JP4284750B2 - カード及びカードの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、例えばキャッシュカードやクレジットカード、IDカード(身分証明書)、会員証、プリペイドカード等に用いられる情報記録媒体に係り、とくに、これら情報記録媒体の使用後に廃棄される際に、より廃棄しやすくしてなるカードに関するものである。
【従来の技術】
【0002】
従来から、キャッシュカードやクレジットカード、IDカード等のカード分野においては磁気記録媒体が広く利用されており、その素材として主としてポリ塩化ビニル(PVC)樹脂や塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体が用いられており、特にポリ塩化ビニル樹脂が一般的である。このポリ塩化ビニル樹脂は物理的な機械特性や浮き文字(エンボス)部のエンボス適性などが優れており、カード素材としては申し分なく最適な素材として現在も広く用いられている。
これらカードの製造方法としては、例えば白色のPVC基材に印刷を施し、両面に透明性の高いPVCシートを積層した後、加熱プレス機で熱融着によって一体化させ、打ち抜いてカード形状にする。最後にカード面にエンボスを施してカードが完成する。
【0003】
しかしながらポリ塩化ビニル樹脂は、物性や加工性が優れる反面、使用後の廃棄において、特に焼却による処理の際に塩化水素やダイオキシンなどの間題を生じるため、ドイツ、北欧などをはじめとする各国で脱PVCの動きが活発となってきており、国内でも建材分野や産業資材分野でその動きがある。
【0004】
そこで、脱PVCには、他の樹脂を用いる考えもあり、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹洞等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が考えられているが、これらの樹脂はカード形状に加工することはできるが、カードとした場合の強度面や各種耐性面、エンボス適性等の加工性の面で塩化ビニル樹脂と同等と言えるものはない。
【0005】
塩化ビニル樹脂のカード特性に最も近い樹脂の一つとしてポリスチレン(PS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂などがある。ところが、これらの樹脂でカードを作っても機械的な強度に劣り、何よりもエンボス後にカード自体がカールし、カードとして見栄えの悪いものになり、磁気カードとしても書き込みや読み取りのエラーになる可能性がある。
【0006】
一方、ポリエチレンテレフタレート(PET)は結晶性の高い樹脂で、延伸シートは透明性に優れ、高ヤング率、高い耐熱性を有するなど優れた特徴があり、テレホンカードやオレンジカード、定期券などのプリペイドカード類に用いられる他、ビデオテープ、フロッピーディスク、レントゲン写真フィルム等のべ一スとしてほぼ独占的に用いられている。
【0007】
ところがポリエチレンテレフタレート(PET)には、これとは別に未延伸のいわゆるA−PETと呼ばれる非晶性のポリエチレンテレフタレートシートや、PET−Gと呼ばれるテレフタル酸とシクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールとの共重合体から作られる非晶性のシートがある。そして、これら非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂のシートの物性や、エンボス適性は塩化ビニル樹脂に近い物性を持っているものの、カードの製造工程で鏡面板による加熱プレス法で積層する際、樹脂が鏡面板へ貼り付くため表面に光沢のあるカードを作ることが困難であった。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような問題点に着目してなされたもので、カード用基材としてポリ塩化ビニル樹脂の代わりに、非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂基材の両面に、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂から選ばれる一つ以上の樹脂層を溶融積層することにより、従来のポリ塩化ビニル樹脂カードと同等の物性や加工適性を持ちながら、使用後焼却処理された際に塩化水素の問題やダイオキシンの問題がない、廃棄処理を考慮したカードの提供をすることを目的とする。
また、樹脂層の外層にニトロセルロース、エチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエステルから選ばれる一つ以上の第2の樹脂層を積層することにより、ラミネート加工時に鏡面板への貼り付き無い、従来のポリ塩化ビニル樹脂カードと同等の物性や加工適性を持ちながら、使用後焼却処理された際に塩化水素の問題やダイオキシンの問題がない、廃棄処理を考慮したカードの提供をすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、少なくとも1層以上の非晶性ポリエチレンテレフタレートを積層した基材の両面に、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、ポリウレタン、又はポリエステルから選択される一つ以上の樹脂層を積層し、前記樹脂層は耐摩耗性フィラーを添加されていることを特徴とするカードである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカードにおいて、前記非晶性ポリエチレンテレフタレート基材が複数積層されてなることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、少なくとも1層以上の非晶性ポリエチレンテレフタレートを積層した基材の両面に、耐摩耗性フィラーを添加した、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、ポリウレタン、又はポリエステルから選択される一つ以上の樹脂層を積層するカードの製造方法であって、前記基材及び樹脂層を、鏡面板を用いて熱ラミネートする工程を含むことを特徴とするカードの製造方法である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のカードの製造方法において、前記非晶性ポリエチレンテレフタレート基材が複数積層されてなることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の態様】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
まず、図1に本発明の第1の発明によるカード1であり、非晶性ポリエチレンテレフタレート基材2と、その両側に樹脂3を溶融積層したものである。この非晶性ポリエチレンテレフタレート基材2には必要に応じて印刷層4を設けてもよく、またカード1面に磁気テープ5を設けることもできる。
また図4は本発明の第2の発明によるカード11であり、複数層の非晶性ポリエチレンテレフタレート基材12と、その両側に樹脂層13を積層したものである。この非晶性ポリエチレンテレフタレート基材12には必要に応じて印刷層14を設けてもよく、またカード11面に磁気テープ15を設けることもできる。
【0017】
本発明に用いる非晶性ポリエチレンテレフタレート基材は結晶化度が10%以下、好ましくは5%以下の未延伸シート、または、テレフタル酸と、シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールとの共重合体からなるシートである。
【0018】
さらには、これらのポリエチレンテレフタレート樹脂に重量比で50%以下、好ましくは20%以下であれば、各種添加剤やポリマー等の物質を添加してもよい。ただし、結晶性のあるポリマーを入れるとその上の樹脂層との溶融積層が困難となるためその場合の添加は慎重にする必要がある。
【0019】
白色度を上げるためのフィラーとしては、例えば無定型フィラーでは、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、天然シリカ、カオリン、クレー、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム等が添加、混練でき、また、板状フィラーとしてはタルク、マイカ、ガラスフレーク等が添加でき、針状フィラーでは、例えば、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウム等が添加・混練できる。また、フィラー以外に混練された樹脂の特性を失わない範囲であれば、必要に応じて各種の添加剤、例えば着色防止剤0.05〜5重量部、酸化防止剤0.05〜5重量部、滑剤0.05〜5重量部、有機顔料及び無機顔料等を添加することが可能である。
【0020】
上記の樹脂の中にフィラーを混練する方法は、ドライブレンド法または溶融ブレンド法等があり、また、混練された樹脂の成形方法はTダイ押し出し、カレンダーロール成形などがあり、適宜選択される方法によりシート状の基材層や樹脂層が成形される。
【0021】
そして、基材の両面に積層する樹脂層としては、加熱ラミネート時に鏡面板に貼り付かない、ポリスチレン樹脂シート、アクリロニトリルースチレン共重合体樹脂シート、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体樹脂シート、ポリメチルメタクリレート樹脂シート等を用いることができるが、両面には各々違う樹脂層を積層しても良い。
【0022】
また、複数層の非晶性ポリエチレンテレフタレート基材は、非晶性ポリエチレンテレフタレート基材の両面に非晶性ポリエチレンテレフタレートシートを積層したもので、基材と同様に結晶化度の低い未延伸シートである。この基材が加熱ラミネート時に鏡面板に貼り付かなくするため、その上にニトロセルロース、エチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエステルから選択される一つ以上の樹脂を積層し用いるが、両面には各々違う樹脂を積層しても良い。
【0023】
積層の方法は上記と同様に溶融押し出しコート法やグラビアコード法等があるが、ここでは樹脂を適当な有機溶剤に溶解した後、グラビアコーティング法にて積層した方がより簡便である。これら樹脂の積層のタイミングとしては加熱ラミネート時に積層するのではなく、予めポリエチレンテレフタレートシートの片面にそれらの樹脂をコーティングしてあった方が望ましく、その意味ではグラビアコーティング法に限らず、シートの溶融押し出し成形の際にポリエチレンテレフタレートと共押し出ししても構わない。これらの厚みとしてはポリエチレンテレフタレートとコーティング樹脂はそれぞれ、50〜200μmと0.5〜10μmで、より好ましくは75〜125μm,1〜3μmで構成される。
【0024】
そして、コーティング樹脂中にはラミネート用の鏡面板と張り付かないことと、カード化後カードとしての耐磨耗性を持たせるために、テフロンパウダー、ポリエチレンパウダー、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪族エステルとグリセライト系ワックス、水素化ワックス、合成ケトン系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、合成動物ロウ系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、無機系フィラー及びステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸の金属塩などの耐磨耗剤を添加したもの等のフィラーを入れることが可能である。さらには、それらのカード上には必要に応じて磁気テープの貼り込みや顔写真、バーコード等の転写記録をすることも可能である。
【0025】
このような非晶性ポリエチレンテレフタレートシートと樹脂層、又は非晶性ポリエチレンテレフタレートシートを積層してなるカードを製造する方法としては加熱プレス機による溶融ラミネート方式が用いることができる。
【0026】
このラミネート方式は、印刷された非晶性ポリエチレンテレフタレート基材の両面に透明な樹脂層を積層するが、その際上述の様に両面に積層される樹脂層の種類は異なっていてもよく、磁気カードの場合は更に磁気テープを積層する。これを一回り大きい鏡面板で挟み込み、その後加熱溶融プレスによりカードを一体化する方法である。この時に用いる鏡面板は、ニッケルークロムメッキした銅板、表面を研磨したステンレス板、表面を研磨したアルミ板などを用いることができる。また、非晶性ポリエチレンテレフタレート基材への印刷は、従来の紙、プラスチックの場合と同じ方法、すなわち、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法で文字或いは絵柄を印刷することができるが、いずれの印刷の際にも90℃以上の熱をかけると、非晶性ポリエチレンテレフタレート基材が軟化、変形してしまうので乾燥温度はそれ以下の温度に管理すべきである。
【0027】
所定時間と適当な圧力で熱ラミネート後、冷却し、それからカード素材を鏡面板から剥がし、金型による打ち抜きでカード形状に打ち抜く。熱ラミネートの条件は、熱可塑性樹洞の軟化点以上融点以下で行われ、ポリスチレン樹脂シート、アクリロニトリルースチレン共重合体樹脂シート、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体樹脂シート、ポリメチルメタクリレート樹脂シートいずれの場合も100〜160℃の温度、5〜30kgf/cm2、好ましくは10〜20kgf/cm2の圧力で、5〜60分程度で行われる。この際、温度、圧力、時間の因子はそれぞれ単独の条件では無く、例えば一次で120℃、5kgf/cm2,10分間おこない、更に二次では140℃、10kgf/cm2,10分という風に、非晶性ポリエチレンテレフタレート基材と樹脂層のラミネート強度や表面の鏡面仕上がり具合い、また、熱による収縮率などから適宜決められる。ちなみに通常のキャッシュカードやクレジットカードの場合、基材と保護シートとのラミネート強度は、2kgf/cm以上必要であり、好ましくは3kgf/cm以上である。
【0028】
この時用いる鏡面板は表面粗さRa=0.05μm、光沢度600(60°)以上のもので、カードの表面に光沢を持たせるものであるが、生産性の問題から繰り返し適性のある材質が好ましい。カードの表面に光沢を持たせるという意味は、まず、意匠性の点から光沢があった方が美しく仕上がるということと、磁気テープを貼ってある場合、同時にラミネートして埋め込むが、表面性が良くないとドロップアウト等の磁気特性における障害となる可能性があるためである。更には、顔写真やバーコード等の転写記録を行うにしても表面の平滑性がないと続麗に転写できないためでもある。
【0029】
カード形状への打ち抜き方法は、押し切り型による打ち抜きや、オスメス型による打ち抜き方法などがあり、それらの型を用いて規定のカード形状に打ち抜きをおこなう。
【0030】
カード形状にされたは、エンボッサーにより浮き文字をエンボスし、その文字の上に熱転写箔によりディッピングして色付けしたり、磁気ストライプに磁気情報をエンコードしたり、場合によっては顔写真やバーコード等を転写しカードを仕上げる。
【0031】
本発明のカードにおいては、従来使用されている支持体は塩素を含んでいたため、使用後、焼却する際に塩化水素やダイオキシンが発生していたところを、支持体に塩素を含まない特定の基材を用いることにより、カード自体、焼却しやすく、しかも従来の塩化ビニル製と較べて物性や加工性が同等のカードを提供することが可能となった。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0033】
(実施例1)
ポリスチレン(電気化学工業(株)製:「デンカスチロールHI−E−4」)を溶融押し出し法により、厚み100μmになる様にT一ダイから押し出して透明なポリスチレンシートを作り、同様にポリエチレンテレフタレート(クラレ(株)製:「グラベット」)に酸化チタン10%を練り混んだものを溶融押し出し法にて550μmになるように押し出し、急冷して白色シートを得た。この白色シートにはスクリーン印刷法により絵柄を印刷し、両面を上記のポリスチレンシートで挟み込み、磁気テープを仮貼りした後、表面を平滑にしたステンレスシートで更に挟んで、15kgf/cm2の圧力で130℃、20分間熱融着させた後冷却固化させ、カード形状に打ち抜いてカード1を作製した。
【0034】
(実施例2)
ポリスチレン(デンカ(株)製:「デンカスチロールHI−E−4」)を溶融押し出し法により、厚み100μmになる様にT一ダイから押し出して透明なポリスチレンシートを作り、同様にポリエチレンテレフタレートとポリシクロヘキシレンテレフタレートとの共重合体(東レ(株)製:テレフタル酸と、シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールとの共重合体「イースターGN002」)に酸化チタン10%を練り混んだものを溶融押し出し法にて厚さ550μmになるように白色シートを得た。この白色シートにはスクリーン印刷法により絵柄を印刷し、両面をポリスチレンシートで挟み込み、磁気テープを仮貼りした後、表面を平滑にしたステンレスシートで更に挟んで、15kgf/cm2の圧力で130℃、20分間熱融着させた後冷却固化させ、カード形状に打ち抜いてカード1を作製した。
【0035】
(実施例3)
ABS樹脂(ダイセル化学工業(株)製:「セビアンV−720」)を溶融押し出し法にて厚み100μmになる様にT一ダイから押し出して透明なシートを作り、同様にポリエチレンテレフタレートとポリシクロヘキシレンテレフタレートとの共重合体(テレフタル酸と、シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールとの共重合体:東レ(株)製「イースターGN002」)に酸化チタン10%を練り混んだものを溶融押し出し法にて厚さ550μmになるように白色シートを得た。この白色シートにはスクリーン印刷法により絵柄を印刷し、両面をポリスチレンシートで挟み込み、磁気テープを仮貼りした後、表面を平滑にしたステンレスシートで更に挟んで、15kgf/cm2の圧力で130℃、20分間熱融着させた後冷却固化させ、カード形状に打ち抜いてカード1を作製した。
【0036】
実施例1,2,3のカードは通常のカード製造工程における設備をそのまま用いることができ、また、カードに要求されるエンボス適性、耐熱性、耐薬品性、磁気特性などは実使用上問題ないものであった。
【0037】
(比較例1)
厚さ100μmのポリスチレンシートの代わりに、厚さ100μmの塩化ビニルシート(筒中プラスチック工業(株)製:「サンロイドビップ」)を用いた以外は実施例1と同様カード31を作った。
【0038】
(比較例2)
厚さ550μmの白色ポリエチレンテレフタレートシートの代わりに、厚さ550μmの白色塩化ビニルシート(筒中プラスチック工業(株)製:「サンロイドビップ」)を使用した以外は実施例2と同様にカード31を作製した。
【0039】
(比較例3)
厚さ100μmのポリスチレンシートの代わりに、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートシート(東レ(株)製:「ルミラーTタイプ」)を用いた以外は実施例1と同様にカード41を作製した。
【0040】
かかる比較例1及び2のカードはカードに要求される耐熱性、耐元性、耐薬品性などは実施例1,2と同等であったが、層構成の一部に従来から使用されている塩化ビニル樹脂を用いているため焼却処理の際に塩化水素やダイオキシンが発生することがあることは何等変わらない。また、比較例3のカードはラミネート時にポリエチレンテレフタレート樹脂が鏡面板に張り付いてしまってカード作製が困難であった。
【0041】
以上のように比較例1,2のカードは基材中に塩化ビニル樹脂を含むため廃棄性に優れないという問題があり、比較例3のカードは積層ラミネート加工ができないためカードを作ることができないという問題点を有することが明らかであり、これに対して実施例1,2,3のカードでは、基材を構成する樹脂に塩化ビニルを含まず、且つ、従来の加工設備で同じように加工できるという極めて廃棄性と加工性に優れたカードといえることができる。
【0042】
次に第2の発明の実施例について詳細に説明する。
【0043】
(実施例4)
ポリエチレンテレフタレート(クラレ(株)製:「クラペット」)を溶融押し出し法にて厚さ100μmになる様にT一ダイから押し出して急冷し、透明な非晶ポリエチレンテレフタレートシートを作り、その後、下記処方(A)のポリメチルメタクリレート溶液を乾燥後の厚さが2μmになるようにコーティングした。同様にポリエチレンテレフタレート(クラレ(株)製:「クラペット」)に酸化チタン10%を練り混んだものを溶融押し出し法にて厚さ550μmになるように押し出し、急冷して白色シートを得た。この白色シートにはスクリーン印刷法により絵柄を印脚し、両面を上記のポリエチレンテレフタレートをポリメチルメタクリレート層が外層になるように挟み込み、磁気テープを仮貼りした後、表面を平滑にしたステンレスシートで更に挟んで、15kgf/cm2の圧力で130℃、20分間熱融着させた後冷却固化させ、カード形状に打ち抜いて力一ド111を作製した。
処方(A)
・ポリメチルメタクリレート樹脂:
三菱レイヨン製「ダイヤテールBR100」 15重量部
・滑剤:ステアリン酸亜鉛 0.5重量部
・溶剤:MEK/トルエン=1/1 80重量部
【0044】
(実施例5)
ポリエチレンテレフタレートとポリシクロヘキシレンテレフタレートとの共重合体(東レ(株)製:テレフタル酸と、シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールとの共重合体「イースターGN002」)を溶融押し出し法にて厚み100μmになる様にT一ダイから押し出して急冷し透明な非晶性PET−Gシートを作り、その後下記の処方(B)のポリエステル溶液を乾燥後の厚さが1.2μmになるようにコーティングした。同様にポリエチレンテレフタレートとポリシクロヘキシレンテレフタレートとの共重合体(東レ(株)製:テレフタル酸と、シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールとの共重合体「イースターGN0021」)に酸化チタン10%を練り混んだものを溶融押し出し法にて550μmになるように白色シートを得た。この白色シートにはスクリーン印刷法により絵柄を印刷し、両面を上記のPET−Gにポリエステル層が外層になるように挟み込み、磁気テープを仮貼りした後、表面を平滑にしたステンレスシートで更に挟んで、15kgf/cm2の圧力で130℃、20分間熱融着させた後冷却固化させ、カード形状に打ち抜いてカード11を作製した。
処方(B)
・ポリエステル:東レ「ケミットK588」 8重量部
・滑剤:ステアリン酸亜鉛 0.5重量部
・溶剤:MEK/トルエン/MIBK=1/1/1 85重量部
【0045】
実施例4,5のカードは通常のカード製造工程における設備をそのまま用いることができ、また、カードに要求されるエンボス適性、耐熱性、耐薬品性、磁気特性などは実使用上問題ないものであった。
【0046】
(比較例4)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートシートの代わりに、厚さ100μmの塩化ビニルシート(筒中プラスチック工業(株)製:「サンロイドビップ」)を用いた以外は実施例4と同様カード51を作製した。
【0047】
(比較例5)
厚さ550μmの白色ポリエチレンテレフタレートシートの代わりに、厚さ550μmの白色塩化ビニルシート(筒中プラスチック工業(株)製:「サンロイドビップ」)を使用した以外は実施例5と同様にカード51を作製した。
【0048】
(比較例6)
ポリメチルメタクリレートのコート層がある厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートシートの代わりに、コート層の無い厚み100μmのポリエチレンテレフタレートシートを用いた以外は実施例4と同様にカード61作製した。
【0049】
かかる比較例4及び5のカードはカードに要求される耐熱性、耐元性、耐薬品性などは実施例4、5と同様であったが、層構成の一部に従来から使用されている塩化ビニル樹脂を用いているため焼却処理の際に塩化水素やダイオキシンが発生することがあることは何等変わらない。また、比較例3のカードはラミネート時にポリエチレンテレフタレート樹脂が鏡面板に張り付いてしまってカード作製が困難であった。
【0050】
以上のように比較例4、5のカードは基材中に塩化ビニル樹脂を含むため廃棄性に優れないという問題があり、比較例6のカードは積層ラミネート加工ができないためカードを作ることができないという問題点を有している。
【0051】
これに対して実施例4、5、6のカードでは、基材を構成する樹脂に塩化ビニルを含まず、且つ、従来の加工設備で同じように加工できるという極めて廃棄性と加工性に優れたカードといえることができる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のカードは、カード用基材としてポリ塩化ビニル樹脂の代わりに、非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂基材の両面にポリスチレン樹脂またはABS樹脂またはポリメチルメタアクリレート樹脂を用いて溶融積層することにより、従来のポリ塩化ビニル樹脂カードと同等の物性や加工適性を持ちながら、使用後焼却処理された際に塩化水素の発生問題やダイオキシンの発生問題がない、廃棄処理を考慮したカードの提供をすることが可能となった。またニトロセルロース、エチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエステルからなる樹脂層を積層することにより、ラミネート加工時に鏡面板への貼り付きがなくなる。
【0053】
また、本発明のカードに使用できる熱可塑性の樹脂は、物性や加工性を低下させない程度に白色フィラー以外の添加剤やその他の熱可塑性樹脂を混合することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明の実施例に示すカード断面構成を説明する断面図である。
【図2】第1の発明の比較例1,2に示すカード断面構成を説明する断面図である。
【図3】第1の発明の比較例3に示すカード断面構成を説明する断面図である。
【図4】第2の発明の実施例に示すカード断面構成を説明する断面図である。
【図5】第2の発明の比較例4,5に示すカード断面構成を説明する断面図である。
【図6】第1の発明の比較例6に示すカード断面構成を説明する断面図である。
【符号の説明】
1、11 カード
2、12 非晶性ポリエチレンテレフタレート基材
3、13 樹脂層
4、14 印刷層
5、15 磁気テープ
31、41、51、61 比較例のカード
32、42、52、62 基材
33、43、53、63 樹脂層
34、44、54、64 印刷層
35、45、55、65 磁気テープ
Claims (4)
- 少なくとも1層以上の非晶性ポリエチレンテレフタレートを積層した基材の両面に、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、ポリウレタン、又はポリエステルから選択される一つ以上の樹脂層を積層し、
前記樹脂層は耐摩耗性フィラーを添加されていることを特徴とするカード。 - 前記非晶性ポリエチレンテレフタレート基材が複数積層されてなることを特徴とする請求項1に記載のカード。
- 少なくとも1層以上の非晶性ポリエチレンテレフタレートを積層した基材の両面に、耐摩耗性フィラーを添加した、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、ポリウレタン、又はポリエステルから選択される一つ以上の樹脂層を積層するカードの製造方法であって、
前記基材及び樹脂層を、鏡面板を用いて熱ラミネートする工程を含むことを特徴とするカードの製造方法。 - 前記非晶性ポリエチレンテレフタレート基材が複数積層されてなることを特徴とする請求項3に記載のカードの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11881199A JP4284750B2 (ja) | 1999-04-26 | 1999-04-26 | カード及びカードの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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