(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る位相誤差補正回路1の構成を示すブロック図である。図1に示す位相誤差補正回路1は、交番検出部101、補正値算出部102、補正値決定部103、位相回転部104、ユニークワード検出部105(以下、UW検出部と略称する)、および、フレーム終端検出部106を備える。位相誤差補正回路1には、フレーム構造を有するデータをデジタル変調して得られた信号が入力される。位相誤差補正回路1は、送信装置と受信装置との間の局部発振器の周波数ずれなどに起因する、入力信号の位相ずれを補正する。
図2は、位相誤差補正回路1を含む受信装置2の構成を示すブロック図である。図2に示すように、位相誤差補正回路1の前段には検波部201とクロック再生部202とが設けられ、これらにより受信装置2が構成される。受信装置2は、送信装置(図示せず)からデジタル変調された信号を受信する。検波部201は、受信信号211を検波し、検波出力212を出力する。クロック再生部202は、検波出力212に基づき、データ判定に最適な識別点を用いてサンプリングされたサンプル信号と、識別点のタイミングを規定するクロック信号とを出力する。以下、前者を検波信号111、後者をシンボルクロック110と呼ぶ。位相誤差補正回路1には、検波信号111とシンボルクロック110とが入力される。以下では、例として、検波信号111は、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying )方式の変調信号を遅延検波した信号であると仮定する。
図3は、位相誤差補正回路1に入力される検波信号111のフレーム構造を示す図である。位相誤差補正回路1には、検波信号111が、図3に示すフレームの形態で入力される。フレームは、先頭から順に、プリアンブル部と、ユニークワード部と、データ部とを含んでいる。データ部は、フレームの末尾に配置される。以下、プリアンブル部をPR部、ユニークワード部をUW部と略称する場合がある。
PR部には、隣接する2つのシンボル間で、シンボルの位相角が180度反転するデータパターンが設定される。以下、このようにシンボルの位相角が交互に180度ずつ反転することを「シンボルが交番する」といい、シンボルが交番するパターンを「シンボル交番」という。図4は、検波信号111のPR部におけるコンスタレーションパターンを示す図である。図4に示すように、PR部には、所定数のシンボルが交番するデータパターン、すなわち、所定長のシンボル交番が設定される。UW部には、フレーム同期を確立するためのデータパターンが設定される。また、UW部に設定されるデータパターンは、相手先の受信装置を識別するためにも使用される。受信装置2にはそれぞれ固有の識別情報が設定されており、受信装置2は、UW部に自らの識別情報が設定されているフレームについて受信処理を行う。データ部には、所定長に分割されたデータが設定される。
位相誤差補正回路1の詳細な構成を説明するに先立ち、位相誤差補正回路1の主な特徴を概説する。位相誤差補正回路1を含んだ受信装置2は、受信信号211をフレーム単位で受信する。PR部を受信中にPR部以外の部分(UW部とデータ部)を受信するときの状態を制御するため、位相誤差補正回路1より前に配置された回路では、利得制御やシンボルクロック再生などが行われる。位相誤差補正回路1は、PR部について位相ずれを検出し、検出した位相ずれをPR部以外の部分に対する位相補正値として使用する。利得制御やシンボルクロック再生の精度は、PR部を受信中に次第に良くなるので、検波信号111の特性は、PR部の前方部分では悪く、PR部の後方に進むに従って良くなる。そこで、位相誤差補正回路1は、以下のようにして、PR部のできるだけ後方部分で検出した位相ずれを、位相補正値として使用する。
位相誤差補正回路1は、PR部を受信中に、検波信号111の位相ずれの平均値を算出する処理を繰り返し行い、算出した平均値を位相補正値とみなして、時系列に従って記憶する。その後、位相誤差補正回路1は、UW部を検出したときに、記憶した複数の補正値から1つの補正値を選択して保持し、保持した補正値を用いてPR部以外の部分に対して位相補正を行う。保持すべき補正値を選択するときは、UW部を検出した時点で記憶されている補正値のうち、最も新しく算出された補正値から過去に所定数だけ遡った補正値が選択される。
また、位相誤差補正回路1は、PR部を正確に検出するのではなく、検波信号111に含まれている所定長のシンボル交番を検出し、これを検出したときにPR部を検出したと見なしている。また、位相誤差補正回路1は、算出した補正値が所定の範囲に入っていないときは、その補正値を位相補正に使用しないようにしている。さらに、位相誤差補正回路1は、PR部やUW部の誤検出を防止するための仕組みを備えている。位相誤差補正回路1が有するこれらの特徴は、以下の説明によって明らかになる。
図1に示す位相誤差補正回路1は、概ね以下のように動作する。交番検出部101は、検波信号111の符号ビット112が隣接シンボル間で反転しているか否かに基づきシンボル交番を検出し、シンボル交番の検出を示す交番検出信号113と、所定数の連続したシンボル交番の検出を示す補正値算出信号114とを出力する。補正値算出部102は、交番検出信号113が出力されている間、所定の方法で検波信号111の位相ずれの平均値を求め、求めた平均値を補正値115として出力する。補正値決定部103は、補正値115を時系列に従って記憶し、記憶した補正値から1つの補正値を選択して実効補正値118として出力する。位相回転部104は、実効補正値118を用いて検波信号111に対して位相回転処理を行い、補正検波信号119を出力する。UW検出部105は、補正検波信号119に含まれているUW部を検出したときに、ユニークワード検出信号116(以下、UW検出信号と略称する)を出力する。フレーム終端検出部106は、補正検波信号119からフレームの終端部分を検出したときに、フレーム終端検出信号117を出力する。補正値算出信号114とUW検出信号116とフレーム終端検出信号117とは、補正値決定部103において実効補正値118を保持するタイミングを定めるために使用される。
以下、位相回転部104、交番検出部101、補正値算出部102、および、補正値決定部103の詳細を説明する。位相回転部104は、実効補正値118を用いて検波信号111に対して位相回転処理を行い、補正検波信号119を出力する。より詳細には、位相回転部104には、検波信号111と実効補正値118とが2次元ベクトル形式で入力される。位相回転部104は、次式(1)および(2)に示す演算を行う。
OUTI=INI×CPI+INQ×CPQ …(1)
OUTQ=INQ×CPI−INI×CPQ …(2)
ただし、式(1)および(2)において、INIおよびINQは検波信号111の同相成分および直交成分(以下、それぞれ、I軸成分、Q軸成分という)を、CPIおよびCPQは実効補正値118のI軸成分およびQ軸成分を、OUTIおよびOUTQは補正検波信号119のI軸成分およびQ軸成分を表す。
位相回転部104においてこのような位相回転処理を行うことにより、送信装置と受信装置と間の周波数ずれなどに起因して検波信号111に生じる位相ずれを補正することができる。また、式(1)および(2)に示すように、加減乗算を行うことにより検波信号111の位相ずれを補正できるので、位相角を求めることなく、また、振幅情報を用いることなく、簡易な構成で検波信号111の位相ずれを補正することができる。
図5は、交番検出部101の詳細な構成を示すブロック図である。交番検出部101は、シンボル交番検出部501、シンボルカウンタ部502、および、交番検出信号生成部503を含む。シンボル交番検出部501には、検波信号111の符号ビット112が入力される。シンボル交番検出部501は、符号ビット112が隣接シンボル間で位相反転していること(すなわち、シンボルが交番していること)を検出したときに、シンボル交番検出信号511を出力する。
シンボルカウンタ部502は、シンボル交番検出信号511に基づきシンボル交番が連続した回数を数え、カウンタ値512を出力する。より詳細には、シンボルカウンタ部502は、初期値として所定値N(Nは1以上の整数)が設定されたカウンタを内蔵しており、シンボル交番検出信号511が入力されるたびにカウンタ値512を0から(N−1)まで1ずつ増やし、シンボル交番検出信号511が入力されないときにはカウンタ値512を所定値Nに初期化する。交番検出信号生成部503は、カウンタ値512が0から(N−1)までの範囲内にある間は交番検出信号113を出力し、カウンタ値512が(N−1)になったときに、シンボル交番がNシンボル連続したことを示す補正値算出信号114を出力する。
図6は、補正値算出部102の詳細な構成を示すブロック図である。補正値算出部102は、位相反転部601、平均化部602、平均ベクトル位相反転部603、および、補正値判定部604を含む。位相反転部601は、1シンボルおきに検波信号111の位相を180度反転させる。すなわち、位相反転部601は、検波信号111に対して、シンボルの位相を180度反転させる処理と、シンボルをそのまま出力する処理とを、シンボルごとに交互に切り替えて行う。
図7は、平均化部602の詳細な構成を示すブロック図である。平均化部602は、シンボル加算器701、および、シンボル遅延器702を含み、入力された交番検出信号113が有効である間、位相反転部601から出力された信号のI軸成分とQ軸成分とを所定数M(Mは、2以上、かつプリアンブルに含まれているシンボルの数以下の整数)に亘ってそれぞれ別々に平均化し、第1の平均ベクトル611を求める。また、平均化部602は、交番検出信号113が無効となったときに、シンボル遅延器702に保持された値を0にリセットする。より詳細には、シンボル遅延器702は、シンボル加算器701から出力された信号のI軸成分とQ軸成分とを、それぞれ1シンボル時間だけ遅延させる。シンボル加算器701は、入力された交番検出信号113が有効であるときに、位相反転部601から出力された信号のI軸成分とQ軸成分とに、シンボル遅延器702から出力された信号のI軸成分とQ軸成分とをそれぞれ別個に加算する。このような平均化部602によれば、複数のシンボル時間につき1つの割合で、位相反転部601から出力された信号のI軸成分とQ軸成分の平均値を求めることができる。なお、信号に含まれる雑音が比較的小さく、雑音による信号の劣化が無視できるほど小さい場合には、上記所定数Mを1として、平均化部602における平均化処理を行わないこととしてもよい。
平均ベクトル位相反転部603は、第1の平均ベクトル611のI軸成分の符号(またはQ軸成分の成分)に基づき位相反転の必要性を判断し、当該判断に基づき、第1の平均ベクトル611の位相を180度反転させる。本実施形態では、平均ベクトル位相反転部603は、第1の平均ベクトル611のI軸成分が負であるときに、第1の平均ベクトル611の位相を180度反転させるとする。平均ベクトル位相反転部603は、第1の平均ベクトル611を必要に応じて位相反転させた信号を、第2の平均ベクトル612として出力する。
検波信号111に基づき第2の平均ベクトル612が算出される過程をさらに詳細に説明する。図8は、位相反転部601にPR部が入力されたときのシンボル反転タイミングを示す図である。図9は、位相反転部601の作用により、シンボルがIQ座標系において特定の象限に集められる様子を示す図である。なお、図8および図9では、検波信号111に正方向の位相ずれが生じていると仮定している。
図8に示すように、位相反転部601に供給される検波信号111は、シンボルクロック110に同期して変化する。検波信号111にPR部が含まれている場合、シンボルは交番する(すなわち、シンボルごとに位相が180度ずつ反転する)。ここで、検波信号111に正方向の位相ずれが生じているとすると、検波信号111のシンボルは、IQ座標軸において第1象限と第3象限とに交互に位置する。位相反転部601は、このようにシンボル交番する検波信号111の位相を1シンボルおきに180度反転させる。したがって、図8に示す第1の反転タイミングで位相反転が行われた場合、図9(a)に示すように、シンボルは第1象限に集中する。また、第1の反転タイミングと1シンボル時間だけ離れた第2の反転タイミングで位相反転が行われた場合、図9(b)に示すように、シンボルは第3象限に集中する。
このように、検波信号111に正方向の位相ずれが生じている場合、位相反転部601から出力された信号に含まれるシンボルは、第1または第3象限に集中する。同様に、検波信号111に負方向の位相ずれが生じている場合、位相反転部601から出力された信号に含まれるシンボルは、第2または第4象限に集中する。平均化部602は、1つの象限に集められたシンボルについて平均値を求め、第1の平均ベクトル611を出力する。したがって、第1の平均ベクトル611は、検波信号111に生じた位相ずれと位相反転部601における反転タイミングとによって、第1から第4象限のいずれかに存在することになる。
平均ベクトル位相反転部603は、補正方向を一意に決定するために、位相ずれを第1または第4象限に移動させる処理を行う。図10は、平均ベクトル位相反転部603の作用により、シンボルがIQ座標系において第1または第4象限に移動する様子を示す図である。平均ベクトル位相反転部603は、上述したように、第1の平均ベクトル611のI軸成分が負であるときに、第1の平均ベクトル611の位相を180度反転させる。これにより、第1の平均ベクトル611が第1、第2、第3、第4象限にあるとき、第2の平均ベクトル612は、それぞれ、第1、第4、第1、第4象限に位置する。このようにして、平均ベクトル位相反転部603からは、第1または第4象限に位置する第2の平均ベクトル612が出力される。
図11は、補正値判定部604の詳細な構成を示すブロック図である。補正値判定部604は、絶対値算出部1101、絶対値比較部1102、および、選択部1103を含む。補正値判定部604は、第2の平均ベクトル612の位相角が所定の範囲内にあるか否かを判定し、所定の範囲内にある場合に限り、第2の平均ベクトル612をそのまま補正値115として出力する。
図11において、絶対値算出部1101は、第2の平均ベクトル612のI軸成分の絶対値1111とQ軸成分の絶対値1112とを算出する。絶対値比較部1102は、2つの絶対値1111、1112の比に基づき、許可信号1113または不許可信号1114を選択的に出力する。より詳細には、絶対値比較部1102は、I軸成分の絶対値1111をX、Q軸成分の絶対値1112をYとしたときに、両者の比Y/Xを求め、求めた比Y/Xが所定値r以下である場合は許可信号1113を出力し、それ以外の場合は不許可信号1114を出力する。特に、所定値rを2とした場合、比Y/Xと所定値rとを比較することは、次式(3)が成立するか否かを判断することと等価である。
2X−Y≧0 …(3)
tan-12=63.4度であるから、上式(3)が成立するか否かを判断することにより、検波信号111の位相ずれが±63.4度以内であるか否かを判断することができる。つまり、第2の平均ベクトル612が、図12に示す斜線部の範囲に存在するか否かを判断することができる。なお、図12に示すaは、正の数である。
選択部1103は、許可信号1113が出力されたときには第2の平均ベクトル612を、不許可信号1114が出力されたときにはスルー補正値を、補正値115として出力する。ここで、スルー補正値とは、位相回転部104における回転処理が無回転となる補正値、すなわち、I軸成分が1でQ軸成分が0であるベクトル(1、0)をいう。なお、補正値判定部604は、第2の平均ベクトル612の位相角(IQ座標系においてI軸の正方向となす角)を求めた上で、求めた位相角が所定の範囲内にある場合に限り、第2の平均ベクトル612をそのまま補正値115として出力してもよい。
以上のように構成された補正値算出部102の効果を説明する。第1の平均ベクトル611は、交番検出信号113が有効である間(すなわち、連続したシンボル交番が検出されている間)に入力された検波信号111を平均化したものである。したがって、雑音などの影響によりPR部におけるシンボル交番が崩れた場合でも、補正値の算出に悪影響を及ぼす部分を避けて、精度の高い補正値を算出することができる。また、平均化部602で検波信号111を平滑化することにより、雑音が多い環境で使用された場合でも、精度の高い補正値を算出することができる。
また、位相回転部104は、補正値算出部102で求めた補正値115から選択された実効補正値118を用いて、検波信号111に対して位相回転処理を行うが、補正角度が大きすぎる場合には、位相誤差補正回路1は、別周波数チャネルの不要信号を誤受信してしまう恐れがある。そこで、補正値判定部604は、第2の平均ベクトル612の位相角が所定の範囲内に入るか否かを判断する。これにより、復調すべき信号か否かを判断して、別周波数チャネルの不要信号の誤受信を防止することができる。また、式(3)の演算はビットシフト処理と加算処理とで行えるので、第2の平均ベクトル612の判定に式(3)を用いることにより、補正値判定部604を簡単な回路で構成することができる。
図13は、補正値決定部103の詳細な構成を示すブロック図である。補正値決定部103は、補正値記憶部1301、補正値選択部1302、補正値保持部1303、タイミング調整部1304、データ部受信信号生成部1305、および、論理ゲート1306を含む。補正値記憶部1301は、メモリあるいはシフトレジスタなどによって構成され、補正値算出部102で算出された補正値115を記憶する。より詳細には、補正値記憶部1301は、時系列に従って最新の(L+1)個(Lは0以上の整数)の補正値115を記憶する。補正値遡り回数1311は、0以上L以下の整数であり、補正値選択部1302に入力される。補正値選択部1302は、補正値記憶部1301に記憶された(L+1)個の補正値のうちから、補正値遡り回数1311で指定された、過去に遡った補正値を選択して出力する。例えば、補正値遡り回数1311が2であるときは、補正値選択部1302は、最新の補正値から2つ分だけ過去に遡った補正値(図13では、補正値2)を出力する。
タイミング調整部1304は、補正値算出信号114が出力されるタイミングと、補正値115が補正値算出部102から出力されるタイミングとを一致させるために、補正値算出信号114を所定の時間だけ遅延させる。データ部受信信号生成部1305は、UW検出信号116とフレーム終端検出信号117に基づき、データ部を受信中であることを示すデータ部受信信号1312を生成する。より詳細には、データ部受信信号生成部1305は、UW検出信号116が入力された後、フレーム終端検出信号117が入力されるまでの期間だけ有効なデータ部受信信号1312を出力する。論理ゲート1306は、データ部受信信号1312の否定とタイミング調整後の補正値算出信号との論理積を求め、その結果を更新信号1313として出力する。補正値保持部1303は、更新信号1313が入力されたときに、補正値選択部1302で選択された補正値を取り込んで保持する。補正値保持部1303に保持された補正値は、実効補正値118として位相回転部104に供給される。
このように、補正値決定部103は、補正値算出部102で算出された(L+1)個の補正値を記憶した上で、UW検出信号116が入力されたときに、記憶した補正値から1つの補正値を選択して実効補正値118として出力する。
以上のように構成された補正値決定部103の効果を説明する。補正値算出部102は、連続したシンボル交番が検出されるたびに補正値115を算出する。連続したシンボル交番は、本来はPR部を受信中に検出されるべきものである。ところが、元のデータパターンにシンボル交番が含まれている場合や、雑音などの影響により元のデータパターンがシンボル交番に化ける場合などがあり、連続したシンボル交番は、PR部の受信中だけでなく、UW部あるいはデータ部の受信中でも検出される。補正値算出部102は、UW部やデータ部を受信中に連続したシンボル交番が検出されたときにも補正値115を算出するが、このときに算出される補正値は誤補正の原因となるので、位相回転部104における位相回転処理に使用することを避ける必要がある。また、検波信号111の特性はPR部の後方部分のほうが良いため、補正値決定部103は、PR部のできるだけ後方部分で算出された補正値を実効補正値118として選択することが好ましい。検波信号111は、図3に示すフレーム構造を有するので、位相誤差補正回路1は、PR部に続いてUW部を受信する。したがって、PR部の後方部分を検出することは、UW部を検出することで代用可能である。
そこで、補正値決定部103は、UW検出信号116とフレーム終端検出信号117とに基づき、データ部を受信中であることを示すデータ部受信信号1312を生成する。補正値決定部103は、データ部受信信号1312に基づき、データ部の受信中でないときは、新たな補正値115が算出されるたびに、補正値選択部1302で選択された補正値を取り込み、データ部の受信中は、既に取り込んだ補正値を保持する。このようにして、補正値決定部103は、PR部の受信中は実効補正値118を順次更新し、UW部が検出されたときに、補正値選択部1302で選択されていた補正値を実効補正値118として保持し、データ部の受信中は実効補正値118の更新を停止する。これにより、補正値決定部103は、データ部の受信中は、PR部の後方部分で算出されたことが保証されている補正値を位相回転部104に出力することができる。特に、補正値決定部103は、補正値算出部102がプリアンブルの最終シンボルを含む部分について求めた補正値115を取り込んで保持してもよい。
図14は、補正値決定部103の入出力信号と内部信号とが変化する様子を示すタイミングチャートである。補正値決定部103には、補正値算出部102で算出された補正値115と、補正値115が算出されるタイミングを示す補正値算出信号114とが入力される。図14に示す補正値算出信号は、タイミング調整部1304によってタイミング調整された後のものである。
UW検出信号116が入力されるまでは(図14において時刻T1より前)、データ部受信信号1312は無効(Lowレベル)であるので、更新信号1313は、タイミング調整後の補正値算出信号と同じように変化する。したがって、UW検出信号116が入力されるまでは、補正値保持部1303は、補正値算出信号114が入力されるたびに実効補正値118を更新する。
UW検出信号116が入力された後は(時刻T1より後)、データ部受信信号1312が有効(Highレベル)となるので、補正値算出信号114は、論理ゲート1306の作用によりマスクされ、更新信号1313は無効(Lowレベル)のままとなる。したがって、UW検出信号116が入力された後は、補正値保持部1303は、補正値算出信号114が入力されても実効補正値118を更新せず、以前の実効補正値118を保持する。
その後、フレーム終端検出信号117が入力されると(図示せず)、データ部受信信号1312は再び無効となり、補正値保持部1303は、実効補正値118の更新を再開する。このように、補正値決定部103は、データ部の受信中は実効補正値118の更新を禁止し、フレーム受信が完了した後に実効補正値118の更新を再開する。
補正値決定部103が補正値115を時系列に従って記憶し、UW部検出時には、記憶されている補正値のうちで過去に遡った補正値を実効補正値118として選択する理由は、以下のとおりである。
図15は、PR部の終端付近で補正値が算出される様子を示す図である。補正値115は、連続したシンボル交番が検出されたときに算出され、本来はPR部の受信中に算出されるべきものである(図15に示す補正値CP3およびCP2)。ところが、PR部の受信終了後、UW部が検出されて実効補正値118の更新が停止されるまでの間に、新たな補正値115が算出される場合がある。具体的には、図15に示すように、UW部の受信中に(補正値CP0)、あるいは、PR部の終端付近とUW部の先頭付近とを受信中に(補正値CP1)、補正値115が算出される場合がある。PR部以外の部分について算出された補正値を用いて位相回転処理を行うと、誤補正を招く恐れがある。
そこで、補正値決定部103は、所定数の補正値115を補正値記憶部1301に時系列に従って記憶させ、UW部が検出されたときに、その時点で記憶されている補正値のうちで、補正値遡り回数1311で指定された過去に遡った補正値を実効補正値118として選択する。これにより、位相回転部104は、PR部の受信中に算出された補正値のみを用いて位相回転処理を行うことができる。
補正値決定部103に記憶しておくべき補正値115の個数は、UW部で(または、PR部とUW部とに跨って)連続したシンボル交番が誤検出される回数に等しいため、UW部のデータパターンによって定まる。そこで、UW部のデータパターンを好適に選択することにより、連続したシンボル交番の誤検出の回数を減らして、必要となる補正値遡り回数を小さくし、補正値記憶部1301の回路規模を小さくすることができる。UW部のデータパターンの好適な選び方については、本実施形態の後に説明する。
次に、実効補正値118の更新をいつ再開すべきかについて言及する。位相誤差補正回路1に検波信号111が入力されるときに、2つのフレームがある程度の時間間隔を空けて入力されることが保証されている場合には、データ部受信信号生成部1305は、フレーム終端検出信号117が入力されたときに、直ちにデータ部受信信号1312を無効にしてよい。これに対して、2つのフレームが入力される時間間隔が短い場合(すなわち、フレームがほぼ連続して送信される場合)には、データ部受信信号生成部1305は、フレーム終端検出信号117が入力された後も所定の時間だけ、データ部受信信号1312を有効なままにしておくことが好ましい。その理由は、以下のとおりである。
図16は、フレームが連続して送信される状況において、フレームの終端で補正値が算出される様子を示す図である。この例では、先のフレームのデータ部の終端(斜線部)に連続したシンボル交番が含まれていると仮定している。この場合、フレームの終端が検出されたときに実効補正値118の更新を再開すると仮定すると、補正値決定部103は、データ部の終端で算出された補正値を記憶し、後に実効補正値118として出力してしまう恐れがある。この事態を避けるには、データ部受信信号生成部1305が、フレーム終端検出信号117が入力された後、所定の時間(図16におけるTex)だけ、データ部受信信号1312を有効なままにしておけばよい。このようにデータ部受信信号1312が有効である期間を延長することにより、フレームの終端付近で誤って算出された補正値を用いて位相回転処理が行われることを防止し、検波信号111の位相ずれを正しく補正することができる。
次に、UW部の検出精度を高める方法について言及する。位相誤差補正回路1は、UW部を検出したときに実効補正値118を決定するので、UW部を正しく確実に検出する必要がある。そこで、UW部の誤検出を防止するために、位相誤差補正回路1は、PR部が検出されたときからUW検出信号116の発生が予測される期間(以下、アパーチャ区間という)に限って、UW検出信号116を有効とする。より詳細には、位相誤差補正回路1は、補正値算出信号114(PR部に含まれる所定数の連続したシンボル交番の検出を示す)が有効となった後、所定の時間に亘って有効となるアパーチャ区間信号を備え、アパーチャ区間信号が有効であるときに限って、UW検出信号116を有効とする。
図17は、アパーチャ区間信号が変化する様子を示すタイミングチャートである。アパーチャ区間信号は、補正値算出信号114が有効となったときに有効となり、アパーチャ区間が終了したとき、または、UW検出信号116が入力されたときに無効となる。図17に示す例では、補正値算出信号114が3回出力され。アパーチャ区間は、補正値算出信号114が出力されるごとに再スタートする。したがって、UW検出信号116は、補正値算出信号114が最後に出力されてから上記所定の時間内に出力された場合に限って有効となる。このように、アパーチャ区間を定義し、アパーチャ区間でのみUW部を検出することにより、UW部を正しく検出する確率が向上し、より高い確率で正しい実効補正値118を求めることができる。また、検波信号111の符号ビット112に基づき生成された補正値算出信号114に基づきアパーチャ区間信号を生成することにより、アパーチャ区間信号を生成するための回路を、少ない回路規模で容易に構成することができる。
以上に示すように、本実施形態に係る位相誤差補正回路によれば、PR部、UW部およびデータ部を含む検波信号に対して、保持された位相補正値を用いて位相補正が行われ、UW部を検出したときに、PR部について求めた補正値が、今後使用される位相補正値として保持される。このようにUW部あるいはデータ部について求めた位相補正値でなく、PR部について求めた位相補正値を用いて位相補正値を行うことにより、高い精度で位相補正を行うことができる。また、連続した所定数のシンボル交番をPR部とみなすことにより、簡単な回路でPR部を検出することができる。また、シンボル交番を検出した後、所定の時間に限り、UW検出信号を有効することにより、UW部の誤検出を防止することができる。また、シンボル交番検出中にのみ補正値を求めることにより、補正値の精度を高めることができる。また、補正値として検波信号の所定数のシンボルの平均値を使用することにより、個々のシンボルに含まれている雑音などの影響を減らし、補正値の精度を向上させることができる。また、求めた補正値が所定の範囲内にない場合には、検波信号に位相補正を施さないことにより、別周波数チャネルの不要信号の誤受信を防止することができる。また、UW部の検出後は補正値の更新を停止することにより、UW部やデータ部について誤って求めた補正値が使用されることがない。また、フレームの終端部分が検出された後も、しばらくの間、補正値が更新されないので、フレームの終端付近で誤って求めた補正値が使用されることがない。
なお、以上の説明では、PR部のできるだけ後方部分で算出された補正値を用いることとしたが、受信装置において利得制御が安定する時期は、受信装置の構成や通信路の状況などに依存して変化する。このため、プリアンブル受信中の比較的早い時期に(例えば、プリアンブルの先頭から3分の1程度を受信したときに)利得制御が安定するような受信装置では、必ずしも、PR部のできるだけ後方部分で算出された補正値を用いる必要はなく、利得制御が安定した以降の、任意の時点で算出された補正値を用いてもよい。
以下、位相誤差補正回路1の変形例について説明する。本実施形態に係る位相誤差補正回路1は、フレーム終端検出部106を備え、フレーム終端が検出されたときに実効補正値118の更新を再開することとした。このような位相誤差補正回路1は、フレームを連続的に受信する場合にも、フレームを連続的に受信しない場合にも使用できる。ここで、フレームを連続的に受信しない場合に限ると、位相誤差補正回路は、フレーム終端検出部106を必ずしも備えていなくてもよい。図18は、本実施形態の第1の変形例に係る位相誤差補正回路18の構成を示すブロック図である。位相誤差補正回路18は、本実施形態に係る位相誤差補正回路1からフレーム終端検出部106を除去して得られたものである。位相誤差補正回路18は、フレームの終端部分を検出せず、例えば、補正値算出信号114が有効となったときにデータ部受信信号1312を有効にする。この第1の変形例に係る位相誤差補正回路18は、フレームを連続的に受信しない場合に使用でき、本実施形態に係る位相誤差補正回路1と同様の効果を奏する。
また、本実施形態に係る位相誤差補正回路1では、検波信号111はQPSK方式の変調信号を遅延検波した信号であると仮定したが、検波信号111は他の方式で変調されていてもよい。例えば、検波信号111に適用される変調方式は、8相PSK(Phase Shift Keying)などの多値位相変調や、QAM(Quadrature Amplitude Modulation )などの多値振幅位相変調などであってもよい。図19は、本実施形態の第2の変形例に係る位相誤差補正回路19の構成を示すブロック図である。位相誤差補正回路19は、本実施形態に係る位相誤差補正回路1において、交番検出部101および補正値算出部102の前段に、検波信号1911の位相を45度回転させる45度回転部1900を追加したものである。45度回転部1900から出力された回転検波信号1912は補正値算出部102に入力され、回転検波信号1912の符号ビット1913は交番検出部101に入力される。この第2の変形例に係る位相誤差補正回路19は、検波信号1911がπ/4シフトQPSK方式などで変調されている場合に使用でき、本実施形態に係る位相誤差補正回路1と同様の効果を奏する。
(UW部のデータパターンについて)
交番検出部101がUW部のデータパターンを所定長のシンボル交番であると誤判定する理由、UW部のデータパターンと補正遡り回数との関係、および、誤判定を防止するUW部のデータパターンの好適な選び方について説明する。
まず、UW部のデータパターンが雑音などの影響を受けて変化し、交番検出部101が誤ってシンボル交番検出信号113を出力する理由について説明する。上述したように、PR部のデータパターンとしては、連続するシンボル間の位相差が互いに180度ずつ異なるデータパターンが使用される。以下では、一例として、図20に示すように、PR部のコンスタレーションが0度および180度であり、検波信号111はQPSK方式の変調信号を遅延検波した信号であるとする。また、図21に示すように、0度、90度、180度および270度の各位置に、2ビットのシンボルデータ「00」、「01」、「11」および「10」が、それぞれ割り当てられているとする。加えて、説明を明確にするため、検波信号には位相ずれが発生しておらず、雑音も全く付加されていないものとする。
交番検出部101は、検波信号111の符号ビット112に基づき、シンボル交番を判定する。より詳細には、交番検出部101は、検波信号111に含まれる各シンボルを図20に示すIQ座標系に配置したときに、シンボルがQ軸の右側の領域(以下、正の領域という)にあるか、左側の領域(以下、負の領域という)にあるかを判定している。ところが、シンボルデータが「01」または「10」である場合、これらの信号はQ軸上に位置する。したがって、交番検出部101は、これらのシンボルの符号を正しく判別できずに、「正の領域」または「負の領域」に相当する信号であると誤判定してしまう。
一方、PR部にはシンボル交番するデータパターンが設定され、シンボルデータとして見た場合には、「00」と「11」とが交互に連続するパターンに相当する。符号誤りが発生するためのしきい値は大きいので、「00」を「11」と誤判定する確率も、「11」を「00」と誤判定する確率も低い。すなわち、PR部の受信中に、交番検出部101が正の領域にある信号を負の領域にあると誤判定する確率も、負の領域にある信号を正の領域にあると誤判定する確率も低い。したがって、ほとんどの場合、PR部の受信中は、交番検出部101はシンボル交番を正しく検出し、補正値算出部102は正しい補正値を算出する。なお、仮に「00」を「11」と、または、「11」を「00」と誤判定した場合でも、連続する2つのシンボル間の符号が同一となるので、交番検出部101は所定長の連続したシンボル交番を検出できず、補正値算出部102が補正値を算出することはない。
UW部では、一般にPR部とは異なるデータパターンが使用される。このため、交番検出部101が、「01」を「00」または「11」と、「10」を「00」または「11」と誤判定し、UW部のデータパターンをシンボル交番であると判断する場合が起こり得る。例えば、UW部のデータパターンとして、長さが31ビットのPN(Pseudo Noise)符号の1つで、生成多項式が1+X+X2+X3+X5で表される「1100010101101000011001001111101 」(以下、パターンP1という)を用いた場合について説明する。また、以下では、交番検出部101は、シンボル交番を8シンボルに亘って検出したときに(すなわち、シンボル交番を7回連続して検出したときに)、シンボル交番検出信号113を出力するものとする。
パターンP1をコンスタレーションに配置した場合の様子を検討するため、パターンP1を先頭から順に2ビットずつ区切ってシンボルデータとして表すと、図22(a)のようになる。ただし、図22(a)の最後のシンボルデータに含まれている記号「−」は、UW部の後に続くデータ部の先頭の1ビットに対応し、「0」または「1」のどちらにもなり得る値を表すものとする。上述したように、「01」は「00」または「11」と、「10」は「00」または「11」と誤判定される場合が起こり得る。そこで、「01」と「10」のシンボルデータを、誤判定によって「00」または「11」のどちらにもなり得るデータシンボルと考え、ワイルドカード「**」と表す。このように考えた場合、上記第1のパターンは、図22(b)のように表される。
図22(b)では、3番目から7番目までのシンボルデータは、いずれもワイルドカード「**」である。よって、交番検出部101が、3番目、5番目および7番目のシンボルデータを「11」と、4番目および6番目のデータを「00」と誤判定した場合、1番目から8番目までのシンボルデータにおいて、8シンボルに亘るシンボル交番が発生する。この場合、交番検出部101はシンボル交番検出信号113を出力し、補正値算出部102は1番目から8番目までのシンボルデータについて補正値115を算出し、補正値決定部103では補正値記憶部1301にその補正値が記憶される。このため、補正値遡り回数1311の値によっては、UW部の1番目から8番目までのシンボルデータについて誤って算出された補正値が、実効補正値118として選択され、位相回転部104で誤った位相補正が行われる場合がある。
パターンP1について言えば、誤検出により8シンボルに亘るシンボル交番が発生する場合は、上記の例を含めて、以下の6とおりある。
(a)1番目から 8番目まで「11 00 ** ** ** ** ** 00」
(b)2番目から 9番目まで「00 ** ** ** ** ** 00 **」
(c)3番目から10番目まで「** ** ** ** ** 00 ** **」
(d)4番目から11番目まで「** ** ** ** 00 ** ** **」
(e)5番目から12番目まで「** ** ** 00 ** ** ** 00」
(f)6番目から13番目まで「** ** 00 ** ** ** 00 11」
また、UW部の直前に配置されたPR部のデータパターンを考慮して、UW部における誤検出により、PR部とUW部とに跨って8シンボルに亘るシンボル交番が発生する場合の数は、上記の6とおりとは別に7とおりある。したがって、パターンP1をUW部のデータパターンとして用いた場合には、合計13とおりの場合について、8シンボルに亘るシンボル交番が検出され、誤った補正値が算出される。
このような連続したシンボル交番の誤検出を避けるためには、UW部のデータパターンにおいてシンボルデータの誤検出が起きた場合にも、所定の回数だけ連続してシンボル交番が検出されないようなデータパターンを予め選んでおけばよい。例えば、パターンP1と同じく、長さが31ビットのPN符号の1つで、生成多項式が1+X3+X5で表される「1111000110111010100001001011001 」(以下、パターンP2という)を用いた場合について説明する。パターンP1の場合と同様に、パターンP2を先頭から2ビットずつ区切ってシンボルデータとして表すと、図22(c)のようになる。また、図22(c)において、「10」と「01」とをワイルドカード「**」で表すと、図22(d)のようになる。パターンP2について言えば、誤検出により8シンボルに亘るシンボル交番が発生するのは、4番目および8番目のシンボルデータが「11」と、5番目、7番目および9番目のシンボルデータが「00」と誤判定される場合の1とおりに限られる。したがって、パターンP1とパターンP2とを比較した場合、交番検出部101がシンボル交番を誤検出する確率は、パターンP2のほうが低い。したがって、UW部のデータパターンとしては、パターンP1よりもパターンP2のほうが優れている。
このように、UW部には、交番検出部101がシンボルデータを誤判定しても、所定数の連続したシンボル交番が発生しないようなデータパターンを使用することが好ましい。ところが、実際にUW部に使用されるデータパターンは、いくつかのシンボルデータが誤判定されると、所定数の連続したシンボル交番が生じる場合が多い。そこで、交番検出部101が連続した所定数のシンボル交番を誤検出する可能性が1フレームにつきNerr回(Nerrは1以上の整数)あるときには、補正値遡り回数1311をNerr回に予め設定しておくこととする。これにより、PR部以外の部分で誤って算出された補正値を用いて、検波信号111に対して位相補正が行われるのを防止することができる。例えば、パターンP2を用いた場合、交番検出部101は連続した所定数のシンボル交番を1フレームにつき1回だけ誤検出することがあるので、補正値遡り回数1311を1に設定しておけばよい。
補正値遡り回数1311には、以下の2つの理由により、できるだけ小さい値を設定することが好ましい。第1の理由は、補正値遡り回数1311の値が大きいほど、検波信号111の特性が安定していない、PR部の先頭に近い部分で算出された補正値が実効補正値118として選択されるからである。第2の理由は、補正値遡り回数1311の値が大きいほど、補正値記憶部1301の回路規模が大きくなるからである。なお、すでに述べたように、受信装置において利得制御が安定する時期は、受信装置の構成や通信路の状況などに依存して変化し、プリアンブル受信中の比較的早い時期に利得制御が安定するような受信装置では、利得制御が安定した以降の、任意の時点で算出された補正値を用いてもよい。したがって、受信装置の構成によっては、補正値遡り回数1311には、必ずしも、できるだけ小さい値を設定する必要はなく、それよりも大きな値を設定してもよい。
以上の説明では、検波信号111がQPSK方式の変調信号を遅延検波した信号であるとしたが、検波信号111が3値以上の多値変調方式で変調されている場合についても、UW部のデータパターンに関して同様の検討を行うことができる。一例として、検波信号111が8相PSK方式の変調信号を遅延検波した信号である場合について説明する。図23は、8相PSK方式のコンスタレーションを示す図である。図23に示すように8つのシンボルデータをIQ座標系に配置した場合、Q軸上にある「011」および「101」に加えて、Q軸から±45度の範囲内にある「001」、「010」、「111」および「100」をワイルドカードと考える。その上でQPSK方式の場合と同様の手法を用いることにより、8相PSK方式についても、交番検出部101がUW部に含まれるいくつかのシンボルで誤判定を行っても、連続した所定長のシンボル交番を検出しない、好適なUW部のデータパターンを求めることができる。このように3値以上の多値変調方式についても、Q軸から所定の角度以内にある信号点をワイルドカードと考えて、QPSK方式の場合と同様の手法を適用することにより、好適なUW部のデータパターンを求めることができる。
(第2の実施形態)
図24は、本発明の第2の実施形態に係る位相誤差補正回路24の構成を示すブロック図である。図24に示す位相誤差補正回路24は、遅延部2400、交番検出部2401、補正値算出部2402、補正値決定部2403、位相回転部104、UW検出部105、および、フレーム終端検出部106を備える。位相誤差補正回路24は、図2に示す受信装置2に内蔵して使用される点、図3に示すフレーム構造を有する検波信号111が入力される点、および、検波信号111のPR部はシンボル交番する点で、第1の実施形態に係る位相誤差補正回路1と共通する。本実施形態の構成要素のうち、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の参照番号を付して、説明を省略する。
位相誤差補正回路24は、補正値算出部2402に入力される検波信号を位相回転部104に入力される検波信号に対して所定量だけ遅延させて、PR部に対して補正量が算出されている間に、UW部が検出されるようにすることを特徴とする。これにより、UW部について誤って算出された補正値が位相回転部104で使用されることを防止することができる。また、位相誤差補正回路24によれば、第1の実施形態に係る位相誤差補正回路1のように、複数の補正値を記憶して、過去に算出した補正値を遡って使用する必要がなくなる。
以下、第1の実施形態との相異点を中心に、遅延部2400、交番検出部2401、補正値算出部2402、および、補正値決定部2403の詳細を説明する。遅延部2400は、図24に示すように、交番検出部2401および補正値算出部2402の前段に設けられる。遅延部2400は、検波信号111を所定の時間(以下、DLYAとする)だけ遅延させて、遅延させた検波信号2411を出力する。遅延させた検波信号2411は補正値算出部2402に入力され、遅延させた検波信号2411の符号ビット2412は交番検出部2401に入力される。
交番検出部2401は、第1の実施形態に係る交番検出部101と同様に、シンボル交番を数えるカウンタを内蔵し、交番検出信号113と補正値算出信号2413とを出力する。ただし、交番検出部2401は、カウンタ値が(N−1)である状態で、さらにシンボル交番を検出した場合には、カウンタ値を更新しない。これにより、交番検出部2401は、所定値Nを超えたシンボル交番を検出したときには、その超えた分について1シンボルごとに補正値算出信号2413を出力する。
図25は、補正値算出部2402の詳細な構成を示すブロック図である。補正値算出部2402は、位相反転部2501、スライディング積分部2502、平均ベクトル位相反転部2503、および、補正値判定部2504を含む。このうち、位相反転部2501は、第1の実施形態に係る補正値算出部102に含まれていたものと同じであり、平均ベクトル位相反転部2503、および、補正値判定部2504は、処理を行う頻度が異なる点を除いて、第1の実施形態に係る補正値算出部102に含まれていたものと同じである。
スライディング積分部2502は、交番検出信号113が有効である間、位相反転部2501から出力された信号をスライディング積分することにより、第1の平均ベクトル2511を求める。ここで、スライディング積分とは、入力信号がシンボルごとに順次入力される場合において、複数の加算器を用いて、連続した所定数のシンボルの和を、先頭となるシンボルを1シンボルずつずらしながら並列に求める処理をいう。また、上記所定数Mは、2以上、かつプリアンブルに含まれているシンボルの数以下の整数である。例えば、所定数Mを10とした場合、スライディング積分により、第1から第10までのシンボルの和、第2から第11までのシンボルの和、第3から第12までのシンボルの和などが順次算出される。このようなスライディング積分部2502によれば、1シンボル時間につき1つの割合で、位相反転部2501から出力された信号の平均値を求めることができる。なお、信号に含まれる雑音が比較的小さく、雑音による信号の劣化が無視できるほど小さい場合には、上記所定数Mを1として、スライディング積分部2502における平均化処理を行わないこととしてもよい。
図26は、補正値決定部2403の詳細な構成を示すブロック図である。補正値決定部2403は、補正値保持部2603、タイミング調整部2604、データ部受信信号生成部2605、および、論理ゲート2606を含む。補正値決定部2403は、第1の実施形態に係る補正値決定部103から、補正値記憶部1301と補正値選択部1302とを削除したものである。補正値保持部2603は、更新信号2613が有効となったときに、補正値算出部2402から出力された補正値2414を取り込んで実効補正値2415として保持する。それ以外の点では、補正値決定部2403の動作および動作タイミングは、第1の実施形態に係る補正値決定部103と同じであるので、その説明を省略する。
図27を参照して、位相誤差補正回路24の動作を説明する。図27は、位相誤差補正回路24における検波信号111と実効補正値2415との時間的な関係を示す図である。位相誤差補正回路24では、遅延部2400の作用により、補正値算出部2402に入力される遅延させた検波信号2411は、位相回転部104に入力される検波信号111に比べて、時間DLYAだけ遅延する。また、補正値算出部2402および補正値決定部2403では、補正値2414を算出して実効補正値2415を決定するために、処理時間DLYBが必要とされるとする。このため、位相回転部104に対して入力される検波信号111と実効補正値2415との間には、DLYAとDLYBとの和(以下、時間DLYCという)だけの時間差が生じる。
そこで、遅延部2400における遅延時間DLYAとして、補正値算出部2402がPR部について補正値を算出している間に、UW検出部105がUW検出信号116を出力するような値を選択することとする。より好ましくは、遅延時間DLYAとして、補正値算出部2402がPR部の終端部分について補正値を算出している間に、UW検出部105がUW検出信号116を出力するような値を選択するのがよい。さらに好ましくは、遅延時間DLYAとして、補正値算出部2402がPR部の末尾について補正値を算出し終えたときに、UW検出部105がUW検出信号116を出力するような値を選択するのがよい。
補正値決定部2403は、第1の実施形態に係る補正値決定部103と同様に、UW検出部105がUW検出信号116を出力したときに、実効補正値2415を更新する。したがって、上記のように遅延時間DLYAを選択することにより、補正値決定部2403は、実効補正値2415として、PR部について算出された補正値、PR部の後方部分について算出された補正値、あるいは、PR部の末尾について算出された補正値を取り込んで保持する。このため、UW部のデータパターンに関わらず、PR部のみについて算出された補正値を用いて、検波信号111の位相誤差を正しく補正することができる。
位相誤差補正回路24においては、遅延部2400を交番検出部2401および補正値算出部2402の前段に設けることとしたが、位相回転部104に入力される検波信号111と実効補正値2415との間に所定の時間差を設けることができる限り、遅延部2400を、図24に示すブロック図のいずれの箇所に設けてもよい。例えば、遅延部2400を補正値決定部2403と位相回転部104との間に設けてもよい。
また、位相誤差補正回路24は、補正値算出部2402でスライディング積分を行う点で、補正値算出部102で累積加算を行う第1の実施形態に係る位相誤差補正回路1と相異する。補正値算出部2402は、交番検出部2401において所定値Nを超えたシンボル交番が検出されたときには、その超えた部分については1シンボルごとに補正値2414を出力する。したがって、遅延時間DLYAを好適に設定することにより、UW検出信号116が出力されたタイミングで、UW部の直前のシンボル交番で算出された補正値を実効補正値2415として保持し、これを用いて位相回転処理を行うことができる。
なお、すでに述べたように、受信装置において利得制御が安定する時期は、受信装置の構成や通信路の状況などに依存して変化し、プリアンブル受信中の比較的早い時期に利得制御が安定するような受信装置では、利得制御が安定した以降の、任意の時点で算出された補正値を用いてもよい。したがって、受信装置の構成によっては、遅延時間DLYAには、必ずしも、UW部の直前のシンボル交番で算出された補正値が実効補正値2415として保持されるような値を設定する必要はなく、それよりも大きな値を設定してもよい。
以上に示すように、本実施形態に係る位相誤差補正回路では、UW部が検出されたときには、PR部から求めた位相補正値が必ず保持されるので、保持された位相補正値を用いて検波信号に対する位相補正を行うことにより、高い精度で位相補正を行うことができる。また、補正値決定部を好適に構成すれば、検波信号の特性が安定したPR部の後方部分あるいは末尾部分から求めた位相補正値を用いて、入力信号に対する位相補正を行うこともできる。これにより、位相補正の精度をさらに高めることができる。
なお、本実施形態についても、第1の実施形態と同様に、フレーム終端検出部106を備えない第1の変形例、遅延部2400の前段または後段に45度回転部1900を追加した第2の変形例を構成することができる。
(第3の実施形態)
図28は、本発明の第3の実施形態に係る受信装置28の構成を示すブロック図である。図28に示す受信装置28は、検波部201、クロック再生部2801、および、位相誤差補正回路2802を備える。受信装置28は、位相誤差補正回路2802がその前段に配置されたクロック再生部2801に位相誤差の大小を示す位相誤差情報を供給し、クロック再生部2801が供給された位相誤差情報に基づきシンボルクロックを再生することを特徴とする。
一般に、受信装置において受信信号の位相ずれが大きい場合には、再生されたシンボルクロックが不安定になり、これに伴い復調特性が劣化する。この復調特性の劣化を防止するためには、位相誤差補正回路で求めた位相誤差情報に基づき、零クロスを判定する軸(以下、零クロス判定軸という)を切り替えながらシンボルクロックを再生すればよい。これにより、周波数の補償範囲を拡大することができる。以下、この原理に基づき構成された受信装置28の詳細を説明する。
図28において、検波部201は、第1の実施形態で述べた受信装置2に含まれていたものと同じである。クロック再生部2801は、検波出力212に基づき、検波信号111とシンボルクロック2811とを出力する。この際、クロック再生部2801は、位相誤差補正回路2802から供給された実効位相誤差情報2812に基づき、零クロス判定軸を切り替えながらシンボルクロック2811を再生する。クロック再生部2801から出力された検波信号111とシンボルクロック2811とは、位相誤差補正回路2802に入力される。位相誤差補正回路2802は、シンボルクロック2811を用いて検波信号111の位相ずれを補正し、補正検波信号119を出力する。この際、位相誤差補正回路2802は、クロック再生部2801に対して、位相誤差の大小を示す実効位相誤差情報2812を出力する。
図29は、位相誤差補正回路2802の詳細な構成を示すブロック図である。位相誤差補正回路2802は、第1の実施形態に係る位相誤差補正回路1に、位相誤差情報決定部2901を追加したものである。位相誤差情報決定部2901は、補正値算出部102から出力された第2の平均ベクトル612を位相誤差情報として時系列に従って記憶し、UW検出信号116とフレーム終端検出信号117とによって定まるタイミングで、実効位相誤差情報2812を出力する。位相誤差情報決定部2901以外の構成要素の動作は、第1の実施形態と同じであるので説明を省略する。なお、第2の実施形態に係る位相誤差補正回路24に、位相誤差情報決定部2901を追加することにより、同様の機能を有する位相誤差補正回路を構成することもできる。
図30は、位相誤差情報決定部2901の詳細な構成を示すブロック図である。位相誤差情報決定部2901は、絶対値算出部3001、絶対値比較部3002、位相誤差情報記憶部3003、位相誤差情報選択部3004、位相誤差情報保持部3005、タイミング調整部3006、データ部受信信号生成部3007、および、論理ゲート3008を含む。絶対値算出部3001は、第2の平均ベクトル612のI軸成分の絶対値3011とQ軸成分の絶対値3012とを算出する。絶対値比較部3002は、2つの絶対値3011、3012の比に基づき、第2の平均ベクトル612の位相角が45度付近であるか否かを判定し、その結果を示す45度判定信号3013を出力する。
位相誤差情報記憶部3003は、絶対値比較部3002から出力された45度判定信号3013を位相誤差情報として扱い、時系列に従って最新の(L+1)個の位相誤差情報を記憶する。位相誤差情報選択部3004は、位相誤差情報記憶部3003に記憶された(L+1)個の位相誤差情報のうちから、補正値遡り回数3014で指定された、過去に遡った位相誤差情報を選択して出力する。タイミング調整部3006、データ部受信信号生成部3007、および、論理ゲート3008は、第1の実施形態に係る補正値決定部103に含まれている各構成要素と同様に動作する。位相誤差情報保持部3005は、更新信号3016が入力されたときに、位相誤差情報選択部3004で選択された位相誤差情報を取り込んで保持する。位相誤差情報保持部3005で保持された位相誤差情報は、実効位相誤差情報2812としてクロック再生部2801に供給される。位相誤差情報決定部2901の入出力信号と内部信号とが変化するタイミングは、図14と同じである。
図31は、クロック再生部2801の詳細な構成を示すブロック図である。クロック再生部2801は、45度回転部3101、判定軸選択部3102、および、シンボルクロック再生部3103を含む。45度回転部3101は、検波出力212の位相を45度回転させる。判定軸選択部3102は、位相誤差情報決定部2901から供給された実効位相誤差情報2812に基づき、検波出力212、または、45度回転部3101を通過した検波出力のいずれかを選択して出力する。シンボルクロック再生部3103は、判定軸選択部3102で選択された検波出力に基づきクロック信号を再生する。再生されたクロック信号は、シンボルクロック2811として、位相誤差補正回路2802に対して出力される。
クロック再生部2801の動作について説明する。図32は、一般的なシンボルクロックの再生方法を示す図である。一般に、クロック再生部は、アイパターンの零クロスポイントを検出し、検出した零クロスポイントに基づき識別点を判定し、各識別点で1つのクロックパルス(あるいは、1つの立ち上がりまたは立ち下がりエッジ)を生成する。隣接シンボル間で位相が180度反転するデータパターンをPR部として使用する場合、コンスタレーションパターン上では、位相ずれ量に関わらず、検波出力212のI軸成分またはQ軸成分のうちいずれか一方は、シンボルごとに必ず零クロスする。しかし、UW部またはデータ部を受信中は、位相ずれ量とデータパターンの組合せによっては、零クロスが生じない場合がある。したがって、UW部またはデータ部の受信中は、位相ずれ量に応じて、零クロス判定軸を切り替えた上で、零クロスを検出する必要がある。
図33は、位相ずれが生じていない場合の検波信号111のコンスタレーションパターンを示す図である。検波信号111のシンボルは、雑音などによる変動がない場合には、図33に示すように、I軸またはQ軸上に位置する。したがって、図34に示すように、I軸およびQ軸を45度回転させた座標軸(以下、それぞれA軸、B軸という)を用いて零クロス判定を行えば、シンボルごとに必ず零クロスを検出することができる。
しかし、検波信号111に位相ずれが生じた場合には、A軸およびB軸を用いて零クロスを検出すると、データによっては零クロスが生じない場合がある。零クロスを検出できないと、生成されたシンボルクロックの追従性が劣化し、復調誤りの原因となる。ここで例えば、位相ずれが45度である場合を考えると、A軸およびB軸をさらに45度回転させた座標軸(以下、それぞれA’軸、B’軸という)を用いて零クロス判定を行えば、シンボルごとに必ず零クロスを検出することができる。図35は、検波信号111の位相ずれが45度である場合の検波出力のコンスタレーションパターンと零クロス判定軸を示す図である。
以上のことから、位相ずれが0度に近い場合はA軸およびB軸を、位相ずれが45度に近い場合はA’軸およびB’軸を零クロス判定軸として選択し、選択した零クロス判定軸を用いて零クロス判定を行えば、零クロスを安定的に検出することができる。
受信装置28では、補正値決定部103において、補正値のI軸成分とQ軸成分との長さの比に基づき、算出された補正値がどの範囲にあるかが判断されている。したがって、補正値決定部103における判断結果をクロック再生部2801に供給することにより、クロック再生部2801で再生されるシンボルクロック2811を安定化させることができる。
図36および図37に示すように、IQ座標系に、位相ずれ0度領域Pと位相ずれ45度領域P’とを設定する。図36および図37は、それぞれ、2つの領域の詳細および全体を示したものである。図36に示す角度は、tan-1(1/2)=26.6度から導かれたものである。位相ずれ0度領域Pは、位相ずれが0度に近いと判断される領域である。位相ずれ0度領域Pに含まれているシンボルに対しては、A軸およびB軸を用いた零クロス判定を行えばよい。これに対して、位相ずれ45度領域P’は、位相ずれが45度に近いと判断される領域である。位相ずれ45度領域に含まれているシンボルに対しては、A’軸およびB’軸を用いた零クロス判定を行えばよい。
あるシンボルが位相ずれ0度領域または位相ずれ45度領域のいずれに含まれるかは、以下のようにして判定できる。補正値のI軸成分の絶対値をX、補正値のQ軸成分の絶対値をYとしたときに、XとYが次式(4)を満たす場合には、シンボルは、近似的に位相ずれ0度領域Pに含まれると判定できる。また、XとYとが次式(5)を満たす場合、シンボルは、近似的に位相ずれ45度領域P’に含まれると判断できる。
X−2Y>0 または、2X−Y<0 …(4)
X−2Y<0 かつ、 2X−Y>0 …(5)
絶対値比較部3002は、絶対値算出部3001から出力された2つの絶対値3011、3012が、式(4)または(5)のいずれを満たすかを判断する。絶対値比較部3002は、式(4)が満たされた場合には、45度判定信号3013の値を例えば0とし、式(5)が満たされた場合には、45度判定信号3013の値を例えば1とする。45度判定信号3013は、位相誤差情報記憶部3003、位相誤差情報選択部3004、および、位相誤差情報保持部3005を経て、最終的には実効位相誤差情報2812として、判定軸選択部3102に入力される。判定軸選択部3102は、実効位相誤差情報2812が0であるときは、A軸とB軸とを零クロス判定軸として選択する。また、判定軸選択部3102は、実効位相誤差情報2812が1であるときは、A’軸とB’軸とを零クロス判定軸として選択する。このようにして、クロック再生部2801は、位相誤差補正回路2802から出力された実効位相誤差情報2812に基づき、零クロス判定軸を切り替えてシンボルクロックを再生する。
絶対値比較部3002は、第2の平均ベクトル612の位相角を算出し、算出した位相角に基づき、45度判定信号3013を求めてもよい。また、絶対値比較部3002は、第2の平均ベクトルのI軸成分とQ軸成分の長さの比に基づき、45度判定信号3013を求めてもよい。特に、式(4)および(5)に含まれる2倍する乗算は、ビットシフト処理で行えるので、式(4)および(5)に示す演算は、位相角を算出することなく、ビットシフト処理と加算処理とにより簡単に行うことができる。
以上に示すように、本実施形態に係る受信装置では、位相誤差補正回路からクロック再生部に対して位相誤差の大小を示す位相誤差情報を供給し、クロック再生部では位相誤差情報に基づきシンボルクロックを再生する。これにより、位相ずれが大きい場合にも、安定したシンボルクロックを得ることができるので、復調特性が向上する。
(第4の実施形態)
図38は、本発明の第4の実施形態に係る受信装置38の構成を示すブロック図である。図38に示す受信装置38は、検波部201、位相誤差補正回路3801、および、クロック再生部3802を備える。図38に示す検波部201、位相誤差補正回路3801、および、クロック再生部3802は、それぞれ、図2に示す検波部201、位相誤差補正回路1、および、クロック再生部202に相当する。受信装置38は、位相誤差補正回路3801がクロック再生部3802の前段に配置され、検波部201から出力された検波出力212に対してサンプルごとに位相補正を行うことを特徴とする。
位相誤差補正回路3801は、クロック再生部3802で再生されたシンボルクロック3812に基づき検波出力212に対して識別点判定を行い、識別点判定された検波出力に対する補正値を算出した上で、算出した補正値を用いて、検波出力212の位相ずれをサンプルごとに補正する。図39は、位相誤差補正回路3801の構成を示すブロック図である。位相誤差補正回路3801は、第1の実施形態に係る位相誤差補正回路1にシンボル判定部3901を追加したものである。以下、位相誤差補正回路3801と、第1の実施形態に係る位相誤差補正回路1との相違点について説明する。
シンボル判定部3901には、検波部201から出力された検波出力212と、クロック再生部3802で再生されたシンボルクロック3812とが入力される。シンボル判定部3901は、図32で示したように、シンボルクロック3812に基づきアイパターンが開いた点を識別し、検波信号111を出力する。UW検出部105とフレーム終端検出部106とには、クロック再生部3802から出力された、識別判定された補正検波信号3813が入力される。UW検出部105は、補正検波信号3813にUW部が含まれていることを検出したときに、UW検出信号116を出力する。フレーム終端検出部106は、補正検波信号3813にフレームの終端部分が含まれていることを検出したときに、フレーム終端検出信号117を出力する。交番検出部101、補正値算出部102、および、補正値決定部103は、第1の実施形態に係る位相誤差補正回路1に含まれている各構成要素と同様に動作する。したがって、第1の実施形態と同様に、検波信号111に基づき、実効補正値118が算出される。位相回転部104は、補正値決定部103から出力された実効補正値118を用いて、検波出力212の各サンプルについて位相回転処理を行う。位相回転部104から出力された信号は、補正検波出力3811としてクロック再生部3802に供給される。
第1から第3の実施形態では、位相誤差補正回路には検波信号111が入力されるので、位相回転部104は、シンボルクロックの周期で、式(1)および(2)に示す位相回転処理を行う。これに対して、本実施形態では、位相誤差補正回路3801には検波出力212が入力されるので、位相回転部104は、各サンプルについて位相回転処理を行う必要がある。その一方で、本実施形態によれば、クロック再生部3802には既に位相ずれが補正された信号が入力されるので、クロック再生部3802は、第3の実施形態で示したような、実効位相誤差情報に基づく零クロス判定軸の切り替えを行う必要がなくなる。
なお、以上の説明では、受信装置38は、第1の実施形態に係る位相誤差補正回路1にシンボル判定部3901を追加した位相誤差補正回路3801を備えることとしたが、これに代えて、第2の実施形態に係る位相誤差補正回路24(すなわち、遅延部2400を含む位相誤差補正回路24)にシンボル判定部3901を追加した位相誤差補正回路を備えることとしてもよい。このような遅延部2400を含む位相誤差補正回路24を使用した場合にも、遅延部を含まない位相誤差補正回路1を使用した場合と、同じ効果が得られる。