JP4284935B2 - セラミックス多層基板とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス多層基板およびその製造方法に関する。本発明のセラミックス多層基板およびその製造方法は、高周波無線用セラミックス多層基板などの回路材料や部品などに適用される。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話をはじめとする無線通信技術の普及が著しい。従来の携帯電話は800MHz〜1.5GHzの準マイクロ波帯を用いたものであったが、情報量の増大に伴い、搬送周波数をより高周波であるマイクロ波帯からミリ波帯とした無線技術が提案され、実現される状況にある。こうした高周波無線回路は、移動体通信やネットワーク機器としての応用が期待されており、中でもブルトゥース(Bluetooth)やITS(Intelligent Transport System,高度交通情報システム)での利用によってますます重要な技術となりつつある。
【0003】
これらの高周波回路を実現するためには、そこで使用される基板材料も、使用周波数帯、すなわち、1〜100GHzで優れた高周波伝送特性をもつ必要がある。優れた高周波伝送特性を実現するためには、誘電損失が低いこと、加工精度が高いこと、寸法安定性がよいといった要件が必要であり、なかでもセラミックス基板が有望視されてきた。
【0004】
しかしながら、これまでのセラミックス基板材料は、寸法安定性に優れているものの、微細加工度が低かったため、特に高周波領域において十分な特性を得ることができなかった。このような微細加工精度の問題を改良する方法として、特開平6−202323号公報において、感光性セラミックス組成物から形成したグリーンシートを用いたフォトリソグラフィー技術によるビアホール形成方法が提案されている。しかしながら、感光性セラミックス組成物の感度や解像度が低いため高アスペクト比のもの、例えば50μmを越えるような厚みのシートに対し、直径100μm以下のビアホールを精度良く、かつ均一に形成できないという欠点があった。
【0005】
また、セラミックス基板材料を多層基板として使用する際には、セラミックスグリーンシートにビアホールを形成する工程、ビアホールに導体ペーストあるいは導電性金属粉末を充填する工程、セラミックスグリーンシート表面に電極や回路などの導体パターンを形成する工程、ビアホールおよび導体パターンが形成されたセラミックスグリーンシートを積層および圧着し、適当な基板サイズにカットした後、焼成する工程を経ることとなる。このとき、焼成工程によって通常10〜20%収縮するが、必ずしも均一には収縮しないため寸法精度の低下が生じており、歩留まりを下げる要因となっていた。
【0006】
一方、前述したように高周波無線用途を中心とする回路基板については、携帯機器への搭載が求められる。そのためには、配線密度を向上させるためのビアホール加工の精度向上と小径化が求められるが、それだけではなく、部品実装後のモジュールの形状や容積も、機器筐体内への搭載時には制限がある。また、内蔵アンテナのように誘電体材料そのものの形状設計によって、指向性や感度が著しく変化するものもあり、いわゆる外形加工の自由度が高いことが必要とされてきている。しかしながら、セラミックスは堅く脆い材料であるため、その加工性の悪さから、外形加工は困難と考えられており、試みられた例は殆どない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したようにフォトリソグラフィを用いて、セラミックス基板のビアホール加工を行うことは、提案されている。しかし、機器の小型化に伴う、微細加工の要求はさらに拡大し、パッケージの外形部加工を必要とする状況にまでなっている。
【0008】
携帯電話、PDA(Personal Digital Assistance:携帯情報端末)などの小型無線端末機器や、デジタルビデオカメラ、自動車用ナビゲーションシステムなどの映像・情報機器、また無線通信機能を内蔵するパーソナルコンピュータなどでは、上記のような理由から高周波回路部分を主としてガラスセラミックス多層基板が用いられることが多い。こうした機器では、携帯性、機器の小型化、力学的な衝撃に対する耐性など多くの点で、パッケージの外形形状に対する要求がある。なぜなら、携帯性や機器の小型化に伴い、機器内で取りうる実装容積の減少と筐体部品内部の凹凸や他の部品、モジュールとの空間的干渉を避けることが必要となるからである。
【0009】
しかしながら、現在のシート外形加工方法としては、NCパンチングマシンまたは金型を用いる方法が一般的な方法であり、以下のような問題点がある。
(1) NCパンチングマシンを用いると、パンチング加工であるために連続する切断線を作成するために、所要時間が増大してしまう。
(2)金型による加工は打ち抜き加工となるため、生産性は高いが、任意形状に対応するためには、金型の製造コストが増大する。また、基板設計の小変更を行う際にも、新たに金型を作成することが必要となって、製造工数の増大が避けられない。
(3) NCパンチングマシンおよび金型に共通して、ピン径は0.1mm程度が限界となり、スルーホール径およびビアホール径は0.1mm以上となる。このため、外形加工の際にも、形状再現性の点で不満足な場合がある。
(4)NCパンチングマシンおよび金型ともに、外形形状が独立パターンである場合、シート上に形成された外形加工されたグリーンシートは、ばらばらとなる。これを、積層する際に位置決めをして形成しなければならず積層工程は極めて複雑となり、また各独立パターン間での位置ずれが大きくなる。
【0010】
上記のように、旧来の機械加工による方法では、外形加工を達成することは困難である。そこで、ビアホール加工法などの微細加工が提案されている、フォトリソグラフィ法を用いて、任意の外形加工を可能とし、かつ高精細な形状加工を単純かつ簡便な方法で形成し、任意外形を持つガラスセラミック多層基板を提供することを想起するものである。
【0011】
フォトリソグラフィを用いて、外形加工を達成するためには、ビアホール加工と比べて、外形部分を加工するために、現像工程では、シート中の被現像部分と現像液の接触部分の表面積が大きく異なるため、シート中の現像液に対する膨潤率を一定かつ低レベルに抑制することが必要となる。また、加工後のシートを積層・焼成する際にも、応力集中点が発生しやすく、焼成時の反りや変形、場合によっては亀裂を生じることもある。
【0012】
さらには、外形加工によって、各加工シートが独立したパターンとなるため、現像後、積層までの工程で可撓性を保持しながら加工工程を進めることが必要となる。
【0013】
すなわち、本発明の課題は、セラミックス多層基板の外形部加工を行うにあたり、フォトリソグラフィ法を用いて加工することを提案することとともに、それを達成するための適切な材料および加工技術を提供することにある。
【0014】
すなわち本発明は、基本的には以下の構成よりなる。即ち、
(1)無機粉末と感光性有機成分を含有する感光性セラミックス組成物を用い、感光性セラミックス組成物をキャリアフィルム上にシート化して感光性グリーンシートとする工程と
(2)キャリアフィルムに付着した状態で感光性グリーンシートの外形をフォトリソグラフィを用いて互いに分離した構造に加工する工程と
(3)フォトリソグラフィを用いて加工された互いに分離した構造を有する感光性グリーンシートを、別の被転写物と位置合わせをして、転写する工程と、
(4)上記(1)〜(3)の工程を繰り返して、感光性グリーンシートを積層する工程と、
(5)積層されたセラミックスグリーンシートを焼成する工程
を含むことを特徴とするセラミックス多層基板の製造方法。
【0015】
又は、前記製造方法によりを用いて製造されたセラミックス多層基板である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、無機粉末と感光性有機成分を含有する感光性セラミックス組成物を用い、
(1)感光性セラミックス組成物をシート化して感光性グリーンシートとする工程と
(2)シート化された感光性グリーンシートの外形をフォトリソグラフィを用いて加工する工程と
(3)フォトリソグラフィによって外形が加工された感光性グリーンシートを積層する工程と
(4)積層された感光性グリーンシートを焼成する工程
を含むことを特徴とするセラミックス多層基板の製造方法である。
【0017】
本発明にいう、シート化された感光性グリーンシートの外形をフォトリソグラフィを用いて加工する工程とは、次のことを指す。すなわち、前記したシート化された感光性セラミックス組成物の外周部を形成する工程、または、ビアホールのような導通孔形成に用いられる貫通孔等の小孔ではない誘電体層となるグリーンシートの輪郭(内縁部なども含む)を形成する工程のことである。
【0018】
なお、外周部とは、説明するまでもないが、例えば、基板(或いは電子回路)の法線に垂直な方向の視線で基板外部から基板を見たときに見える側面部分である。なお、基板の主面とは、基板を略平面と見なしたときの平面、或いは基板が有する各外表面に面積に比例した大きさを有する法線を考え、各方向毎に法線の大きさを合計して、前記合計が最も大きい方向を法線とする面である。また、小孔でない外形とは、ビアホール(最大でも直径300μm)よりも大きいものを指し、穴、くり抜き構造、あるいは中庭のような構造の形態を含むものである。
【0019】
かかる外形の態様においては、前記フォトリソグラフィによって外形加工された感光性グリーンシートの加工面積は、好ましくは円換算で直径1〜50(より好ましくは5〜40、更に好ましくは10〜30)mmである。前記数値範囲の下限値を下回ると断面形状の再現性が低下し加工精度が低下し、一方、上限値を上回ると外形加工によって形成された凹凸部への応力集中などの結果、焼成工程での反りが発生しやくすくなり、いずれも好ましくない。又、前記フォトリソグラフィによって外形加工された感光性グリーンシートの形状について、フォトリソグラフィによって加工されたシートの外周部分および内周部分の長さの総和(内周部分と外周部分が共通になっている部分は除く)をLとしたとき、Lが、
3mm≦L≦200mm
であることが好ましい。Lはより好ましくは12〜100mmである。
【0020】
また、基板(または電子回路)の主面に平行な面で基板を切ったとき、互いに分離した構造となっている部分を有するような基板(例えば、新宿の現東京都庁舎のように、途中階から分かれたビルになっている建築物のような構造、以下、有分枝構造という)を作成する場合、フォトリソグラフィを用いて外形加工を行う工程において、以下の通りにすれば良い。即ち、
(1)まず、キャリアフィルムに感光性グリーンシートを積層する。
(2)次にキャリアフィルムに付着した状態で感光性グリーンシートの外形をフォトリソグラフィを用いて加工して、グリーンシートが前記互いに分離した構造に加工する。この時、キャリアシート上の各分離した構造の相対位置は完成した基板における相対位置と一致するように加工する。
(3)さらに、フォトリソグラフィを用いて加工された互いに分離した構造を、キャリアフィルム上からそのまま前記相対位置を保ったまま転写することによって積層する。
(4)最後に、積層されたセラミックスグリーンシートを焼成する。
【0021】
以上に通りの工程を行うと、有分枝構造を積層する際に好適である。なぜなら、一枚のキャリアフィルム上に互いに分離した構造の感光性セラミックスシート加工物が各分離構造の相対的位置を保持したまま形成することができる。これに対して、金型による打ち抜き工程では、キャリアフィルムごと打ち抜くため、複数個の外形加工されたシート加工物を積層するためには、ひとつずつを配置し直さなければならない。本発明では、同一のキャリアフィルム上に形成することができ、そのまま積層を行うことができるため、積層時の位置合わせが容易かつ精度向上ができる。
【0022】
また、本発明にいう、フォトリソグラフィによって外形加工された感光性グリーンシートを積層する工程とは、前記外形加工を行ったシートを少なくとも1つ以上を前記感光性セラミックスシートもしくは、無機粉末と非感光性有機成分からなる非感光性セラミックスシートと積層する工程のことを指す。フォトリソグラフィ加工では深さに限界があるので、薄い層をフォトリソグラフィ加工して積層することにより、好適な厚みの基板を得るものである。感光性セラミックスシートの厚みは好ましくは10〜500(より好ましくは25〜400、更に好ましくは50〜300)μmである。前記数値範囲の下限値を下回ると可撓性が低下し亀裂を生じやすくなり、一方、上限値を上回るとフォトリソグラフィにより断面加工することが難しくなり、いずれも好ましくない。また、積層完成された基板の厚みは好ましくは50〜3000(より好ましくは100〜2500、更に好ましくは400〜2000)μmである。前記数値範囲の下限値を下回ると積層時の厚みの不均一を生じやすくなり、一方、上限値を上回ると焼結時に内部に有機成分が残留したり、ガス化して空孔を生じる等して均一な焼成基板を得にくくなりとなり、いずれも好ましくない。
【0023】
また、本発明にいう、積層されたセラミックスグリーンシートを焼成する工程とは、積層されたシートをマッフル炉などの焼成炉に投入して、シート中に存在する有機成分をガス化する工程(通称、脱バインダ工程と呼ばれる)と、脱バインダ後、無機成分の少なくとも一つ以上の成分が流動化し、一部には結晶化が進むなどして行く工程(通称、焼成もしくは焼結工程と呼ばれる)を含む工程のことを指す。
【0024】
本発明の製造方法においては、前記セラミックス多層基板の主面法線方向に、互いに略平行に向かい合う外表面(各層間の積層面ではない)を実質上有しないように積層加工することが好ましい。または、本発明において、前記フォトリソグラフィによって外形加工された感光性グリーンシートの面積が、積層されてなる下層基板の外縁部面積と同じかあるいは小さいことが好ましい。これにより、焼結時のゆがみが少なく、形状再現性が高いからである。但し、本発明において、下層とは、製造工程においては、先に積層された層であることが多いが、完成された多層基板においては、電子回路が設けられている側とは反対面側である。
【0025】
なお、前記外表面を実質上有しないとは、前記互いに略平行に向かい合う外表面が有ったとしてもごく僅かであるということであり、特に限定されるものではないがかかる外表面部分は250000μm2以下であることが好ましい。または前記向かい合う外表面と隣接して略垂直な面から法線方向に測った前記向かいあう外表面の幅(或いは、前記向かい合う外表面と隣接して略垂直な面から前記向かい合う外表面の外端の間の最短距離)が1000μm以下であることが好ましい。或いは、前記幅が1000μmを越える部分の全長(前記幅とは基板主面内において略垂直方向に計測)が500μm以下であることが好ましい。
【0026】
或いは、前記フォトリソグラフィによって外形加工された感光性グリーンシートとその下層シートにおいて、最外周部及び/又は内縁部のパターンが異なる場合、感光性グリーンシート面積をA、積層されてなる下層シートの面積をBとした時、
0.01≦A/B≦0.90
であることも好ましい。A/Bはより好ましくは0.25〜0.75である。
【0027】
また、積層されたセラミックグリーンシートを焼成する工程において、無収縮焼成を行うことが好ましい。なぜなら、無収縮焼成を行うことで、回路の変形や配線中の断線を防ぐことができる上、フォトリソグラフィによって精密な加工を行った外形加工をそのままの形で維持できることから、設計上の形状と焼成後の形状の差異が少なくなる。
【0028】
さらに、前記無収縮焼成において、基板面を直交座標x−y平面で定義した場合、x軸、およびy軸方向での基板の収縮率が、焼成の前後において、それぞれ5%以内であることがより好ましい。通常の等方性収縮を行うと、一辺あたり10〜15%程度の収縮が起こるが、これを5%以内に抑制することで、前述したように、回路の変形や断線をより有効に低減することができるからである。例えば、グリーンシートの上下の面に難焼結性のセラミックスシート等よりなる拘束シートを配置した状態での焼成工程によりX−Y平面方向の収縮は制限されるが、組成物の成分や配合組成、焼成時の諸条件により不可避の収縮が存在するので、収縮率を1%以下に抑制できるならば、ほぼ無収縮を達成したものと考えることができる。さらに好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下に抑制することにより好適に用いることができる。このような条件は塗布膜にも適用することが可能であり、塗布膜の場合には、膜の上面に拘束シートを配した状態で実施することができる。
【0029】
本発明で用いる無機粉末とは、炭素を含まない化合物および簡単な炭素化合物からなる粉末状態の物質のことを指す。多層基板においてはセラミックスおよびガラスセラミックスなどの複合セラミックス組成物が用いられる。中でも酸化物、窒化物を主成分とする無機粉末は組成変化が少なく好適に用いられる。
【0030】
また、前記感光性セラミックス組成物中の無機粉末含有量が、72重量%以上95重量%以下であることが好ましい。無機粉末の含有量が72重量%よりも少ない状態では、シート化後の積層工程での変形が大きくなる上、焼結を行った際の収縮率が大きくなる。たとえ無収縮焼成を行った場合でも、全体の収縮量が大きいと、変形要因が増す。また、外形加工では、任意形状の加工が可能となるが、この際、形状によっては収縮時の変形による応力集中点が発生し、シートの変形や反りを発生させてしまう。一方、無機粉末含有量が95重量%よりも多いと、シート化した際のバインダー成分が少ないために、可撓性が低くなり、安定性を保つことができない。無機粉末の含有量が、72重量%以上95重量%以下の領域では、シートの可撓性を保ちながら、かつ焼結時の反りや変形を抑制できる。好ましくは、72重量%以上、90重量%以下であれば、よりシートのハンドリング特性を向上させることができるため有用である。さらには、72重量%以上88重量%以下であれば、積層時の密着性がさらによくなり有用である。
【0031】
また、感光性セラミックス組成物中の含有無機粉末のうち、平均粒子径5nm以上50nm以下の無機粉末が粉末全体のうち5重量%以上25重量%以下含有されていると、焼結時の変形をより抑制することができ、効果的である。また、外形部のフォトリソグラフィ加工時においても、現像後の断面部分が平滑となり加工形状の再現性が向上する。
【0032】
また、平均粒子径5nm以上50nm以下の無機粉末が、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、イットリア、セリアおよびマグネシアの群から選ばれた少なくとも一種であると、さらに好適に使用できる。なぜなら、これらの材料は焼成時にも安定に存在することができ、硬度も高いことから焼結後の基板強度を高めることができるからである。
【0033】
無機粉末の組成については、特に限定するものではないが、RO−Al23−SiO2系材料(Rはアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を表す)は、800〜1000℃程度の温度領域で焼成することが可能なガラス成分であり、これを含有した無機粉末材料は、本発明で好適に用いることができる。そのほかにも、ガラス粉末を50〜90重量%と、石英粉末および/またはアモルファスシリカ粉末の総量10〜50重量%の割合で含有する無機粉末組成についても、好適に使用可能である。
【0034】
いわゆる低温焼成基板では、配線材料に銀およびその合金材料を用いるため、その酸化温度よりも低い、800〜1000℃付近で焼成できることが必須である。これを満たすガラス組成は本発明で使用する無機粉末組成として好適である。
【0035】
本発明で用いる感光性有機成分は、可視光よりも短い成分の光、あるいは波長800nmよりも短い成分の光に対して、感応する有機成分を含むものである。特に、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体を含有することが好ましい。側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、パターン露光した後の現像工程でアルカリ水溶液での現像を可能にすると共に、アクリル系重合体は焼成工程での熱分解が比較的低温でスムーズに進行する点において優れている。また、本発明の組成物の種々の特性をコントロールするためポリマーの物性を改良するのに共重合体を用いることが好ましい。感光性有機成分には、さらに光反応性化合物および光重合開始剤が加えられる。必要に応じて、バインダーポリマー、増感剤、紫外線吸収剤、分散剤、界面活性剤、有機染料、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、ゲル化防止剤などの添加剤成分を加えることができる。
【0036】
側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸(ここで「(メタ)アクリ・・・」とは「アクリ・・・」および/または「メタクリ・・・」を意味する、以下も同様)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物などのカルボキシル基含有不飽和モノマーおよびメタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどのモノマーを選択し、適当なラジカル重合開始剤を用いて共重合することにより得られるが、これに限定されるものではない。不飽和基を有する他の重合性モノマーを共重合成分として加えることも可能である。
【0037】
側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体の酸価は、50〜140であることが好ましい。より好ましい酸価は、80〜120である。酸価を140以下とすることで、現像許容幅を広くすることができ、酸価を50以上とすることで、未露光部の現像液に対する溶解性が低下することがなく、従って現像液を濃くする必要がなく露光部の剥がれを防ぎ、高精細なパターンを得ることができる。
【0038】
さらに、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体が、側鎖にエチレン性不飽和基を有することも好ましく、該エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などがあげられる。このようなエチレン性不飽和基側鎖をポリマーに付加させる方法は、ポリマー中の活性水素含有基であるメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させる。グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、イソクロトン酸グリシジルなどがある。イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネートなどがある。また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05〜0.95モル当量付加させることが好ましい。活性水素含有基がメルカプト基、アミノ基、水酸基の場合にはその全量を側鎖基の導入に利用することもできるが、カルボキシル基の場合には、ポリマーの酸価が好ましい範囲に保持される範囲で付加することが好ましい。
【0039】
感光性有機成分には光反応性化合物が含有され、これらの光反応性化合物の光反応による架橋反応や重合反応が機能的な役割をする。このような役割をする光反応性化合物としては、活性な炭素−炭素二重結合を有する化合物で、官能基としてビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基などを有する単官能および多官能化合物から選んだ少なくとも1種が用いられる。なお、光反応性化合物は無機微粉末の混合・分散性に影響を与えることもあるので、特性に応じて適宜選択される。光反応性化合物は一種に限定されるものではなく複数種を混合して用いることも可能であり、その際には無機粉末の安定分散性を保持することと共に、本発明の組成物から形成されるグリーンシートの形状安定性やパターン形成性にも留意して選択することが好ましい。これに限定されるものではないが、エチレン性不飽和基を有するアミン化合物やウレタン結合を有するアクリロイルまたはメタクリロイル誘導体などを用いることが好ましい。
【0040】
不飽和基を有する光反応性化合物類には、一般的に活性光線のエネルギーを吸収する能力はないので、光反応を開始するためには、光重合開始剤を加えることが好ましい。場合によっては光重合開始剤の効果を補助するために増感剤を用いることがある。このような光重合開始剤には1分子系直接開裂型、イオン対間電子移動型、水素引き抜き型、2分子複合系など機構的に異なる種類があり、それらから選択して用いる。本発明に用いる光重合開始剤は、活性ラジカル種を発生するものが好ましい。光重合開始剤や増感剤は1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、感光性有機成分に対し、好ましくは0.05〜10重量%の範囲で添加され、より好ましくは0.1〜10重量%である。光重合開始剤の添加量をこの範囲内とすることにより、露光部の残存率を保ちつつ良好な光感度を得ることができる。
【0041】
本発明の感光性セラミックス組成物は、スラリーあるいはペーストと称せられる状態を経てシート状態に加工し、組成物の有する感光性の機能を活用して形状加工を施した後、焼成し基板材料などとしてそれぞれの用途に提供される。またグリーンシートは多層セラミックス基板の作製に用いられるシート状物で、このシート上に導電ペーストと絶縁ペーストを交互に印刷積層して多層化、一回で焼成を完了するグリーンシート印刷法や、導体を印刷して熱圧着後、焼成して多層化するグリーンシート積層法に用いられるものである。塗布膜は基板などの機能性材料の上に塗布形成された膜を示す。
【0042】
前記のようにスラリーあるいはペーストからシートに加工されるが、この工程においてスラリーあるいはペーストに含まれる溶媒などの揮発性成分は揮発乾燥される。この工程においては、前記の感光性セラミックス組成物をボールミルなどの攪拌装置を用いて均一に攪拌・分散を行い、適宜、溶媒添加を行う等して、粘度を調節した後、キャリアフィルム上に均一厚みで塗布した後、乾燥を経てシート化を達成する。
【0043】
こうしたシート化を行う方法としては、例えばドクターブレード法と呼ばれる方法がある。例えば、『セラミック多層配線基板』内田老鶴圃1989年大塚寛治著p.29〜30に記されている。要点としては、スラリーまたはペーストをキャリアフィルムなどの支持体上に一定厚み(厚み1μm〜300μm程度)で塗布し、これを熱風乾燥などの乾燥方法を用いて、塗布物中の溶媒を蒸発させ、作製することを特徴とする。
この工程を経て得られたシートの状態になった感光性セラミックス組成物は、有機感光性成分が形成している連続媒体中に、無機粉末が分散した形態を有しているものとなっている。また本発明の感光性セラミックス組成物に、フォトリソグラフィー技術でビアホール形成などのパターン形成を行う場合には、組成物が有しているそれぞれの成分の屈折率が近似し整合していることが好ましい要件となる。
【0044】
感光性セラミックス組成物をシート化する工程において、シート化時に使用する溶液粘度が、5Pa・s以上100Pa・s以下であると好ましい。後述するが、外形加工されたシートは、任意形状であるため、シート中に偏在成分が存在すると即座に焼結時に、応力集中が発生し、反りや変形、場合によっては亀裂を生じる。こうしたことを解決するためには、シート化工程で溶媒が蒸発する際に、濃度勾配をできるだけ生じさせず、かつ感光性セラミックス組成物の移動・凝集を抑制しなければならない。ここで、上記粘度の領域であれば、流動性を確保しつつ、乾燥時の凝集を防止することができ、均一なシートを作製することができる。
【0045】
また、感光性有機成分中に、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリレート化合物(成分A1)とエチレン性不飽和基を有するウレタン化合物(成分A2)を含有することが好ましい。
CH2=CR1COO−(R2)n−R3−R0 (1)
(一般式(1)において、R0は、CH2=CR1COO−(R2)n−、水素原子、又は、ハロゲン原子であり、R1は水素あるいはメチル基、R2はアルキレンオキサイドまたはそのオリゴマー、nは1〜5の整数であり、R3は炭素数1〜15の環式又は非環式のアルキレン、アリール、アリールエーテル、アリーレン、アリーレンエーテル、アラルキル、アラルキレンから選ばれたもの、或いは、それらに炭素数1〜9のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、或いはアリール基の置換基が有るものである。)
これらの化合物は、シートの可撓性を向上させる効果を持つと同時に、感光性有機成分相互の溶解性(いわゆる相溶性)を向上させることができるからである。
【0046】
一般式(1)の少なくとも一つのR3部位に芳香族環を有すると、相溶性向上の特性がさらに向上する。また、一般式(1)の少なくとも一つのR2部位にエチレンオキサイド基を有することによっても、相溶性は向上する。
【0047】
さらに、成分A1として、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレートであると、より可撓性と相溶性を向上することができる。これに対となる成分A2としては、一般式(2)で表されるウレタン化合物であることが好ましい。
CH2=CX1COO−X2−(X3−X4)n−X3−X2−OCOCX1=CH2 (2)
(一般式(2)において、X1は水素、水酸基あるいはメチル基、X2、X4はアルキレンオキサイドまたはそのオリゴマーであり、少なくとも何れか一方にエチレンオキサイド基が含まれ、X3はウレタン結合を含む脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート残基である。nは1〜10の整数である)。
相溶性に加え、積層時の弾力性などを向上させることができるからである。
また、A1、A2の成分に加え、側鎖にカルボキシル基を有する重合体が含有されると、さらに有機組成物全体の均一性が向上し、フォトリソグラフィでの加工性の付与を行いやすくなる。
【0048】
前記したような、感光性セラミックス組成物について、フォトリソグラフィによって加工を行う際、必ず、露光と現像を行う。この際、現像液として、a)弱塩基性金属塩水溶液もしくはb)水酸基を含まない炭素数が1〜6までの有機アミン化合物を使用すると、現像時のシートの膨潤を防ぎ、かつパターン形成性が高くなる。中でも、c)炭酸ナトリウム水溶液または炭酸カリウム水溶液を使用すると、容易に現像液の調製が可能であり、かつ膨潤を防ぐことができる。現像液の濃度は、0.1〜3重量%であることが望ましい。露光後の現像時のパターン再現性が高く、また適切な現像時間で現像を完了させることができるからである。
【0049】
上記のような、感光性セラミックス組成物をシート化し、フォトリソグラフィを用いて外形加工を加えた後、積層・焼成して多層基板化されたものは、従来のガラスセラミックス基板では不可能であった、微細な外形加工を施すことが可能であり、課題にしめしたように、携帯電子機器の筐体内部などの状況にきめ細かく適合して実装容積の低いものへの搭載を可能とする。つまり、単純直方体では実装が困難であっても、精度良く自由に特定部分を削り取った構造にすることが可能となる。又、くり抜き構造内に電子回路を設けることもできる。
【0050】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
感光性セラミックス組成物を構成する成分の説明。
【0051】
A.無機粉末成分
以下に示すように、平均粒子径2μm前後の無機粉末と、平均粒子径10nm前後の微粒子を組み合わせて作製した。
(無機粉末)
無機粉末として、以下のものを使用した。それぞれの平均粒子径はレーザー回折散乱法を用いて測定した。使用した装置は、日機装株式会社マイクロトラック9320HRA(X・100)である。
【0052】
無機成分1:結晶化ガラスBaO−SiO2−Al23−CaO−B23系材料粉末、平均粒子径2.3μm
無機成分2:ホウ珪酸ガラス(SiO2:44重量%、Al23:29重量%、MgO:11重量%、ZnO:7重量%、B23:9重量%)粉末70重量%とシリカ粉末30重量%、両者の平均粒子径2.0μm
無機成分3:ホウ珪酸ガラス(組成は成分2と同じ)粉末50重量%と平均粒子径2μmの球状アモルファスシリカ粉末50重量%、両者の平均粒子径1.9μm。
【0053】
無機成分4:石英粉末45重量%、コーディエライト粉末20重量%、ホウ珪酸ガラス(組成は成分2と同じ)粉末35重量%
無機成分5:アモルファスシリカ粉末32重量%、アルミナ・マグネシアスピネル粉末23重量%、ほう珪酸ガラス粉末45重量%
無機成分6:組成がAl23:34.5重量%、SiO2:38.2重量%、B23:9.2重量%、BaO:5.1重量%、MgO:4.8重量%、CaO:4.4重量%、TiO2:2.1重量%であるガラス粉末48重量%、アルミナ粉末52重量%、ガラス粉末とアルミナ粉末の平均粒子径2.2μm。うちアルミナ粉末のみの平均粒子径は2.1μm。このとき用いたガラス粉末の特性:屈折率1.584、球形率80個数%、平均粒子径2.5μm、最大粒子径13.1μm、比表面積2.41m2/g、ガラス転移点652℃、荷重軟化点746℃。
(無機微粒子)
無機微粒子として、以下のものを使用した。
(微粒子1)平均粒子径0.005μmのシリカ微粒子
(微粒子2)平均粒子径0.011μmのシリカ微粒子
(微粒子3)平均粒子径0.025μmのシリカ微粒子
(微粒子4)平均粒子径0.045μmのシリカ微粒子
(微粒子5)平均粒子径0.065μmのシリカ微粒子
(微粒子6)平均粒子径0.095μmのシリカ微粒子
(微粒子7)平均粒子径0.010μmのアルミナ微粒子
(微粒子8)平均粒子径0.035μmのアルミナ微粒子
(微粒子9)平均粒子径0.043μmのアルミナ微粒子
(微粒子10)平均粒子径0.070μmのアルミナ微粒子
(微粒子11)平均粒子径0.094μmのアルミナ微粒子
(微粒子12)平均粒子径0.024μmのジルコニア微粒子
(微粒子13)平均粒子径0.014μmのチタニア微粒子
(微粒子14)平均粒子径0.008μmのイットリア微粒子
(微粒子15)平均粒子径0.029μmのセリア微粒子
(微粒子16)平均粒子径0.037μmのマグネシア微粒子。
【0054】
B.感光性有機成分
(成分1)
モノマーI:パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製)
モノマーII:ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亞合成株式会社製)
光重合開始剤:2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1
(成分2)
ウレタン化合物I:下記の一般式(1’)において、R1は水素、R2はエチレンオキサイド基、R3はイソフォロンジイソシアネート残基、R4はエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドコオリゴマーで、一般式(1’)中のエチレンオキサイドの含有率は30%であるもの、全体の分子量は19000
CH2=CR1COO−R2−(R3−R4)n−R3−R2−OCOCR1=CH2 (1')
ウレタン化合物II:上記の一般式(1’)において、R1は水素、R2はプロピレンオキサイド基、R3はイソフォロンジイソシアネート残基、R4はプロピレンオキサイドオリゴマーであるもの、全体の分子量は42000
ウレタン化合物III:ウレタンアクリレートUV6100B(日本合成化学工業株式会社製)
(成分3)
ポリマーI:スチレン30%、メチルメタクリレート30%およびメタクリル酸40%からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応したもの、重量平均分子量43000、酸価95
ポリマーII:ダイセル化学工業株式会社製サイクロマーP(ACA)250(メタクリル酸とメチルメタクリレートとの共重合体に3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレートを付加反応して得られたもの)、重量平均分子量10000、酸価75。
【0055】
C.有機ビヒクルの作製
溶媒およびポリマーを混合し、撹拌しながら60℃に加熱し、すべてのポリマーを溶解させた。溶液を室温まで冷却し、ウレタン化合物、モノマー、光重合開始剤を加えて溶解させた。その溶液を真空脱泡した後、250メッシュのフィルターで濾過し、有機ビヒクルを作製した。
【0056】
D.スラリーまたはペースト調製
上記の有機ビヒクルに無機成分を混合し、ボールミルで20時間湿式混合し、スラリーまたはペーストとした。なお、断りのない限り、調製後のスラリーまたはペーストの粘度は、およそ25Pa・sとした。
【0057】
E.グリーンシートの作製
成形は紫外線を遮断した室内でポリエステルのキャリアフィルムとブレードとの間隔を0.1〜0.8mmとし、成形速度0.2m/min.でドクターブレード法によって行った。シートの厚みは100または150μmであった。
【0058】
F.外形形状パターンの作製
外形形状
テストパターン1
テストパターン1としては、1辺5mmの正方形の枠の中央部にそれぞれ、1辺が所定のサイズ(50μm、100μm、150μm、200μm、300μm、500μm、1mmの7種類)の正方形のくり抜き部分をもつ7種類のパターンサイズの外形形状とした。この配置を10mmピッチで100mm角のシート上に形成することとした。
【0059】
テストパターン2
テストパターン2としては、1辺5mmの正方形の枠の中にそれぞれ、1辺が所定のサイズ(50μm、100μm、150μm、200μm、300μm、500μm、1mmの7種類)の正方形の独立した部分をもつ7種類のパターンサイズの外形形状とした。この配置を10mmピッチで100mm角のシート上に形成することとした。
【0060】
G.外形加工
(フォトリソ法)
グリーンシートを100mm角に切断した後、温度80℃で1時間乾燥し、溶媒を蒸発させた。前記した外形形状のテストパターンをもとにクロムフォトマスク化し、これを用いて、シートの上面から15〜25mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いてシートとマスクの間を密着条件下で、パターン露光した。次に、25℃に保持したモノエタノールアミンの0.5%水溶液により現像し、その後、スプレーを用いてビアホールを水洗浄した。
(パンチング法)
前記したテストパターンをもとにパンチング用金型を作製した。これを用いて、100mm角に切断したグリーンシートをパンチング加工した。
【0061】
H.焼成時に用いる拘束シートの作製
アルミナ粉末またはジルコニア粉末またはマグネシア粉末にポリビニルブチラール、ジオクチルフタレート、有機溶媒などを加えて、ドクターブレード法によってシート状に形成したものを用いた。
【0062】
I.多層基板の作製
本発明の感光性セラミックス組成物からなるグリーンシートのうち、外形加工を行っていないシートを3枚、その上に外形加工したシートを2枚積層した。なお、特に明言しない限り、原則として、上下に無収縮焼成のための拘束シートを配置した。前記積層体を、80℃でプレス圧力150kg/cm2にて熱圧着した。得られた多層体を空気中で、900℃の温度で30分間焼成して、多層基板を作製した。焼成収縮率は、X−Y面方向で測定した。
【0063】
なお、各層の厚み(厚みパターン)の表中での表記については、100、150μm厚さはそれぞれA、Bと表し、上層から下層の順に列記するものとした。例えば、上層から下層の順に厚さが100、100、150、150、150μmならば、AABBBとした。
【0064】
J.作製後の基板評価
まず、焼結後の基板の変形および反りの発生を目視により評価した。次に、外形形状パターンの再現性を見るため、金属顕微鏡および走査電子顕微鏡を用いて、加工後の形状を測定した。また、断面形状を評価するために走査電子顕微鏡による形状観察を行った。さらに、各形状パターンのピッチを測定するために、レーザー顕微鏡を用いて、各パターン間のピッチ変動を測定した。
【0065】
実施例1a〜1d、比較例1
フォトリソ法により作製される外形形状とパンチングによって作製される外形形状を比較した。表1に、試験内容と結果を示す。フォトリソグラフィ法を用いて行った外形加工においては、いずれの試験においても少なくとも1辺100μm以上の部分を持つ外形加工を達成し、かつ反りのない基板を得ることができたが、パンチング法を用いて行った場合には、パターン1では部分で250μmよりも小さい加工はできず、パターン2では500μmよりも小さい加工はできなかった。これにより、感光性セラミックス組成物を用い、フォトリソグラフィ法により外形加工を行うことで、精密な外形加工が達成されることがわかった。
【0066】
また、パターン2の場合では、フォトリソグラフィ法を用いた場合、キャリアフィルムをそのまま転写シートとして使用できるため、積層時の位置変動が少ないのに比べ、パンチング法では、パンチング時のヘッドの振れに加えて、積層時にはそれぞれの加工パターンが独立しているため、各独立部分を整列配置させるのに膨大な手間がかかった上に、位置精度が表1に示されるように、フォトリソグラフィ法に比べて、一桁大きい値となることがわかった。
【0067】
【表1】
Figure 0004284935
【0068】
実施例2a〜2d
積層時に外形加工を行っていないシートとして、感光性の有無による差異が発生するかどうかを検討した。外形加工を行うシートと同じ無機成分に対して、ポリビニルブチラール、ジオクチルフタレートを加え、ドクターブレード法により、厚み200μmのシートを作製した。これを非感光性シートと呼ぶ。試験結果を表2に示す。表2に示したように、積層する際、感光性シート間でも非感光性シートとの間でも、変わりなく積層、焼成できることがわかった。
【0069】
【表2】
Figure 0004284935
【0070】
実施例3a、3b
外形加工を行うものの中で、実施例1dで作製したパターン2の試料の内、1辺500μmの正方形パターンと1辺1mmの正方形パターンをそれぞれ取り出し、相互に積層し、焼成することを試みた。その結果を表3に示す。表3に示したように、500μm角の加工パターンの上に1mm角の加工パターンを積層すると、1mm角の加工部分と500μm角の加工部分の境界部分に変形が現れる。拘束シートによって1mm角の加工面の一方が変形抑制されているためであり、外形加工パターンを積層する際には、下層基板と同じかあるいは小さいとより良好に基板を製造できることがわかった。
【0071】
【表3】
Figure 0004284935
【0072】
実施例4a〜4l
拘束シートを使用した際と使用しない場合について、外形加工されたセラミックス基板の形状がどのように変化するかを評価した。実験内容と評価結果について表4に示す。表4から明らかなように、拘束シートを使用して無収縮収縮を行うことで、変形、反りの低減、外形パターンの精度向上、さらには位置ずれの低減により効果があることがわかった。
【0073】
【表4】
Figure 0004284935
【0074】
実施例5a〜5g
感光性セラミックス組成物中の無機粉末含有量を変化させたときの外形加工したセラミックス基板の製造結果について評価を行った。実験内容およびその結果を表5に示す。表5から明らかなように、感光性セラミックス組成物のうち無機成分の量が、70重量%付近より低いと、焼成時の反り変形が激しく、パターン形状および位置精度がより悪化することがわかった。一方、93重量%を越えると、有機成分の量が少ないため、シートの可撓性が保ちにくくなることから、積層、焼成工程中に亀裂が大きく生じ、一様な焼成を達成することがより困難であった。このことから、感光性セラミックス組成物を用いて外形加工するためには、無機成分の分量を72重量%から95重量%の範囲で調製することがより好ましいことが明らかとなった。
【0075】
【表5】
Figure 0004284935
【0076】
実施例6a〜6n
前記感光性セラミックス組成物中の含有無機粉末量のうち、微粒子の含有量による外形加工の変化について検討した。ただし、ここでは微粒子の平均粒径による影響を見るために、無機成分6の内容の中で、アルミナ粉末52重量%とあるうちの、一部をアルミナ微粒子によって置き換えることとした。
【0077】
検討内容と結果を表6に示す。アルミナ微粒子の無機成分全体に占める割合が5重量%より低いと、変形が一部起こることがわかる。5重量%から25重量%の範囲では、変形も殆ど見られず、かつフォトリソグラフィー加工により達成される外形加工精度もより向上していることがわかる。25重量%を越えると、感光性セラミックス組成物中で凝集が始まるため、焼成後の基板中には一部空孔が見られる。このため、全体の均一性が悪化し、外形加工精度、位置精度ともに悪化することがわかった。この結果から、無機微粒子成分の含有量が粉末全体のうち5重量%以上25重量%以下の領域では、外形加工されたセラミック基板をより良好な精度、密度で得ることができた。
【0078】
【表6】
Figure 0004284935
【0079】
実施例7a〜7i
感光性セラミックス組成物をシート化する工程において、シート化時に使用する溶液粘度の変化について検討した。検討内容と結果を表7に示す。すべての結果において、外形加工の再現性は、パターン1、パターン2ともに50μm以上を達成していた。表7から明らかなように、反り・変形がシート化時のスラリーまたはペーストの粘度が5Pa・s付近から低いか、100Pa・s付近よりも大きいと、大きく反ったり、膜厚の変動が発生し、その結果位置精度の悪化や、部分的な亀裂・歪みを発生することがわかった。一方、5Pa・s付近から100Pa・s付近の範囲では、変形は殆ど見られず、より精度の高い外形加工されたセラミックス基板が得られることがわかった。なお、実施例7aの試料断面を電子線プローブX線マイクロアナライザーを用いて分析したところ、アルミナ粉末が部分的に凝集し、シートとキャリアフィルムの近傍に集中していることがわかった。
【0080】
【表7】
Figure 0004284935
【0081】
実施例8a〜8e
感光性セラミックス組成物中に無機微粒子を添加する際の、粒子径による外形加工への影響について調べた。表8に実験内容と結果を示す。表8から明らかなように、添加する微粒子の粒径が50nm付近よりも大きいと、フォトリソグラフィによる外形加工精度が低下する。一方、10nm程度では、一部空孔が見られており、微粒子表面積の増大による凝集安定化が起こっている。この結果から、少なくとも5nm程度以上の微粒子添加がより好ましいことがわかった。
【0082】
【表8】
Figure 0004284935
【0083】
実施例9a〜9g
感光性セラミックス組成物中に無機微粒子を添加する際の、材質による影響について調べた。表9に実験内容とその結果を示す。表9から明らかなように、準備した異なる材質の微粒子すべてについて、ほぼ同等の外形加工特性を得ることができた。また、焼結後のX線構造解析の結果からも、それぞれの試料の結晶構造が変化していないことを、それおぞれの結晶特有の回折ピーク位置およびその半値幅から判断することができた。
【0084】
【表9】
Figure 0004284935
【0085】
実施例10
実施例1dで使用した試料を用いて、誘電体パッチアンテナを試作した。ネットワークアナライザを用いて、反射波測定を行った。同様の試作・測定を、金型によるパンチングにて行った比較例1で得られた試料についても行い、比較したところ、共振周波数は、ともに2.45GHzであったが、バンド幅が、フォトリソグラフィ法で作製したものは±17MHz、パンチング加工によるものは±55MHzとなった。
【0086】
【発明の効果】
本発明の、無機粉末と感光性有機成分を含有する感光性セラミックス組成物を用いてフォトリソグラフィ法による外形加工を行うことによって、任意形状の外形形状を持つセラミックス多層基板を、高精度に製造することができる。

Claims (1)

  1. (1)無機粉末と感光性有機成分を含有する感光性セラミックス組成物を用い、感光性セラミックス組成物をキャリアフィルム上にシート化して感光性グリーンシートとする工程と
    (2)キャリアフィルムに付着した状態で感光性グリーンシートの外形をフォトリソグラフィを用いて互いに分離した構造に加工する工程と
    (3)フォトリソグラフィを用いて加工された互いに分離した構造を有する感光性グリーンシートを、別の被転写物と位置合わせをして、転写する工程と、
    (4)上記(1)〜(3)の工程を繰り返して、感光性グリーンシートを積層する工程と、
    (5)積層されたセラミックスグリーンシートを焼成する工程
    を含むことを特徴とするセラミックス多層基板の製造方法。
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