JP4268410B2 - 印刷インキ、印刷フィルムおよび化粧シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非晶質ポリエステル樹脂フィルムを用いた化粧シートに好適な印刷インキ、これからなる印刷層を有する印刷フィルムおよび化粧シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、建材、壁装、家具、オフィス什器、システムキッチン・洗面化粧台の扉などの表面材などに使用される化粧シートには、塩化ビニル系樹脂フィルムが使用されている。塩化ビニル系樹脂化粧シートは、熱ラミネート装置の加熱ドラム上で、透明な塩化ビニル系樹脂フィルムと、表面に印刷層を有する着色塩化ビニル系樹脂フィルムとを、印刷層を挟むようにして重ねて約170〜180℃で熱ラミネートし、さらに、約80〜120℃のエンボスロールで表面にエンボスの型押しを行うことにより製造される。
【0003】
近年、環境問題に対する関心の高まりから、塩化ビニル系樹脂化粧シートに代わる化粧シートが求められており、非晶質ポリエステル樹脂フィルムを用いた化粧シートが提案されている。
しかしながら、従来の塩化ビニル系樹脂化粧シート用の熱ラミネート装置を用い、塩化ビニル系樹脂化粧シートと同じ製造条件で非晶質ポリエステル樹脂化粧シートを製造しようとすると、非晶質ポリエステル樹脂フィルムが加熱ドラムやエンボスロールに融着し、化粧フィルムを製造することができなかった。
【0004】
そこで、加熱ドラムやエンボスロールの温度を、非晶質ポリエステル樹脂フィルムが融着しない温度、例えば、加熱ドラムの温度を90〜110℃、エンボスロールの温度を115〜130℃に設定する必要があった。
しかしながら、印刷層を形成している印刷インキは、ガラス転移点(Tg)の低い塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、およびこの塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体によるブロッキングを防止するためのTgの高いアクリル樹脂を主成分とするものであったため、非晶質ポリエステル樹脂フィルムが加熱ドラムやエンボスロールに融着しない程度のラミネート温度(95〜110℃)では、アクリル樹脂が熱接着性に寄与せず、印刷層と、この上に積層される非晶質ポリエステル樹脂フィルムとの接着が不十分となり、ピーリング(剥がれ)が起こるという問題があった。
【0005】
そこで、低温での熱ラミネート条件に合うように印刷インキを変更することが考えられる。しかしながら、低温で熱ラミネート可能な印刷インキからなる印刷層は、粘着性を有し、化粧シートを製造する前に、印刷層を有する着色フィルム原反をロール状に巻き回した状態で保存していると、ブロッキング(印刷層が上に積み重なれたフィルムに貼り付いてしまう現象)が発生するという問題があった。
【0006】
そのため現状では、着色フィルムの印刷層上に、押出された非晶質ポリエステル樹脂フィルムをラミネートする方法(特開2001−47582号公報)、加熱ドラムに接する透明フィルムの表面にワックスを含有する二液型ウレタン樹脂の塗膜をあらかじめ設けておき、この塗膜が加熱ドラムに接するようにすることで、フィルムの加熱ドラムへの融着を防ぐ方法(特開2002−103544号公報)によって化粧フィルムを得ている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−47582号公報(第2−6頁、図1−図2)
【特許文献2】
特開2002−103544号公報(第2−9頁、図1−図2)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明の目的は、印刷後において、ブロッキングしにくく、低温の熱ラミネートであっても、非晶質ポリエステル樹脂フィルムとの接着性が良好な印刷インキ、ブロッキングしにくく、低温の熱ラミネートであっても、非晶質ポリエステル樹脂フィルムとの接着性が良好な印刷層を有する印刷フィルム、および、印刷層と非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明層と接着性が良好な化粧シートを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、特定のTgを持つ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂とを、バランスよく配合することによって、ブロッキングと95〜110℃の熱接着性とを改善した。
すなわち、本発明の印刷インキは、ビヒクルとして、(A)塩化ビニル88〜95質量%および酢酸ビニル5〜12質量%を含む単量体を共重合してなる、ガラス転移点(Tg)が73〜82℃である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と、(B)ガラス転移点(Tg)が80〜110℃であるアクリル樹脂とを含有する印刷インキであって、ビヒクル中の(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が、45〜85質量%であり、ビヒクル中の(B)アクリル樹脂の含有量が、15〜55質量%であることを特徴とするものである。
【0010】
また、ビヒクルとして、さらに(C)ガラス転移点(Tg)が68〜72℃である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を、(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体および(C)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の合計量に対して、20質量%含有していてもよい。
また、本発明の印刷フィルムは、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材フィルム表面に、着色剤を含有する本発明の印刷インキからなる印刷層が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の化粧シートは、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材層と、基材層の表面に形成された、着色剤を含有する本発明の印刷インキからなる印刷層と、印刷層上に積層された、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明層とを有することを特徴とするものである。
また、本発明の化粧シートは、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材層と、基材層の表面に形成された着色印刷層と、印刷層の表面全体を覆うように形成された、着色剤を含有しない本発明の印刷インキからなる透明ベタ印刷層と、透明ベタ印刷層上に積層された、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明層とを有することを特徴とするものである。
また、本発明の化粧シートにおいては、前記透明層上に、表面保護用の転写箔が積層されていることが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
[印刷インキ]
本発明の印刷インキは、ビヒクル(展色材)として、特定のTgを持つ(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と(B)アクリル樹脂とを含有するものであり、必要に応じて、溶剤、着色剤、各種添加剤を含有するものである。ビヒクルは、通常は、顔料を分散させる成分であり、印刷インキでは樹脂および油がこれに該当し、具体的に本発明では、後述の(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、(B)アクリル樹脂をはじめ、(A)以外の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、公知の印刷インキ樹脂等の樹脂成分がこれに該当する。
【0013】
(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、本発明の印刷インキに、後述の非晶質ポリエステル樹脂フィルムとの熱接着性を付与する成分であり、塩化ビニル88〜95質量%、および酢酸ビニル5〜12質量%を含む単量体を共重合してなるものである。共重合体を得るときの塩化ビニルの仕込み量が88質量%未満では(酢酸ビニルの仕込み量が12質量%を超えると)、印刷インキからなる印刷層の熱接着性は向上するものの、粘着性が大きくなり、ブロッキングが発生しやすくなる。一方、共重合体を得るときの塩化ビニルの仕込み量が95質量%を超えると(酢酸ビニルの仕込み量が5質量%未満では)、印刷インキからなる印刷層によるブロッキングは起きにくくなるものの、熱接着性が不十分となる。
【0014】
(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のガラス転移点(Tg)は、73〜82℃である。(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のTgが73℃未満では、印刷インキからなる印刷層の熱接着性は向上するものの、粘着性が大きくなり、ブロッキングが発生しやすくなる。一方、(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のTgが82℃を超えると、印刷インキからなる印刷層によるブロッキングは起きにくくなるものの、熱接着性が不十分となる。
ここで、(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のTgは、示差走査熱量計を用いて測定される値である。
【0015】
(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の質量平均分子量は、好ましくは28000〜42000である。(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の質量平均分子量が28000未満では、耐候性が劣り、耐ブロッキング性も劣る。一方、(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の質量平均分子量が42000を超えると、溶剤への溶解性が劣り、着色剤(顔料)の分散性も悪くなる。
ここで、(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の質量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により、スチレン換算で求められる。
【0016】
(B)アクリル樹脂は、本発明の印刷インキに、印刷後の非粘着性、非流動性を付与するとともに、耐候性を付与するものである。アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独または共重合体が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0017】
(B)アクリル樹脂のガラス転移点(Tg)は、80〜110℃である。(B)アクリル樹脂のTgが80℃未満では、印刷インキからなる印刷層におけるブロッキングの抑制効果が不十分となる。一方、(B)アクリル樹脂のTgが110℃を超えると、印刷インキからなる印刷層の熱接着性が不十分となる。
ここで、(B)アクリル樹脂のTgは、示差走査熱量計を用いて測定される値である。
【0018】
(B)アクリル樹脂の質量平均分子量は、好ましくは65000〜155000である。(B)アクリル樹脂の質量平均分子量が65000未満では、耐候性が劣るようになる。一方、(B)アクリル樹脂の質量平均分子量が155000を超えると、印刷インキの粘度が高くなり、着色剤(顔料)の分散性が悪くなる。
ここで、(B)アクリル樹脂の質量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により、スチレン換算で求められる。
【0019】
本発明の印刷インキにおいては、ビヒクル中の(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量は、45〜85質量%、好ましくは60〜75質量%であり、ビヒクル中の(B)アクリル樹脂の含有量は、15〜55質量%、好ましくは25〜40質量%である。ビヒクル中の(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が45質量%未満では((B)アクリル樹脂の含有量が55質量%を超えると)、印刷インキからなる印刷層によるブロッキングは起きにくくなるものの、熱接着性が不十分となる。一方、ビヒクル中の(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が85質量%を超えると((B)アクリル樹脂の含有量が15質量%未満では)、印刷インキからなる印刷層の熱接着性は向上するものの、粘着性が大きくなり、ブロッキングが発生しやすくなる。
【0020】
本発明の印刷インキには、本発明の目的を損なわない範囲で、ビヒクルとして上記2成分以外に、他の樹脂成分、例えば、(A)以外の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂等の公知の印刷インキ用樹脂を含ませてもよい。
また、(A)以外の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体として、(C)ガラス転移点(Tg)が68〜72℃である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を、(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体および(C)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の合計量に対して、20質量%含有していてもよい。ただし、(C)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が、(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体および(C)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の合計量に対して、20質量%を超えると、印刷層の粘着性が大きくなり、ブロッキングが発生しやすくなる。
【0021】
また、本発明の印刷インキには、必要に応じてビヒクル以外の成分として、希釈、分散用の溶剤、顔料や染料等の着色剤、体質顔料、各種添加剤を含ませてもよい。
溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル等のエステル類;エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類などが挙げられる。
着色剤としては、チタン白、カーボンブラック、弁柄、黄鉛、群青等の無機顔料;アニリンブラック、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料、その他染料等が挙げられる。
体質顔料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
各種添加剤として、分散剤、可塑剤、安定剤、接着付与剤等が挙げられる。
【0022】
以上説明した本発明の印刷インキにあっては、印刷インキからなる印刷層に熱接着性を付与する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体として、特定の単量体の比率を有する(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を特定量(ビヒクル中45〜85質量%)含有させているので、印刷層の熱接着性の低下を抑えつつ、非粘着性を向上させることができる。これにより、印刷層に非粘着性を付与する(B)アクリル樹脂の含有量をビヒクル中の15〜55質量%と低く抑えることが可能となり、(B)アクリル樹脂による印刷層の熱接着性の低下を最小限に抑えつつ、(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体による、低温の熱ラミネート時の接着性を最大限に発揮させることができる。
【0023】
[印刷フィルム]
本発明の印刷フィルム(またはシート)は、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材フィルム表面に、着色剤を含有する本発明の印刷インキからなる印刷層が形成されているものである。ここで、基材フィルムは、後述の化粧シートの基材として用いる場合には化粧シートを貼り合わせる下地材の表面を隠蔽することが必要であることから、それ自体が着色された着色不透明な基材フィルムであることが好ましい。
基材フィルムに用いられる非晶質ポリエステル樹脂とは、加熱処理を行っても結晶化による物性の変化を起こすことがなく、結晶性を有しないポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂が結晶性を有しないことは、示差走査熱量計を用いる熱分析において、結晶化にもとづく発熱ピークを示さないこと、および加熱しても外観的に白濁ないし白化を生じないことによって確認することができる。
【0024】
非晶質ポリエステル樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸などをジカルボン酸成分とし、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどをグリコール成分とする共重合ポリエステル樹脂を挙げることができる。これらの中でも、テレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、25〜35モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールと65〜75モル%のエチレングリコールからなるジオール成分とを共重合させた非晶質ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好適である。この非晶質ポリエチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする基材フィルムは、メンブレン成形など、熱加工性が良好である。
【0025】
また、基材フィルムは、非晶質ポリエステル樹脂に、晶質ポリエステル樹脂を配合したものとしてもよい。晶質ポリエステル樹脂としては、通常のポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などが挙げられる。配合比率は、非晶質ポリエステル樹脂が40〜100質量%、好ましくは60〜90質量%、晶質ポリエステル樹脂が0〜60質量%、好ましくは10〜40質量%である。この晶質ポリエステル樹脂を配合することにより、基材フィルムの耐溶剤特性が改善されることとなる。
【0026】
基材フィルムの厚さは、通常は50〜150μmであり、好ましくは70〜120μmである。基材フィルムの厚さが50μm未満では、化粧シートにしたときの隠蔽力が不足するおそれがある。一方、基材フィルムとしての性能は、厚さが150μm以下で十分に発揮されるので、これより厚くする必要はあまりないが、用途により、化粧シートの真空成形などを行うと、絞りの深さによって化粧シートの伸ばされ方が異なるので、用途に応じて基材フィルムの厚さを選択することができる。
【0027】
本発明の印刷フィルムは、基材フィルム上に公知の印刷法を用いて印刷を施し、着色剤を含有する本発明の印刷インキからなる印刷層を形成することにより製造される。
印刷法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷などが挙げられる。
印刷される模様としては、例えば、木目模様、大理石模様など任意の模様を選択できる。
【0028】
以上説明した本発明の印刷フィルムにあっては、非粘着性に優れた本発明の印刷インキからなる印刷層が表面に形成されているので、ロール状に巻き回した状態や積み重ねた状態で保存していても、ブロッキングが発生しにくい。また、低温の熱ラミネート時の接着性に優れた本発明の印刷インキからなる印刷層が表面に形成されているので、低温の熱ラミネートであっても他の非晶質ポリエステル樹脂フィルムとの接着性が良好である。
【0029】
[化粧シート]
本発明の化粧シートは、図1に示すように、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材層11と、基材層11の表面に形成された、着色剤を含有する本発明の印刷インキからなる印刷層12と、印刷層12上に積層された、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明層13とを有するものである。ここで、基材層11は、化粧シートを貼り合わせる下地材の表面を隠蔽することが必要であることから、それ自体が着色された着色不透明な基材層であることが好ましい。
【0030】
基材層11の非晶質ポリエステル樹脂としては、上述した非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材フィルムと同じものを用いることができる。また、基材フィルムと同じように、非晶質ポリエステル樹脂としては、非晶質ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく、また、基材層11には非晶質ポリエステル樹脂の他に晶質ポリエステル樹脂が配合されていてもよい。
基材層11の厚さは、上述の基材フィルムと同じく、通常は50〜150μmであり、好ましくは70〜120μmである。
【0031】
透明層13としては、上述した非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材フィルムと同じものを用いることができる。透明層13は、厚さ70μmのフィルムについて測定した全光線透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。透明層13の全光線透過率を80%以上とすることにより、印刷層12の模様に深みのある意匠性の優れた化粧シートを得ることができる。
ここで、フィルムの全光線透過率は、JIS K 7105の5.5.2にしたがって測定される。
【0032】
透明層13の厚さは、通常は40〜120μmであり、好ましくは50〜100μmである。透明層13の厚さが40μm未満では、基材層11、印刷層12の保護が不十分となるおそれがある。一方、透明層13としての性能は、厚さが120μm以下で十分に発揮されるので、これより厚くする必要はあまりない。
【0033】
本発明の化粧シートは、例えば、以下のようにして製造される。
あらかじめ、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする、着色不透明な基材フィルム(基材層11)表面に、本発明の印刷インキからなる印刷層12を印刷によって形成して印刷フィルムを作製し、これをロール状に巻き回した状態にしておく。
【0034】
図2に示す熱ラミネート装置において、印刷フィルム21を巻回ロール31から送り出し、印刷層12が形成された面が加熱ドラム32に接しないように、圧着ロール33により加熱ドラム32表面に密着させる。
さらに、加熱ドラム32表面の印刷フィルム21上に、巻回ロール34から送り出された、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明フィルム22(透明層13)を圧着ロール35により密着させる。
【0035】
印刷層12を介して印刷フィルムと透明フィルムとが重ねられた状態で、加熱ドラム32を回転させながら印刷フィルム21と透明フィルム22とを熱ラミネートすることにより、図1に示す化粧シートが製造される。必要に応じて、熱ラミネート時に、赤外線ヒータ36によって透明フィルム22側から加熱を行ってもよい。
さらに、後段のエンボスロール(図示略)で透明層の表面にエンボスの型押しを行うことも可能である。
【0036】
加熱ドラム32の温度は、通常、95〜110℃であり、好ましくは97〜105℃である。加熱ドラム32の温度が95℃未満では、印刷層12と透明層13との接着が不十分となり、ピーリングが起こるおそれがある。一方、加熱ドラム32の温度が110℃を超えると、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とするフィルムが加熱ドラム32に融着するおそれがある。
また、エンボスロールの温度は、通常、115〜130℃であり、好ましくは120〜127℃である。エンボスロールの温度が115℃未満では、エンボス加工が不十分となるおそれがある。一方、エンボスドラムの温度が130℃を超えると、化粧シートがエンボスロールに融着するおそれがある。
【0037】
本発明の化粧シートにおいては、耐傷付き性向上を目的に、透明層13上に表面保護層がさらに積層されていることが好ましい。
表面保護層は、表面が硬質で透明な樹脂からなるものであり、例えば、以下の(i)、(ii)のようにして形成することができる。
(i)剥離基材上にアクリル系樹脂、ホットメルト系接着剤を順に塗布してアクリル系樹脂層および接着剤層を有する転写箔を作製する。接着剤層と透明層13とが接するように、転写箔を透明層13上に重ね、転写ロールにて透明層13上に接着剤層を介してアクリル系樹脂層を転写して、転写箔の剥離基材を剥離させることにより、図3に示すような、透明層13上に接着剤層14によって接着されたアクリル系樹脂層15(表面保護層)を形成する。
【0038】
(ii)晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる二軸延伸フィルムの表面に硬化性のアクリル系樹脂を塗布してハードコート層を形成し、二軸延伸フィルムの裏面にホットメルト系接着剤を塗布して接着剤層を形成してハードコートフィルムを作製する。このハードコートフィルムをドライラミネーションなどで透明層13上に貼着することにより、図4に示すような、透明層13上に接着剤層16、二軸延伸フィルム層17、ハードコート層18(表面保護層)が順に積層された化粧シートとする。
【0039】
また、本発明の化粧シートにおいては、基材層11(基材フィルム)の裏面に、プライマー処理を施すことができる。基材層11(基材フィルム)の裏面にプライマー処理を施すことにより、化粧シートを合板、繊維板、パーティクルボードなどの下地材に貼り付けるときの接着性を向上させることができる。プライマーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル樹脂プライマーや熱可塑性ウレタン樹脂プライマーなどを挙げることができる。
【0040】
以上説明した本発明の化粧シートにあっては、印刷層12が本発明の印刷インキで形成されているので、低温の熱ラミネートで積層されているにもかかわらず、印刷層12と非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明層13と接着性が良好であり、この接着界面においてピーリングが発生することがない。
【0041】
なお、本発明の化粧シートは、図1、図3および図4に例示したものに限定はされず、例えば、図5に示すように、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材層11と、基材層11の表面に形成された、印刷インキからなる着色印刷層19と、着色印刷層19の表面全体を覆うように形成された、着色剤を含有しない本発明の印刷インキからなる透明ベタ印刷層20と、透明ベタ印刷層20上に積層された、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明層13とを有するものであってもよい。
ここで、着色印刷層19は、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明層13に接していないので、着色印刷層19を形成する印刷インキとしては、本発明の印刷インキを用いる必要はなく、従来の印刷インキを用いることが可能である。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例を示してさらに詳しく説明する。
印刷インキのビヒクルとしては、以下のものを用いた。
[(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体]
(A−1)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体:塩化ビニル89質量%および酢酸ビニル11質量%を共重合してなる塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、重合度=750、Tg=75℃、質量平均分子量=42000。
(A−2)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体:塩化ビニル93質量%および酢酸ビニル7質量%を共重合してなる塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、重合度=400、Tg=80℃、質量平均分子量=33000。
【0043】
[(B)アクリル樹脂]
(B−1)アクリル樹脂:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を重合してなるアクリル樹脂、Tg=105℃、質量平均分子量=67000。
[(C)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体]
(C−1)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体:塩化ビニル87質量%および酢酸ビニル13質量%を共重合してなる塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、重合度=420、Tg=70℃、質量平均分子量=31000。
【0044】
[(D)他の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体]
(D−1)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体:塩化ビニル99質量%および酢酸ビニル1質量%を共重合してなる塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、重合度=320、Tg=80℃、質量平均分子量=28000。
[(E)他のアクリル樹脂]
(E−1)アクリル樹脂:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を重合してなるアクリル樹脂、Tg=115℃、質量平均分子量=62000。
ここで、(A)〜(E)成分のTgは、アルバック理工社製、示差走査熱量計DSC−9400を用いて測定される値である。
【0045】
[実施例1]
(A−1)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体8.4質量部(ビヒクル中の60質量%)、(B−1)アクリル樹脂5.6質量部(ビヒクル中の40質量%)、メチルエチルケトン41.1質量部、酢酸エチル11.0質量部、メチルイソブチルケトン33.6質量部を混合してメジューム(無色インキ)を調製した。このメジュームに各種の顔料を配合して、ライトブラウンに着色された印刷インキを得た。
【0046】
アイボリー色に着色された非晶質ポリエチレンテレフタレート系樹脂(イーストマン・ケミカル社製:商品名「PETG GN071」、ジオール成分:シクロヘキサンジメタノール30モル%およびエチレングリコール70モル%、ジカルボン酸成分:テレフタル酸からなる共重合体)を、溶融押出法にて厚さ80μmの基材フィルムとした。基材フィルム片面に、上記印刷インキを用いてグラビア印刷機で、ベタ印刷(150メッシュの版)の3回刷りで印刷層を形成し、印刷フィルムを得た。
得られた印刷フィルムについて、以下に示すブロッキング試験およびピーリング試験を行った。結果を表1に示す。
【0047】
これとは別に、非晶質ポリエチレンテレフタレート系樹脂(イーストマン・ケミカル社製:商品名「PETG GN071」)85質量部、晶質ポリエステル系樹脂(ポリプラスチック社製:商品名「600FP」、ポリブチレンテレフタレート系樹脂)15質量部からなる透明樹脂材料を、溶融押出法にて厚さ60μmの透明フィルムとした。
図2に示す熱ラミネート装置を用いて、印刷フィルム上に透明フィルムを熱ラミネートして、化粧シートを得た。この際、加熱ドラムの温度は100℃であった。
【0048】
(ブロッキング試験)
印刷フィルムから7cm×7cmの試験片を切り出し、これを印刷層を上にして5枚重ね、50℃のオーブン中に48時間入れた。この積重体をオーブンから取り出し、室温と同じ温度になるまで放置した後、試験片を一枚ずつ剥がして以下の基準で評価した。
○:スムーズに剥がれた。
△:剥がすのに少し抵抗はあるが、実用上問題なかった。
×:剥がれにくい、または全く剥がれなかった。
【0049】
(ピーリング試験)
個々に温度調節可能な5個の小型熱盤を有する東洋精機製作所社製の熱傾斜試験器「型式:HG−100−2」を用い、印刷フィルムと透明フィルムとを印刷層を介して重ね合わせ、透明フィルム側から、100℃、105℃、110℃にそれぞれ調節した3個の小型熱盤を3kgの荷重で25秒間押し当て、同時に熱ラミネートした。得られたシートの端部を剥がし、印刷フィルムと透明フィルムとを、引っ張り試験機(島津製作所社製、「AUTO GRAPH S−500−C」)を用いて180゜方向に引っ張り、印刷層と透明層との間の接着界面の強度を測定した。
【0050】
[実施例2〜4、比較例1〜4]
ビヒクル中の各樹脂の種類および含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして印刷インキを調製し、実施例1と同様にして印刷フィルムおよび化粧シートを得た。
得られた印刷フィルムについて、ブロッキング試験およびピーリング試験を行った。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例5]
アイボリー色に着色された非晶質ポリエチレンテレフタレート系樹脂(イーストマン・ケミカル社製:商品名「PETG GN071」)を、溶融押出法にて厚さ80μmの基材フィルムとした。上記比較例2で調製したメジュームを用いて3種の着色インキを調製し、基材フィルム片面に、3種の着色インキを用いてグラビア印刷機で木目模様の着色印刷層を形成し、さらに、着色印刷層上に、実施例1で調製したメジュームを用いてグラビア印刷機で、ベタ印刷(150メッシュの版)の3回刷りで透明ベタ印刷層を形成し、印刷フィルムを得た。
得られた印刷フィルムについて、ブロッキング試験およびピーリング試験を行った。ブロッキング試験の評価は「○」であり、ピーリング試験による接着界面の強度は、100℃で450g/inch、105℃で940g/inch、110℃で1400g/inchであった。
【0052】
また、図2に示す熱ラミネート装置を用いて、印刷フィルム上に実施例1で作製した透明フィルムを熱ラミネートして、化粧シートを得た。加熱ドラムの温度は105℃であり、化粧シートのラミネート強度は十分であった。
【0053】
【表1】
Figure 0004268410
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の印刷インキは、ビヒクルとして、(A)塩化ビニル88〜95質量%および酢酸ビニル5〜12質量%を含む単量体を共重合してなる、ガラス転移点(Tg)が73〜82℃である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と、(B)ガラス転移点(Tg)が80〜110℃であるアクリル樹脂とを含有する印刷インキであって、ビヒクル中の(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が、45〜85質量%であり、ビヒクル中の(B)アクリル樹脂の含有量が、15〜55質量%であるので、ブロッキングしにくく、低温の熱ラミネートであっても、非晶質ポリエステル樹脂フィルムとの接着性が良好な印刷模様(印刷柄)を形成できる。このような印刷インキを用いることにより、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材フィルム上に印刷層が形成された印刷フィルムと、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明フィルムとからなる化粧シートを、透明フィルムに特殊な処理を施すことなく、熱ラミネートによって製造することが可能となる。
【0055】
また、本発明の印刷フィルムは、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材フィルム表面に、着色剤を含有する本発明の印刷インキからなる印刷層が形成されているものであるので、印刷層において、ブロッキングしにくく、非晶質ポリエステル樹脂フィルムとの接着性が良好である。
【0056】
また、本発明の化粧シートは、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材層と、基材層の表面に形成された、着色剤を含有する本発明の印刷インキからなる印刷層と、印刷層上に積層された、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明層とを有するものであるので、低温の熱ラミネートで得られたものであっても、印刷層と非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明層と接着性が良好であり、ピーリングが起きない。
また、本発明の化粧シートは、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材層と、基材層の表面に形成された着色印刷層と、印刷層の表面全体を覆うように形成された、着色剤を含有しない本発明の印刷インキからなる透明ベタ印刷層と、透明ベタ印刷層上に積層された、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明層とを有するものであるので、低温の熱ラミネートで得られたものであっても、印刷層と非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明層と接着性が良好であり、ピーリングが起きない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の化粧シートの一例を示す断面図である。
【図2】 熱ラミネート装置の一例を示す概略図である。
【図3】 本発明の化粧シートの他の例を示す断面図である。
【図4】 本発明の化粧シートの他の例を示す断面図である。
【図5】 本発明の化粧シートの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
11 基材層
12 印刷層
13 透明層
19 着色印刷層
20 透明ベタ印刷層
21 印刷フィルム

Claims (8)

  1. ビヒクルとして、(A)塩化ビニル88〜95質量%および酢酸ビニル5〜12質量%を含む単量体を共重合してなる、ガラス転移点(Tg)が73〜82℃である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と、(B)ガラス転移点(Tg)が80〜110℃であるアクリル樹脂とを含有する印刷インキであって、
    ビヒクル中の(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が、45〜85質量%であり、
    ビヒクル中の(B)アクリル樹脂の含有量が、15〜55質量%であることを特徴とする印刷インキ。
  2. ビヒクルとして、さらに(C)ガラス転移点(Tg)が68〜72℃である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有し、
    (C)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の含有量が、(A)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体および(C)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の合計量に対して、20質量%であることを特徴とする請求項1記載の印刷インキ。
  3. さらに着色剤を含有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の印刷インキ。
  4. 着色剤を含有しないことを特徴とする請求項1または請求項2記載の印刷インキ。
  5. 非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材フィルム表面に、請求項3記載の印刷インキからなる印刷層が形成されていることを特徴とする印刷フィルム。
  6. 非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材層と、
    基材層の表面に形成された、請求項3記載の印刷インキからなる印刷層と、
    印刷層上に積層された、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明層とを有することを特徴とする化粧シート。
  7. 非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材層と、
    基材層の表面に形成された着色印刷層と、
    印刷層の表面全体を覆うように形成された、請求項4記載の印刷インキからなる透明ベタ印刷層と、
    透明ベタ印刷層上に積層された、非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする透明層とを有することを特徴とする化粧シート。
  8. 前記透明層上に、表面保護用の転写箔が積層されていることを特徴とする請求項6または請求項7記載の化粧シート。
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