JP3772377B2 - 高炉用ベルレス式炉頂装入装置の旋回シュート - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉の炉頂部に配設された旋回シュートを介して炉内に装入される装入物の炉内分布制御に好適な高炉用ベルレス炉頂装入装置の旋回シュートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高炉操業においては、炉内に原料として焼結鉱等の鉄鉱石とコークスとが交互に層状に装入される。炉内に装入された装入物は、炉内を上昇してくる高温のガスによりまず乾燥、予熱が行われ、鉄鉱石の還元が起こる。装入物の降下に伴って還元は順次活発となり、鉄鉱石中の酸化鉄は金属鉄となり、さらに吸炭するなどして溶銑となり炉底に溜まる。このようにして炉底に溜まった溶銑は、炉底の出銑口より取り出され、銑鉄が製造される。高炉の生産性および銑鉄の品質を向上させるためには、ガスの通気性をよくすること、装入物をスムーズに降下させること、ガスを炉断面全体に均等に上昇させることおよび炉壁への熱負荷を少なくすることなどが要求される。
【0003】
高炉の形状は軸対称形をなしているが、安定操業には炉頂部半径方向の装入物の分布すなわち粒度分布やコークスと鉱石との層厚分布LO /LC (LO :鉱石層厚、LC :コークス層厚)を適正に制御して、ガス流分布、熱流比分布を円周方向で均一化することによって鉱石の還元、溶解状況を円周方向で均一化する必要がある。また、炉半径方向については、常に変化し続ける高炉の操業状態に対応して、炉頂での装入物の分布を柔軟にかつ高精度に制御し、最適な炉半径方向分布をもつようにすることが重要である。さらに原料装入前における装入物の表面高さにかかわらず同じ装入物分布を形成するため、炉内に落下する原料の落下軌跡を鉛直方向に制御することが望まれる。
【0004】
近年の高炉では、前記の条件を満たす炉頂装入装置としてベル式に代わり装入物の分布制御の自由度がより大きな旋回シュートを備えたベルレス式炉頂装入装置が採用されており、旋回シュートの回転数および傾斜角度の変更によって多様な装入物制御が行われている。ベルレス式炉頂装入装置の場合は、たとえば図7に示すように炉内に装入される原料は、一旦ベルトコンベア(図示せず)により2基の炉頂ホッパ1に貯蔵される。炉頂ホッパ1に貯蔵された原料6は、原料受入れ完了後に外気と遮断され、高圧の炉内と同じ圧力に調整される。炉頂ホッパ1内の圧力調整後に、炉頂ホッパ1内の原料6が下部に設けた流量調整ゲート2Aを用いて排出され、傾斜シュート2を流れ落ちる。傾斜シュート2を流れ落ちた原料6は、集合シュート3の出口部に固設した垂直シュート4を通過して落下する。垂直シュート4の出口部には、上部連結ピン7を介して駆動により鉛直に対する傾斜角度θを調整自在に支持されると共に炉円周方向に旋回する旋回シュート5が設けられており、垂直シュート4を通過しながら落下する原料が供給される。
【0005】
この際に、傾斜シュート2を滑り落ちる原料6は、集合シュート3の下部に設けた垂直シュート4の中心ではなく炉頂ホッパ1の反対側内面に沿う偏流となって落下し、傾斜角度θをもって旋回している旋回シュート5の上端部に供給される。このように垂直シュート4内で原料6が偏流して落下すると共に、シュート5が旋回していることもあって、原料6は旋回シュート4上を蛇行しながら斜めに流れた後、先端からほぼ放物線の落下軌跡を描きながら自由落下により炉内に装入される。その結果、旋回シュート5の炉円周方向に対する旋回角度によって旋回シュート5の先端から排出する原料6の方向や流速が異なってくる。さらに原料は、炉内に堆積した装入物10の表面上での転がり運動を経て原料の層厚、粒度分布が規定されることになる。
【0006】
しかしこのような旋回シュート5による装入物の分布制御は、
(1)原料の自由落下距離が長いため、落下時に粉化する恐れがある。
(2)原料の自由落下方向が滑り面の延長方向であるため、原料落下による着地時に炉半径方向の速度成分による強い慣性力により、堆積層を崩したり、流れ込みを発生させ、安定した堆積層が形成できず層厚分布が変化する。
(3)さらに前記(2)の場合、旧堆積装入物面を形成している装入物の粒度分布により装入物粒子群が炉半径方向について粒度分級を起こす。
(4)1バッチの装入物量を変化させたり、堆積面の高さ(ストックライン)が変化した場合には、旋回シュート5の傾動パターンを同一にしても、ストックラインの高さにより原料落下位置が異なるため、原料の堆積形状やO/C(O:鉱石、C:コークス)の炉半径方向分布が異なり、装入物分布が極端に変わり外乱となる。
(5)炉内の原料落下位置が正確に推定できない。
等の問題点のために高炉の操業が不安定になり、減風を余儀なくされ、生産量の低下、溶銑品質の悪化等を招いていた。
【0007】
このような問題点を改善する装入装置として、特開昭49-23111号公報では、旋回シュートの先端に垂直シュートを取り付けることにより、また実開平5-37948 号公報では、反射板を取り付けることにより、旋回シュートの先端から原料が落下する軌跡を垂直にする技術が開示されている。このうち前者の特開昭49-23111号公報に開示されたベルレス式炉頂装入装置では、図6のように円筒を長さ方向に半分割した円弧トラフ状の旋回シュート5を用い、この旋回シュート5の先端部に下部連結ピン8を介して円筒型の補助シュート9を鉛直に支持させることを要件とするものが提案されている。
【0008】
この場合、旋回シュート5から排出する原料6が補助シュート9の内面に衝突して落下する時に、原料6の運動エネルギーが衝突により減少する。このため、炉内に落下する原料6の炉半径方向に対する落下幅が減少すると共に落下軌跡が鉛直下向きになり、また旋回方向による炉半径方向の落下位置の差も減少すると説明している。
【0009】
また、実開平5-37948 号公報では、旋回シュートの先端部に下向きにシュート溝幅より広幅で一定角度の傾斜をもって固定された平面の反射板を備えた平板型のものが開示されている。この場合、これまでの旋回シュートに比べて薄く広幅な原料落下流が形成されるため、炉内に装入後の原料の再偏析が少なく、炉内に堆積した装入物の傾斜部に投入しても堆積層を崩す現象を生じにくく、原料分布と高炉操業の安定化を図ることができるとしている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前記公報に開示されている従来技術によれば、旋回シュートから放射線を描いて投入される原料を、円筒型の補助シュートや平板型の反射板により落下軌跡を下向きにする効果は、それなりに得られる。しかしながら、旋回シュートの先端部に重量が1〜2トン程度の補助シュートまたは反射板を取り付けるため、旋回シュート支持部の機械的強度アップ、傾動用モータ並びに旋回用モータの出力増強が必要である。このため、前記従来技術を実施するためには、単に旋回シュートの交換にとどまらず、大幅な設備変更を伴うので設備コストの増加を招くという問題点があった。
【0011】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決し、大幅な設備投資を必要とすることなく、旋回シュート先端から投入される原料を小型の補助シュートにより原料の落下軌跡を鉛直方向にすることができる高炉用ベルレス式炉頂装入装置の旋回シュートを提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題点を解消すべく旋回シュートの先端部に設ける補助シュートの構造について種々検討を重ねた結果により達成されたものであり、その要旨とするところは下記の通りである。
前記目的を達成するための本発明は、高炉用ベルレス式炉頂装入装置の旋回シュートにおいて、前記旋回シュートの先端部上面に離間して、当該旋回シュート上を滑り落ちる装入物の上層流にのみ衝突するように対向して半分割円錐形状をなす反発板を、当該反発板の円弧外周面を下側にして上流から下流にかけて末広がりになるように設け、前記旋回シュートから投入される原料を反発板を介してその落下方向を鉛直下方に変更するように構成してなることを特徴とする高炉用ベルレス式炉頂装入装置である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、高炉用ベルレス式炉頂装入装置において、炉頂ホッパ1から排出した原料6を旋回シュート5まで落下させるまでの装置は図6および図7に従って説明したものと同様であるので説明を省略する。図1は、本発明に係る旋回シュートの先端部を示す側面図である。また図2は、図1のA−A矢視方向を示す平面図であり、図3は、図1のB−B矢視方向を示す正面図である。
【0015】
本発明の高炉用ベルレス式炉頂装入装置の旋回シュートは、図1、図2および図3に示すように円筒を長さ方向に半分割した円弧トラフ状をなす旋回シュート5の先端部上端に差し渡して支持フレーム11を取り付ける。そして、この支持フレーム11の下面に取り付けた部材12を介して半分割円錐形状をなすコーン型の反発板13を設けるものであり、この反発板13は、円弧外周面を下側にして上流から下流にかけて末広がりになるように部材12に支持され、旋回シュート5の上面と離間している。したがって旋回シュート5上を流れ落ちる原料は、その上層部が反発板13に衝突し、下層部が反発板13の下端と旋回シュート5の上面とのなす間隙を通過する。
【0016】
このように本発明では、反発板13の下端と旋回シュート5の上面とは離間しているため、前述のように旋回シュート5上を流れる原料の上層部のみが反発板13に衝突し、原料6の下層部は反発板13に衝突せず、旋回シュート5の上面と反発板13の下端との間を通過する。ところで、図5に示すように旋回シュート5上を原料6が、ある角度βをもって斜めに偏り、振り上がって流れるので、振り上げ角度βの影響を受けることなく反発板13に当たる原料6の割合をほぼ一定にするために、反発板13を半分割円錐形状をなすコーン型とし旋回シュート5と同心状に配置するのである。
【0017】
本発明でも同じ構造であるので、従来技術として説明した図6および図7を参照しながら本発明の作用を説明する。
炉頂ホッパ1の下部に固定された傾斜シュート2を流れ落ちる原料6は垂直シュート4を偏流して落下し、旋回シュート5上端部への落下位置に応じ原料6は、旋回シュート5上を振り上がって蛇行するなどして斜めに流れ落ちる。そして旋回シュート5の先端から放出される原料6が、反発板13に直接衝突するのは、旋回シュート5上を滑り落ちる原料6の上層部であり、下層部は反発板13に接することのないまま反発板13と旋回シュート5との間隙を通過する。
【0018】
このようにして本発明では、原料6が旋回シュート5の上面をどのように異なった振り上がり角度βをもって流れ落ちても、その落下軌跡は図4に示すように旋回シュート5の先端部に設けた半分割円錐形状をなす反発板13に衝突する原料上層部JのベクトルXと反発板13に当たらず旋回シュート5の上面との間隙を通過するシュート面に平行な原料下層部KのベクトルYとを合成したベクトルXYによって決まる。つまり本発明では、原料上層部Jが反発板13に衝突して反発によりその向きを反転した原料上層部Jと反発板13に当たらずシュート面に平行な原料下層部Kとが正面衝突し、最終的に原料は合成ベクトルXYを形成してほぼ鉛直下方に落下するので、炉内の目標位置により確実に装入することができる。旋回シュート5の先端部に設ける反発板13は小型で軽量で済むため、旋回シュート5の重量増加を従来よりも小さくすることができる。
【0019】
以上に説明したように、旋回シュート5の先端部に設けた反発板13を介して原料を炉内に装入することにより、炉内に落下する原料の炉半径方向に対する落下幅を減少できると共に、原料落下位置の炉円周方向偏差が軽減され、さらに炉内装入物のストックライン高さに変動があっても原料を所定の位置に装入することが可能になる。
【0020】
本発明を、内容積4500m3 の高炉において、長さ4.0 m、幅1.0mの旋回シュートの先端部に表1に示すような小型の反発板を設けて炉内に原料をを装入し、高炉の操業を行った。
【0021】
【表1】
【0022】
本発明によれば、原料6が、旋回シュート5の上面をどのように異なった振り上がり角度βをもつて流れ落ちても、前述のように旋回シュート5の先端部に設けた半分割円錐形状をなすコーン型の反発板13に衝突して反発により、その向きを反転する原料上層部Jと、反発板13に当たらず旋回シュート5の上面との間隙を通過するシュート面に平行な原料下層部Kとが正面衝突し、最終的に原料はほぼ鉛直下方に落下させることができた。その結果、原料6を炉内の装入物ストックライン上の目標位置により確実に装入することができた。
【0023】
旋回シュートの先端部に設ける本発明の半分割円錐状反発板は、小型で軽量で済むため、表1に示すように従来の平板型反発板(2.0m×1.3m)を設置するのに比べ、反発板本体のみならず付属部材を加えた全体重量を大幅に軽量化することができた。このように、旋回シュート5の重量増加を従来よりも小さくすることができたので、旋回シュートの支持部強化や、傾動用モータの出力向上等を行わなくても、安定して旋回シュートを運転することが可能になった。
【0024】
表2に、本発明の実施例(小型、コーン型の反発板)、従来例1(反発板なし)および従来例2(2.0m×1.3m平板型の反発板)の場合における旋回シュート使用による高炉操業の結果を、1ヶ月の平均データで示す。
【0025】
【表2】
【0026】
旋回シュートの先端部に半分割円錐状をなす反発板(小型、コーン型)を使用する本発明の実施例では、反発板なしの従来例1に比較して、高精度で安定な原料分布制御として炉円周方向の原料落下位置の均一化、炉半径方向の狭い原料落下幅および原料の鉛直落下が可能となる。そのため高炉操業の安定化が達成され、表2に示すように、減風回数(回/月)を大幅に低減することができた。また、溶銑中の[Si](%)、溶銑温度(℃)の各ばらつき(1日の最大値と最小値との差)が減少し、出銑[Si]も低下した。さらに、これらの効果は、従来例2の平板型反発板(重量が大きい)を設置する場合と比較すると、ほぼ同等であった。
【0027】
なお、本発明の前記実施例では、表1に示した形状条件の反発板(半分割円錐状)を使用した場合について説明したが、本発明に係る反発板の形状条件は、次に示す範囲のものが望ましい。ここで、D:旋回シュートの直径を示す。
コーン角度 α : 30〜60(deg)
コーン直径(最大部) d : d/D → 0.7〜1.0
コーン長さ L : L/D → 0.2〜0.6
コーン角度αを、30〜60(deg) 範囲にしたのは、30(deg) 未満では原料の排出が阻害され、また、60(deg) を超えると原料を下向きに落下させる効果が小さいためである。
【0028】
また、コーン直径(最大部)dを旋回シュートの直径Dを基準にして、d/Dを0.7〜1.0範囲にしたのは、0.7未満ではコーン部へ当たる原料の比率が少なくなって効果が小さくなり、1.0を超えるとコーン直径(最大部)dが旋回シュートの直径Dよりも大きくなり、無駄になるからである。
さらに、コーン長さLを旋回シュートの直径を基準にしてL/Dを0.2〜0.6範囲にしたのは、0.2未満ではコーンに当たる原料の比率が少なく、効果が小さくなり、0.6を超過すると原料の排出が阻害されるからである。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、旋回シュートの先端部に半分割円錐状の反発板を設けたので、反発板の小型、軽量化が可能になり、旋回シュートの重量を小さくできる。これにより、旋回シュート支持部の強度増大、傾動および旋回用駆動モータの出力アップによる設備費の大幅増加が軽減され、コスト節減が達成される。
【0030】
旋回シュート上を原料が振り上がって斜めに流れ落ちても、旋回シュートの先端部に設けた半分割円錐形状をなす反発板に衝突した反発により、その向きを反転する原料上層部と反発板13に当たらず旋回シュートとの上面との間隙を通過するシュート面に平行な原料下層部とが正面衝突し、最終的に原料はほぼ鉛直下方に落下する。このため、高炉内へ装入される原料の高精度で安定した原料分布制御がなされ、炉円周方向の原料落下位置の均一化、炉半径方向の原料落下幅縮小が達成され、これにより高炉に装入した原料分布の不均一に起因するトラブルが解消され、減風回数が減少し、安定した高炉操業を継続することができる。
【0031】
その結果、高炉から出銑する溶銑の温度が低下し、溶銑中のSi濃度が小さくなり、下工程での精錬コストを大幅に低減するという大きなメリット得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る反発板を備えた旋回シュートの先端部を示す側面図である。
【図2】図1のA−A矢視方向をを示す平面図である。
【図3】図1のB−B矢視方向を示す正面図である。
【図4】本発明に係る反発板を備えた旋回シュートから原料を装入する状況を示す側面図である。
【図5】本発明に係る反発板を備えた旋回シュートを介して原料を装入する状況を示す正面図である。
【図6】従来の補助シュートを備えた高炉用ベルレス式炉頂装置を示す縦断面図である。
【図7】従来の旋回シュート先端部に円筒型の補助シュートを備えた高炉用ベルレス式炉頂装入装置を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 炉頂ホッパ
2 傾斜シュート
3 集合シュート
4 垂直シュート
5 旋回シュート
6 原料
7 上部連結ピン
8 下部連結ピン
9 補助シュート
10 装入物
11 支持フレーム
12 部材
13 反発板
Claims (1)
- 高炉用ベルレス式炉頂装入装置の旋回シュートにおいて、前記旋回シュートの先端部上面に離間して、当該旋回シュート上を滑り落ちる装入物の上層流にのみ衝突するように対向して半分割円錐形状をなす反発板を、当該反発板の円弧外周面を下側にして上流から下流にかけて末広がりになるように設け、前記旋回シュートから投入される原料を反発板を介してその落下方向を鉛直下方に変更するように構成してなることを特徴とする高炉用炉頂装入装置の旋回シュート。
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