JP3608485B2 - ベルレス高炉における原料装入方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベルレス高炉における原料装入方法に関し、特に炉内の安定したガス流分布を形成し、安定操業を達成することのできる原料装入方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高炉では、原料である鉱石およびコークスが炉の上方から交互に装入されて炉内に層状に充填される交互装入が一般的に行われている。
高炉では、炉の下方から吹き込まれる熱風が層状に充填されたコークスを燃焼して発生する高温還元性ガスが、炉内に充填された原料の間隙を上昇しながら、原料の昇温や、鉱石の還元を行うことで、銑鉄が製造されている。
【0003】
炉内に充填された原料は、コークスの燃焼や鉱石の還元、溶融によって消費されていくため、炉頂の装入物表面は下方へ徐々に降下していく。その分、炉頂から新たに鉱石とコークスを交互に装入することで、炉内の原料を常時ほぼ一定の高さに維持し、連続的に銑鉄を生産する。
このような鉱石あるいはコークスの装入をチャージと呼ぶ。各チャージにおいて装入する鉱石、コークスの量は、それぞれ所定の量となるように制御するが、鉱石とコークスの量比を変更することで鉱石を還元溶融するのに費やすコークス量を変更することができ、銑鉄生産量に対する消費熱量を可変とすることができる。
【0004】
高炉の生産性を上げるためには、上述のように炉内の上昇ガス流量を適切な状態に維持し、炉内の原料の消費を炉内の半径方向および円周方向で適切な状態に保ち、原料の降下を連続的にすることが必要である。
高炉は軸対称形状であるので、一般的に炉内の上昇ガス流量分布も軸対称となる。半径方向で見て、炉中心部で上昇ガス流量を多くし、炉壁側へ行くほどガス流を少なくするような炉内ガス流量分布を形成することで、安定な原料の降下が実現される。
【0005】
ここで、ベルレス高炉では、図1に示すように旋回シュート3を介して鉱石、コークス等の原料5を高炉1の炉内へ装入する。旋回シュート3には、炉頂バンカ4から原料5が供給され、旋回シュート3が旋回しながら傾動して1チャージ分の原料装入が行われる。ここで、2は高炉1の炉壁である。
旋回シュートは、図2において示すように高炉の中心軸に対してθで示す傾動角を逐次同一方向へ変更させながら旋回し、原料を炉頂堆積面上へ装入していく。
【0006】
傾動角は、例えば表1に示すように離散的な数値をノッチNo. として対応させ、各ノッチNo. において何回旋回させるかをあらかじめ決めておくことで、毎回同じ傾動パターンでの原料装入を可能としている。
【0007】
【表1】
Figure 0003608485
【0008】
このようなベルレス装入装置の利点は、1チャージの原料を何旋回で装入するかを制御することで、1旋回での原料の装入量をほぼ一定に制御できる点にある。そして、前記の一連のノッチNo. のノッチ順を傾動角パターンとして設定し、各ノッチNo. での旋回数を調整することで、炉半径方向での原料の堆積量を調整することができ、高炉の炉半径方向のガス流分布をきめ細かく調整することが可能である。
【0009】
つまり、図2に示すように高炉半径方向の任意の場所での鉱石層5aとコークス層5bの各層厚から決まる層厚比を自由に調整することができるのである。
一般に、鉱石の粒径はコークスの粒径に比べると比較的小さい。そのため、この層厚比が大きいほど鉱石層が厚く、全体として粒径の小さい領域の割合が大きくなるため、ガス流が抑制されることになる。
【0010】
ところで、高炉内の装入物分布に基づくガス流の分布制御を行う場合であっても、炉壁部と炉中心部におけるガス流の制御は、他の領域におけるガス流の制御とは異なった目的を有している。
高炉の、炉壁部を除く他の領域においては、鉱石原料の間接還元率や通気性といった観点から制御がなされるのに対し、炉壁部近傍のガス流は、炉壁に付着している付着物の厚みの制御にとって非常に重要となる。また、炉中心部は、強い中心ガス流を導くことで炉内の通気変動のバッファとなっている。
【0011】
一方、近年、溶銑コストの低減を目的として、安価な細粒原料や焼結していない鉱石(いわゆる、生鉱)などとコークスを混合して炉に装入する混合装入が行われるようになってきている。
混合装入では、コークスと鉱石を混合して装入するため、上記の交互装入のような鉱石層とコークス層の区別はなく、層厚や層厚比の概念は存在しない。しかしながら、炉内のガス流、特に、炉壁部と炉中心部におけるガス流の挙動は、交互装入、混合装入の別なく、ほぼ同様である。
【0012】
また、特開昭59−96203号公報に開示されているように、鉄源とコークスを交互に層となるように装入する交互装入に比べ、鉄源とコークスを混合して装入する混合装入の方が燃料比を低減できることが知られている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように粒径や比重が異なる原料(コークスと鉱石)を混合して炉内に装入した場合、その通気抵抗は混合原料の比率によって大きく変化することになる。
そのため、炉中心部に混合原料を装入するに際しては、チャージ毎の混合原料の比率の変動を極力小さくすることが好ましい。
【0014】
また、炉壁近傍の炉周辺部に装入するに際しても、チャージ毎の混合原料の比率の変動を極力小さくすることが必要とされ、また、炉壁近傍への装入の場合には、円周方向にも混合原料の比率の均一性が要求される。
ところが、混合原料は、その粒度や比重の差から輸送中の振動等によって分離しやすい性質を有している。この分離は、粒径差の大きいコークスと焼結鉱を混合した場合に特に顕著である。
【0015】
一例として、図3に、内容積5150mのベルレス高炉に、焼結鉱石中に質量比5%のコークスを混合した混合原料をベルトコンベアを介して炉頂バンカへ投入した後に炉頂バンカ下部から旋回シュートを用いて装入した場合のサンプリング結果を示す。図3は、横軸に旋回シュートの旋回数をとっており、縦軸に各旋回時のサンプリングにおける混合原料中のコークス比のコークス比平均値に対する比を示している。
【0016】
図3からも明らかなように、炉頂バンカ投入前にはコークスが均一に混合されていた混合原料が、炉頂バンカ排出時にはその排出中に経時的にコークス比が大きく変動している。この炉頂バンカ排出原料のコークス比の経時的変動は、炉頂バンカへの原料の投入時に炉頂バンカ内で生じる粒度偏折現象と、炉頂バンカからの原料の排出にあたり炉頂バンカの排出口直上の原料が最初に排出されるという原料の排出挙動に起因することか知られている。
【0017】
図3の場合、特に原料排出初期の旋回数1〜2のとき、および末期の旋回数9〜10のときに炉頂バンカから排出される混合原料のコークス比は平均に対して大きく変動することが判る。
この粒度偏析傾向を改善するために、炉頂バンカに補助シュート等の構造物を設置し、原料排出のフローパターンを変化させること等である程度は可能である。
【0018】
しかしながら、炉頂バンカからの原料排出の初期と末期における混合比の変動までを抑制することは困難である。
そのため、原料装入の初期と末期のそれぞれでの装入位置となる炉中心と炉壁部近傍において装入される原料の混合比が大きく変動することになる。つまり、最も原料混合比の均一性が要求される炉中心と炉壁部近傍が最も均一性が悪くなる結果となる。
【0019】
本発明は、上記のような問題を解決し、粒径や比重の異なる原料を混合して炉内に装入する混合装入を行う場合においても、好適な炉内ガス分布を可能としたベルレス高炉における原料装入方法を提供し、高炉の安定操業を実現することを目的とするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
炉内に装入する混合原料の混合比率は、炉頂バンカからの排出初期と末期を除けば、比較的安定している。そのため、本発明者らは、比較的安定している中間期に炉頂バンカから排出される混合原料を炉壁位置と炉中心位置に装入するようにし、初期と末期に排出される混合比率の不安定な原料を炉壁位置と炉中心位置以外の中間位置に装入すればよいことに想到したのである。
【0021】
このようにして装入を行うことで、高炉の操業安定上最も重要な位置である炉中心部と炉壁部における混合原料比を安定化することが可能となる。
すなわち、本発明は、コークスと鉱石を混合して炉内に装入する混合装入を行うとともに、混合した原料を装入する旋回シュートの傾動角の変更方向を、原料装入の途中で逆にし、炉頂バンカからの排出初期および/または末期の混合原料を炉壁位置と炉中心位置以外の中間位置に装入することを特徴とするベルレス高炉における原料装入方法によって上記課題を解決した。
【0022】
ここで、前記旋回シュートの傾動角の変更方向を、旋回の最初の1〜4旋回のいずれかの旋回および/または最後の1〜4旋回のいずれかの旋回において逆にし、炉頂バンカからの排出初期および/または末期の混合原料を炉壁位置と炉中心位置以外の中間位置に装入することを好適とすることを見出した。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明は、粒径や比重が異なる原料(コークスと鉱石)を混合し、その混合原料を、旋回シュートを傾動させて炉内に装入する傾動装入において、旋回シュートの傾動角の変更方向を原料装入の途中で逆にすることで、装入時にコークス比が時系列的に変動する影響を回避し、炉内コークス比の均一性を確保するものである。
【0024】
すなわち、図3において説明したコークス比の変動を、旋回シュートの傾動角の変更方向を原料装入の途中で逆にすることで回避し、コークス比を平均的にならすことができるようにしたものである。
ここで、旋回シュートの傾動角の変更方向を逆にするのは、装入開始時の旋回1回目および/または装入終了時の旋回最終回目だけとしてもよいが、装入を更に安定させるためには、旋回の最初の1〜4旋回のいずれかの旋回および/または最後の1〜4旋回のいずれかの旋回において旋回シュートの傾動角の変更方向を逆とすることを好適とする。
【0025】
【実施例】
本発明の効果を明らかにするため、容積5150mのベルレス高炉の改修にあたり、火入れ前に、従来例と本発明例での原料装入をそれぞれ行い、炉内堆積原料の調査を実施した。
ここで、炉内に装入する混合原料は、焼結鉱鉱石にコークスを5%配合したものとした。
【0026】
なお、従来例では、旋回シュートの傾動パターンを、表1に示したノッチNo. で1から12まで順次傾動させる12旋回での装入を行った。
一方、本発明例では、ノッチNo. を、3、2、1、4、5、6、7、8、9、12、11、10の順とし、同じく12旋回での装入を実施した。
以上の装入を行った結果を図4に示す。図4は、炉内でサンプル採取した焼結鉱中のコークス比の半径方向分布を示したグラフであり、△で示す従来例に較べ、○で示す本発明例の方が安定的に分布していることがわかる。特に、炉中心位置と炉壁位置において、従来例ではコークス比が大きく変動しているが、本発明を適用した本発明例では、十分平均化されていることを確認できた。すなわち、本発明例では、従来例に較べて炉内コークス比の均一性を大幅に向上させることができた。
【0027】
また、実操業における本発明の効果を検証するため、従来例での混合原料投入を1〜15チャージまで実施し、その後、16〜30チャージまでを本発明例での投入を行う操業を実施し、本発明適用の改善効果を検証した。
改善効果の検証には、炉内炉頂部に半径方向に設置した固定ゾンデによる炉内ガス温度の測定を行った。各チャージ完了直後の炉内中心部ガス温度(以下炉中心温度という)と炉壁部ガス温度(以下炉壁温度という)を計測し、この変動が大きい場合はそれぞれ炉中心部、炉壁部へ装入された原料のコークス比の変動が大きいと判断できる。
【0028】
図5は、上記操業における炉中心温度の推移を示すグラフであり、図6は、炉壁温度の推移を示すグラフである。
図5、図6から明らかなように、炉中心温度、炉壁温度の双方とも、本発明の適用によって従来例よりも安定し、温度ばらつきが小さくなっている。
これは、本発明の適用によって、炉中心部、炉壁部の双方で、それぞれ混合原料中のコークス比が安定し、ばらつかなくなったことによるものである。
【0029】
本実施例では炉頂バンカからの混合原料の装入にあたり、旋回シュートの傾動パターンで装入初期と末期の双方でノッチNo. を逆とすることでそれぞれ炉壁部および炉中心部のコークス比が安定しているが、炉壁部への原料装入に関係するノッチNo. において傾動角の変更方向を逆にすることで炉壁部のコークス比が安定し、炉中心部への原料装入に関係するノッチNo. において傾動角の変更方向を逆にすることで炉中心部のコークス比が安定しているのであるため、炉壁部、炉中心部それぞれ独立に操作することが可能である。
【0030】
【発明の効果】
本発明によって、炉中心部と炉壁部双方でのそれぞれのガス流変動を抑制することができるようになった。これによって、混合装入における高炉の操業の安定と燃料比の低減を実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】高炉の要部断面図である。
【図2】旋回シュートでの従来の交互原料装入を説明する要部断面図である。
【図3】混合原料装入における旋回毎のコークス量の変化を示すグラフである。
【図4】混合原料装入における炉半径位置におけるコークス量の変化を、従来例と本発明例で比較したグラフである。
【図5】混合原料装入におけるチャージ毎の炉中心温度の変動を、従来例と本発明例で比較したグラフである。
【図6】混合原料装入におけるチャージ毎の炉壁温度の変動を、従来例と本発明例で比較したグラフである。
【符号の説明】
1 高炉
2 炉壁
3 旋回シュート
4 炉頂バンカ
5 高炉原料
5a コークス
5b 鉄鉱石
θ 旋回シュート角度

Claims (2)

  1. コークスと鉱石を混合して炉内に装入する混合装入を行うとともに、
    混合した原料を装入する旋回シュートの傾動角の変更方向を、原料装入の途中で逆にし、炉頂バンカからの排出初期および/または末期の混合原料を炉壁位置と炉中心位置以外の中間位置に装入することを特徴とするベルレス高炉における原料装入方法。
  2. 前記旋回シュートの傾動角の変更方向を、旋回の最初の1〜4旋回のいずれかの旋回および/または最後の1〜4旋回のいずれかの旋回において逆にし、炉頂バンカからの排出初期および/または末期の混合原料を炉壁位置と炉中心位置以外の中間位置に装入することを特徴とする請求項1に記載のベルレス高炉における原料装入方法。
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