JP4286948B2 - ホログラムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性樹脂組成物を主たる成分とする体積ホログラムを形成するための感光材を使用したホログラムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
体積ホログラムは、立体像の表示用、計測用、光学素子等に用いられており、工業的には、同じ体積ホログラムを多量に複製する必要性があるが、従来、このような場合には次のようにして行なっていた。
まず、ホログラムが必要な特性を生じるよう、コンピュータを使用して計算を行ない、計算結果を電子線描画機によりフォトマスクとして作成する。このようにして、最初のホログラム原版が得られる。
これとは別に、ガラス基板上に体積ホログラム形成用樹脂組成物を塗布して、体積ホログラム形成用基板を準備し、基板上の樹脂組成物層上に、上記で得られたホログラム原版のマスク面とが接するように、ホログラム原版と体積ホログラム形成用基板とを重ね合わせ、ホログラム原版側から、レーザー光により露光する。
露光後、紫外線照射(=光重合開始剤の分解)、及び加熱処理(=光重合可能な化合物の拡散移動)の各工程を行なう事により、ホログラム原版がガラス基板上に塗布された体積ホログラム形成用樹脂組成物層に複製される。
こうして複製されたホログラムは、従来、更に複製用原版として、そのまま使用され、前記したのと同様な体積ホログラム形成用基板を準備し、ホログラム層側を体積ホログラム形成用基板に接触させて、露光することにより、体積ホログラムの生産を行なっている。
【0003】
複製用原版を製造する場合も、それを用いて大量複製を行なう場合も、ホログラムを製造する際には、基板上にホログラム形成用の光硬化性樹脂組成物層を積層したホログラム形成用感光材を使用し、光硬化性樹脂組成物層にホログラム情報を露光し、その後、未反応の光硬化性樹脂を重合部分に移動させる目的で加熱処理を行なっている。
しかしながら、従来の体積ホログラム形成用基板は、バインダー樹脂が強固なものでなく、耐熱性、耐湿性、および耐摩性等が不十分である。
【0004】
従来も、ホログラムの製造に際して、基板上にホログラム形成用の光硬化性樹脂組成物層を積層したものにホログラムの情報を撮影してホログラムを形成し、その後にガラス板を光学接着剤で貼ることにより、水分による影響を防止していた(特開昭54−105566号公報)。ただ、この従来の技術においては、露光によって生じる未硬化部を溶剤で溶解除去しており、ガラス板の積層の目的は、出来上がったホログラムの吸湿を防止することであり、露光後に行なう処理を完全に行わせるためのものではなかった。
【0005】
上記の吸湿の問題とは別に、ホログラム情報の露光後に加熱を伴なう、体積ホログラム形成用樹脂組成物層を使用する際の問題点として、加熱によるホログラム層の伸縮の点がある。ホログラム情報の露光後、加熱を行なうと、基板と、基板上の体積ホログラム形成用樹脂組成物層がいずれも伸びるが、互いに接着している限り、接着界面の伸びは同じであるが、体積ホログラム形成用樹脂組成物層の基板側ではない方の面は、制約を受けずに伸びようとするので、体積ホログラム形成用樹脂組成物層の接着界面側の伸びは小さいが、反対側の表面に近づくほど、大きい伸びを示す。この伸びにより、ホログラム層内の干渉縞の傾きが変化し、得られたホログラムを再生したり、あるいは得られたホログラムを原版として更に複製を行なうような場合に、入射すべき光の角度が、予め決めた角度と相違し、支障を来すことがある。
この意味で、これらの角度の相違は、5°以内、好ましくは2°以内であることが望まれる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、本発明においては、ホログラム情報の露光後に加熱を伴なう、体積ホログラム形成用樹脂組成物を使用する際の耐熱性、耐湿性、および耐摩性が不十分な点と、ホログラム情報の露光後、加熱処理を施す際の体積ホログラム形成用樹脂組成物層の伸縮が起きる点の2つが、解決すべき課題である。
【0007】
【課題を解決する手段】
本発明においては、基板上に設けられたホログラムを形成するための感光材層である体積ホログラム形成用樹脂組成物層の表面に、露光時には透明基板で被覆してないが、露光後に透明基板を積層し、その後加熱処理を行なうことにより、課題の解決を行なった。
【0008】
請求項1の発明は、第1の基板上に体積ホログラム形成用樹脂組成物層が積層されたホログラム形成用感光材に、ホログラムの情報を露光する工程を行なった後、前記体積ホログラム形成用樹脂組成物層上に第2の基板を積層する工程とを行ない、その後、加熱処理を行なうことを特徴とするホログラムの製造方法に関するものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、ホログラムの情報を露光する際の露光光の入射角度θ1と、得られるホログラムの再生光角度θ2との差の絶対値が5°以下であることを特徴とするホログラムの製造方法に関するものである。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1において、ホログラム形成用感光材の体積ホログラム形成用樹脂組成物層と第2の基板との間に、体積ホログラム形成用樹脂組成物層側から、順に、接着剤層および保護層の二層が積層し、該保護層が水溶性樹脂層であることを特徴とするホログラムの製造方法に関するものである。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3において、水溶性樹脂層を構成する水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、またはポリビニルイソブチルエーテルから選択された1種以上であることを特徴とするホログラムの製造方法に関するものである。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1において、前記第1および第2の基板が、ガラス、プラスチック、またはセラミックから選ばれた同種または異種の素材からなり、少なくとも一方が光透過性であることを特徴とするホログラムの製造方法に関するものである。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1において、前記第1および第2の基板の厚みが、おのおの、30μm〜2000μmであることを特徴とするホログラムの製造方法に関するものである。
【0019】
請求項7の発明は、請求項1において、加熱処理を、100℃〜200℃の範囲内の温度で0.5〜5時間行なうことを特徴とするホログラムの製造方法に関するものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、いずれも本発明のホログラム形成用感光材の構造を示す断面図である。
図1に示すように、本発明のホログラム形成用感光材は、基板1上に体積ホログラム形成用樹脂組成物層2、および透明基板4が、この記載の順序で積層してあるものである。
本発明のホログラム形成用感光材はまた、図2に示すように、基本的には先のものと同じだが、体積ホログラム形成用樹脂組成物層2と透明基板4との間に、体積ホログラム形成用樹脂組成物層2側から層2を保護する保護層5、および光学接着剤層3が積層されているものであってもよい。
【0021】
ここで、基板1としては、ガラス、アクリル板、等の板状のもの、厚さ30μm〜2000μm、好ましくは10μm〜100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等を用いる。基板1としては、通常の用途であれば、透明性が高く、平滑性が高いもの使用する事が望ましい。
なお、透明基板4もこれら基板1の素材とほとんど同じである。ただし、最下層に用いられる基板1としては透明でないものも使用することがある。
【0022】
体積ホログラム形成用樹脂組成物層2としては、一般的に言って、銀塩材料、重クロム酸ゼラチン乳剤、光重合性樹脂、光架橋性樹脂等の公知の体積ホログラム記録材料が挙げられるが、本発明においては、生産効率の観点から、マトリックスポリマー、光重合可能な化合物、光重合開始剤及び増感色素とからなる乾式の体積位相型ホログラム記録用途の感光性材料を体積ホログラム形成用樹脂組成物として使用し層2を形成する事が好ましい。
【0023】
バインダー樹脂であるマトリックスポリマーとしては、ポリメタクリル酸エステル又はその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニル又はその加水分解物、ポリ酪酸ビニル、ポリビニルアルコールまたはその部分アセタール化物、トリアセチルセルロース、酪酢酸セルロース、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリクロロプレン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾールまたはその誘導体、ポリ−N−ビニルピロリドン又はその誘導体、スチレンと無水マレイン酸の共重合体またはその半エステル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル等)、アクリルアミド、アクリルニトリル、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル等の共重合可能なモノマー群の少なくとも1つを重合成分とする重合体または共重合体等、またはそれらの混合物が用いられる。
中でも、酪酢酸セルロース、メチルメタクリレート共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリ酪酸ビニル、またはポリ酢酸ビニルが好ましく、とりわけ、ポリ酪酸ビニル、またはポリ酢酸ビニルがより好ましい。
【0024】
記録されたホログラムの安定化工程として加熱によるモノマー移動の工程があるが、そのためにはこれらのマトリックスポリマーは、好ましくはガラス転移温度が比較的低く、モノマー移動を容易にするものであることが必要である。
【0025】
光重合可能な化合物としては、後述するような1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合、光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマー、及び、それらの混合物が挙げられ、例えば、不飽和カルボン酸、及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド結合物、もしくはその他の化合物が挙げられる。
【0026】
不飽和カルボン酸のモノマーの具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、及びそれらのハロゲン置換不飽和カルボン酸、例えば、塩素化不飽和カルボン酸、臭素化不飽和カルボン酸、フッ素化不飽和カルボン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の塩としては前述のナトリウム塩及びカリウム塩等がある。
【0027】
また、脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2−[2−(エトキシ)エトキシ]エチルアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、2−(p−クロロフェノキシ)エチルアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、ビスフェノールAの(2−アクリルオキシエチル)エーテル、エトキシ化されたビスフェノールAジアクリレート、2−(1−ナフチルオキシ)エチルアクリレート、o−ビフェニルアクリレートなどがある。
【0028】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例のうち、メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス−〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(アクリルオキシエトキシフェニル〕ジメチルメタン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、メタクリル酸−2−ナフチル等がある。
【0029】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例のうち、イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエタスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0030】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例のうち、クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラクロトネート等がある。
【0031】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例のうち、イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0032】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例のうち、マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレエート、トリエチレングリコールジマレエート、ペンタエリスリトールジマレエート、ソルビトールテトラマレエート等がある。
【0033】
ハロゲン化不飽和カルボン酸としては、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、メタクリル酸−2,4,6−トリブロモフェニル、ジブロモネオペンチルジメタクリレート、(商品名;NKエステルDBN、新中村化学工業(株)製)、ジブロモプロピルアクリレート(商品名;NKエステルA−DBP、新中村化学工業(株)製)、ジブロモプロピルメタクリレート(商品名;NKエステルDBP、新中村化学工業(株)製)、メタクリル酸クロライド、メタクリル酸−2,4,6−トリクロロフェニル、p−クロロスチレン、メチル−2−クロロアクリレート、エチル−2−クロロアクリレート、n−ブチル−2−クロロアクリレート、トリブロモフェールアクリレート、テトラブロモフェノールアクリレート等が挙げられる。
【0034】
また、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミト、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報に記載された一分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、一般式CH2 =C(R)COOCH2 (R’)OH(式中R、R’は水素あるいはメチル基を表す。)で示される水酸基を有するビニルモノマーを付加させた一分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0036】
また特開昭51−37193号公報に記載されたウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報にそれぞれ記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ基と(メタ)アクリル酸等の多官能性のアクリレートろメタクリレートを挙げることができる。
【0037】
さらに、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして、紹介されているものも、使用することができる。
【0038】
その他、リンを含むモノマーとしては、モノ(アクリロイロキシエチル)アシッドフォスフェート(商品名;ライトエステルPA、共栄社油脂化学工業(株)製)、モノ(2−メタクリロイロキシエチル)アシッドフォスフェート(商品名;ライトエステルPM、共栄社油脂化学工業(株)製)が挙げられ、またエポキシアクリレート系である商品名;リポキシVR−60(昭和高分子(株)製、商品名(リポキシVR−90(昭和高分子(株)製)等が挙げられる。
【0039】
また、商品名;NKエステルM−230G(新中村化学工業(株)製)、商品名;NKエステル23G(新中村化学工業(株)製)も挙げられる。
【0040】
更に、下記の構造を有するトリアクリレート類
【0041】
【化1】
【0042】
(商品名;アロニックスM−315、東亜合成化学工業(株)製)、下記の構造を有するトリアクリレート類
【0043】
【化2】
【0044】
(商品名;アロニックスM−325、東亜合成化学工業(株)製)、また、2,2’−ビス(4−アクリロキシ・ジエトキシフェニルプロパン(商品名;NKエステルA−BPE−4)、テトラメチロールメタンテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名;NKエステルA−TMMT)等が挙げられる。
【0045】
あるいは、また、N−ビニルカルバゾール、N−フェニルマレイミド等も仕様できる。
【0046】
以上のモノマーのうちで、2−フェノキシエチルアクリレート、2−[2−(エトキシ)エトキシ]エチルアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、N−ビニルカルバゾール、またはN−フェニルマレイミドが好ましく、より好ましくは、2−フェノキシエチルアクリレート、またはN−ビニルカルバゾールである。
【0047】
光重合開始剤は、記録されたホログラムの安定化の観点から、ホログラム記録後に分解処理されるのが好ましい。例えば、有機過酸化物系にあっては、紫外線照射することにより、容易に分解されるので好ましい。
具体的な光重合開始剤としては、1,3−ジ(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、N−フェニルグリシン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)s−トリアジン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、また、ヘキサアリールビスイミダゾール等のイミダゾール二量体類等が例示される。
中でも、ヘキサアリールビスイミダゾールが好ましい。
【0048】
増感色素としては、350〜600nmに吸収光を有するチオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン染料、ローダミン染料、チオピリリウム塩系色素、ピリリウムイオン系色素、ジフェニルヨードニウムイオン系色素等が例示される。DBC、DEAW、およびDimethoxy−JDIがこの範疇である。なお、350nm以下、または600nm以上の波長領域に吸収光を有する増感色素、例えば、シアニン系色素、スクワリリウム系色素を用いてもよい。
【0049】
上記した、マトリックスポリマー、光重合可能な化合物、光重合開始剤及び増感色素とからなる、体積ホログラム形成用樹脂組成物の配合比は、次のとおりである。
光重合可能な化合物はバインダー樹脂100重量部に対して10重量部〜1000重量部、好ましくは10重量部〜100重量部の割合で使用される。
光重合開始剤はバインダー樹脂100重量部に対して1重量部〜10重量部、好ましくは5重量部〜10重量部の割合で使用される。
増感色素はバインダー樹脂100重量部に対して0.01重量部〜1重量部、好ましくは0.01重量部〜0.5重量部の割合で使用される。
【0050】
その他、体積ホログラム形成用樹脂組成物の成分としては、2−メルカプトベンズオキサゾール等の連鎖移動剤、トリエチレングリコールエステル類、アジピン酸ジエチル、またはリン酸トリブチル等の可塑剤、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及び各種の非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤が挙げられる。
【0051】
体積ホログラム形成用樹脂組成物は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロルメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール等、またはそれらの混合溶剤を使用し、固形分15%〜25%程度の塗布液とされる。
【0052】
これらの塗布液を使用し、基板1の表面に、バーコート、スピンコート、又はディッピング等、あるいは、グラビアロールコート、ロールコート、ダイコート、又はコンマコート等により塗布を行ない、塗布液に合わせた乾燥又は硬化の手段を用いて固化させる。なお、このような塗布液をポリエステルフィルム上に塗布し、保護フィルムで被覆したものが、例えば、デュポン社製のオムニデックス352、706として市販されており、使用できる。
なお、体積ホログラム形成用樹脂組成物層2の厚みは、0.1μm〜50μm、好ましくは5μm〜20μmである。
【0053】
更に、体積ホログラム形成用樹脂組成物層2と透明基板4との間に中間層を積層することができる。ここで中間層としては、体積ホログラム形成用樹脂組成物層2と透明基板4との密着性を向上させると共に、体積ホログラム形成用樹脂組成物層2の耐湿性の向上、体積ホログラム形成用樹脂組成物層2にホログラム情報の露光後、加熱処理を行なう際の体積ホログラム形成用樹脂組成物層3の伸縮の緩和性を向上させる層を意味する。
【0054】
具体的な中間層は、体積ホログラム形成用樹脂組成物層2と透明基板4とを接着するため、両者の間に介在させる接着剤3であり、好ましくは、光学接着剤と呼ばれるもので構成する。
光学接着剤3は、もともと光学機器用の接着剤として開発されたものであり、屈折率が接着対象の屈折率にごく近く、無溶剤型で紫外線硬化性のものであり、ノーランド社製のNOAシリーズとして入手できる。
光学接着剤3の適用は、体積ホログラム形成用樹脂組成物層の積層と同様にして、対象となる面の一方または両方に、バーコート、スピンコート、又はディッピング等、あるいは、グラビアロールコート、ロールコート、ダイコート、又はコンマコート等により塗布を行ない、必要に応じて、塗布液に合わせた乾燥又は硬化の手段を用いて固化させた後、両者を重ね合わせて加圧する。加圧時に接着剤によっては加熱を伴なう。
【0055】
ホログラム形成用感光材には、体積ホログラム形成用樹脂組成物層2と光学接着剤4との間に保護層5を介在させてもよい。
保護層5の役割は、吸湿防止、および、上層の光学接着剤3の溶剤成分が体積ホログラム形成用樹脂組成物層2に浸透する事の防止である。
吸湿防止の観点から、耐水性のある合成樹脂の層を積層する場合には、比較的極性の低い合成樹脂を使用することが好ましく、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂等の合成樹脂が、適している。また、特に、光学接着剤3中の溶剤成分が層2に浸透する事を防止する観点からは、水溶性樹脂を使用して構成することが好ましく、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、またはポリビニルイソブチルエーテル等の樹脂を用いることができ、中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。
保護層5の積層は、体積ホログラム形成用樹脂組成物層2の積層と同様に行なう。
【0056】
次に本発明のホログラムの製造方法について説明する。
本発明のホログラムの製造方法は大別して、(1)上記のような透明基板で被覆してあるホログラム形成用感光材を使用して露光を行ない、露光後に加熱処理を行なう方法と、(2)ホログラム形成用感光材としては、透明基板を積層してないものを使用して露光を行ない、露光後の体積ホログラム形成用樹脂組成物層上に透明基板を積層し、その後、加熱処理を行なう方法とがある。
【0057】
(1)の透明基板で被覆してあるホログラム形成用感光材を使用して露光を行ない、露光後に加熱処理を行なう方法について、説明すると、まず、ホログラム原版としては次の(1)、(2)のいずれかを準備する。
即ち、(1)必要な特性を生じるよう、電子計算機を使用して計算し、計算結果を電子線描画機により描画して得たものか、あるいは(2)干渉露光により作製した体積ホログラムまたは、レリーフ型ホログラムである。
【0058】
ホログラム形成用感光材としては、基板/体積ホログラム形成用樹脂組成物層/光学接着剤/透明基板の構成のホログラム形成用感光材か、または基板/体積ホログラム形成用樹脂組成物層/保護層/光学接着剤/透明基板の構成のホログラム形成用感光材を準備する(記号「/」は、この記号を挟む両側のものどうしが積層されていることを示す。以下においても同じ。)。
【0059】
ホログラムマスクをホログラム形成用感光材の透明基板側に、マスク面がホログラム形成用感光材を向くようにして向き合わせ、ホログラムマスク側から、例えばアルゴンレーザー(波長488nm)等のレーザー光を入射し、露光を行なう。この露光により、マスクの回折格子で回折した光と回折しないで進んだ光とが干渉し、体積ホログラム形成用樹脂組成物層にホログラム情報を与えるものである。
露光の際のマスク面と体積ホログラム形成用樹脂組成物層との間隔は、入射して回折する光と回折しなかった光とが干渉する位置より近くする(通常は密着させる)か、遠くして固定し、干渉縞が生じる区域の幅を調整する。
【0060】
露光後、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光源から、0.1〜10,000mJ/cm2 、好ましくは、10〜1,000mJ/cm2 の紫外線照射により光重合開始剤を分解する工程、及び加熱処理、例えば、100℃〜200℃の温度で0.5〜5時間、一例として、150℃で120分の加熱により、光重合可能な化合物を拡散移動させる工程を順次経て、安定な体積ホログラムとする。露光後の紫外線照射、および加熱処理、特に後者の加熱処理が現像工程である。
本発明においては、この加熱処理の際に、基板上の体積ホログラム形成用樹脂組成物層のさらに上に透明基板が積層されていることが重要である。なお、露光後の紫外線照射の工程については、本質的に熱による問題がない限り、透明基板が積層されている状態で行なっても、あるいは積層されていない状態で行なってもよい。
【0061】
上記で得られた、ホログラム層が2枚の透明基板1、4の間に積層されたものを、ホログラムマスクの代わりに使用することにより、上記と同様な方法により、体積ホログラムを大量複製することができる。
【0062】
(2)のホログラムの製造方法では、ホログラム形成用感光材としては、透明基板を積層してないものを使用して露光を行ない、露光後の体積ホログラム形成用樹脂組成物層上に透明基板を積層し、その後、加熱処理を行なう。
ホログラム形成用感光材としては、基板1上に体積ホログラム形成用樹脂組成物層2を積層したものを準備する。なお、保護層5をさらに積層しておいたものを使用してもよい。
ホログラムマスクを使用しての露光については上記したものと同じであり、ホログラム形成用材料の体積ホログラム形成用樹脂組成物層側から露光する。
露光後、ホログラム形成用材料の体積ホログラム形成用樹脂組成物層2上、または保護層5上に、光学接着剤3を介して透明基板4を積層する。光学接着剤3の素材、透明基板4、および積層方法は、露光前に予め透明基板を貼る場合と同様である。
【0063】
ホログラムの複製は、ホログラム原版のホログラム情報光の入射角度θ1 に対する、複製されたホログラムの再生光角度θ2 の差が、絶対値で5°以下、好ましくは2°以下であることが必要である。5°以上になると、複製の再現性が劣り、使用に耐えないものとなる。ホログラム情報の露光後、加熱処理を施すことにより、複製の再現性が達成される。
【0064】
【実施例】
(実施例1)
感光材形成用組成物として次のものを準備した。
感光材形成用組成物;
酪酸ビニル 30重量部
酢酸ビニル 30重量部
N−ビニルカルバゾール 37重量部
ヘキサアリールビスイミダゾール 3重量部
上記組成の感光材形成用組成物に、増感色素を添加し、厚み1100μmのガラス基板上(コーニング社製、コーニング1737)に厚み3.8μmの感光材層を形成し、ホログラム感光材とした。
【0065】
別に準備した体積ホログラム原版を上記で得られたホログラム感光材上に置き、波長488nmのArレーザー光源を用いて50°の角度で露光用光を入射させ、ホログラム露光を行ない、露光後、超高圧水銀灯(強度300w)を用い、波長365nmの紫外光を2分間照射(露光量;3000mJ/cm2 )することにより、露光後に未反応で残ったモノマーを硬化させて、複製ホログラムを得た。
【0066】
得られた複製ホログラム上に、感光材層の粘着性を利用して、厚み100μmの透明ガラス(ショット社製、AF・45)の薄板を直接、貼り合わせた。
透明ガラス薄板を貼り合わせた複製ホログラムを、温度120℃のオーブン中に2時間置いて加熱処理した。
加熱処理後の複製ホログラムに光を与えて見たところ、再生のための光の入射角度は先の露光用光の角度と同じ50°であった。
【0067】
(実施例2)
実施例1におけるのと、途中まで同様にして、複製ホログラムを得た後、得られた複製ホログラムの感光材層上に、紫外線硬化性接着剤である光学接着剤(ノーランド社製、NOA61)を、スピンナーを使用して、厚みが5μmになるように塗布し、塗布面に厚み100μmの透明ガラス(ショット社製、AF・45)の薄板を直接、貼り合わせ、貼り合わせたものに紫外線(波長365nm、9J/cm2 )の紫外線を照射して接着剤を硬化させた。
【0068】
接着剤の硬化が完了した時点で、透明ガラスの薄板で被覆した複製ホログラムを温度120℃のオーブン中に2時間置いて加熱処理をした。
加熱処理後の複製ホログラムに光を与えて見たところ、再生のための光の入射角度は先の露光用光の角度との差が絶対値で1.5°であった。
【0069】
(実施例3)
複製ホログラムを得た後、複製ホログラムの感光材層上に、ポリビニルアルコール樹脂の10%水溶液を回転数1500r.p.m.のスピンナーコーティング法により塗布し、加熱乾燥後の膜厚が7μmの保護層を形成し、透明ガラスの薄板の貼り合わせのための光学接着剤の適用を保護層上とした以外は、実施例2と同様に行なった。
加熱処理後の複製ホログラムに光を与えて見たところ、再生のための光の入射角度は先の露光用光の角度に対し、その差の絶対値が0.5°との結果を得た。
【0070】
(実施例4)
透明ガラスを厚み125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、T−PET)に代えた以外は、実施例3と同様に行なったところ、結果は、実施例3と同じであった。
【0071】
(実施例5)
透明ガラスを厚み1mmのシリコンウェハーに代えた以外は、実施例3と同様に行なったところ、結果は、実施例3と同じであった。
た。
【0072】
(比較例)
実施例1で用いたのと同じ材料を使用し、各々の工程自体は実施例1と同じようにして行ない、ただし、複製ホログラムを得た後、先に加熱処理を行なった後に、表面に透明ガラスの薄板を貼り合わせた。
得られたホログラム製品の再生のための光の入射角度は、露光の際の入射光の角度より10°増加した。
【0073】
【発明の効果】
得られるホログラムは表面にも基板を有しているので、耐久性がある上、加熱前にホログラム露光を行ない、表面に透明基板を貼るので、加熱処理の際に、ホログラムが伸縮することが抑制される。
【0074】
請求項1の発明によれば、上記の発明の効果に加え、表面の基板が無い状態でホログラム露光を行なうので、表面の基板の存在による露光光の反射等が防止できる。
【0076】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、露光光の入射角度と得られたホログラムの再生光の角度との差の規定した範囲内では、複製されたホログラムの再現性が優れている。
【0080】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、保護層を形成する際に水溶液を適用するので、有機溶剤等が下層に浸透して起こす影響を回避できる。
【0081】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明の効果に加え、屈折率が体積ホログラム形成用樹脂組成物の屈折率とごく近いので、露光時や、得られた複製ホログラムをさらにホログラム原版として使用する際等に反射等の支障をごく少なくすることができる。
【0082】
3
請求項5の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、加工時の樹脂組成物の塗布、加温等により、支障を生じることがなく、得られた複製ホログラムの視認性が優れている。
【0083】
請求項6の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、基板の強度があり、得られるホログラムの視認性が優れると共に、製造時や製造後の取扱いが容易である。
【0084】
請求項7の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、加熱処理時のホログラムの伸縮の影響を避けつつ、体積ホログラム形成用樹脂層中の未反応モノマーの拡散が十分行なえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のホログラム形成用材料の断面図である。
【図2】本発明のホログラム形成用材料の断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 体積ホログラム形成用樹脂組成物層
3 光学接着剤
4 透明基板
5 保護層
Claims (7)
- 第1の基板上に体積ホログラム形成用樹脂組成物層が積層されたホログラム形成用感光材に、ホログラムの情報を露光する工程を行なった後、前記体積ホログラム形成用樹脂組成物層上に第2の基板を積層する工程とを行ない、その後、加熱処理を行なうことを特徴とするホログラムの製造方法。
- ホログラムの情報を露光する際の露光光の入射角度θ1と、得られるホログラムの再生光角度θ2との差の絶対値が5°以下であることを特徴とする請求項1記載のホログラムの製造方法。
- 前記ホログラム形成用感光材の体積ホログラム形成用樹脂組成物層と第2の基板との間に、体積ホログラム形成用樹脂組成物層側から、順に、接着剤層および保護層の二層が積層し、該保護層が水溶性樹脂層であることを特徴とする請求項1記載のホログラムの製造方法。
- 水溶性樹脂層を構成する水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、またはポリビニルイソブチルエーテルから選択された1種以上であることを特徴とする請求項3記載のホログラムの製造方法。
- 前記第1および第2の基板が、ガラス、プラスチック、またはセラミックから選ばれた同種または異種の素材からなり、少なくとも一方が光透過性であることを特徴とする請求項1記載のホログラムの製造方法。
- 前記第1および第2の基板の厚みが、おのおの、30μm〜2000μmであることを特徴とする請求項1記載のホログラムの製造方法。
- 加熱処理を、100℃〜200℃の範囲内の温度で0.5〜5時間行なうことを特徴とする請求項1記載のホログラムの製造方法。
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