JP4282136B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維布帛又は紙を記録材料とするインクジェット記録方法において、記録面が所望の風合い・質感を有するインクジェット記録方法、およびそれに用いる記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、繊維布帛又は紙に直接インクジェット記録をしようとする場合、「インクの滲み」、「インクが裏まで抜けてしまうため鮮明な画像を得ることができない」、「インクの裏抜けによりインクジェットプリンタを汚してしまう」等の問題があった。
【0003】
これを解決するものとして、繊維布帛等にインク受容性を有する表面被膜を設けたり、繊維布帛等をインク受容性のある塗料に含浸させるなどしてインク受容性を付与したものが使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、そのようなものは被膜や塗料を構成する樹脂バインダの影響を受け、繊維布帛等が本来持つ風合い・質感に欠けるものであった。即ち、記録した繊維布帛等の風合いを生かして使用したい場合、例えば、繊維布帛にデザインを記録し、衣類として使用したい場合などに、記録面が所望の風合い・質感を有さないといった不都合を生じていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、これを解決するに至った。
【0006】
即ち、上記課題を解決する本発明のインクジェット記録方法は、繊維布帛の一方の面に、インク受容層、支持体を順次有する記録材料の、前記繊維布帛のインク受容層を有する面とは反対側の面からインクジェット記録を行った後、前記インク受容層から前記支持体を剥離することを特徴とするものである。
【0009】
まず、本発明のインクジェット記録方法について説明する。
【0010】
本発明のインクジェット記録方法は、繊維布帛又は紙の一方の面にインク受容層を有する記録材料の当該インク受容層とは反対側の面にインクジェット記録を行うことを特徴とするものである。
【0011】
このように、インク受容層を有する面とは反対側の面よりインクジェット記録を行うことから、記録面はインク受容層を構成する樹脂成分の影響を受けることなく、繊維布帛等の独自の風合い・質感を保持したものとすることができる。
【0012】
また、裏面に存在するインク受容層により、画像の滲みを防止すること、インク乾燥性を早めること、インクジェットプリンタが汚れてしまうことを防止することができるとともに、繊維布帛等を透過してきたインクを吸収しそこに補助的な画像を形成し、繊維布帛等のみでは困難な鮮明な画像形成を補助することができる。
【0013】
即ち、本発明のインクジェット記録方法によれば、繊維布帛等の風合い・質感を保持し、かつ良好にインクジェット記録された記録面を有する繊維布帛等を得ることができる。このようなものは、衣類の生地などの風合いを重視する用途において非常に有用なものとなる。
【0014】
次に、本発明のインクジェット記録方法に用いる記録材料について説明する。
【0015】
本発明の記録材料は、繊維布帛又は紙の一方の面にインク受容層を有する記録材料であって、前記繊維布帛又は紙のインク受容層を有する面とは反対側の面にインクジェット記録を行うように構成したことを特徴とするものである。
【0016】
繊維布帛および紙は、インクジェット記録における印字面側に位置し、染料インクの一部を吸収又は顔料インクの顔料成分を定着することにより、画像を形成する役割を有するものである。このような繊維布帛又は紙としては、前記役割を果たすものであればその材質等は特に限定されることなく、繊維布帛であれば、織布、不織布のいずれも使用することができ、紙であれば、和紙、洋紙のいずれのものも使用することができる。
【0017】
インク受容層は、繊維布帛又は紙のインクジェットプリンタにより記録される面とは反対側の面に形成されるものである。即ち、本発明におけるインク受容層の役割は、そこに画像を形成することを主とするのではなく、▲1▼本来繊維布帛等の横方向に拡散し画像滲みの原因となるインクを吸収することによって画像の滲みを防止し、▲2▼繊維布帛等を透過してきたインクを吸収してインク乾燥性を早め、▲3▼これとともにインクジェットプリンタが汚れるのを防止し、▲4▼更に、繊維布帛等を透過してきたインクを吸収することによって補助的な画像を形成し、繊維布帛等のみでは困難な鮮明な画像形成を補助する、というところにある。
【0018】
インク受容層に使用する樹脂としては、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジウムハライド、メラミン樹脂、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアクリル酸ナトリウム等の親水性合成高分子やゼラチン、でんぷん、セルロース、カゼイン、キチン、キトサン等の親水性天然高分子、ポリエチレンオキサイドやその共重合体等の高吸収性樹脂等があげられる。
【0019】
また、インク受容層には顔料を添加しても良い。顔料としては、シリカ、クレー、タルク、ケイソウ土、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、合成ゼオライト、アルギン酸カルシウム、アルミナ、スメクタイト等があげられる。この中でもインク吸収性に優れる、シリカ、スメクタイト、アルミナが好適に使用される。
【0020】
なお、インク受容層を構成する樹脂に粘着性ポリマーを混合させるなどし、インク受容層が粘着性を有するものとすれば、インクジェット記録後の記録材料を所望の場所に貼着することができる。
【0021】
インク受容層が粘着性を有するものである場合、取扱性の観点から、加熱によって粘着性を発現するホットメルト型、ディレードタック型であることが好ましい。なお、常温で粘着性を帯びているものであってもインク受容層上にセパレータを設けたものであれば何ら差し支えはない。
【0022】
ディレードタック型とは、常温では粘着性を有しないが、加熱により粘着性を発現させる作用を有するものであり、一旦粘着性が発現した後は、常温に戻ったとしても粘着性を失わないものである。具体的には、インク受容層中に熱可塑性樹脂、結晶性可塑剤及び粘着付与剤を含むものであり、当該結晶性可塑剤は常温においては固体であるため樹脂に可塑性を与えないが、加熱により溶融して樹脂を膨潤あるいは軟化させるため、常温では非粘着性のインク受容層に加熱により粘着性を発現させるものである。
【0023】
また、インク受容層は、十分なインク吸収能を発揮させるべく、その厚さが2μm以上のものであることが好ましい。
【0024】
このようなインク受容層は、繊維布帛又は紙上に、上述した樹脂等を溶媒に溶解又は分散させたインク受容層用塗工液を、バーコーティング等の公知の塗工方法により塗布・乾燥する方法、あるいはプラスチックフィルム等に形成したインク受容層を繊維布帛又は紙上に転写すること等によって形成することができる。
【0025】
上記手段によりインクの滲み等の問題は防止できるが、搬送性に難がある場合には、インク受容層上に適当な支持体で裏打ちを行うことが好ましい。即ち、記録材料を、繊維布帛又は紙、インク受容層、支持体の順に積層することが好ましい。
【0026】
支持体としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のプラスチックフィルム、合成紙、紙、繊維布帛等があげられる。支持体の厚さとしては特に限定されるものではないが、機械への搬送性から好ましくは5〜300μmの厚さのものを使用することが望ましい。
【0027】
このようにプラスチックフィルム等で裏打ちをする場合には、プラスチックフィルムとインク受容層の間を剥離可能に構成しておいてもよい。そのようにしておけば、プラスチックフィルム等の影響を受けることなく、全体の感触が柔らかなインクジェット記録された繊維布帛等を得ることができる。
【0028】
なお、本発明の記録材料においては、記録材料の記録特性・風合い等を害しない範囲で、繊維布帛等とインク受容層との間、若しくはインク受容層と支持体との間に別の層を介在させることは何ら差し支えない。例えば、繊維布帛等とインク受容層との間にインク透過性を有する接着層を設けること、あるいはインク受容層と支持体との間に接着層、離型層を設けたものであってもよい。
【0029】
本発明の記録材料は上記のような構成を採用することから、繊維布帛等においては、その風合い・質感を残しつつ、インクジェット記録された記録面を得ることができる。従って、衣類の生地、宣伝広告用の幟など記録面の風合いを生かして使用したい場合に非常に有用なものである。
【0030】
また、インク受容層が粘着性を有するものである場合には、繊維布帛等をそのまま所望の場所に貼着することが可能であり、例えば、Tシャツにワンポイントマークを付そうとする場合に非常に有用なものとなる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0032】
[参考例1]厚さ100μmのポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)上に、下記の組成のインク受容層用塗布液を、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布・乾燥してインク受容層を形成した。
【0033】
<インク受容層用塗布液>
・ポリビニルアルコール 5部
(ゴーセノールNH-18:日本合成化学工業社)
・水溶性ホットメルト樹脂 5部
(ゴーセランL−0301:日本合成化学工業社)
・水 100部
【0034】
得られた材料のインク受容層側と、坪量115g/m2の木綿生地を重ね合わせ、加熱・圧着した後、ポリエステルフィルムを剥離して記録材料を得た。
【0035】
[実施例1]厚さ75μmのポリエステルフィルム(ルミラーQ81:東レ社)上に、下記の組成のインク受容層用塗布液を乾燥後の膜厚が8μmとなるように塗布、乾燥し、インク受容層を形成した。
【0036】
<インク受容層用塗布液>
・ポリビニルアルコール 10部
(ゴーセノールNL-05:日本合成化学工業社)
・水 90部
・シリカ(サイリシア435:富士シリシア化学社) 10部
【0037】
上述のインク受容層上に、下記の組成の接着層用塗布液を乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗布、乾燥し、平均約0.8μmの開放孔からなるインク透過性を有する接着層を形成した。
【0038】
<接着層用塗布液>
・塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂 20部
(デンカビニル1000AS:電気化学工業社)
・メチルエチルケトン 70部
・n−ブタノール 10部
【0039】
得られた材料の接着層側と、坪量30g/m2の木綿生地を重ね合わせた後、加熱・圧着して記録材料を得た。
【0040】
[比較例1]
坪量115g/m2の木綿生地の一方の面に、実施例2と同様の組成のインク受容層用塗布液を乾燥後の膜厚が8μmとなるように塗布、乾燥し、記録材料を得た。
【0041】
参考例および実施例で得られた記録材料のインク受容層とは反対側の側の面、および比較例で得られた記録材料のインク受容層側の面に、インクジェットプリンタ(BJC−420J:キヤノン社)により記録を行い、木綿生地の記録面の風合い、および記録状態を観察した。
【0042】
参考例1および実施例1のものは、木綿生地に直接画像が記録されていることから、木綿生地独自の風合い・質感が損なわれていない記録面を得ることができた。また、記録面においては鮮明な画像が得られ、画像の滲みも観察されなかった。特に参考例1のものは、インク受容層としてホットメルト接着性を兼ね備えたものを使用していることから、記録後の記録材料を加熱してやることにより所望の場所に貼着することができた。
【0043】
一方、比較例のものは、インク受容層上に記録を行うものであるから、記録面においては鮮明な画像が得られ、画像の滲みも観察されない一方、インク受容層を構成する樹脂成分の影響を受け、記録面の風合い・質感は木綿生地独自のものとはかけ離れるものであった。
【0044】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録方法によれば、繊維布帛等の風合い・質感を保持し、かつ良好にインクジェット記録された記録面を有する繊維布帛等を得ることができる。
【0045】
また、本発明の記録材料によれば、繊維布帛等においては、その風合い・質感を残しつつ、インクジェット記録された記録面を得ることができる。従って、衣類の生地、宣伝広告用の幟など記録面の風合いを生かして使用したい場合に非常に有用なものとなる。
【0046】
更に、インク受容層が粘着性を有するものである場合には、繊維布帛等をそのまま所望の場所に貼着することが可能であり、例えば、Tシャツにワンポイントマークを付そうとする場合に非常に有用なものとなる。
Claims (1)
- 繊維布帛の一方の面に、インク受容層、支持体を順次有する記録材料の、前記繊維布帛のインク受容層を有する面とは反対側の面からインクジェット記録を行った後、前記インク受容層から前記支持体を剥離することを特徴とするインクジェット記録方法。
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