JP4273454B2 - 板圧延用シフトロールの形状決定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は上下のワークロールを軸方向へ互い違いにシフトさせて板材を圧延するロールシフト式圧延機に用いる板圧延用シフトロールの形状決定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の板圧延ではロールの撓み、入側板厚分布の変動等で、圧延板に幅方向に板厚分布変動(板クラウン)が大きくなっていた。この幅方向板厚分布変動を制御して小さくするために、ロールにある形状を与えてロールをシフトさせることにより幅方向板厚分布を制御することが行われている(例えば、特許文献1〜7)。
なお、本発明において、「板クラウン」とは、図2に示すように、板クラウン(Cr)=板幅中央板厚(hc)−板幅端板厚(he)・・・(1)を意味する。
【0003】
〔特許文献1〕は、上下シフトロールが互に補完形状を持ち、かつそのロール形状が、r(x)=a+bx+cx2+dx3+ex4+fx5・・・(2)で表わされるロールである。ここで、rはロール半径、xは軸方向位置である。
〔特許文献2〕は、シフトワークロールがロール胴長全長に亘って湾曲した輪郭で、輪郭曲線が多項式、三角関数等数学的関数で表現されるロールである。
〔特許文献3〕には、点対称シフトロールを使いロール間隙制御を行う圧延ロールを2次関数または三角関数で表現される例が明細書に示されている。
〔特許文献4〕には、テーパー付ワークロールをシフトするものである。
特許文献1〜3は、シフトロールのロール形状をある関数で表現したロールとすることを述べている。また特許文献4はシフトロール胴端にテーパ部を設け、板幅端部にテーパ部をあてて幅方向板厚分布を制御するので幅端部のみの板厚制御となる。
【0004】
〔特許文献5〕は、ロール胴内の幅方向位置を主クラウン制御領域と副クラウン制御領域に分けて、前者ではロールカーブ変化をきつく、後者ではゆるくしてシフトロール形状を定める。
〔特許文献6〕は、特許文献5のシフトロールカーブを、更にロール両胴端径が等しくなるように修正するものである。
特許文献5、6は、特定関数に限定せずにシフトロールの形状をクラウン制御に有効であるように形作る特許である。この方式ではロール形状を形作るプロセスは生産板幅分布を特に重視する板幅領域とそのとなりのやや重視する板幅領域とに分け、前者を主クラウン制御領域、後者を副クラウン制御領域としてシフトロールの曲線を試行錯誤的に求める方式が示されている。
一般に生産板幅分布は数値分布なので数値分布に基づき主クラウン制御領域、副クラウン制御域に1律に分けて、その後試行錯誤的に最適ロールクラウン形状を求めるのははん雑な手数を要し、容易でない。従がって数値分布としての生産板幅分布をもとに、数値処理手順を経てシフトロールのロール形状を定めるプロセスが必要とされる。
【0005】
〔特許文献7〕の「ロールシフト用の圧延ロール及びロールシフト圧延機」は、ロール撓み,ロール熱クラウン,ロール局部面圧等の圧延不良現象に対するシフトロールのロール形状による対策のとり方を開示している。
これら圧延不良現象対策と前述の生産量板幅分布による板クラウン対策との組み合わせをどのようにしたら良いかという点が不明のままで不便を生じている。
【0006】
【特許文献1】
特公平7−102377号公報
【特許文献2】
特許第2733836号公報
【特許文献3】
特公昭63−62283号公報
【特許文献4】
特公昭60−51921号公報
【特許文献5】
特許第3317311号公報
【特許文献6】
特許第3348503号公報
【特許文献7】
特開平8−192208号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術ではシフトロールにある数学的関数で規定したロール形状となる。幅方向板厚分布変動は板幅に附随した変動量なので、シフトロールによる板クラウン制御効果が生産比率の大きい板幅に対して大きくなるようにする必要がある。シフトロールには数学的関数で固定したロール凹凸形状ではなく、板幅毎の生産量の数値分布を考慮したロール形状を形作るプロセスが必要であり、かつその処理プロセスが単なる試行錯誤ではなく、ある手順を段階的に行うプロセスであるようにするこのが望まれていた。
【0008】
本発明は、かかる要望を満たすために創案されたものである。すなわち、本発明は、板幅毎の生産量の数値分布を考慮し、試行錯誤ではなく、客観的な手順でシフトロールのロール形状を決定することができる板圧延用シフトロールの形状決定方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、対象とする圧延設備における板幅毎の生産量分布をもとに、板幅毎の必要板クラウン制御量分布αiを定める第1ステップと、凹凸シフトロールの最大半径差yA0を与える第2ステップと、前記必要板クラウン制御量分布αiと最大半径差yA0からロール外径の幅方向分布線yiを仮に定める第3ステップと、最大シフト量のもとでのロールギャップの変化量の幅方向分布ΔyBiを前記幅方向分布線yiをシフト量だけずらすことにより求める第4ステップと、前記ロールギャップの変化量の幅方向分布ΔyBiの急激な変化部分を丸める第5ステップとを有する、ことを特徴とする板圧延用シフトロールの形状決定方法が提供される。
【0010】
また本発明の好ましい実施形態によれば、ロール胴長の両端位置の外径が同一値であるようにロール外径の幅方向分布線yiの全体を傾斜させる第6ステップと、第6ステップの外径分布を持つ板圧延用シフトロールを研削で作る第7ステップとを更に有する。
また更に、第6ステップで得たロール外形線をもとに最大シフト量での、ロールギャップのシフトによる変化量の幅方向分布を再度求め、不自然な局部凹凸が発生していれば第6ステップで得たロール外形線を修正する第7ステップを有する。
【0011】
ロール研削にあたっては第7ステップで作られたロール外形線の各位置座標を読取り、ロール研削盤に設定することにより第7ステップの外形線を持つシフトロールが出来る。
【0012】
以上のプロセスにより、生産量板幅分布に基づいて、シフトロールカーブを定めるので、圧延ユーザーの生産品構成変化に応じて、最適ロールカーブを定めることが出来る。
また凹凸シフトロールの凹凸によるロール径差をある値以内におさえてロール形状を定めるので、ロール径差により起こりがちな圧延振動をおさえることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
処理プロセスの前提として圧延操業の側から現実の操業からみた希望するロールギャップ制御量Δy′Bを定める。また、板幅は最大板幅を等分割した幅Bi の集まりと考える。
希望するロールギャップ変更量量Δy'' Biは例えば以下のように定まる。
図8である圧延設備で狭幅板、中幅板、広幅板が生産されている時、各板幅で幅方向板厚分布の変動が斜線のようであるとすると、狭幅板ではΔCr1、中幅板ではΔCr2、広幅板ではΔCr3の制御量(変更量)が必要ということになり、図8下部のようにΔCr1、ΔCr2、ΔCr3をつないだΔy′Bの線が希望するロールギャップ変更量ということになる。さらにロールギャップ変化は板の硬さがあるためそのまま板Crと1:1ではないので比率β(=ロール硬さ/板硬さ)だけ縦軸を拡大または縮小したΔy'' Bi=β・Δy′BiがS10でΔyBiと対比されることになる。
Δy'' Biは生産量分布の重味を考えずに、単に板幅毎の希望板クラウン制御量をあらわした希望値である。Δy'' Biは図8のような複雑な算出ではなく、単に幅にかかわらず板クラウン制御量(Δy′Bi)が何μm欲しいという一定値で与えられることも多い。
【0014】
図1に本発明によるシフトロールのロール形状決定フロー図を示す。最初に対象圧延設備での板幅毎の生産量分布P線を書く。この分布線は連続した線ではなく、板幅Bに対応した点の数値の集まりで良く、線は折線でも良い。この分布に対応して板幅毎の必要板クラウン制御量分布αの分布線を作る。必要板クラウン制御量が生産量と結びついているのであればαの分布の形は生産量分布の形と同じになる。しかしある板幅で板クラウン制御を特に重視する要素であればその板幅でのαを増やせば良い。図3では破線のようにずらしている。凹凸ロールの最大ロール半径差をyA0としてステップS2で指定値とする。
【0015】
必要板クラウン制御量分布αはΣα=1.0(i=1〜MAXRの整数)であるように分布形状をもとに決定する。このαの仮定とyA0の指定のもとにロール半径yはロール胴部の中央からロール胴端に向けた長さxの点iにおいて、
=αA0+yi−1 (y=0)・・・(3)となる。
【0016】
図3の実施例の如きαiの分布の形の時は図4のyi線となる。シフト後のロール半径分布線は、
y′i =y(i-Ns)・・・(4)
ここで、Ns:シフト量xsuに相当する軸方向の分割数である。
従ってロール1本についてのシフトによる点iでのロールギャップ変化量ΔyBiは、
ΔyBi=y′i−yi=y(i-Ns)−yi・・・(5)
にて示される。
【0017】
図4の斜線領域がロール1本によるロール右半分でのロールギャップ変化量であり、ΔyBを縦軸として表示すれば図5のようになるのが図1のフローチャートのステップS4のΔyB線である。ΔyBが板クラウン制御に使用されるロールクラウン変化となる。図5のΔyBiの線に局部的に凹部または凸部がある時はステップS1−2のαiの数値かステップS3のyiの数値を局部的に修正するプロセスがステップS5及びステップS8である。
最初ステップS−1の圧延板生産量分布は客先都合により必ずしも円滑ないわゆる関数分布をしていない場合が多く、結果としてのyiの分布も数値分布である場合が多く局部凹凸が出やすいのでステップS5及びステップS8のプロセスが必要である。
【0018】
なおロール左半分は右半分と点対称に構成し、上下ロールは左右対称に形作り、シフトは上下逆にシフトする。
ロール全体に図4をあてはめるとロール全体形状は図6のようになる。図6においてロール左右胴端を結ぶ直線R−S−Tは胴部の一方から他方へ傾斜した線となる。RとTの高さの差が2yA0となる。
【0019】
板クラウン制御ロールを形作るために図6のような形状が有効であるが、一方では〔特許文献6〕に述べるようにロール胴長内のロール径差が大きいと振動が出やすく、振動の面からはロール径差が小さい方が良い。そこでステップS6の手順として、図6でのR−S−T(R′−S′−T′)に相当する斜め直線ラインを図7のような軸心線と平行なラインに修正する。図6のyiのラインは図7のR,S,Tを通る実線ラインとなる。この変更方式により板クラウン制御量をあまり変えることなく、ロール径差の小さいロール形状を得ることが出来る。
【0020】
新しいロール径差はステップS6で求めた新しいyi(y1i)線の最大頂点と最小頂点の差2yA1となる。2yA1が仮定した許容最大ロール半径差(図7)2yA0に対して過大または過小である時は新しいyi線をロール胴長内で相似的に拡大または縮小して新しいyi線(y1i線)の変更線y2i線(図7下部破線)を作る。この場合変更する相似率はyA0/yA1の比が最初の近似比であるが、段階的に修正するためにyA0/yA1に近い適当な値として相似拡大または縮小を行う。このプロセスがステップS9である。
なおS6の斜め化をしたことにより、ΔyBi全体に斜めにしたことによる変化量が発生することになるがこの量は全体に小さく、かつ板幅方向に一定に分布しているので、S4でのΔyBiをここでは修正しない。あとの繰返しフローでΔyBiが再計算されるので斜め化による効果計算の誤差はさらに小さくなる。
【0021】
以上の繰り返しによりロール形状y1iが定まる。ここまでのプロセスは生産量板幅分布に基づいて、板クラウン制御能力(図5のΔyBiに相当する)をロール径差2yA0許容値内という条件で求めている。
この状態での各シフト位置でのロールギャップ形状ΔyBiどれかあるいは数点の幅位置で希望値としてのΔy’’Biの上限値をほぼ満たしていれば終了である。満たしていなければ〔特許文献7〕に述べるような修正量をyに加算して新しいyとする。なおこの修正量の分布は必ずしも同一ロールの左右で点対称とはならない。この時、即ちどのロール位置で上下ロールは補完関係にならない。yが修正された場合再びΔyBiの算出をしてどれかの位置でΔy’’Biの上限値に近づくように繰り返す。
図8は生産量分布を考慮しないロールギャップ変更分布線であり、S10での修正は、ΔyBiのうちの主要な点の1〜3点が図8の斜線の上限に達したらS11の修正は終了とする。生産量分布を重視したΔyBiの分布の形を基本形として充分残すようにする。図5の形状にΔyBiの形状を一致させるのではなく、ΔyBiのうちの少ないいくつかの点が図8のΔy’’Bi上限値に達したかどうかで希望値を満たしているかどうかをS10のステップで判別している。
終了になった時のyがロールの半径形状を与える。
この半径形状yは数値データの集まりであり、これらをもとにロール研削盤にてyになるべく近いロール形状を研削して圧延ロールとして使用する。
【0022】
【発明の効果】
上述した本発明によれば、以下の効果が得られる。
1.シフトロールの最適ロール形状を定めるプロセス手順が発明され、試行錯誤的に行う必要が無くなる。
2.生産量の幅別構成という数値的には表わされるが、数学的関数では表わしにくいものに対するシフトロール形状最適化という手順が提案された。しかもその時にロール内でのロール径差を小さく維持できる。
3.ヒートクラウン,ロール撓み,ロール面圧といった圧延現象外乱にも対処したプロセスとなっている。
【0023】
従って、本発明の板圧延用シフトロールの形状決定方法は、板幅毎の生産量の数値分布を考慮し、試行錯誤ではなく、客観的な手順でシフトロールのロール形状を決定することができる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】最適シフトロール形状決定フロー図である。
【図2】幅方向板厚分布、板クラウンを説明する図である。
【図3】生産量板幅分布、板クラウン 必要板クラウン制御量分布の説明図である。
【図4】ロール半径形状、シフト時の半径形状を示す図である。
【図5】ロールギャップのシフトによる変化量分布図である。
【図6】板クラウン制御ロールを形作るための図である。
【図7】ロール形状の修正図である。
【図8】生産量分布を考慮しないロールギャップ変更分布線である。

Claims (4)

  1. 対象とする圧延設備における板幅毎の生産量分布をもとに、板幅毎の必要板クラウン制御量分布αを定める第1ステップと、
    凹凸シフトロールの最大半径差yA0を与える第2ステップと、
    前記必要板クラウン制御量分布αと最大半径差yA0からロール外径の幅方向分布線yを仮に定める第3ステップと、
    最大シフト量のもとでのロールギャップの変化量の幅方向分布ΔyBiを前記幅方向分布線yをシフト量だけずらすことにより求める第4ステップと、
    前記ロールギャップの変化量の幅方向分布ΔyBiの急激な変化部分を丸める第5ステップとを有する、ことを特徴とする板圧延用シフトロールの形状決定方法。
  2. ロール胴長の両端位置の外径が同一値であるようにロール外径の幅方向分布線yの全体を傾斜させる第6ステップと、
    第6ステップの外径分布を持つ板圧延用シフトロールを研削で作る第7ステップとを更に有する、ことを特徴とする請求項1に記載の板圧延用シフトロールの形状決定方法。
  3. 更に、第6ステップで得たロール外形線をもとに最大シフト量での、ロールギャップのシフトによる変化量の幅方向分布を再度求め、不自然な局部凹凸が発生していれば第6ステップで得たロール外形線を修正する第7ステップを有する、ことを特徴とする請求項2に記載の板圧延用シフトロールの形状決定方法。
  4. 前記第3ステップでは、iを1〜最大値までの整数とし、y を0として、y =α A0 +y i−1 によりy を定め、
    前記第4ステップでは、Nsを前記シフト量に相当する数として、Δy Bi =y (i−Ns) −y によりΔy Bi を求める、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の板圧延用シフトロールの形状決定方法。
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