JP4293694B2 - チタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物及びそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents

チタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物及びそれを用いた電子写真感光体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物及びそれを用いた電子写真感光体に関し、更に詳しくは新規なチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物及び該混合物を含有する感光層を設けた電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真方式において使用される感光体の光導電性素材としては大きく分けて種々の無機及び有機光導電体が知られている。ここにいう「電子写真方式」とは一般に、光導電性の感光体をまず暗所で、例えばコロナ放電によって帯電せしめ、次いで像露光し、露光部のみの電荷を選択的に逸散せしめて静電潜像を得、この潜像部を染料、顔料などの着色剤と高分子物質とから構成されるトナーで現像し、可視化して画像を形成するようにした、いわゆるカールソンプロセスとよばれる画像形成プロセスである。有機の光導電体を用いた感光体は無機光導電体のものに比べ、感光波長域の自由度、成膜性、可撓性、膜の透明性、量産性、毒性やコスト面等において利点を持つため、現在ではほとんどの感光体には有機光導電体が用いられている。また、この電子写真方式及び類似プロセスにおいて繰り返し使用される感光体には、感度、受容電位、電位保持性、電位安定性、残留電位、分光感度特性に代表される静電特性が優れていることが要求される。
【0003】
近年では、この電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましいものがある。特に、情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行うデジタル記録方式を用いたプリンターは、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。また、このデジタル記録方式はプリンターのみならず通常の複写機にも応用され、所謂デジタル複写機が開発されている。更に、このデジタル記録技術を搭載した複写機は、種々様々な情報処理機能が付加されるため、今後その需要性が益々高まっていくと予想される。
【0004】
このようなデジタル記録方式に対応させる感光体には従来からあるアナログ方式とは異なった特性が要求されている。例えば光源としては、現在のところ小型で安価で信頼性の高い半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が多く使われている。ただ、現在よく使われているLDの発光波長域は近赤外光領域にあり、LEDの発光波長は650nmより長波長である。このため前記電子写真感光体への要求事項に加え、可視光領域から近赤外光領域に高い感度を有することが望まれる。
【0005】
この観点から、スクエアリリウム染料(特開昭49−105536号、及び同58−21416号公報)、トリフェニルアミン系トリスアゾ顔料(特開昭61−151659号公報)、フタロシアニン顔料(特開昭48−34189号、及び同57−14874号公報)等が、デジタル記録用の光導電体として提案されている。特に、チタニルテトラアザポルフィリン誘導体であるフタロシアニン顔料は、長波長域まで感光波長域を持つと共に高い光感度を有し、また中心金属や結晶型の種類によって様々なバリエーションが得られることから、デジタル記録用の光導電体として盛んに研究が行われている。これまでに知られている良好な感度を示すフタロシアニン顔料としては、ε型銅フタロシアニン、X型無金属フタロシアニン、τ型無金属フタロシアニン、バナジルフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等が挙げられる。
【0006】
これらの中でも、特開昭64−17066号公報、特開平3−128973号公報、特開平5−98182号公報によって、高感度のチタニルフタロシアニン顔料が提案されている。これらのチタニルフタロシアニン顔料の分光波長域は700〜860nmに最大吸収を示しており、半導体レーザー光に対して極めて高感度を示すものである。しかし、上述の各公報に示されるチタニルフタロシアニン顔料を電子写真感光体に用いた場合、感度的には充分であるものの、繰り返し疲労による帯電性の低下や、温度、湿度依存性が大きいなどの実用上の多くの問題を残している[Y.Fujimaki,Proc.IS&T s 7th International Congress on Advances inNon−Impact Printing Technologies,1,269(1991);K.Daimon,et al.:J.Imaging Sci.Technol.,40,249(1996)]。
【0007】
また、登録特許第2637487号公報、第2637485号公報には、ピリジン若しくはピラジンなどのヘテロ環を有するテトラアザポルフィリン系顔料について開示されている。更には、特公平3−27111号公報、登録特許第2754739号公報には、フタロシアニンとピリジノポルフィラジン系顔料の混合物が光導電体として有用であることが開示されている。特公平3−27111号公報においては、フタロシアニン窒素同構体の原料であるピリジン−3、4−ジカルボン酸と無水フタル酸を混合して反応させることにより得られる銅フタロシアニン窒素同構体について記載されている。しかし、これらを用いた電子写真感光体は、可視域及び近赤外域における感度、帯電特性、特に繰り返し使用した場合の耐久性等の点で、前記電子写真感光体の要求事項を充分満足するものではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、上記従来の電子写真感光体における光導電体の持つ欠点を除去した、詳しくは可視域から近赤外域での感度、帯電性に優れ、且つ繰り返し疲労特性における静電安定性に優れた電子写真感光体に用いられる有機光導電体として有用なテトラアザポルフィリン誘導体混合物、及び該混合物を用いた電子写真感光体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記一般式(1)で表される複数のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体からなる混合物を見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、第一に、フタロニトリル、ジシアノピリジン及びチタン化合物を反応させることにより得られた、下記一般式(1)で表される複数のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体からなるチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物。
【化
Figure 0004293694
(式中、A,B,C及びDは無置換、または置換基として、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリール基を有してもよいベンゼン環若しくはピリジン環を表し、同一でも異なっていてもよい。)
第二に、質量分析において、576、577、578、579、580にピークを有する上記第一に記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物が提供される。第三に、複数のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体からなり、これらチタニルテトラアザポルフィリン誘導体は、(a)A,B,C,Dすべてが無置換のベンゼン環である一般式(1)の化合物、(b)A,B,C,Dのうち3つが無置換のベンゼン環であり他の1つが無置換のピリジン環である一般式(1)の化合物、(c)A,B,C,Dのうち2つが無置換のベンゼン環であり他の2つが無置換のピリジン環である一般式(1)の化合物、(d)A,B,C,Dのうち1つが無置換のベンゼン環であり他の3つが無置換のピリジン環である一般式(1)の化合物、(e)A,B,C,Dすべてが無置換のピリジン環である一般式(1)の化合物のうちの少なくとも一種以上の化合物である、上記第一、第二に記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物が提供される。第四に、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)の少なくとも6.9°、26.2°、27.2°及び28.5°の1つに回折ピークを示す上記第一〜第三のいずれかに記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物が提供される。第五に、下記一般式(1)で表される複数のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体からなるチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法であって、フタロニトリル、ジシアノピリジン及びチタン化合物を反応させることにより得ることを特徴とするチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法
【化4】
Figure 0004293694
(式中、A,B,C及びDは無置換、または置換基として、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリール基を有してもよいベンゼン環若しくはピリジン環を表し、同一でも異なっていてもよい。)が提供される。第に、上記第五に記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法を、フタロニトリル対ジシアノピリジンの反応比率を変えて2回以上行い、製造された2以上のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を混合することを特徴とするチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法が提供される。第に、上記第五または第六に記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法で得たチタニルテトラアザポルフィリンに、フタロシアニン系顔料を混合することを特徴とするチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法が提供される。第に、上記第五乃至第七いずれか1に記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法で得たチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を結晶変換処理することを特徴とするチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法が提供される。第に、導電性基体上に少なくとも感光層を設けてなる電子写真感光体であって、該感光層中に上記第一〜第のいずれかに記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を含有することを特徴とする電子写真感光体が提供される。第に、上記第に記載の電子写真感光体を搭載してなることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、具体的に詳しく説明する。
本発明のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物は、前記一般式(1)で表される複数のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体からなる混合物である。
本発明により提供される、一般式(1)で表される複数のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体からなる混合物は、新規な混合物であり、本発明により提供される製造方法によって、高収率で、再現性良く、安定して、簡便に製造することが可能である。本発明により提供される、複数のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体からなる混合物を確認、分析する手段としては、例えば、質量分析を行うことにより、混合物の構成成分である各チタニルテトラアザポルフィリン誘導体の分子量に相当する値に対するフラグメントピークの存在を確認することにより検出が可能である。また、電子写真感光体に、本発明により提供される複数のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体からなる混合物を使用すると、他の中心金属を有するテトラアザポルフィリン誘導体からなる混合物を使用した場合と比較し、高感度な電子写真感光体を提供することが可能である。中心金属をチタニルとしたことが高感度化に効果的であったと考えられる。更に、電子写真感光体に本発明により提供される複数のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体からなる混合物を使用すると、従来のチタニルフタロシアニン顔料を使用した場合と比較して、特に繰り返し疲労特性における静電安定性の点で、優れている。混合物として使用したことが、繰り返し疲労特性における静電安定性に対して効果的であったと考えられる。
前記一般式(1)におけるA,B,C,Dは、無置換、または置換基を有してもよいベンゼン基若しくはピリジン環を表すが、この置換基としては、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子や、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基等が挙げられる。具体的にハロゲン原子としては、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素原子が、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基等が挙げられ、アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。また、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテニリデンフェニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピリジニル基、ピロリジル基、オキサゾリル基等が挙げられ、これらアリール基は上述したアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子を有していてもよく、更にはA,B,C,D各々と縮合環を形成しても良い。
【0011】
前記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン誘導体混合物は、例えば下記式(2)で示されるフタロニトリルと下記式(3)若しくは(4)で示されるジシアノピリジンの混合物とを、四塩化チタン若しくはオルトチタン酸テトラ−n−ブチル等のチタン化合物と共に、無溶媒または、α−クロロナフタレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ペンタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、キノリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ニトロベンゼン、ジオキサン等の存在下で反応させることにより得ることができる。但し、簡便のため式(2)、(3)及び(4)で示される化合物は以下の様に無置換体として記載したが、これらは前記置換基を有してもよい。また、該反応は必要に応じて尿素、ホルムアミド、アセトアミド、ベンズアミド、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、アンモニア等の存在下で行っても良い。反応温度は通常室温〜300℃で行い、好ましくは100℃〜250℃である。
また、式(2)で示される化合物の代わりに式(5)〜(7)で示される化合物、及び式(3)及び(4)で示される化合物の代わりに式(8)〜(13)で示される化合物を原料として用いても、上記と同様な製造方法にて前記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン誘導体混合物を得ることができる。
【0012】
【表1】
Figure 0004293694
【0013】
上記のテトラアザポルフィリン誘導体の合成反応において、式(2)で示される化合物と式(3)若しくは(4)で示される化合物との混合割合(モル比)は、1:99999〜99999:1、好適には1:1〜399:1(モル比)である。式(2)で示される化合物が前述の混合割合より少ない場合、電子写真特性においては帯電性や感度が低くなる。逆に、式(3)若しくは(4)で示される化合物の混合割合が少ない場合、静電、光疲労等による帯電低下の変化率が大きくなる。
【0014】
また、感光体の要求特性に応じて、混合比率の異なる2種以上のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物、あるいはフタロシアニン系顔料とチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を混合しても、本発明のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を得ることができる。この場合フタロシアニン系顔料としては銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシインジウムフタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、鉄フタロシアニン、コバルトフタロシアニン等が挙げられる。
【0015】
電子写真感光体用の光導電体として、本発明のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物は、Cu−Kα特性X線(λ=1.54Å)を用いたX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2゜)において、少なくとも6.9゜、26.2゜、27.2゜若しくは28.5゜に回折ピークを有する結晶型にあることが好ましい。これらの結晶型は前記の製造法によって得ることができるが、感光体の要求特性に応じて、結晶変換処理をおこない目的の結晶型を得ることもできる。
【0016】
チタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の結晶変換処理方法としては、例えば酸処理、溶媒処理、機械的処理、加熱処理等がある。酸処理とは、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などの酸中に0℃〜室温で顔料を溶解させた後、これを氷、水、若しくはチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物が難溶な有機溶媒に滴下して顔料の結晶を析出させ、濾過等の手段により結晶を得る処理である。溶媒処理とは、室温下あるいは加熱下での、溶媒中における顔料の懸濁撹拌処理であり、機械的処理とは、例えば、自動乳鉢、遊星式ミル、ボールミル、振動式ボールミル、ニーダー、アトライター、サンドミル等の粉砕(ミリング)処理を示す。これらミリング処理においては、例えばガラスビーズ、スチールビーズ、アルミナボール、PSZボール、YTZボール若しくは食塩、ぼう硝等のミリングメデイアを用いて常温若しくは加熱下におこなう。ミリング処理においては、上記ミリングメディアとともに、溶媒を添加した系でおこなっても良い。加熱処理は上記処理法と組み合わせておこなわれることはもちろんのこと、ホットプレート、電気加熱炉等を用い、空気中若しくは不活性ガスの存在下、結晶転移温度以上に結晶を直接加熱しおこなうことも示す。
【0017】
また、これらの処理に使用する溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼンなどの芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、n−ブチルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミン系溶剤、キノリン、ピリジン等の塩基性溶剤、ジメチルスルホキシド、水等がある。
本発明のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物は、質量分析を行い、チタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を形成する構成成分である各チタニルテトラアザポルフィリン誘導体の分子量に相当する位置に出現する、フラグメントピークにより確認することが可能である。
【0018】
本発明の一般式(1)で示されるチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を、単独若しくは電荷輸送物質と組み合わせて単層型あるいは積層型(機能分離型)の電子写真感光体が作成できる。層構成としては単層型の場合、導電性基体の上に、結着剤中にチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物単独、若しくは電荷輸送物質を組み合わせ分散させた感光層を設ける。機能分離型の場合は、基体上にチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物よりなる電荷発生層、その上に電荷輸送物質よりなる電荷輸送層を形成するものであるが、電荷発生層、電荷輸送層を逆に積層しても良い。
また、接着性、電荷ブロッキング性を向上させるために、感光層と基体との間に中間層を設けても良い。更に、耐摩擦性など、機械的耐久性を向上させるために、感光層上に保護層を設けても良い。
【0019】
チタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物分散感光層は、適当な溶媒に、必要に応じてバインダー樹脂を加え溶解若しくは分散せしめ、塗布し乾燥させることにより設けることができる。
チタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の分散方法としては、例えば、ボールミル、超音波、ホモミキサー等が挙げられ、また塗布手段としては、ディッピング塗工法、ブレード塗工法、スプレー塗工法等が挙げられる。
チタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を分散せしめて感光層を形成する場合、層中への分散性を良くするために、そのチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物は2μm以下、好ましくは1μm以下の平均粒径のものが好ましい。但し、上記の粒径があまりに小さいとかえって凝集しやすく、層の抵抗が上昇したり、結晶欠陥が増えて感度及び繰り返し特性が低下したり、或いは微細化する上で限界があるから、平均粒径の下限を0.01μmとするのが好ましい。
【0020】
感光層の分散液若しくは溶液を調製する際に使用する溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、1,2−ジクロルエタン、1,1,1−トリクロルエタン、ジクロルメタン、1,1,2−トリクロルエタン、トリクロルエチレン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどを挙げることができる。
【0021】
感光層形成時に用いる結着剤としては、絶縁性が良い従来から知られている電子写真感光体用結着剤であれば何れも使用可能であり、特に限定はない。
結着剤の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスチレン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリプロピレン、アクリル樹脂、メタクリル酸樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂等の付加重合型樹脂、重付加型樹脂、重縮合型樹脂、並びにこれらの樹脂の繰り返し単位のうち2つ以上を含む共重合体樹脂、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂等の絶縁性樹脂のほか、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
これらのバインダーは単独又は2種類以上の混合物として用いることができる。
【0022】
本発明で使用される前記一般式(1)で表されるチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物は、例えば、以下に示すような顔料と混合、分散して使用しても良い。
このような有機顔料としては、例えば、シーアイピグメントブルー25(カラーインデックスCI21180)、シーアイピグメントレッド41(CI21200)、シーアイアシッドレッド52(CI45100)、シーアイベーシックレッド3(CI45210)、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報に記載)などのアゾ顔料、また、例えば、シーアイピグメントブルー16(CI74100)、チタニルフタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、更に例えば、シーアイバットブラウン5(CI73410)、シーアイバットダイ(CI73030)などのインジコ系顔料、更にまたアルゴスカーレットB(バイエル社製)、インタンスレンスカーレットR(バイエル社製)などのペリレン顔料などが挙げられる。なお、これらの有機顔料は単独あるいは2種類以上を併用しても良い。
【0023】
以上のような層構成、物質を用いて感光体を作製する場合には、膜厚、物質の割合に好ましい範囲がある。
例えば、機能分離型(基体/電荷発生層/電荷輸送層の積層)の場合、電荷発生層において、必要に応じて結着剤が使用され、その場合結着剤に対するチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の割合は20%以上900%以下、膜厚は0.01〜5μmが好ましい。電荷輸送層においては、結着剤に対する電荷輸送物質の割合は20〜200%、膜厚は5〜100μmとするのが好ましい。また、高分子型電荷輸送物質を用いる場合は、それ単独で電荷輸送層を形成しても良い。更に、電荷発生層中には電荷輸送物質を含有することが好ましく、含有させることにより残留電位の抑制、感度の向上に対し効果を持つ。この場合の電荷輸送物質は、結着剤に対し20〜200%含有させることが好ましい。
また、単層型の感光体の場合は、その感光層中に結着剤樹脂に対するチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の割合は5〜95%、膜厚は10〜100μmとするのが好ましい。また電荷輸送物質と組み合わせる場合、結着剤樹脂に対する電荷輸送物質の割合は30〜200%が好ましい。また、高分子型電荷輸送物質とチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物で感光層を形成しても良く、この場合、高分子型電荷輸送材料に対するチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の割合は5〜95%、膜厚は10〜100μmとするのが好ましい。
【0024】
更に、上記感光層中には、帯電性の向上等を目的に、フェノール化合物、ハイドロキノン化合物、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードアミンとヒンダードフェノールが同一分子中に存在する化合物などを添加することができる。
【0025】
本発明において、導電性基体としては、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン、金、ステンレス等の金属板、金属ドラム又は金属箔、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン、金酸化錫、酸化インジウムなどを蒸着したプラスチックフィルムあるいは導電性物質を塗布した紙、プラスチックなどのフィルム又はドラム等が挙げられる。
【0026】
また、必要に応じて導電性基体上に中間層が設けられ、中間層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、中間層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。これらの中間層は、前述の感光層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。更に、本発明の中間層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の中間層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。中間層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0027】
更に、本発明においては、感光層上に必要に応じて保護層が設けられるが、該保護層に使用される材料としては、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的で、ポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。保護層の形成法としては、通常の塗布法が採用される。なお、保護層の厚さは、0.1〜10μm程度が適当である。また、以上のほかに、真空薄膜作成法にて形成したa−C、a−SiCなど公知の材料を保護層として用いることができる。
【0028】
電荷輸送物質には正孔輸送物質と電子輸送物質がある。
正孔輸送物質としては、例えば、ポリ−N−カルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、及び以下の一般式で示される化合物がある。
【0029】
(1)下記一般式(21)で表される化合物
(特開昭55−154955号、特開昭55−156954号公報に記載)
【化3】
Figure 0004293694
(式中、R1はメチル基、エチル基、2−ヒドロキシエチル基又は2−クロルエチル基を表し、R2はメチル基、エチル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、R3は水素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ジアルキルアミノ基又はニトロ基を表す。)
【0030】
一般式(21)で表される化合物には、例えば、9−エチルカルバゾール−3−アルデヒド−1−メチル−1−フェニルヒドラゾン、9−エチルカルバゾール−3−アルデヒド−1−ベンジル−1−フェニルヒドラゾン、9−エチルカルバゾール−3−アルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾンなどがある。
【0031】
(2)下記一般式(22)で表される化合物
(特開昭55−52063号公報に記載)
【化4】
Figure 0004293694
(式中、Arはナフタレン環、アントラセン環、スチリル環及びそれらの置換体あるいはピリジン環、フラン環、チオフェン環を表し、Rはアルキル基又はベンジル基を表す。)
【0032】
一般式(22)で表される化合物には、例えば、4−ジエチルアミノスチリル−3−アルデヒド−1−メチル−1−フェニルヒドラゾン、4−メトキシナフタレン−1−アルデヒド−1−ベンジル−1−フェニルヒドラゾンなどがある。
【0033】
(3)下記一般式(23)で表される化合物
(特開昭56−81850号公報に記載)
【化5】
Figure 0004293694
(式中、R1はアルキル基、ベンジル基、フェニル基又はナフチル基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアラルキルアミノ基又はジアリールアミノ基を表し、nは1〜4の整数を表し、nが2以上のときはR2は同じでも異なっていてもよい。R3は水素原子又はメトキシ基を表す。)
【0034】
一般式(23)で表される化合物には、例えば、4−メトキシベンズアルデヒド−1−メチル−1−フェニルヒドラゾン、2,4−ジメトキシベンズアルデビド−1−ベンジル−1−フェニルヒドラゾン、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−メトキシベンズアルデヒド−1−べンジル−1−(4−メトキシ)フェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1−ベンジル−1−フェニルヒドラゾン、4−ジベンジルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾンなどがある。
【0035】
(4)下記一般式(24)で表される化合物
(特開昭51−10983号公報に記載)
【化6】
Figure 0004293694
(式中、R1は炭素数1〜11のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基又は複素環基を表し、R2、R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、クロルアルキル基又は置換若しくは無置換のアラルキル基を表し、また、R2とR3は互いに結合し窒素を含む複素環を形成していてもよい。R4は同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。)
【0036】
一般式(24)で表される化合物には、例えば、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、トリス(4−ジエチルアミノフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、2,2′−ジメチル−4,4′−ビス(ジエチルアミノ)−トリフェニルメタンなどがある。
【0037】
(5)下記一般式(25)で表される化合物
(特開昭51−94829号公報に記載)
【化7】
Figure 0004293694
(式中、Rは水素原子又はハロゲン原子を表し、Arは置換若しくは無置換のフェニル基、ナフチル基、アントリル基又はカルバゾリル基を表す。)
【0038】
一般式(25)で表される化合物には、例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、9−ブロム−10−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなどがある。
【0039】
(6)下記一般式(26)で表される化合物
(特開昭52−128373号公報に記載)
【化8】
Figure 0004293694
〔式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Arは
【化9】
Figure 0004293694
を表し、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R3は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はジアルキルアミノ基を表し、nは1又は2であって、nが2のときはR3は同一でも異なってもよく、R4及びR5は水素原子、炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基又は置換若しくは無置換のベンジル基を表す。〕
【0040】
一般式(26)で表される化合物としては、例えば、9−(4−ジメチルアミノベンジリデン)フルオレン、3−(9−フルオレニリデン)−9−エチルカルバゾールなどがある。
【0041】
(7)下記一般式(27)で表される化合物
(特開昭56−29245号公報に記載)
【化10】
Figure 0004293694
(式中、Rはカルバゾリル基、ピリジン基、チエニル基、インドリル基、フリル基あるいは置換若しくは非置換のフェニル基、スチリル基、ナフチル基又はアントリル基であって、これらの置換基がジアルキルアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシ基又はそのエステル、ハロゲン原子、シアノ基、アラルキルアミノ基、N−アルキル−N−アラルキルアミノ基、アミノ基、ニトロ基及びアセチルアミノ基からなる群から選ばれた基を表す。)
【0042】
一般式(27)で表される化合物には、例えば、1,2−ビス(4−ジエチルアミノスチリル)ベンゼン、1,2−ビス(2,4−ジメトキシスチリル)ベンゼンなどがある。
【0043】
(8)下記一般式(28)で表される化合物
(特開昭58−58552号公報に記載)
【化11】
Figure 0004293694
(式中、R1は低級アルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基又はベンジル基を表し、R2及びR3は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基あるいは低級アルキル基又はベンジル基で置換されたアミノ基を表し、nは1又は2の整数を表す。)
【0044】
一般式(28)で表される化合物には、例えば、3−スチリル−9−エチルカルバゾール、3−(4−メトキシスチリル)−9−エチルカルバゾールなどがある。
【0045】
(9)下記一般式(29)で表される化合物
(特開昭57−73075号公報に記載)
【化12】
Figure 0004293694
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表し、R2及びR3はアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基あるいは置換若しくは無置換のアリール基を表し、R4は水素原子又は置換若しくは無置換のフェニル基を表し、また、Arは置換若しくは無置換のフェニル基又はナフチル基を表す。)
【0046】
一般式(29)で表される化合物には、例えば、4−ジフェニルアミノスチルベン、4−ジベンジルアミノスチルベン、4−ジトリルアミノスチルベン、1−(4−ジフェニルアミノスチリル)ナフタレン、1−(4−ジエチルアミノスチリル)ナフタレンなどがある。
【0047】
(10)下記一般式(30)で表される化合物
(特開昭58−198043号公報に記載)
【化13】
Figure 0004293694
〔式中、nは0又は1の整数、R1は水素原子、アルキル基又は置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Ar1は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R5は置換アルキル基を含むアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、Aは9−アントリル基、置換若しくは無置換のカルバゾリル基又は
【化14】
Figure 0004293694
を表し、ここでR2は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、又は
【化15】
Figure 0004293694
(但し、R3及びR4はアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、R3及びR4は同じでも異なっていてもよく、また環を形成してもよい)を表し、mは0,1,2又は3の整数であって、mが2以上のときはR2は同一でも異なってもよい。また、nが0のとき、AとR1は共同で環を形成してもよい。〕
【0048】
一般式(30)で表される化合物には、例えば、4′−ジフェニルアミノ−α−フェニルスチルベン、4′−ビス(メチルフェニル)アミノ−α−フェニルスチルベンなどがある。
【0049】
(11)下記一般式(31)で表される化合物
(特開昭49−105537号公報に記載)
【化16】
Figure 0004293694
(式中、R1、R2及びR3は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はハロゲン原子を表し、nは0又は1を表す。)
【0050】
一般式(31)で表される化合物には、例えば、1−フェニル−3−(4−ジエチルアミノスチリル)−5−(4−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ジメチルアミノスチリル)−5−(4−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンなどがある。
【0051】
(12)下記一般式(32)で表される化合物
(特開昭52−139066号公報に記載)
【化17】
Figure 0004293694
(式中、R1及びR2は置換アルキル基を含むアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、Aは置換アミノ基、置換若しくは無置換のアリール基又はアリル基を表す。)
【0052】
一般式(32)で表される化合物には、例えば、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−N,N−ジフェニルアミノ−5−(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4−ジメチルアミノフェニル)−5−(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどがある。
【0053】
(13)下記一般式(33)で表される化合物
(特開昭52−139065号公報に記載)
【化18】
Figure 0004293694
(式中、Xは水素原子、低級アルキル基又はハロゲン原子を表し、Rは置換アルキル基を含むアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、Aは置換アミノ基又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。)
【0054】
一般式(33)で表される化合物としては、例えば、2−N,N−ジフェニルアミノ−5−(N−エチルカルバゾール−3−イル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4−ジエチルアミノフェニル)−5−(N−エチルカルバゾール−3−イル)−1,3,4−オキサジアゾールなどがある。
【0055】
(14)下記一般式(34)で表される化合物
(特開昭58−32372号公報に記載)
【化19】
Figure 0004293694
(式中、R1は低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子を表し、nは0〜4の整数を表し、R2、R3は同一でも異なっていてもよく、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。)
【0056】
一般式(34)で表されるベンジジン化合物には、例えば、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン、3,3’−ジメチル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどがある。
【0057】
(15)下記一般式(35)で表される化合物
(特開平2−178669号公報に記載)
【化20】
Figure 0004293694
(式中、R1、R3及びR4は水素原子、アミノ基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アリールオキシ基、メチレンジオキシ基、置換若しくは無置換のアルキル基、ハロゲン原子又は置換若しくは無置換のアリール基を、R2は水素原子、アルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。但し、R1、R2、R3及びR4はすべて水素原子である場合を除く。また、k,l,m及びnは1,2,3又は4の整数であり、各々が2,3又は4の整数のときは前記R1、R2、R3及びR4は同じでも異なっていてもよい。)
【0058】
一般式(35)で表されるビフェニルアミン化合物には、例えば、4’−メトキシ−N,N−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4−アミン、4’−メチル−N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4−アミン、4’−メトキシ−N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4−アミンなどがある。
【0059】
(16)下記一般式(36)で表される化合物
(特開平3−285960号公報に記載)
【化21】
Figure 0004293694
(式中、Arは炭素数18個以下の縮合多環式炭化水素基を表し、また、R1及びR2は水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、置換若しくは無置換のフェニル基を表し、それぞれ同じでも異なっていても良い。)
【0060】
一般式(36)で表されるトリアリールアミン化合物には、例えば、1−ジフェニルアミノピレン、1−ジ(p−トリルアミノ)ピレンなどがある。
【0061】
(17)下記一般式(37)で表される化合物
(特開昭62−98394号公報に記載)
【化22】
A−CH=CH−Ar−CH=CH−A (37)
〔式中、Arは置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し、Aは、
【化23】
Figure 0004293694
(但し、Ar′は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し、R1及びR2は置換若しくは無置換のアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である)を表す。〕
【0062】
一般式(37)で表されるジオレフィン芳香族化合物には、例えば、1,4−ビス(4−ジフェニルアミノスチリル)ベンゼン、1,4−ビス[4−ジ(p−トリル)アミノスチリル]ベンゼンなどがある。
【0063】
(18)下記一般式(38)で表される化合物
(特開平4−230764号公報に記載)
【化24】
Figure 0004293694
(式中、Arは芳香族炭化水素基を、Rは水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を、それぞれ表す。nは0又は1、mは1又は2であって、n=0,m=1の場合、ArとRは共同で環を形成しても良い。)
【0064】
一般式(38)で表されるスチリルピレン化合物としては、例えば、1−(4−ジフェニルアミノスチリル)ピレン、1−[4−ジ(p−トリル)アミノスチリル]ピレンなどがある。
【0065】
なお、電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−インデノ4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどを挙げることができ、電子輸送能が高い等の理由により下記(39)、(40)及び(41)式に挙げる電子輸送物質を好適に使用することができる。これらの電荷輸送物質は単独または2種類以上を混合して用いられる。
【0066】
【化25】
Figure 0004293694
【化26】
Figure 0004293694
【化27】
Figure 0004293694
【0067】
なお、本発明の一般式(1)で示されるチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物は、電子写真感光体の光導電体として有用であるばかりでなく、太陽電池、光ディスク等のエレクトロニクス分野で電子デバイスとして好適に使用することが可能である。
【0068】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
実施例1
フタロニトリル19.48g(152.0mmol)、2,3−ジシアノピリジン1.03g(8.00mmol)、オルトチタン酸テトラ−n−ブチル14.97g(44.00mmol)、尿素4.80g(80.00mmol)及び1−オクタノール24.48gを窒素気流下150〜161℃で6時間加熱撹拌をおこなった。放冷後、メタノール80ml加え、30分間還流撹拌をおこない室温まで冷却した後、濾過し得られた結晶をトルエン、メタノール、水にて洗浄後、減圧加圧加熱乾燥をおこなって青色粉末のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.1)を19.38g(収率84.0%)得た。元素分析結果は、次の通りであった。
Figure 0004293694
次に、本発明により提供されるチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法の再現性について検討するために、上記記載内容と同一の製造方法によりチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.1)の製造を10回行った。得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の元素分析を行ったところ、C,H,Nについて実測値の差は3%以内であったことから、本発明記載の製造方法によりチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を再現性良く製造することが可能であることが確認された。
【0070】
得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の粉末X線回折スペクトルを、以下に示す条件で測定した。得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の粉末X線回折スペクトル図を図1に示す。ブラッグ角(2θ)26.2゜に最も強い回折ピークを示した。
X線管球 Cu(波長1.54Å)
電圧 50kV
電流 30mA
走査速度 2deg/min
走査範囲 3〜40deg
時定数 2sec
次に、得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の質量分析を、以下に示す測定条件で行った。
LC/MS装置
メーカー名 : 日本電子製
機種名 : 質量分析計
機種番号 : MS700
測定条件
イオン化 : ESI法 正イオン検出
試料導入流量 : 25μL/min
試料導入方法 : インヒュ−ジョン法
リング電圧 : 80V
スキマー電圧 : 0V
サンプル調整
試料をギ酸に溶解させ、さらに50%ギ酸水溶液で希釈し、50ppm濃度に調整した。
得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の質量分析結果を図10に示す。チタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物は、以下の5点の分子量を有する構成成分からなる。
・構成成分1
一般式(1)において、A,B,C,Dすべてが無置換のベンゼン環である場合の分子量:576
・構成成分2
一般式(1)において、A,B,Cが無置換のベンゼン環であり、Dが無置換のピリジン環である場合の分子量:577
・構成成分3
一般式(1)において、A,B,C,Dのうち2つが無置換のベンゼン環であり、他の2つが無置換のピリジン環である場合の分子量:578
・構成成分4
一般式(1)において、Aが無置換のベンゼン環であり、B,C,Dが無置換のピリジン環である場合の分子量:579
・構成成分5
一般式(1)において、A,B,C,Dすべてが無置換のピリジン環である場合の分子量:580
図10の質量分析結果において、構成成分1〜5の分子量に相当する、576、577、578、579、580にピークが検出された。
【0071】
実施例2〜7
フタロニトリルと2,3−ジシアノピリジンの混合比をかえた以外は、実施例1と同様に操作してチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.2〜7)を製造した。これらの収率を表2に、また元素分析結果、粉末X線回折スペクトルにおける最も強い回折ピークのブラッグ角(2θ)を表3に示す。
【0072】
【表2】
Figure 0004293694
【0073】
【表3】
Figure 0004293694
【0074】
実施例8
濃硫酸80gを氷水浴で撹拌冷却し、これに実施例1で得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.1)5.00gを少量ずつ30分かけ添加し溶解させた。1時間撹拌の後内容物を500gの氷水に滴下し、30分間撹拌の後濾過をおこなった。得られた結晶を3回水洗し、濾過をおこない湿ケーキ28.9gを得た(固形分濃度17.3%)。これを減圧加圧乾燥して得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の粉末X線回折図を図2に示す。この湿ケーキ17.3gにイオン交換水9.7g、テトラヒドロフラン120gを加え、室温にて6時間撹拌をおこなった。これを濾過し、減圧乾燥をおこない青色結晶のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.8)2.72gを得た。このチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の粉末X線回折スペクトル図を図3に示すが、ブラッグ角(2θ)27.2゜に最も強い回折ピークを示した。元素分析結果、粉末X線回折スペクトルにおける最も強い回折ピークのブラッグ角(2θ)を表4に示す。
【0075】
実施例9〜14
化合物No.1を化合物No.2〜7にかえた以外は、実施例8と同様に操作してチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.9〜14)を得た。表4に得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の元素分析結果及び粉末X線回折スペクトルにおける最も強い回折ピークのブラッグ角(2θ)を示す。
【0076】
【表4】
Figure 0004293694
【0077】
実施例8における湿ケーキを減圧加熱乾燥した結晶1.00gにテトラヒドロフラン50mlを加え、6時間還流撹拌をおこなった。室温まで冷却し、濾過して得られた残さを減圧加熱乾燥し、青色粉末のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.15)0.97gを得た。このものの粉末X線回折図を図4に示す。表5に得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の元素分析結果及び粉末X線回折スペクトルにおける最も強い回折ピークのブラッグ角(2θ)を示す。
【0078】
実施例16〜18
化合物No.1を化合物No.2、3、6にかえた以外は、実施例15と同様に操作してチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.16〜18)を得た。表5に得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の元素分析結果及び粉末X線回折スペクトルにおける最も強い回折ピークのブラッグ角(2θ)を示す。また図5には化合物No.16の粉末X線回折スペクトル図を示す。
【0079】
【表5】
Figure 0004293694
【0080】
実施例19
濃硫酸30gを氷水浴で撹拌冷却し、これに実施例7で得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.7)0.191g(0.33mmol)とチタニルフタロシアニン1.71g(0.33×9mmol)とを混ぜ合わせたものを少量ずつ30分かけ添加し溶解させた。1.5時間撹拌の後内容物を190gの氷水に滴下し、30分間撹拌の後濾過をおこない、水洗して湿ケーキ12.7gを得た。この湿ケーキ6.7gにイオン交換水3.3g、テトラヒドロフラン40gを加え、室温にて6時間撹拌をおこなった。これを濾過し、減圧乾燥をおこない、青色結晶のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.19)0.94gを得た。得れらたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の粉末X線回折スペクトル図を図6に示す。ブラッグ角(2θ)27.2゜に最も強い回折ピークを示した。
【0081】
実施例20
下記組成の混合物をボールミルポットに取り、φ10mmのアルミナボールを使用し、48時間ボールミリングして中間層塗布液を調製した。オイルフリーアルキッド樹脂(大日本インキ化学社製:ベッコライトM6401)1.5部、メラミン樹脂(大日本インキ化学社製:スーパーベッカミンG−821)1部、二酸化チタン(石原産業社製:タイペークCR−EL)5部、2−ブタノン22.5部。この塗布液をアルミ板支持体上に塗布後、130℃で20分間乾燥し、厚さ約4μmの中間層を形成した。
次に、チタニルテトラアザポルフィリン誘導体(化合物No.1)3部、ポリビニルブチラール樹脂2部(積水化学工業社製:BM−S)、テトラヒドロフラン495部からなる分散液をボールミルポットに取り、φ2mmのPSZボールを使用し、3時間ボールミリングし電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を中間層上に塗布後100℃で20分間乾燥し、厚さ約0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0082】
続いて下記一般式(42)で示される電荷輸送物質7部、ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製:PCX−5)10部、ジクロロメタン83部、シリコーンオイル(信越化学社製:KF−50)0.0002部の電荷輸送層塗布液を調製し、前記電荷発生層上に塗布後110℃で20分間乾燥し、厚さ約28μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0083】
【化28】
Figure 0004293694
【0084】
以上のようにして得られた電子写真感光体の静電特性をEPA−8100(川口電気製作所製)を用い、ダイナミック方式(回転速度1000rpm)にて測定した。まず、印加電圧−6KVで20秒間帯電した後、20秒間減衰させた時の表面電位Vo(V)を測定し、ついでハロゲンランプによる白色光を表面照度5.3 luxになるようにして露光をおこなった。感度は、露光時の表面電位が−800(V)から−400(V)までに要する時間を求め、半減露光量Ew1/2(lux・sec)を算出した。また、同じ装置にて780nmの単色光を感光体表面での照度が1μW/cm2になるように照射して、感光体の表面電位が−800Vから−400Vまでに要する半減露光量Em1/2(μJ/cm2)を、LD光源域(近赤外域)の感度として測定した。Vo、Ew1/2、Em1/2を表6に示す。
実施例1において、本発明により提供されるチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法の再現性について検討するために製造した、チタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.1)10点についても同様に電子写真感光体を作製し、静電特性評価を行ったところ、電子写真特性の面において、再現性は良好であった。
【0085】
実施例21〜38
実施例20と同様に操作して、化合物No.2〜19の電子写真感光体としての特性を評価した。結果を表6に示す。
【0086】
実施例39
アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム上に実施例20で用いた電荷輸送層塗布液をブレード塗工し、120℃で10分間乾燥して厚さ約20μmの電荷輸送層を形成した。実施例15で得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.15)13.5部、ポリビニルブチラール樹脂(ユニオンカーバイドプラスチック社製:XYHL)5.4部、テトラヒドロフラン680部及びエチルセロソルブ1020部を、ボールミル中で粉砕混合した後、エチルセロソルブ1700部を加え混合して、電荷発生層塗工液を作成した。この塗工液を上記の電荷輸送層の上にスプレー塗工し、100℃で10分間乾燥して厚さ約0.2μmの電荷発生層を形成した。更に、この電荷発生層上にポリアミド樹脂(東レ社製:CM−8000)のメタノール/n−ブタノール溶液をスプレー塗工し、120℃で30分間乾燥して厚さ約0.5μmの保護層を形成し感光体を作成した。この感光体を実施例20における印加電圧を+6KVに代えた以外は、同様に操作して感光体特性評価をおこなった。結果を表6に示す。
【0087】
実施例40
実施例12で得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.12)1部にメチルエチルケトン158部を加え、φ5mmのアルミナボールを使用して24時間ボールミリングした。これに下記式(39)で示される電子輸送物質12部、ポリエステル樹脂(デュポン社製:ポリエステルアドヒーシブ49000)18部を加えて、更に混合して得た分散液をアルミニウム蒸着ポリエステルフィルム上にドクターブレードを用いて塗布し、100℃で30分間乾燥して、厚さ約15μmの感光層を形成し感光体を作成した。この感光体を実施例20における印加電圧を+6KVに代えた以外は、同様に操作して感光体特性評価を行った。結果を表6に示す
【0088】
【化29】
Figure 0004293694
【0089】
比較例1
実施例1におけるフタルロニトリルを同じモル数の2,3−ジシアノピリジンに代えた以外は、実施例1と同様な製造条件にて以下の一般式(43)で表されるチタニルテトラピリドテトラアザポルフィリンを得た(比較化合物No.1)。
比較化合物No.1の質量分析を、実施例1と同一の条件で行った結果を図11に示す。比較化合物No.1の分子量に対応する580にフラグメントピークが検出され、単一成分からなることが示された。
更に、実施例20で用いたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.1)の代わりに、この比較化合物No.1を用いたこと以外は、実施例20と同様に操作して感光体を作成し評価を行った。結果を表6に示す。
【0090】
【化30】
Figure 0004293694
【0091】
比較例2
濃硫酸55gを氷水浴で撹拌冷却し、これに比較例1で得られたチタニルテトラピリドテトラアザポルフィリン(比較化合物No.1)0.174g(0.3mmol)とチタニルフタロシアニン3.29g(0.3×19mmol)を混ぜ合わせたものを少量ずつ30分かけ添加し溶解させた。1.5時間撹拌の後内容物を350gの氷水に滴下し、30分間撹拌の後濾過をおこない、水洗して湿ケーキ24.0gを得た。この湿ケーキ6.93gにイオン交換水3.07g、テトラヒドロフラン40gを加え、室温にて6時間撹拌をおこなった。これを濾過し、減圧乾燥をおこない青色結晶のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(比較化合物No.2)0.96gを得た。更に、実施例20で用いたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.1)の代わりに、この比較化合物No.2を用いたこと以外は、実施例20と同様に操作して感光体を作成し、評価をおこなった。結果を表6に示す。
表6から本発明のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を用いた感光体は、比較例1、2の感光体と比較して、帯電電位Voや感度Ew1/2、Em1/2がかなり優れていることがわかる。
【0092】
比較例3
実施例20で用いたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.1)の代わりに、図7の粉末X線回折スペクトルを示すY型チタニルフタロシアニンを用いたこと以外は、実施例20と同様に操作して感光体を作成した。この電子写真感光体の静電疲労特性をEPA−8100(川口電気製作所製)を用い、ダイナミック方式(回転速度1000rpm)にて測定した。感光体に対して印加電圧約−6KVにて帯電、ハロゲンランプによる白色光露光を繰り返し、通過電流約5.6μA、帯電電位−800(V)に保持しながら60分間(30分間+30分間)おこなった。また、実施例20で得られた感光体も同様な条件にて静電疲労特性を測定した。これらの表面電位Vo(V)の変化を図8に示す。
図8より、本発明の実施例20の感光体は比較例3の感光体に比べ、繰り返し疲労特性における静電電位の安定性が優れていることがわかる。複数のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体からなる混合物として使用したことが、繰り返し疲労特性における静電安定性に対して効果的であったと考えられる。
比較例4
特公平3−27111号公報記載の実施例16の方法に従って以下の銅テトラアザポルフィリン誘導体混合物(比較化合物No.3)を製造し、評価を行った。
ピリジン−3,4−ジカルボン酸0.84g(5.0mmol)、無水フタル酸14.07g(95.0mmol)、尿素24.02g(400mmol)、塩化第一銅2.48g(25mmol)、モリブデン酸アンモニウム4水和物0.04g及びトリクロルベンゼン80gを窒素気流下181〜182℃で15時間加熱撹拌をおこなった。放冷後、メタノール80ml加え、30分間還流撹拌をおこない室温まで冷却した後、濾過し得られた結晶をトルエン、メタノール、3%の水酸化ナトリウム水溶液、水、1%塩酸、水にて順次洗浄後、100℃にて2日間減圧加熱乾燥をおこなった。得られた青色粉末をソックスレー抽出器を用いてジオキサンにて2日間洗浄をおこない、100℃にて2日間減圧加熱乾燥して青色粉末の銅テトラアザポルフィリン誘導体混合物(比較化合物No.3)12.51gを得た。
得られた銅テトラアザポルフィリン誘導体混合物の粉末X線回折スペクトル図を図9に示す。
さらに実施例20で用いたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物(化合物No.1)の代わりにこの比較化合物No.3を用いたこと以外は実施例20と同様に操作して感光体を作成し評価を行った。結果を表6に示す。
銅テトラアザポルフィリン誘導体混合物を電子写真感光体に使用した場合、白色光及び単色光に対し、光感度が観測されなかった。
【表6】
Figure 0004293694
【0093】
【表7】
Figure 0004293694
【0094】
表7から、実施例の電子写真感光体は帯電性に優れ、且つ可視域から近赤外域での感度に優れたものであることがわかる。
実施例41
実施例20で作成した電子写真感光体を搭載した画像形成装置により、画像出しを行ったところ、鮮明な画像が得られた。
【0095】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物は、高速複写機やレーザープリンター用の電子写真感光体などに用いる有機光導電体として有用なものである。
また、本発明のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を用いた電子写真感光体は、従来から知られているチタニルテトラアザポルフィリン誘導体に比べ、可視域から近赤外域での感度、帯電性に優れ、且つ繰り返し疲労特性においても耐久性に優れ、高速複写機やレーザープリンター等用の感光体として有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の粉末X線回折スペクトル図である。
【図2】実施例8で得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の粉末X線回折スペクトル図である。
【図3】実施例8で得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の粉末X線回折スペクトル図である。
【図4】実施例15で得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の粉末X線回折スペクトル図である。
【図5】実施例16で得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の粉末X線回折スペクトル図である。
【図6】実施例19で得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の粉末X線回折スペクトル図である。
【図7】比較例3で使用したY型チタニルフタロシアニンの粉末X線回折スペクトル図である。
【図8】実施例20及び比較例3で得られた電子写真感光体の静電疲労特性の測定における表面電位の変化を示す図である。
【図9】比較例4で使用した銅テトラフタロシアニンの粉末X線回折スペクトル図である。
【図10】実施例1で得られたチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の質量分析結果図である。
【図11】比較例1で得られたチタニルテトラピリドテトラアザポルフィリン(比較化合物No.1)の質量分析結果図である。

Claims (10)

  1. フタロニトリル、ジシアノピリジン及びチタン化合物を反応させることにより得られた、下記一般式(1)で表される複数のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体からなるチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物。
    Figure 0004293694
    (式中、A,B,C及びDは無置換、または置換基として、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリール基を有してもよいベンゼン環若しくはピリジン環を表し、同一でも異なっていてもよい。)
  2. 質量分析において、576、577、578、579、580にピークを有する請求項1記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物。
  3. 複数のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体からなり、これらチタニルテトラアザポルフィリン誘導体は下記(a)〜(e)のうちの少なくとも一種以上の化合物である請求項1又は2記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物。
    (a)A,B,C,Dすべてが無置換のベンゼン環である一般式(1)の化合物。
    (b)A,B,C,Dのうち3つが無置換のベンゼン環であり他の1つが無置換のピリジン環である一般式(1)の化合物。
    (c)A,B,C,Dのうち2つが無置換のベンゼン環であり他の2つが無置換のピリジン環である一般式(1)の化合物。
    (d)A,B,C,Dのうち1つが無置換のベンゼン環であり他の3つが無置換のピリジン環である一般式(1)の化合物。
    (e)A,B,C,Dすべてが無置換のピリジン環である一般式(1)の化合物。
  4. CuKα線によるX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)の少なくとも6.9°、26.2°、27.2°及び28.5°の1つに回折ピークを示す請求項1〜3のいずれかに記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物。
  5. 下記一般式(1)で表される複数のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体からなるチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法であって、フタロニトリル、ジシアノピリジン及びチタン化合物を反応させることにより得ることを特徴とするチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法。
    Figure 0004293694
    (式中、A,B,C及びDは無置換、または置換基として、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリール基を有してもよいベンゼン環若しくはピリジン環を表し、同一でも異なっていてもよい。)
  6. 前記請求項5記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法を、フタロニトリル対ジシアノピリジンの反応比率を変えて2回以上行い、製造された2以上のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を混合することを特徴とするチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法。
  7. 前記請求項5または6に記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法で得たチタニルテトラアザポルフィリンに、フタロシアニン系顔料を混合することを特徴とするチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法。
  8. 前記請求項5乃至7いずれか1に記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法で得たチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を結晶変換処理することを特徴とするチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物の製造方法。
  9. 導電性基体上に少なくとも感光層を設けてなる電子写真感光体であって、該感光層中に請求項1乃至4のいずれかに記載のチタニルテトラアザポルフィリン誘導体混合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
  10. 請求項に記載の電子写真感光体を搭載してなることを特徴とする画像形成装置。
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