JP4045897B2 - ベルレス高炉の原料装入方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、装入シュートを有するベルレス装入装置を用いて、鉱石とコークスとの混合原料を高炉に装入する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に高炉の操業においては、高炉の炉頂から原料である鉱石(すなわち塊鉱石,焼結鉱,ペレット等)とコークスを交互に高炉内に装入して、鉱石およびコークスを層状に堆積させる。一方、 空気または酸素富化空気を加熱した熱風を高炉の下方の羽口から吹き込んで、 コークスを燃焼させて高温の還元性ガスを発生させる。その還元性ガスが、高炉内に堆積された原料の間隙を上昇しながら鉱石の還元および溶融を行なうことによって、銑鉄を製造している。
【0003】
したがって、高炉内に堆積した原料の通気抵抗を低減することは、高炉の生産性を向上するために重要な要素となる。
そこで従来から鉱石とコークスを交互に層状に装入するにあたって、高炉半径方向の鉱石層厚/コークス層厚比の分布を制御(いわゆる装入物分布制御)することによって高炉内の通気性を改善する種々の技術が検討されている。
【0004】
しかしながら高炉内下部には、鉱石が軟化融着した領域(いわゆる融着帯)がある。その融着帯の通気抵抗は極めて大きく、鉱石層厚/コークス層厚比を制御する装入物分布制御の技術を適用しても、融着帯の通気性向上の効果が十分に得られないことが知られている。
融着帯の通気性を向上するためには、高炉内に鉱石層を形成する際に鉱石とコークスとを予め混合して高炉内に装入することが有効であり、ベルレス高炉において鉱石とコークスとを混合した原料(以下、混合原料という)を装入するために種々の技術が提案されている。
【0005】
たとえば炉頂バンカー内にストーンボックスを設けて、鉱石とコークスを均一に混合し、混合比率の変動を抑制することが行なわれている。しかしストーンボックスを使用しても、鉱石やコークスの粒度分布,含有水分等の性状が変化すると、装入コンベアから炉頂バンカーに投入する際の落下軌跡が変化し、炉頂バンカー内の堆積状況が変化するのは避けられない。
【0006】
また特許第2820478 号公報には、ベルレス高炉における原料装入方法が開示されている。この技術は、鉱石とコークスとを均一に混合して炉頂バンカに貯留した後、旋回シュートを介して高炉内に装入することによって融着帯の通気性を改善し、出銑量の増大,炉況の安定,溶銑成分の安定を達成するものである。
しかしながら、高炉で使用される鉱石やコークスの粒度分布,含有水分あるいは鉱石種類の配合比率等の性状を常に一定に維持することは困難である。たとえば鉱石中の粘着性鉱石の配合比率が変化すると、特許第2820478 号公報に開示された技術では、炉頂バンカ内に投入された堆積挙動が変化し、炉頂バンカ下部の排出口から排出される原料中の鉱石とコークスの混合比率が変動する。
【0007】
つまり高炉で使用する各種原料の性状が変化すると、炉頂バンカー内の混合原料の堆積状況が変化するので、混合原料を炉頂バンカーから排出して高炉内に装入する際に、鉱石とコークスの混合比率が変動する。したがって高炉内に混合原料を装入するときに、原料堆積面上で鉱石とコークスが一定の混合比率で分布するように装入する必要がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題を解消し、高炉で使用する各種原料の性状が変化した場合でも、高炉炉頂部の原料堆積面上で鉱石とコークスを一定の混合比率で分布させ、溶銑温度と溶銑品質の変動を抑制するベルレス高炉の原料装入方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ベルレス装入装置を用いて高炉内へ原料として鉱石およびコークスを装入するベルレス高炉の原料装入方法において、鉱石とコークスとを混合した混合原料を1基の炉頂バンカーに貯留し、高炉中心軸を中心として装入シュートを旋回させかつ装入シュートの傾動角を順次変更して、装入シュートが高炉半径方向に少なくとも1回往復する間に炉頂バンカーに貯留された混合原料の全量を高炉内に装入するベルレス高炉の原料装入方法である。
【0010】
前記した発明においては好適態様として、装入シュートが高炉炉壁側から混合原料の装入を開始するか、あるいは高炉中心側から混合原料の装入を開始することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、ベルレス装入装置を有する高炉(以下、ベルレス高炉という)の炉頂部を模式的に示す断面図である。図1において、高炉中心軸と旋回シュートとのなす角(以下、傾動角という)をθとする。
ベルレス高炉には2基以上の炉頂バンカー1が設置されるが、そのうちの1基の炉頂バンカー1に、鉱石とコークスとを混合した混合原料2を貯留する。混合原料2は、炉頂バンカー1下部から排出され、流量調整ゲート3を通過する際に所定の流量に調整された後、 垂直シュート4を介して装入シュート5に供給される。
【0012】
装入シュート5は高炉中心軸を中心として旋回するとともに、傾動角θを変更しながら混合原料2を高炉7内に装入する。図1中の矢印aは装入シュート5の旋回を示し、矢印bは混合原料2の落下を示す。
このようにして高炉7内に混合原料2を装入する際に、装入シュート5を旋回させ、かつ傾動角θを順次変更することによって、高炉7炉頂部の原料堆積面6上の広い範囲にわたって混合原料2を装入することができる。
【0013】
なお図1には炉頂バンカー1を2基設置したベルレス高炉を示したが、炉頂バンカー1を3基以上設置したベルレス高炉にも本発明は適用できる。
本発明においては、鉱石とコークスとを混合した混合原料2を炉頂バンカー1内に貯留する方法は、特定の方法に限定しない。たとえば、鉱石の秤量ホッパー(図示せず)とコークスの秤量ホッパー(図示せず)からそれぞれ鉱石とコークスを所定の比率で同時に切り出して、装入コンベア(図示せず)を介して炉頂バンカー1へ搬送する等の従来から知られている方法が使用できる。
【0014】
しかし鉱石とコークスの特性の相違に起因して、炉頂バンカー1内の混合原料2は局部的に混合比率が変化するのは避けられない。つまり、鉱石の粒径は平均15mm程度の小径であるのに対して、コークスの粒径は平均50mm程度の大径であるから、炉頂バンカー1内に混合原料2を投入した時点で、粒径が比較的大きいコークスは炉頂バンカー1の壁側に転がり、粒径が比較的小さい鉱石は投入された位置に堆積しやすい。
【0015】
さらに混合原料2が炉頂バンカー1の下部から排出される際に、炉頂バンカー1内に貯留された混合原料2のうち、排出口の直上に位置する下層部から表層部まで垂直方向に分布する混合原料2が優先的に排出され、排出口の直上の堆積レベルが低下したところに、その周辺から混合原料2が流れ込む(いわゆるファンネルフロー)ことによって排出が進行する。
【0016】
その結果、炉頂バンカー1に混合原料2を投入するときには、予め所定の比率で鉱石とコークスが混合されているにも関わらず、炉頂バンカー1から混合原料2を排出するときには、鉱石とコークスの混合比率が変動する。すなわち排出の初期には鉱石の比率が増加し、排出の後期にはコークスの比率が増加する。このようにして混合原料2を炉頂バンカー1から排出するときに混合比率の変動が生じるのは避けられない。
【0017】
このようにして混合原料2を炉頂バンカー1から排出する間に混合比率が変動するので、混合原料2を装入シュート5を介して高炉7内に装入すると、混合原料2中の鉱石やコークスが原料堆積面6上で均一に分布せず、特定の領域に偏析する原因になる。
そこで本発明では、原料堆積面6上の偏析を防止するために、1基の炉頂バンカー1内に貯留した混合原料2の装入を開始してから全量の装入を終了するまでに、装入シュート5を高炉中心軸を中心として旋回させ、かつ傾動角θを順次変更して装入シュート5を高炉半径方向に少なくとも1回往復させる。ただし傾動角θを変更するにあたって、各々の傾動角で装入シュート5を1回ずつ旋回させる。
【0018】
つまり、装入シュート5を所定の傾動角θで高炉中心軸を中心にして1回旋回させて混合原料2を装入した後、傾動角θを変更して混合原料2の装入を継続しながら、炉頂バンカー1内の混合原料2全量の装入を終了するまでに、装入シュート5を高炉半径方向に少なくとも1回往復させる。したがって1基の炉頂バンカー1内に貯留した混合原料2全量を装入する間に、原料堆積面6上の任意の位置に混合原料2が2回以上装入されることになる。
【0019】
ベルレス高炉の操業においては、通常、装入シュート5の傾動角θを数段階に設定して各々番号(以下、ノッチ番号という)を付与している。したがって、装入シュート5を所定のノッチ番号で1回旋回させて混合原料2を装入した後、次のノッチ番号に変更して混合原料2の装入を継続することによって、既存のベルレス高炉に本発明を適用できる。
【0020】
図2は、本発明を適用して混合原料を装入した例を模式的に示す断面図である。図2には、高炉炉壁側から混合原料2の装入を開始し、傾動角θを順次減少しながら混合原料2を装入していき、高炉中心部に混合原料2を装入した後、傾動角θを順次増加しながら混合原料2を装入した例を示す。したがって図2において、炉頂バンカー1内に貯留した混合原料2の装入を開始した装入シュート5の第1回目の旋回(以下、第1旋回という)で装入された混合原料2aは、原料堆積面6上の高炉炉壁側に位置し、装入シュート5の第12回目の旋回(以下、第12旋回という)で装入された混合原料2bは、第1旋回で装入された混合原料2aの上に位置する。
【0021】
図2は、この第12旋回で混合原料2全量の装入を終了した状態である。ただし装入シュート5は所定の傾動角θで高炉中心軸を中心にして1回ずつ旋回するので、図2の断面図において混合原料2は高炉中心軸の両側に装入されるが、図2中には片側のみ図示する。
なお図2には、炉頂バンカー1内に貯留した混合原料2全量を装入する間に、装入シュート5を12回旋回させる例を示したが、本発明においては、装入シュート5の旋回数は特定の数値に限定しない。
【0022】
また図2には、炉頂バンカー1内に貯留した混合原料2全量を装入する間に、装入シュート5が高炉半径方向に1回往復する例を示したが、本発明においては装入シュート5が高炉半径方向に少なくとも1回往復すれば良い。したがって炉頂バンカー1内に貯留した混合原料2全量を装入する間に、装入シュート5が高炉半径方向に1回往復した後、さらに数回旋回しても良いし、あるいは2回以上往復しても良い。
【0023】
つまり炉頂バンカー1内の混合原料2全量を装入する間に装入シュート5が高炉中心軸を中心として旋回する回数,装入シュート5が高炉半径方向に往復する回数は適宜設定すれば良いのであり、炉頂バンカー1から排出され混合原料2の流量を流量調整ゲート3で調整する。
図2には、高炉炉壁側から混合原料2の装入を開始する例を示したが、高炉中心側から混合原料2の装入を開始し、傾動角θを順次増加しながら混合原料2を装入していき、高炉炉壁部に混合原料2を装入した後、傾動角θを順次減少しながら混合原料2を装入しても良い。
【0024】
このようにして炉頂バンカー1内に貯留した混合原料2全量を装入する間に、原料堆積面6上の任意の位置に混合原料2を2回以上装入すると、1回目の装入で混合原料2の混合比率が変動(たとえば鉱石の比率が増大)しても、2回目以降の装入では混合比率が逆の挙動(たとえばコークスの比率が増大)を示す。したがって、原料堆積面6上で鉱石とコークスを一定の混合比率で分布させることができる。その結果、融着帯の通気性を改善して溶銑温度の変動を抑制し、均一な品質の溶銑を得ることができる。
【0025】
なお、実際には所定のノッチ番号で1回装入したとき、原料堆積面6上では混合原料2は半径方向に広がって堆積するので、半径方向に装入シュート5が往復するにあたり同一ノッチで装入する必要はない。半径方向の所定の幅で挿入シュート5が少なくとも1回往復すれば良い。
【0026】
【実施例】
ベルレス高炉(内容積5000m3 )で鉱石層とコークス層を交互に形成する操業において、鉱石層を形成する際に、図2に示すように、予め鉱石中にコークスを混合した混合原料2を1基の炉頂バンカー1に貯留した。混合原料2中のコークス量は、鉱石層およびコークス層の1サイクル分の全コークス量に対して16質量%とした。
【0027】
この混合原料2を装入シュート5を介して装入するにあたって、装入シュート5が12回旋回する間に炉頂バンカー1内の混合原料2全量を装入するように、流量調整ゲート3を用いて、炉頂バンカー1から排出される混合原料2の流量を調整した。つまり図2に示すように、高炉炉壁側から装入を開始(すなわち第1旋回で装入された混合原料2a)し、傾動角θを順次減少しながら混合原料2を装入していき、高炉中心部に混合原料2を装入した後、傾動角θを順次増加しながら混合原料2を装入した。こうして高炉炉壁側から装入を開始し、装入シュート5が高炉半径方向に1回往復して高炉炉壁側に再度装入(すなわち第12旋回で装入された混合原料2b)して、炉頂バンカー1内の混合原料2全量の装入を終了した。これを発明例とする。
【0028】
一方、 比較例として、発明例と同様に混合原料2を装入するにあたって、装入シュート5が12回旋回する間に炉頂バンカー1内の混合原料2全量を装入するように流量調整ゲート3で調整した。そして、高炉炉壁側から装入を開始し、傾動角θを順次減少しながら混合原料2を装入していき、高炉中心側で炉頂バンカー1内の混合原料2全量の装入を終了した。
【0029】
ここで使用したベルレス高炉は、装入シュート5の傾動角θをノッチ番号で設定して操業する。そのノッチ番号と傾動角θの対応を表1に示す。
さらに混合原料2を装入したときのノッチ番号の設定を表2に示す。なお表2中のノッチ番号の設定は、各ノッチ番号で装入シュート5が1回ずつ旋回したことを示している。たとえば比較例において、ノッチ番号「5」が2回連続して記載されているのは、ノッチ番号「5」で装入シュート5が2回旋回した後、次のノッチ番号「6」で装入シュート5が旋回したことを示している。
【0030】
【表1】
Figure 0004045897
【0031】
【表2】
Figure 0004045897
【0032】
なおコークス層を形成する際には、発明例および比較例ともに、1サイクル分の全コークス量に対して10質量%に相当する量を高炉中心部に装入(いわゆる中心コークス)し、残りのコークスは高炉半径方向に均等に装入した。つまり装入シーケンスは、鉱石(混合原料2)−コークス−コークスの3バッチ装入である。
【0033】
発明例と比較例について、それぞれ5日間操業して、コークス比,微粉炭比,送風温度,溶銑温度,溶銑中Si濃度を測定した。その結果を表2に併せて示す。なお表2中のコークス比,微粉炭比は、5日間の合計出銑量に対する合計コークス使用量,合計微粉炭使用量の比である。また送風温度,溶銑温度,溶銑中Si濃度は定期的(6〜7回/日)に測定した値の平均値である。溶銑温度,溶銑中Si濃度については、測定値のバラツキも示す。
【0034】
表2から明らかなように、発明例では、溶銑温度,溶銑中Si濃度のバラツキが比較例に比べて低減した。そのため発明例では、送風温度を比較例に比べて30℃低下しても同等の溶銑温度を維持して安定に操業できた。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、高炉で使用する各種原料の粒度分布,含有水分等の性状が変化した場合でも、高炉炉頂部の原料堆積面上で鉱石とコークスを一定の混合比率で分布させ、溶銑温度と溶銑品質の変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベルレス高炉の炉頂部の例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明を適用して混合原料を装入した例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 炉頂バンカー
2 混合原料
2a 第1旋回で装入された混合原料
2b 第12旋回で装入された混合原料
3 流量調整ゲート
4 垂直シュート
5 装入シュート
6 原料堆積面
7 高炉
θ 傾動角

Claims (1)

  1. ベルレス装入装置を用いて高炉内へ原料として鉱石およびコークスを装入するベルレス高炉の原料装入方法において、前記鉱石と前記コークスとを混合した混合原料を1基の炉頂バンカーに貯留し、高炉中心軸を中心として装入シュートを旋回させかつ前記装入シュートの傾動角を順次変更して、前記装入シュートが高炉半径方向に少なくとも1回往復する間に前記炉頂バンカーに貯留された前記混合原料の全量を前記高炉内に装入することを特徴とするベルレス高炉の原料装入方法。
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