JP5012576B2 - ベル式高炉の原料装入方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ベル式装入装置を有する高炉(以下、「ベル式高炉」とも称する)に装入する配合量の少ない銘柄の鉱石や副原料の偏析を防止するベル式高炉の原料装入方法に関する。
高炉操業は、概略次のようにして行われる。すなわち、原料である鉱石とコークスを炉頂から交互に炉内に装入して鉱石およびコークスを層状に堆積させ、炉下部の羽口から熱風等を吹き込むことにより生成されて炉内を上昇するガスにより、原料を昇温させるとともに、原料中の酸化鉄を還元溶解して溶銑を生成させ、炉下部の出銑口から排出する。
原料として装入される鉱石について言えば、塊鉱石、焼結鉱、ペレットなど多種の鉄原料のほか、石灰石などの副原料も一緒に装入する。また、塊鉱石などについては、種々の銘柄のものを混合して使用している。
高炉の原料装入装置は、現在ではベル式装入装置とベルレス式装入装置の2方式に大別される。
図1は、ベル式高炉における原料搬送過程と炉頂装入装置の概略構成例を模式的に示す図である。図示するように、最上部にヘッドシュート5が設けられ、その下方に順に、固定ホッパー6a、6b、旋回シュート8、小ベルホッパー9および大ベルホッパー11が配置され、高炉14の炉頂部に装設されている。固定ホッパー6a、6bはそれぞれ底部に固定ホッパーゲート7a、7bを備えており、小ベルホッパー9および大ベルホッパー11は、それぞれ小ベル10および大ベル12を具備している。
ベル式高炉における原料装入では、前述したような種別、銘柄の異なる原料を多数並んだ原料ホッパー1に別々に装入、貯蔵しておき、ベルトコンベア2a上に各種別、銘柄の原料を適宜切り出して重ね合わせ、これをそのままベルトコンベア2aでサージホッパー3に装入し、ここに一旦貯留する。その後、サージホッパー3内の原料を装入コンベア2bにより炉頂まで搬送し、ヘッドシュート5により等分して2つの固定ホッパー6a、6bに貯留する。
次いで、旋回シュート8の旋回を開始させた後、固定ホッパーゲート7a、7bを開いて固定ホッパー6a、6b内の原料を旋回シュート8により円周方向に分配しつつ、小ベルホッパー9内に装入する。続いて、小ベル10を開閉することにより、小ベルホッパー9内の原料を下方の大ベルホッパー11内に装入する。さらに大ベル12を開閉することにより大ベルホッパー11内の原料を炉内13に装入する。この大ベルの1回の開閉動作で原料を炉内に装入する操作を1バッチといい、装入バッチ毎に、前述した原料ホッパー1から切り出した原料を炉内に装入する。
ところで、高炉に装入される全鉱石装入物(塊鉱石、焼結鉱など鉄原料のほか、石灰石などの副原料を含む)に占める塊鉱石の配合割合は、高炉の操業条件により差異があるものの、概ね20〜30%であり、複数銘柄の鉱石を使用する場合、1銘柄当たりの塊鉱石の全鉱石装入物に占める割合は更に低くなる。副原料に関して言えば、全鉱石装入物に占める割合はそれより更に低くなり、数%程度である。
そのため、前記図1に示すように、原料ホッパー1から種別、銘柄の異なる原料がベルトコンベア2a上に切り出される際、相対的に量が少ない銘柄の塊鉱石や副原料はベルトコンベア2a上で局所的に堆積する。そして、サージホッパー3への装入、およびそこでの貯留を経て装入コンベア2b上へ排出された後も、幾分拡がりはするもののこの局所的な堆積状態を保ったまま、装入コンベア2bで炉頂まで搬送される。図1では、装入コンベア2b上の少量配合銘柄および副原料4aが全鉱石装入物4のなかで局所的に存在している状態を模式的に示している。
図2の従来法1は、ベル式高炉の小ベルホッパー内における原料堆積状況および高炉内における鉱石層とコークス層の堆積状況の一例を模式的に示す図で、実施例で比較のために行った従来の装入方法を実施した場合である。図2の従来法1の(a)は小ベルホッパー内の縦断面図、(b)は少量配合銘柄および副原料4aの水平方向における堆積状態を示す図、(c)は高炉内の縦断面図である。
図2従来法1の(a)に示すように、装入コンベア2bにより炉頂まで搬送された原料(全鉱石装入物4)は、ヘッドシュート5により等分されるため、1回の装入量(1バッチ量)に対して相対的に量が少ない少量配合銘柄および副原料4aも等分され、ヘッドシュート5下方の2つの固定ホッパー6a、6b内で同様の位置に偏析する。この例では、固定ホッパー6a、6b内に収容された原料(全鉱石装入物4であり、少量配合銘柄および副原料4aを含む)中において上方側に存在している。
従来の装入方法では、各固定ホッパーゲート7a、7bは通常同時に開閉されるので、2つの固定ホッパー6a、6bに等分された少量配合銘柄および副原料4aは、旋回シュート8通過時に再度合流する。旋回シュート8は、通常1回の装入中に3〜5周程度にわたって旋回することにより固定ホッパー6a、6bから排出される原料を小ベルホッパー9内で均一に分配するという機能を備えているが、相対的に量が少ない銘柄や副原料は、その量が旋回シュート8の1周(1回転)分に満たない場合、図2従来法1の(a)、(b)で符号4aを付して示したように、小ベルホッパー9内において円周方向および高さ方向の1箇所に偏析する。なお、この偏析は、小ベル10を開閉して下方の大ベルホッパー(図示せず)内に装入した後においても解消されない。
この状態で小ベルホッパー9内の原料を、大ベルホッパーを経て炉内に装入した場合、炉内13においても少量配合銘柄および副原料4aの円周方向の偏析が生じる。
また、小ベルホッパー9内の高さ方向における少量配合銘柄および副原料4aの偏析は、大ベルホッパー内の高さ方向における偏析として引き継がれ、原料が大ベルホッパーから炉内3へ排出される際の1回の排出時間内において排出開始時間の偏りを生じさせる。図2の従来法1に示した例で言うと、少量配合銘柄や副原料は小ベルホッパー9内で上方側に存在しており、大ベルホッパー内においても同様に上方側に存在するので、大ベルホッパーを経て炉内3へ排出される際には、排出開始時間が後半に偏ることになる。ここで、原料が大ベルホッパーから炉内3へ排出される際の炉内径方向での原料の堆積分布は1回の排出時間内における排出開始時間の影響を受け、一般的には、排出初期の原料は炉内中心側に、排出後期の原料は炉壁側に堆積する。少量配合銘柄および副原料4aは、炉内3への排出開始時間が後半に偏っているので、炉壁側に偏って堆積する。
このように、大ベルホッパー内で高さ方向に偏析した少量配合銘柄や副原料が炉内に装入されると、炉内3において径方向にも偏析が生じることになる。
すなわち、炉内13においては、鉱石とコークスが炉内13に交互に装入され、装入バッチ毎に鉱石層15(全鉱石装入物4に該当する)およびコークス層16となって交互に堆積しているが、炉内に装入された少量配合銘柄および副原料4aは、図2従来法1の(c)に示すように、炉内3において径方向の偏析が生じた状態で存在し、また、この図では明らかではないが、円周方向にも偏析して存在することとなる。なお、図2従来法1の(c)において、鉱石層15内における少量配合銘柄および副原料4aの偏析が、図面の左側、右側と交互に生じているのは、1バッチ内における旋回シュート8の旋回の開始時の向きが、この例では、前回バッチの開始時の向きに対して反対になっていることによるものである。
このように、炉内において少量配合銘柄および副原料が円周方向および半径方向に偏析すると、円周方向および半径方向の炉内反応が不均一になる。高炉操業においては、通常、複数の出銑口を切り替えて使用しているので、炉内反応が不均一になると、複数の出銑口から排出される溶銑の温度や成分に偏差が発生する。
炉内において少量配合銘柄および副原料が円周方向および半径方向に偏析した場合、この影響を緩和する操業を行うことは極めて困難である。そのため、ベルトコンベア上における少量配合銘柄や副原料の偏析を、炉内へ原料装入する前に解消することが望まれている。
この少量配合銘柄や副原料の偏析の問題に限らず、装入原料の炉内での偏析の問題は、炉内のガス流分布を適正に制御して安定した操業を行い、良質の銑鉄を得るために極めて重要な解決課題であり、そのため、従来から種々の装入物分布制御が行われ、また幾多の研究開発がなされてきた。
なかでも、円周方向での原料装入量の均一性を確保するための装入方法および装入装置の開発には力が注がれており、例えば、特許文献1では、ベル式高炉において、固定ホッパーから旋回シュートを介して小ベルホッパーに原料を装入する際、旋回シュートの円周方向での装入開始位置(方位)を制御して、原料の円周方向の堆積量分布を制御する方法が提案されている。
また、特許文献2では、2つの固定ホッパーのゲートをそれぞれ独立に開閉操作し、2つの固定ホッパーからの原料排出開始時における旋回シュートの位置を180°ずらすことにより、高炉炉頂に装入される原料堆積量の偏りを著しく低減する装入方法が提案されている。
しかし、これら提案された方法を少量配合銘柄や副原料を含む原料の装入に適用しても、少量配合銘柄や副原料の偏析を解消ないしは緩和することはできない。前掲の特許文献1に開示された方法では、各バッチ単位での堆積量分布しか考慮されておらず、各バッチ内の少量配合銘柄や副原料の量が旋回シュートの1周分に満たない場合、ベルホッパー(小ベルホッパー、大ベルホッパーの両者を指す)内での偏析は回避できない。
一方、特許文献2に開示された方法では、旋回シュートの周回が1/2周(180°)ずれるように制御して、2つの固定ホッパーから原料の排出を開始している。しかし、この方法では、旋回シュートの1周分に満たない原料を2箇所に分散させることによりベルホッパー内の円周方向の偏析は緩和できても、ベルホッパー内の高さ方向の偏りを分散させることはできない。原料排出時における旋回シュートの位置が1/2周ずれただけなので、2つの固定ホッパーから排出された原料は、炉内においては、1バッチ毎の各層内における径方向のある一定のところに常に偏析し、炉内全体で見ると、半径方向に少量配合銘柄および副原料の偏りが生じることになる。
特開平1−259109号公報 特開昭59−93807号公報
本発明は、炉内への装入物分布制御におけるこのような事情に鑑みてなされたもので、ベル式高炉に装入する鉄原料のうち旋回シュートの1周分に満たない少量の配合銘柄や副原料等の炉内円周方向および半径方向での偏析を著しく低減することができるベル式高炉の原料装入方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、2つの固定ホッパーから旋回シュートを介して小ベルホッパー内に原料を排出する際に、両固定ホッパーの下端部に取り付けられている固定ホッパーゲートを解放する時間に一定範囲の差を設けることによって、少量の配合銘柄や副原料等の円周方向および半径方向での偏析を著しく緩和することができ、高炉の各出銑口ごとの溶銑成分偏差の低減が可能であることを確認した。
本発明の要旨は、下記のベル式高炉の原料装入方法にある。すなわち、
ベル式高炉の炉頂に並設された固定ホッパーから旋回シュートを介してベルホッパー内に原料を排出し、炉内に装入するベル式高炉の原料装入方法であって、各固定ホッパー間の原料排出開始時間差Tが、下記(1)式を満たすことを特徴とする原料装入方法である。
T=(n+a)×t ・・・(1)
但し、n:1回の装入中における旋回シュートの周回数から1を差し引いた数(
但し、その数に含まれる整数のうちの最大数とする)未満の自然数
a:0.3超え0.7未満
t:旋回シュートが1周旋回するに要する時間(秒)
前記(1)式におけるnについて具体的に説明すると、例えば、1回(1バッチ)の装入中に旋回シュートが3周(3回転)する場合、その周回数から1を差し引いた数は2であるから、nが採り得る数(自然数)は1となる。周回数から1を差し引くのは、各固定ホッパーのうちの最後の固定ホッパーから原料の排出を開始した後、操業条件によって決定される旋回シュートの周回数の範囲内で、旋回シュートが1周して全周にわたり原料を均一に分配できるようにするためである。また、旋回シュートが1回の装入中に3.5周する場合は、旋回シュートの周回数から1を差し引いた数は2.5であり、2.5に含まれる整数のうちの最大数は2であるから、この場合もnが採り得る数は1となる。
本発明のベル式高炉の原料装入方法によれば、1回の装入量に対して相対的に量が少ない銘柄の塊鉱石や副原料の高炉内における偏析(円周方向および径方向の偏析)を著しく緩和することができる。その結果、高炉の各出銑口ごとの溶銑温度および溶銑成分の偏差を低減し、良質の銑鉄を得ることが可能となる。
本発明のベル式高炉の原料装入方法は、前記のとおり、炉頂に並設された固定ホッパーから旋回シュートを介してベルホッパー内に原料を排出し、炉内に装入するベル式高炉の原料装入方法であって、各固定ホッパー間の原料排出開始時間差Tが、下記(1)式を満たすことを特徴とする方法である。なお、(1)式において、nは1回の装入中における旋回シュートの周回数から1を差し引いた数(但し、その数に含まれる整数のうちの最大数とする)未満の自然数、aは「0.3<a<0.7」の条件を満たす数値であり、tは旋回シュートが1周旋回するに要する時間(秒)である。
T=(n+a)×t ・・・(1)
この(1)式は、以下に述べる検討の結果、導出されたものである。
並設された固定ホッパーを2個として(イ)、(ロ)と区別し、旋回シュートが1周旋回するに要する時間をtとする。仮に固定ホッパー(イ)のゲート(固定ホッパーゲート)を解放してホッパー(イ)内の原料を排出した後、0.5t秒後に(言い換えれば、旋回シュートが180°旋回した時点で)、固定ホッパー(ロ)のゲートを開放したとすると、固定ホッパー(イ)、(ロ)内における少量配合銘柄や副原料の高さレベルは同じなので、少量配合銘柄や副原料は小ベルホッパー内の円周方向で対称位置に排出される。すなわち、固定ホッパー(イ)、(ロ)から原料を同時に排出した場合は、少量配合銘柄や副原料は前述のように合流して1箇所に偏析するのに対し、排出開始時間に0.5t秒の差を設けることによってこれを分散させ、円周方向における偏析を低減することが可能となる。
しかし、固定ホッパー(イ)のゲートを解放した後、固定ホッパー(ロ)のゲート開放までの時間が0.5t秒と短く、小ベルホッパー内での少量配合銘柄や副原料の高さレベルの差が小さいので、原料が小ベルホッパーから大ベルホッパーを経由して炉内へ装入される際に、前述のように排出開始時間が偏り、少量配合銘柄や副原料は炉内中心側または炉壁側のいずれか一方に堆積する。すなわち、炉内の半径方向における偏析が生じる。
この少量配合銘柄や副原料の炉内半径方向における偏析は、小ベルホッパー内での少量配合銘柄や副原料の高さレベルの差を大きくすることにより、軽減できると考えられる。例えば、一方の小ベルホッパーでは少量配合銘柄や副原料を上部側に、他方の小ベルホッパーでは下部側に存在させれば、原料を小ベルホッパーから大ベルホッパーを経て炉内へ装入するに際し、小ベルホッパーの下部側に存在させた原料は炉内中心側へ、上部側に存在させた原料は炉壁側へと分散させ得るからである。
そこで、固定ホッパー(イ)のゲートを解放した後、t秒、2t秒と、旋回シュートが1周旋回するに要する時間tの整数倍の時間をおいた後に(この間に、旋回シュートは固定ホッパー(イ)内の原料を排出しつつ1周または2周と旋回する)、さらに0.5t秒経過させ、その後固定ホッパー(ロ)のゲートを開放して原料を排出させる。これを数式で表すと、固定ホッパー(イ)、(ロ)間の原料排出開始時間差Tは、t+0.5t=(1+0.5)×t(秒)、2t+0.5t=(2+0.5)×t(秒)などと表される。括弧内の整数をnとし、0.5をaに置き換えると、前記の(1)式になる。
前述の考察では、(1)式におけるaを0.5としたが、aは「0.3<a<0.7」の条件を満たす数値であればよい。0.5t秒は、旋回シュートが180°旋回した状態に相当するので、各固定ホッパー内の少量配合銘柄や副原料を円周方向に分散させるためには最も望ましいが、0.3t秒は、旋回シュートが108°旋回した状態であり、この状態で原料の排出を開始することとしても、少量配合銘柄や副原料を比較的良好な分散状態とすることができ、円周方向における偏析を低減することが可能となる。一方、0.7t秒は、旋回シュートが252°旋回した状態(−108°の位置にある状態)であり、0.3t秒の場合と同様に、少量配合銘柄や副原料を比較的良好な分散状態にすることができる。したがって、aの範囲は0.3超え0.7未満とする。できるだけ0.5に近い値が望ましい。
(1)式におけるnを1回の装入中における旋回シュートの周回数から1を差し引いた数(但し、その数に含まれる整数のうちの最大数とする)未満の自然数、とするのは、前述のとおり、少量配合銘柄や副原料の小ベルホッパー内での高さレベルの差を大きくして高さ方向の偏りを分散させ、炉内半径方向における偏析を解消するためである。
nは、通常は1とすればよいが、操業条件によって決定される1回の装入中の旋回シュート周回数の許容範囲内であれば、2、3またはそれ以上としてもよい。
並設された固定ホッパーの数は、通常は2個であり、上記説明でも2個としたが、3個またはそれ以上であってもよい。3個以上の場合であっても、それぞれの固定ホッパーの原料排出開始時間の差が前記(1)式の条件を満たすように、各固定ホッパーから原料の排出を行えばよい。
本発明の原料装入方法を実施するには、各固定ホッパーからの原料排出の開始時間に(1)式を満たすように時間差を設け、先行して原料排出を行う固定ホッパーが原料排出を開始した時点から予めタイマーで設定した時間経過後に、他方の固定ホッパーから原料の排出を開始すればよい。
この原料装入方法を採用することにより、複数(通常は2固)の固定ホッパーに等分された、配合量が少ない銘柄の塊鉱石や副原料が旋回シュート通過時に再度合流して小ベルホッパー内で1箇所に偏析するのを回避し、円周方向および高さ方向においてそれぞれ2箇所に分散させ、炉内における円周方向および径方向での偏析を低減することができる。これにより、高炉の各出銑口ごとの溶銑温度や溶銑成分の偏差を低減し、良質の銑鉄を得ることが可能となる。
前記図1に示した概略構成を有する炉頂装入装置を有する内容積2150m3のベル式高炉を用いて試験操業を行い、複数の出銑口から排出される溶銑の温度および珪素(Si)濃度を測定して、本発明の原料装入方法の効果を確認した。
用いた炉頂装入装置の旋回シュートの回転速度は12rpmであり、旋回シュートが1周旋回するのに要する時間は5秒(すなわち、前記(1)式において、t=5秒)である。
本発明の原料装入方法を実施するに当たり、固定ホッパーゲート7a、7bの開時間差(つまり、原料排出開始時間差)を、旋回シュート8が1周旋回するのにかかる時間(5秒)以上でさらに1/2周(2.5秒)旋回するように、7.5秒とした(本発明例)。すなわち、前記(1)式において、n=1、a=0.5とした。なお、比較のために、固定ホッパーゲートに開時間差をつけない従来の装入方法(従来法1;開時差0秒)、および前掲の特許文献2に記載される装入方法(従来法2;開時差2.5秒)についても、同様の測定を実施した。この場合、固定ホッパーゲートの開時差以外は本発明の原料装入方法の場合と同じ条件で操業を行った。
図2の従来法1、従来法2および本発明例は、いずれもベル式高炉の小ベルホッパー内における原料堆積状況および高炉内における鉱石層とコークス層の堆積状況を模式的に例示する図で、それぞれ前記の従来法1(固定ホッパーゲートの開時差0秒)、従来法2(開時差2.5秒)および本発明の原料装入方法(開時差7.5秒)により原料を挿入した場合に対応する。図2の従来法1、従来法2および本発明例において、(a)はそれぞれ小ベルホッパー内の縦断面図、(b)はそれぞれ小ベルホッパー内の少量配合銘柄および副原料の水平方向における堆積状態を示す図、(c)はそれぞれ高炉内の縦断面図である。
従来法1(図2の従来法1参照)では、前述のように、少量配合銘柄および副原料4aは小ベルホッパー9内において円周方向および高さ方向の1箇所に偏析し、それに起因して炉内13でも円周方向、径方向の偏析が生じている。
また、従来法2(図2の従来法2参照)では、固定ホッパー6a内の原料を排出したのち、2.5秒後に(旋回シュート8が1/2周旋回した後に)固定ホッパー6b内の原料を排出しているので、原料中の少量配合銘柄および副原料4aは小ベルホッパー9内で2箇所に分散され、円周方向の偏析は低減している。しかし、小ベルホッパー9内における少量配合銘柄および副原料4aの高さレベルはほとんど変わらないので、炉内13で径方向の偏析が生じている。
一方、本発明例(図2の本発明例参照)では、固定ホッパー6a、6b間の原料排出開始時間差が7.5秒あり、固定ホッパー6a内の原料が排出されたのち、旋回シュート8が1周し、さらに1/2周旋回してから固定ホッパー6b内の原料が排出されるので、原料中の少量配合銘柄および副原料4aは小ベルホッパー内9で円周方向と高さ方向に分散される(図2の本発明例の(a)、(b)参照)。その結果、炉内13においては、鉱石層15内で円周方向に分散するのみならず、半径方向にも分散している(図2の本発明例の(c))。炉内全体で見ても、本発明の原料装入方法によれば、従来の装入方法(従来法1)または前掲の特許文献2に記載される装入方法(従来法2)と比較して、少量配合銘柄および副原料4aの偏析を低減させていることが分かる。
表1に、前記試験操業期間中に使用した2つの出銑口(No.1およびNo.2)における溶銑温度Tpigと溶銑中のSi濃度(溶銑[Si])の約10日間の平均値、および両出銑口間の溶銑温度偏差ΔTpigと溶銑中のSi濃度偏差Δ[Si]をまとめて示す。種別、銘柄の異なる原料の偏析や、その他の炉内の不均一性に起因する溶銑成分の偏差については、溶銑[Si]が大きく影響を受けるので、Si濃度偏差Δ[Si]を指標として評価した。
Figure 0005012576
表1から明らかなように、試験操業の全期間を通じ、高炉操業全体としては、溶銑温度が1510℃程度、溶銑[Si]は0.33質量%程度と、原料装入方法の如何に関係なくほぼ同等な操業成績であった。
しかし、溶銑温度偏差ΔTpigと、溶銑中のSi濃度偏差Δ[Si]は、原料装入方法によって著しく相違している。すなわち、本発明の原料装入方法を採用した場合、No.1出銑口(Tpig=1505℃)とNo.2出銑口(Tpig=1512℃)における溶銑温度偏差ΔTpigは7℃であり、溶銑中のSi濃度偏差Δ[Si]は0.06質量%(No.1出銑口:溶銑[Si]=0.30%、No.2出銑口:溶銑[Si]=0.36%)であって、従来の装入方法(従来法1)または前掲の特許文献2に記載される装入方法(従来法2)による場合と比較して、各出銑口間の溶銑温度、溶銑成分の偏差を著しく低減することができた。
このように、各出銑口ごとの溶銑温度および溶銑成分の偏差を低減することができたのは、本発明の原料装入方法を適用することにより、配合量が少ない銘柄の塊鉱石や副原料をベルホッパー内で円周方向および高さ方向に分散させ、炉内における円周方向および径方向での偏析を低減させ得たことによるものである。
本発明のベル式高炉の原料装入方法は、各固定ホッパーからの原料排出開始時間に一定の時間差を設けて装入する方法である。この原料装入方法によれば、1回の(1バッチ)装入量に対して相対的に量が少ない銘柄の塊鉱石や副原料の高炉内における円周方向および径方向の偏析を著しく緩和することができ、高炉の各出銑口ごとの溶銑温度および溶銑成分の偏差を低減して、良質の銑鉄を得ることが可能となる。
したがって、本発明のベル式高炉の原料装入方法は、製鉄業の分野で有効に利用することができる。
ベル式高炉における原料搬送過程と炉頂装入装置の概略構成例を模式的に示す図である。 ベル式高炉において、従来の原料装入方法を実施した場合(従来法1)、特許文献2に記載される原料装入方法を実施した場合(従来法2)および本発明の原料装入方法を実施した場合(本発明例)それぞれの小ベルホッパー内における原料堆積状況および高炉内における鉱石層とコークス層の堆積状況の一例を模式的に示す図で、(a)はそれぞれ小ベルホッパー内の縦断面図、(b)はそれぞれ小ベルホッパー内の少量配合銘柄および副原料の水平方向における堆積状態を示す図、(c)はそれぞれ高炉内の縦断面図である。
符号の説明
1:原料ホッパー
2a:ベルトコンベア
2b:装入コンベア
3:サージホッパー
4:全鉱石装入物
4a:少量配合銘柄および副原料
5:ヘッドシュート
6a、6b:固定ホッパー
7a、7b:固定ホッパーゲート
8:旋回シュート
9:小ベルホッパー
10:小ベル
11:大ベルホッパー
12:大ベル
13:炉内
14:高炉
15:鉱石層
16:コークス層

Claims (1)

  1. ベル式高炉の炉頂に並設された固定ホッパーから旋回シュートを介してベルホッパー内に原料を排出し、炉内に装入するベル式高炉の原料装入方法であって、
    各固定ホッパー間の原料排出開始時間差Tが、下記(1)式を満たすことを特徴とするベル式高炉の原料装入方法。
    T=(n+a)×t ・・・(1)
    但し、n:1回の装入中における旋回シュートの周回数から1を差し引いた数(
    但し、その数に含まれる整数のうちの最大数とする)未満の自然数
    a:0.3超え0.7未満
    t:旋回シュートが1周旋回するに要する時間(秒)
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