JP4293748B2 - 有機リン酸エステルの精製方法 - Google Patents

有機リン酸エステルの精製方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4293748B2
JP4293748B2 JP2001517536A JP2001517536A JP4293748B2 JP 4293748 B2 JP4293748 B2 JP 4293748B2 JP 2001517536 A JP2001517536 A JP 2001517536A JP 2001517536 A JP2001517536 A JP 2001517536A JP 4293748 B2 JP4293748 B2 JP 4293748B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
organic phosphate
aqueous solution
purification method
phosphate ester
crude
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2001517536A
Other languages
English (en)
Inventor
清春 平尾
将吾 小田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daihachi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Daihachi Chemical Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daihachi Chemical Industry Co Ltd filed Critical Daihachi Chemical Industry Co Ltd
Application granted granted Critical
Publication of JP4293748B2 publication Critical patent/JP4293748B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07FACYCLIC, CARBOCYCLIC OR HETEROCYCLIC COMPOUNDS CONTAINING ELEMENTS OTHER THAN CARBON, HYDROGEN, HALOGEN, OXYGEN, NITROGEN, SULFUR, SELENIUM OR TELLURIUM
    • C07F9/00Compounds containing elements of Groups 5 or 15 of the Periodic Table
    • C07F9/02Phosphorus compounds
    • C07F9/025Purification; Separation; Stabilisation; Desodorisation of organo-phosphorus compounds
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07FACYCLIC, CARBOCYCLIC OR HETEROCYCLIC COMPOUNDS CONTAINING ELEMENTS OTHER THAN CARBON, HYDROGEN, HALOGEN, OXYGEN, NITROGEN, SULFUR, SELENIUM OR TELLURIUM
    • C07F9/00Compounds containing elements of Groups 5 or 15 of the Periodic Table
    • C07F9/02Phosphorus compounds
    • C07F9/06Phosphorus compounds without P—C bonds
    • C07F9/08Esters of oxyacids of phosphorus
    • C07F9/09Esters of phosphoric acids
    • C07F9/12Esters of phosphoric acids with hydroxyaryl compounds

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Fireproofing Substances (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
技術分野
本発明は、合成樹脂の可塑剤または難燃剤として有用な有機リン酸エステルの精製方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、酸価が低く、かつ耐熱性、貯蔵安定性および耐加水分解性に優れた有機リン酸エステルを安定的に得るための精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
背景の技術
有機リン酸エステルは、オキシ塩化リンとアルコール類またはフェノール類とを脱塩化水素反応させる方法などにより合成される。しかし、この合成方法ではエステル化を完結させることが困難であるために、合成された有機リン酸エステルは、通常、原料由来のリン酸や塩化物などに起因していくらかの酸価を示す。
【0003】
酸価を発現させる物質は有機リン酸エステルの耐熱性、耐加水分解性、貯蔵安定性などの物性に悪影響を及ぼすので、酸価を発現させる物質を除去して有機リン酸エステルの酸価を低下させるために、粗製の有機リン酸エステルを精製する。精製処理としては、塩基性物質を用いた中和、例えば、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物を用いた湿式中和、炭酸カルシウムや水酸化マグネシウムのようなアルカリ土類金属化合物を用いた乾式中和と水洗とからなる精製や蒸留精製などが挙げられる。
【0004】
しかしながら、アルカリ金属水酸化物を用いて高粘度の有機リン酸エステルを湿式中和する場合には、水層と油層の分離性が悪く、その処理に時間を要するだけでなく、分離後の油層に比較的多量(例えば、数十〜数百ppm)のアルカリ金属が残存するという問題がある。アルカリ金属は有機リン酸エステルの耐熱性および耐加水分解性に悪影響を及ぼすので、アルカリ金属の残存は好ましくない。
【0005】
そこで、このような高粘度の有機リン酸エステルを有機溶剤で希釈して粘度を低下させたり、塩析処理を行うことによって、水層と油層の分離性を向上させて、有機リン酸エステル中のアルカリ金属の残存量を低減させる方法が提案されている。しかし、この方法でも完全にアルカリ金属を除去できず、残存するアルカリ金属を除去するために多数回の水洗が必要となる。このようなアルカリ金属の残存の問題は、乾式中和においても同様に生ずる。
また、一部の有機リン酸エステルでは、アルカリ金属水酸化物を用いた湿式中和の際に、粗製の有機リン酸エステルを含む混合物全体が乳化し、水層と油層の分離不良が起こることもある。
【0006】
有機リン酸エステルの蒸留精製では、低分子量のものは前記のようなアルカリ金属の残存の問題なしに精製処理できるが、高分子量のものは精製処理自体が困難になるという問題がある。
【0007】
また、アルカリ金属以外にも、有機リン酸エステルの耐熱性、耐加水分解性、貯蔵安定性などの物性に悪影響を及ぼす不純物がある。このような不純物としては、エステル化が完結していない未反応の化合物、リン酸またはアルコール類と反応触媒とが結合した化合物、原料由来の他の微量不純物などが挙げられる。
これらの不純物を除去するには、上記の中和や蒸留などの精製処理のみでは不充分であり、分留効率の高い精留装置が必要となる。しかし、このような装置は高価であり、製品の歩留りが低下するのでコスト高になるという問題がある。
【0008】
これらの問題を解決する方法として、粗製の有機リン酸エステル類をエポキシ化合物で処理した後、水分の存在下で熱処理し、次いで水洗した後、残留する水を除去する有機リン酸エステルの精製方法が開発された(特開平8−67685号公報参照)。
【0009】
この方法は、有機リン酸エステル中の不純物をエポキシ化合物と反応させ、その生成物を水で加水分解させて水溶性の化合物に変換し、生成した水溶性の化合物を水洗により除去して、有機リン酸エステル中の不純物を除去するというものである。この方法では、エポキシ化合物との反応により得られた化合物のみを、選択的に加水分解することが重要となる。この加水分解が不充分であれば、有機リン酸エステルの酸価を下げることができず、逆に加水分解が過剰に進むと、精製されるべき有機リン酸エステル自体も加水分解される。
【0010】
したがって、上記の方法で効率よく有機リン酸エステルを精製するためには、熱処理において有機リン酸エステル自体が加水分解を受けない最適条件を設定する必要がある。このような最適条件は、有機リン酸エステルの種類や量、エポキシ化合物の種類、熱処理条件(例えば、温度、時間、水分量など)、使用する装置などを考慮して設定しなければならず、そのために煩雑な作業を要する。特に工業規模で大量の有機リン酸エステルの精製処理をしようとする場合には、処理条件の設定が困難で、充分に有機リン酸エステルの酸価を低下させることができないという問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
発明の開示
本発明は、上記のような問題を解決し、有機リン酸エステルの種類や量、ならびに処理条件などに影響されることなしに、酸価が低く、かつ耐熱性、耐加水分解性および貯蔵安定性に優れた有機リン酸エステル類を安定的に得るための精製方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、粗製の有機リン酸エステルをエポキシ化合物で処理し、処理した有機リン酸エステルをアルカリ性水溶液で処理して精製することを特徴とする有機リン酸エステルの精製方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態
本発明の方法で処理される有機リン酸エステルは、通常、樹脂の可塑剤および/または難燃剤として用いられる、当該分野で公知の化合物であるが、その合成に伴う不純物を含む限り、特に限定されない。
このような有機リン酸エステルは、一般式(I):
【0014】
【化2】
Figure 0004293748
【0015】
(式中、nは0〜30の整数を示し、R1、R2、R3およびR4は同一または異なって、nが0のときは脂肪族炭化水素残基または芳香族炭化水素残基、nが1〜30のときは芳香族炭化水素残基をそれぞれ示し、R5は2価の有機基を示す)
で表わされる。
【0016】
一般式(I)においてR1〜R4で表される脂肪族炭化水素残基としては、炭素数8〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、2-エチルヘキシル、n-オクチル、sec-オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどが挙げられる
【0017】
芳香族炭化水素残基としては、炭素数6〜15のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル、クレジル、キシリル、2,6-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、ブチルフェニル、ノニルフェニルなどが挙げられる。
【0018】
5の2価の有機基としては、アルキレン基、アリーレン基などが挙げられる。具体的には、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、エチルエチレンなどのアルキレン基、(o-、m-またはp-)フェニレンのようなアリーレン基、次の基などが挙げられる。
【0019】
【化3】
Figure 0004293748
【0020】
一般式(I)の有機リン酸エステル化合物は、単量体のみならず二量体、三量体などの多量体を含む。本発明の方法で処理される有機リン酸エステルは、これらの単独化合物だけでなく、これらの混合物であってもよい。
これらの有機リン酸エステル(I)は、芳香族炭化水素残基を有さない有機リン酸エステルと芳香族炭化水素残基を有する有機リン酸エステルに大別される。
【0021】
芳香族炭化水素残基を有さない有機リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ−n-プロピル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリ(2-エチルヘキシル)、リン酸トリデシル、リン酸トリオクタデシル、リン酸トリス(トリブロモネオペンチル)、リン酸トリス(トリクロロネオペンチル)などが挙げられる。
【0022】
芳香族炭化水素残基を有する有機リン酸エステルとしては、リン酸トリフェニル、リン酸[トリ(o-、m-またはp-)クロロフェニル]、リン酸[トリ(o-、m-またはp-)ブロモフェニル]、リン酸[トリ(o-、m-またはp-)メチルフェニル]、リン酸[トリ(o-、m-またはp-)エチルフェニル]、リン酸[トリ(o-、m-またはp-)n-プロピルフェニル]、リン酸[トリ(o-、m-またはp-)イソプロピルフェニル]、リン酸[トリ(o-、m-またはp-)n-ブチルフェニル]、リン酸[トリ(o-、m-またはp-)sec-ブチルフェニル]、リン酸[トリ(o-、m-またはp-)tert-ブチルフェニル]、リン酸[トリ(o-、m-またはp-)オクチルフェニル]、リン酸[トリ(o-、m-またはp-)ノニルフェニル]、
【0023】
リン酸トリス[(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-または3,5-)ジメチルフェニル]、リン酸トリス[(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-または3,5-)ジエチルフェニル]、リン酸トリス[(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-または3,5-)ジ−n-プロピルフェニル]、リン酸トリス[(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-または3,5-)ジイソプロピルフェニル]、リン酸トリス[(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-または3,5-)ジ−n-ブチルフェニル]、リン酸トリス[(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-または3,5-)ジ−sec-ブチルフェニル]、リン酸トリス[(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-または3,5-)ジ-tert-ブチルフェニル]、
【0024】
リン酸トリス[(2,3,6-、2,3,4-、2,4,6-または3,4,5-)トリメチルフェニル]、リン酸トリス[(2,3,6-、2,3,4-、2,4,6-または3,4,5-)トリエチルフェニル]、リン酸トリス[(2,3,6-、2,3,4-、2,4,6-または3,4,5-)トリロピルフェニル]、リン酸クレジルジフェニルなどの有機リン酸エステルの単量体、ならびに
【0025】
それらの縮合物であるアルキレンビス[リン酸ジフェニル]、アルキレンビス[リン酸ジ(o-、m-またはp-)メチルフェニル]、レゾルシンビス[リン酸ジフェニル]、レゾルシンビス[リン酸ジ(o-、m-またはp-)メチルフェニル]、レゾルシンビス[リン酸ジ(o-、m-またはp-)エチルフェニル]、レゾルシンビス[リン酸ビス(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-または3,5-)ジメチルフェニル]、ヒドロキノンビス[リン酸ジフェニル]、ヒドロキノンビス[リン酸ジ(o-、m-またはp-)メチルフェニル]、ヒドロキノンビス[リン酸ジ(o-、m-またはp-)エチルフェニル]、ヒドロキノンビス[リン酸ビス(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-または3,5-)ジメチルフェニル]、ビスフェノールAビス[リン酸ジフェニル]、ビスフェノールAビス[リン酸ジ(o-、m-またはp-)メチルフェニル]、ビスフェノールA[リン酸ジ(o-、m-またはp-)エチルフェニル]、ビスフェノールAビス[リン酸ビス(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-または3,5-)ジメチルフェニル]などが挙げられる。
【0026】
本発明の方法で処理される粗製の有機リン酸エステルは、その合成に伴う不純物、例えば、反応触媒として用いたアルカリ金属化合物やルイス酸化合物、反応触媒に由来するリン酸の1つの結合手に金属(反応触媒中の金属)が付加した化合物、反応触媒中の金属を介してリン酸ジエステルが結合して形成されたダイマー、原料化合物であるリン酸と反応触媒とが結合した化合物、アルコール類またはフェノール類と反応触媒とが結合した化合物、エステル化が完結していない未反応の化合物(P−Cl結合を有する化合物)などを含有する。本発明では、これらの化合物を総称して「不純物」という。
【0027】
本発明の精製方法は、これらの不純物を効率的に除去することを目的とするものであり、処理される有機リン酸エステルは、不純物を含むという意味で「粗製の有機リン酸エステル」と称する。
【0028】
有機リン酸エステルは、当該分野で公知の方法により得られ、一般に、無触媒あるいはルイス酸触媒(例えば、塩化アルミニウム、塩化マグネシウムまたは四塩化チタンなど)の存在下で、オキシ塩化リンを適当なアルコール類またはフェノール類と反応させることにより得られる。
【0029】
例えば、芳香族ビスホスフェートは、ルイス酸触媒の存在下でオキシ塩化リンを芳香族モノヒドロキシ化合物(1価のフェノール)と反応させ、得られたジアリールホスホロハリデートを、前記の触媒の存在下で芳香族ジヒドロキシ化合物(2価のフェノール)と反応させることにより得られる(例えば、特開平5−1079号公報参照)。
【0030】
また、芳香族ビスホスフェートは、オキシ塩化リンを芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させ、次いで未反応のオキシ塩化リンを除去した後、さらに芳香族モノヒドロキシ化合物と反応させることによっても得られる(特開昭63−227632号公報参照)。
また、芳香族ビスホスフェートは、オキシ塩化リンを、芳香族モノヒドロキシ化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物との混合物と反応させることによっても得られる。
【0031】
上記の有機リン酸エステルの製造において用いられるフェノール類としては、フェノール、(o-、m-またはp-)メチルフェノール、(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-または3,5-)ジメチルフェノールなどの1価のフェノール類、レゾルシン、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ナフトールなどの2価のフェノール類が挙げられる。
【0032】
有機リン酸エステルの製造において、反応触媒の使用量、リン酸とアルコール類またはフェノール類との使用割合、オキシ塩化リンとアルコール類またはフェノール類との使用割合、反応温度、反応時間などの反応条件は、適宜設定される。
【0033】
このようにして製造される有機リン酸エステルは、通常、不純物を多く含有しているが、本発明の精製方法によれば、このような粗製の有機リン酸エステルから不純物を効率的に除去することができる。
【0034】
本発明の精製方法は、一般式(I)の有機リン酸エステルの何れにも適用できるが、次の一般式(II)で表される有機リン酸エステルは、従来の精製方法では酸価を低下させることが特に困難な化合物であり、本発明の好適な実施態様である。
【0035】
【化4】
Figure 0004293748
【0036】
(式中、Q1、Q2、Q3およびQ4は同一または異なって炭素数1〜6のアルキル基を示し、R6、R7、R8およびR9はメチル基を示し、m1、m2、m3およびm4は同一または異なって1〜3の整数を示し、n1およびn2は同一または異なって0〜2の整数を示し、xは0〜5の整数を示す)
【0037】
一般式(II)においてQ1〜Q4で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルのような直鎖状のアルキル基、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、tert-ペンチル、neo-ペンチル、メチルペンチルなどの分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0038】
一般式(II)の有機リン酸エステルの中でも、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)、ビスフェノールAビス[リン酸ジ(o-、m-またはp-)メチルフェニル]、ビスフェノールAビス[リン酸ジ(o-、m-またはp-)エチルフェニル]およびビスフェノールAビス[リン酸ビス(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-または3,5-)ジメチルフェニル]が特に好ましい適用対象である。
【0039】
処理される粗製の有機リン酸エステルには固体と液体があり、本発明の精製方法はいずれの形態にも適用できるが、取り扱いの点では液体の方が好ましい。
【0040】
有機リン酸エステルが固体の場合、あるいは液体であっても高粘度である場合には、予めその固体または液体を溶剤に溶解させたものに本発明の方法を適用するのがよい。
その際に用いられる溶剤は、有機リン酸エステルを溶解させることができ、かつ後記のように推測されるエポキシ化合物の作用を阻害しないものであれば特に限定されない。具体的には、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼンなどの芳香族系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族系溶剤が挙げられる。有機リン酸エステルの合成において、上記のような溶剤を用いた場合には、その溶剤と有機リン酸エステルとを分離することなしに本発明の方法を適用することができ、溶剤を分離する場合であっても、その溶剤が有機リン酸エステル中に残存しても本発明の精製処理に支障はない。
【0041】
本発明の精製方法では、まず、粗製の有機リン酸エステルをエポキシ化合物で処理する(以下、「エポキシ処理」と称する)。このエポキシ処理により、粗製の有機リン酸エステル中に含まれる不純物中の酸成分がエポキシ基でマスキングされる。
【0042】
エポキシ化合物は、その骨格中に1個以上のエポキシ基を有する脂肪族化合物、芳香族化合物、脂環式化合物または複素環式化合物のいずれであってもよい。
【0043】
脂肪族エポキシ化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、3,4-エポキシブタノール、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、エポキシ当量が200または400のもの)、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
脂環式エポキシ化合物としては、1-メチル−1,4-エポキシシクロヘプタン、2,3-エポキシシクロペンタノン、3,4-エポキシシクロオクテン、2,3-エポキシノルボルナン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)−1,3-ジオキソラン、4,5-エポキシ−1-p-ベンゼン、1,2-エポキシ−4-p-ベンゼン、1-(グリシジルオキシメチル)−3,4-エポキシシクロヘキサン、2,3-エポキシ−3,5,5-トリメチルシクロヘキサノン、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルなどが挙げられる。
【0045】
芳香族、複素環およびその他のエポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、o-フタル酸ジグリシジルエテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエテル、グリシジルフタルイミド、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテルおよびビスフェノールFジグリシジルエーテル、ならびにこれらの付加反応物などが挙げられる。
【0046】
上記のエポキシ化合物の中でも、安全性が高くかつ容易に入手できる点から、液状の脂肪族エポキシ化合物が好ましく、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドが特に好ましい。
【0047】
エポキシ処理の反応条件は、特に限定されず、有機リン酸エステルやエポキシ化合物の物性や反応性などに応じて適宜選定される。但し、エポキシ基は水分と反応するので、粗製の有機リン酸エステルを予め脱水しておくのが好ましい。
例えば、気体状のエチレンオキシドを用いる場合には、粗製の有機リン酸エステルに挿入管を通してエチレンオキシドを吹き込みながら処理すればよい。
また、液体状のプロピレンオキシドを用いる場合には、粗製の有機リン酸エステルにプロピレンオキシドを滴下しながら処理するか、粗製の有機リン酸エステルにプロピレンオキシドを添加した後、処理すればよい。
【0048】
また、一般式(II)の有機リン酸エステルをプロピレンオキシドまたはブチレンオキシドで処理する場合には、沸点や反応性を考慮して、処理温度は40〜160℃程度が好ましく、80〜140℃程度がより好ましい。
処理温度が40℃未満の場合には、処理時間が長くなるので好ましくない。また、処理温度が160℃を超える場合には、有機リン酸エステルが着色したり、処理中に沸騰が激しく起こることがあるので好ましくない。
【0049】
処理時間は、通常、0.5〜2時間程度で充分である。例えば、一般式(II)の有機リン酸エステルをプロピレンオキシドで処理する場合には0.5時間程度、同じくブチレンオキシドで処理する場合には1時間程度である。
【0050】
エポキシ化合物の使用量は、理論的には有機リン酸エステルの酸価対応量で充分あるが、エポキシ化合物の反応性や、低沸点のエポキシ化合物を用いる場合の揮発による損失を考慮して、有機リン酸エステルの酸価対応量よりやや過剰のエポキシ化合物を用いるのが好ましい。
粗製の有機リン酸エステルとエポキシ化合物との割合は、一般に粗製の有機リン酸エステルの酸価を基準にして、1:1〜1:20(モル比)程度が好ましく、1:2〜1:5(モル比)が特に好ましい。
【0051】
次いで、エポキシ処理した有機リン酸エステルを、アルカリ性水溶液で処理する(以下、「アルカリ処理」と称す)が、このアルカリ処理の前に、エポキシ処理した有機リン酸エステルを水または酸性水溶液(好ましくは水)で処理する(以下、「中間処理」と称す)のが好ましい。ここで、酸性水溶液としては、濃度0.01〜1重量%程度の塩化水素、リン酸などの水溶液が挙げられる。
【0052】
この中間処理により、エポキシ化合物でマスキングされた不純物中の酸成分が加水分解されて、アルカリ処理による不純物の除去効率を高めることができる。
水または酸性水溶液の使用量は、粗製の有機リン酸エステルに対して0.1〜5重量%程度、好ましくは0.2〜2重量%である。処理回数は、通常1回で充分であるが、必要に応じて処理を繰り返してもよい。
具体的には、例えば、エポキシ処理した有機リン酸エステルに、水または酸性水溶液を添加して5分間〜3時間程度攪拌し、必要に応じて、静置して水層と油層とを分離し、水層を除去する。
【0053】
次いで、エポキシ処理した有機リン酸エステル、またはさらに中間処理した有機リン酸エステルに、アルカリ性水溶液を加えて処理する。このアルカリ処理により、エポキシ処理においてエポキシ基でマスキングされた不純物中の酸成分が、水溶性の化合物に変換される。
【0054】
アルカリ性水溶液としては、有機リン酸エステルの精製を阻害しないものであれば特に限定されない。この発明において、アルカリ性とは、pH8〜13程度の範囲を意味する。アルカリ性水溶液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液が挙げられ、中でもアルカリ金属炭酸塩の水溶液が好ましく、炭酸ナトリウム水溶液が特に好ましい。
【0055】
アルカリ性水溶液のアルカリ化合物の使用量は、エポキシ処理前の粗製の有機リン酸エステルの酸価に対して、0.1〜50モル当量、好ましくは1〜5モル当量である。
アルカリ性水溶液のアルカリ化合物の使用量が粗製の有機リン酸エステルの酸価に対して0.1モル当量未満の場合には、有機リン酸エステルを充分に精製することができないので好ましくない。また、アルカリ性水溶液のアルカリ化合物の使用量が50モル当量を超える場合には、アルカリ分の除去が困難になるばかりでなく、乳化状態を来たし分離に影響を及ぼすので好ましくない。
【0056】
アルカリ性水溶液の濃度は、0.01〜10重量%程度、好ましくは0.1〜1重量%程度であり、その使用量は、上記のアルカリ化合物の使用量から算出すれば、粗製の有機リン酸エステルに対して1〜100重量%程度、好ましくは10〜50重量%程度である。
【0057】
処理温度は、60〜120℃、好ましくは70〜95℃の範囲である。処理温度が60〜120℃の範囲であれば、有機リン酸エステルが加水分解を受けず、処理系内に導入したアルカリ成分により効率的に不純物を加水分解させることができる。
【0058】
処理時間は、処理温度に応じて適宜選定される。処理温度が60〜120℃の範囲であれば、0.5〜2時間程度で充分であるが、処理温度が高いほど短時間で処理を完了できる。
【0059】
次いで、アルカリ処理した有機リン酸エステルを含む混合溶液を静置して、アルカリ処理で水溶性の化合物に変換された不純物を水層として除去する。また、必要に応じてさらに水で洗浄することによって、アルカリ残分をさらに低減させることができる。この洗浄処理の具体的な操作は、前記のアルカリ処理に先立って行われる水での処理と同様である。
このようにして、最終的に耐熱性、耐加水分解性、貯蔵安定性などに悪影響を及ぼす水溶性の不純物が除去される。
【0060】
次いで、有機リン酸エステル中に残留する水を除去する。これにより、精製された有機リン酸エステルが得られる。
水を除去する方法としては、当該分野で一般的に用いられている方法を適用することができるが、減圧下で蒸留するのが好ましい。粗製の有機リン酸エステルが固体の場合に、それを溶解させるために用いた溶媒および粗製の有機リン酸エステルの合成時に用いられて残留する有機溶媒は、この減圧下の蒸留により水と共に除去される場合もあるが、該溶媒を除去するためには、有機リン酸エステルを脱水乾燥後、水蒸気蒸留を行うのが好ましい。
【0061】
また、上記の溶媒を用いない場合であっても、水を除去した後、さらに水蒸気蒸留を行うのが好ましい。これにより、水に溶解し難い低沸点の不純物(例えば、合成原料のフェノールなど)を除去することができる。
【0062】
本発明の精製方法では、アルカリ処理によって、有機性の熱的に不安定な不純物を加水分解により完全に水溶性の物質に変化させて、それらを除去することができるので、優れた精製効果が得られる。
本発明の精製方法では、比較的低温で処理が行われるので、処理時の副反応を抑制でき、有機リン酸エステルの酸価の低減が妨げられない。
【0063】
また、工業的には加熱に必要な熱エネルギーおよび昇温や冷却に必要な時間を削減できるので、経済的かつ簡便に酸価が低い有機リン酸エステルを得ることができる。
さらに、本発明の精製方法では、処理対象の有機リン酸エステルの量によっても有機リン酸エステルの酸価の低減が妨げられないので、工業規模での実施において特に有利である。
【0064】
ここで「工業規模」とは、処理対象の有機リン酸エステルの量が通常の工業生産における規模であることを意味する。具体的には、有機リン酸エステルの量は500リットル以上、好ましくは1000リットル以上、より好ましくは3000リットル以上である。一方、上限は特に制限されないが、反応装置の制約などから、具体的には30000リットル以下、好ましくは20000リットル以下、より好ましくは10000リットル以下である。
【0065】
本発明の精製方法で得られる有機リン酸エステルは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、耐衝撃性スチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン(SAN)系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂、およびエポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、ノボラック系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、メラミン系樹脂、尿素樹脂などの熱硬化性樹脂の難燃剤として用いることができる。
【0066】
本発明の方法で得られる有機リン酸エステルは酸価が低いために、樹脂の成形加工の際の高い処理温度によっても分解しないので、耐熱性および耐着色性に優れた高品質の樹脂成形品が得られる。
上記の樹脂成形品は公知の方法により得ることができる。例えば、難燃剤、樹脂および必要に応じて他の樹脂用添加剤を、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ロールなど、汎用の装置を単独または組み合わせて混合および溶融混練して樹脂組成物を得、得られた樹脂組成物を公知の成形機により板状、シート状およびフィルム状に加工することにより得られる。
【0067】
【実施例】
実施例
本発明を以下の合成例および実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0068】
合成例
オキシ塩化リン10907kgとビスフェノールA3000kgとを、塩化マグネシウム30kgを触媒として常圧下で反応させ、過剰のオキシ塩化リンを減圧除去後、さらにフェノール4932kgを加えて、理論量の塩化水素が発生するまで減圧下で反応を続けた。このようにして得られた反応混合物9000kgにトルエン2000kgを加えた後、触媒を除去するために7.7%リン酸440kgを加えて85℃で1時間攪拌し、続けて約70℃の水2000kgを追加して、静置して油層を分離した。この油層を減圧下で脱水し、次式で表されるビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)を主成分とする粗反応生成物11000kgを得た。この粗反応生成物は、酸価が1.2で、水分150ppmの無色透明の粘稠な液体であった。
【0069】
【化5】
Figure 0004293748
【0070】
実施例
合成例で得られた粗反応生成物11.0tにブチレンオキシド85kg(粗反応生成物とブチレンオキシドとのモル比は、粗反応生成物の酸価を基準にして1:5である)を添加し、120℃で2時間反応させた(エポキシ処理)。
次いで、この反応混合物を85℃に冷却し、水73kg(粗反応生成物に対して0.66重量%)を添加して2時間攪拌した(中間処理)。
続いて、0.8重量%の炭酸ナトリウム水溶液3000kg(粗反応生成物に対して27.3重量%)を加えて、85℃で15分間攪拌し(アルカリ処理)、静置して油層を分離した。
【0071】
分離した油層を、約70℃の水3100kgで2回洗浄し、続いて140℃/50mmHgで7時間水蒸気蒸留することにより、残存フェノールなどの不純物を除去して、精製品 約8.8t(収率:約97.5%)を得た。
得られた精製品の酸価は0.014で、そのNa含有量は0.7ppmであった。また、ハーゼン色相法に基づく色相は25で、ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)測定から求めた純度は85.4%であった。
得られた精製品150gを250℃で3時間の条件で耐熱試験を行った。耐熱試験後の酸価は0.25、ガードナー色相法に基づく色相は1、純度は84.9%であった。
【0072】
比較例1
合成例と同様にして得られた粗反応生成物11.0tにブチレンオキシド85kg(粗反応生成物とブチレンオキシドとのモル比は、粗反応生成物の酸価を基準にして1:5である)を添加し、120℃で2時間反応させた(エポキシ処理)。
次いで、この反応混合物を85℃に冷却し、水73kg(粗反応生成物に対して0.66重量%)を添加して2時間攪拌した(中間処理)。
続いて、約85℃の水310kgを加えて1時間攪拌し(熱処理)、その後、約85℃の水2000kgを追加して油層を分離した。
分離した油層を、約85℃の水3100kgで2回洗浄し、続いて140℃/50mmHgで7時間水蒸気蒸留することにより、残存フェノールなどの不純物を除去して、精製品 約8.8t(収率:約97.5%)を得た。
得られた精製品の酸価は0.124で、そのNa含有量は0.6ppmであった。
【0073】
実施例および比較例1の結果から、本発明の方法で精製された有機リン酸エステルは、工業規模での処理であるにもかかわらず、従来の方法で精製された有機リン酸エステルに比べて、酸価が低く、かつNa含有量も同等であることがわかる。
酸価が低いという事実は、合成原料であるリン酸や塩化物に由来する不純物が少ないことを意味するので、本発明の方法で精製された有機リン酸エステルは、有機リン酸エステル本来の物性により近く、耐熱性、耐加水分解性および貯蔵安定性に優れている。また、Na含有量が少ないことから、本発明の方法により精製された有機リン酸エステルには着色の問題がない。
【0074】
比較例2(特開平8−67685号公報、実施例1)
合成例と同様にして得られた粗反応生成物11.0tにプロピレンオキシド68kg(粗反応生成物とプロピレンオキシドとのモル比は、粗反応生成物の酸価を基準にして1:5である)を添加し、120℃で2時間反応させた(エポキシ処理)。
次いで、この反応物を85℃に冷却し、85℃の水3100kgで洗浄した(中間処理)。
続いて、140℃で30分間攪拌し(熱処理)、静置して油層を分離した。
【0075】
分離した油層を、約85℃の水3100kgで洗浄し、減圧蒸留により水分を除去し、続いて140℃/50mmHgで4時間水蒸気蒸留することにより、残存フェノールなどの不純物を除去して、精製品 約8.8t(収率:約97.5%)を得た。
得られた精製品の酸価は0.09で、そのNa含有量は0.6ppmであった。また、ハーゼン色相法に基づく色相は30で、GPC測定から求めた純度は85.35%であった。
得られた精製品150gを250℃で3時間の条件で耐熱試験を行った。耐熱試験後の酸価は0.69、ガードナー色相法に基づく色相は3、純度は82.9%であった。
実施例および比較例2の結果を表1にまとめる。
【0076】
【表1】
Figure 0004293748
【0077】
表1の結果から、本発明の方法で精製された有機リン酸エステルは、工業規模での処理であるにもかかわらず、従来の方法で精製された有機リン酸エステルに比べて、耐熱安定性に優れていることがわかる。
【0078】
【発明の効果】
本発明の有機リン酸エステルの精製方法は、従来の方法における煩雑な条件設定のための操作を必要とせず、アルカリ性水溶液で処理するという簡単な操作で、有機リン酸エステルの耐熱性、耐加水分解性、貯蔵安定性などの物性に悪影響を与える不純物を除去することができる。しかも、有機リン酸エステルの着色原因となるアルカリ金属化合物が用いられているにもかかわらず、処理後にアルカリ金属の残存が殆どなく、着色の問題も解消される。
【0079】
また、本発明の精製方法は、処理対象の有機リン酸エステルが工業規模の量であっても充分に処理することができる。
本発明の方法で精製された有機リン酸エステルは、酸価が低く、かつ耐熱性、耐加水分解性および貯蔵安定性に優れているので、可塑剤や難燃剤として樹脂に添加しても、樹脂の成形温度において安定であり、組成変化を生じることがない。

Claims (13)

  1. 粗製の有機リン酸エステルをエポキシ化合物で処理し、さらにアルカリ性水溶液で処理して精製することを特徴とする有機リン酸エステルの精製方法。
  2. エポキシ化合物が、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドである請求項1に記載の精製方法。
  3. 粗製の有機リン酸エステルとエポキシ化合物との割合が、粗製の有機リン酸エステルの酸価を基準にして1:1〜1:20(モル比)である請求項1または2に記載の精製方法。
  4. エポキシ化合物による処理が、40〜160℃で行われる請求項1〜3のいずれか1つに記載の精製方法。
  5. ルカリ性水溶液で処理する前に水または酸性水溶液で処理する請求項1〜4のいずれか1つに記載の精製方法。
  6. アルカリ性水溶液が、アルカリ金属炭酸塩の水溶液である請求項1〜5のいずれか1つに記載の精製方法。
  7. アルカリ金属炭酸塩の水溶液が、炭酸ナトリウム水溶液である請求項6に記載の精製方法。
  8. アルカリ性水溶液のアルカリ化合物の使用量が、エポキシ化合物で処理する前の粗製の有機リン酸エステルの酸価に対して0.1〜50モル当量である請求項1〜7のいずれか1つに記載の精製方法。
  9. アルカリ性水溶液の濃度が、0.01〜10重量%である請求項1〜8のいずれか1つに記載の精製方法。
  10. アルカリ性水溶液による処理が、60〜120℃で行われる請求項1〜9のいずれか1つに記載の精製方法。
  11. 有機リン酸エステルが、一般式(II):
    Figure 0004293748
    (式中、Q1、Q2、Q3およびQ4は同一または異なって炭素数1〜6のアルキル基を示し、R6、R7、R8およびR9はメチル基を示し、m1、m2、m3およびm4は同一または異なって1〜3の整数を示し、n1およびn2は同一または異なって0〜2の整数を示し、xは0〜5の整数を示す)
    で表される化合物または次式:
    Figure 0004293748
    で表されるビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)である請求項1〜10のいずれか1つに記載の精製方法。
  12. 粗製の有機リン酸エステルが、エポキシ化合物で処理する前に予めを脱水処理されたものである請求項1〜11のいずれか1つに記載の精製方法。
  13. アルカリ性水溶液で処理した有機リン酸エステルに対して、さらに水洗および水蒸気蒸留を行う請求項1〜12のいずれか1つに記載の精製方法。
JP2001517536A 1999-08-18 2000-06-19 有機リン酸エステルの精製方法 Expired - Lifetime JP4293748B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23170499 1999-08-18
PCT/JP2000/004003 WO2001012638A1 (fr) 1999-08-18 2000-06-19 Procédé de purification d'ester phosphorique organique

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP4293748B2 true JP4293748B2 (ja) 2009-07-08

Family

ID=16927706

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001517536A Expired - Lifetime JP4293748B2 (ja) 1999-08-18 2000-06-19 有機リン酸エステルの精製方法

Country Status (6)

Country Link
US (1) US6706907B1 (ja)
EP (1) EP1205483B1 (ja)
JP (1) JP4293748B2 (ja)
DE (1) DE60006540T2 (ja)
TW (1) TW589319B (ja)
WO (1) WO2001012638A1 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN101307072A (zh) * 2001-02-08 2008-11-19 旭瑞达有限公司 提纯磷酸酯的方法
TW200813197A (en) * 2006-07-07 2008-03-16 Albemarle Corp Phosphorous-based flame retardant recovery method
JP5732326B2 (ja) * 2011-06-20 2015-06-10 大八化学工業株式会社 縮合燐酸エステルの精製方法
CN106699805B (zh) * 2016-12-15 2019-02-01 衢州普信新材料有限公司 一种双酚a双(二苯基磷酸酯)的制备方法

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4049617A (en) 1976-01-19 1977-09-20 Velsicol Chemical Corporation Reactive flame retardants
JPS63227632A (ja) 1987-03-17 1988-09-21 Daihachi Kagaku Kogyosho:Kk 難燃剤の製造方法
JP2552780B2 (ja) 1991-04-16 1996-11-13 大八化学工業株式会社 芳香族ジホスフェートの製造方法と用途
US5206404A (en) 1992-04-27 1993-04-27 Fmc Corporation Triaryl phosphate ester composition and process for its preparation
US5401788A (en) 1993-03-16 1995-03-28 Daihachi Chemical Industry Co., Ltd. Organic phosphorus compounds and flame-retarded resin compositions containing the same
JP3305165B2 (ja) 1994-06-23 2002-07-22 大八化学工業株式会社 燐酸エステル類の精製方法
US5616768A (en) 1994-06-23 1997-04-01 Daihachi Chemical Industry Co., Ltd. Process for purifying phosphoric esters
BR9808644A (pt) 1997-02-14 2000-05-23 Great Lakes Chemical Corp Processo para a fabricação e uso de bisaril difosfatos
JP3043694B2 (ja) 1997-11-27 2000-05-22 旭化成工業株式会社 燐酸エステル系難燃剤
JP4187353B2 (ja) * 1999-06-09 2008-11-26 株式会社Adeka 低酸価燐酸エステルの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
DE60006540D1 (de) 2003-12-18
EP1205483A4 (en) 2002-11-20
TW589319B (en) 2004-06-01
US6706907B1 (en) 2004-03-16
WO2001012638A1 (fr) 2001-02-22
DE60006540T2 (de) 2004-09-23
EP1205483A1 (en) 2002-05-15
EP1205483B1 (en) 2003-11-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5616768A (en) Process for purifying phosphoric esters
EP1327635B1 (en) Preparation of phenylphosphate esters of 4,4'-biphenol
CA2116802C (en) Process for the manufacture of poly(hydrocarbylene aryl phosphate) compositions
US2488449A (en) Organo-silicon-phosphorus condensation products
JP4293748B2 (ja) 有機リン酸エステルの精製方法
JP5732326B2 (ja) 縮合燐酸エステルの精製方法
JP3305165B2 (ja) 燐酸エステル類の精製方法
WO1998004566A1 (en) Process for the formation of hydrocarbyl bis(dihydrocarbyl phosphate)
KR20020023967A (ko) 축합형 인산 에스테르의 제조 방법
CN100486979C (zh) 提纯磷酸酯的方法
EP0146130A2 (en) Glycidyl compound and process for preparing the same
EP1199310B1 (en) Process for the preparation of condensed phosphoric esters
EP1103557B1 (en) Process for preparing low-acid-value phosphoric esters
US4196155A (en) Process for preparing organic phosphorus compounds
US4981615A (en) Process for forming a stable emulsion from a triaryl phosphate reaction mixture residue
JP4089991B2 (ja) 高品質な芳香族ホスフェートの製造方法
JP2000327688A (ja) ホスフェートの製造方法
JP2742582B2 (ja) 高分子量型難燃剤の製造方法
JP2001302682A (ja) ジアリールホスホロハリデートの製造方法
JPH10245379A (ja) エポキシ化合物の製造方法およびトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートの製造方法
KR20050024364A (ko) 낮은 산도의 포스페이트 에스터

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070612

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070612

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090220

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090317

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090407

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120417

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120417

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150417

Year of fee payment: 6

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250