JP4278916B2 - 床材、その製造方法及び床構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば一般住宅等における屋内の床仕上げ用、特にリフォーム時の床仕上げ用として好適に採用される床材、その製造方法及び床構造に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
一般住宅における床仕上げ用の床材としては、例えば実公平6−33099号に開示されたものが周知である。
【0003】
この床材は、合板製基板の表面側に突板が積層されるとともに、裏面側に高密度軟質シートが積層されるものであり、接着剤を用いて床下地に接着施工されるものである。
【0004】
しかしながら、この床材は、基板が合板により構成されているため、カッターナイフでは精度良く切断することができず、現場等での裁断加工時には、鋸等を用いて切削する必要があり、切削作業が困難になるばかりか、切削時に切り屑が発生して、現場周辺を汚してしまう恐れがある。
【0005】
更に基板が合板により構成されているため、床材表面に、コップや灰皿等の物品を落下させてしまった場合、凹み傷(落下傷)が生じてしまうという問題もあった。
【0006】
また、この床材は、高温下においては、表面側の合板基板が放湿により収縮しするとともに、裏面側の高密度軟質シートが熱膨張により伸長し、有害な谷反りを誘起する応力が発生するものであるが、床材裏面側が接着剤によって強固に床下地に接着されているため、谷反りをある程度抑制することが可能である。ところが、近年においては、施工期間の短縮や、作業性の改善等を目的として、接着剤を用いずに、両面テープにより床材を床下地に接着施工する技術が好んで採用される傾向にある。このため仮に、上記床材を両面テープにより床下地に接着施工した場合、床下地との接着強度が低くなるため、上記の谷反りを確実に抑制することが困難となる。特に、床仕上げ面上にホットカーペット等が敷設されて加熱された場合には、谷反りが発生して、床材端部が浮き上がったり、隣り合う床材間に隙間が形成されるという問題が発生する。
【0007】
一方、上記以外の従来の床材として、特許第2793065号に開示されたものも周知である。
【0008】
この床材は、単板製基板の表面側に繊維方向を直交させるように突板が積層されるとともに、裏面側に柔軟性樹脂シートが積層されたものであり、上記と同様、接着剤を用いて床下地に接着施工されるものである。
【0009】
しかしながら、この床材においては、単板製基板の繊維方向に対し直交する方向に切断するような場合、カッターナイフでは切断できず、鋸を用いる必要があるため、その切削作業が困難になり、切り屑により現場周辺を汚してしまう恐れがある上更に、物品の落下による凹み傷も生じ易いものである。
【0010】
また両面テープを用いて接着した場合には、上記と同様、谷反りが生じ易く、床材端部が浮き上がったり、床材間に隙間が形成されるという問題が発生する。
【0011】
この発明は、上記従来技術の問題を解消し、現場周辺を切り屑等で汚すことなく、裁断加工を容易に行える上、有害な反りの発生を防止しつつ、両面テープにより簡単かつ確実に施工することができ、更に耐落下傷性にも優れた床材、床材の製造方法及び床構造を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本第1発明の床材は、高比重層上に木質層が積層されるとともに、前記木質層上に化粧層が積層される床材であって、前記木質層は、比重が0.7以上、厚さが2.0mm以下の木質繊維板により構成され、前記高比重層は、比重が1.5〜3.0、厚さが前記木質層の厚さに対し3倍以上の高比重シートにより構成されてなるものを要旨としている。
【0013】
この発明の床材において、木質層及び高比重層としての木質繊維板及び高比重シートは、繊維方向等の方向性がなく、更に木質繊維板は、硬質であるものの、厚さが2.0mm以下と薄いため、カッターナイフによって、簡単かつ確実に切断することができ、現場等での裁断加工を精度良く簡単に行うことができる。
【0014】
更にカッターナイフにより切断できるため、鋸による切り屑等の木粉が発生することもないので、現場周辺を汚すことなく、周辺環境を良好に維持することができる。
【0015】
また、表面側の木質層として、比重が0.7以上の硬質の木質繊維板を用いるとともに、裏面側の高比重層として、十分な厚みを有する高比重シートを用いるものであるため、床材表面の耐落下傷性を向上させることができ、物品等の落下による凹み傷の発生を有効に防止することができる。
【0016】
また本発明の床材において、裏面側の高比重シートは、比重が高く、柔軟性を有するものであるため、床下地に馴染み性が良く安定状態に敷設できるので、床材施工作業を効率良くスムーズに行うことができる。
【0017】
ここで、本発明の床材においては、木質繊維板が放湿により収縮した場合、谷反り方向に応力が発生するものであるが、本発明の床材における高比重シートは、吸放湿による伸縮変化が小さく、木質繊維板に比べて厚さが厚いため、木質繊維板の伸縮挙動による影響を受け難く、床材全体として谷反りが生じ難くなる。加えて、木質繊維板は薄く、床材全体として十分な柔軟性を有するものであるため、谷反りを戻す方向に対する弾性反発力が小さくなり、更に高比重シートの荷重も谷反りを戻す方向に作用するので、谷反りに対し戻り易くなる。つまり、谷反りに対する矯正作用が強いものとなる。このように本発明の床材は、谷反りし難く、しかも谷反りに対する矯正作用が強いため、床材の床下地に対する接着強度が低くとも、谷反りするのを抑制することができ、床材端部が浮き上がったり、床材間に隙間が形成されたりするのを確実に防止することができる。従って、本発明の床材は、接着強度の低い両面テープを用いて、床材を安定状態に敷設施工することができる。更に施工後の床面上に、ホットカーペット等を敷設して加熱した場合でも、床材の谷反りを確実に防止でき、良好な床仕上げ面を維持することができる。
【0018】
また、本発明の床材は、両面テープを用いて施工できるため、接着剤を用いる施工に必要な接着剤の養生硬化時間も不要となり、工期の短縮を図ることができる。
【0019】
更に接着剤を用いないため、床材表面や、作業者の手、衣服に不用意に接着剤が付着することがなく、接着剤の揮発成分等による不快臭も発生しないので、現場周辺の環境を、より一層良好に維持できるとともに、床材施工作業も効率良くスムーズに行うことができる。
【0020】
更に、床下地に段差等があろうとも、厚みのある高比重シートによって、段差による悪影響が床材表面側に及ぶことが防止され、床材表面に段差による線模様等が表出されず、良好な仕上がり具合を得ることができる。
【0021】
一方、上記目的を達成するため、本第2発明は、高比重層上に木質層が積層されるとともに、前記木質層上に化粧層が積層される床材であって、前記木質層は、比重が0.7以上、厚さが2.0mm以下の木質繊維板により構成され、前記高比重層は、比重が1.5〜3.0の高比重シートにより構成され、前記木質層の比重を「df」、厚さを「Tf」とし、前記高比重層の比重を「dr」、厚さを「Tr」としたとき、dr・Tr≧6×df・Tfの関係が成立するよう構成されてなるものを要旨としている。
【0022】
この発明の床材においても、上記と同様、カッターナイフにより容易に切断できて、裁断加工を精度良く簡単に行うことができるとともに、切り屑も発生せず、現場周辺の環境を良好に維持することができる。更に物品等の落下による凹み傷の発生を防止できるとともに、裏面側の高比重シートにより、床下地への馴染み性が良く、床材施工作業を効率良くスムーズに行うことができる。
【0023】
また、本発明の床材においては、高比重シートの比重に厚さをかけ合わせたもの、つまり高比重シートの単位面積当たりの重量を、木質繊維板のそれに対し6倍以上に設定するものであるため、木質繊維板の伸縮挙動による影響を受け難く、床材全体として谷反りが生じ難くなる。加えて、木質繊維板は薄く、床材全体として十分な柔軟性を有するとともに、高比重シートの荷重も谷反りを戻す方向に作用するため、谷反り矯正作用が強くなる。従って本発明の床材は、上記と同様、床材端部の浮き上がりや、隙間の形成を防止しつつ、両面テープを用いて敷設施工することができる。
【0024】
更に接着剤を用いずに施工できるため、工期の短縮を図ることができるとともに、現場周辺の環境を、より一層良好に維持することができる。
【0025】
本第3発明は、上記第1又は第2発明の床材の製造方法の一態様を特定するものである。
【0026】
すなわち本第3発明は、上記第1又は第2発明の床材の製造方法であって、前記高比重シートを予備加熱した状態で、接着剤を介して前記木質繊維板を積層した後、その積層体を加温状態に保持して前記接着剤を養生させることにより、前記高比重層上に前記木質層を接着し、次いで、前記木質層上に化粧層を積層するものを要旨としている。
【0027】
この製造方法においては、上記第1又は第2発明の作用効果を有する床材を確実に得ることができる。
【0028】
その上更に、予備加熱した高比重シートに接着剤を介して木質繊維板を積層して加熱養生するものであるため、高比重シートの内部応力を製造段階において取り除くことができる。このため本製法により得られた床材を施工して得られる床構造は、ホットカーペット等により加熱されたとしても、高比重シートの熱膨張が小さくなり、床材に有害な反りが発生するのを、より確実に防止でき、床材端部が浮き上がったり、床材間に隙間が形成されるのを、より確実に防止することができる。
【0029】
本第4発明は、上記第1又は第2発明の床材による床構造の一態様を特定するものである。
【0030】
すなわち本第4発明は、上記第1又は第2発明の床材を床下地上に複数並べて敷設して形成される床構造であって、前記床材と前記床下地とが両面テープを介して接着されてなるものを要旨としている。
【0031】
この床構造においては、上記第1又は第2発明と同様の作用効果を有するものである。
【0032】
その上更に、床材を両面テープを用いて施工するものであるため、より一層簡単に施工作業を行うことができる。
【0033】
以下、本発明の構成を、図面を用いて更に詳細に説明する。
【0034】
図1ないし図3はこの発明に関連した床材(1)を示す図である。これらの図に示すように、この床材(1)は、高比重層(2)上に接着剤(11)を介して木質層(3)が積層されるとともに、木質層(3)上に接着剤(12)を介して化粧層(4)が設けられた積層構造を基本的な構成として備えている。
【0035】
ここで、木質層(3)は、木質繊維板により構成されている。
【0036】
この木質繊維板としては、比重(密度)が0.7(g/cm2 )以上のものを用いる必要があり、好ましくは0.8(g/cm2 )以上のもの、より好ましくは0.85(g/cm2 )以上のものを用いるのが良い。すなわちこの比重が小さ過ぎる場合には、硬度を十分に確保することができず、耐落下傷性の低下を来たし、床面上に物品を落下させてしまった際に、凹み傷が生じる恐れがある。
【0037】
更に木質繊維板としては、厚さが、2.0mm以下のものを用いる必要があり、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.0mm以下、より一層好ましくは0.5mm以下のものを用いるのが良い。すなわち厚過ぎる場合には、床材全体として十分な柔軟性を得ることができず、木質繊維板が放湿により収縮して、床材として谷反り方向の応力が発生した際に、谷反りを戻す方向に対する弾性反発力が大きくなり、谷反りを矯正できず、床材端部が浮き上がったり、床材間に隙間が形成される恐れがある。
【0038】
また、厚さが0.25mm未満の木質繊維板は、薄過ぎて製作が困難になるとともに、薄過ぎて耐落下傷性の低下等を来す恐れがある。
【0039】
なお、市販の木質繊維板製品は、薄くとも2.5mm厚程度のものしか存在しないため、市販の木質繊維板製品を用いて本発明の床材を作製する場合には、その厚板の木質繊維板製品の厚さを、1回以上分割して、本発明に対応した木質繊維板を作製するようにすれば良い。
【0040】
本発明において、高比重層(2)は、高比重シートにより構成されている。
【0041】
この高比重シートは、例えば合成樹脂、合成ゴム系樹脂等の樹脂に、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機粉体や金属粉体を混入した組成物より得られるものを好適に用いることができ、例えばポリエチレン樹脂と、エチレン・プロピレン・ラバーと、炭酸カルシウムとが配合された組成物からなるものを好適に用いることができる。
【0042】
この高比重シートとしては、比重(密度)が1.5〜3.0(g/cm2 )のものを用いる必要があり、好ましくは上限値が2.5(g/cm2 )以下のものを用いるのが良い。すなわちこの比重が小さ過ぎる場合には、敷設施工時の安定性が低下するとともに、谷反り方向の応力を十分に抑制することが困難になる恐れがある。逆に比重が大き過ぎる場合には、床材自体の高重量化を来たし、施工作業性等、取扱性の低下を来す恐れがある。
【0043】
本発明において、高比重シートとしては、厚さが木質繊維板の厚さに対し、3倍以上のものを用いる必要があり、好ましくは5倍以上のものを用いるのが良い。
【0044】
また別の観点から見て、本発明においては、木質繊維板(木質層)の比重を「df」、厚さを「Tf」とし、高比重シート(高比重層)の比重を「dr」、厚さを「Tr」としたとき、dr・Tr≧6×df・Tfの関係を成立させる必要があり、好ましくはdr・Tr≧10×df・Tfの関係の関係を成立させるのが良い。換言すれば、高比重シートにける比重と厚さの積(単位面積当たりの重量)が、木質繊維板の比重と厚さの積に対し、6倍以上に設定する必要があり、好ましくは10倍以上に設定するのが良い。
【0045】
すなわちこれらの厚さ関係や単位面積当たりの重量関係が、上記の特定値に満たない場合には、高比重シートが、木質繊維板の伸縮挙動による影響を受け易くなり、床材(1)の谷反りを十分に抑制できなくなる恐れがある。これにより、床材(1)を両面テープにより接着施工した際に、床材(1)に谷反りが生じて、床材端部が浮かび上がったり、隣り合う床材間に隙間が形成される等の不具合が生じる恐れがある。
【0046】
また本発明においては、高比重層(2)として、硬度(JISK6253のデュロメーター硬さ試験タイプAに準拠)が80°以上のものが用いられてなる構成を採用するのが好ましい。
【0047】
すなわち、本発明においては、高比重シートとして、JISK6253「加硫ゴム硬さ試験方法」記載のデュロメーター硬さ試験タイプAに準拠した硬度が、80°以上のものを用いるのが良く、より好ましくは硬度が85°〜95°のものを用いるのが良い。
【0048】
この硬度が80°未満の場合には、床材表面に物品が落下した際に、その荷重を高比重シートによって十分に受け止めることができず、凹み傷が発生する恐れがある。更に硬度が85°〜95°の場合には、床下地に0.5mm程度の段差があろうとも、その段差による影響が床材表面に及ぶことがなく、床材表面に段差による線模様等が表出されず、良好な仕上がり具合を得ることができる。
【0049】
なお、この硬度が95°を超える場合には、熱による伸びが大きくなり、谷反り発生の要因となる恐れがあり、好ましくない。
【0050】
本発明においては、化粧層(4)としては、乾燥単板等の突板、模様印刷樹脂シート、印刷紙等に表面塗装が施されたものを好適に用いることができる。
【0051】
本発明においては、上記高比重シートからなる高比重層(2)上に接着剤(11)を介して、上記木質繊維板からなる木質層(3)が積層接着されるとともに、木質層(3)上に接着剤(12)を介して化粧層(4)が積層接着されるものである。
【0052】
ここで、本発明において、接着剤(11)(12)としては、ホットメルト系(反応性ホットメルト系)、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系等の溶剤や水等の溶媒を含まない接着剤を用いるのが好ましい。
【0053】
すなわち、接着剤として通常用いられるメラミン系、フェノール系、水性ビニルウレタン系等のものは水分等の溶媒を含むため、その溶媒が木質繊維板に浸透し、接着剤硬化後も溶媒が残留し、有害な反り等の変形を生じる要因となる恐れがあるからである。
【0054】
また本発明の床材(1)は、床材全体の厚みが、2.0〜7.0mmに設定されてなる構成を採用するのが良く、より好ましくは下限値が2.5mm以上、上限値が6.0mm以下に設定されてなる構成を採用するのが良い。
【0055】
すなわちこの全体厚みが薄過ぎるものは、製造が困難になる一方、厚過ぎるものは、剛性が高くなり、柔軟性の低下により、谷反り矯正作用が弱くなり、床材端部が浮き上がったり、床材間に隙間が形成される等の不具合が生じる恐れがある。
【0056】
更に本発明の床材(1)は、20℃での曲げヤング係数が、5.5×103 kgf/cm2 以下に設定するのが良く、より好ましくは4.5×103 kgf/cm2 以下、より一層好ましくは4.0×103 kgf/cm2 以下に設定するのが良い。
【0057】
すなわち曲げヤング係数が大き過ぎるもの、つまり剛性が高過ぎるものは、谷反り矯正作用が弱くなり、床材端部が浮き上がったり、床材間に隙間が形成される等の不具合が生じる恐れがある。
【0058】
また本発明の床材(1)は、周囲4辺に、隣り合う他の床材との接合用に接合部が形成されてなる構成を採用するのが良い。
【0059】
すなわちこの構成を採用する場合、床材施工時に、隣り合う床材間を接合することができ、床材端部が浮き上がったり、床材間に隙間が形成されるのを、より一層確実に防止することができる。
【0060】
本発明において、床材(1)は、通常、平面視長方形や正方形等の方形状に形成されるものである。
【0061】
平面視長方形の床材(1)においては、例えば短辺側の一方を雄ざね部(21)、他方を雌ざね部(22)として構成し、長辺側の一方を上じゃくり部(23)、他方を下じゃくり部(24)として構成し、隣り合う床材間において、短辺側同士をさね接合により接合するとともに、長辺側同士を相じゃくり接合により接合するのが好ましい。
【0062】
一方、本発明の床材(1)は、例えば、高比重層(2)としての高比重シートに、接着剤(11)を介して木質層(3)としての木質繊維板を積層して、積層体を得る。
【0063】
続いて、その積層体に、接着剤(12)を介して化粧層(4)を積層した後、周辺に接合部を形成して、床材(1)を得るものである。
【0064】
ここで、本発明において、上記積層体を得る場合、高比重シートを予備加熱した状態で、木質繊維板を接着剤(11)を介して接着積層し、その養生前の積層体を、接着剤が硬化するまでの期間、加熱下で養生し、これにより積層体を得るのが好ましい。
【0065】
すなわちこの製法においては、高比重シートを木質繊維板に接着する前に予備加熱することにより、高比重シートの内部応力を取り除いて熱膨張させておき、その状態で木質繊維板に接着して、加熱下で養生するものであるため、床材施工後に、ホットカーペット等により加熱されたとしても、高比重シートが熱膨張が小さくなり、床材に有害な反りが発生するのを、より確実に防止でき、床材端部が浮き上がったり、床材間に隙間が形成されるのを、より確実に防止することができる。
【0066】
なお、上記予備加熱時の温度や、養生時の温度は、ホットカーペットにより加熱されたときの床材温度に合わせて、40℃程度以上に設定するのが良い。
【0067】
また養生時間は、接着剤の硬化が終了するまでの時間に設定すれば良いが、余裕を見て、その時間よりも長く設定しても良い。
【0068】
参考までに、接着剤(11)としてエポキシ樹脂系のものを用いる場合、養生時間は15時間以上に設定するのが適当である。
【0069】
また、本発明の床材(1)においては、必要に応じて、床材表面に、横溝や縦溝等の溝部を形成するようにしても良い。
【0070】
更に床材(1)における周辺部上端には、面取り部(30)を形成するのが好ましい。すなわち、面取り部(30)が形成される場合には、床材間の接合部に段差が生じても、その段部が目立たなくなり、良好な仕上がり具合を維持することができる。
【0071】
また本発明においては、木質繊維板(3)が、0.5mm以上の厚さの場合、面取り部(30)を形成することにより、隣り合う床材間において対応し合う木質繊維板同士の接触厚さを0.5mm未満に調整するのが良い。すなわちこの場合、吸湿環境になった際に歩行時に生じる木質繊維板同士の接触音による踏み鳴り音が軽微となり、更に厚さ方向に膨潤しても、目立つことがなくなり、高い品質を維持することができる。
【0072】
また本発明では、相じゃくり接合部における下じゃくり部(24)の突出部において、木質繊維板と高比重シートとが存在する構成、及びさね接合部における雌ざね部(22)の上側の突出部において、木質繊維板と高比重シートとが存在する構成を採用するのが好ましい。すなわち、この構成を採用する場合、放湿環境下のとき、高比重シートによる防湿及び補強と、化粧層(4)による補強とにより、上記の各突出部の先端が上方に変形するのを有効に防止することができる。
【0073】
本発明の床材(1)は、隣り合う床材間において相じゃくり接合やさね接合等の接合を行いつつ、床下地に両面テープ(40)を介して接着施工することにより床構造を形成するものである。
【0074】
床下地は、平面下地であり、新設施工の場合には、合板、パーティクルボード等によって構成され、リフォームの場合には、上記のもの以外に、既設の床材によって構成される。
【0075】
リフォームの場合、既設の床面には通常ワックスが塗布されているが、そのワックスを除去しても良く、またワックスが塗布されたままの状態であっても、本発明の床材(1)は、両面テープ(40)を用いて施工することができる。
【0076】
すなわち、既設床面にワックスが塗布されている場合、両面テープ(40)による接着強度が低下するため、加熱放湿等により床材に谷反りが発生する恐れがあるが、本発明の床材(1)は、上記したように、床下地への接着強度が低くとも、谷反りを確実に防止できるため、既設床面にワックスが塗布されていようとも、両面テープ(40)を用いて不具合なく確実に施工でき、良好な仕上がり具合を得ることができる。
【0077】
なお、ワックスの除去は完全に行っても良いし、サンドペーパー等でワックスの表面を粗面化する等、適度な除去であっても良い。
【0078】
本発明において、両面テープ(40)としては、テープ基材の両面に感圧性接着剤(粘着材)が塗布されたもの等を好適に用いることができ、温湿度変化しても、剥離しないものは、より好適に用いることができる。
【0079】
また図1(b)に示すように、両面テープ(40)は、床材裏面における少なくとも両側部の位置に配置するのが良く、更にその中間部の位置にも配置するのが、より好ましい。すなわち両側部に両面テープ(40)を配置する場合には、放湿収縮による床材(1)の谷反りを、より確実に防止できるとともに、中間部に配置する場合には、吸湿伸長による山反りを、より確実に防止することができる。
【0080】
もっとも、本発明において、両面テープ(40)の貼付位置や貼付数は、特に限定されるものではない。
【0081】
なお、両面テープ(40)は、床材施工前に、剥離テープを付けたままの状態で床材(1)の裏面にあらかじめ貼り付けておいても良く、床材施工時に、床材裏面や床下地面に貼り付けるようにしても良い。
【0082】
【実施例】
ポリエチレンとエチレン・プロピレンラバーと炭酸カルシウムとが配合された組成物からなる比重1.7、厚さ2.7mmの高比重シート(JISK6253のデュロメーター硬さ試験タイプAによる硬度が89°、20℃)を予備加熱した状態で、その高比重シート(高比重層)の上面にエポキシ系接着剤を介して、比重0.85、厚さ0.4mmの木質繊維板(木質層)を接着積層した。更にその積層体を加熱下に放置して接着剤を養生硬化させた。
【0083】
そしてその養生後の積層体の上面に、反応性ウレタン系ホットメルト接着剤を介して、突板あるいは樹脂シートからなる厚さ0.3mmの化粧材(化粧層)を接着積層した。
【0084】
これにより、平面視長方形の床材構成品(全体厚さ3.4mm)を作製した。
【0085】
続いて、上記の床材構成品の周辺部に接合部を形成した。すなわち床材構成品の短辺部の一方に雄ざね部を形成し、他方に雌ざね部を形成し、更に長辺部の一方に下じゃくり部を形成し、他方に上じゃくり部を形成した。
【0086】
更に床材構成品の周辺部上端に、面取り加工を施して面取り部を形成して、幅151.5mm、長さ909.0mmの床材を作製した。
【0087】
なお、この床材の20℃における曲げヤング係数は、3.4×103 kgf/cm2 (20℃)であった。
【0088】
こうして作製された複数の床材を、隣り合う床材間において相じゃくり接合やさね接合等の接合を行いつつ、ワックスが塗布された天然木化粧合板製の床下地に両面テープを介して接着施工することにより床構造を形成した。
【0089】
このとき、両面テープは、各床材の裏面における両側部とその間の中間部に沿って配置した。
【0090】
この床構造の床面に、ホットカーペットを敷設して通電し、所定期間放置した後、床面上を観察したところ、床材に反りの発生は認められず、床材端部の浮き上がりや、床材間の隙間の形成も認められなかった。
【0091】
<参考例1>
高比重層として、0.7mm厚の高比重シートを用い、木質層として2.8mm厚の合板を用い、更に合板裏面に幅方向に平行な裏溝(溝幅1.5mm、溝深さ1.0mm)を長さ方向に所定のピッチで形成した以外は、上記と同様に床材を作製した。
【0092】
なおこの床材幅方向の20℃における曲げヤング係数は、15.5×103 kgf/cm2 であった。
【0093】
この床材を用いて、上記と同様に床構造を形成して、同様にホットカーペットにより加熱したところ、床材に、その幅方向に特に大きい谷反りが認められ、部分的に、床材端部の浮き上がりや、床材間の隙間の形成が認められれた。
【0094】
<参考例2>
高比重層として、3.0mm厚の高比重シートを用い、木質層として3.0mm厚の合板を用いた以外は、上記と同様に床材を作製した。
【0095】
なおこの床材の20℃における曲げヤング係数は、14.5×103 kgf/cm2 であった。
【0096】
この床材を用いて、上記と同様に床構造を形成して、同様にホットカーペットにより加熱したところ、床材に、その幅方向に特に大きい谷反りが認められ、部分的に、床材端部の浮き上がりや、床材間の隙間の形成が認められれた。
【0097】
【発明の効果】
以上のように、本第1又は第2発明の床材によれば、繊維方向等の方向性のない高比重シート及び木質繊維板により構成するとともに、木質繊維板として薄いものを用いているため、カッターナイフによって、簡単かつ確実に切断することができ、現場等での裁断加工を精度良く簡単に行うことができる。更にカッターナイフにより切断できるため、鋸を用いる場合と異なり、切り屑が発生することなく、現場周辺の環境を良好に維持することができる。また、表面側の木質層として、硬質の木質繊維板を用いるとともに、裏面側の高比重層として、十分な厚みを有する高比重シートを用いるものであるため、床材表面の耐落下傷性を向上させることができ、物品等の落下による凹み傷の発生を有効に防止することができる。また谷反りが生じ難くい上、谷反りに対する矯正作用も強いため、床材端部の浮き上がりや、隙間の形成を防止しつつ、両面テープを用いて敷設施工することができる。更に接着剤を用いずに施工できるため、工期の短縮を図ることができるとともに、現場周辺の環境を、より一層良好に維持することができるという効果がある。
【0098】
本第3発明は、上記第1又は第2発明の床材の製造方法の一態様を特定するものであるため、上記同様の効果を有する床材を確実に得ることができる上更に、予備加熱した高比重シートに接着層を介して木質繊維板を積層して加熱養生するものであるため、高比重シートの内部応力を取り除くことができ、敷設施工後に有害な反りが発生するのを、より確実に防止でき、床材端部が浮き上がったり、床材間に隙間が形成されるのを、より確実に防止することができる。
【0099】
本第4発明は、上記第1又は第2発明の床材による床構造の一態様を特定するものであるため、上記同様の効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一例としての床材を示す図であって、同図(a)は平面図、同図(b)は裏面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】図1のY−Y線断面図である。
【符号の説明】
1…床材
2…高比重層(高比重シート)
3…木質層(木質繊維板)
4…化粧層
11…接着層(接着剤)
40…両面テープ
Claims (8)
- 高比重層上に木質層が積層されるとともに、前記木質層上に化粧層が積層される床材であって、
前記木質層は、比重が0.7以上、厚さが1.0mm以下の木質繊維板により構成され、
前記高比重層は、比重が1.5〜3.0、厚さが前記木質層の厚さに対し3倍以上の高比重シートにより構成され、
床材全体の厚みが、2.0〜6.0mmに設定され、
20℃での曲げヤング係数が、5.5×10 3 kgf/cm 2 以下に設定されてなることを特徴とする床材。 - 高比重層上に木質層が積層されるとともに、前記木質層上に化粧層が積層される床材であって、
前記木質層は、比重が0.7以上、厚さが1.0mm以下の木質繊維板により構成され、
前記高比重層は、比重が1.5〜3.0の高比重シートにより構成され、
前記木質層の比重を「df」、厚さを「Tf」とし、前記高比重層の比重を「dr」、厚さを「Tr」としたとき、
dr・Tr≧6×df・Tf
の関係が成立するよう構成され、
床材全体の厚みが、2.0〜6.0mmに設定され、
20℃での曲げヤング係数が、5.5×10 3 kgf/cm 2 以下に設定されてなることを特徴とする床材。 - 前記高比重層として、硬度(JISK6253のデュロメーター硬さ試験タイプAに準拠)が80°以上のものが用いられてなる請求項1又は2記載の床材。
- 前記木質層が、溶媒を含まない接着剤を介して前記高比重層に接着されてなる請求項1又は2記載の床材。
- 周囲4辺に、隣り合う他の床材との接合用に接合部が形成されてなる請求項1又は2記載の床材。
- 前記高比重層の裏面側に、床材接着施工用の両面テープが貼り付けられてなる請求項1又は2記載の床材。
- 請求項1又は2記載の床材の製造方法であって、
前記高比重シートを予備加熱した状態で、接着剤を介して前記木質繊維板を積層した後、
その積層体を加温状態に保持して養生させることにより、前記高比重層上に前記木質層を接着し、
次いで、前記木質層上に化粧層を積層するものとした床材の製造方法。 - 請求項1又は2記載の床材を床下地上に複数並べて敷設して形成される床構造であって、
前記床材と前記床下地とが両面テープを介して接着されてなることを特徴とする床構造。
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