JP3305165B2 - 燐酸エステル類の精製方法 - Google Patents

燐酸エステル類の精製方法

Info

Publication number
JP3305165B2
JP3305165B2 JP15331595A JP15331595A JP3305165B2 JP 3305165 B2 JP3305165 B2 JP 3305165B2 JP 15331595 A JP15331595 A JP 15331595A JP 15331595 A JP15331595 A JP 15331595A JP 3305165 B2 JP3305165 B2 JP 3305165B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
compound
epoxy compound
water
ether
epoxy
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP15331595A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0867685A (ja
Inventor
茂 川田
和夫 野口
健治 阿児
伸 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daihachi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Daihachi Chemical Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daihachi Chemical Industry Co Ltd filed Critical Daihachi Chemical Industry Co Ltd
Priority to JP15331595A priority Critical patent/JP3305165B2/ja
Publication of JPH0867685A publication Critical patent/JPH0867685A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3305165B2 publication Critical patent/JP3305165B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Fireproofing Substances (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、燐酸エステル類の精製
方法に関する。より詳細には、酸価が低く、耐熱性、貯
蔵安定性、耐加水分解性等の物性に優れた燐酸エステル
類を得るための精製方法に関する。この燐酸エステル類
は、合成樹脂の可塑剤または難燃剤として有用である。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】燐酸エ
ステル類を合成する方法としては、オキシ塩化燐とアル
コール類又はフェノール類とを脱塩酸反応させることに
よって合成する方法等が知られている。しかし、これら
の合成方法では完全なエステル化が行えないために、通
常、合成される燐酸エステルは、原料である燐酸又は塩
化物に起因するいくらかの酸価を示す。
【0003】従って、一般的に、低酸価の燐酸エステル
類を得るために、塩基性物質による中和、例えば水酸化
ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物を用いる湿式
の中和もしくは炭酸カルシウムや水酸化マグネシウムの
ようなアルカリ金属化合物を用いる乾式の中和をした
後、水洗や蒸留を行うことによって燐酸エステル類の精
製が行われている。
【0004】しかしながら、粘度の高い燐酸エステル類
の精製を行う場合には、アルカリ金属水酸化物を用いる
湿式中和では、水層と油層の分離が困難であるために、
工程時間が長くなるほか、分離後の油層に微量(例えば
数ppmから数百ppm)のアルカリ金属類が残存して
しまうという問題がある。燐酸エステル類の精製工程に
おいてアルカリ金属類が残存すると、このアルカリ金属
類が燐酸エステル類の耐熱性及び耐加水分解性に悪影響
を及ぼすために、好ましくない。
【0005】そこで、アルカリ金属類の残存量を減少さ
せるために、燐酸エステル類を有機溶剤で希釈して粘度
を低下させたり、塩析を行うことによって水層と油層の
分離を良くすること等が行われているが、それでも製品
層中に微量のアルカリ金属類が残存するのを防止するこ
とはできない。そのために、通常は多数回水洗を行うこ
とによりアルカリ金属類の除去が行なわれている。この
問題は、乾式中和でも同様である。
【0006】また、一部の燐酸エステル類では、湿式中
和を行うと全体が乳化し、それによって水層と製品層の
分離不良が起こるために、アルカリ金属類による湿式中
和が行えない場合もある。燐酸エステル類は、蒸留によ
って精製することも行われている。しかしながら、蒸留
によって精製する場合には、低分子量の燐酸エステル類
については前記のようなアルカリ金属類の残存問題は解
決されるが、燐酸エステル類の物性(例えば、耐熱性、
貯蔵安定性、耐加水分解性等)を低下させるアルカリ金
属類以外の不純物を除去するためには、分留効果の大き
い精留装置等の蒸留装置が必要となるばかりでなく、燐
酸エステル類の分子量が大きくなるに従い蒸留精製が困
難になるという問題がある。更に、蒸留精製では歩留り
が悪くなるために、得られる燐酸エステル類のコストが
高くなるという問題もある。
【0007】燐酸エステル類の耐熱性や耐加水分解性を
低下させる原因となる不純物としては、前記中和による
精製工程で残存するアルカリ金属類の他、エステル化が
完全に行われていない化合物、燐酸又はアルコールと反
応触媒とが結合した化合物や、その他の微量の不純物等
が挙げられるが、これらは前記したような中和や蒸留等
の精製操作では完全に除去することができず、そのため
に、中和や蒸留等の精製操作では、酸価の低い燐酸エス
テル類を得ることはできるが、耐熱性、耐加水分解性、
貯蔵安定性等に優れた燐酸エステル類を得ることはでき
ない。
【0008】一方、特公平第1−52379号公報に
は、マレイン酸とアルコールとの反応で得られるマレイ
ン酸ジエステルを含有する反応液中の酸成分を、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性物質で中和した
後、高められた温度で熱処理し、次いで、その熱処理に
よって発生する酸分を塩基性物質で再中和した後、蒸留
することによって、マレイン酸ジアルキルエステルを精
製する方法が開示されている。
【0009】この方法の特徴として、該公報には、熱処
理により不純分を酸成分に分解した後、再度中和するこ
とによって、蒸留での精製が可能となることが記載され
ている。しかしながら、この方法に準じて燐酸エステル
類を精製する場合には、前述したように、この方法には
中和工程が含まれているために、蒸留前のエステル中に
塩基性物質が残存し、乳化し易いエステル類には適用で
きず、かつ最終的に蒸留によらなければ不純物の除去が
できない等の問題点が残されている。
【0010】本発明は、上記問題点を鑑みてなされたも
のであり、発明の目的は、アルカリ金属類による中和や
不純物を除去するための蒸留を行わずに、酸価が低く、
かつ耐熱性、耐加水分解性、貯蔵安定性に優れた燐酸エ
ステル類を製造するための燐酸エステル類の精製方法を
提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明によれば、
粗製の燐酸エステル類をエポキシ化合物で処理した後、
水分の存在下で熱処理し、次いで水洗した後、残留する
水を除去することによって精製された燐酸エステル類を
得ることを特徴とする燐酸エステル類の精製方法が提供
される。
【0012】本発明の方法で処理される燐酸エステル類
は、通常、樹脂の可塑剤及び/又は難燃剤として当該分
野で公知のものであるが、その合成法に由来する不純物
を含む限り、それらに特に限定されない。典型的に、燐
酸エステル類は以下の一般式で表わすことができる。
【0013】
【化2】
【0014】〔式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又
は異なって、nが0のとき脂肪族炭化水素基、好ましく
は炭素数8〜18のアルキル基、又はnが0〜30のとき芳
香族炭化水素基、好ましくは炭素数6〜15のアリール基
を示し、R5は任意に2個の水酸基を有する二価の有機
基、好ましくは任意に2個の水酸基を有するアリーレン
基を示し、nは0〜30の整数を示す〕 前記脂肪族炭化水素基の例としては、2−エチルヘキシ
ル、n−オクチル、sec−オクチル、デシル、ドデシ
ル、パルミチル、ステアリル等が挙げられる。前記芳香
族炭化水素基の例としては、フェニル、クレジル、キシ
リル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェ
ニル、ブチルフェニル、ノニルフェニル等が挙げられ
る。前記任意に2個の水酸基を有する二価の有機基の例
としては、フェニレン、P,P'−(イソプロピリデ
ン)ジフェニレン等が挙げられる。本発明における燐酸
エステル類には、該燐酸エステル類のモノマー、ダイマ
ー及びトリマー等が包含される。本発明の方法で精製さ
れる燐酸エステル類は、これらの単独化合物であっても
よく、混合物であってもよい。本発明における粗製の燐
酸エステル類には、該燐酸エステル類の合成方法に由来
する不純物、例えば反応触媒として用いたアルカリ金属
化合物、エステル化が完全に行われていない化合物、燐
酸の一つの結合手に金属(反応触媒中の金属)が付加し
た化合物、反応触媒金属を介して燐酸ジエステルが結合
して形成されたダイマー、及び原料化合物である燐酸又
はアルコールと反応触媒とが結合した化合物等が含まれ
ている。本発明の精製方法は、これらの不純物を効果的
に除去した、燐酸エステル類(モノマー、ダイマー、ト
リマー等)を得るのに有効な精製方法である。以下、単
に不純物と称す場合には、これらの不純物が包含される
ものと理解されるべきである。
【0015】本発明の精製方法に用いられる燐酸エステ
ル類は、当該分野で公知の方法によって得ることができ
る。一般的には、燐酸エステル類は、オキシ塩化燐を、
無触媒あるいはルイス酸触媒(例えば塩化アルミニウ
ム、塩化マグネシウム、四塩化チタン等)のような触媒
の存在下で、適当なアルコール類又はフェノール類と反
応させることによって得ることができる。具体的には、
燐酸トリエステル類は、オキシ塩化燐をルイス酸触媒の
存在下でフェノール類と反応させることによって製造す
ることができる(例えば、G. Jacobsen, Ber. 8 1519
(1875) ; 及び M.Rapp, Ann. 224 156 (1884) 参照)。
芳香族ビスホスフェートは、オキシ塩化燐を、ルイス酸
触媒の存在下で芳香族モノヒドロキシ化合物(一価のフ
ェノール)と反応させ、得られたジアリールホスホロハ
リデートを、同様の触媒の存在下で芳香族ジヒドロキシ
化合物(二価のフェノール)と反応させることによって
得ることができる(例えば、特開平5−1079号公報参
照)。また、芳香族ジホスフェートは、オキシ塩化燐を
ジヒドロキシ化合物と反応させ、次いで未反応のオキシ
塩化燐を除去した後、生成物を芳香族モノヒドロキシ化
合物と反応させることによっても得ることができる(特
開昭63−227632号公報参照)。さらに、芳香族ジホスフ
ェートは、オキシ塩化燐を、モノヒドロキシ化合物とジ
ヒドロキシ化合物との混合物と反応させることによって
も得ることができる。
【0016】燐酸エステル類の製造方法において用いら
れるアルコール類の好ましい例としては、例えば、オク
チルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、カプ
リルアルコール、ノニルアルコール、n−デシルアルコ
ール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、セ
チルアルコール、ステアリルアルコール等の脂肪族アル
コール類、シクロヘキサノール等の脂環式アルコール
類、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール類等が挙
げられる。
【0017】燐酸エステル類の製造方法において用いら
れるフェノール類の好ましい例としては、例えばフェノ
ール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、ハイド
ロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビス
フェノールS、ビフェノール、ナフトール等が挙げられ
る。燐酸エステル類の製造方法において、反応触媒の使
用量、燐酸とアルコール類又はフェノール類との反応割
合、オキシ塩化燐とアルコール類又はフェノール類との
反応割合、反応温度、反応時間等の反応条件は、公知の
範囲内で適宜設定される。
【0018】通常、このようにして製造される燐酸エス
テル類は、上記のような不純物を多く含有し、本発明の
精製方法は、このように不純物を多く含有する粗製の燐
酸エステル類から不純物を効果的に除去した、燐酸エス
テル類を得るための精製方法である。以下、本発明の精
製方法を詳細に説明する。
【0019】本発明の精製方法に適用される粗製の燐酸
エステル類には、固体のものと液体のものが存在する。
本発明の精製方法は、その何れにも適用することができ
るが、液体のものに適用するのが好ましい。粗製の燐酸
エステル類が固体の場合には、それを溶媒に溶解させて
使用するのが好ましい。粗製の燐酸エステル類を溶解さ
せるのに用いる溶媒としては、該粗製の燐酸エステル類
を溶解させることができ、かつ後述のように推測される
エポキシ化合物の作用を阻害しない溶媒であれば何れで
も用いることができる。具体的には、該溶媒の例とし
て、例えば、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン等
の芳香族系の溶媒、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系の
溶媒、シクロヘキサン等の脂環式の溶媒等が挙げられ
る。これらのなかで、芳香族系の溶媒を用いるのが、粗
製の燐酸エステル類に対する溶解性が良好であるので好
ましい。また、本発明においては、粗製の燐酸エステル
類を溶解させる溶媒として、水酸基を有するアルコール
系の化合物やアミノ基を有する化合物を使用することは
できない。その理由は、熱処理する際に、これらの化合
物は、精製を目的とする燐酸エステル類とエステル交換
反応を起こしてその純度を低下させたり、不純物と反応
して塩を形成するので好ましくなく、また、これらの化
合物は、エポキシ化合物と反応するおそれがあるので好
ましくないからである。
【0020】本発明の精製方法においては、まず、粗製
の燐酸エステル類のエポキシ化合物での処理が行われ
る。本発明の精製方法におけるエポキシ化合物での処理
は、粗製の燐酸エステル類中に含有する不純物中の酸成
分をエポキシ基でマスキングするために行われる。本発
明において用いられるエポキシ化合物とは、分子骨格中
に1個以上のエポキシ基を有する脂肪族化合物(脂肪
族エポキシ化合物)、芳香族化合物(芳香族のエポキシ
化合物)、脂環式化合物(脂環式エポキシ化合物)又は
複素環式化合物(複素環のエポキシ化合物)である。
【0021】具体的には、脂肪族エポキシ化合物の好ま
しい例としては、例えばエチレンオキシド、プロピレン
オキシド、ブチレンオキシド、3,4−エポキシブタノ
ール、ポリエチレングリコール200ジグリシジルエー
テル、ポリエチレングリコール400ジグリシジルエー
テル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタ
ンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリ
シジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジル
エーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グ
リセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプ
ロパンポリグリシジルエーテル、プロピレングリコール
ジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコール
ジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2
−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグ
リシジルエステル、ジブロモネオペンチルグリコールジ
グリシジルエーテル等が挙げられる。
【0022】脂環式エポキシ化合物の好ましい例として
は、例えば1−メチル−1,4−エポキシシクロヘプタ
ン、2,3−エポキシシクロペンタノン、3,4−エポ
キシシクロオクテン、2,3−エポキシノルボルナン、
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,3−ジ
オキソラン、4,5−エポキシ−1−p−メンセン、
1,2−エポキシ−4−p−メンセン、1−(グリシジ
ルオキシメチル)−3,4−エポキシシクロヘキサン、
2,3−エポキシ−3,5,5−トリメチルシクロヘキ
サノン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エー
テル等が挙げられる。
【0023】芳香族、複素環及びその他のエポキシ化合
物の好ましい例としては、例えばフェニルグリシジルエ
ーテル、p−ターシャリーブチルフェニルグリシジルエ
ーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチ
ル)イソシアヌレート、o−フタル酸ジグリシジルエー
テル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、テレフタ
ール酸ジグリシジルエーテル、グリシジルフタルイミ
ド、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ビスフェノ
ールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリ
シジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテ
ル及びこれらの付加反応物等が挙げられる。
【0024】本発明においては、上記エポキシ化合物の
何れでも使用することができるが、作業性及び経済性の
面から、常温で気体又は液体状のエポキシ化合物を使用
するのが好ましく、常温で気体又は液体状のエポキシ化
合物の例としては、例えばエチレンオキシド、プロピレ
ンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。また、
本発明において用いられるエポキシ化合物の分子量は、
大きすぎると反応時間が長くなるために好ましくないの
で、エポキシ化合物の分子量としては、約40〜1000のも
のが好ましく、約40〜500 のものがより好ましい。分子
量の大きいエポキシ化合物を使用する場合には、反応温
度を上げることによって、反応時間を短くすることがで
きる。
【0025】粗製の燐酸エステル類をエポキシ化合物で
処理する方法は、特に限定されず、使用するエポキシ化
合物の物性や反応性等に応じて適宜決定される。例え
ば、粗製の燐酸エステル類を気体状のエチレンオキシド
で処理する場合には、燐酸エステル類に挿入菅を通して
気体状のエチレンオキシドを吹き込みながら処理するこ
とができる。また、粗製の燐酸エステル類を液体状のプ
ロピレンオキシドで処理する場合には、燐酸エステル類
にプロピレンオキシドを滴下させながら処理したり、燐
酸エステル類にプロピレンオキシドを添加した後、加熱
することによって処理することができる。
【0026】粗製の燐酸エステル類をエポキシ化合物で
処理する際の処理温度は、使用するエポキシ化合物の種
類に応じて適宜決定される。例えば、エチレンオキシド
やプロピレンオキシドを使用する場合には、それらのエ
ポキシ化合物の反応性と飛散によるロスとを考慮して、
約50℃〜200 ℃が好ましく、約80℃〜160 ℃がより好ま
しい。その理由は、反応温度が50℃より低いと、エポキ
シ化合物の反応性が十分ではないために反応時間が長く
なる上、反応が十分に行われないために、燐酸エステル
類をエポキシ化合物で処理した後の操作で、不純物を完
全に除去することができず、一方処理温度が200 ℃より
高いと、プロピレンオキシドが高い揮発性を有している
ために、反応前にプロピレンオキシドが揮発して系外に
流出してしまい、エポキシ化合物の使用量を不当に増加
させる必要が生じる他、前記と同様に、エポキシ化合物
の流出によって反応が十分に行われないために、粗製の
燐酸エステル類をエポキシ化合物で処理した後の操作で
不純物を完全に除去することができず、更には揮発した
プロピレンオキシドによる大気汚染を引き起こすことに
なるからである。
【0027】粗製の燐酸エステル類をエポキシ化合物で
処理する時間は、使用するエポキシ化合物の種類、その
分子量及び反応温度に応じて適宜決定される。一般的に
は、処理時間は、約30分〜1時間が好ましく、例えば、
分子量約58のプロピレンオキシドを使用する場合には約
30分、分子量約 340のビスフェノールAジグリシジルエ
ーテルを使用する場合には約1時間である。
【0028】粗製の燐酸エステル類をエポキシ化合物で
処理する際に、燐酸エステル類に添加するエポキシ化合
物の量は、理論的には、燐酸エステル類の酸価対応量で
十分であるが、エポキシ化合物の反応性と、低沸点のエ
ポキシ化合物を用いる場合にはその揮発による損失とを
考慮して、燐酸エステル類の酸価対応量よりやや過剰に
エポキシ化合物を加えるのが好ましい。一般的に、燐酸
エステル類と添加するエポキシ化合物との割合は、粗製
の燐酸エステル類の酸価を基準にして、約1:1〜約
1:20(モル比)が好ましい。
【0029】本発明の精製方法においては、粗製の燐酸
エステル類をエポキシ化合物で処理することによって、
どのような反応が起きているのかは確認されていない
が、以下のような反応が起きていると推定される。即
ち、粗製の燐酸エステル類をエポキシ化合物で処理する
ことによって、粗製の燐酸エステル類中に含有する不純
物中の酸成分がエポキシ基によってマスキングされ、表
面上は中和処理と同様に、燐酸エステル類の酸価が低下
すると考えられる。特に、この処理を行うことによっ
て、不純物のなかでも金属が付加した化合物において
は、金属がエポキシ基で置換され、それによって次の熱
処理工程で、この部分が加水分解されて水溶性の化合物
に変化すると考えられる。また、エステル化が完全に行
われていない化合物においては、その酸成分にエポキシ
基が結合し、次の熱処理工程で、エポキシ基が付加した
部分が加水分解される場合もあるが、その立体構造上、
エポキシ基が付加した部分ではない熱的に不安定な箇所
が加水分解をうけると考えられ、それによって、エステ
ル化が完全に行われていない化合物は、分子量が小さ
く、より水溶性の高い化合物に変化すると考えられる。
【0030】上記のように粗製の燐酸エステル類をエポ
キシ化合物で処理した後、水分の存在下で熱処理が行わ
れるが、熱処理前に、粗製の燐酸エステル類をエポキシ
化合物で処理した処理液を水洗するのが好ましい。その
理由は、該処理液を水洗することにより、この時点で、
水溶性の不純物〔例えば、粗製の燐酸エステル類中に残
存しているエステル化反応触媒(金属類)、未反応のエ
ポキシ化合物等〕を除去することができるからである。
【0031】水洗を行う場合には、水洗回数は1回で十
分である。また、水洗に用いられる水の量は、反応混合
物の総重量に対し、約10〜100 重量%が適切である。具
体的な水洗操作としては、例えば、粗製の燐酸エステル
類をエポキシ化合物で処理した処理液に水を添加して攪
拌混合後、静置して水層と油層とを分離させ、分液ロー
ト等で上層の水層を分離除去する操作が行われる。
【0032】このように、熱処理前に粗製の燐酸エステ
ル類をエポキシ化合物で処理した処理液を水洗した場合
には、油層中には溶媒の有無にかかわらず、数%の水分
が残存する。従って、この水分によって熱処理での不純
物の加水分解除去が可能となるので、次の熱処理におい
て改めて水を添加する必要はない。なお、この水洗操作
を行わなくても、本発明の精製方法によれば、十分に燐
酸エステル類を精製することができることはいうまでも
ない。
【0033】粗製の燐酸エステル類をエポキシ化合物で
処理した後、好ましくは水洗し、次いで水分の存在下で
の熱処理が行われる。本発明における熱処理とは、熱的
に不安定な不純物を加水分解させるために行うもので、
精製を目的とする燐酸エステル類がこの熱処理によって
加水分解をうけないよう十分に制御された条件下で行わ
れる。
【0034】即ち、熱処理には、熱的に不安定な不純物
を加水分解させて水溶性の化合物に変化させるために、
水分の存在が必須である。熱処理によって水溶性の化合
物に変化した不純物は、次の水洗工程で除去することが
できる。従って、粗製の燐酸エステル類をエポキシ化合
物で処理した後、水洗を行わない場合には、該処理液中
に水を添加する必要がある。熱処理する際に添加する水
の量は、特に限定されない。
【0035】熱処理温度としては、精製される燐酸エス
テル類が加水分解されない温度であるのが必須であり、
精製を目的とする燐酸エステル類の種類に応じて適宜決
定される。一般的には、約100 ℃〜200 ℃が適切であ
り、約100 ℃〜160 ℃が好ましい。その理由は、熱処理
温度が 100℃より低いと、不純物の加水分解に時間がか
かるので経済的に好ましくなく、一方熱処理温度が 200
℃より高いと、精製を目的とする燐酸エステル類が加水
分解されるおそれがあり、かつ反応系内の水分がすぐに
蒸発してしまうために不純物の加水分解が十分に行われ
ず、それによって物性に悪影響を与える不純物が十分に
除去されないからである。上記範囲内の温度であれば、
反応系内に導入した水分により効率的に不純物を加水分
解させることができ、かつ燐酸エステル類は加水分解を
うけない。
【0036】熱処理に要する時間は、約30分〜2時間が
適切であり、熱処理温度に応じて適宜決定される。高い
温度で熱処理を行う場合には、短時間で熱処理を終了さ
せることができる。熱処理方法としては、当該分野で一
般的に用いられている方法を適用することができるが、
水蒸気蒸留により熱処理を行うのが好ましい。その場合
には、反応系内に加熱水蒸気を送り込むことによって水
分の補給と熱処理が行えるばかりでなく、低沸点の化合
物を同時に除去することができるという利点がある。
【0037】本発明においては、この熱処理によって、
不純物における熱的に不安定な箇所から加水分解が行わ
れ、該不純物が水溶性の物質に変化する。熱処理後、水
洗を行うことにより、加水分解して水溶性化合物に変化
した不純物の除去が行われる。具体的な水洗操作は、上
記と同様である。水洗回数は、1回で十分であり、水洗
に用いられる水の量は、反応混合物の総重量に対し、約
10〜100 重量%が適切である。この水洗工程によって、
最終的に耐熱性、耐加水分解性、貯蔵安定性等に影響を
及ぼす水溶性の不純物が全て除去される。
【0038】水洗後、残留する水を除去することによ
り、精製された燐酸エステル類を得ることができる。水
を除去する方法としては、当該分野で一般的に用いられ
ている方法を適用することができるが、減圧下で蒸留す
るのが好ましい。この際の温度としては、約 100〜150
℃が好ましい。粗製の燐酸エステル類が固体の場合に
は、それを溶解させるために用いられる溶媒は、上記減
圧下で蒸留することにより同時に除去される場合もある
が、該溶媒を除去するために、脱水乾燥した後、水蒸気
蒸留を行うのが好ましい。
【0039】また、水を除去した後、さらに水蒸気蒸留
を行えば、低沸点でかつ水に溶解し難い不純物(例え
ば、粗製の燐酸エステル類を合成する際の原料化合物で
あるフェノール等)を除去することもできるので、水を
除去した後、水蒸気蒸留を行うのが好ましい。上記のよ
うにして精製された燐酸エステル類は、不純物をほとん
ど含有せず、酸価が低く、かつ耐熱性、貯蔵安定性、耐
加水分解性等の物性に優れている。
【0040】従って、本発明の方法によって精製された
燐酸エステル類は、樹脂の可塑剤や難燃剤として使用し
たとき、酸価が低いために、該樹脂の成形時に金属の金
型を腐食させるという問題を生じることがなく、耐熱性
に優れているために、成形時の温度で組成変化を生じる
ことがない等の利点を有しており、樹脂の可塑剤や難燃
剤等に好適に使用することができる。
【0041】
【実施例】以下、実施例を示して、本発明をより具体的
に説明するが、本発明はこれらに限定されないことはい
うまでもない。以下の実施例において、耐熱テストは、
試料を試験管に取り、封をせずに 250℃に設定した電気
オーブンにて3時間加熱した後、酸価及び組成変化を観
察することによって行われた。但し、引火点の低い化合
物E及びFについては、200 ℃に設定した電気オーブン
にて1時間加熱した後、同様に酸価及び組成変化を観察
した。
【0042】合成例1〔化合物A(粗製の燐酸エステル
化合物)の合成〕 オキシ塩化燐(307g)とクレゾール(432g)を塩化アル
ミニウムを触媒として常圧下で反応させた後、さらにビ
スフェノールA(228g)を加えて理論量の塩酸が発生す
るまで減圧下で反応を続けた。反応混合物を塩酸水溶液
で洗浄して触媒を除去した後、減圧下で蒸留することに
よって水分を除去し、化合物A(740g)を得た。これ
は、2,2−ビス{4−〔ビス(メチルフェノキシ)ホス
ホリル〕オキシフェニル}プロパンを主成分とする組成
物で、酸価が1.5 で、無色透明の粘稠な液体であった。
【0043】合成例2〔化合物B(粗製の燐酸エステル
化合物)の合成〕 オキシ塩化燐(307g)とフェノール(376g)を塩化マグ
ネシウムを触媒として常圧下で反応させた後、さらにビ
スフェノールA(228g)を加えて理論量の塩酸が発生す
るまで減圧下で反応を続けた。反応混合物をシュウ酸水
溶液で洗浄して触媒を除去した後、減圧下で蒸留するこ
とによって水分を除去し、化合物B(690g)を得た。こ
れは、2,2−ビス{4−〔ビス(フェノキシ)ホスホリ
ル〕オキシフェニル}プロパンを主成分とする組成物
で、酸価が1.3 で、無色透明の粘稠な液体であった。
【0044】合成例3〔化合物C(粗製の燐酸エステル
化合物)の合成〕 オキシ塩化燐(307g)とフェノール(376g)を塩化アル
ミニウムを触媒として常圧下で反応させた後、さらにレ
ゾルシン(110g)を加えて理論量の塩酸が発生するまで
減圧下で反応を続けた。反応混合物をシュウ酸水溶液で
洗浄して触媒を除去した後、減圧下で蒸留することによ
って水分を除去し、化合物C(570g)を得た。これは、
m−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)を主成
分とする組成物で、酸価が0.6 で、無色透明の粘稠な液
体であった。
【0045】合成例4〔化合物D(粗製の燐酸エステル
化合物)の合成〕 オキシ塩化燐(307g)とフェノール(376g)を塩化マグ
ネシウムを触媒として常圧下で反応させた後、さらにレ
ゾルシン(220g)を加えて理論量の塩酸が発生するまで
減圧下で反応を続けた。反応混合物を塩酸水溶液で洗浄
して触媒を除去した後、減圧下で蒸留することによって
水分を除去し、化合物D(680g)を得た。これは、m−
ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェートを主成分と
する組成物で、酸価が0.8 で、淡黄色透明の粘稠な液体
であった。
【0046】合成例5〔化合物E(粗製の燐酸エステル
化合物)の合成〕 オキシ塩化燐(307g)と2−エチルヘキサノール(780
g)を塩化マグネシウムを触媒として常圧下で反応させ
た。反応混合物を塩酸水溶液で洗浄して触媒を除去した
後、減圧下で蒸留することによって水分を除去し、化合
物E(863g)得た。これは、トリ−2−エチルヘキシル
ホスフェートを主成分とする組成物で、酸価が0.8 、沸
点が 220〜250 ℃/5mmHg、引火点が 204℃の液体であっ
た。
【0047】合成例6〔化合物F(粗製の燐酸エステル
化合物)の合成〕 オキシ塩化燐(307g)とフェノール(564g)を塩化マグ
ネシウムを触媒として常圧下で反応させた後、塩酸が出
なくなるまで減圧下に140 ℃まで加熱して反応を続け
た。反応混合物を塩酸水溶液で洗浄して触媒を除去した
後、減圧下で蒸留することによって水分を除去し、化合
物Fを650g得た。これは、トリフェニルホスフェートを
主成分とする組成物で、酸価が1.1 、沸点が260 ℃/20m
mHg 、引火点が225 ℃の白色の固体であった。
【0048】実施例1 化合物A(740g)にプロピレンオキシド(7.1g)を添加
し、80℃で2時間反応させた。これを水(400g)で洗浄
した後、 140 ℃で30分間加熱処理を行った。その後、水
(400g)で洗浄し、減圧下で蒸留することによって水分
を除去し、精製品Aを得た。このものは、酸価が0.08
で、無色透明の粘稠な液体であった。
【0049】この化合物Aの精製工程における反応条件
を、表1に示す。得られた精製品の物性を測定した。こ
の精製品Aを4時間水蒸気蒸留を行った後の酸価は0.09
であり、250 ℃、3時間の耐熱テスト後の酸価は0.69で
あった。また、ゲルパーメーションクロマトグラフィー
(GPC)での分子量分布を測定した結果、耐熱テスト
前後での組成変化は見られなかった。これらの物性の結
果を表2に示す。
【0050】実施例2 実施例1でプロピレンオキシドの反応温度を100 ℃に変
えた以外は、実施例1と同様に操作した。この化合物A
の精製工程における反応条件を表1に示す。得られた精
製品Aの物性を測定し、結果を表2に示す。
【0051】実施例3 実施例1でプロピレンオキシドの反応温度を120 ℃に変
えた以外は、実施例1と同様に操作した。この化合物A
の精製工程における反応条件を表1に示す。得られた精
製品Aの物性を測定し、結果を表2に示す。 実施例4 実施例1でプロピレンオキシドの反応温度を160 ℃に変
えた以外は、実施例1と同様に操作した。この化合物A
の精製工程における反応条件を表1に示す。得られた精
製品Aの物性を測定し、結果を表2に示す。
【0052】実施例5〜7 実施例1で加熱処理温度をそれぞれ100 ℃(実施例
5)、120 ℃(実施例6)及び160 ℃(実施例7)に変
えた以外は、実施例1と同様に操作した。これらの化合
物Aの精製工程における反応条件を表1に示す。得られ
た精製品Aの物性を測定し、結果を表2に示す。
【0053】実施例8 実施例1のプロピレンオキシドをエチレンオキシドに変
えた以外は、実施例1と同様に操作した。得られた精製
品Aは、酸価が0.08で、無色透明の粘稠な液体であっ
た。この精製品Aを4時間水蒸気蒸留を行った後の酸価
は0.09であり、250 ℃、3時間の耐熱テスト後の酸価は
0.71であった。また、ゲルパーメーションクロマトグラ
フィー(GPC)での分子量分布を測定した結果、耐熱
テスト前後での組成変化は見られなかった。この化合物
Aの精製工程における反応条件を表1に、得られた精製
品Aの物性を表2に示す。
【0054】実施例9 実施例1のプロピレンオキシドをポリエチレングリコー
ル400ジグリシジルエーテルに変えた以外は、実施例
1と同様に操作した。得られた精製品Aは、酸価が0.08
で、無色透明の粘稠な液体であった。この精製品Aを4
時間水蒸気蒸留を行った後の酸価は0.11であり、250
℃、3時間の耐熱テスト後の酸価は0.73であった。ま
た、ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)
での分子量分布を測定した結果、耐熱テスト前後での組
成変化は見られなかった。この化合物Aの精製工程にお
ける反応条件を表1に、得られた精製品Aの物性を表2
に示す。
【0055】実施例10 化合物B(690g)にプロピレンオキシド(6.9g)を添加
し、120 ℃で1時間反応させた。これを水(400g)で洗
浄した後、140 ℃で30分間加熱処理を行った。その後水
(400g)で洗浄し、減圧下で蒸留することによって水分
を除去し、精製品Bを得た。このものは、酸価が0.08
で、無色透明の粘稠な液体であった。
【0056】この化合物Bの精製工程における反応条件
を表1に示す。得られた精製品の物性を測定したとこ
ろ、この精製品Bを4時間水蒸気蒸留を行った後の酸価
は0.10であり、250 ℃、3時間の耐熱テスト後の酸価は
0.69であった。また、ゲルパーメーションクロマトグラ
フィー(GPC)での分子量分布を測定した結果、耐熱
テスト前後での組成変化は見られなかった。これらの物
性の結果を表2に示す。
【0057】実施例11 化合物C(570g)にプロピレンオキシド(5.7g)を添加
し、 120℃で1 時間反応させた。 これを水(340g)で洗
浄した後、 140 ℃で30分間加熱処理を行った。その後水
(340g)で洗浄し、減圧下で蒸留することによって水分
を除去し、精製品Cを得た。このものは、酸価が0.03
で、無色透明の粘稠な液体であった。
【0058】この化合物Cの精製工程における反応条件
を表1に示す。得られた精製品の物性を測定したとこ
ろ、この精製品Cを4時間水蒸気蒸留を行った後の酸価
は0.06であり、250 ℃、3時間の耐熱テスト後の酸価は
0.38であった。また、ゲルパーメーションクロマトグラ
フィー(GPC)での分子量分布を測定した結果、耐熱
テスト前後での組成変化は見られなかった。これらの物
性の結果を表2に示す。
【0059】実施例12 化合物D(680g)にプロピレンオキシド(6.8g)を添加
し、120 ℃で1時間反応させた。これを水(430g)で洗
浄した後、140 ℃で30分間加熱処理を行った。その後水
(430g)で洗浄し、減圧下で蒸留することによって水分
を除去し、精製品Dを得た。このものは、酸価が0.06
で、淡黄色透明の粘稠な液体であった。
【0060】この化合物Dの精製工程における反応条件
を表1に示す。得られた精製品の物性を測定したとこ
ろ、この精製品Dを4時間水蒸気蒸留を行った後の酸価
は0.07であり、250 ℃、3時間の耐熱テスト後の酸価は
0.48であった。また、ゲルパーメーションクロマトグラ
フィー(GPC)での分子量分布を測定した結果、耐熱
テスト前後での組成変化は見られなかった。これらの物
性の結果を表2に示す。
【0061】実施例13 化合物E(863g)にエチレンオキシド(4.3g)を添加
し、 110℃で0.5 時間反応させた。 これを水(480g)で
洗浄した後、 120 ℃で30分間加熱処理を行った。その後
水(480g)で洗浄し、減圧下で蒸留することによって水
分を除去し、精製品Eを得た。このものは、酸価が0.01
で、無色透明の液体であった。
【0062】この化合物Eの精製工程における反応条件
を表1に示す。得られた精製品の物性を測定したとこ
ろ、この精製品Eを4時間水蒸気蒸留を行った後の酸価
は0.05であり、250 ℃、3時間の耐熱テスト後の酸価は
0.38であった。また、ゲルパーメーションクロマトグラ
フィー(GPC)での分子量分布を測定した結果、耐熱
テスト前後での組成変化は見られなかった。これらの物
性の結果を表2に示す。
【0063】実施例14 化合物F(650g)にトルエン(150g)を加えて溶解さ
せ、これにエチレンオキシド(6.5g)を添加し、 110℃
で0.5 時間反応させた。 これを水(400g)で洗浄した
後、 140 ℃で30分間加熱処理を行った。その後水(400
g)で洗浄し、減圧下で蒸留することによって水分及び
トルエンを除去し、精製品Fを得た。このものは、酸価
が0.01で、白色の固体であった。
【0064】この化合物Fの精製工程における反応条件
を表1に示す。得られた精製品の物性を測定したとこ
ろ、この精製品Fを 200℃、1時間の耐熱テストした後
の酸価は0.18であった。また、ゲルパーメーションクロ
マトグラフィー(GPC)での分子量分布を測定した結
果、耐熱テスト前後での組成変化は見られなかった。こ
れらの物性の結果を表2に示す。
【0065】比較例1 実施例1の反応温度を50℃に変えた以外は、実施例1と
同様の操作を行った。精製工程における反応条件を表1
に、得られた精製品の物性の結果を表2に示す。 比較例2 実施例3の加熱処理を除いた以外は、実施例3と同様の
操作を行った。得られた精製品の酸価は0.08であった
が、それを水蒸気蒸留に付すことによって、酸価は0.75
まで上昇した。また、室温で10日間保存した後の酸価は
0.6まで上昇しており、貯蔵安定性が悪いことが判っ
た。精製工程における反応条件を表1に、得られた精製
品の物性の結果を表2に示す。
【0066】比較例3 実施例3の加熱処理温度を80℃にした以外は、実施例3
と同様の操作を行った。得られた精製品の酸価は0.07で
あったが、それを水蒸気蒸留に付すことによって、酸価
は0.67まで上昇した。また、室温で10日間保存した後の
酸価は 0.5まで上昇しており、貯蔵安定性が悪いことが
判った。精製工程における反応条件を表1に、得られた
精製品の物性の結果を表2に示す。
【0067】比較例4 化合物A(740g)に炭酸ナトリウム(4g)、水(400g)
を加えて80℃で1時間中和を行った。水を分離した後、
同量の水でさらに4回水洗を繰り返すことによって、化
合物Aを精製した。得られた精製品は、酸価が0.32で、
ナトリウム含有量が52ppm であった。 250℃、3時間の
耐熱テストを行い、ゲルパーメーションクロマトグラフ
ィーでの分子量分布を測定した。その結果、耐熱テスト
前後での組成変化が見られた。精製工程における反応条
件を表1に、得られた精製品の物性の結果を表2に示
す。
【0068】比較例5 比較例4の炭酸ナトリウムに代えて水酸化ナトリウムを
使用し、比較例4と同様の操作を行った。しかしなが
ら、水酸化ナトリウムを使用すると、中和時に乳化が起
こり、水層の分離ができなかった。 比較例6 比較例4の炭酸ナトリウムに代えて水酸化リチウムを使
用し、比較例4と同様の操作を行った。比較例5のよう
な乳化は起こらなかったが、得られた精製品は、酸価が
0.09、精製品中のリチウム含有量が21ppm であった。 2
50℃、3時間の耐熱テストを行い、ゲルパーメーション
クロマトグラフィーでの分子量分布を測定した。その結
果、耐熱テスト前後で組成変化が見られた。精製工程に
おける反応条件を表1に、得られた精製品の物性の結果
を表2に示す。
【0069】比較例7 加熱処理を行わない以外は、実施例10と同様の操作を行
った。精製工程における反応条件を表1に、得られた精
製品の物性の結果を表2に示す。 比較例8 実施例11において、プロピレンオキシドを反応させる温
度を60℃とし、かつ加熱温度を60℃にした以外は、実施
例11と同様の操作を行った。精製工程における反応条件
を表1に、得られた精製品の物性の結果を表2に示す。
【0070】比較例9 実施例13において、エチレンオキシドを反応させる温度
を50℃にした以外は、実施例13と同様の操作を行った。
精製工程における反応条件を表1に、得られた精製品の
物性の結果を表2に示す。 比較例10 加熱処理を行わない以外は、実施例14と同様の操作を行
った。精製工程における反応条件を表1に、得られた精
製品の物性の結果を表2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】表2の結果から、本発明の方法で精製され
た燐酸エステル類は、比較例の方法(従来の燐酸エステ
ルの精製方法)で精製された燐酸エステル類に比べて、
酸価が低く、耐熱テスト後も組成変化がみられないこと
から、耐熱性に優れていることが明らかである。また、
本発明の方法で精製された燐酸エステル類は、比較例の
方法で精製された燐酸エステル類に比べて、耐熱テスト
後における酸価の上昇率が低いことから、貯蔵安定性に
優れていることが明らかである。
【0074】従って、本発明の方法で精製された燐酸エ
ステル類は、耐熱性や貯蔵安定性が優れていることよ
り、高く精製されていることが理解できる。
【0075】
【発明の効果】本発明の精製方法によれば、アルカリ金
属類による中和や不純物を除去するための蒸留を行わず
に、簡単な操作で、粗製の燐酸エステル類から、燐酸エ
ステルの耐熱性、耐加水分解性、貯蔵安定性等の物性に
影響を与える不純物の除去を行うことができ、酸価が低
く、かつ耐熱性、耐加水分解性、貯蔵安定性等の物性に
優れた高純度の燐酸エステル類を得ることができる。
【0076】従って、本発明の精製方法は、中和や蒸留
を行うことができない燐酸エステル類に対しても適用す
ることができる。また、本発明の方法によって精製され
た燐酸エステル類は、樹脂の可塑剤や難燃剤として使用
したとき、酸価が低いために、該樹脂の成形時に金属の
金型を腐食させるという問題を生じることがなく、耐熱
性に優れているために、成形時の温度で組成変化を生じ
ることがない等の利点を有しており、樹脂の可塑剤や難
燃剤等に好適に使用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−258191(JP,A) 特公 昭44−9210(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07F 9/09

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粗製の燐酸エステル類をエポキシ化合物
    で処理した後、水分の存在下で熱処理し、次いで水洗し
    た後、残留する水を除去することによって精製された燐
    酸エステル類を得ることを特徴とする燐酸エステル類の
    精製方法。
  2. 【請求項2】 エポキシ化合物で処理された粗製の燐酸
    エステル類を、熱処理する前に水洗する請求項1記載の
    方法。
  3. 【請求項3】 エポキシ化合物が、分子量40〜1000を有
    するものである請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 エポキシ化合物が、分子骨格中に1個以
    上のエポキシ基を有する、脂肪族、芳香族、脂環式又は
    複素環式化合物である請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】 脂肪族エポキシ化合物が、エチレンオキ
    シド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、3,4
    −エポキシブタノール、ポリエチレングリコール200
    ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール400
    ジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエ
    ーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリ
    セロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトー
    ルポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシ
    ジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、
    トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、プロ
    ピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメ
    チレングリコールジグリシジルエーテル、アリルグリシ
    ジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテ
    ル、アジピン酸ジグリシジルエステル又はジブロモネオ
    ペンチルグリコールジグリシジルエーテルである請求項
    4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 エポキシ化合物が、エチレンオキシド、
    プロピレンオキシド又はブチレンオキシドである請求項
    1記載の方法。
  7. 【請求項7】 粗製の燐酸エステル類とエポキシ化合物
    との割合が、該燐酸エステル類の酸価を基準にして、
    1:1〜1:20(モル比)である請求項1記載の方法。
  8. 【請求項8】 熱処理が、100〜200℃の温度で行
    われる請求項1記載の方法。
  9. 【請求項9】 燐酸エステル類が、式 【化1】 〔式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、
    nが0のとき脂肪族炭化水素基、又はnが0〜30のとき
    芳香族炭化水素基を示し、R5は任意に2個の水酸基を
    有する二価の有機基を示し、nは0〜30の整数を示す〕 で表されるものである請求項1記載の方法。
JP15331595A 1994-06-23 1995-06-20 燐酸エステル類の精製方法 Expired - Fee Related JP3305165B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15331595A JP3305165B2 (ja) 1994-06-23 1995-06-20 燐酸エステル類の精製方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6-142023 1994-06-23
JP14202394 1994-06-23
JP15331595A JP3305165B2 (ja) 1994-06-23 1995-06-20 燐酸エステル類の精製方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0867685A JPH0867685A (ja) 1996-03-12
JP3305165B2 true JP3305165B2 (ja) 2002-07-22

Family

ID=26474167

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP15331595A Expired - Fee Related JP3305165B2 (ja) 1994-06-23 1995-06-20 燐酸エステル類の精製方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3305165B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100409049B1 (ko) * 1996-07-01 2004-04-14 삼성아토피나주식회사 혼합 할로알킬-아릴포스페이트의 제조방법
US6204404B1 (en) 1997-06-06 2001-03-20 Daihachi Chemical Industry Co., Ltd. Process for preparing ester compounds
JP4187353B2 (ja) 1999-06-09 2008-11-26 株式会社Adeka 低酸価燐酸エステルの製造方法
WO2001012638A1 (fr) 1999-08-18 2001-02-22 Daihachi Chemical Industry Co., Ltd. Procédé de purification d'ester phosphorique organique
WO2002062808A1 (en) 2001-02-08 2002-08-15 Akzo Nobel N.V. Process for purification of phosphate esters
JP2003155416A (ja) 2001-11-22 2003-05-30 Teijin Chem Ltd 難燃性熱可塑性樹脂組成物およびその射出成形品
GB2487455A (en) * 2010-12-30 2012-07-25 Cheil Ind Inc Flame retardant polyphosphonates and their use in polycarbonate resins
KR20120078582A (ko) * 2010-12-30 2012-07-10 제일모직주식회사 폴리포스포네이트, 그의 제조 방법 및 이를 포함하는 난연성 열가소성 수지 조성물

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0867685A (ja) 1996-03-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0690063B1 (en) Purification method of phosphoric esters
EP1327635B1 (en) Preparation of phenylphosphate esters of 4,4'-biphenol
JP3305165B2 (ja) 燐酸エステル類の精製方法
EP0613902B1 (en) Process for the manufacture of poly(hydrocarbylene aryl phosphate)compositions
CN1167488A (zh) 双(烃基膦酸)烃基酯的制备方法
EP0915891B1 (en) Process for the formation of hydrocarbyl bis(dihydrocarbyl phosphate)
US3009939A (en) Hydroxy propoxy propyl phosphites
EP1026191A1 (en) Flame retardant compounds, process for their production and flame-retarded organic polymer materials
EP1358193B1 (en) Process for purification of phosphate esters
CA2281106A1 (en) Process for making and using bisaryl diphosphates
US6706907B1 (en) Method of purifying organic phosphoric ester
US4034023A (en) Process for preparing mixed phosphate ester compositions
JP3558458B2 (ja) アリール燐酸エステルの製造方法
JPH1017582A (ja) 燐酸エステルの製造方法
WO2001007446A1 (fr) Procede pour la preparation d'esters phosphoriques condenses
EP1103557B1 (en) Process for preparing low-acid-value phosphoric esters
US4981615A (en) Process for forming a stable emulsion from a triaryl phosphate reaction mixture residue
EP1526137A1 (en) Process to prepare alkyl phenyl phosphates
JP4010804B2 (ja) 縮合リン酸エステル化合物の製造方法
US4438048A (en) Process for the manufacture of mixed phosphoric acid ester compositions
JPH0812685A (ja) ポリ燐酸エステルの製造方法
JPH0812686A (ja) アリ−ル燐酸エステルの製造方法
US2182309A (en) Organic phosphates
JPH0242837B2 (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080510

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110510

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120510

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130510

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130510

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140510

Year of fee payment: 12

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees