JP4277679B2 - シーリング材組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、加水分解性シリル基を有し、常温において硬化可能なシーリング材組成物に関するものである。
加水分解性シリル基を有し、常温において硬化可能なシーリング材組成物(以下、シリル官能性シーリング材組成物ともいう。)は広く知られ、使用されている。シーリング材組成物には、通常可塑剤が配合される。低分子量のアクリル重合体からなる可塑剤が配合されたシリル官能性シーリング材組成物は知られている(特許文献1および2参照)が、使用条件によっては耐汚染性が不充分な場合もある。
耐汚染性を向上させるために、加水分解性シリル基を有する低分子量のアクリル重合体からなる可塑剤が配合されたシリル官能性シーリング材組成物が知られている(特許文献3参照)。
特開2001−207157 特開2003−193033 特開2003−155469
特許文献3に記載されたシーリング材組成物は、耐候性、耐汚染性ともに優れているが、使用条件によっては耐候性が不足する場合もあり、耐アルカリ性が不足する場合もある。
本発明は、耐候性、耐アルカリ性および耐汚染性が極めて優れた硬化物を与えるシリル官能性シーリング材組成物を提供しようとするものである。
上記課題を解決するために、本発明のシーリング材組成物は、ガラス転移温度が−80〜10℃であり、数平均分子量が500〜3000であり、構成単量体単位としてメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルまたはメタクリル酸ブチルから選ばれる少なくとも1つのメタクリル酸アルキルエステル単位5〜30質量%を有し、一分子平均0.05〜2個の加水分解性シリル基を有するビニル重合体(A)および加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体(B)を含有し、オキシアルキレン重合体(B)100質量部を基準とするビニル重合体(A)の割合が40〜140質量部であることを特徴とするものである。
耐候性、耐アルカリ性および耐汚染性が極めて優れた硬化物を与えるシリル官能性シーリング材組成物が得られた。
ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度が−80〜10℃であり、数平均分子量が500〜3000であり、構成単量体単位としてメタクリル酸アルキルエステル単位1〜50質量%を有し、一分子平均0.05〜2個の加水分解性シリル基を有するものである。ビニル重合体(A)は分子量が小さく、ガラス転移温度も低いため、可塑剤として機能するものである。しかも、一分子平均0.05〜2個の加水分解性シリル基を有するため、得られるシーリング材硬化物を耐候性や耐汚染性の優れたものにする。さらに、構成単量体単位としてメタクリル酸アルキルエステル単位1〜50質量%を有するため、得られるシーリング材硬化物を耐候性や耐汚染性の優れた、特に耐アルカリ性の優れたものにする。
ビニル重合体(A)は、ガラス転移温度が10℃以下であり、0℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度が10℃より高いと、シーリング材組成物の低温における取扱い作業性が悪くなる。ガラス転移温度の下限には特に技術的な制限はないが、通常得られる重合体のガラス転移温度の下限は−80℃程度である。
ビニル重合体(A)は、数平均分子量が500〜3000であり、1000〜3000が好ましく、1400〜3000がより好ましい。耐候性、耐汚染性の面からは、できるだけ数平均分子量が高いほうが好ましいが、3000を超えるとシーリング材組成物の粘度が上がり、取扱い作業性が著しく低下する。一方500未満であると、ブリードが生じ易くなり、シーリング材硬化物の耐汚染性が低下する。
ビニル重合体(A)は、一分子平均0.05〜2個の加水分解性シリル基を有する。この加水分解性シリル基により、可塑剤として機能するビニル重合体(A)がシーリング基材と化学的に結合する結果、表面にブリードしにくくなり、汚染を低減することが可能になると考えられる。重合体一分子平均の加水分解性シリル基の数は、数平均分子量(g/モル)および加水分解性シリル基濃度(モル/g)の積として求められるものであり、一分子当り0.08〜1個が好ましく、0.1〜0.7個がより好ましい。2個を超えると可塑剤自体がシーリング材主剤と同様に硬化してしまい、伸度低下等の物性低下を起こす。一方、0.05個未満であるとシーリング材硬化物表面へのブリードが充分に改善されなくなり、耐汚染性が悪くなる。
加水分解性シリル基は、加水分解反応によりシラノール基を生成する基であり、珪素原子に結合してシラノール基を形成する基または原子(以下、これらを合わせて単に加水分解性基ともいう。)の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、アルケニルオキシ基、メルカプト基や、塩素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。反応性および安定性のバランスが良好なため、メトキシ基またはエトキシ基は特に好ましい加水分解性基である。
ビニル重合体(A)は、原料ビニル単量体を公知の方法によりラジカル重合させて製造することができる。例えば加水分解性シリル基を有するビニル単量体およびその他のビニル単量体を共重合させる方法(以下、方法Aという。)、官能基を有するビニル重合体と該官能基との反応性をも有する加水分解性シリル基を有する化合物を反応させる方法(以下、方法Bという。)などが挙げられる。
ビニル重合体(A)は、(メタ)アクリル単量体単位を主たる構成単位(構成単位の50質量%以上)とするものが、耐候性が優れるために好ましい。方法Aは目的とするビニル重合体の生産性が優れるために好ましい。
ビニル重合体(A)の製造方法について、方法Aにおいて使用できる加水分解性シリル基を有するビニル単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランおよびビニルメトキシジメチルシランなどのビニルアルコキシシラン類、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピルおよび(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピルなどのアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテルなどのアルコキシシリル基含有ビニルエーテル類、トリメトキシシリルウンデカン酸ビニルなどのアルコキシシリル基含有ビニルエステル類などが挙げられる。これらの中でもビニルトリメトキシシランは、より少量の共重合量で耐汚染性向上の効果が現れることから好ましい。これらは1種または2種以上を併用してもよい。
方法Aにおいて使用できるその他のビニル単量体としては、特に制限はなく、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどが挙げられるが、共重合性、耐候性、耐水性などが優れるため、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、なかでもエステルのアルコール残基の炭素数が1〜20のものが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシルおよび(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルおよび(メタ)アクリル酸トリシクロデシニル等の(メタ)アクリル酸脂環式アルキル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸クロロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチルおよび(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等のヘテロ原子含有(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル重合体(A)の製造方法について、上記方法Bの例としては、水酸基を有するビニル重合体とイソシアネート基および加水分解性シリル基を有する化合物を反応させる方法(以下、方法B1という。)、不飽和結合を有するビニル重合体と加水分解性シリル基を有するヒドロシランを反応させる方法(以下、方法B2という。)などが挙げられる。
方法B1における水酸基を有するビニル重合体は公知のものが使用できる。例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン付加物等の水酸基を有する(メタ)アクリル単量体とその他の(メタ)アクリル単量体の共重合体が挙げられる。
イソシアネート基および加水分解性シリル基を有する化合物の例としては下記の式(1)で表されるものが挙げられる。
1 nSiY3-n2NCO (1)
式(1)において、R1は炭素数1〜20のアルキル基、 R2は炭素数1〜17のアルキレン基、Yはアルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等の加水分解性基、nは0〜2の整数を意味する。これらのうち、nが0、Yがアルコキシ基、R2がプロピレン基であるものがより好ましく、アルコキシ基がメトキシ基またはエトキシ基であるものすなわち下記の式(2)または式(3)で表されるものが特に好ましい。
(C25O)3Si(CH23NCO (2)
(CH3O)3Si(CH23NCO (3)
方法B2における不飽和結合を有するビニル重合体は、例えば水酸基を有する(メタ)アクリル重合体と金属を反応させ、そこに塩化アリルを反応させて分子内にアリル基を導入する方法、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル重合体にアリルグリシジルエーテルを反応させてアリル基を導入する方法などにより得られる。このような重合体と反応させる加水分解性シリル基を有するヒドロシランの例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシランおよびメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
ビニル重合体(A)が担う機能として、可塑化効果(シーリング材組成物の粘度低減効果)を特に重視する場合は、ビニル重合体(A)が構成単量体をアクリル酸エステル主体とすることが好ましく、特に好ましいアクリル酸エステルはアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルまたはアクリル酸メトキシエチルである。アクリル酸エステル主体とは、アクリル酸エステルの割合がビニル重合体(A)100質量%を基準として50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であることを意味する。
ビニル重合体(A)が担う機能として、シーリング硬化物の耐アルカリ性を向上させる点は本発明の重要なポイントである。特に優れた耐アルカリ性を発揮させるために、ビニル重合体(A)は、構成単量体としてメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルまたはメタクリル酸ブチルから選ばれる少なくとも1つのメタアクリル酸アルキルエステル単位を、ビニル重合体(A)100質量%を基準として5〜30質量%有することが必要である。特に好ましいメタアクリル酸アルキルエステルはメタクリル酸メチルである。構成単量体としてメタアクリル酸アルキルエステル単位を有するビニル重合体(A)は、シーリング材の主剤であるオキシアルキレン重合体(B)との相溶性も優れる。
ビニル重合体(A)は、目的に応じて選択されたビニル単量体を公知の方法で重合させて得ることができる。溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合などのいずれであってもよい。溶液重合を採用する場合、有機溶媒としては、通常溶媒として用いられるものでよく、例えばテトラヒドロフランおよびジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチルおよび酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノールおよびイソプロパノール等のアルコール類等があげられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
ラジカル重合開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドおよびジターシャリーブチルパーオキサイド等の過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機過酸化物が使用できる。また、アルコールやメルカプタン系化合物などの連鎖移動剤も用いて良いが、耐候性の低下につながるため、用いないことが好ましい。
ビニル単量体を150〜350℃の温度で重合させて得られるビニル重合体(A)は、数平均分子量が500〜3000という低分子量であっても耐候性の優れたものとなりやすいために好ましい。重合温度は180〜320℃がより好ましく、200〜300℃がさらに好ましい。バッチ重合、セミ連続重合、連続重合などのいずれも採用できるが、撹拌槽型反応器を使用する連続重合は、生産性が優れるために特に好ましい。このような高温連続重合は公知である(特表昭57−502171号公報、特開昭59−6207号公報、特表昭60−511992号公報)。
加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体(B)は、シーリング材の基材であり、シーリング材硬化物の基本的性能を担うものである。オキシアルキレン重合体(B)としては、特に限定されないが、一般に変成シリコーンとして知られる、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンおよびポリオキシブチレン等の骨格を有し、分子末端に加水分解性シリル基を有する重合体が例として挙げられる。主鎖骨格は好ましくはポリオキシプロピレンである。好ましい数平均分子量は1000〜20000であり、さらに好ましくは2000〜15000である。また、好ましいガラス転移温度は、−100℃〜0℃である。
シーリング材組成物は、オキシアルキレン重合体(B)100質量部を基準とするビニル重合体(A)の含有割合が40〜140質量部であることが必要である。このような配合とすることにより、耐候性、耐アルカリ性および耐汚染性が極めて優れた硬化物を与えるシリル官能性シーリング材組成物が得られる。ビニル重合体(A)の含有割合が40質量部未満であると、シーリング材組成物が充分に可塑化されず、取扱い作業性が悪いものとなる。140質量部を超えるとシーリング材硬化物の耐候性、耐アルカリ性および耐汚染性が悪くなる。

シーリング材組成物は、数平均分子量が4000〜100000であり、一分子平均1個以上の加水分解性シリル基を有するビニル重合体(C)を含有するものであってもよい。ビニル重合体(C)は、比較的分子量が大きく、加水分解性シリル基を有するものであり、オキシアルキレン重合体(B)と併用することができる、シリル官能性シーリング材組成物のシーリング基材成分のひとつである。分子量の点でビニル重合体(A)とは異なるほか、ビニル重合体(C)は可塑化効果は有さずにシーリング材硬化物の基本性能アップ効果を有するという機能面でもビニル重合体(A)とは異なる成分である。
ビニル重合体(C)が併用される場合の含有割合は、オキシアルキレン重合体(B)100質量部を基準として0.1〜100質量部であることが好ましく、1〜70質量部であることがより好ましい。ビニル重合体(C)はオキシアルキレン重合体(B)またはシーリング材組成物に単に混合されてもよく、オキシアルキレン重合体(B)の存在下に原料ビニル単量体を重合させて得られるものであってもよい。
ビニル重合体(C)およびオキシアルキレン重合体(B)を含有するシリル官能性シーリング材組成物としては、鐘淵化学工業(株)製商品名MSポリマーおよびサイリル、または旭硝子(株)製商品名エクセスター等が市販されている。
シーリング材組成物がビニル重合体(C)を含有するものである場合は、シーリング材組成物は、オキシアルキレン重合体(B)およびビニル重合体(C)の合計量100質量部を基準とするビニル重合体(A)の割合が1〜150質量部であることが必要であり、20〜150質量部であることが好ましく、40〜140質量部であることがより好ましい。このような配合とすることにより、耐候性、耐アルカリ性および耐汚染性の極めて優れた硬化物を与えるシリル官能性シーリング材組成物が得られる。ビニル重合体(A)の含有割合が1質量部未満であると、シーリング材組成物が充分に可塑化されず、取扱い作業性が悪いものとなる。150質量部を超えるとシーリング材硬化物の耐候性、耐アルカリ性および耐汚染性が悪くなる。
シーリング材組成物は、通常シーリング材に配合される体質顔料、着色顔料、光安定剤、紫外線吸収剤、流動性調整剤、硬化剤、硬化触媒などが必要に応じて添加されたものであってもよい。また、本発明において可塑剤として機能する加水分解性シリル基を有するビニル重合体以外の可塑剤が添加されたものであってもよい。以下、実施例を挙げて、具体的に説明する。
<合成例1>
電熱式ヒーターを備えた容量1000mlの加圧式攪拌槽型反応器を、温度を200℃に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、アクリル酸エステル単量体としてアクリル酸ブチル(以下、BAという。)98部、加水分解性シリル基含有単量体としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(以下、MSiという。)2部、重合開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイド1部からなる単量体混合物を、一定の供給速度(80g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜き出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、ヒータを制御することにより、反応温度250〜251℃を保持した。単量体混合物の供給開始から温度が安定した時点を、反応液の採取開始点とし、これから25分反応を継続した結果、約2kgの単量体混合液を供給し、約1.9kgの反応液を回収した。その後反応液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離して濃縮液を得た。ガスクロマトグラフ分析より、濃縮液中には未反応モノマーは存在していないことが確認された。溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPCという。)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(以下、Mnともいう。)は1600、重量平均分子量(以下、Mwともいう。)は3600であった。また、重合体一分子あたりの加水分解性シリル基の数は0.12であった。この共重合体を核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)により構造を調べた結果、構成単量体単位の割合はBA:MSi=98:2であることを確認した。反応により得た共重合体を「可塑剤1」という。
<合成例2〜6>
条件を表1のように変更する以外は合成例1と同様に重合および処理を行い、共重合体を合成した。得られた重合体をそれぞれ可塑剤2〜6という。これらの分析結果を表1に示す。
可塑剤2、4および5は本発明の要件を構成するビニル重合体(A)に相当するものであり、可塑剤1、3および6は、比較用の可塑剤である。
Figure 0004277679
表1において、単量体の略号の意味は以下のとおりである。
MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸ブチル
HA:アクリル酸2−エチルヘキシル
MSi:メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル
VSi:ビニルトリメトキシシラン
表1において、相溶性はオキシアルキレン重合体(B)との相溶性であり、「○」は混合物が透明となり、「△」は混合物が濁ったことを意味する。
<実施例1〜5、比較例1〜5>
実施例および比較例の配合を表2に示す。MSポリマーS−203(鐘淵化学製)はオキシアルキレン重合体(B)に相当するシリル官能性シーリング材基材であり、MSX−911(鐘淵化学製)はオキシアルキレン重合体(B)およびビニル重合体(C)を含有するシリル官能性シーリング材基材である。
可塑剤1〜5は、ビニル重合体(A)に相当する本発明の要件のひとつを構成する成分である。可塑剤6およびジオクチルフタレート(以下、DOPという。)は比較用の可塑剤である。
表2に示す配合物からなるシーリング材組成物につき以下の評価を実施した。評価結果も表2に示す。
<耐汚染性試験>
アルミ板の上に厚さ12mmのスレートを置き、その隙間(幅10mm、長さ50mm)にシーリング材組成物を充填した。2週間常温養生した後、シーリング材硬化物およびスレートにエマルジョン塗料(日本ペイント「タイルラック水性トップ(白)」)を上塗りした。これを1週間常温で養生した後、60℃で2週間の加熱養生を行った。養生後、汚染粉(試験用ダスト8種:黄色酸化鉄:試験用ダスト3種=24:71:5(質量比))を上塗り塗膜上に振りまき、10分後にエアーブロー(0.1Mpa)を行った。汚染粉の振りまき前後で、色差を調べた。色差が小さいものほど耐汚染性が良好であることを意味する。色差(ΔE)は日本電色工業株式会社製色差計SZ−Σ80により測定したLAB値の差から求めた。
<耐候性試験>
各シーリング材組成物について厚さ2mmの硬化シートを作製し、メタリングウェザーメーター(DAIPLA METAL WEATHER KU-R5NCI-A、ダイプラ・ウィンテス株式会社製)で800時間耐候性試験を行った。外観に異常がなかったものを○とし、外観にクラック、ブリード等の異常が生じた場合には、異常が発生した時間(hr)を記録した。
<耐アルカリ性試験>
モルタル板を被着体とし、JIS A1439引張り特性試験に準ずる方法で試験体を作成した。試験体を50℃の飽和水酸化カルシウム水溶液中に3日間浸漬した。浸漬後の試験体を23℃、50%RHで1日静置した後、シーリング材と被着体の密着性を以下の基準で評価した。
○:引張り強度が0.2MPa以上であった。
△:シーリング材硬化物と被着体が手で簡単に剥離した。
×:シーリング材硬化物と被着体が浸漬中に剥離した。
Figure 0004277679
表2における配合物の配合量は質量部を意味する。また、配合成分1)〜6)は以下のものである。
1)カルファイン200(丸尾カルシウム製)
2)タイペークCR−97(石原産業製)
3)ジブチル錫ジラウレート(試薬)
4)サノールLS−770(三共製)
5)チヌビン327(チバスペシャリティケミカルズ製)
6)ディスパロン6500(楠本化成製)
耐候性、耐アルカリ性および耐汚染性の極めて優れた硬化物を与えるシリル官能性シーリング材組成物が得られる。該シーリング材組成物は、土木・建築用材料として有用である。

Claims (3)

  1. ガラス転移温度が−80〜10℃であり、数平均分子量が500〜3000であり、構成単量体単位としてメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルまたはメタクリル酸ブチルから選ばれる少なくとも1つのメタクリル酸アルキルエステル単位5〜30質量%を有し、一分子平均0.05〜2個の加水分解性シリル基を有するビニル重合体(A)および加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体(B)を含有し、オキシアルキレン重合体(B)100質量部を基準とするビニル重合体(A)の割合が40〜140質量部であることを特徴とするシーリング材組成物。
  2. ビニル重合体(A)は、原料ビニル単量体を150〜350℃の温度において連続重合させて得られるものであることを特徴とする請求項に記載のシーリング材組成物。
  3. ビニル重合体(A)は、構成単量体単位としてビニルトリメトキシシラン単位を有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のシーリング材組成物。
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