JP4254300B2 - 感光性シート状成形物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性セラミックス組成物に関する。本発明の感光性セラミックス組成物は、高周波無線用セラミックス多層基板に代表される回路材料などに用いられる。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話をはじめとする無線通信技術の普及が著しい。従来の携帯電話は800MHz〜1.5GHzの準マイクロ波帯を用いたものであったが、情報量の増大に伴い、搬送周波数をより高周波であるマイクロ波帯からミリ波帯とした無線技術が提案され、実現される状況にある。こうした高周波無線回路は、移動体通信やネットワーク機器としての応用が期待されており、中でもブルートゥース(Bluetooth)やITS(Intelligent Transport System,高度交通情報システム)での利用によってますます重要な技術となりつつある。
【0003】
これらの高周波回路を実現するためには、そこで使用される基板材料も、使用波長帯、すなわち、1〜100GHzで優れた高周波伝送特性をもつ必要がある。優れた高周波伝送特性を実現するためには、低誘電率でかつ誘電損失が低いこと、加工精度が高いこと、寸法安定性がよいといった要件が必要であり、なかでもセラミックス基板が有望視されてきた。
【0004】
しかしながら、これまでのセラミックス基板材料は、寸法安定性に優れているものの、微細加工度が低かったため、特に高周波領域において十分な特性を得ることができなかった。このような微細加工精度の問題を改良する方法として、感光性セラミックス組成物から形成したグリーンシートを用いたフォトリソグラフィー技術によるビアホール形成方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、こうした、セラミックス基板材料は導通を取るための導電性ペーストや、コンデンサペーストなどを印刷し、さらに多層化するために形成したビアホール中にビアフィル用ペーストを充填するといった工程を経て、多層基板化することが可能となるが、多層基板化工程において、必然的に平坦なグリーンシート基板上にペーストによる凸部分や、ビアホール部分への充填ペーストの凹凸などが、多層基板の導通性や外観状の変形に悪影響を及ぼすことがある。
【0006】
こうした問題を解決する方法のひとつとして、先にビアホールを形成したグリーンシート上にドライフィルムレジストを形成し、しかる後にドライフィルム上にパターンを形成し、その後、導電性ペーストを充填し、さらにその後、ドライフィルムレジストを剥離することにより、基板表面の平坦性と導通性を確保することが提案されている(例えば特許文献2参照。)。しかしながら、この方法では、先にビアホールをグリーンシートのみに形成しているため、その後ドライフィルムレジストを用いてパターン形成すると、それぞれのパターン間で操作時のずれが生じる。特に、微細パターン形成を行う際には、その誤差は大きくなる。
【0007】
また、前記の課題を解決する一つの方法として、グリーンシートへの貫通ビア加工を行う際に、キャリアフィルムとセラミックスシート部分を同時にパンチングにより貫通させ、その後ビアフィル工程としてキャリアフィルム側から導電性ペーストを充填した後、キャリアフィルムを剥離して、はみ出した部分を取り去り平坦なシートを得ることが提案されている(例えば特許文献3参照)。しかしながら、本方法ではパンチングなどの方法による機械的加工によるビアホール形成法であるために、位置精度及び精細度に限界があり、より高い加工精度を要求する回路形成には適用することが難しかった。
【0008】
これらのことから、高精細なパターン加工を可能とする感光性セラミックスグリーンシートを用いて誘電体層のみを形成しても、配線時の変形、誤差によって十分に機能しない回路となることが問題となっていた。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−202323号公報(第2頁)
【0010】
【特許文献2】
特開平8−37372号公報(第2頁)
【0011】
【特許文献3】
特開平11−145617号公報(第3頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、感光性セラミックス組成物から形成したグリーンシートに、フォトリソグラフィーを用いて微細なビアホールを作製する等の形状加工を行うことで高精細な基板を得ることができるが、基板を多層化する際、層間導通を達成するためには、層間接続用の金属ペーストをビアホールに充填する工程が必要である。この際、充填するペーストの量が少ないと、焼成時にスルーホール部分の導通がとれなくなり、回路が断線し機能しなくなる。一方、ペースト量が多いと、その後の工程で実施される配線ペースト塗布工程や積層、プレス工程などで各層表面の平滑性が悪化し、凹凸が発生することから、層間に隙間が発生したり、さらに焼成時に凸部分を中心として空孔が発生したり、ひび割れが発生する。さらに凸部分が発生した結果、各層間の密着性が低下し、配線の導通がとれなくなることもあり、ビアホールにビアフィル用ペーストを最適な量だけ充填することが必要となる。
【0013】
感光性セラミックス組成物にフォトリソグラフィ法によりビアホールを形成した際、ビアホールにビアフィル用ペーストを最適量だけ充填し、焼成後の導通および基板変形を少なくできる感光性シート状成形物およびそれを用いた多層基板の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、上記本発明の目的を達成するために、本発明は以下の構成および製造方法からなる。
(1)非感光性キャリアフィルム、無機粉末と感光性有機成分を含有する感光性セラミックス組成物、ドライフィルムレジストの順に積層された感光性シート状成形物である。
(2)無機粉末と感光性有機成分を含有する感光性セラミックス組成物を非感光性キャリアフィルム、ドライフィルムレジスト、無機粉末と感光性有機成分を含有する感光性セラミックス組成物の順に積層された感光性シート状成形物。
(3)上記(1)または(2)の感光性シート状成形物をフォトリソグラフィ工程を用いて露光、現像して形状加工する工程と、非感光性キャリアフィルムを剥離する工程と、ドライフィルムレジスト面側から導体ペーストを貫通した形状中に充填する工程と、ドライフィルムレジストを剥離させる工程を有するセラミックス多層基板の製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の感光性シート状成形物は、非感光性キャリアフィルム、無機粉末と感光性有機成分を含有する感光性セラミックス組成物、ドライフィルムレジストの順に積層されており、それぞれの層が密着していることが好ましい。密着させることで、フォトリソグラフィー工程を用いてビアホールなどの形状を感光性セラミックス組成物層に付与する際に、ドライフィルムレジスト層にも位置ずれのない像が正確に形成されるからである。形成される像に位置ずれが存在しないため、導通用ペーストの充填が容易でありなおかつ、適切な量をビア中に供給できる。
また別の態様は、非感光性キャリアフィルム、ドライフィルムレジスト、無機粉末と感光性有機成分を含有する感光性セラミックス組成物の順に積層されており、それぞれの層が密着していることが好ましい。
【0016】
本発明にいう、無機粉末とは、無機物からなる粉体状の物質のことを指す。焼成後、回路基板として使用するため、誘電率が均一であり、同時に誘電正接が低く、tanδ≦1.0×10-3以下程度のものが好ましく用いられる。また、工程中及び焼結後の強度が十分にあり、かつその変形がほとんど無視できるものがよい。感光性セラミックス組成物に含有される無機粉末は焼成工程において焼結するものであり、本発明の目的とする基板形成では、1000℃以下、特に700〜900℃の温度での焼成できる無機粉末が好ましい。もちろん、これらの無機粉末が基板の電気的特性、強度、熱膨張係数などの基本物性を決めるものであるため、目的とする特性に応じて適宜選択される。
【0017】
本発明で用いられる無機粉末として有用な成分には4つの態様が挙げられる。第1の態様は、一般式RxO−Al2O3−SiO2系材料(Rはアルカリ金属(x=2)あるいはアルカリ土類金属(x=1)を示す)で表されるアルミノケイ酸塩系化合物である。特に限定されるものではないが、アノーサイト(CaO−Al2O3−2SiO2)、セルジアン(BaO−Al2O3−2SiO2)などであり、低温焼結セラミックス材料として用いられる無機粉末である。
【0018】
第2の態様の無機粉末としては、ガラス粉末を50〜90重量%と、石英粉末および/またはアモルファスシリカ粉末を10〜50重量%の割合を有するものである。ガラス粉末はホウ珪酸ガラスが好ましい。
【0019】
第3の態様は、ホウ珪酸ガラス粉末30〜60重量%、石英粉末および/またはアモルファスシリカ粉末20〜60重量%およびコーディエライト、スピネル、フォルステライト、アノーサイトおよびセルジアンの群から選ばれた少なくとも1種類のセラミックス粉末20〜60重量%との混合物である。
【0020】
第4の態様は、酸化物換算表記でSiO2:30〜70重量%、Al2O3:5〜40重量%、CaO:3〜25重量%、B2O3:3〜50重量%の組成範囲で、総量が85重量%以上となるガラス粉末を30〜60重量%と、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、コーディエライト、スピネル、フォルステライト、アノーサイト、セルジアン、シリカおよび窒化アルミの群から選ばれた少なくとも1種類のセラミックス粉末70〜40重量%との混合物である。
【0021】
本発明の感光性有機成分とは、特定の波長を有する光を照射することにより、その光照射部分と非照射部分の現像液に対する溶解度差を利用して形状を形成するために用いられる有機組成物のことを指す。この、感光性有機成分は、本発明では側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物および光重合開始剤を含有することが好ましい。必要に応じて、バインダーポリマー、増感剤、紫外線吸収剤、分散剤、界面活性剤、有機染料、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、ゲル化防止剤などの添加剤成分を加えることができる。
【0022】
本発明における側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体を用いた感光性有機成分は、パターン露光後の現像をアルカリ水溶液で実施することができる。側鎖にカルボキシル基を有するアクリル酸系共重合体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物などのカルボキシル基含有不飽和モノマーおよびメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどのモノマーを選択し、適当なラジカル重合開始剤を用いて共重合することにより得られるが、これに限定されるものではない。不飽和基を有する他の重合性モノマーを共重合成分として加えることも可能である。
【0023】
側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体の酸価は、50〜140であることが好ましい。酸価を140以下とすることで、現像許容幅を広くすることができ、酸価を50以上とすることで、未露光部の現像液に対する溶解性が低下することがなく、従って現像液を濃くする必要がなく露光部の剥がれを防ぎ、高精細なパターンを得ることができる。側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、焼成時の熱分解温度が低いことからも好ましく用いられる。
【0024】
さらに、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体が、側鎖にエチレン性不飽和基を有することも好ましく、エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などがあげられる。エチレン性不飽和基をポリマーの側鎖に付加させる方法は、ポリマー中の活性水素含有基であるメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させる。グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、イソクロトン酸グリシジルなどがある。イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネートなどがある。
【0025】
また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05〜0.95モル当量付加させることが好ましい。活性水素含有基がメルカプト基、アミノ基、水酸基の場合にはその全量を側鎖基の導入に利用することもできるが、カルボキシル基の場合には、ポリマーの酸価が好ましい範囲に保持される範囲で付加することが好ましい。
【0026】
感光性有機成分には光反応性化合物が含有され、これらの光反応性化合物の光反応による架橋反応や重合反応によって、光照射部が現像液に不溶化することで像を形成する。光反応性化合物としては、活性な炭素−炭素二重結合を有する化合物で、官能基としてビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基などを有する単官能および多官能化合物から選んだ少なくとも1種が用いられる。光反応性化合物の選択は無機粉末の混合・分散性に影響を与えることもあるので、必要に応じて、好適な光反応性化合物を実験的に選択すれば良い。光反応性化合物は一種に限定されるものではなく複数種を混合して用いることも可能であり、無機粉末の安定分散性を保持することと共に形成されるグリーンシートの形状安定性やパターン形成性にも留意して選択することが好ましい。これに限定されるものではないが、エチレン性不飽和基を有するアミン化合物やウレタン結合を有するアクリロイルまたはメタクリロイル誘導体などを用いることが好ましい。
【0027】
不飽和基を有する光反応性化合物類には、一般的に活性光線のエネルギーを吸収する能力はないので、光反応を開始するためには、光重合開始剤を加えることが必要である。場合によっては光重合開始剤の効果を補助するために増感剤を用いることがある。このような光重合開始剤には1分子系直接開裂型、イオン対間電子移動型、水素引き抜き型、2分子複合系など機構的に異なる種類があり、それらから選択して用いる。本発明に用いる光重合開始剤は、活性ラジカル種を発生するものが好ましい。活性ラジカル種を発生させることによって開始される光重合反応は、ラジカル種の寿命が比較的短いため、重合時間は光照射開始停止に呼応しており、現像後の有機成分の重合状態に時間的変動が少ないからである。光重合開始剤や増感剤は1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、感光性有機成分に対し、好ましくは0.05〜10重量%の範囲で添加され、より好ましくは0.1〜10重量%である。この範囲内の添加量は露光部の残存率を保ちつつ良好な光感度を得ることができる。
【0028】
本発明で用いる非感光性キャリアフィルムは、前記した感光性有機物に照射する波長の光によっては現像液に対する溶解性が変化しないものである。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリフェニレンサルファイド、またポリイミドといった高分子材料を主成分とし、これを薄膜状に整形したものが好ましい。
【0029】
本発明で用いるドライフィルムレジストは、フィルム状に成形された感光性有機組成物であればよく前記した感光性有機組成物に照射する波長の近傍の光によって感光し、光の照射部と非照射部分にある現像液に対する溶解性を利用して形状を作ることができるものであることが必要である。
【0030】
本発明の感光性シート状成形物の製造法の一例を挙げる。まず感光性有機成分である側鎖にカルボキシル基を有する重合体、エチレン性不飽和基を含有する化合物および光重合開始剤に、必要に応じて溶媒や各種添加剤を混合した後、濾過し、有機ビヒクルを作製する。これに、必要に応じて前処理された無機粉末とフィラー成分からなる無機成分を添加し、ボールミルなどの混練機で均質に混合・分散して感光性セラミックス組成物のスラリーまたはペーストを作製する。このスラリーまたはペーストの粘度は無機粉末と有機成分の配合比、有機溶媒の量、可塑剤その他の添加剤の添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は1〜5Pa・sが好ましい。スラリーもしくはペーストを構成する際に用いる溶媒は、感光性有機成分を溶解し得るものであればよい。例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソブル、ブチルセルソブル、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、トルエン、トリクロロエチレン、メチルイソブチルケトン、イソフォロンなどや、これのうち1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0031】
得られたペーストをドクターブレード法、押し出し成形法などの方法により、シート状に成形するが、一つの方法は、非感光性キャリアフィルム(ポリエステル等)上に得られたペーストを厚さ0.05〜0.5mmに連続的に塗布・成形し、溶媒を乾燥除去する。その後、乾燥させたペースト上にドライフィルムレジストを密着させ、隙間のないように貼り合わせる。
【0032】
もう一つの方法は、あらかじめ非感光性キャリアフィルム上にドライフィルムレジストを密着・貼り付けしておき、ドライフィルムと面する形で、前記のペーストを厚さ0.05〜0.5mmで連続的に塗布・成形し、溶媒を乾燥除去するものである。
【0033】
上記の方法にて製造された、感光性シート状成形物は、以下のような工程を経ることで、多層基板製造に好適に用いることができる。
すなわち、
(1)感光性シート状成形物をフォトリソグラフィ工程を用いて露光、現像して形状加工する工程と
(2)非感光性キャリアフィルムを剥離する工程と
(3)ドライフィルムレジスト面側から導体ペーストを貫通した形状中に充填する工程と
(4)ドライフィルムレジストを剥離させる工程。
【0034】
本発明における、フォトリソグラフィ工程とは、感光性シート状成形物に対して形状加工を行うために、前記成形物が感光し像を形成することができる波長の光を、フォトマスクなどを介してシート状成形物に一定量照射し、その後、適当な現像液に浸漬して溶解し、必要に応じて乾燥を行う工程を指す。こうしたフォトリソグラフィ工程は特に半導体デバイス作製において非常に一般的に用いられている。露光装置の光源波長としては、365nm(i線)を使用すると本発明で使用する光反応性有機成分との光重合反応が進みやすく好適に用いられる。また、現像液として、a)弱塩基性金属塩水溶液もしくはb)水酸基を含まない炭素数が1〜6までの有機アミン化合物を使用すると、現像時のシートの膨潤を防ぎ、かつパターン形成性が高くなる。中でも、c)炭酸ナトリウム水溶液または炭酸カリウム水溶液を使用すると、容易に現像液の調製が可能であり、かつ膨潤を防ぐことができる。現像液の濃度は、0.1〜3重量%であることが望ましい。露光後の現像時のパターン再現性が高く、また適切な現像時間で現像を完了させることができるからである。
【0035】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、濃度(%)は特に断らない限り重量%である。実施例に用いた無機微粒子成分、有機成分、非感光性キャリアフィルム、ドライフィルムレジストは次の通りである。
【0036】
A.無機粉末
無機粉末:
アルミナ粉末49.8%+ガラス粉末50.2%の複合セラミックス
アルミナ粉末の特性:平均粒子径2μm、屈折率1.78(ナトリウムD線での値)
ガラス粉末の組成:Al2O3(10.8%)、SiO2(51.5%)、PbO(15.6%)、CaO(7.1%)、MgO(2.86%)、Na2O(3%)、K2O(2%)、B2O3(5.3%)(酸化物換算値)
ガラス粉末の特性:ガラス転移点565℃、熱膨張係数60.5×10-7/K、誘電率8.0(1MHZ)、平均粒子径2μm。
【0037】
B.感光性有機成分
ポリマー1:メタクリル酸40重量%、メチルメタクリレート30重量%およびスチレン30重量%からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させた重量平均分子量43,000、酸価95を有するポリマー
光反応性化合物1:ビス(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)イソプロピルアミン(GMPA)
光重合開始剤:IC−369(チバ・ガイギー社製、Irgacure-369)
溶媒:メチルエチルケトンとn−ブチルアルコールの9:1混合溶媒。
【0038】
C.非感光性キャリアフィルム
東レ(株)製ポリエステルフィルム(商品名 ”ルミラー”E60)を用いた。厚みは50μmである。
【0039】
D.ドライフィルムレジスト
デュポンMRCドライフィルム(株)製ドライフィルム(商品名 ”リストン”FX920)を用いた。レジスト部分の厚みは20μmである。
【0040】
実施例1
溶媒およびポリマーを混合し、撹拌しながら60℃に加熱し、すべてのポリマーを溶解させた。溶液を室温まで冷却し、光反応性化合物、光重合開始剤を加えて溶解させた。その溶液を真空脱泡した後、250メッシュのフィルターで濾過し、ポリマー10重量部、光反応性化合物10重量部、光重合開始剤3.5重量部の配合比である有機ビヒクルを作製した。
【0041】
上記の有機ビヒクルに、アルミナ粉末とガラス粉末を混合した上記の無機粉末をボールミルで20時間湿式混合し、ペーストとした。有機ビヒクル20重量部に対して無機粉末の量は80重量部とした。
【0042】
成形は紫外線を遮断した室内でポリエステルのキャリアフィルムとブレードとの間隔を0.1〜0.8mmとし、成形速度0.2m/分でドクターブレード法によって行った。感光性セラミックスペーストの塗布厚みは150μmとなるよう、作成した。これを温度80℃で30分間乾燥した。
【0043】
次に、ドライフィルムレジストの保護フィルムを剥離した後、手動ラミネーターを用いて上記のシート上に密着させた。この際の手動ラミネーターの運転条件は、ロール温度102℃、ロール速度0.7m/分とした。30分間、紫外線を遮断した状態で水平に放置し、その後、温度80℃で30分間乾燥させた。これにより、感光性セラミックス組成物とドライフィルムレジストが密着した感光性シート状成形物を得た。
【0044】
次に、この感光性シート状成形物を100mm角に切断した後、最外層に付着しているドライフィルムレジストの保護フィルム層を剥離した。ドライフィルム側と、ビア径30、50、70、100μm、の各径パターンが各25個あり、ビアホールピッチ500μmのクロムマスクを密着させ、25mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて、1分間パターン露光した。次に、25℃に保持した1.5重量%炭酸ナトリウム水溶液により現像し、その後、スプレーを用いてビアホールを水洗浄した。
【0045】
形成されたビア部分に、導通配線用のビアフィルペーストをスクリーン印刷機を用いて充填した。ビアフィルペーストは、純度99.999%の銀粉末(平均粒子径1.6μm)、テルピネオールを溶媒として使用したポリマー1の溶液(ポリマー分30重量%)を混合、攪拌したものを用いた。このビアフィルペースト中の銀粉末の分量は80重量%で、粘度100Pa・sであった。
【0046】
これを温度80℃で30分間、乾燥させたのち、表面に形成されているドライフィルムを剥離した。この際の剥離に伴い、感光性セラミックス組成物中に形成されているビアホール部分は平坦となった。
【0047】
次に、ビアフィルの完了した感光性シート状成形物のもう一方にあるポリエステルフィルムを剥離し、ビアホールが形成されたシート状のセラミックス組成物を得、それを6枚積層し、80℃でプレス圧力150kg/cm2にて熱圧着した。得られた多層体を空気中で、900℃の温度で30分間焼成して、多層基板を作製した。
【0048】
室温に戻った後、取り出して外観を確認したところ、最外層部分は平坦であり、各層間に割れや変形は全く見られなかった。次に、各径のビア部分の導通試験を最外層間のビアホール部分に露出しているビアフィルペースト部分間で測定した。その結果、30、50、70、100μm径の全てのビアホール部分で導通を確認することができた。
【0049】
実施例2
実施例1と同じ材料を用いるが、ドライフィルム層の両面にあるポリエステル製のカバーフィルムのうち一層を剥離し、ドライフィルムレジスト層の露出している面の上に直接、感光性セラミックス組成物を形成した。感光性セラミックス組成物の厚みは150μmとした。乾燥は80℃で1時間行った。ポリエステルフィルムを剥離し、ドライフィルムレジスト面側から実施例1と同様のフォトリソグラフィー工程を行った。
【0050】
実施例1と同様のビアフィルペーストを充填した後、ドライフィルムレジストを剥離し、得られたシート状のセラミックス組成物を6層積層し焼成した。導通試験を行ったところ、実施例1と同様に30、50、70、100μm径全てのビアホール部分で導通を確認することができた。
【0051】
実施例3
無収縮焼成用の拘束シートとして、アルミナ粉末(平均粒径3μm)にポリビニルブチラール、ジオクチルフタレート、有機溶媒など加えて、ドクターブレード法によってシート状(厚み150μm)に成形した。
【0052】
実施例1、実施例2で作製し、ビアフィル工程を経たシート状のセラミックス組成物をそれぞれ10層ずつ積層し、上下に無収縮焼成のための拘束シートを配置し、80℃でプレス圧力150kg/cm2にて熱圧着した。得られた多層体を空気中で、900℃の温度で30分間焼成して、積層体を作製した。焼成収縮率はX−Y面方向で測定した。
【0053】
拘束シートの両面にない通常焼成条件では、その焼成収縮率はX−Y各辺で22%であった。一方、拘束シートを両面に取り付け無収縮焼成したものは、X−Y各辺ともに、1%以下となり、面内で収縮が著しく低減された。
【0054】
次にそれぞれの径のビアホール部分で導通試験を行った。無収縮焼成の有無による導通試験結果を確かめるため、それぞれ同様の試料を100個ずつ作製し、断線率を算出した。その結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示したように、無収縮焼成を用いることによりさらに、断線率が低減し、良好な多層積層ができた。
【0057】
比較例1
実施例1の構成のうち、ドライフィルムレジストを使用しない状態でビアホール形成後、ビアフィルを行い、多層基板作製を行った。ビアフィル直後、表面部分にペーストのはみ出しが発生した上、シート表面よりも凸形状のふくらみが出た。そのまま乾燥を行い、積層した後、焼成を行った。
【0058】
外観上の検査から、ビア径30μm付近には凹部が発生していた。また、70μm径、100μm径部分では、層間に隙間ができており、断面観察の結果、ビアフィル工程で凸部分になっていたビアフィルペーストが周辺部分を押し上がったり、広がっていた。さらに、導通試験を行ったところ、30μm、50μmのビア部分では断線していた。
【0059】
【発明の効果】
本発明は、フォトリソグラフィーを用いてビアホールを形成するセラミックス基板を作製する際に、導通を正確に取ることができるビアフィルが可能となり、信頼性の高いセラミックス基板を得ることができる。
Claims (4)
- 非感光性キャリアフィルム、無機粉末と感光性有機成分を含有する感光性セラミックス組成物、ドライフィルムレジストの順に積層された感光性シート状成形物。
- 非感光性キャリアフィルム、ドライフィルムレジスト、無機粉末と感光性有機成分を含有する感光性セラミックス組成物の順に積層された感光性シート状成形物。
- (1)請求項1または請求項2記載の感光性シート状成形物をフォトリソグラフィ工程を用いて露光、現像して形状加工する工程と、(2)非感光性キャリアフィルムを剥離する工程と、(3)ドライフィルムレジスト面側から導体ペーストを貫通した形状中に充填する工程と、(4)ドライフィルムレジストを剥離させる工程を有するセラミックス多層基板の製造方法。
- 請求項3記載の製造方法を用いて製造されたセラミック多層基板。
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