が挙げられ、R−O−OH(Rは炭素数6以上の脂肪族又は芳香族炭化水素)で示される化合物が好ましい。
【0010】
なお、上記R−O−OHで示されるラジカル重合開始剤において、R基は炭素数6以上の脂肪族又は芳香族炭化水素に限定される。これは、R基の炭素数が5以下であると、溶液重合時における有機溶媒やビニル系単量体との溶解性が低下することがあるからである。
【0011】
上記式2は、ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度とラジカル重合温度との差が100℃以下であることを意味する。このように、ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度とラジカル重合温度との差を100℃以下とするのは、ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度がラジカル重合温度より100℃を越えて低い場合は、反応時のラジカル発生速度が速すぎて瞬時に多量の開始剤ラジカルが発生するためオリゴマー成分が多量に発生したり、ラジカル重合開始剤効率が低下するためであり、逆に、ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度がラジカル重合温度より100℃を越えて高い場合は、消費されないで残留するラジカル重合開始剤が増え、反応終了後も樹脂が加熱状態にさらされた時にラジカル種が発生し続けて樹脂の劣化を招くといった問題が生じるからである。
【0012】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は反応温度やラジカル重合開始剤中のラジカル発生機能のある官能基の個数、目的とするビニル系重合体の分子量によって決定される。一般的に、本発明におけるビニル系低分子量重合体の重量平均分子量は2,000〜100,000が好ましい。
【0013】
本発明において使用する全ラジカル重合開始剤の量(上記式2の条件を満たさないラジカル重合開始剤も含む)は、上記ラジカル重合開始剤から発生するラジカルの量が多くなるほど低い分子量になるので、上記範囲の重量平均分子量を有するビニル系低分子量重合体を得るには、ビニル系単量体1モルに対してラジカル発生機能のある官能基が全て解離した場合の発生ラジカル量が0.001〜0.5モルとなるよう調整することが好ましい。
【0014】
ビニル系単量体1モルに対する発生ラジカル量が0.001モル未満の場合は、得られるビニル系重合体の分子量が大きくなりすぎて好ましくない。又、ビニル系単量体1モルに対する発生ラジカル量が0.5モルを越える場合は、得られるビニル系重合体中に多量の開始剤残渣が不純物として存在したり、副反応が起こりやすくなるとともに、コスト面においても不利になる。
【0015】
又、上記式2の条件を満たすラジカル重合開始剤の他に上記式2の条件を満たさないラジカル重合開始剤を併用してもよく、このような場合は、用いられるラジカル重合開始剤全体中、上記式2を満たすラジカル重合開始剤量が20モル%以上となるように調整する必要がある。
【0016】
これは、上記式2を満たすラジカル重合開始剤量がラジカル重合開始剤全体中において、20モル%未満のときであって、ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が反応温度より100℃を越えて低い場合には、反応時のラジカル発生速度が速すぎて瞬時に多量の開始剤ラジカルが発生するためオリゴマー成分が多量に発生したり、ラジカル重合開始剤効率が低下するために好ましくなく、逆に、20モル%未満のときであって、ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が反応温度より100℃を越えて高い場合には、消費されないで残留するラジカル重合開始剤が増え、反応終了後も樹脂が加熱状態にさらされた時にラジカル種が発生し続けて樹脂の劣化につながるといった問題が発生するからである。
【0017】
上記ビニル系単量体から得られる低重量平均分子量のビニル系重合体には樹脂強度を向上させる目的で架橋構造が付与されてもよく、ビニル系重合体に架橋構造を付与する場合には架橋剤が添加され、このような架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能の架橋剤;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4−メタクリロキシ、ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート等の多官能の架橋剤等が挙げられる。
【0018】
上記架橋剤の添加量は、多いと、得られるトナー用樹脂の熱流動性が低下し、又、少ないと、樹脂強度を向上させようとする目的が達成されないので、ビニル系単量体1モルに対して0.0001〜0.01モルが好ましい。
【0019】
本発明では、上記ビニル系単量体を有機溶媒中で特定条件を満たすラジカル重合開始剤の存在下170℃以上のラジカル重合温度にてラジカル重合させて低重量平均分子量のビニル系重合体からなるトナー用樹脂を製造する。
【0020】
上記ラジカル重合の反応温度、即ち、ラジカル重合温度は170℃以上に限定され、ビニル系単量体の劣化反応が生ずるおそれがあることから170〜210℃が好ましい。このようにラジカル重合温度を170℃以上に調整することによって、比較的少ないラジカル重合開始剤の量で低重量平均分子量のビニル系重合体が得られ、特に、ビニル系単量体としてスチレンを用いる場合にはスチレンの熱重合速度が増大して低重量平均分子量の重合体を得ることができ、しかも、ラジカル重合開始剤の添加量を少量とすることにより、得られるトナー用樹脂中に含まれるラジカル重合開始剤の残渣や副反応による副生成物の含有量を抑えることができる。
【0021】
又、上記有機溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系有機溶剤;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤;エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系有機溶剤、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられ、上記有機溶媒の中で常圧下の沸点が170℃未満のものを使用する場合には反応系を加圧状態に保持して用いられる。
【0022】
上記ビニル系単量体をラジカル重合させた後に加熱又は減圧によって有機溶媒を除去する必要があるが、この時、有機溶媒の常圧下における沸点が高いと、得られたトナー用樹脂中から有機溶媒を完全に除去することができずに得られるトナー用樹脂の品質が劣化することがあるので、常圧下における沸点が150℃以下の有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0023】
又、上記ビニル系単量体や上記ラジカル重合開始剤、必要に応じて添加される架橋剤等の反応系への供給方法や供給条件については、特に限定されず、例えば、▲1▼有機溶媒中にビニル系単量体とラジカル重合開始剤とを均一に溶解させたものを連続的に反応系に供給する一方、得られたビニル系重合体を連続的に排出する方法、▲2▼ビニル系単量体とラジカル重合開始剤とを有機溶媒中に溶解させたものを反応系に所定量づつ滴下、供給するバッチ方式等が挙げられる。なお、後者のバッチ方式を用いる場合には、ラジカル重合開始剤を有機溶媒中に溶解させたものとビニル系単量体とを別々に反応系に滴下するようにしてもよい。
【0024】
上記の如くして得られたビニル系重合体、即ち、トナー用樹脂の重量平均分子量は、高いと、得られるトナー用樹脂が固くなりすぎて粉砕が困難になったり、或いは、低温における加熱時の流動性が低下することがあり、又、低いと、得られるトナー用樹脂中のオリゴマー成分が多くなって該トナー用樹脂のガラス転移温度Tgが低くなり、トナー用樹脂の表面に粘着感が発現して粉体として取り扱う場合にブロッキングが生じたり粉体流動性が低下して取扱性が低下したりすることがあるので、2,000〜100,000が好ましい。
【0025】
なお、上記トナー用樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーによって測定されたものをいい、具体的には、テトラヒドロフラン(THF)をキャリヤー溶媒とし、校正試料として標準ポリスチレン換算することによって測定されたものをいう。
【0026】
そして、上記トナー用樹脂を結着樹脂として、これに離型剤、着色剤、電荷制御剤、必要に応じて、磁性粉等を分散混合した上で溶融混練し粉砕してトナーを製造することができる。上記離型剤としては、従来からトナーで用いられているものであればよく、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等のオレフィン系ワックスの他に、パラフィン系ワックス等が挙げられる。
【0027】
又、上記着色剤としては、従来からトナーで用いられているものであればよく、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、フタロシアニンブルー、キノリンイエロー、ランプブラック、ローダミン−B、キナクリドン等が挙げられ、通常、上記トナー用樹脂100重量部に対して1〜10重量部添加される。
【0028】
上記電荷制御剤としては、正帯電用電荷制御剤と負帯電用電荷制御剤とがあり、正帯電用電荷制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジン塩等が挙げられ、又、負帯電用電荷制御剤としては、例えば、クロム錯体、鉄錯体等が挙げられ、通常、上記トナー用樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部添加される。
【0029】
上記トナー用樹脂が乾式現像方式の電子写真のトナーに用いられる場合には、得られるトナーの耐ブロッキング性を向上させるために、重量平均分子量が100万〜400万である高重量平均分子量のビニル系重合体を添加してもよい。
【0030】
又、上記高重量平均分子量のビニル系重合体は、上述したビニル系単量体を汎用の重合方法により重合させて製造することができる。なお、上記汎用の重合方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。
【0031】
上記低重量平均分子量のビニル系重合体と上記高重量平均分子量のビニル系重合体とを混合する方法としては、両者が均一に混合されれば、特に限定されず、例えば、▲1▼低重量平均分子量のビニル系重合体と高重量平均分子量のビニル系重合体とを別々に製造し、これらを押出機、ロールミル等の汎用の溶融混練手段に供給して両者を混合する方法、▲2▼低重量平均分子量のビニル系重合体と高重量平均分子量のビニル系重合体とを両者が溶解可能なトルエン等の有機溶媒に溶解させて混合する方法、▲3▼低重量平均分子量のビニル系重合体の原料となるビニル系単量体をトルエン等の有機溶媒中に溶解させて、このビニル系単量体をラジカル重合させて低重量平均分子量のビニル系重合体を製造した後、この反応系に別途製造した高重量平均分子量のビニル系重合体を添加して、低重量平均分子量のビニル系重合体と高重量平均分子量のビニル系重合体とを混合する方法等が挙げられ、低重量平均分子量のビニル系重合体と高重量平均分子量のビニル系重合体とをより均一に混合することができることから上記▲2▼▲3▼の方法が好ましく、上記▲3▼の方法がより好ましい。
【0032】
又、上記の如く、高重量平均分子量のビニル系重合体を添加する場合には、得られるトナー用樹脂のガラス転移温度Tgやフロー軟化点Tfが後述する範囲内となるように高重量平均分子量のビニル系重合体の添加量を調整することが好ましく、具体的には、低重量平均分子量のビニル系重合体100重量部に対して5〜100重量部が好ましい。
【0033】
即ち、上記トナー用樹脂のガラス転移温度Tgは、低いと、トナーの保存性が低下することがあるので、50℃以上となるように高重量平均分子量のビニル系重合体の添加量を調整することが好ましく、又、上記トナー用樹脂のフロー軟化点Tfは、高いと、トナーの定着性が低下することがあるので、145℃以下となるように高重量平均分子量のビニル系重合体の添加量を調整することが好ましい。
【0034】
なお、上記トナー用樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121の9.3「ガラス転移温度の求め方」に記載されている中間点ガラス転移温度(Tmg)であって同法に準拠して測定される値であり、又、上記トナー用樹脂のフロー軟化点は、図1に示された解析用チャートのh/2に相当するフロー曲線上の点Tの温度を読み取って求められる値である。
【0035】
【実施例】
(実施例1〜3、比較例1〜3)
ステンレス製オートクレーブ反応器に表1に示した所定量のキシレンを投入した上で上記オートクレーブ反応器内を窒素ガスにて置換し表1に示した圧力に加圧した後、表1に示した重合温度に加温してキシレンを還流させた状態に保持した。
【0036】
しかる後、上記反応器内に表1に示した所定量のスチレン及びアクリル酸n−ブチルからなる溶液中に表1に示した所定量のラジカル重合開始剤を均一に溶解させた混合溶液を2時間かけて滴下した。上記混合溶液の滴下終了後、キシレンを還流させた状態を保持しつつ更に30分間反応させた。得られた低重量平均分子量のビニル系重合体の重量平均分子量を下記の方法で測定し、その結果を表1に示した。
【0037】
一方、スチレン80重量部とアクリル酸n−ブチル20重量部とを懸濁重合により重合させて重量平均分子量600,000の高重量平均分子量のビニル系重合体を得た。そして、この高重量平均分子量のビニル系重合体30重量部をキシレン60重量部に溶解させ、この溶液を上記反応器内に2時間かけて均一に混合した。
【0038】
次に、上記反応器内の温度を180℃に保持しつつ該反応器内の圧力を徐々に大気圧まで低下させてキシレンを気化させ除去した後、更に、1330Pa以下に減圧して残留キシレンを完全に気化させて除去し、トナー用樹脂を得た。
【0039】
得られたトナー用樹脂における低重量平均分子量のビニル系重合体の重量平均分子量、微量不純物量、ガラス転移温度及びフロー軟化点を下記に示した方法で測定し、その結果を表1に示した。
【0040】
(重量平均分子量)
高重量平均分子量のビニル系重合体を添加する前の低重量平均分子量のビニル系重合体をテトラヒドロフランに該ビニル系重合体濃度が0.2重量%となるように調整しつつ溶解させた後、0.45μmのフィルターで濾過してゲルパーミネーションクロマトグラフィーの測定試料を作製した。
【0041】
ゲルパーミネーションクロマトグラフィーの装置は日本ミリポアリミテッド社製の「HTR−C」を、カラムとしては昭和電工社製の「KF−800P」1本、「KF−806M」2本、「KF−802.5」1本を直列につないで使用した。又、キャリヤー溶媒としてはテトラヒドロフランを用い、測定温度は40℃、校正試料として標準ポリスチレンを使用した。
【0042】
(微量不純物量の測定)
ラジカル重合開始剤の分解副反応にともなう不純物として、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドについては、1,1,3,3−テトラメチルブチルアルコール、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルについてはテトラメチルサクシノニトリル、クメンハイドロパーオキサイドについては2−フェニル−2−プロパノールの定量を行った。
【0043】
即ち、柳本製作所株式会社製のガスクロマトグラフ「G−2800」を用い、充填剤が充填された1mのカラムを温度100℃に15分間保持した後、10℃/分の割合で200℃まで昇温し、200℃に保持した状態で測定した。使用したカラムの充填剤としてはポリエチレングリコール20M、20%(柳本製作所株式会社製)を用い、サンプル調製は高重量平均分子量のビニル系重合体を添加する前の低重量平均分子量のビニル系重合体を脱溶剤化した上でN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒として10重量%の濃度に調整し、このサンプル6.0μlをシリンジで注入した。定量に当たっては、検量線測定用サンプルを3点測定し最小二乗法にて検量線を作成し定量した。
【0044】
(フロー軟化点Tf)
高化式フローテスター(島津製作所製 商品名「CFT−500D」)を用いて、荷重:20Kg、ダイ:1mmφ×1mm、昇温:3℃/分の条件にて測定した。Tfの評価は、図1に示された解析用チャートのh/2に相当するフロー曲線上の点Tの温度を読みとって求めた。
【0045】
次に、上記の如くして得られたトナー用樹脂を用いて下記の要領でトナーを作製し、トナーの保存性を下記の方法で測定した。
【0046】
(トナーの作成)
上記で得られたトナー用樹脂100重量部にカーボンブラック(三菱化学工業社製 商品名「カーボンブラックMA−100」)6.5重量部、ワックス(三洋化成工業社製 商品名「ビスコール660P」)4重量部及び電荷制御剤(保土谷化学工業社製 商品名「スピロンブラックTRH」)1.5重量部を添加混合して更に150℃で5分間溶融混練した後、冷却、粗粉砕し、続いて、ジェットミルで微粉砕して粒子径約10μmのトナー粒子とし、このトナー粒子に疎水性シリカ(日本アエロジル社製 商品名「アエロジルR972」)0.3重量%を添加混合してトナーを作成した。
【0047】
(保存性)
上記の如くして得られたトナー20gを内容積150mlのボトルに充填、密栓して50℃の恒温槽中に48時間放置した後、トナーのケーキング状態(固まりの発生状態)目視観察し、下記基準により保存性を判定した。
◎ 固まりの発生は全く認められなかった
○ 固まりの発生が少し認められたが、揺すると容易に崩れた。
△ 固まりの発生がかなり認められた
× 固まりの発生が大量に認められた
【0048】
【表1】
【0049】
上記評価結果から明らかなように、全てのサンプルの低分子量重合体の重量平均分子量が約5,000で同等のものであるにもかかわらず、本発明の製造方法によって得られたトナー用樹脂はそのガラス転移温度Tg及びフロー軟化点Tfが高くトナーの保存性が良好である。これは、本発明の製造方法によって得られる低分子量重合体中に含まれるオリゴマー成分が少ないためであると考えられる。又、本発明の製造方法では使用するラジカル重合開始剤の量が少ないために、得られるトナー用樹脂中に含まれる不純物が少なく、トナー化時の画像濃度低下等の画像特性に対する悪影響が生じにくいと考えられる。更に、高価なラジカル重合開始剤を多量に使用する必要がないので生産コストの面でも非常に有利である。
【0050】
【発明の効果】
本発明のトナー用樹脂の製造方法によれば、不純物の少ない低重量平均分子量のビニル系重合体からなるトナー用樹脂を得ることができ、このトナー用樹脂を用いて得られたトナーは優れた画像特性を有する。
Claims (2)
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