JP4244460B2 - カード - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばキャッシュカードやクレジットカード、IDカード(身分証明書)、会員証、プリペイドカード等に用いられる情報記録媒体に関するもので、さらに詳しくは、高温中で使用もしくは保管する可能性のある車載用途やコンピュータ等の家電製品内等で高温に晒される場合でもカード形状の変形や材質が変性せず、更には、これらカードが使用済みとなった場合に廃棄しやすいようにしたカードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、キャッシュカード、クレジットカード及びIDカード等の分野において、磁気記録媒体形式のカードが広く利用されており、その素材としては主にポリ塩化ビニル(PVC)樹脂や塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体が用いられており、特にポリ塩化ビニル樹脂が一般的である。ポリ塩化ビニル樹脂は物理的な機械特性や文字部のエンボス適性などが優れており、カード素材としては申し分なく最適な素材として現在も広く用いられている。
【0003】
しかし、近年、カードの利用範囲は、上記キャッシュカードやクレジットカード、IDカード等の分野に留まらず、多様な分野に広がり、その機能も磁気記録媒体以外に接触式のICモジュールをカード基材に埋め込んだICカード、磁気ストライプ付きICカードや、アンテナとICモジュールを組み込んだアンテナとICモジュールを組み込んだ非接触ICカード、磁気ストライプ付き非接触ICカード、さらに可逆性感熱記録材料を情報記録層として組み込んだ可逆性感熱記録カード、又はそれらを任意に組み合わせたカード、或いは全てを持ち合わせたカードなど種々ある。また、アプリケーションとしては、電子財布や定期券、テレホンカード、免許証、車載カードなどがあげられ、このようなカードに用いる素材には、従来のカード素材以上に屈曲性、スクラッチ強度、引っ張り強度などの強度や、保存特性、耐熱性、耐薬品性等の耐性を含めた高い信頼性が求められている。
更に、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)は、使用後の廃棄において、特に焼却時の塩化水素ガスを発生させ焼却炉を傷めて寿命を縮める等の問題を有している。また、ダイオキシンとの関連性は明確にされてはいないものの、この点でドイツや北欧などをはじめとする各国で脱PVCの動きが活発になってきており、国内でも建材分野や産業資材分野でその流れにある。
【0004】
一般的な磁気カードの製造方法は、白色の塩化ビニル(PVC)基材にオフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等公知の印刷方法で印刷を施し、その両面に透明性の高いPVCシートを積層した後、磁気テープを転写し、加熱プレス機で熱融着を行い、PVC基材積層品と磁気テープを一体化させ、所定サイズの金型で打ち抜いてカード形状にする。熱転写タイプの磁気テープ(磁気ストライプ)は転写後にはカード表面より浮き出て段差を生じているが、加熱プレス機での熱融着によって埋め込まれ、カード表面と面一になるように作製される。
【0005】
ちなみに、カード表面の状態は、JISX63014.2.6項で以下のように規定されている。
「磁気ストライプの周囲それぞれから、6.35mmの領域には磁気ストライプに対する情報の正常な書き込み又は磁気ストライプに記録された情報の正常な読み取りを損なう恐れのある表面不連続部を設けないこと。更に、II型においてはカードの下端から24mm以上の範囲で0.05mm以上のとつ部を設けないこと。・・・」
【0006】
磁気カードにおける磁気テープの役割は、個人の持っている固有データを記録し、使用時に固有データの読み取りや書き込みをすることである。従って、この磁気テープがカード表面と面一になっていないと、カード携帯時や、リーダ/ライターによる繰り返し使用で、磁気テープのエッジ部が破損、または欠損し、磁気テープの持つ役割をしない使用不可能な磁気カードとなってしまう恐れがある。このため、磁気テープ加工時にカード表面と磁気テープ面が面一となる物性を備えた材料であることが条件である。
【0007】
しかしながら、現在までカード素材として一般的に用いられているポリ塩化ビニル樹脂の物性の欠点として耐熱性の低いことがあげられる。一般的にポリ塩化ビニル樹脂は約60℃で軟化し、変形するため、高温域でのアプリケーション、例えば家電用途、車載用途などには適さないと考えられる。更に、廃棄時の問題や脱PVC活動の流れから、ポリ塩化ビニル樹脂以外のカード素材が求められる。
【0008】
そこで、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂等のハロゲンを含まない熱可塑性樹脂をカード素材として利用する考えがある。これらの樹脂を単体で用いて、ポリ塩化ビニル樹脂同様にカード化することは可能であるが、カードとしての物性、とくにJIS規格におけるカードの規定される規定値において、ポリ塩化ビニル樹脂に劣るため、規格を満たす物性を有するカード素材が必要となってくる。また、耐熱性を考慮したプラスチック材料、例えばポリカーボネートをカード素材に用いると、カードにエンボス加工すると、エンボス部分の周りもエンボス部分の変形に引っ張られて変形し、カードがカールしてしまう問題を有していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような問題点に着目してなされたもので、カード用基材としてポリ塩化ビニル樹脂の代わりに、非晶性のポリエチレンテレフタレート樹脂基材の両面に、ポリエステルとポリカーボネートからなる高耐熱性を有する耐熱シート層を積層、45℃立て掛け変形試験時に90℃以上において変形を示さない耐熱性の高い、エンボス加工によるカードにカールを生じない、さらに使用後焼却された際に塩化水素の問題やダイオキシンの問題がなく、廃棄処理を考慮したカードを提案するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、非晶性ポリエステルシート層の両面に、構成分子の主鎖にエステル結合を含む高耐熱性を有する耐熱シート層を積層してなり、45℃立て掛け変形試験時に90℃以上において変形を示さない高耐熱性を有することを特徴とするカードである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載のカードであって、非晶性ポリエステルシート層と前記耐熱シート層を積層した基材に、磁気記録層やICモジュール、可逆性感熱記録層の少なくとも一つからなる情報記録手段を有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1に記載のカードであって、非晶性ポリエステルシート層は、テレフタル酸と、シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールとの共重合体、又はその共重合体とポリカーボネートとのポリマーアロイであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1に記載のカードであって、前記非晶性ポリエステルシート層は、ガラス転移温度が80度以上であることを特徴とするものである。
とくに、ガラス転移温度が80度以下の場合には、カードの耐熱性が低下するため、好ましくない。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1に記載のカードであって、耐熱シート層を構成するポリエステルは、ポリエステルエラストマーであることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1に記載のカードであって、耐熱シート層を構成するポリエステルは、ポリアリレートであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1に記載のカードであって、非晶性ポリエステルシート及び前記耐熱シート層は各々押し出し法によりシート化したことを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明のカードの構成の一例を概略断面図を示す。
本発明における非晶性ポリエステル樹脂(1)は、ポリエチレンテレフタレート、又はポリエチレンテレフタレートとポリカードネートとのポリマーアロイである。
ポリエチレンテレフタレートはエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールをテレフタル酸と共重合させて製造する。また、エチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの配合比を変えることで、結晶性及びガラス転移温度を制御することが可能になる。
本発明における耐熱シート層(2、3)は、構成分子の主鎖にエステル結合を含む高耐熱性を有するポリエステルシートであり、熱可塑性エラストマーであるポリエステルエラストマーとポリアリレートが挙げられる。前者のポリエステルエラストマーは、弾性回復限界があり、材料自体の変形率は7〜25%が限界で、それ以上の変形は永久歪みが生じるが、材料強度が大きいため、物品としては大きな弾性変形を発現させることができる。すなわち、カード形状とした場合に、エンボス加工を施すと、エンボス部分は永久歪みとして残るものの、その周囲は弾性変形として元のカード形状に戻るため、エンボス後に発生しやすいカールが生じることがない。
【0018】
本発明における非晶性ポリエステルシート及び耐熱シート層は各々押し出し法によりシート化することができる。
【0019】
次に、本発明におけるカード素材を用いたカード製造方法には、加熱プレス機による溶融ラミネート方式がある。溶融ラミネート方式は、印刷された基材の両面に透明な保護シートを積層するが、その際両面の保護シートの種類は異なっていてもよい。溶融ラミネート方式は一回り大きい鏡面板で挟み込み、その後加熱溶融プレスによりカード素材を一体化する方法である。
【0020】
この時に用いる鏡面板は、ニッケル−クロムメッキした銅板、表面を研磨したステンレス板、表面を研磨したアルミ板などを用いることができる。また、基材への印刷は、紙やプラスチックフィルムの場合と同じ方法、すなわち、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の公知の印刷法で文字或いは絵柄を印刷することができる。
【0021】
溶融ラミネート後、カード素材を鏡面板から剥がし、片刃またはオスーメスの金型による打ち抜きでカード形状に打ち抜き、カード基材とする。
このカード基材には、例えば磁気記録層を設けることもでき、カード基材の片面あるいは両面に、従来から用いられている熱転写タイプの磁気テープを転写したり、或いは、カード基材に直接磁気記録層を印刷する方法が用いられる。
通常、カード形状になった後は、エンボッサーにより浮き文字をエンボスし、その文字の上に熱転写箔によりティッピングして色付けしたり、磁気記録層に磁気情報をエンコードしたり、場合によっては顔写真やバーコード等を転写しカードを仕上げる。そして、文字、絵柄印刷層の摩耗等の耐性を向上させる目的で保護層を設けることもできる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明の実施例により、本発明を具体的に説明する。
〈実施例1〉
厚み540μmの非晶性ポリエステルである白色PETGシート(5)(三菱樹脂(株)製、PETG)に、オフセット印刷法により、絵柄印刷層(10)を膜厚1μmで設け、更に磁気テープ(8)を転写した、ポリエステルエラストマーシートとポリカーボネートシート(帝人化成(株)製、パンライト)からなる厚み100μmの透明耐熱シート層(6)と、裏面に文字(9)を印刷した同様のシート(7)を両面に重ねた後、表面を平滑にしたステンレス板で挟み込み、120℃で20分間圧着熱融着させて冷却固化させた後、カード形状に打ち抜いて図2に示すような断面構造の実施例1のカードを作製した。
【0023】
〈比較例1〉
厚み100μmの透明PCシート(帝人化成(株)製、パンライト)の代わりに厚み100μmの透明PVCシート(三菱樹脂(株)製、ビニホイル)を用いた以外は実施例1と同様である比較例1のカードを作製した。
【0024】
〈実施例2〉
スクリーン印刷法により絵柄印刷層(14)を膜厚3μmで設けた、厚み500μmの非晶性ポリエステルシート(11)(三菱樹脂(株)製 PETG)と磁気テープ(15)を転写した厚み120μmのポリアリレートシート(商品名 Uポリマー)とポリカーボネートシート(東洋プラスチック精工(株) PC)からなる耐熱シート層(12)と裏面に文字(16)を印刷した同様のシート(13)を両面に重ねた後、表面を平滑にしたステンレス板で挟み込み、130℃で20分間圧着熱融着させて冷却固化させた後カード形状に打ち抜いて図3に示すような断面構造のカードを作製した。
【0025】
〈比較例2〉
厚み500μmのPETG/PCのアロイシート(三菱樹脂(株)製)(11)の代わりに、ABSシート(旭化成工業(株)製、スタイラック)を使用した以外は実施例2と同様である比較例2のカードを作製した。
【0026】
〈比較例3〉
実施例1の耐熱シート層(6)をポリカーボネートのみとし、その他の構成は同様とした。
【0027】
かかる比較例1,及び2のカードはカードに要求される耐光性、耐薬品性などは実施例1、2と同様であったが、100℃のオーブン中では実施例1、2のものは何ら変化はないが、比較例1、2のものは変形が激しく、磁気カードとしては使用に耐えうるものでなかった。また、比較例3では、ポリカーボネートの物性が現れ、エンボス加工を行ったところ、エンボス部分の周りも引っ張られ変形を生じた結果、カードがカールしていた。
【0028】
以上のように比較例1、2のカードは基材自体に耐熱性を有していないため、高温となる室内等で使用する場合は変形が著しく使用に耐えないという問題点を有している。更に、使用済み後、廃棄時に焼却処理した場合、塩化ビニル樹脂を用いているため、塩化水素ガスが発生し炉を痛めるという廃棄性に優れないという問題を有していた。また比較例3では上記問題は生じないが、エンボス部分の周囲に変形を生じ、カードにカールを生じる問題を有していた。
これに対して実施例1、2、の磁気カードは、耐熱性に優れており、例えば真夏の車内にどんな形で置かれても変形はせず、また、カードにエンボス加工をしてもエンボス部分以外にエンボス加工の引っ張りによる変形を生じることなく、カールが発生しない。さらに塩化ビニル樹脂を用いていないため、用済み後焼却したとしても極めて廃棄性に優れたカードといえることができる。
【0029】
なお、本実施例では、磁気テープを使用した磁気記録媒体としたが、これに代え、またこれに加えて接触式のICカード、非接触式のICカード、可逆性感熱記録媒体としてもよい。
【0030】
【発明の効果】
以上、本発明のカードは、高耐熱性を有することにより高温環境でカード形状が変形することなく、使用することができ、またエンボス加工によるカードにカールを生じることがなく、現在使用されるカードを代替することができるものである。さらに使用済みとなり焼却された際に塩化水素の問題やダイオキシンの問題がない、廃棄処理を考慮したカードとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカードの構成を説明する概略断面図である。
【図2】本発明の実施例1を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施例2を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1、5、11・・・・非晶性ポリエステルシート
2、3、6、7、12、13・・・・耐熱シート層
8、15・・・・磁気記録層
9、16・・・・文字印刷層
10、14・・・・絵柄印刷層

Claims (7)

  1. 非晶性ポリエステルシート層の両面に、ポリエステルとポリカーボネートからなる高耐熱性を有する耐熱シート層を積層してなり、45℃立て掛け変形試験時に90℃以上において変形を示さない高耐熱性を有することを特徴とするカード。
  2. 前記非晶性ポリエステルシート層と前記耐熱シート層を積層した基材に、磁気記録層やICモジュール、可逆性感熱記録層の少なくとも一つからなる情報記録手段を有することを特徴とする請求項1記載のカード。
  3. 前記非晶性ポリエステルシート層は、テレフタル酸と、シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールとの共重合体、又はその共重合体とポリカーボネートとのポリマーアロイであることを特徴とする請求項1記載のカード。
  4. 前記非晶性ポリエステルシート層は、ガラス転移温度が80度以上であることを特徴とする請求項1記載のカード。
  5. 前記耐熱シート層を構成するポリエステルは、ポリエステルエラストマーであることを特徴とする請求項1記載のカード。
  6. 前記耐熱シート層を構成するポリエステルは、ポリアリレートであることを特徴とする請求項1記載のカード
  7. 前記非晶性ポリエステルシート及び前記耐熱シート層は各々押し出し法によりシート化したことを特徴とする請求項1記載のカード。
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