JP4269847B2 - ベルレス高炉の原料装入方法 - Google Patents

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本発明は、ベルレス高炉の原料装入方法に係わり、詳しくは、ベルレス装入装置を介して、鉄鉱石にコークスを混合させて高炉へ装入する所謂「混合装入」技術の改良に関する。
通常、溶銑を溶製する高炉では、炉頂より鉄鉱石類とコークスとを交互に装入し、炉上部(以下シャフトという)にそれらの層状構造を有する充填層を形成する。この鉄鉱石類層、コークス層の一層分の量をそれぞれ1チャージの鉱石、コークスと呼ぶ。これら1チャージ分の鉱石、コークスは必ずしもそれぞれ一度の装入で炉内へ装入されるわけではなく、1チャージの鉱石、コークスを複数回に分割して炉内へ装入することも行われている。この分割された鉱石、コークスをそれぞれ1バッチの鉱石、コークスと呼ぶ。また、高炉の炉下部からは空気又は酸素富化空気を炉内へ吹込み、炉内に存在するコークスを燃焼させ、この燃焼で発生する高温還元性ガスを用いて前記シャフト内の鉄鉱石(以下、単に鉱石という)の還元及び溶融が行われる。したがって、高炉の生産性を向上させるには、シャフト内の鉱石やコークスの充填層の通気抵抗を低減することが重要となる。
このシャフト内の通気抵抗を低減する一つの有効な手段として、従来より、鉱石とコークスとを混合して炉内に堆積させることが知られている。例えば、特許第2820478号公報は、鉱石ホッパ及びコークスホッパからの鉱石及びコークスの切り出し時期と量に工夫を凝らし、ベルレス高炉で、鉱石中にコークスを均一に混合する方法を開示している。
また、高炉内での通気抵抗の増加を防ぎ、炉内ガスの流れを安定に保つ手段として、コークスをシャフトの中心部へ装入し、炉内を上昇するガスの流量分布を中心部が大きくなるようにする(これを中心流志向という)のが有効であるということも知られている。例えば、特開昭60−56003号公報は、1チャージで装入するコークスのうちの1.5〜8重量%を、炉の中心部へ集中的に装入する技術を開示している。このコークスの中心装入は、炉内の通気抵抗を低減するという効果のみならず、炉の中心部に鉱石があまり存在しないことから、鉱石の還元で発生する二酸化炭素でコークスが酸化される所謂「ソリューションロス反応」(以下、ソルロス反応という)によるコークスの劣化が回避、低減されるという効果がある。また、コークスそのものの強度管理値が低下でき、安価な低品位石炭の利用でコークス製造用原料炭のコストダウンを可能とし、さらに炉床部に形成される所謂「炉芯(デッドマンともいう)」のコークス粒径が必要以上に縮小するのも防止できるので、炉床での通液性向上にも役立っている。したがって、上記した鉱石及びコークスの混合装入(以下、単に混合装入という)とコークスの中心装入とを組み合わせれば、シャフト部の通気抵抗が従来より一層低減でき、生産性が向上するという相乗効果が期待できる。
しかしながら、同一チャージ内で混合装入とコークスの中心装入とを組み合わせるには、具体的には、原料ホッパからの切り出しを、コークスの通常装入用バッチ、コークスの中心装入用バッチ及び混合装入用バッチの3通りにして行う必要がある。これは、1チャージ分のコークスを炉内へ装入するためにコークスの炉頂巻き上げを3回にすることになる。つまり、1チャージ分のコークスを装入するのに要する時間が増加する。したがって、高炉の生産性を増加させる必要があっても、原料の炉頂巻き上げ能力が原料の装入量に対して不足し、原料装入が間に合わなくなる状況が起きる。そのような場合には、コークスの中心装入と混合装入とを同時に実施することを中断せざるを得ず、前記した両者の実施による安価原料炭の使用メリット等は享受できないようになる。
本発明は、かかる事情に鑑み、コークスの中心装入と鉱石及びコークスの混合装入とを常時円滑に実施可能なベルレス高炉の原料装入方法を提供することを目的としている。
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
すなわち、本発明は、高炉のベルレス装入装置のシュートを、その傾動角を変更しながら旋回させて、複数の炉頂バンカに個別に貯留したコークス又は鉱石をそれぞれ流調ゲートを介して排出し、炉内半径方向で炉中心部から炉壁部へ向けて装入するに際し、
前記炉頂バンカの一つに貯留したコークスの該炉頂バンカからの排出量が、1バッチ分のコークス装入量の5〜50mass%間の所定量に到達した時点から、別の炉頂バンカに貯留した鉱石の排出を開始し、コークスと鉱石を同時に混合装入して、コークスの中心装入と鉱石及びコークスの混合装入とを1バッチで行うことを特徴とするベルレス高炉の原料装入方法である。この場合、前記コークス又は鉱石のそれぞれの流調ゲートからの排出終了時が同時となるように、該流調ゲートの開度を調整するのが好ましい。
本発明により、ベルレス高炉で高生産量操業の実施にあたって、コークス及び鉱石の混合装入とコークスの中心装入とを常時同時に行なうことが可能となる。これにより、高生産量操業を行う際に生じ易い炉内圧力損失の増加を効果的に防止でき、焼結鉱や還元鉄等の高品位原料の使用量を増加させずに、溶銑の増産が可能となる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
まず、ベルレス装入装置を備えた高炉の炉頂部の縦断面を図1に示す。炉頂バンカ1に貯留された原料2(鉱石又はコークス)は、流調ゲート3と称し、排出量をその開度で調整するゲートを通って落下し、垂直シュート4を介して旋回自在なシュート(通常、装入シュート5という)ヘ供給される。この装入シュート5は、高炉6の中心軸7を中心として水平方向に旋回すると共に、該中心軸7に対してその傾動角(θ)を変更することができる。そして、原料装入中に装入シュート5を旋回させながら、順次段階的に傾動角θを変更していくことで、炉内に広い堆積面を形成して原料を装入することができる。通常は、傾動角θとして、予め多数の角度を設定し、それぞれの角度にノッチ番号を付与しておき、装入シュート5を旋回させながら原料2を装入するにあたり、装入開始から各旋回数時におけるノッチを決めておくことで、同種の原料をいつも一定の位置へ装入することができる。また、炉頂バンカ1は、図1ではA及びBの2基示しているが、3基以上ある場合もあり、それぞれに1バッチ分の原料2が巻き上げられて、貯留できるようになっている。
本発明は、かかるベルレス装入装置を用いた高炉原料の装入方法であり、コークスを炉中心側から炉壁側へ向けて傾動角を順次変更しながら装入し、そのコークスの装入中に、鉱石をも同時に装入するようにしたものである。具体的には、コークス及び鉱石の装入期間は、図2(a)の概念図に示すようになる。つまり、コークスを貯留している炉頂バンカ(例えば、A)からコークスを排出していき、コークスの該炉頂バンカからの排出量が炉頂バンカに貯留していた1バッチ分のコークス装入量の5〜50質量%になったら、鉱石を貯留している別の炉頂バンカ(例えば、B)から鉱石の排出を開始する。これにより、当初はコークスの中心装入が、途中よりコークスと鉱石との混合装入ができるようになる。
一例としての本発明は、最初にコークスを3旋回で装入した後に、コークス及び鉱石の混合装入を行った場合であり、コークスの装入開始直後はコークスのみを炉中心側へ装入するので、炉中心部にコークスのみの堆積層Cが形成され、その後にコークスと一緒に鉱石を装入するので、コークス及び鉱石の混合層C+Oが形成されている。この場合、先行して装入されたコークスは、炉中心部に山を形成して、その後それよりも炉壁側へコークス及び鉱石の混合物を装入しているので、後から装入される混合物は、炉中心部のコークスの山の上へ流れ込むことがない。これにより、炉中心部には、コークスのみが堆積した中心コークス層が形成されるのである。また、後から装入される鉱石は、中心コークス層の外側(炉壁側)に、コークスと同時に堆積するため、炉半径方向の所定の位置に、所定の層厚の混合層C+Oを形成するのである。
なお、本発明では、コークス及び鉱石のそれぞれの排出終了時が同時となるように、前記流調ゲート3の開度を調整することが好ましい。しかし、コークスや鉱石の炉頂バンカ1からの排出時間は、それぞれの粒度や含まれる水分量等により変動するので、流調ゲート3の開度調整を適宜行なえば良い。
上記した本発明の例はコークス、鉱石をそれぞれ2バッチに分割した内のコークスの2バッチ目と鉱石の1バッチ目を部分的に同時排出して中心コークスと混合層を形成したものであるが、本発明ではこれに限らず、コークス、鉱石をそれぞれ1チャージずつバッチ分割をせずに炉内へ装入するにあたり、炉中心にコークス単独の層、その周囲に混合層を形成させるといった装入方法を採ることもできる。また、コークスを2バッチに分割してコークス単独バッチC で炉内全体にコークスを装入した後に、コークスの2バッチ目の途中から鉱石1チャージ分を混合して装入するといった装入方法も採ることができる。
さらに、本発明では、コークスヘ混合する鉱石の炉頂バンカからの排出開始タイミングを、別の炉頂バンカからコークスの単独排出を開始して、そのバッチで装入するコークス量の5〜50mass%に相当するコークスが排出された期間内とした。その理由は以下の通りである。
コークス単独の排出量が5mass%未満であると、炉中心部に堆積するコークス量が少な過ぎて、後から装入するコークス及び鉱石の混合物が炉中心部のコークス層へ混入してしまい、コークス中心装入の効果を得ることができない。また、50mass%超えのコークス単独の装入を行なった後にコークス及び鉱石の混合装入を開始すると、混合物中の鉱石量を十分増やすことができず、混合装入の効果を得ることが難しい。さらに、この場合、炉中心部の広い範囲で鉱石の存在しない部分が生じ、炉内を有効に使用することができず、かえって生産量を上げることができなくなる。
炉内容積5000m3のベルレス装入装置を備えた高炉を用い、その生産量を増加させる試験操業を行なった。この高炉では、前記装入シュートの傾動角は、表3に示すようにノッチ番号と対応している。なお、ノッチ数が大きいほど、傾動角を小さくしてあるので、装入開始直後は、20ノッチでほぼ装入シュートはほぼ垂直状態であり、その後、徐々に傾動角を大きくしながら装入を行なうことになる。
また、試験操業は、かかる高炉において目標とする出銑比を1.8、2.0及び2.1の3水準(ケース1〜3)とし、順次生産量を増加させていったが、出銑比1.8及び2.0の操業は従来の原料装入方法で、出銑比2.1の操業は、本発明に係る原料装入方法で行った。ここで、出銑比とは、高炉の一日の出銑量(t/d)を炉内容積(m3)で割った数値を表し、出銑比が大きいほど高生産量を目指した操業である。なお、この試験操業におけるコークス及び鉱石の装入条件(バッチの種類、バッチの装入量、装入シュートのノッチ数及び使用した炉頂バンカ)を表1に一括して示す。
Figure 0004269847
まず、ケース1は、出銑比1.8の操業であり、そこでは、C1としてコークスだけを装入した後に、C2として中心装入用のコークスを装入し、その後に予め混合し、炉頂バンカに混合して貯留してあるC3のコークス及びO1の鉱石を同時に装入し、混合層を形成した。その後,O2として鉱石だけを炉壁側へ装入し、鉱石の単独層を形成した。このO2の鉱石は、鉱石の中でも小粒径のものを、特に炉壁へ装入したものである。この一連の装入を1チャージとして、装入を繰り返し操業を行なった。なお、この操業は、従来技術であり、コークスの中心装入と混合装入とをそれぞれ個別に行なうものに相当する。
このケース1の操業で、溶銑生産量の増加を図るため、出銑比を2.0まで上げることを目的として高炉への送風量を増加して単位時間あたりの鉱石の還元量を増加させる操業を行なった。しかしながら、この操業では、1チャージ分のコークス、鉱石を5バッチ分に分けて炉頂バンカヘ巻き上げるのに時間がかかり、炉内の堆積面をほぼ一定のレベルに保持する原料の供給が困難となり、巻き上げ時間の短縮をする必要が生じた。
そこで、予め混合したコークス及び鉱石の同時装入による混合層の形成を断念し、ケース2として、1チャージあたり4バッチ分の巻き上げによる操業とした。また、その際、出銑比上昇の対策として、処理鉱比(鉱石中の焼結鉱が占める割合)を82質量%へ上げて、炉内の還元の改善を図る必要があった。
ケース2の操業状況を表2に示すが、出銑比を上げるにあたり、ケース1の混合装入を断念し、処理鉱比を上げたにもかかわらず、炉内の通気抵抗指数は、1.05から1.17へと上昇し、通気性がケース1の場合より悪化している。
そこで、本発明に係る原料装入方法を適用し、C2としてコークスを炉中心部から炉中間部まで、装入シュートを13旋回で装入する間の6旋回目から鉱石を同時に装入するようにした。これは、C2の全装入コークス量の約40質量%装入した時点で、コークス及び鉱石の混合装入を開始したことになる。このケース3の操業結果を、前記表2にケース1及びケース2と一緒に示す。
Figure 0004269847
表2でコークス比、微粉炭比は、溶銑1tを製造するに当たり使用したコークス、微粉炭の量(kg〉である。処理鉱比とは、炉頂から装入する鉱石等の内で焼結鉱の質量割合を%で示した数値である。コークス強度TIとは、タンブラー指数である。通気抵抗指数は、高炉シャフト部での通気抵抗を指数化した指標であり、下記式より計算する。
通気抵抗指数={(A2−B2)/C}×(1/D1.7)×(273/E)
ここで、
A={(BP/98.0665)+1.033}×10000
B={(TP/98.0665)+1.033}×10000
C=1.033×10000×LSLOT
D=BGV/SAVE
E={(SGT+273)/2}+273
なお、
BP:送風圧力:[kPa]、TP:炉頂圧力[kPa]、LSLOT:ストックラインから羽口までの距離[m]、BGV:ボッシュガス量[m3(標準状態)/min],SAVE:高炉シャフト部の平均水平断面積[m2],SGT:高炉シャフト部の代表ガス温度[1000℃に固定]
表2より、本発明によれば、出銑比を2.1にまで上昇したことが明らかである。なお、この場合、混合装入を途中で中止することなく、コークス中心装入と混合装入とを同時に行なうことができ、通気抵抗指数もケース1と同レベルまで低減することができた。
Figure 0004269847
ベルレス高炉の炉頂部を説明する断面図である。 本発明に係る原料装入方法を説明する概念図であり、(a)は鉱石を装入する時期を示し、(b)は高炉内での装入位置を示している。
符号の説明
1 炉頂バンカ
2 原料
3 流調ゲート
4 垂直シュート
5 装入シュート
6 高炉
7 中心軸

Claims (2)

  1. 高炉のベルレス装入装置のシュートを、その傾動角を変更しながら旋回させて、複数の炉頂バンカに個別に貯留したコークス又は鉱石をそれぞれ流調ゲートを介して排出し、炉内半径方向で炉中心部から炉壁部へ向けて装入するに際し、
    前記炉頂バンカの一つに貯留したコークスの該炉頂バンカからの排出量が、1バッチ分のコークス装入量の5〜50mass%間の所定量に到達した時点から、別の炉頂バンカに貯留した鉱石の排出を開始し、コークスと鉱石を同時に混合装入して、コークスの中心装入と鉱石及びコークスの混合装入とを1バッチで行うことを特徴とするベルレス高炉の原料装入方法。
  2. 前記コークス又は鉱石のそれぞれの流調ゲートからの排出終了時が同時となるように、該流調ゲートの開度を調整することを特徴とする請求項1記載のベルレス高炉の原料装入方法。
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