JP4282259B2 - ポリオレフィン系熱収縮性ラベル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温収縮性及び耐熱性に優れたポリオレフィン系熱収縮性ラベルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリエチレンテレフタレート製ボトル(PETボトル)などの容器に装着する熱収縮性ラベルとして、ポリ塩化ビニル系重合体からなるベースフィルムを用いたものが使用されてきた。しかし、ベースフィルムがポリ塩化ビニル系重合体で形成されたラベルは廃棄後の焼却時に有毒ガスやダイオキシンを発生するという問題があるため、近年ではポリオレフィン系の熱収縮性ラベルの使用が検討されている。
【0003】
しかし、従来のポリオレフィン系熱収縮性ラベルの低温収縮性は低く、高い収縮温度(例えば100℃以上)が必要なために、PETボトルが変形したり、内容物が加熱により変質したりしやすいものである場合には使用しにくい。また、低温(例えば80℃程度)で収縮させた場合、外観特性が劣ったりすることがある。また、耐衝撃性が低く、充分なものとはいえない場合もある。さらにまた、これまで低温収縮性に優れるラベルとしてポリスチレン系樹脂が用いられているが、耐熱性(例えば、ホットベンダー(加熱保温式自動販売機)での使用時のラベル強度、ラベル外観)が充分なものとはいえない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、低温収縮性に優れたポリオレフィン系熱収縮性ラベルを提供することにある。
本発明の他の目的は、また、耐熱性に優れたポリオレフィン系熱収縮性ラベルを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、さらに、耐衝撃性に優れたポリオレフィン系熱収縮性ラベルを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、ベースフィルムを特定のオレフィン系ポリマーからなる表面層と、特定の触媒を用いて調製されたプロピレン系ポリマーからなる中心層とで構成すると、低温収縮性及び耐熱性に優れたポリオレフィン系熱収縮性ラベルが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、ベースフィルムの少なくとも一方の面に印刷層が設けられた熱収縮性ラベルであって、前記ベースフィルムが、ガラス転移温度(Tg)が60〜80℃の範囲にある非晶性環状オレフィン系重合体からなる表面層と、メタロセン触媒により共重合して得られた、融点が120〜125℃であるエチレン−プロピレンランダム共重合体からなる中心層とで構成されているポリオレフィン系熱収縮性ラベルを提供する。
【0007】
前記ベースフィルムを80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主配向方向Xにおける熱収縮率は、25〜50%であってもよい。
【0009】
本発明の好適な態様では、エチレン−プロピレンランダム共重合体におけるエチレン成分の割合が、該共重合体のモノマー成分全量に対して3〜4.5重量%である。
【0010】
非晶性環状オレフィン系重合体としては、環状オレフィンの開環重合体又はその水添物が好適である。印刷層は反応型ウレタン系インキにより形成されていてもよい。
【0011】
本発明のポリオレフィン系熱収縮性ラベルとしては、ベースフィルムの主配向方向Xが周方向となるように筒状に形成されていることが好適である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明のポリオレフィン系熱収縮性ラベルの一例を示す概略断面図である。
【0013】
図1の例では、熱収縮性ラベル1は、ベースフィルム2と、ベースフィルム2の一方の面に設けられた印刷層3とで構成されている。ベースフィルム2は、中心層4と、該中心層4の両側に設けられた表面層5,5とで構成されている。なお、表面層5,5(以下、単に「表面層5」と総称する場合がある)は、被着体(被装着物)と接しない側の層である外面層と、被着体と接する側の層(印刷層3側の層)である内面層とで構成されている。
【0014】
(中心層)
中心層4は、メタロセン触媒を用いて共重合して得られたプロピレン系ランダム共重合体からなる一軸又は二軸配向フィルムで構成されている。
【0015】
本発明では、プロピレン系ランダム共重合体は、触媒としてメタロセン触媒を用いて、プロピレンと、該プロピレンに対して共重合性を有しているモノマー成分(以下、単に「共重合性モノマー成分」と称する場合がある)とを共重合することにより調製されている。共重合性モノマー成分としては、プロピレン以外のα−オレフィン(例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−1−ペンテン、オクテン−1などの炭素数2又は4〜20のα−オレフィンなど)が好適に用いられる。共重合性モノマー成分としてはエチレンが最適である。共重合性モノマー成分は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0016】
プロピレン系ランダム共重合体は、プロピレンを構成モノマーとして含む共重合体であり、例えば、エチレン−プロピレンランダム共重合体が挙げられる。このエチレン−プロピレンランダム共重合体において、エチレンとプロピレンの比率は、例えば、前者/後者(重量比)=2/98〜5/95(好ましくは3/97〜4.5/95.5)程度の範囲から選択することができる。すなわち、エチレン−プロピレンランダム共重合体におけるエチレン成分の割合は、例えば、モノマー成分全量に対して2〜5重量%(好ましくは3〜4.5重量%)程度の範囲から選択することができる。
【0017】
なお、本発明で用いる、ポリプロピレン系ランダム共重合体は、融点が120〜125℃の範囲のエチレン−プロピレンランダム共重合体である。エチレン−プロピレンランダム共重合体としては、120〜125℃の融点を有するものが、低温収縮性を高めるために最適である。また、融点が120℃以上であると、耐熱性の優れたものが得られる。
【0018】
本発明では、プロピレン系ランダム共重合体は、低温収縮性やフィルムの腰の強度の観点から、アイソタクチックインデックスが90%以上のものが好適である。
【0019】
中心層として、メタロセン触媒を用いて共重合して得られたプロピレン系ランダム共重合体からなる一軸又は二軸配向フィルムを用いることにより、低温収縮性をより一層向上させることができる。また、メタロセン触媒によるプロピレン系ランダム共重合体の方が、非メタロセン触媒によるプロピレン系ランダム共重合体よりも、同じ温度での最高収縮率の値は大きくなり、熱収縮の際の容器へのフィット性を高めることができる。さらにまた、分子量分布が狭く、低分子成分の割合が少ないので、耐衝撃性がさらに向上し、熱収縮性ラベルとして好適な実質的に横方向に一軸延伸されたフィルムであっても、フィルムの印刷工程や製袋工程、熱収縮性ラベルのラベラーによるラベル装着時において縦方向に加わる張力や衝撃による横方向の裂けを防止することができる。
【0020】
前記メタロセン触媒としては、慣用のオレフィン重合用メタロセン触媒を用いることができる。具体的には、下記の触媒成分(a)および触媒成分(b)と、必要に応じて触媒成分(c)とを好適に用いることができる。
【0021】
触媒成分(a)はメタロセン系遷移金属錯体である。メタロセン系遷移金属錯体は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0022】
メタロセン系遷移金属錯体としては、下記式(1)で表されるメタロセン系遷移金属錯体を好適に用いることができる。
Q1L1L2MeX1X2 (1)
(式(1)中、Meはジルコニウム原子、チタン原子又はハフニウム原子を示す。L1及びL2は、同一又は異なって、それぞれ、Meに対する共役五員環配位子である。Q1は2つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示す。X1及びX2は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン原子含有炭化水素基又は炭素数1〜20のケイ素原子含有炭化水素基を示す。)
【0023】
式(1)において、Meは、ジルコニウム原子、チタン原子又はハフニウム原子であり、ジルコニウム原子が好適である。なお、Meはニッケル原子、パラジウム原子、白金原子等の4価の遷移金属原子であってもよい。
【0024】
L1及びL2は、それぞれ、Meに対する共役五員環配位子である。L1及びL2は、同一であってもよく、異なっていてもよい。なお、L1及びL2の2つの共役五員環配位子は、Q1基を介しての相対位置の観点において、Meを含む平面に関して非対称であることが好ましい。
【0025】
L1及びL2は、それぞれ、(C5H4-aR1 a)、(C5H4-bR2 b)で示すことができる。前記R1及びR2は、同一又は異なって、それぞれ、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ケイ素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基又はホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のR1又は2個のR2はそれぞれ結合して環を形成していてもよい。a及びbは、同一又は異なって、それぞれ、0又は4以下の正の整数である。
【0026】
具体的には、前記L1及びL2としての共役五員環配位子は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、例えば、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタジエニル、トリメチルシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、メチルエチルシクロペンタジエニル、ヘキシルシクロペンタジエニル等の置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、2,4―ジメチルインデニル、2−メチル−4−フェニルインデニル等の置換インデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル等の置換インデニル基の部分水添加物、フルオレニル基などが挙げられる。
【0027】
Q1は、2つの共役五員環配位子(L1及びL2)を架橋する結合性基である。該Q1の結合性基としては、例えば、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基などが挙げられる。Q1の炭素数1〜20の2価の炭化水素基には、例えば、アルキレン基(例えば、エチレン、イソプロピリデンなど)、シクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレンなど)などの2価の不飽和炭化水素基が含まれる。なかでも、炭素数1〜6の2価の炭化水素基が好ましい。炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基としては、ジメチルシリレンなどの炭素数1〜12の炭化水素基を有するシリレン基が好適である。
【0028】
X1、X2は、同一でもよく、異なってもよい。X1、X2において、ハロゲン原子には、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子(好ましくは塩素原子)が含まれる。
【0029】
メタロセン系遷移金属錯体の具体的例として以下に示す。例えば、2つの共役五員環配位子を架橋する結合性基がアルキレン基であるメタロセン系遷移金属錯体としては、例えば、エチレン−1,2−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン−1,2−ビス{1−(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)}ジルコニウムジクロリド、エチレン−1,2−ビス{1−(2,4−ジメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、エチレン−1,2−ビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、エチレン−1,2−ビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、エチレン−1,2−ビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0030】
また、2つの共役五員環配位子を架橋する結合性基がシリレン基であるメタロセン系遷移金属錯体としては、例えば、ジメチルシリレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2,4−ジメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2,4−ジメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}〕ジルコニウムメチルクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムクロロジメチルアミド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−ヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4,5,6,7,8−ペンタヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4,5,6,7,8−ペンタヒドロアズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4,5,6,7,8−ペンタヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4,5,6,7,8−ペンタヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}{1−(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン{1−(2−エチル−4−フェニル−4,5,6,7,8−ペンタヒドロアズレニル)}{1−(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,4−ジメチル−シラ−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルアズレニル)}ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4,5,6,7,8−ペンタヒドロアズレニル)}ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−(ペンタフルオロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−7−フルオロインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−インドリルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−ジメチルボラノ−4−インドリルインデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0031】
他のメタロセン系遷移金属錯体としては、例えば、ジメチルゲルミレンビス((1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルアルミニウムビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルホスフィノビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチルホラノビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルアミノビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0032】
触媒成分(b)は、触媒成分(a)としてのメタロセン系遷移金属錯体に対する共触媒成分又は助触媒成分としての機能を有していてもよい。触媒成分(b)は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0033】
触媒成分(b)としては、(b−1)アルミニウムオキシ化合物、(b−2)メタロセン系遷移金属錯体をカチオン性に変換可能なイオン性化合物(有機ホウ素化合物など)、又はルイス酸、(b−3)粘土鉱物、又はイオン交換性層状化合物などが挙げられる。
【0034】
アルミニウムオキシ化合物(b−1)には、一種又は複数種のトリアルキルアルミニウムと水との反応により得られるアルミニウムオキシ化合物、一種又は複数種のトリアルキルアルミニウムとアルキルボロン酸(メチルボロン酸、エチルボロン酸、ブチルボロン酸など)との反応により得られる化合物などが含まれる。具体的には、アルミニウムオキシ化合物としては、例えば、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、プロピルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルエチルアルモキサン、メチルブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサンなどが挙げられる。好ましいアルミニウムオキシ化合物には、メチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサンが含まれる。アルミニウムオキシ化合物(b−1)は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0035】
メタロセン系遷移金属錯体をカチオン性に変換可能なイオン性化合物、又はルイス酸(b−2)において、メタロセン系遷移金属錯体をカチオン性に変換可能なイオン性化合物(「イオン化イオン性化合物」と称する場合がある)は、イオン性のカチオン成分と、イオン性のアニオン成分とで構成されている。カチオン成分及びアニオン成分ともに、そのイオン価数は特に制限されない。イオン化イオン性化合物において、カチオン成分としては、例えば、カルボニウムカチオン(トリフェニルカルボニウムなど)、アンモニウムカチオン(トリエチルアンモニウムなど)、ホスホニウムカチオン(トリフェニルホスホニウムなど)、オキソニウムカチオン(トリフェニルオキソニウムなど)、スルホニウムカチオン(トリフェニルスルホニウムなど)の他、それ自身が還元されやすい金属の陽イオン(銀イオン、金イオンなど)や有機金属の陽イオン(フェロセニウムイオンなど)などが挙げられる。また、アニオン成分としては、例えば、有機ホウ素化合物アニオン(テトラフェニルホウ素、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ホウ素など)、有機アルミニウム化合物アニオン(テトラフェニルアルミニウムなど)、有機ガリウム化合物アニオン(テトラフェニルガリウムなど)、有機リン化合物アニオン(テトラフェニルリンなど)、有機ひ素化合物アニオン(テトラフェニルヒ素など)、有機アンチモン化合物アニオン(テトラフェニルアンチモンなど)などが挙げられる。なお、アニオン成分は、触媒成分(a)が変換されたカチオン種に対して対アニオンとなる成分(一般には非配位の)であることが重要である。
【0036】
また、ルイス酸としては、有機ホウ素化合物が好適に用いられる。該有機ホウ素化合物には、例えば、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(3,5−ジ(トリトメチルシリル)フェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などが含まれる。
【0037】
メタロセン系遷移金属錯体をカチオン性に変換可能なイオン性化合物、又はルイス酸(b−2)は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0038】
粘土鉱物、又はイオン交換性層状化合物(b−3)において、粘土鉱物としては、例えば、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、タルク、ウンモ、モンモリロナイト、バーミキュライト、リヨクデイ石、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられる。なお、粘土鉱物は、層状の結晶構造を有するイオン性結晶性化合物であってもよい。
【0039】
また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合等により構成された面が互いに弱い結合力で平行に積み重なっている結晶構造を有し、且つ該結晶構造中に交換可能なイオンを含有している。イオン交換性層状化合物には、多価金属の結晶性酸性塩、例えば、α−Zr(HPO4)2、α−Ti(HPO4)2、α−Sn(HPO4)2・H2O、α−Zr(HAsO4)2・H2O、α−Ti(HAsO4)2・H2O、γ−Zr(HPO4)2、γ−Ti(HPO4)2、γ−Ti(NH4PO4)2・H2Oなどが含まれる。
【0040】
粘土鉱物、又はイオン交換性層状化合物(b−3)は単独で又は2種以上混合して使用することができる。粘土鉱物、又はイオン交換性層状化合物(b−3)としては、モンモリロナイトなどの粘土鉱物を好適に用いることができる。
【0041】
本発明では、触媒成分(b)としては、粘土鉱物、又はイオン交換性層状化合物(b−3)を好適に用いることができる。
【0042】
触媒成分(c)には、有機アルミニウム化合物が含まれる。有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−プロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウム、トリn−デシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどが挙げられる。
【0043】
触媒成分(c)は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0044】
本発明では、微粒子状の固体を担体として用いて、メタロセン触媒又はメタロセン系遷移金属錯体(触媒成分(a))を担体に保持させて、固体状触媒として用いることができる。前記微粒子状の固体としては、シリカ、アルミナなどの多孔質性無機化合物、α−オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテンなど)やスチレンをモノマー成分の主成分した重合体又は共重合体などが挙げられる。また、メタロセン触媒又はメタロセン系遷移金属錯体は、オレフィンなどの存在下で予備重合を行ったものであってもよい。予備重合に用いられるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1などが挙げられる。
【0045】
本発明では、中心層4のプロピレン系ランダム共重合体は、触媒成分として前記メタロセン触媒を用いて、プロピレンと、該プロピレンに対する共重合性モノマー成分とを共重合して調製することができる。該共重合方法としては、特に制限されず、メタロセン触媒を用いた公知の重合方法を採用することができる。スラリー法、溶液重合法、気相法のいずれでも用いることができる。また、連続重合法、回分式重合法、予備重合法などを適用してもよい。なお、重合溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素を、単独で又は2種以上混合して使用することが好ましい。重合温度は0〜150℃の範囲から選択してもよい。重合圧力は0〜90kg/cm2G(0〜8.9MPa(ゲージ圧))の範囲から選択することができる。なお、分子量調節剤として補助的に水素を用いてもよい。
【0046】
また、メタロセン触媒の使用量についても、特に制限されず、公知の使用量を採用することができる。例えば、触媒成分(a)としてのメタロセン系遷移金属錯体と、触媒成分(b)としてのアルミニウムオキシ化合物とを組み合わせて用いた場合は、アルミニウムオキシ化合物中のアルミニウム原子(Al)とメタロセン系遷移金属錯体中の遷移金属原子(Me)の原子比(モル比)(Al/Me)に換算して、1〜100,000、好ましくは10〜10,000、さらに好ましくは50〜5,000の範囲から選択することができる。また、触媒成分(c)としての有機アルミニウム化合物を使用する場合、触媒成分(A)(メタロセン系遷移金属錯体)に対して、105(モル比)以下の範囲から選択することができる。
【0047】
(表面層)
表面層5は、ガラス転移温度(Tg)が60〜80℃の範囲にある非晶性環状オレフィン系重合体からなる一軸又は二軸配向フィルムで構成されている。
【0048】
前記非晶性環状オレフィン系重合体には、(A)エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンと少なくとも1種の環状オレフィンとの共重合体(以下、「環状オレフィン共重合体」と称することがある)、及び(B)環状オレフィンの開環重合体又はその水添物が含まれる。なお、前記重合体(A)及び(B)には、それぞれ、そのグラフト変性物も含まれる。
【0049】
前記重合体(A)及び(B)における環状オレフィンとしては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ノルボルネン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ヘプタシクロ−5−イコセン、ヘプタシクロ−5−ヘンイコセン、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロペンタデカジエン、ペンタシクロ[4.7.0.12,5.08,13.19,12]−3−ペンタデセン、ノナシクロ[9.10.1.14,7.113,20.115,18.02,10.012,21.014,19]−5−ペンタコセンなどの多環式環状オレフィン等が挙げられる。これらの環状オレフィンは、環に、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基などのエステル基、メチル基などのアルキル基、ハロアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0050】
前記環状オレフィン共重合体(A)は、例えば、前記α−オレフィンと環状オレフィンとを、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒中、いわゆるチーグラー触媒や前記メタロセン触媒などの触媒を用いて重合することにより得ることができる。このような環状オレフィン共重合体(A)は市販されており、例えば、商品名「アペル」(三井化学(株)製)などが使用できる。
【0051】
前記環状オレフィンの開環重合体又はその水添物(B)は、例えば、1種又は2種以上の前記環状オレフィンを、モリブデン化合物やタングステン化合物を触媒としたメタセシス重合(開環重合)に付し、通常、得られたポリマーをさらに水添することにより製造できる。このような重合体(B)は市販されており、例えば、商品名「アートン」(日本合成ゴム(株)製)、商品名「ゼオネックス」、商品名「ゼオノア」(以上、日本ゼオン(株)製)などが使用できる。
【0052】
好ましい非晶性環状オレフィン系重合体は、前記環状オレフィンの開環重合体又はその水添物(B)である。環状オレフィン共重合体(A)よりも環状オレフィンの開環重合体又はその水添物(B)の方が、ゲルが生じにくく、成膜する際の混合や溶融押出し等の工程で劣化しにくい。これは、環状オレフィン共重合体(A)では、鎖状オレフィン(α−オレフィン)の残基部位と、環状オレフィンの残基部位とが、ランダムに配列された構成となっているが、環状オレフィンの開環重合体又はその水添物(B)では、前記環状オレフィン共重合体(A)における鎖状オレフィンに相当する部位と、環状オレフィンに相当する部位とが、規則的に配列された構成を有しているためであると思われる。
【0053】
しかも、非晶性環状オレフィン系重合体として、環状オレフィンの開環重合体又はその水添物(B)を用いると、前記ゲルが生じにくいため、ベースフィルムの耐衝撃性や印刷適性(フィッシュアイが少ない)を高めることができる。そのため、例えば、ベースフィルムの作製時に、延伸を行っても、裂けたり、穴があいたりすることを防止でき、また、印刷等の後の工程においても裂けの発生を防止できる。特に、熱収縮性ラベルとして好適な実質的に横方向に一軸延伸されたフィルムは横方向に裂けやすいが、ゲルが生じにくいため、ゲルを起点とした裂けが生じないので好ましい。
【0054】
非晶性環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、60〜150℃であり、好ましくは60〜120℃程度である。ガラス転移温度が60℃未満では耐熱性に劣り、また150℃を超えるとラベルが脆くなりやすい。
【0055】
本発明では、非晶性環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)としては、60〜80℃(好ましくは60〜75℃)程度が望ましく、特に65〜75℃(特に70℃程度)が最適である。非晶性環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、モノマー成分(例えば、環状オレフィンなど)の種類やその配合割合などにより調整することができる。ガラス転移温度が60〜80℃の範囲であると、低温熱収縮性をより一層高めることができる。
【0056】
非晶性環状オレフィン系重合体は単独で又は2種以上混合して使用できる。ベースフィルム2又は表面層5は、さらに必要に応じ、溶剤シール性等を損なわない範囲で他のポリマーを少量含んでいてもよく、また、フィルム同士の融着を防止するため、無機微粒子を含んでいてもよい。前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの無機酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;ケイ酸カルシウム、ガラスビーズ、タルク、クレー、マイカなどのケイ酸塩などが挙げられる。無機微粒子の平均粒径は、例えば1〜10μm、好ましくは3〜7μm程度である。無機微粒子の量は、ベースフィルム2又は表面層5の構成成分全量に対して、例えば0.05〜0.50重量%、好ましくは0.08〜0.30重量%程度の範囲から選択することができる。
【0057】
本発明では、ベースフィルム2の厚みは、例えば、20〜80μm、好ましくは30〜60μm程度である。
【0058】
ベースフィルム2における中心層4の厚みは、例えば、10〜70μm、好ましくは20〜50μm程度の範囲から選択することができる。また、ベースフィルム2における表面層5,5の厚みは、それぞれ、例えば、3〜15μm、好ましくは5〜10μm程度の範囲から選択することができる。
【0059】
なお、前記中心層4は、いわゆるタッキファイヤ、例えば、石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン樹脂などを含んでいてもよい。これらのタッキファイヤの量は、中心層4の構成成分全量に対して、例えば5〜30重量%程度の範囲から選択することができる。さらに、ポリエチレン等の他のポリマーを少量含んでいてもよい。また、中心層4は、前記表面層5に用いる非晶性環状オレフィン系重合体を含んでいてもよく、その含有量は、中心層4の構成成分全量に対して30重量%以下であることが好ましい。
【0060】
表面層5のうち印刷層3側の表面には、印刷性を向上させるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理などの慣用の表面処理を施してもよい。また、中心層4、表面層5には、必要に応じて、滑剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤などの各種添加剤を添加してもよい。
【0061】
なお、中心層4及び表面層5はそれぞれ複数の層で構成することもできる。また、中心層4と表面層5との間に、剛性、自然収縮性等を損なわない範囲で他の樹脂層を設けてもよく、表面層5の表面には、損傷防止等のため、アクリル系樹脂などからなるオーバーコート層を設けてもよい。
【0062】
本発明におけるベースフィルム2は、単層フィルムや積層フィルムを製造する際に用いられる慣用の方法、例えば、押出法、共押出法などにより製造できる。例えば、図1に示されるベースフィルム2は、中心層4を形成する樹脂を含む樹脂組成物と、表面層5,5を形成する樹脂を含む樹脂組成物とを、Tダイを備え、合流方式がフィードブロック2種3層型の押出機を用いて溶融押出しし、冷却ロールにより冷却した後、延伸処理することにより得ることができる。図1に示されるベースフィルム2では、中心層4及び表面層5,5が何れもオレフィン系重合体で形成されているので、接着剤を用いることなく積層が可能であるが、必要に応じて接着用の層を介在させてもよい。なお、Tダイに代えて環状ダイを用いることもできる。
【0063】
延伸は、テンター方式、チューブ方式の何れの方式で行うこともできる。延伸処理は、通常、80〜180℃(好ましくは80〜150℃)程度の温度で、幅方向(横方向;TD方向)に4〜8倍、好ましくは5〜7倍程度延伸することにより行われる。なお、必要に応じて、例えば長さ方向(縦方向;MD方向)にも、低い延伸倍率(例えば1.5倍程度以下)で延伸処理を施すことができる。本発明におけるベースフィルムには、このように、一方向のみに延伸された一軸配向フィルム、及び主に一方向に延伸され、且つ該方向と直交する方向に若干延伸された二軸配向フィルムが含まれる。つまり、実質上、横方向に一軸延伸されたフィルムである。
【0064】
こうして得られるベースフィルム2は、幅方向(主に延伸処理を施した方向)に配向性を有し、該方向に熱収縮性を示す。
【0065】
本発明の熱収縮性ラベルでは、前記ベースフィルム2を90℃の温水中に10秒間浸漬した後の主配向方向X(主に延伸処理を施した方向;前記の場合幅方向)における熱収縮率(以下、「熱収縮率A」という場合がある)が、例えば、30〜80%、好ましくは40〜70%程度であることが望ましい。本発明では、ベースフィルムにこのような物性を付与することができるため、低温、低熱量で熱収縮が可能である。このため、例えば、湾曲面を有する容器にも簡易にしかも密着性よく装着できる。なお、熱収縮率Aは下記式で表される。
熱収縮率A(%)=[{(方向Xの元の長さ)−(方向Xの浸漬後の長さ)}/(方向Xの元の長さ)]×100
【0066】
また、前記ベースフィルム2を80℃の温水中に10秒間浸漬した後の主配向方向X(主に延伸処理を施した方向;前記の場合幅方向)における熱収縮率(以下、「熱収縮率B」という場合がある)としては、25〜50%、好ましくは30〜50%程度であることが望ましい。ベースフィルムがこのような物性を有していると、より一層低い温度や熱量で熱収縮が可能となり、例えば、湾曲面を有する容器にも簡易にしかも密着性よく装着できるようになる。なお、熱収縮率Bは、前記熱収縮率Aと同様の式で表される。
【0067】
前記熱収縮率は、ベースフィルム2や中心層4、表面層5,5を構成する樹脂の種類(融点やガラス転移点など)、中心層4と表面層5,5との厚み比率、延伸倍率、延伸温度等の延伸条件などを適宜選択することにより調整できる。
【0068】
本発明の熱収縮性ラベル1は、上記のようにして得られたベースフィルム2の少なくとも一方の面に、グラビア印刷等の慣用の印刷法により所望の画像、文字を印刷して印刷層3を形成することにより製造できる。そして、印刷層3を形成した後、通常、所望の幅の長尺帯状に切断し、例えば印刷面を内側にして、ベースフィルム2のうち前記方向Xが周方向となり、ベースフィルム2の前記方向Xと直交する方向Yが長さ方向となるように筒状に丸め、両端辺を溶剤や熱融着等で接着した後、必要に応じて所望の長さに切断することにより、筒状の熱収縮性ラベルとすることができる。
【0069】
前記印刷層3を形成する際の印刷インキとしては、特に限定されず、慣用の印刷インキを使用できるが、ボイル等の熱処理において色の変化の少ないインキ、例えば、反応型のウレタン系インキを用いるのが好ましい。この反応型ウレタン系インキには、ビヒクルを構成する樹脂として、ポリイソシアネートプレポリマー硬化剤と、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオールなどのポリオールとを組み合わせて用いる2液型のインキが含まれる。
【0070】
本発明の熱収縮性ラベルの好ましい態様では、印刷層3を内側とし、前記方向Xが周方向となるように両端縁を重ね合わせて筒状に形成され、有機溶剤でセンターシールされている。このようなラベルは、円筒状胴部を有する容器に容易に装着できると共に、ヒートシールされたラベルのように皺が生じることがなく、また光沢に優れ、美麗な外観を呈する。
【0071】
前記有機溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチル、1,2−ジクロロエタン、塩化プロピルなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの鎖状又は環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステルなどが挙げられる。これらの中でも、沸点が20〜70℃程度、特に25〜50℃程度の有機溶媒が作業性等の点で好ましい。
【0072】
このように、本発明の熱収縮性ラベルは、ベースフィルムにおける表面層が前記非晶性環状オレフィン系重合体で形成され、中心層が前記プロピレン系ランダム共重合体で形成されているため、非晶性環状オレフィン系重合体の利点を生かせるとともに、高価な非晶性環状オレフィン系重合体の使用量を低減でき、コスト的に有利となる。
【0073】
特に、本発明の熱収縮性ラベルは、中心層がメタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン系ランダム共重合体で形成されているので、低温収縮性が優れており、低温で収縮させても、高いラベル強度を発揮することができ、外観特性や印刷特性も良好である。従って、本発明のポリオレフィン系熱収縮性ラベルは、PETボトルやポリスチレン製容器などの熱変形しやすいプラスチック製容器や、内容物が熱変質しやすい医薬品や調味料、健康飲料などである容器に対する熱収縮性ラベルとして有用である。すなわち、薄肉のポリエチレンテレフタレート製ボトルなどの熱変形を生じやすい容器や熱変質しやすい内容物を有する容器に対して用いても、熱収縮時の熱による容器の熱変形や内容物の熱変質を抑制又は防止することができる。なお、本発明では、低温収縮性とは、例えば、70〜90℃程度の温度での収縮性のことを意味している。
【0074】
また、耐熱性が優れているものも得られるので、ホットベンダーなどにより加熱又は加温されていても、ラベル強度の低下を抑制又は防止することができる。また、ラベルの外観性の低下も抑制又は防止することができる。
【0075】
また、優れた光沢を有し、透明性も良好であるため、印刷が美麗である。さらに、熱収縮の際、収縮速度が速い上、熱源を離した後、経日しても緩むことがなく、フィット性(密着性、締め付け性)に優れる。加えて、前記非晶性環状オレフィン系重合体が非晶性且つバルキーな基を有するためか、有機溶剤により容易にシールできる。このため、皺などが生じにくく見栄えが良好である。さらに、腰が強いため、製造ライン速度を速めることができ、生産性を向上できると共に、薄肉化できるのでコストダウンも可能である。
【0076】
図2は図1の熱収縮性ラベル1を被装着物6(例えば、PETボトルなどのプラスチック製又はガラス製の瓶状容器など)に装着する際の状態を示す概略斜視図である。なお、同一の部材や部分には同一の符号が付されている。
【0077】
上記のようにして得られた筒状の熱収縮性ラベル1を自動ラベル装着装置に供給し、必要な長さに切断した後、通常内容物を充填した被装着物6に連続的に被嵌し、所定温度のスチームトンネル(例えば、70〜90℃、好ましくは75〜85℃程度)や熱風トンネル(例えば、100〜200℃程度)を通過させて熱収縮させることにより、該熱収縮性ラベル1を被装着物6に装着できる。この際、被装着物6に被嵌したラベルは熱収縮するので、被装着物6の肩部の形状などにも適合して密着する。なお、ガラス瓶のように耐熱性のある容器に本発明により得られる熱収縮性ラベルを装着し、内容物を充填後、ボイル処理を施しても、ラベルの耐熱性が良好であるため、外観が損なわれない。
【0078】
なお、本発明のオレフィン系熱収縮性ラベルは、ポリオレフィン系樹脂を用いているため、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)とは比重が異なっており、ポリエチレンテレフタレート製ボトルに対して用いても、リサイクル時に熱収縮性ラベルのプラスチック成分であるポリオレフィン系樹脂と、ボトルのポリエチレンテレフタレートとの分離が容易になる。
【0079】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0080】
実施例1
メタロセン触媒を用いて得られたエチレン−プロピレンランダム共重合体(エチレン含有量:4.3重量%、融点:123℃)(a1)と、非晶性環状オレフィン系重合体(商品名「アペルAPL6509」、Tg:80℃、密度1.02g/cm3、三井化学(株)製;環状オレフィン共重合体)100重量部及び無機微粒子(球状シリカ、平均粒径1.5μm)0.5重量部の混合物(b1)とを、合流方式フィードブロック2種3層型の押出機を用いてTダイから温度280℃で共押出しし、次いで100℃で幅方向(TD方向)に6.0倍テンター延伸することにより、(b1)/(a1)/(b1)の層構成を有する厚み60μm(中心層(a1)の厚み:52μm、表面層(b1)の厚み:各4μm)のベースフィルムを得た。
【0081】
このベースフィルムから10cm×10cm(幅方向(TD方向)の長さ×長さ方向(MD方向)の長さ)の試験片を切り取り、この試験片を90℃の温水中に10秒間浸した後、ベースフィルムの幅方向(TD方向)の長さを測定し、前記式により熱収縮率Aを求めたところ、熱収縮率は61%(90℃×10秒間)であった。
【0082】
前記で得られたベースフィルムの一方の表面に反応型ウレタン系インキを用いて8色からなるデザインのグラビア印刷を施して印刷層を形成するとともに、他方の面に損傷防止のためにアクリル系樹脂からなるオーバーコート層を形成し、ロール状に巻回した。得られた印刷ロールを所定の幅にスリットして複数個のロール状物とした後、各ロール状物を巻き戻し、ベースフィルムの幅方向(TD方向)が周方向となるように筒状に丸めて両端部を有機溶媒(シクロヘキサン)で接着し、長尺筒状の熱収縮ラベル連続体を得た。
この熱収縮ラベル連続体を自動ラベル装着装置に供給し、各ラベルに切断した後、1.5LのPETボトル容器(ポリエチレンテレフタレートによる容器)に外嵌し、スチームトンネル(温度:80℃)を通過させて熱収縮させることにより、前記容器に装着した。その結果、ラベルのボトルに対する密着性は高く、締め付け性が優れていた。また、該ラベルを装着した容器を60℃で21日間保管したところ、外観やラベル強度に何ら問題はなかった。
【0083】
実施例2
メタロセン触媒を用いて得られたエチレン−プロピレンランダム共重合体(エチレン含有量:4.3重量%、融点:123℃)100重量部に、水添石油樹脂(商品名「アルコンP−140」荒川化学(株)製)を25重量部配合した混合物(a1)と、非晶性環状オレフィン系重合体(商品名「ゼオノア750R」、密度1.0g/cm3、Tg70℃、日本ゼオン(株)製;環状オレフィンの開環重合体又はその水添物)100重量部と、無機微粒子(無定形シリカ、平均粒径2〜3μm)0.5重量部との混合物(b1)を、押出機を用いてTダイから温度220℃で押出しし、次いで90℃で幅方向(TD方向)に5.5倍テンター延伸することにより、(b1)/(a1)/(b1)の3層構成を有する厚み50μm(中心層(a1)の厚み:38μm、表面層(b1)の厚み:各6μm)のベースフィルムを得た。
【0084】
このベースフィルムから10cm×10cm(幅方向(TD方向)の長さ×長さ方向(MD方向)の長さ)の試験片を切り取り、この試験片を80℃の温水中に10秒間浸した後、ベースフィルムの幅方向(TD方向)の長さを測定し、前記式により熱収縮率Bを求めたところ、熱収縮率Bは33%であった。
【0085】
前記で得られたベースフィルムを用いること以外は、実施例1と同様にして、長尺筒状の熱収縮ラベル連続体を得た。なお、印刷は美麗で、フィッシュアイもなく良好であった。この熱収縮ラベル連続体を自動ラベル装着装置に供給し、各ラベルに切断した後、1.5LのPETボトル容器(ポリエチレンテレフタレートによる容器)に外嵌し、スチームトンネル(温度:80℃)を通過させて熱収縮させることにより、前記容器に装着した。その結果、ラベルのボトルに対する密着性は高く、締め付け性が優れていた。
【0086】
比較例1
メタロセン触媒を使用せずに調製された市販のエチレン−プロピレンランダム共重合体(エチレン含有量:4.3重量%、融点:137℃)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、ベースフィルムを作製した後、長尺筒状の熱収縮ラベル連続体を作製して、PETボトルに装着した。その結果、ラベルの収縮速度が遅く、ラベルのボトルに対する密着性や締め付け性は充分でなく、仕上がり外観が不良であった。
【0087】
【発明の効果】
本発明の熱収縮性ラベルは、ベースフィルムにおける表面層及び中心層が、それぞれ、特定の樹脂で構成されているため、従来のポリオレフィン系熱収縮性ラベルと比較して、低温熱収縮性に優れている。すなわち、良好な低温収縮性を有しているので、PETボトルやポリスチレン製容器などの熱変形しやすいプラスチック製容器、内容物が熱変質しやすい医薬品や調味料、健康飲料などである容器に対して利用性が高い。また、耐熱性に優れたものも得られるので、加熱保温下での保管が可能である。
【0088】
また、表面層の非晶性環状オレフィン系重合体として、環状オレフィンの開環重合体又はその水添物を用いることにより、印刷適性がよく、耐衝撃性をより一層高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱収縮性ラベルの一例を示す概略断面図である。
【図2】図1の熱収縮性ラベルを被装着物に装着する際の状態を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1 熱収縮性ラベル
2 ベースフィルム
3 印刷層
4 中心層
5 表面層
6 被装着物
Claims (6)
- ベースフィルムの少なくとも一方の面に印刷層が設けられた熱収縮性ラベルであって、前記ベースフィルムが、ガラス転移温度(Tg)が60〜80℃の範囲にある非晶性環状オレフィン系重合体からなる表面層と、メタロセン触媒により共重合して得られた、融点が120〜125℃であるエチレン−プロピレンランダム共重合体からなる中心層とで構成されているポリオレフィン系熱収縮性ラベル。
- ベースフィルムを80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主配向方向Xにおける熱収縮率が25〜50%である請求項1記載のポリオレフィン系熱収縮性ラベル。
- エチレン−プロピレンランダム共重合体におけるエチレン成分の割合が、該共重合体のモノマー成分全量に対して3〜4.5重量%である請求項1または2に記載のポリオレフィン系熱収縮性ラベル。
- 非晶性環状オレフィン系重合体が、環状オレフィンの開環重合体又はその水添物である請求項1〜3の何れかの項に記載のポリオレフィン系熱収縮性ラベル。
- 印刷層が反応型ウレタン系インキにより形成されている請求項1〜4の何れかの項に記載のポリオレフィン系熱収縮性ラベル。
- ベースフィルムの主配向方向Xが周方向となるように筒状に形成された請求項1〜5の何れかの項に記載のポリオレフィン系熱収縮性ラベル。
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