JP4282222B2 - プラスチックフィルム巻層体および光ディスクの製造方法 - Google Patents

プラスチックフィルム巻層体および光ディスクの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光学用途に使用するポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム(本願明細書においては、「ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム」をまとめて「プラスチックフィルム」とも称する)の巻層体に関する。更に詳細にはレーザー光などにより情報の記録、再生、消去などをおこなう光ディスクの透明保護層用として用いる薄肉のフィルムまたはシート(本願明細書においては、「フィルムまたはシート」をまとめて「フィルム」とも称する)に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、更に加工性に優れることから光学用途に広く利用されている。
【0003】
例えば、レーザー光を使用する光ディスクは、高密度、大容量の記録媒体として種々の研究、開発、商品化がおこなわれている。
【0004】
特に近年マルチメデイア時代の到来と共に光ディスクに動画情報を含む大容量の記憶が可能なような種々の技術が開発されている。
【0005】
その一つに片面から情報を読み出す光ディスクの技術が提案され、下記のものが公表されている:特開平8−235638号公報、片面12Gbyteの大容量光ディスク O plusE(20巻、No.2、183ページ(1998年2月))、光ディスクおよび周辺材料(98年2月、高分子光エレクトロニクス研究会講演要旨集)、高分子学会高分子エレクトロニクス研究会(平成11年1月22日)。
【0006】
これらの技術においては透明保護層の薄肉化が必要とされている。すなわち、光ディスクの透明保護層形成工程は、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルムまたはガラス板を紫外線硬化樹脂を用いて反射膜に付着することにより、透明保護層を形成するものである。また透明保護層の厚みは0.1mm程度で薄肉である。
【0007】
なお、本発明で使用する言葉は次の意味を持つ。
光ディスクとは主にポリカーボネート樹脂より形成されたディスク状の記憶媒体のことで記録層が付与されたものを言う。
【0008】
透明保護層とは光ディスクの記録層を透明な材料で覆い、この透明な材料の外側から信号を入出力するための層のことで、記録層を保護する働きもするものである。
【0009】
なお、この透明保護層は該層を記録層に付着させるため、接着剤やUV硬化樹脂などが介在する。
【0010】
保護フィルム(プロテクトフィルムともいう)とはプラスチックフィルム等の巻層体を形成する時にプラスチックフィルムと共巻して該フィルムの表面傷つきを抑えると共に、いわゆる巻層体のロールフォーメーションを良好に保つために用いるフィルムを意味する。プロテクトフィルムは一般的にはそのフィルムの片面に弱粘着性が付与されている。
【0011】
なお、本願明細書において、「弱粘着性」とは、例えば二つのフィルムを粘着させるがこれらを永久的または半永久的に接着させた状態にするものではなく、手で剥がすことによってこれらのフィルムを実質的に損傷することなく剥がせる程度の粘着性を有することを意味する。
【0012】
一般に光学用途のフィルムは表面が平坦であるために、そのままではロール状に巻き取って巻層体にすることはできない、これは高い光透過率を維持したままで表面に凹凸を形成させ、滑り性を付与することが難しいためである。
【0013】
従来、例えば、光学用途のプラスチックフィルム巻層体を得るには、いわゆるプロテクトフィルムをポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルムに積層して用いている。
【0014】
このプロテクトフィルムは、ポリエチレンとポリ酢酸ビニルなどのポリマーを共押出しして作成した構造となっていて、ポリ酢酸ビニル側の面がポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム面に対して弱粘着性を持っており、巻取りの直前でフィルム同士を貼り付け、弱くニップしてからワインダーで巻き上げてフィルム巻層体を製造している。
【0015】
従来の光ディスクの薄肉の透明保護層の形成工程において、プラスチックフィルムの使用に際しては、この巻層体からプロテクトフィルムを剥がし、プラスチックフィルムを円盤状に打ち抜き、これを成形したポリカーボネート光ディスクと貼りあわせている。
【0016】
そして、こうして作った薄肉の透明保護層付きの光ディスクは目視した場合(この表面凹凸は、プラスチックフィルムのままでは、通常の光の下では目視できない場合もあるが)表面に凹凸が発生する場合が多かった。そして、この表面凹凸は、光ディスクとして信号を入出力した場合に出力変動を大きくする原因の一つとなっていた。
【0017】
この表面の凹凸を解消するには、プラスチックフィルム巻層体を巻き出し、プロテクトフィルムを剥がした後、プラスチックフィルムをそのガラス転移温度より少しだけ低い温度で熱処理してから、円盤状に打ち抜いてこれをポリカーボネート光ディスクに付着させれば良いことが知られている。しかし、これでは透明保護層の準備工程にフィルムの熱処理工程を付加することが必要となる。
【0018】
またプロテクトフィルムを剥がした後のプラスチックフィルムが剥離帯電を起こして、雰囲気中の微細なゴミを引き付け、光ディスクと透明保護層との間にそのゴミが介在してディスクの外観を損ねたり、出力変動を大きくしたりする問題を生じる場合が多かった。
【0019】
このように従来技術は工程を煩雑にするなどの問題も多く、かつ、光ディスクの入出力特性の変動が大きいなど解決すべき課題が残されているのが現状である。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主な目的はこの薄肉化されたプラスチックフィルムを透明保護層として用いるための改良されたプラスチックフィルム巻層体を提供することにある。本発明の他の目的は、上述の問題がなく、より簡便で工業的に生産性が高い光ディスク用透明保護層として使用できるプラスチックフィルム巻層体を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは光ディスクの透明保護層のために用いるプラスチックフィルム巻層体の、光ディスクの出力変動に与える影響に関し、プラスチックフィルムとしてポリカーボネートフィルムを使用した場合について、次のような検討を行なった。
【0022】
<プラスチックフィルム自体の光学的斑の影響>
フィルムを付着させた光ディスクでこのような出力変動問題が発生する原因として、フィルムに光学的斑があるのではないかと考え検討した結果、確かに透明保護層として使用するポリカーボネートフィルムの厚み斑が悪い場合にこの問題が生じるが、ポリカーボネートフィルムの厚み斑を充分に小さくして光学的に均質にし、かつレターデーションが充分小さくフィルム面内で均質に分布したものであってもこの問題を完全には解決できないことが判明した。
【0023】
<プロテクトフィルムの厚み斑とプロテクトフィルムのヤング率が低いこととの影響>
通常のプロテクトフィルムは、比較的軟らかくヤング率の比較的低い高分子材料から作られている。そしてその片面は弱い粘着性を付与され、光学用途のような極めて平坦で単独ではロール状に巻き取ることができないプラスチックフィルム等にその弱粘着性の面を貼りつけて積層し、その表面を保護すると同時に、弱粘着面の反対側の面は適度に粗されていて滑り易い構造とされているために、プラスチックフィルムをロール状に容易に長尺に巻き上げることができるようになされている。
【0024】
しかし、プロテクトフィルムの素材のヤング率が低いために、該フィルムは外力により変形し易いという問題がある。このためか、巻き上げられたロールからポリカーボネートフィルムとプロテクトフィルムとを積層したものを採取し、厚み斑を測定すると、特にフィルム走行方向の厚み斑が著しく悪化している場合が極めて多いことがわかった。
【0025】
ところが、この積層体からポリカーボネートフィルムを分離してポリカーボネートフィルムのみの厚み斑を測定したところ全く悪くなってはおらず、厚み斑の悪化はプロテクトフィルムにのみ観測された。
【0026】
これは、プロテクトフィルムを巻き出し、平坦性を良くしてポリカーボネートフィルムに貼りあわせる際に、プロテクトフィルムに張力がかかるが、その際プロテクトフィルムがある程度伸びたり、塑性変形したために悪化が起こったものと考えられる。
【0027】
<プロテクトフィルムの粘着面の物質のプラスチックフィルムへの転写または転移の影響>
プロテクトフィルムの弱粘着層面の物質はポリカーボネートフィルムの表面に転移する現象を起こす場合が多い。例えば、ポリカーボネートフィルムをポリエチレンとポリ酢酸ビニルとからなるプロテクトフィルムと貼り付けるとその接触面の表面エネルギーが低下する現象が起こる。
【0028】
この表面エネルギーが低下したポリカーボネートフィルムの表面を走査電子顕微鏡で観察すると明らかに転移した物質が観察される。更にNMR分析等により転移した物質が同定されることからも物質の転移が確認できる。
【0029】
しかしながら、積層体からポリカーボネートフィルムを分離してポリカーボネートフィルムのみの厚み斑を測定しても全く悪くなってはいないことが判明した。
【0030】
<プロテクトフィルムの潜在的影響>
ところが、意外なことに、上記のごとく、巻層体から巻き出し、プロテクトフィルムを剥がしたポリカーボネートフィルムの厚み斑には異常が観察されず、プロテクトフィルムの表面にのみ異常が観察される場合に、そのプロテクトフィルムを剥がしたポリカーボネートフィルムをポリカーボネート製の光ディスクと貼り合わせると、光学的な斑が観察されることが見出され、これが上記出力変動の一因になっていることが判明した。
【0031】
この光学的な斑は光デスクの面振れ測定器で検出することができるが、光ディスクを斜め方向から目視するだけでも検出できる場合もある。
【0032】
これらのことから、この異常の原因は、プラスチックフィルムをプロテクトフィルムと貼りあわせて積層し、ロール状に巻き上げて巻層体とした場合に、プロテクトフィルムの変形や厚み斑の発生がプラスチックフィルムに対して巻き締まり力や局所的な微小な歪みを与えるであろうこと、巻層体においては、多分プロテクトフィルムが巻き締まることにより、更にプロテクトフィルムのプラスチックフィルムへの粘着力が強くなり、プラスチックフィルムにも力が加わり、プラスチックフィルムの平坦性が微小なオーダーで悪くなっているであろうこと、さらにはプロテクトフィルムからポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルムの表面に転移した物質が静電気を生じ易くし、プロテクトフィルムの巻き締まりによって、巻層体の巻き出しの際に静電気を発生させ易くなっているであろうこと等の潜在的原因によるものと推定した。
【0033】
この結果、本発明者らは次の発明に到達したものである。
【0034】
1. ビスフェノールAを主たる芳香族ジヒドロキシ成分とするポリカーボネートからなるプラスチックフィルムと、ポリエチレンテレフタレートからなる保護フィルムとを、その間に弱粘着性の接着剤を用いずに積層し、巻き上げたことを特徴とする光ディスクの透明保護層用プラスチックフィルム巻層体。
【0035】
2. プラスチックフィルムについて、厚みが50〜130μm、厚み斑が3μm以下、熱寸法変化率が0.07%以下、全光線透過率が90%以上、含有溶媒量が0.5重量%以下、面内レターデーション値Re.が2nm以上でかつ15nm以下、厚み方向のレターデーション値Kの最大値が100nm以下、表面粗さRaが両面共に1.5nm以上でかつ3.0nm以下であることを特徴とする上記1記載のプラスチックフィルム巻層体。
【0036】
3. プラスチックフィルムが、溶液キャスト法により製膜されたことを特徴とする上記1または2記載のプラスチックフィルム巻層体。
【0037】
4. ポリカーボネートの粘度平均分子量が30,000以上200,000以下であることを特徴とする上記1,2または3に記載のプラスチックフィルム巻層体。
【0038】
5. 芳香族ジヒドロキシ成分がビスフェノールA100モル%であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のプラスチックフィルム巻層体。
【0039】
6. 上記1〜5のいずれかに記載の巻層体を光ディスクの透明保護層形成用として使用することを特徴とする光ディスクの製造方法。
【発明の実施の形態】
以下本発明について更に詳しく説明する。
【0040】
(プラスチックフィルム)
意外にも、ビスフェノールAを主たる芳香族ジヒドロキシ成分とするポリカーボネートからなるプラスチックフィルムと、ポリエチレンテレフタレートからなる保護フィルムとを、該プラスチックフィルムと該保護フィルムとの間に弱粘着性の接着剤を用いないで該プラスチックフィルムの表面を被覆するように積層し、巻き上げたプラスチックフィルム巻層体は、上記の問題が解消でき、かかるプラスチックフィルムが光ディスクの透明保護層用として優れていることが判明した。
【0041】
特に、上記2.に示すように、特定の物性を有している場合には、このことが明白であった。
【0042】
本発明に係るプラスチックフィルムについては、厚みが50〜130μm、厚み斑は3μm以内、熱寸法変化率が0.07%以下、全光線透過率が90%以上、含有溶媒量が0.5重量%以内、レターデーション値が2〜15nm、後述するK値の最大値が100nm以下、かつ表面粗さRaがフィルムの両表面共に1.5〜3,0nmの範囲にあるのが望ましい。
【0043】
本発明におけるプラスチックフィルムは保護層とは言え光学系の一部品ともなるものに使用されるため、その厚みは光ディスクの信号を最適状態で入出力するために重要である。プラスチックフィルムの厚みのより好ましい範囲は60〜120μm、更に好ましくは70〜100μmである。
【0044】
かかるプラスチックフィルムの厚みは光ディスクの信号を書き込み読み出す際に用いるレーザー光源の波長によって選択されるのが普通である(例えば、片面12Gbyteの大容量光ディスク O plusE(20巻,No.2,183ページ(1998年2月)参照)。
【0045】
かかるプラスチックフィルムの厚み斑は大きすぎる場合には光学的歪みが顕著になり、光ディスク信号の入出力変動(ノイズ)も大きくなるという問題を生じる。好ましくは2μm以内、更に好ましくは1μm以内である。
【0046】
光ディスクの記録層にはレーザー光などが高いエネルギー密度でμmオーダーの微小領域に繰り返し入射される。このため記録層近傍の微小な領域に熱的なストレスが与えられる。特に光書き込みが繰り返し行われる場合にはこの影響が材料に与えられ、記録層界面などでのミクロな剥離などが起こり記録の信頼性を低下させる。このため該フィルムは熱的安定性が高いことが好ましい。
【0047】
熱的安定性としては熱寸法安定性がその尺度となるが、熱寸法変化率は小さいことが好ましい。プラスチックフィルムの熱寸法変化が大きすぎる場合には光ディスクと透明保護層との界面で熱的なストレスにより上記の問題(記録層と透明保護層との界面でのミクロな剥離)が起こり易くなるので好ましくない。熱寸法変化率は好ましくは0.07%以下である。更に好ましくは0.05%以下である。
【0048】
本発明に係るプラスチックフィルムの全光線透過率は好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上である。透明保護層を通しての光信号の劣化を防止するには全光線透過率は高ければ高い方が良い。90%を切ると光信号の劣化が光ディスクとして許容できない場合がある。
【0049】
本発明に係るプラスチックフィルムの含有溶媒量はできるだけ少ないことが好ましい。プラスチックフィルムに含まれる含有溶媒量が多すぎる場合、コーテイングやスパッタリング処理などにより表面処理する場合に含有溶媒が蒸発して悪影響する場合があるので好ましくない。含有溶媒量は好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下である。
【0050】
また、本発明に係るプラスチックフィルムにおいては、レーザー光は信号の入出力時このプラスチックフィルム内を通過する。この際光学的擾乱が起こる場合がある。これは光ピックアップのサーボ信号や信号レベルなどへも影響する。このためプラスチックフィルムの面内レターデーション値は小さい方がよいが、2〜15nmであることが好ましい、より好ましくは2〜8nmであり、更に好ましくは2〜6nmである。
【0051】
更にこれらは、読取り光の再生信号へのモジュレーションを小さくし再生信号レベルを安定化するため、プラスチックフィルム面内でのばらつきは2〜8nmであり、更に好ましくは2〜6nmである。
【0052】
更に、本発明に係るプラスチックフィルムにおいては、後述するK値の最大値が好ましくは100nm以下、より好ましくは70nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0053】
3次元の屈折率異方性を示す後に定義されるパラメーターKの最大値が大きくなるとノイズの増大の原因となる。この点からプラスチックフィルムのKの最大値が規定される。
【0054】
本発明に係るプラスチックフィルムの表面粗さRaは両面ともに1.5〜3.0nm、より好ましくは、1.5〜2.5nmである。表面粗さが大きすぎる場合は表面凹凸部が光を散乱させる結果ノイズ増大の原因となるので好ましくない。
【0055】
本発明に係るプラスチックフィルムは、芳香族ポリカーボネートを溶液キャスト法(溶液流延法)で製膜したものであるのが好ましい。溶液流延法製膜が好ましいのはプラスチックフィルムに筋状の微細な厚み斑を生じ難いためや異物を生じ難いためである。
【0056】
溶液流延法におけるポリカーボネートの溶解溶剤はメチレンクロライドまたは1,3−ジオキソランまたは両者の混合溶媒を用いるものであることが好ましい。
【0057】
本発明に係るプラスチックフィルムを光ディスクの透明保護層用として使用する光ディスクを取り扱う際にはその表面破損防止や傷付け防止のための注意が必要である。このためにプラスチックフィルムの少なくとも片面は従来公知の方法により表面硬化処理(ハードコート処理)されていても良い。
【0058】
(光ディスク)
本発明における光ディスクとしては、例えばポリカーボネート樹脂、非晶性ポリオレフィン系樹脂、メタクリル樹脂等を溶融押し出しして形成されたもの、熱硬化性樹脂より形成されたものをあげることができる。光ディスクにおける記録層は読み出しだけ可能なROM型、読み出しと書き込みだけが可能なWORAM型、およびまたは読み出し、書き込み、消去が可能な書き換え可能型がある。
【0059】
ROM型には誘電体やAlなどの光反射膜を利用するCD、CD−ROMやビデオディスク、また書き込み型には有機色素やTeなどの無機材料を用いるCD−Rや一般の追記型ディスク、また書き換え型にはTbFeCoに代表される光磁気記録媒体やGeTeSbに代表される相変化記録媒体が挙げられる。但し本発明はこれら材料に限られるものではない。
【0060】
本発明に係るプラスチックフィルム巻層体は、かかる巻層体から保護フィルムを取り除いてから、あるいは取り除きながら、プラスチックフィルムを光ディスクの表面に、紫外線硬化樹脂などを接着剤として付着させて使用されるものである。付着時には、かかるプラスチックフィルムを光ディスクの形状に打ち抜いてから付着してもよいし、付着後に光ディスクの形状としてもよい。
【0061】
(プラスチックフィルム材料)
本発明に係るプラスチックフィルムのために用いることのできるポリカーボネートは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を主たる芳香族ジヒドロキシ成分とするポリカーボネートである。
【0062】
ここでいうポリカーボーネートとは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主たる芳香族ジヒドロキシ化合物とし、これと、ホスゲン、ジフェニルカーボネートの如き炭酸結合生成性の化合物とを、溶液状態、バルク、溶融状態等で反応せしめることにより得られる重合体のことをいう。
【0063】
用いる芳香族ジヒドロキシ化合物における2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの割合は少なくとも80モル%、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。20モル%以下で用いる上記芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、具体的には以下に示す化合物を挙げることができる。
【0064】
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのフルオレン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4、4’−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルフェニルエーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルスルフィドなどのジヒドロキシアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3−3’−ジメチルフェニルスルホキシドなどのヒドロキシアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルスルホンなどのジヒドロキシアリールスルホン類などである。
【0065】
これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は単独または組合わせて用いることができる。
【0066】
また、上記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部をテレフタル酸および/またはイソフタル酸成分で置き換えたポリカーボネートを使用することも可能である。このような構成単位をビスフェノールAからなるポリカーボネートの構成成分の一部に使用することにより、ポリカーボネートの性質、例えば耐熱性、溶解性を改良することができる。このような共重合体についても本発明を用いることができる。
【0067】
(ポリカーボネートの分子量)
本発明に係るポリカーボネートの分子量としては、特に限定はないが、濃度0.5g/dlの塩化メチレン溶液中20℃での粘度測定から求めた粘度平均分子量が30,000以上200,000以下、好ましくは30,000以上120,000以下の範囲のものを挙げることができる。
【0068】
粘度平均分子量が小さすぎる場合にはフィルムを薄肉円盤状として打ち抜く際に、打抜き端面に微少なノッチが入ったり、切粉が出易くなったりするので好ましくない。また粘度平均分子量が高すぎる場合は溶液製膜する際に平坦な液膜を生じにくくフィルムの厚み斑が悪化するという問題点がある。
(フィルムの製造)
本発明のプラスチックフィルムは、ポリカーボネートを溶液流延法で製膜したものであるのが好ましい。溶液流延法製膜が好ましいのはプラスチックフィルムに筋状の微細な厚み斑を生じ難いためや異物を生じ難いためである。
【0069】
(ア:溶媒)
本発明に係るプラスチックフィルムを流延法によって製膜する場合に用いることのできるポリカーボネートの溶媒としては、特に限定はなく、通常知られた溶媒が使用できる。例えば芳香族ポリカーボネートの溶媒を作成するために用いられる溶媒としては、塩化メチレンまたは1,3−ジオキソランやその混合物あるいはこれらを主体とする溶媒を挙げることができる。
【0070】
これらの溶媒は、フィルムの製造においては、水を極力含まないのが好ましい。溶媒として塩化メチレンを用いる場合はその水分率が50ppm以下、より好ましくは30ppm以下とする。この溶媒の脱水(乾燥)は通常知られているモレキュラーシーブを充填させた脱水装置によって実施できる。
【0071】
(イ:溶液製膜)
上記の溶媒に芳香族ポリカーボネートを溶解させた溶液を作成する。この溶液は通常ポリカーボネートが15〜35重量%になるように調整する。上記のように調整された樹脂溶液を押し出しダイにより押し出して、支持体上に流延する。
【0072】
(ウ:乾燥)
キャストされた液膜はいくつかの区画に仕切り各区画の乾燥条件(熱風温度、風速など)を変えることができるオーブンを用いて乾燥する。第1の区画においては、支持体上にキャスト直後の液膜は極力表面の乱れが生じないように、いわゆるレベリング斑が生じないように乾燥する。加熱の方法は乾燥効率を上げるために流延された液膜を、熱風で乾燥する方法やベルトの反液膜面を熱媒で加熱する方法をとる。取扱いの容易さから熱風を用いるのが好ましい。
【0073】
キャスト直後のベルト表面の温度、並びに雰囲気の温度はポリカーボネートの溶解溶媒の沸点以上にはあげないようにする。沸点以上に液膜の温度を上げると溶媒の突沸による気泡がフィルム中に発生する結果となる。溶媒が塩化メチレンの場合その温度は40℃以下、好ましくは30℃以下とするのが良い。
【0074】
溶媒が塩化メチレンの場合は次の第2の区画で45〜50℃とし、液膜中の塩化メチレン濃度が30〜40重量%程度になるまで乾燥して液膜の変形がおこらないようにするのがよい。
【0075】
溶媒が塩化メチレンの場合、第3の区画においては45〜50℃とし、フィルム中の溶媒量は23〜27重量%程度とするのがよい。
【0076】
また、第4の区画においては、乾燥温度は50〜55℃とし、この時のフィルム中の溶媒量を18〜20重量%程度とするのがよい。第5の区画においては15℃程度に冷却してフィルムを支持体より剥ぎ取るのがよい。
【0077】
(エ:後乾燥)
次いでフィルムを後乾燥させた後無延伸のまま使う用途や延伸して使う用途に向けて更に乾燥させる。この際フィルムの光学特性(屈折率)を制御しつつ乾燥させるのがよい。
【0078】
この乾燥にはフィルムの幅方向の両端部を把持して搬送する方式のピンテンター、ロール懸垂型乾燥機や空気浮遊式の乾燥機等公知乾燥方法を適宜組み合わせて用い、フィルムの光学特性を制御することができる。こうして得られたフィルムを巻き取って光学用途の芳香族ポリカーボネートフィルムとする。最終的に製膜するフィルムの厚さは50〜130μmが好適である。
【0079】
(オ:製膜工程巻取り)
フィルムの巻き取り工程では、保護フィルム(プロテクトフィルムともいう)としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる。ロールからフィルム端を引き出しポリカーボネートフィルムと重ね合わせてニップロールにてニップし、フィルム間の空気を追い出し、皺が寄らないように両者を共巻きする。かくして本発明に係るプラスチックフィルム巻層体を製造する。
【0080】
(保護フィルム(プロテクトフィルム))
本発明において、プラスチックフィルムに、該プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面を被覆するように保護フィルムを積層する。積層は、プラスチックフィルムとプロテクトフィルムを共巻きにして行なう。共巻きするプロテクトフィルムは、両面共に粘着性が付与されていないポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを用いる。かかるフィルムとしては二軸延伸フィルムを好ましく用いることができる。これらの二軸延伸フィルムは厚み斑が小さい(良い)ものが得られるため好ましい。延伸倍率としては、タテ、ヨコ方向共に3.0倍以上が、特にタテ、ヨコ方向共に3.5倍以上が好適である。また、タテ、ヨコ方向のヤング率が450Kg/mm2以上(4.41GPa以上)であるものが好ましい。特にタテ、ヨコ方向のヤング率が550Kg/mm2以上(5.39GPa以上)であるものが好適である。とりわけタテ方向のヤング率がヨコ方向のヤング率よりも高いものが好適である。
【0081】
これらフィルムの厚みは、10〜50μm、表面粗さRaが10nm〜30nmが好ましく、粗大な表面突起がないもの、例えば3μm以上の高さの表面突起が実質的にないことが好ましい。
【0082】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例における本発明に係る測定、効果の評価は次の方法によった。
【0083】
1)フィルムの厚みの測定方法
プロテクトフィルムを積層していないポリカーボネートフィルムの巻き取り方向に1mで全幅分のサンプルを採取した。その幅方向(巻き取り方向と直交する方向)と巻き取り方向とに10cmx10cm方眼(幅方向の端数が50mmを越える場合にはその部分も測定サンプルとした)にフィルムを区切り、この各々の方眼のほぼ中央部で、その厚みを(株)ミツトヨ製のマイクロメーターを用い測定した。そして、測定点100点の厚みの平均値を求めて、これをフィルムの厚みとして表示した。
【0084】
2)フィルム厚み斑の測定方法
上記1)のマイクロメ−ターによる測定方法では測定点以外に存在する可能性のある厚み斑、例えば細い筋状の厚み斑などを見逃す恐れがあるため、厚み斑をアンリツ(株)製フィルムシックネステスターKG601Aを用いて連続測定した。
測定フィルムのサンプリングは次ぎの様に行なった。即ち、フィルムの巻き取り方向に5cm間隔で全幅分のサンプルを連続して10枚(フィルムの巻き取り方向に合計50cmを)切り出した。
このそれぞれのサンプルの厚み分布を上記フィルムシックネステスターで測定し記録紙上に記録した。
かくして記録された厚みの最大値と最小値との差(厚みの範囲)を上記10枚のフィルムについて求め、この内から厚みの範囲が最大であるものをこのフィルムの厚み斑として表示した。
【0085】
3)熱寸法変化率
ポリカーボネートフィルムの幅方向(フィルム幅はほぼ1mであった)を3等分し適当な大きさの親サンプルを採取した。そして、更にこの各親サンプルより熱寸法変化率測定用サンプルを10個づつ、計30個作成した。
熱寸法変化率測定用サンプルの大きさは、各親サンプルよりの10個のサンプルのうち5個については、フィルムの巻き取り方向を150mm、それに直角な方向を10mmとし、残りの5個については、フィルムの巻き取り方向を10mm、それに直角な方向を150mmとした。
そしてそのそれぞれのサンプルについて、150mmの長さ方向に、熱寸法変化率測定のための標点を、100mmの間隔で、印した。
かくして、フィルムの巻き取り方向に15点、それに直角な方向(幅方向)に15点の測定用サンプルを準備した。
測定用サンプルを140℃の恒温槽にて無荷重下で吊り下げて1時間処理した後、室温に取り出し冷却して後、標点間隔を測定した。寸法の測定は、恒温恒湿下、23℃、65%RHの条件下で、読取り顕微鏡を用いて実施した。
寸法の変化率は140℃熱処理前後の寸法から次のように、巻き取り方向の15点、幅方向の15点について求めた。そしてその最大値を熱寸法変化率として表示した。
熱寸法変化率={(処理前の寸法)−(処理後の寸法)}/(処理前の寸法)×100%。
【0086】
4)全光線透過率
ポリカーボネートフィルムの幅方向3ヵ所から約300mm平方のサンプルを採取した(フィルム幅はほぼ1mであった)。
サンプルの全光線透過率を日本電色工業(株)製の色差・濁度測定器COH−300Aを用いて測定した。各サンプルについて5点測定し、幅方向3サンプルについての計15点の平均値を全光線透過率とした。
【0087】
5)ポリカーボネートフィルム中の含有溶媒量の測定
溶媒を含有したポリカーボネートフィルム約5gを採取し、170℃の熱風乾燥機で1時間乾燥させた後室温まで冷却した。
その際、当該乾燥前後の重量を化学天秤で精秤し、その変化率を求めた。これにより固形分基準の溶媒含有量を求めた。
具体的には、ポリカーボネートフィルム(幅は約1m)を幅方向に5等分して測定した。そしてこれを3回、別々の幅方向について実施し、その平均値を求める方法によった(15点測定の平均値を含有溶媒量として表示した)。
当該乾燥前の重量をa、乾燥冷却後の重量をbとした場合、固形分基準の溶媒含有量の個々の測定値は、次式で表すことができる。
{(a−b)/b}×100%
【0088】
6)面内レターデーション値Re.の測定
ポリカーボネートフィルムの、全幅分で巻き取り方向の長さ40mmの短冊状サンプルを、巻き取り方向に3ヵ所、50cm間隔で採取した。
ついで、この短冊状フィルムを40mm間隔に切って40mm平方の測定用サンプルを作成した。即ち、フィルム全幅方向の長さ1000mmから25個、短冊状サンプルが3個あるので、全部で75個の測定用サンプルを得た。
これらのサンプルにつき面内レターデーション値Re.を測定した。数値の表示はRe.値の範囲とし、その最小値〜最大値として表示した。
測定器は王子計測機器(株)製の複屈折率測定器である商品名KOBRA−21ADHを使用して、光線をポリカーボネートフィルム面に垂直方向に入射し面内レターデーションRe.値を測定した。
【0089】
7)厚み方向のレターデーション値Kの測定
上記6)項の測定と同様にサンプリングしKOBRA−21ADHで測定した。
ポリカーボネートフィルムサンプルをその遅相軸または進相軸で回転させて入射角度を変えてレターデーションを測定し、これらのデータから屈折率nx、ny並びにnzを計算した。更にこれらの値からK値=|((nx+ny)/2−nz)*d|(2本の縦棒は絶対値であることを意味する。)を計算した。ここで、nxは巻き取り方向の屈折率を、nyは巻き取り方向に直交する方向の屈折率を、nzは厚み方向の屈折率を表わし、dは測定フィルムの厚み(単位はμm)をあらわす。なお、K値の単位は、上記の計算の時はμmで算出されるが、これを表示する時にはnm単位に変換している。
本願明細書においてK値の最大値とはそれらの中での最大値を意味する。
【0090】
8)中心線平均表面粗さ(Ra)の測定
中心線平均表面粗さ(Ra)とはJIS−B0601で定義される値であり、本願明細書における数値は、(株)小坂研究所の接触式表面粗さ計(Surfcorder、SE−30C)を用いて測定した。
Raの測定条件は下記のとおりであった。
触針先端半径:2μm
測定の圧力:30mg
カットオフ:0.08mm
測定長:1.0mm
上記3)の親サンプルと同様にして、フィルムの全幅方向3ヵ所についてサンプリングし測定に用いた。
同一試料について5回繰り返し測定し、その測定値(μm単位による小数点以下4桁目までの値)について、最も大きな値を一つ除き、残りの4つのデータを得、全3個所のデータである12個の値の平均値の小数点以下5桁目を四捨五入して、少数点以下4桁目までをnm単位で示した。
【0091】
9)透明保護層の平坦性の評価方法
直径12cmの歪みの無い平坦な硝子円盤またはポリカーボネート樹脂製円盤を作り、この表面にアルミニウムを真空蒸着したものを準備した。
直径12cmに打ち抜いたポリカーボネートフィルムとこの硝子円盤またはポリカーボネート樹脂製円盤とを紫外線硬化樹脂により貼りあわせ、透明保護層を形成させた。
ついで、貼りあわせた透明保護層側の面に斜めに上方向からウシオ電機(株)製の水銀ランプ(MODEL UI−100)からの平行光線を投射し、反射光を光学的な歪み(濃淡画像)としてスクリーンに投影し観察した。
光学的歪みの大きなものは平行光線の投射角度が大きな場合に検出され、投射角度を次第に小さくすることによって小さな光学歪みも検出できる。
ここで、投射角度とは投射された平行光線に平行な任意の一つの直線を含み、かつ当該フィルム面と直交する面上で当該直線がフィルム面と成す角度のうちの小さいほうの角度を意味し、平行光線がポリカーボネートフィルム面に垂直になる場合に最大値である90゜を取る。
このようにしてディスクと保護層ポリカーボネートフィルムとを貼りあわせたものを目視観察し、光学歪みが観察されない場合を良品、歪みの生じているものを不良品と判定した。ここで観察される光学歪みとは目視観測で得られる、白く見えるディスクの画像上に現れる、黒灰色のもやもやとした模様である。
この歪みの大きさを定量化する場合にはスクリーン上の画像をデジタルカメラで撮影し、パソコンに入力して画像処理して求めることができる。
【0092】
[実施例1]
芳香族ポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成(株)製の商品名「パンライト(登録商標グレードC−1400QJ)」)、粘度平均分子量38,000を120℃で16時間熱風乾燥し、次いで減湿空気により30℃まで冷却した。この芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットをメチレンクロライド溶媒に溶解させ、18重量%の溶液を準備した。
この溶液をフィルターに通し異物を除去した。
更にこの溶液の温度を15±0.5℃に調節して1200mm幅のコートハンガーダイに導入し、続いて、約560μmの液膜として上記支持体上に流延した。流延を開始する直前の支持体の温度(表面温度)を9℃に設定した。
【0093】
流延されたポリカーボネートフィルムを次のようにして乾燥した。
(第1区画)
乾燥の初期段階においては支持体裏面に30℃の温風を吹きつけて加熱し、ポリカーボネートフィルムの雰囲気温度を20℃としてポリカーボネートフィルムの変形(レベリング不良)が起こらないように注意して乾燥させた。
(第2区画)
ついで、温風吹きつけにより、雰囲気温度を45℃とし、ポリカーボネートフィルム中の塩化メチレン濃度が35重量%程度になるまで乾燥した。
(第3区画)
ついで、温風吹きつけにより、雰囲気温度が50℃で乾燥し、ポリカーボネートフィルム中の溶媒量を25重量%とした。
(第4区画)
この区画において、55℃の雰囲気温度で乾燥した。この時のポリカーボネートフィルム中の溶媒量を20重量%とした。
(第5区画)
この区画において、ポリカーボネートフィルムを支持体と共に15℃の雰囲気で冷却した。この工程の終了点におけるポリカーボネートフィルム中の溶媒量は18重量%であった。
【0094】
次に、上記ポリカーボネートフィルムを支持体より剥離した、剥離したポリカーボネートフィルムを更にピンテンター方式の乾燥機に送り込み、乾燥しつつ搬送した。
【0095】
ピンテンターにおいてはポリカーボネートフィルムの両端部をピンで把持してポリカーボネートフィルムを搬送させた。ピンテンターが6つのゾーンに分割された方式のものを用いた。
【0096】
ピンテンター中において、入口からポリカーボネートフィルムの乾燥が進み、それにしたがって幅が収縮するので、この幅の収縮に合わせてピンテンターのレール幅も狭めるようにして乾燥させた。すなわち、ピンテンター工程の後半になるに従って熱風温度を上昇させポリカーボネートフィルムの乾燥を促進させた。この際ポリカーボネートフィルムの分子配向が極力起こらないようにピンテンターのレール幅を設定するようにした。前半の熱風温度を90℃、110℃、120℃とし、中間の4、5ゾーンの温度を130℃として、この5ゾーン部でポリカーボネートフィルムをピン突き刺し部から切り離した。更に6ゾーンで135℃の熱風温度とした。
【0097】
ピンテンターの出口において、ほぼ室温下で、ポリカーボネートフィルムの引取り張力を0.49MPaとして引き取った。
【0098】
さらに引続き、ロール懸垂型の乾燥機へ通膜した。
このロール懸垂型乾燥機は2つの部屋に分割し、前部の熱風温度を135℃、後部の熱風温度を145℃として、引取り張力を0.15MPaとして引取った。
【0099】
かくして、得られたポリカーボネートフィルムの特性は下記のとおりであった。得られたポリカーボネートフィルムの幅は1.0mであった。
ポリカーボネートフィルム厚みが100μm、厚み斑が2μmであった。
熱寸法変化率が0.07%、全光線透過率が90%、含有溶媒量が0.3重量%、面内リターデーション値が4〜10nm、表面粗さRaが1.8nm、K値の最大値が90nmであった。
【0100】
更に、得られたポリカーボネートフィルムをワインダーで巻取り直前に20μm厚みのポリエチレンテレフタレートフィルム(ヤング率、縦横共に5.29GPa、表面粗さRaが両面共25nm)を重ねてニップし、500mの長さにロール状に巻取って巻層体を形成した。
【0101】
この巻層体を室温に6ヶ月間保存してのち、ポリカーボネートフィルムの平坦性評価をおこなった。すなわち、巻層体からポリカーボネートフィルムを巻き戻し、表層と巻芯から250mの部分(中間層)と巻芯部とからサンプルをとった。
【0102】
サンプルはポリカーボネートフィルムの幅方向3ヵ所から切り出し合計9個を用いた。
これらのサンプルを円盤状に打ち抜き、平坦な直径12cmのガラス円盤に紫外線硬化型樹脂で貼り付けた。
こうして、透明保護層としての平坦性の評価をおこなった。
その結果、表層、中間層、巻芯部から作成した全てのポリカーボネートフィルムサンプルにおいて、光学的な歪みが全く検出されず、極めて平坦性に優れたものであった。
【0103】
[比較例1]
実施例1で作成したポリカーボネートフィルムをワインダーで巻取る際に、ポリエチレンとポリ酢酸ビニルとの共押出しフィルムからなるプロテクトフィルムをポリカーボネートフィルムの夫々に弱粘着面を重ね合わせ、ニップして積層し500mの巻層体を2つづつ作成した。
【0104】
それらをそれぞれ、実施例1のものについて巻層体A1、巻層体A2と名付けた。
【0105】
巻層体の1方である巻層体A1を直ちに解きほぐし(すなわち、ポリカーボネートフィルムとプロテクトフィルムとに剥がし)、実施例1と同様にしてポリカーボネートフィルムの平坦性の評価をおこなった。
その結果、巻層体A1の表層は平坦性が良好であったが、中間層、巻芯部ではやや悪くなっている傾向が見られた。
【0106】
巻層体の残りの1方である巻層体A2を室温下に6ヶ月保管して後、解きほぐして実施例1と同様に平坦性の評価をおこなった。
その結果、巻層体A2は共に、表層、中間層、巻芯部とも平坦性が悪化しており、表層から巻芯部に近づくに従って悪さがひどくなっている
ことが解った。
【0107】
【発明の効果】
本発明によると、プラスチックフィルムに光学的な歪みを与えないプラスチックフィルム巻層体を提供でき、該ポリカーボネートフィルムを高密度の光ディスク用の透明保護層として用いれば光学歪みを発生させず、簡便で工学的に生産性の高い光ディスクを提供できる。

Claims (6)

  1. ビスフェノールAを主たる芳香族ジヒドロキシ成分とするポリカーボネートからなるプラスチックフィルムと、ポリエチレンテレフタレートからなる保護フィルムとを、その間に弱粘着性の接着剤を用いずに積層し、巻き上げたことを特徴とする光ディスクの透明保護層用プラスチックフィルム巻層体。
  2. プラスチックフィルムについて、厚みが50〜130μm、厚み斑が3μm以下、熱寸法変化率が0.07%以下、全光線透過率が90%以上、含有溶媒量が0.5重量%以下、面内レターデーション値Re.が2nm以上でかつ15nm以下、厚み方向のレターデーション値Kの最大値が100nm以下、表面粗さRaが両面共に1.5nm以上でかつ3.0nm以下であることを特徴とする請求項1記載のプラスチックフィルム巻層体。
  3. プラスチックフィルムが、溶液キャスト法により製膜されたことを特徴とする請求項1または2記載のプラスチックフィルム巻層体。
  4. ポリカーボネートの粘度平均分子量が30,000以上200,000以下であることを特徴とする請求項1、2または3に記載のプラスチックフィルム巻層体。
  5. 芳香族ジヒドロキシ成分がビスフェノールA100モル%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチックフィルム巻層体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の巻層体を光ディスクの透明保護層形成用として使用することを特徴とする光ディスクの製造方法。
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