JP4282434B2 - 酸化セリウム、研摩材用酸化セリウムおよびそれらの製造方法 - Google Patents

酸化セリウム、研摩材用酸化セリウムおよびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、酸化セリウム、研摩材用酸化セリウムおよびそれらの製造方法に関する。
酸化セリウムは、研摩材、触媒、紫外線吸収剤、ガラス消色材、セラミックス用など多様な用途で用いられるものであり、溶解状態や粉体の状態など種々の態様で使用されている。そして、酸化セリウムを粉体の状態で使用する場合など、溶解して使用する場合以外の場合にあっては、粒子径をはじめとする粉体物性が使用結果に大きな影響を及ぼす。例えば、粉体の酸化セリウム中に粗大粒子が含まれている場合、この酸化セリウムを研摩材として用いることは、被研摩面における傷発生の原因になるので好ましくない。被研摩面について要求される表面精度は、LCD用やHD用のガラス基板や半導体基板の研摩の分野をはじめとする各分野において、より高くなっており、許容される粗大粒子の含有量等の条件もより厳しくなっている。
従来の酸化セリウムの製造方法として、例えば、次のような方法がある。まず、粒子径の中央値(体積粒子径分布の中央値)が0.3μm〜5.0μm程度である炭酸セリウムを用意し、これを600℃〜900℃で焙焼して酸化セリウム粒子を生成し、得られた酸化セリウム粒子をその後必要に応じて粉砕して研摩材用酸化セリウムを製造する方法である(特許文献1参照)。ところで、粒子径の中央値が0.3μm〜5.0μm程度の炭酸セリウムは、一般的には機械的粉砕によって製造される。ところが、機械的粉砕方法では、粉砕に偏りが生じやすいからであると考えられるが、粗大粒子が残りやすい。原料である炭酸セリウム粒子中に粗大粒子が含まれていると、本方法を用いた場合、その後の焙焼によって得られる酸化セリウム中にも粗大酸化セリウム粒子が含まれることとなる。
別の製造方法として、不活性ガス雰囲気下または大気下の水性媒体中で、セリウム(III)塩とアルカリ性物質を3〜30のモル比(OH/Ce3+)で反応させて水酸化セリウム(III)の懸濁液を生成し、その後、直ちに、生成した懸濁液を大気圧下で10℃〜95℃に保ちつつ当該懸濁液に酸素または酸素含有ガスを吹き込む方法によって、平均二次粒子径が0.005μm〜5μmである結晶性酸化セリウム粒子を製造する方法がある(特許文献2参照)。ところが、本製造方法を用いると、強固に凝集した部分とよく分散した部分とが混在した結晶性酸化セリウム粒子が製造されやすい。強固に凝集した部分が存在すると、その後に機械的粉砕等を行って平均粒径を小さくしたとしても、粗大粒子が残存しやすい。なお、強固に凝集した部分が存在する理由であるが、コロイド状の水酸化セリウム(III)を用いると結晶性酸化セリウム粒子製造工程における反応の制御が困難になってしまうからであると考えられる。
また、セリウム(IV)塩の水溶液を酸性媒体中で加水分解して酸化セリウム水和物を得た後、得られた沈殿を濾過し、有機溶媒で洗浄し、場合によっては乾燥し、次いで300℃〜600℃の温度で焼成することにより、少なくとも85±5m/gのBET法比表面積を有する酸化セリウムを製造する方法がある(特許文献3参照)。この方法で得られた酸化セリウムは、BET法比表面積は大きいものの、粒度分布が幅広く粗大粒子が含まれていることが多い。
また、原料として、セリウム系希土類炭酸塩またはセリウム系希土類炭酸塩とセリウム系希土類酸化物が混在するものを用意し、これを水溶液中に浸漬した状態で加熱することによって粉砕(浸漬加熱粉砕)し、得られた粉砕品を焙焼して研摩材用酸化セリウムを製造する方法がある(特許文献4参照)。浸漬加熱粉砕を用いると粉砕対象物を均一に粉砕できるが、その後の焙焼工程において粗大粒子が生成され、それが酸化セリウム粒子中に混在することがある。
さらに、他の製造方法として、炭酸セリウムを相対湿度80%以上の環境下で60℃〜100℃に加熱(加湿加熱処理)してモノオキシ炭酸セリウムを生成し、これを300℃〜650℃で焙焼して酸化第二セリウムを焼成する方法がある(特許文献5参照)。この製造方法では、加湿加熱粉砕のときにモノオキシ炭酸セリウムへの変化が不均一になりやすく、300℃〜650℃で焙焼した後に得られる粒子の大きさが不均一になりやすい。粗大粒子が生成されたからであると考えられる。このような酸化セリウムは触媒や紫外線吸収剤として好ましくない。また、研摩材として使用する場合には、300℃〜650℃での焙焼後、再度800℃〜1000℃程度で焙焼する。ところが、再度800℃〜1000℃程度で焙焼すると傷発生の原因の一つである粗大粒子が生成されやすく、得られた酸化セリウムは研摩材としては好ましくない。
また、硝酸セリウム水溶液と重炭酸アンモニウム(炭酸水素アンモニウム)水溶液を混合して、炭酸セリウム塩沈殿物を調整した後、100℃〜150℃において炭酸セリウム塩沈殿物を水熱処理し、次いで、得られた塩基性炭酸塩および/またはモノオキシ炭酸塩を300℃以上で焼成することによって、400℃〜700℃における酸素吸収・放出能が100μmol/g以上である酸化セリウムを製造する方法がある(特許文献6参照)。この製造方法では、平均粒子径が非常に小さい酸化セリウムが得られるが、粒子径のばらつきは、上記浸漬加熱粉砕に比べて大きく、好ましくない。また、水熱処理を行うため、オートクレーブ等の圧力容器が必要でコストがかかる。
特開平11−181404号公報 特開平10−95614号公報 特開平6−72711号公報 特開2002−348563号公報 特開平7−81932号公報 特開平5−105428号公報
このように、従来の酸化セリウムの製造方法では、酸化セリウム製造中に粗大粒子が生成される。粗大粒子が含まれる酸化セリウムを使用すると、研摩材として用いた場合にあっては、先にも説明したように研摩傷が発生し、また、触媒として用いた場合は転化率が低下し、紫外線吸収剤として用いた場合は紫外線吸収能が低下し、セラミックスの原料として用いた場合は均一焼結性が低いセラミックスが得られるなど、各種用途において性能が低下する。
このような問題点に鑑み、本発明は、粗大粒子の含有率が極めて低い酸化セリウムおよびこれを容易に製造できる製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、粗大粒子の含有率が極めて低く、当該粗大粒子に起因する研摩傷の発生が最小限に防止された研摩材用酸化セリウムおよびこれを容易に製造できる製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、このような課題を解決するものであり、酸化セリウムの製造方法において、全希土類酸化物換算量(以下、TREOという)中の酸化セリウム(CeO)の割合(CeO/TREO)が90質量%以上である炭酸セリウムを水溶液中に浸漬させて加熱する浸漬加熱処理(浸漬加熱粉砕)、または前記炭酸セリウムを相対湿度80%以上の雰囲気下で加熱する加湿加熱粉砕(加湿加熱粉砕)を行ってモノオキシ炭酸セリウムを得る湿式加熱処理(湿式加熱粉砕)工程と、モノオキシ炭酸セリウムを130℃〜250℃の温度で乾燥して酸化セリウムを得る乾燥工程とを有することを特徴とする酸化セリウムの製造方法である。
このように、本発明に係る酸化セリウムの製造方法は炭酸セリウムを経て酸化セリウムを製造する方法である。この製造方法では、まず、TREO中の酸化セリウムの割合(CeO/TREO)が90質量%以上の炭酸セリウムを用意する。炭酸セリウムのTREO中の酸化セリウムの割合が90質量%未満であると湿式加熱処理(湿式加熱粉砕)後の乾燥工程において酸化セリウムが得られにくい。なお、乾燥工程における乾燥温度が比較的低い場合でも乾燥工程において酸化物をより得やすいという点では、上記割合(CeO/TREO)が95質量%以上の炭酸セリウムがより好ましい。ここでいう炭酸セリウムは、純粋な炭酸セリウムのみに限られるのではなく、不可避的あるいはその他の理由で、一部にセリウムのモノオキシ炭酸塩、塩基性炭酸塩、酸化物あるいは水酸化物などを含有するものであってもよい。ただし、湿式加熱処理工程によってより均一に粉砕できるという点では、炭酸セリウムとしては、セリウムの酸化物や水酸化物が含まれていないものがより好ましい。炭酸セリウムを製造するときに、例えば温度が高いと一部がモノオキシ炭酸塩になりやすく、pHが比較的高いと一部が塩基性炭酸塩になりやすい。また、全希土類酸化物換算量(TREO)とは、対象となっている物質に含まれる全ての希土類元素を希土類酸化物として存在させた場合の、当該希土類酸化物の総質量のことである。
炭酸セリウムの製造方法は特に限定されるものではない。例えば、希土類塩の溶液と、二酸化炭素をはじめとする沈殿を促すものとを混合して炭酸セリウムの沈殿を生成し、必要に応じて洗浄・濾過等の処理を行うことによって炭酸セリウムを製造する方法を挙げることができる。この製造方法で用いる希土類塩は、TREO中の酸化セリウムの割合(CeO/TREO)が90質量%以上のものが好ましく、95質量%以上のものがより好ましい。希土類塩は、例えば、希土類の塩化物、硝酸塩、過塩素酸塩あるいは硫酸塩等であるが、溶解度、酸化セリウムの製造段階での取扱性やコスト等を考慮すると、希土類塩化物が最も好ましい。沈殿を促すものとしては、二酸化炭素の他、炭酸根含有化合物などを用いることも可能である。二酸化炭素を用いる場合、その形態は気体、液体、固体のいずれでもよいが、取扱いが容易であるという点で気体が好ましい。他方、炭酸根含有化合物とは、アンモニウム、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩または尿素などである。アンモニウム、アルカリ金属の炭酸塩または炭酸水素塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウムあるいは炭酸水素アンモニウムなどを挙げることができる。沈殿を促すものとして、このような炭酸根含有化合物を用いる場合、水溶液の状態、固体の状態、水溶液状態と固体状態のものが混在するスラリーの状態で使用することが可能であるが、均一な沈殿を得るためには、水溶液の状態にして炭酸根含有化合物を用いるのが好ましい。そして、沈殿終了時の溶液のpHは4.5〜8.0が好ましい。pHが下限値未満では、炭酸セリウムの収率が著しく低下するからであり、上限値を超えると、水酸化物が多く生成されるからである。これらの点を考慮すると、沈殿終了時のpHは、5.0〜6.5がより好ましい。また、沈殿を促すものとして二酸化炭素を用いる場合に、二酸化炭素と共にアンモニアや水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質を併用すると、上記pHをより容易に適正範囲の値に調整することができ、炭酸セリウムの収率が向上する。
そして、用意した炭酸セリウムに、湿式加熱処理を行ってモノオキシ炭酸セリウムを生成する。湿式加熱処理としては、前記浸漬加熱処理(浸漬加熱粉砕)と加湿加熱処理(加湿加熱粉砕)がある。浸漬加熱処理は、炭酸セリウムを水溶液中に浸漬させた状態で加熱する処理であり、加湿加熱処理は、炭酸セリウムを相対湿度80%以上の雰囲気下で加熱する処理である。これらのような湿式加熱処理を施すと、炭酸セリウム中の炭酸根の一部が分解して二酸化炭素が放出されてモノオキシ炭酸塩が生成される。湿式加熱処理に供する炭酸セリウムの粒の大きさは、限定されるものではないが、平均粒径が1000μm以下になるまで粗粉砕されたものが好ましい。したがって、平均粒径が1000μmを超える場合は、湿式加熱処理に供用する前に平均粒径が1000μm以下になるまで粗粉砕しておくことが好ましい。粗粉砕としては機械的粉砕を用いることができる。なお、炭酸セリウムの浸漬や加湿に用いられる水溶液としては、水(純水、工業用水、水道水等)の他、水にアルコールやアセトンなどの水溶性の有機溶媒が混合された溶液が含まれる。
炭酸セリウムに湿式加熱処理を行ってモノオキシ炭酸セリウムを生成すると、微粒のモノオキシ炭酸セリウムが生成される。炭酸セリウムをその周囲に水分がある状態で加熱すると、炭酸セリウム中の炭酸根の一部が分解して二酸化炭素が放出されることになるが、このとき微粒化が進むと考えられる。したがって、本発明に係る酸化セリウムの製造方法を用いれば、アトライター、ボールミル、ビーズミルなどによる機械的粉砕を行わなくても、微粒化された(粉砕された)モノオキシ炭酸セリウムを得ることができる。しかも、湿式加熱処理は、炭酸セリウム全体を均等かつ確実に処理できる方法であるので、これを用いると、処理対象物全体を均等に微粒化しつつモノオキシ炭酸セリウムを得ることができる。全体が均等に微粒化されるということは、粗大粒子の残存が防止され、しかも過剰に粉砕された微粒の生成が防止されるということである。つまり、湿式加熱処理を用いると、粒径が揃っており、粗大粒子の含有率が極めて低いモノオキシ炭酸セリウムが得られる。
なお、湿式加熱処理における加熱温度は、特に限定されるものでない。加熱温度は、端的に言えば常温より高ければよく、例えば加熱処理温度としては比較的低いと考えられる50℃といった温度であっても、長時間の処理が必要になるものの、モノオキシ炭酸セリウム粒子を生成できる。ただし、加熱温度が比較的低いと、モノオキシ炭酸塩に変化する速度が比較的遅いことから微粒化が不十分になりやすい。その一方で、加熱温度を高くするには相応の設備が必要であり、そのような設備を用いることで作業性が低下したり製造コストが高くなったりする。例えば、浸漬加熱処理において加熱温度を100℃超の温度にするには、オートクレーブ等の圧力容器のような設備が必要である。このようなことから、湿式加熱処理における加熱温度は、60℃〜100℃が好ましく、80℃〜100℃がより好ましい。加熱時間は、モノオキシ炭酸塩の微粒化の進み具合に応じて定まるものであるが、0.5時間〜72時間が好ましい。加熱温度が十分に高ければ加熱時間が短くても微粒化は進むが、加熱時間が下限値未満では微粒化が不十分な状態で終わるからである。他方、加熱時間を長くすると加熱温度が比較的低くてもモノオキシ炭酸セリウムを生成できるが、加熱時間として上記上限時間を超えるほど長時間を要するようであると、モノオキシ炭酸塩に変化する速度が遅く微粒化が不十分になりやすい。これらの点を考慮すると、湿式加熱処理における加熱時間は、2時間〜48時間がより好ましい。
また、浸漬加熱処理において、炭酸セリウムとこれを浸漬させる水溶液との混合比率(重量比率)は、特に限定されるものではないが、水溶液の量は炭酸セリウム(スラリーの場合はその固形成分)の0.5倍〜10倍が好ましい。水溶液の量が0.5倍より少ないと炭酸セリウムを均等に加熱することが難しく、他方、10倍より多くしても加熱の均一性は向上せず、加熱時間やエネルギーを浪費することになるからである。炭酸セリウムを水溶液中に浸漬させて加熱する態様としては、加熱前の水溶液中に炭酸セリウムを浸漬させた後これらを加熱する態様、加熱された水溶液中に炭酸セリウムを浸漬させる態様、加熱した水溶液中に炭酸セリウムを浸漬させた後さらに加熱する態様などがある。また、浸漬加熱処理中に撹拌を行うと、加熱がより均等に行われるので好ましい。
モノオキシ炭酸セリウムを得ると、続いて、得られたモノオキシ炭酸セリウムを130℃〜250℃の温度で乾燥して酸化セリウムを得る。炭酸セリウムやしゅう酸セリウムなどを酸化させて酸化セリウムを製造する場合は、これらの焙焼対象物を500℃以上という比較的高い温度で焙焼する必要があるが、本発明では、このような原料を高温に晒さなくてもよい。つまり、モノオキシ炭酸セリウムを130℃〜250℃という極めて低い温度範囲で乾燥させることにより粗大粒子の少ない酸化セリウムを製造することができる。
このように、乾燥工程(モノオキシ炭酸セリウムを酸化させる工程)における加熱温度が従来の焙焼温度に比べて著しく低い温度であると、加熱中に粒子が凝集して粗大粒子が生成されるということが防止される。したがって、本発明によれば、乾燥工程終了後に、粗大粒子濃度が極めて低い酸化セリウムを得ることができる。
粗大粒子の含有率が極めて低い酸化セリウムは、研摩材(すなわちセリウム系研摩材)用途では研摩傷の発生を防止できるという点で優れ、触媒用途では転化率が向上するという点で優れ、紫外線吸収剤用途では紫外線吸収能が向上するという点で優れ、セラミックス原料用途では均一焼結性が向上するという点で優れるなど、各種用途において性能が向上するという点で優れている。
なお、乾燥工程における乾燥温度は上記温度範囲内が好ましいが、これは、乾燥温度が下限値未満ではモノオキシ炭酸セリウムを酸化セリウムにすることが難しいからである。なお、乾燥温度が下限値未満の場合、得られた酸化セリウムは、例えば研摩材用としては、研摩速度が極端に低く好ましくない。他方、上記温度範囲の上限値を超えると、一部に粗大粒子が生成されやすくなる。これらの点を考慮すると、乾燥温度は140℃〜200℃がより好ましい。
乾燥時間は、2時間〜120時間が好ましい。下限時間未満の短時間では、乾燥温度を比較的高温に設定したとしても、酸化セリウムへの変化が不十分になりやすいからである。なお、乾燥時間が下限値未満の場合、酸化セリウムが得られたとしても、その酸化セリウムは、例えば研摩材用としては、研摩速度が極端に低く好ましくない。他方、乾燥温度が低い場合に比較的長時間乾燥させる必要が生ずる場合があるが、上限時間を超える長時間に亘って乾燥を行う必要があるとすると、その乾燥工程ではモノオキシ炭酸セリウムを酸化させることができず、酸化セリウムを得ることができない。これらの点を考慮すると、乾燥時間は、5時間〜96時間がより好ましい。
乾燥工程によって得られたものの強熱減量に着目すると、乾燥工程としては、当該強熱減量が3質量%〜15質量%である酸化セリウムが得られる工程が好ましく、12質量%以下の酸化セリウムが得られる工程がより好ましい。具体的には、上述した乾燥温度や乾燥時間を調節して、上記のような値の強熱減量を有する酸化セリウムが得られるようにする。強熱減量が上限値を超えるものは、酸化が十分に進んでおらず、研摩材、触媒、紫外線吸収剤またはセラミックス原料等の用途で用いられる酸化セリウムとしては適当でない。例えば研摩材用としては、研摩速度が極端に低く好ましくない。また、強熱減量値が下限値未満の酸化セリウムは粗大粒子を多く含んでいる。したがって、この酸化セリウムは、例えば研摩材用としては、研摩傷が多く発生しやすく好ましくない。なお、下限値未満の強熱減量を有する酸化セリウムが得られる場合としては、例えば乾燥工程における乾燥温度が上記温度範囲を超えるような場合を挙げることができる。
そして、乾燥工程後さらに機械的粉砕工程や焙焼工程を実施する場合であっても、乾燥工程によって得られたものの強熱減量としては3質量%〜15質量%が好ましく、12質量%以下がより好ましい。強熱減量が上限値を超えていると、乾燥工程後に機械的粉砕工程を行った場合、研摩材、触媒、紫外線吸収剤またはセラミックス原料等の用途として適当でない酸化セリウムしか得られないからである。得られた酸化セリウムは、例えば研摩材用としては、研摩速度が極端に低く好ましくない。また、強熱減量が上限値を超えていると、乾燥工程後に焙焼工程を行った場合、粗大粒子を多く含む酸化セリウムが生成される。これは、乾燥工程によって得られたものであるが、炭酸根や水分を多く含有して完全に酸化セリウムになっておらず、これを300℃以上で焙焼したためであると考えられる。他方、強熱減量が下限値未満であると、乾燥工程後に機械的粉砕工程や焙焼工程を行った場合、やはり粗大粒子を含む酸化セリウムが生成される。なお、粗大粒子の含有率は、乾燥工程後に焙焼工程を行った場合により高くなる。
乾燥工程の前工程で乾燥対象物であるモノオキシ炭酸セリウムを水溶液中の沈殿物として得た場合は、乾燥工程前に、モノオキシ炭酸セリウムを溶液から濾別しておくことが好ましい。例えば、湿式加熱処理の方法として浸漬加熱処理を用いる場合が該当する。また、乾燥対象物であるモノオキシ炭酸セリウムが過剰な水分を含んでいる場合(例えば、水分量が70質量%を超えるような場合)にあっては、乾燥工程前に、予め、モノオキシ炭酸セリウムから過剰な水分を除去しておくと、乾燥工程においてモノオキシ炭酸セリウムをより迅速かつ確実に乾燥でき、より迅速かつ確実にしかも低コストで酸化セリウムを得ることができる。
そして、前記湿式加熱工程としては、加湿加熱処理よりも、浸漬加熱処理の方がより好ましい。浸漬加熱処理を用いると、加湿加熱処理を用いる場合と比べて、炭酸セリウム全体をより均等かつ確実に加熱でき、全体がより均等に微粒化されたモノオキシ炭酸セリウムが得られるからである。炭酸セリウムを水溶液中に浸漬させて加熱する浸漬加熱処理では、湿式加熱処理において重要な役割を果たす水分が炭酸セリウムの周囲に確実にしかも大量に存在しており、炭酸セリウム全体により確実かつ均一に熱が伝わるからであると考えられる。
乾燥工程を行う場合は、湿式加熱処理工程で得られたモノオキシ炭酸セリウムを、機械的粉砕を行うことなく乾燥工程に供することが好ましい。乾燥工程についての検討では、当初、できるだけ微粒の酸化セリウム粉末を製造するためには、できるだけ微粒のモノオキシ炭酸セリウムを乾燥工程に供給することが好ましいと考えた。そこで、湿式加熱処理後、乾燥工程前に、湿式加熱処理で得られたモノオキシ炭酸セリウムに機械的粉砕を施し、粉砕後のモノオキシ炭酸セリウムを乾燥工程に供した。ところが、特に乾燥温度が130℃〜170℃と比較的低い場合には、乾燥してもモノオキシ炭酸セリウムから酸化セリウムに変化しにくく、酸化セリウムが得られにくくなってしまうことが解った。したがって、湿式加熱処理後に乾燥工程を行って酸化セリウム粉末を製造する場合は、湿式加熱処理工程で得られたモノオキシ炭酸セリウムを、機械的粉砕を行うことなく、そのまま乾燥工程に供することが好ましい。乾燥工程における乾燥温度が130℃〜170℃である場合は、特に、湿式加熱処理後乾燥工程前に機械的粉砕などを行わない方が好ましい。ただし、湿式加熱処理が浸漬加熱処理である場合には、浸漬加熱処理の後に濾別またはデカンテーションされたモノオキシ炭酸セリウムを、機械的粉砕を行うことなく、乾燥工程に供することが好ましい。
他方、前記乾燥工程の後であれば、アトライター、ボールミル、ビーズミルなどを用いて機械的粉砕を行ってもよい。機械的粉砕の方式としては、湿式粉砕および乾式粉砕のいずれの方式を用いてもよい。乾燥工程後に、得られた酸化セリウムを機械的に粉砕すると粗大粒子の含有量が粉砕により低減される。従って得られた酸化セリウムは、研摩材用途では研摩傷の発生をより確実に防止できるという点で優れ、触媒用途ではより高い転化率が得られ、紫外線吸収剤用途ではより高い紫外線吸収能が得られ、セラミックス原料用途ではより高い均一焼結性が得られるなど、各種用途においてより高い性能を示す。
ただし、さらに検討したところ、乾燥工程によって得られた酸化セリウムや乾燥工程後機械的粉砕を行って得られた酸化セリウムはそのままで酸化セリウムの各種用途に好適なものであるが、乾燥工程後焙焼工程を行う場合にあっても、その焙焼温度によっては、粗大粒子の発生を抑制しつつ、各種用途に適した物性を有する酸化セリウムが得られることが解った。粗大粒子の発生が抑制されれば各種用途への適正が向上する。そこで、焙焼工程の条件について詳細に検討した。その結果、乾燥工程の後に、得られた乾燥品を300℃〜600℃の温度で加熱する焙焼工程を行ってもよいことが解った。600℃を超える温度で焙焼すると粗大粒子が生成されやすいが、300℃〜600℃の温度であれば粗大粒子の発生を抑制できる。このようにして得られた酸化セリウムは、焙焼を行わなかった場合と比べると、粗大粒子の含有率は若干高いが、各種用途に適するものであることが解った。そして、この酸化セリウムは、例えば研摩材用としては、研摩速度が高いという点できわめて優れており、触媒用としては、使用中に比表面積が低下しにくく触媒性能が長期間維持されるという点で極めて優れている。なお、130℃〜250℃での乾燥工程を行わずに直接300℃〜600℃での焙焼工程を行うことも考えられるが、粗大粒子が生成されやすいため好ましくない。
ここまでに、乾燥工程後に行われることがある工程として、機械的粉砕工程および焙焼工程について説明した。機械的粉砕工程と焙焼工程の両方を乾燥工程後に行う場合にあっては、機械的粉砕工程を焙焼工程の前後の少なくとも一方で行う。なお、焙焼工程前の機械的粉砕としては、粉砕後乾燥する必要がない乾式粉砕が好ましい。また、焙焼工程後の機械的粉砕工程としては、粉末状の酸化セリウムを得る場合にあっては乾式粉砕が好ましく、スラリー状の酸化セリウムを得るためには湿式粉砕が好ましい。
以上説明した酸化セリウムの製造方法は、研摩材、触媒、紫外線吸収剤およびセラミックス用の原料などとして用いられる酸化セリウムの製造方法として好適である。特に、研摩材、なかでもガラス研摩用の研摩材、とりわけハードディスク、LCDまたはフォトマスク用ガラス基板を研摩するための研摩材として用いられる酸化セリウムの製造方法として好適である。
以上、酸化セリウムの製造方法について説明した。このような製造方法を用いると、上述したように、粗大粒子の含有率が極めて低い酸化セリウムが製造される。このような酸化セリウムは、研摩材用途では研摩傷が発生しにくく、触媒用途では転化率が高く、紫外線吸収剤用途では紫外線吸収能が高く、セラミックス原料用途では均一焼結性に優れ、各種用途に好適である。そして、強熱減量が2.0質量%〜15質量%の酸化セリウムがより好ましい。強熱減量が上記下限値未満の酸化セリウムは、研摩材用途では研摩傷が発生しやすく、触媒としては転化率が低く、紫外線吸収剤としては紫外線吸収能が低く、セラミックス原料用途では高温にならないと焼結が起こりにいという特性を示すものであり、各種用途に好ましくない。他方、強熱減量が上記上限値を超える酸化セリウムは、研摩材用途では研摩速度が極端に低く、触媒用途では使用中に転化率が急激に低下し、紫外線吸収剤用途では使用中に紫外線吸収能が急激に低下し、セラミックス原料用途では焼結により大幅に収縮するという特性を示すものであり、各種用途に好ましくない。これらの点を考慮すると、酸化セリウムとしては、強熱減量が3.0質量%〜12質量%のものがさらに好ましい。なお、先に、乾燥工程によって得られる酸化セリウムとしては、強熱減量が3質量%〜15質量%のものが好ましいということを説明した。したがって、乾燥工程後に例えば焙焼工程を行う場合、焙焼によって得られる焙焼品の強熱減量が2.0質量%未満にならないように、より好ましくは3.0質量%未満にならないように、焙焼温度や焙焼時間等の焙焼条件を設定する。
さらに、酸化セリウムとしては、BET法比表面積(以下、単に比表面積と記載する)が25m/g〜200m/gであり、ストークス径が2μm以上の粒子の含有率が1000ppm以下であるものが好ましい。
比表面積が上記下限値未満の酸化セリウムは、研摩材用途では研摩傷が発生しやすく、触媒としては転化率が低く、紫外線吸収剤としては紫外線吸収能が低く、セラミックス原料用途では高温にならないと焼結が起こりにいという特性を示すものであり、各種用途に好ましくない。他方、比表面積が上記上限値を超える酸化セリウムは、研摩材用途では研摩速度が極端に低く、触媒用途では使用中に転化率が急激に低下し、紫外線吸収剤用途では使用中に紫外線吸収能が急激に低下し、セラミックス原料用途では焼結により大幅に収縮するという特性を示すものであり、各種用途に好ましくない。これらの点を考慮すると、酸化セリウムとしては、BET法比表面積が50m/g〜150m/gであるものがより好ましい。
また、ストークス径が2μm以上の粗大粒子の含有率が1000ppmを超える酸化セリウムは、研摩材用途では研摩傷が発生しやすく、触媒用途では転化率が低く、紫外線吸収剤用途では紫外線吸収能が低く、セラミックス原料用途では高い温度にならないと焼結が起こりにくいなど各種用途に適していない。これらの点を考慮すると、酸化セリウムとしては、ストークス径が2μm以上の粒子の含有率が500ppm以下のものがより好ましく、100ppm以下のものがさらに好ましく、10ppm以下のものが最も好ましい。なお、酸化セリウムについてレーザー回折・散乱法粒子径分布測定装置で最大粒径を測定した結果、最大粒径は2μm以下であるという結果が得られたとしても、ストークスの法則を利用してストークス径が2μm以上の粗大粒子を分離しその質量を測定するという方法を用いると、ストークス径が2μm以上の粗大粒子が検出されることがある。したがって、ストークスの法則を利用する方法は検出力および信頼性が高いという特徴を有する。
そして、酸化セリウムとしては、レーザー回折・散乱法粒子径分布測定法によって測定された平均粒子径(D50)が0.05μm〜1.0μmであり、最大粒子径(Dmax)が0.2μm〜3.0μmであるものがより好ましい。
上記平均粒径(D50)または最大粒子径(Dmax)が上記下限値未満の酸化セリウムは、研摩材用途では研摩速度が極端に低く、触媒用途では使用中に転化率が急激に低下し、紫外線吸収剤用途では使用中に紫外線吸収能が急激に低下し、セラミックス原料用途では焼結により大幅に収縮するという特性を示すものであり、各種用途に好ましくない。他方、平均粒径または最大粒子径が上記上限値を超える酸化セリウムは、研摩材用途では研摩傷が発生しやすく、触媒としては転化率が低く、紫外線吸収剤としては紫外線吸収能が低く、セラミックス原料用途では高温にならないと焼結が起こりにいという特性を示すものであり、各種用途に好ましくない。これらの点を考慮すると、酸化セリウムとしては、平均粒径(D50)が0.1μm〜0.8μmであり、最大粒子径(Dmax)が0.4μm〜2.0μmであるものがより好ましい。
さらに、酸化セリウムとしては、X線源としてCu−Kα線またはCu−Kα線を用いたX線回折法によって所定の回折角(2θ)の位置に出現する立方晶酸化セリウムの最大ピークの半値幅が0.15°〜1.0°であるものがより好ましい。なお、上記所定の回折角(2θ)とは28.6°付近である。上記ピークの半値幅が上記下限値未満の酸化セリウムは、研摩材用途では研摩傷が発生しやすく、触媒としては転化率が低く、紫外線吸収剤としては紫外線吸収能が低く、セラミックス原料用途では高温にならないと焼結が起こりにいという特性を示すものであり、各種用途に好ましくない。他方、上記ピークの半値幅が上記上限値を超える酸化セリウムは、研摩材用途では研摩速度が極端に低く、触媒用途では使用中に転化率が急激に低下し、紫外線吸収剤用途では使用中に紫外線吸収能が急激に低下し、セラミックス原料用途では焼結により大幅に収縮するという特性を示すものであり、各種用途に好ましくない。これらの点を考慮すると、上記半値幅が0.2°〜0.7°の酸化セリウムがより好ましい。
なお、ここでいうピーク半値幅とは、JIS K 0131−1996「X線回折分析通則」の図6半値幅(β1/2)のことである。また、半値幅の単位は、同JISの「12.結晶子の大きさと不均一ひずみの測定」においては「rad」であるが、ここでは「°」で表示した。
以上のように、本発明に係る酸化セリウムの製造方法を用いると、粗大粒子の含有率が極めて低い酸化セリウムが製造される。粗大粒子の含有率が低い酸化セリウムは、研摩材、触媒、紫外線吸収剤およびセラミックスの原料として好適であり、これらの中でも、特に研摩材、なかでもガラス研摩用の研摩材、とりわけハードディスク、LCDまたはフォトマスク用ガラス基板を研摩するための研摩材として優れている。
以下、本発明に係る酸化セリウムの製造方法の好適な実施形態を説明する。
原料として中国産の炭酸セリウムを3種用意した。第1の炭酸セリウムの組成は、全希土類酸化物換算量(TREO)が45質量%、TREO中の酸化セリウムの割合(CeO/TREO)が98質量%であった。第2の炭酸セリウムの組成は、TREOが45質量%、CeO/TREOが91質量%であった。第3の炭酸セリウムの組成は、TREOが44質量%、CeO/TREOが83質量%であった。これらの炭酸セリウムは、概略的には、次のようにして製造されたものと推定される。まず、中国複雑鉱精鉱を化学処理することで希土類元素以外の成分が除去された希土類塩化物水溶液を得た後、これを溶媒抽出にて分離精製してセリウム(Ce)以外の希土類元素の大部分が除去された希土類塩化物溶液を得る。この希土類塩化物溶液と炭酸水素アンモニウム水溶液とを炭酸水素アンモニウムが若干過剰になるように混合し、濾過・水洗して炭酸セリウムを製造するという方法である。そして、溶媒抽出における分離精製の程度を変えることでTREO中に占める酸化セリウムの割合を変えたと考えられる。
第1実施形態
本実施形態の各実施例および比較例では、次に説明するような手順で、酸化セリウムなどのセリウム化合物粉末および当該粉末を用いたスラリー研摩材を製造した。なお、本実施形態の各実施例および比較例は、乾燥工程後の焙焼工程を行わなかったものである。
実施例1:用意した炭酸セリウム(第1の炭酸セリウム)50kgと純水100kgとを混合し撹拌してスラリーを調製した。その後、撹拌を継続しつつ、当該スラリーを加熱した(浸漬加熱処理を行った)。当該浸漬加熱処理における加熱温度は90℃であり、90℃に保持した時間は8時間であった。浸漬加熱処理後、スラリーを静置して放冷し、沈殿したモノオキシ炭酸セリウムを濾別した。ここでは濾過方法として真空濾過を用いた。そして、濾別したモノオキシ炭酸セリウムを乾燥機で乾燥し(乾燥工程)、乾燥後アトマイザーによる乾式粉砕を行ってセリウム化合物粉末(粉末研摩材)を得た。なお、表1に示されるように、この粉末は酸化セリウムであった。乾燥工程における乾燥温度は140℃であり、乾燥時間は48時間であった。
そして、得られた酸化セリウム粉末の一部(TREOが8kg相当量)と純水20Lとを混合し撹拌してスラリーを調製し、このスラリーをアトライター(粉砕媒体はφ4mmのジルコニアボール)で24時間湿式粉砕してスラリー研摩材を得た。
実施例2〜4および比較例1,2:これらの実施例および比較例は、乾燥工程における乾燥温度が実施例1とは異なる。それぞれの実施例および比較例における乾燥温度は表1のとおりである。これら以外の条件については、実施例1と同じであるので、説明を省略する。以上のような条件でセリウム化合物粉末およびスラリー研摩材を製造した。
実施例5および比較例3:これらの実施例および比較例は、出発原料である炭酸セリウムの組成が実施例2とは異なる。各例で用いられた炭酸セリウムの組成は表1のとおりである。これら以外の条件は実施例2と同じであった。
実施例6:この実施例では、実施例2と異なり、湿式加熱処理の方法として、いわゆる加湿加熱処理を用いた。加湿加熱処理では、まず、処理に用いる乾燥機内を90℃に昇温させ、乾燥機内への水の噴霧を行った。このような状態の乾燥機内に、炭酸セリウム(第1の炭酸セリウム)が入れられたPTFE製のバットを装入した。なお、この実施例では、5kgの炭酸セリウムが入れられたバットを10個装入した。バット装入後、乾燥機内の状態を温度が90℃、相対湿度が100%になるように調節し、この状態を8時間維持した。湿式加熱処理後の工程は実施例2と同じであった。
比較例4:この比較例は、湿式加熱処理(具体的には、浸漬加熱処理)の加熱温度および加熱時間が実施例2とは異なる。この比較例における加熱温度および加熱時間は表1のとおりである。これ以外の条件は実施例2と同じであった。
比較例5:この比較例では、湿式加熱処理後、乾燥工程前に湿式粉砕を行った。湿式粉砕は、湿式加熱処理によって得られたモノオキシ炭酸セリウムのスラリーをアトライター(粉砕媒体はφ4mmのジルコニアボール)で24時間粉砕するという工程であった。湿式粉砕後、スラリーを静置して放冷し、沈殿したモノオキシ炭酸セリウムを濾別した。濾別工程以降の工程は実施例2と同じであった。
実施例7:この実施例は、浸漬加熱処理前に、用意した炭酸セリウムに湿式粉砕を行ったことが実施例2とは異なる。なお、当該湿式粉砕は、炭酸セリウムと純水とを混合・撹拌して調製したスラリーをアトライター(粉砕媒体はφ4mmのジルコニアボール)で24時間粉砕するという工程であった。これ以外の条件は実施例2と同じであった。
比較例6:この比較例は、モノオキシ炭酸セリウムを濾別した後の工程が、実施例2とは異なる。この比較例では、濾別したモノオキシ炭酸セリウムの一部(TREOが8kg相当量)と純水15Lとを混合・撹拌してスラリーを調製し、このスラリーをアトライター(粉砕媒体はφ4mmのジルコニアボール)で24時間湿式粉砕してスラリー状の研摩材を得た。なお、本比較例では、乾燥工程がないことからも解るように、セリウム化合物粉末を製造していない。
比較例7:この比較例では、湿式加熱処理に代えて湿式粉砕を行った。まず、用意した炭酸セリウム(第1の炭酸セリウム)50kgと純水100kgとを混合し、撹拌してスラリーを調製した。その後、調製した炭酸セリウムのスラリーをアトライター(粉砕媒体はφ4mmのジルコニアボール)で24時間粉砕した。湿式粉砕後、スラリーを濾過して炭酸セリウムを濾別した。濾別工程以降の工程は実施例2と同じであった。
比較例8:この比較例は、先に用意したいずれの炭酸セリウムをも用いない例である。まず、20%アンモニア水188kgを用意して反応容器に入れた。そして、当該アンモニア水の液温を30℃に保持しつつ、アンモニア水に窒素ガスを吹き込みながら塩化セリウム溶液を添加して水酸化セリウム(III)の懸濁液を得た。なお、塩化セリウム溶液は、TREO濃度が120g/L(リットル)、CeO/TREOが98質量%であった。この塩化セリウム溶液を1L/分の割合で188L添加した。また、窒素ガスの吹き込み量は2.8mN/hであり、塩化セリウムを添加し終えるまで吹き込み続けた。次に、得られた水酸化セリウム(III)の懸濁液を80℃まで昇温させて、当該水酸化セリウム(III)の懸濁液に空気を5.6mN/hの割合で12時間吹き込んで酸化反応させ、酸化セリウム(IV)とした。その後、溶液を静置して放冷し、沈殿した酸化セリウムを真空濾過法によって濾過・水洗して酸化セリウムのケーキを得た。そして、このケーキを乾燥させて酸化セリウムを得た。なお、乾燥工程における乾燥温度は、170℃であり、乾燥時間は48時間であった。その後、乾燥により得られた酸化セリウムをロールクラッシャにて粉砕してセリウム化合物粉末を製造した。そして、得られた酸化セリウム粉末の一部を用い、実施例1と同様の条件で、スラリー研摩材を得た。
比較例9:この比較例では、セリウム化合物粉末を製造せずに、スラリー研摩材を製造した。本比較例9と、第1実施形態の比較例8とを比較すると、スタートから濾別によって酸化セリウムのケーキを得る工程までは同じであった。しかし、本比較例では、得られたケーキを乾燥させずに湿式粉砕してスラリー研摩材を得た。湿式粉砕は、ケーキ(TREOが8kg相当量)と純水15Lとを混合・撹拌してスラリーを調製し、このスラリーをアトライター(粉砕媒体はφ4mmのジルコニアボール)で24時間湿式粉砕するというものであった。
上記各実施例および各比較例で得られたセリウム化合物粉末およびスラリー研摩材について、強熱減量(質量%)、BET法比表面積(m/g)、平均粒径(D50)、最大粒径(Dmax)、X線回折を測定した。また、各実施例および比較例で得られたセリウム化合物粉末を研摩材として用いると共にスラリー研摩材を用いて研摩試験を行い、研摩値(研摩速度)および研摩傷を評価した。各値の測定方法、研摩試験方法、各種研摩特性の評価方法について次に説明する。なお、各測定値および研摩試験の結果を後掲の表1に示す。
強熱減量の測定
JIS K 0067-1992「化学製品の減量及び残分試験方法」の「4.2 強熱減量試験」に準拠して強熱減量を測定した。なお、強熱温度は、測定対象物が酸化セリウム粉末等のセリウム化合物であることを考慮して、1000℃とした。
BET法比表面積(BET)の測定
JIS R 1626-1996(ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法)の「6.2 流動法 の(3.5)一点法」に準拠して測定を行った。その際、キャリアガスであるヘリウムと、吸着質ガスである窒素の混合ガスを使用した。なお、スラリー研摩材についての測定では、当該スラリーを十分に乾燥(105℃に加熱)させることにより得られた乾燥品についてBET法比表面積を測定した。
平均粒径(D 50 )および最大粒径(Dmax)の測定
レーザー回折・散乱法粒子径分布測定装置((株)堀場製作所製:LA−920)を使用して粒度分布を測定することにより、平均粒径(D50:小粒径側からの累積質量50質量%における粒径)および最大粒径(Dmax:小粒径側からの累積質量100質量%における粒径)を求めた。
粗大粒子(ストークス径が2μm以上の粒子)の含有率の測定
まず、測定用の容器に、粉末状の測定対象物を200g入れると共に、0.1%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を容器の上部標線まで入れて十分に混合する。次に、容器を静置し、指定時間静置・沈降させる。指定時間経過後、上部標線から下部標線の間のスラリーを抜き出す。スラリーを抜出し終えると、また新たな0.1%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を容器の上部標線まで注ぎ足して十分に混合し、容器を指定時間、静置・沈降させた後、上部標線から下部標線の間のスラリーを抜き出す。このように、一連の操作(具体的には、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液の注液、静置・沈降、スラリーの抜き出しからなる一連の操作)を繰り返した(本実施形態では更に6回(都合8回)繰り返した)後、最終的に、容器の下部標線以下に残留した粒子を105℃にて十分に乾燥する。このようにして得られた乾燥残留粒子の質量A(g)を精密天秤にて測定した。そして、ストークス径が2μm以上の粗大粒子の含有率S(ppm)を、算出式(S=(A/200)×1000000)を用いて算出した。指定時間(静置・沈降時間)は、上部標線(スラリー上面)の位置にあるストークス径が2μmの粒子が下部標線まで沈降するのに要する時間であり、上部標線と下部標線間の距離をストークスの式から算出される沈降速度で割ることにより算出される。上記一連の操作を1回だけしか行わないとすると、下部標線以下の部分にストークス径が2μm以下の粒子が多く混入してしまうが、多数回繰り返すと混入量が少なくなる。なお、測定対象物がスラリー研摩材の場合にあっては、BET法比表面積測定で乾燥品を得るときに、スラリー質量に対する乾燥品の質量の割合を測定しておき、この割合から、乾燥品200gに相当するスラリー量を分取して試料として用いる。
X線回折測定
X線回折装置(マックサイエンス(株)製、MXP18)を用いて測定を行った。本測定では、銅(Cu)ターゲットを使用しており、Cu−Kα線を照射して得られたCu−Kα線による回折X線パターンを測定した。なお、その他の測定条件は、管電圧40kV、管電流150mA、測定範囲2θ=5°〜80°、サンプリング幅0.02°、走査速度4°/minであった。次に、X線回折測定結果とICDDカードに記載のX線回折データとを比較して、測定対象物の同定を行った。主な同定物質としては、例えば立方晶酸化セリウム(O)、モノオキシ炭酸セリウム(M)、または炭酸セリウム(C)などを挙げることができる。そして、立方晶酸化セリウムと同定された場合は、28.6°付近の立方晶酸化セリウムの最大ピークの半値幅を求めた。なお、測定対象がスラリー研摩材の場合にあっては、これを十分に乾燥(105℃に加熱)させることにより得られる乾燥品を試料とした。
研摩試験
研摩機として、研摩試験機(HSP−2I型、台東精機(株)製)を用意した。この研摩試験機は、スラリー状の研摩材を研摩対象面に供給しながら、当該研摩対象面を研摩パッドで研摩するものである。したがって、スラリー研摩材については、これをそのまま(20L)試験に供した。また、セリウム化合物粉末を研摩材として用いる場合は、当該粉末と純水とを混合してTREO100g/Lのスラリー状の研摩材を20L調製した。そして、本研摩試験では、スラリー状の研摩材を5リットル/分の割合で供給することとし、研摩材を循環使用した。なお、研摩対象物は65mmφの平面パネル用ガラスとした。また、研摩パッドはポリウレタン製のものを使用した。研摩面に対する研摩パッドの圧力は9.8kPa(100g/cm2)とし、研摩試験機の回転速度は100rpmに設定し、30分間研摩した。
研摩値(研摩速度)の評価
研摩前後のガラス重量を測定して研摩によるガラス重量の減少量を求め、この値に基づき研摩値を求めた。本研摩試験では、この研摩値を用いて研摩速度を評価した。なお、ここでは、後述の第2実施形態の比較例11によって得られた試料を用いて研摩した場合の研摩値を基準(100)とした。
研摩傷の評価
研摩により得られた被研摩面について、純水で洗浄し、無塵状態で乾燥させた後、傷評価を行った。傷評価は、30万ルクスのハロゲンランプを光源として用いる反射法でガラス表面を観察し、大きな傷および微細な傷の数を点数化し、100点を満点として減点評価する方式で行った。この傷評価では、ハードディスク用あるいはLCD用のガラス基板の仕上げ研摩で要求される研摩精度を判断基準とした。具体的には表1および表2中、「◎」は、98点以上(HD用・LCD用ガラス基板の仕上げ研摩に非常に好適)であることを、「○」は、98点未満95点以上(HD用・LCD用ガラス基板の仕上げ研摩に好適)であることを、「△」は、95点未満90点以上(HD用・LCD用ガラス基板の仕上げ研摩に使用可能)であることを、そして「×」は、90点未満(HD用・LCD用ガラス基板の仕上げ研摩に使用不可)であることを示す。
Figure 0004282434
表1に示されるように、比較例1や比較例3では酸化セリウムは得られなかった。そして、比較例2では酸化セリウムが得られたが粗大粒子の含有率が高かった。他方、実施例1〜4では酸化セリウムが得られ、粗大粒子の含有率は低かった(いずれも1000ppm以下)。また、表1(研摩特性)に示されるように、比較例1の研摩材は、研摩値が極めて小さく、ほとんど研摩力を有していなかった。比較例2の研摩材は、研摩値は大きく、優れた研摩力を有していたが、研摩傷が発生しやすかった。他方、実施例1〜4の研摩材は、いずれも優れた研摩特性を有していた。この結果、粗大粒子の含有率が低い酸化セリウムは優れた特性を有していることが解った。そして、酸化セリウムの製造過程では、乾燥工程における乾燥温度は、130℃〜250℃の範囲が好ましいことが解った。ただし、実施例1〜4のうち、実施例1〜3の方が実施例4よりも粗大粒子の含有率が低かった(いずれも500ppm以下)。この結果、乾燥工程における乾燥温度は、140℃〜200℃の範囲がより好ましいことが解った。
実施例2,5および比較例3を比べると、比較例3では酸化セリウムは得られなかった。これに対し、実施例2,5では粗大粒子の含有率が低い酸化セリウムが得られた。また、実施例2,5の研摩材は優れた研摩特性を有するものであったが、比較例3の研摩材は研摩特性が悪かった。この結果、出発原料である炭酸セリウムとしては、全希土類酸化物換算量中の酸化セリウムの割合(CeO/TREO)が90質量%以上のものが好ましいことが解った。
実施例2,6および比較例4を比べると、比較例4では酸化セリウムは得られなかった。これに対し、実施例2,6では、粗大粒子の含有率が低い酸化セリウムが得られた。また、実施例2,6の研摩材は優れた研摩特性を有するものであったが、比較例4の研摩材は研摩特性が悪かった。この結果、湿式加熱処理工程における加熱温度は60℃以上が好ましく、オートクレーブ等の圧力容器が不要であり簡単に行うことができるという点で100℃以下が好ましいことが解った。ただし、両実施例のうちでも、実施例2の酸化セリウムの方が実施例6よりもより粗大粒子の含有率が低かった。この結果、湿式加熱処理の方法としては、加湿加熱処理よりも浸漬加熱処理のほうがより好ましいことが解った。
実施例2と比較例5,6を比べると、比較例5,6では酸化セリウムは得られず、また比較例5,6の研摩特性が悪かった。比較例5は湿式加熱処理(浸漬加熱処理)後、乾燥工程前に、湿式機械的粉砕を行う例であり、比較例6は湿式加熱処理工程に代えて、乾燥工程前に、湿式の機械的粉砕を行う例である。これらに対し、実施例1では、粗大粒子の含有率が低い酸化セリウムが得られ、研摩特性も優れていた。この結果、乾燥工程前に湿式加熱処理工程を行う必要があり、しかも湿式加熱処理後、乾燥工程前に、湿式粉砕を行ってはならず、湿式加熱処理工程で得られたモノオキシ炭酸セリウムを、そのまま、乾燥工程に供する必要があることが解った。なお、実施例7は、先に説明したように、浸漬加熱処理前に、用意した炭酸セリウムに機械的粉砕(湿式粉砕)を行った点で実施例2と異なる。そして、結果としては、浸漬加熱処理前に機械的粉砕(湿式粉砕)を行った方が得られる酸化セリウムの粗大粒子の含有率が低くなることが解った。
なお、本実施形態では、各実施例や比較例で得られた酸化セリウム粉末などのセリウム化合物粉末を研摩材として用いる場合は、当該粉末と純水とを混合し撹拌したものをスラリー状の研摩材として用いている。また、表1には「スラリー研摩材」という項目があるが、本実施形態でいう「スラリー研摩材」とは、実施例1のところで説明したように、各実施例や比較例で得られた酸化セリウム等の粉末と純水を混合し撹拌してスラリーを調製した後、このスラリーをアトライター(粉砕媒体はφ4mmのジルコニアボール)で24時間湿式粉砕して得られるものである。そして、表1に示されるように、スラリー研摩材の方が同等以上の優れた研摩特性を有している。つまり、アトライターによる湿式粉砕などの機械的粉砕は、乾燥工程前に行う工程としては好ましくないが、乾燥工程後に行う工程としては好ましい工程であることが解った。
実施例2と比較例8,9を比べると、比較例8,9で得られた酸化セリウムは粗大粒子の含有率が高く、研摩特性が悪かった。比較例8,9は、従来の製造方法の例であり、塩化セリウム溶液から水酸化セリウム(III)のケーキを生成し空気酸化して酸化セリウムを製造するものである。この結果、実施例2の製造方法の方がより優れていることが解った。
そして、表1に示される研摩特性を参照すると、酸化セリウムとしては、BET法比表面積が25m/g〜200m/gであり、ストークス径が2μm以上の粒子の含有率が1000ppm以下であるものは優れた研摩特性を備えていることが解った。そして、レーザー回折・散乱法粒子径分布測定法によって測定された平均粒子径(D50)が0.05μm〜1.0μmであり、最大粒子径(Dmax)が0.2μm〜3.0μmであるものは優れた研摩特性を備えていることが解った。また、X線回折測定によって解る立方晶酸化セリウムの最大ピークの半値幅が0.15°〜1.0°であるものが好ましいことが解った。
第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。
本実施形態においても、第1実施形態と同様にセリウム化合物粉末とスラリー研摩材を製造した。本実施形態の実施例11〜17および比較例11〜15,17,18は、第1実施形態の実施例1〜7および比較例1〜5,7,8の乾燥工程後、アトマイザーで乾式の機械的粉砕を行ったものに焙焼工程を行ったものである。また、本実施形態の比較例16は、湿式加熱処理品を濾過してケーキを得るまでは第1実施形態の比較例6と同じ条件であり、得られたケーキに焙焼工程を行ったものである。さらに、本実施形態の比較例19は、酸化セリウムを濾過・水洗してケーキを得るまでは第1実施形態の比較例9と同じ条件であり、得られたケーキに焙焼工程を行ったものである。焙焼工程は、焙焼温度が500℃、焙焼時間が8時間という条件であった。そして、本実施形態では、焙焼工程後にアトマイザーで乾式の機械的粉砕を行ってセリウム化合物粉末を得た。また、当該粉末の一部を用いて、第1実施形態の実施例1と同様の条件でスラリー研摩材を得た。なお、本実施形態の実施例および比較例の番号は、第1実施形態の対応する実施例および比較例の番号に「10」を加えた番号とした。したがって、実施例8〜10、比較例10は欠番になっている。
実施例18および比較例20:これらの実施例および比較例は、実施例2で示される製造製造方法の乾燥工程の後に、実施例12とは異なる焙焼温度条件で焙焼工程を行ったものである。実施例18における焙焼温度は200℃であり、比較例20における焙焼温度は700℃であった。焙焼工程以外の工程は実施例2と同じであった。
第2実施形態の各実施例および比較例で得られたセリウム化合物粉末およびスラリー研摩材について、強熱減量(質量%)、BET法比表面積(m/g)、平均粒径(D50)、最大粒径(Dmax)、X線回折を測定した。そして、得られた粉末およびスラリー研摩材を用いて研摩試験を行って、研摩値(研摩速度)および研摩傷について評価を行った。各測定値および研摩試験の結果を表2に示す。なお、本実施形態の実施例および比較例で得られるセリウム化合物粉末およびスラリー研摩材(乾燥品)は、全て、焙焼工程を経て製造されるものであり、X線回折測定の結果、立方晶酸化セリウムと同定された。従って、X線回折測定結果については表2には示さなかった。
Figure 0004282434
以下、表2に示される結果について考察を行うが、表1の結果についての考察において既に説明した内容と同じ考察内容については、表2の結果に現れていたとしてもその説明を省略した。
表2に示されるように、比較例11および比較例12の酸化セリウム粉末およびスラリー研摩材は、粗大粒子の含有率が高かった。そして、比較例11の研摩材は、研摩値が極めて小さく、ほとんど研摩力を有していなかった。また、比較例12の研摩材は、研摩値は大きく、優れた研摩力を有していたが、研摩傷が発生しやすかった。他方、実施例11〜14で得られた粉末研摩材およびスラリー研摩材は、いずれも、粗大粒子の含有率が低く、優れた研摩特性を有するものであった。このような結果と、表1の結果(実施例1〜4の研摩材の研摩特性を参照)から、乾燥工程後に焙焼工程を行っても優れた特性を有する酸化セリウム粉末やそのスラリー研摩材が得られることが解った。
ただし、実施例12,18および比較例20を比べると、実施例12,18の研摩材は粗大粒子の含有率が低く、優れた研摩特性を有するものであったが、比較例20の研摩材は粗大粒子の含有率が高く、研摩特性が悪かった。この結果、焙焼工程における焙焼温度は600℃以下にする必要があることが解った。そして、実施例12,18の研摩材の研摩値を比べると、実施例12の方が研摩値が優れていた。この結果、焙焼工程における焙焼温度は、300℃〜600℃がより好ましいことが解った。
酸化吸蔵能(OSC)および紫外線透過率の測定
また、比較例11および実施例17の酸化セリウム粉末については、触媒としての性能を調べるために酸化吸蔵能(OSC)を測定し、また紫外線吸収剤としての性能を調べるために可視光線および紫外線の透過率を測定した。酸素吸蔵能の測定ではOSC測定装置(日本ベル社製)を用いた。具体的には、800℃で前処理された酸化セリウム粉末25mgを用いて、酸素、水素パルスを切替えて導入して測定を行った。また、可視光線および紫外線の透過率の測定では、酸化セリウム粉末20質量部と水性アクリルエマルジョン塗料80質量部をよく混合したものを、20μmのバーコーターを用いてPETフィルムに塗布して80℃で乾燥させた後、PETフィルムから剥離して作製した「酸化セリウム粉末含有透明フィルム」を用いた。実際の測定では、透過分光光度計を用いて波長350nm、400nmおよび550nmにおける透過率を測定した。なお、リファレンスとして、酸化セリウム粉末を用いていないこと以外は同様の条件で作製した「酸化セリウム粉末非含有透明フィルム」を用いた。
酸素吸蔵能を測定した結果、比較例11の酸化セリウム粉末は20μmol/gであり、実施例17の酸化セリウム粉末は80μmol/gであった。この結果、粗大粒子の含有率が高い比較例11の酸化セリウム粉末は、酸素吸蔵能が小さく触媒としての性能は低かったが、粗大粒子の含有率が低い実施例17の酸化セリウム粉末は、酸素吸蔵能が十分に大きく触媒として非常に優れており、大きな転化率が期待できることが解った。
また、透過率の測定結果は、次の表3に示されるとおりである。
Figure 0004282434
表3に示されるように、実施例17の酸化セリウム粉末を含有させた透明塗料フィルムは、可視光線はほとんど透過し、紫外線はほとんど透過させず、優れた紫外線吸収効果を示した。他方、比較例11の酸化セリウム粉末を含有させた透明塗料フィルムは、実施例17のフィルムに比べて、可視光線の透過率が低く、また紫外線の透過率は高く、紫外線吸収効果が劣っていた。
本発明に係る酸化セリウムの製造方法は、粗大粒子の含有率が低い酸化セリウムを製造する場合に使用される。このような酸化セリウムは、研摩材用途では研摩傷の発生をより確実に防止できるという点で優れ、触媒用途ではより高い転化率が得られ、紫外線吸収剤用途ではより高い紫外線吸収能が得られ、セラミックス原料用途ではより高い均一焼結性が得られるなど、各種用途においてより高い性能を示す。

Claims (15)

  1. 酸化セリウムの製造方法において、
    全希土類酸化物換算量中の酸化セリウムの割合(CeO2/TREO)が90質量%以上である炭酸セリウムを水溶液中に浸漬させて加熱する浸漬加熱処理、または前記炭酸セリウムを相対湿度80%以上の雰囲気下で加熱する加湿加熱処理を行ってモノオキシ炭酸セリウムを得る湿式加熱処理工程と、モノオキシ炭酸セリウムを130℃〜250℃の温度で、5時間〜96時間の乾燥をする乾燥工程とを有することを特徴とする酸化セリウムの製造方法。
  2. 前記浸漬加熱処理および前記加湿加熱処理における加熱温度は、60℃〜100℃である請求項1に記載の酸化セリウムの製造方法。
  3. 前記湿式加熱処理工程は、浸漬加熱処理である請求項1または請求項2に記載の酸化セリウムの製造方法。
  4. 前記湿式加熱処理工程で得られたモノオキシ炭酸セリウムを、機械的に粉砕することなく前記乾燥工程に供することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸化セリウムの製造方法。
  5. 前記乾燥工程の後に、機械的粉砕工程を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の酸化セリウムの製造方法。
  6. 前記乾燥工程後に、対象物を300℃〜600℃の温度で加熱する焙焼工程を有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の酸化セリウムの製造方法。
  7. 前記機械的粉砕工程は、焙焼工程の前後の少なくとも一方で行われる、請求項6に記載の酸化セリウムの製造方法。
  8. 前記乾燥工程によって得られるものの強熱減量は、3質量%〜15質量%である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の酸化セリウムの製造方法。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか一項に記載される酸化セリウムの製造方法により製造された酸化セリウムであって、
    BET法比表面積が、25m /g〜200m /gであり、ストークス径が2μm以上の粒子の含有率が1000ppm以下であることを特徴とする酸化セリウム。
  10. レーザー回折・散乱法粒子径分布測定法によって測定された平均粒子径(D50)が0.05μm〜1.0μmであり、最大粒子径(Dmax)が0.2μm〜3.0μmである請求項9に記載の酸化セリウム。
  11. X線源としてCu−Kα線またはCu−Kα1線を用いたX線回折法によって所定の回折角(2θ)の位置に出現する立方晶酸化セリウムの最大ピークの半値幅は0.15°〜1.0°である請求項9または請求項10に記載の酸化セリウム。
  12. 得られる酸化セリウムは研摩材用である請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の酸化セリウムの製造方法。
  13. 請求項12に記載される酸化セリウムの製造方法により製造される研摩材用酸化セリウムであって、
    BET法比表面積が、25m /g〜200m /gであり、ストークス径が2μm以上の粒子の含有率が1000ppm以下であることを特徴とする研摩材用酸化セリウム。
  14. レーザー回折・散乱法粒子径分布測定法によって測定された平均粒子径(D50)が0.05μm〜0.6μmであり、最大粒子径(Dmax)が0.2μm〜3.0μmである請求項13に記載の研摩材用酸化セリウム。
  15. X線源としてCu−Kα線またはCu−Kα1線を用いたX線回折法によって所定の回折角(2θ)の位置に出現する立方晶酸化セリウムの最大ピークの半値幅は0.15°〜1.0°である請求項13または請求項14に記載の研摩材用酸化セリウム。
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