JP7312524B2 - 加飾シート、その製造方法、加飾シート原反、及び加飾樹脂成形品 - Google Patents
加飾シート、その製造方法、加飾シート原反、及び加飾樹脂成形品 Download PDFInfo
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Description
項1. 少なくとも、ブロッキング防止層と、基材層と、保護層とをこの順に備える積層体からなり、
前記ブロッキング防止層は、微粒子と熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物により構成されている、加飾シート。
項2. 前記ブロッキング防止層の厚みが、10μm以下である、項1に記載の加飾シート。
項3. 前記微粒子の粒子径が、0.5μm以上である、項1または2に記載の加飾シート。
項4. 前記熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂である、項1~3のいずれかに記載の加飾シート。
項5. 前記基材層が、アクリル樹脂またはABS樹脂により構成されている、項1~4のいずれかに記載の加飾シート。
項6. 前記基材層と前記保護層との間に絵柄層を有する、項1~5のいずれかに記載の加飾シート。
項7. 前記保護層は、前記基材層側から順に、第1の保護層、及び該第1の保護層上に部分的に設けられた第2の保護層を有する、項1~6のいずれかに記載の加飾シート。
項8. 前記ブロッキング防止層側の表面に、さらに支持体シートが積層されている、項1~7のいずれかに記載の加飾シート。
項9. 射出成形同時加飾法またはインサート成形法に用いるための、項1~8のいずれかに記載の加飾シート。
項10. 少なくとも、ブロッキング防止層と、基材層と、未硬化の保護層とをこの順に備える積層体からなり、
前記ブロッキング防止層は、微粒子と熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成されている、加飾シート原反。
項11. 少なくとも、微粒子と熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物により構成されているブロッキング防止層と、基材層と、未硬化の保護層とがこの順となるように積層して加飾シート原反を得る工程1と、
前記加飾シート原反を巻き取って巻取体を得る工程2と、
前記巻取体から加飾シート原反を巻き出して、前記未硬化の保護層を硬化させる工程3と、
を備える、少なくとも、ブロッキング防止層と、基材層と、保護層とをこの順に備える加飾シートの製造方法。
項12 少なくとも、成形樹脂層と、ブロッキング防止層と、基材層と、保護層とをこの順に備える積層体からなり、
前記ブロッキング防止層は、微粒子と熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成されている、加飾樹脂成形品。
本発明の加飾シートは、少なくとも、ブロッキング防止層と、基材層と、保護層とをこの順に備える積層体からなり、ブロッキング防止層が、微粒子と熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物により構成されていることを特徴とする。また、本発明の加飾シート原反は、少なくとも、ブロッキング防止層と、基材層と、未硬化の保護層とをこの順に備える積層体からなり、ブロッキング防止層が、微粒子と熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成されていることを特徴とする。すなわち、本発明の加飾シートは、本発明の加飾シート原反の未硬化の保護層を硬化させたものである。本発明の加飾シート及び加飾シート原反においては、このような構成を備えていることにより、製造工程におけるブロッキングを効果的に抑制することができ、さらに、成形樹脂層や支持体シートとの密着性に優れている。
本発明の加飾シートは、図1に示されるように、少なくとも、ブロッキング防止層2と、基材層1と、保護層3とがこの順に積層された積層構造を有する。
[基材層1]
基材層1は、本発明の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たす層である。基材層1としては特に限定されず、加飾シートの用途に応じて繊維質シート、樹脂シート、金属シート、木質系基材シート等を使用できるが、加飾樹脂成形品の製造に用いられる場合など、三次元成形性が要求される場合は、樹脂シート(樹脂フィルム)により形成されていることが好ましい。基材層1に使用される樹脂成分については、特に制限されず、三次元成形性や成形樹脂層との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある);アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)等が挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂またはABS樹脂が三次元成形性の観点から好ましい。基材層1を形成する樹脂成分としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、基材層1は、これらの単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種のシートによる複層シートで形成されていてもよい。
通常50~500μm程度、好ましくは75~200μm程度、さらに好ましくは100~150μm程度が挙げられる。基材層1の厚みが上記範囲内であると、加飾シートに対してより一層優れた三次元成形性、意匠性などを備えさせることができる。
本発明の加飾シートにおいて、ブロッキング防止層2は、加飾シートの製造工程におけるブロッキングを効果的に抑制し、さらに、成形樹脂層や支持体シートとの優れた密着性を発揮させるために設けられる層である。ブロッキング防止層2は、微粒子と熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成されている。
絵柄層4は、必要に応じて、基材層1の上に設けられ、加飾シートに装飾性を与える層である。絵柄層4は、例えば、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。絵柄層4によって形成される模様は、特に制限されず、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様など挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様も挙げられる。これらの模様は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
本発明の加飾シートにおいて、保護層3は、加飾シートの耐傷付き性、耐候性などを高めることなどを目的として設けられる層である。本発明の加飾シートにおいて、保護層3は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されていることが好ましい。電離放射線硬化性樹脂としては、後述のものと同じものが挙げられる。
第1の保護層31は、加飾シートの耐傷付き性、耐候性などを高め、さらに後述の第2の保護層32と共に加飾シートに高い質感を付与するために設けられる層である。第1の保護層31は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成されていることが好ましい。第1の保護層31の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、第1の保護層31の形成において好適に使用される。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端あるいは側鎖に(メタ)アクリレートを2個以上有するものであれば、特に制限されない。また、当該(メタ)アクリレートは、架橋、硬化を良好にするという観点から、1分子当たりの官能基の数として、好ましくは2~6個が挙げられる。多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
多官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、多官能ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にウレタン結合を有し、かつ末端あるいは側鎖に(メタ)アクリレートを2個以上有するものであれば、特に制限されない。このような多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。また、多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、架橋、硬化を良好にするという観点から、1分子当たりの官能基の数として、好ましくは2~12個が挙げられる。また、多官能(メタ)アクリレートは、シリコーン変性されたものであってもよい。多官能(メタ)アクリレートは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
第2の保護層32は、本発明の加飾シートにおいて、第1の保護層31の一部の上に設けられており、これにより形成された凹凸形状によって、加飾シートに高い質感を付与している。また、第2の保護層32と第1の保護層31との間に艶差を設けることよって、加飾シートに高い質感を付与することができる。例えば、第2の保護層32を高艶状態(グロス)とし、第1の保護層31を低艶状態(マット)とし、両層間、ひいては第2の保護層32の形成部と非形成部との間に艶差を発現させることにより、加飾シートに高い質感を付与することができる。
プライマー層5は、保護層3とその下に位置する層との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて含まれる層である。プライマー層5は、樹脂により形成することができる。
透明フィルム層6は、本発明の加飾シートの耐傷付き性や耐候性を高めると共に、成形性を高める支持体としての役割を果たし、必要に応じて、基材層1や絵柄層4などの上に設けられる。透明フィルム層6は、樹脂フィルムにより形成される。透明フィルム層6を備えることで成形性が高まり、加飾シートを三次元成形した際に保護層3にクラックが生じ難くなる。透明フィルム層6を形成する樹脂フィルムとしては、加飾シートの成形性を高められると共に、絵柄層4の上に設けられる場合において絵柄層4による意匠を隠蔽しないものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、またはアクリル樹脂などのフィルムが挙げられる。
隠蔽層は、基材層1の色の変化やバラツキを抑制する目的で、基材層1と保護層3との間、絵柄層4を設ける場合であれば基材層1と絵柄層4との間などに、必要に応じて設けられる層である。
前述した本発明の加飾シートは、以下の工程1~3を含む方法により製造することができる。
少なくとも、微粒子と熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物により構成されているブロッキング防止層2と、基材層1と、未硬化の保護層とがこの順となるように積層して加飾シート原反を得る工程1
加飾シート原反を巻き取って巻取体を得る工程2
巻取体から加飾シート原反を巻き出して、未硬化の保護層を硬化させる工程3。
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに成形樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも、成形樹脂層7と、ブロッキング防止層2と、基材層1と、保護層3とをこの順に備える積層体からなり、ブロッキング防止層2が、微粒子と熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成されていることを特徴とする。本発明の加飾樹脂成形品では、必要に応じて、前述の絵柄層4、プライマー層5、透明フィルム層6、隠蔽層などの少なくとも1層がさらに設けられていてもよい(図4を参照)。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する一体化工程。
この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、例えば基材層又は支持体シートとしてABS樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常120~200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180~320℃程度とすることができる。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、加飾シートのブロッキング防止層の表面が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する予備成形工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂を射出、充填して固化させることにより樹脂成形体を形成し、樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる一体化工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す取出工程。
これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<実施例1~2>
表1に記載のアクリル樹脂フィルム(厚み125μm)またはABS樹脂フィルム(厚み100μm)を基材層として用いた。基材層の一方側の表面に、表1に記載の組成を備える樹脂組成物を塗布して、ブロッキング防止層(微粒子を含む熱可塑性樹脂)を形成した。なお、3Sの含有量は、6質量%である。次に、基材層の他方側の表面に、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂の混合樹脂(質量比50:50)を含むインキを用いて、グラビア印刷により絵柄層(厚み5μm)を形成した。絵柄層の模様は、木目模様とした。次に、絵柄層の上に電離放射線樹脂(ポリカーボネート系ウレタンアクリレート)を含む樹脂組成物を用いて、グラビア印刷により未硬化の第1の保護層(厚み3μm)を形成した。次に、未硬化の第1の保護層の上に、電離放射線樹脂:ペンタエリスリトールトリアクリレート30質量部と非架橋性のアクリル樹脂70質量部とを含む樹脂組成物を用いて、絵柄層の木目模様の導管部に対応する位置が非形成部となるように、木目模様と同調した第2の保護層(厚み3μm)をパターン状に形成して加飾シート原反を得た。次に、加飾シート原反(長さ500m)を円断面の直径が7cmの円柱状のコア管に巻き取った。得られた巻取体から、加飾シート原反を巻き出し、加飾シート原反の第2の保護層側から電子線を照射(加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad))して、第1の保護層及び第2の保護層を硬化させ、ブロッキング防止層/基材層/絵柄層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された加飾シートを得た。なお、第1の保護層の表面に占める第2の保護層が形成されている部分の面積の合計割合は、約50%であった。
表1に記載のアクリル樹脂フィルム(厚み125μm)またはABS樹脂フィルム(厚み100μm)を基材層として用いた。基材層の一方側の表面に、塩化ビニル樹脂/酢酸ビニル-アクリル系共重合体(質量比50:50)を含むインキを用いて、グラビア印刷により絵柄層(厚み5μm)を形成した。絵柄層の模様は、木目模様とした。次に、絵柄層の上に電離放射線樹脂(ポリカーボネート系ウレタンアクリレート)を含む樹脂組成物を用いて、グラビア印刷により未硬化の第1の保護層(厚み3μm)を形成した。次に、未硬化の第1の保護層の上に、電離放射線樹脂:ペンタエリスリトールトリアクリレート30質量部と非架橋性のアクリル樹脂70質量部とを含む樹脂組成物を用いて、絵柄層の木目模様の導管部に対応する位置が非形成部となるように、木目模様と同調した第2の保護層(厚み3μm)をパターン状に形成して加飾シート原反を得た。次に、加飾シート原反(長さ500m)を円断面の直径が7cmの円柱状のコア管に巻き取った。得られた巻取体から、加飾シート原反を巻き出し、加飾シート原反の第2の保護層側から電子線を照射(加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad))して、第1の保護層及び第2の保護層を硬化させた。次に、基材層の表面に、表1に記載の組成を有するヒートシール層(厚み4μm)を設けて、ヒートシール層/基材層/絵柄層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された加飾シートを得た。なお、第1の保護層の表面に占める第2の保護層が形成されている部分の面積の合計割合は、約50%であった。
表1に記載のアクリル樹脂フィルム(厚み125μm)またはABS樹脂フィルム(厚み100μm)を基材層として用いた。基材層の一方側の表面に、表1に記載の組成を備える樹脂組成物(微粒子を含む2液硬化型樹脂)を塗布して、ブロッキング防止層を形成した。なお、4Sの含有量は、25質量%である。次に、基材層の他方側の表面に、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂の混合樹脂(質量比50:50)を含むインキを用いて、グラビア印刷により絵柄層(厚み5μm)を形成した。絵柄層の模様は、木目模様とした。次に、絵柄層の上に電離放射線樹脂(ポリカーボネート系ウレタンアクリレート)を含む樹脂組成物を用いて、グラビア印刷により未硬化の第1の保護層(厚み3μm)を形成した。次に、未硬化の第1の保護層の上に、電離放射線樹脂:ペンタエリスリトールトリアクリレート30質量部と非架橋性のアクリル樹脂70質量部とを含む樹脂組成物を用いて、絵柄層の木目模様の導管部に対応する位置が非形成部となるように、木目模様と同調した第2の保護層(厚み3μm)をパターン状に形成して加飾シート原反を得た。次に、加飾シート原反(長さ500m)を円断面の直径が7cmの円柱状のコア管に巻き取った。得られた巻取体から、加飾シート原反を巻き出し、加飾シート原反の第2の保護層側から電子線を照射(加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad))して、第1の保護層及び第2の保護層を硬化させ、ブロッキング防止層/基材層/絵柄層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された加飾シートを得た。なお、第1の保護層の表面に占める第2の保護層が形成されている部分の面積の合計割合は、約50%であった。
前述の加飾シート製造工程において、加飾シート原反を巻き取った際のブロッキング防止性能を、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
〇:ブロッキングは見られず、巻き出し後の第1の保護層及び第2の保護層の状態に変化がない。
×ブロッキングが見られ、巻き出し後の第1の保護層及び第2の保護層の状態に変化がある。
上記の加飾シートを射出成形同時加飾法に供して、射出樹脂との密着性を以下の基準により評価した。なお、射出樹脂としては、ABS樹脂を用い、射出成形同時加飾法の具体的な条件は以下の通りとした。結果を表1に示す。
評価方法:加飾樹脂成形品の表面にカッターナイフを用いて間隔1mmで縦11本、横11本の切れ込みを入れ、縦10マス×横10マスの碁盤目状の切れ込みを形成し、剥がれの発生の程度を観察した。
○:剥がれ発生無し
×:剥がれ発生有り(50マス未満)
××:剥がれ発生有り(50マス以上)
〇:加飾シートが射出樹脂から全く剥がれない
×:切れ込みを入れた時に僅かに剥がれが見られるが、テープでは剥がれない
××:切れ込みを入れただけで射出樹脂から加飾シートが剥がれる
上記の加飾シートの裏面側に、接着剤層を介して支持体シートを積層して、以下の基準により、加飾シートと支持体シートとの密着性を評価した。なお、支持体シートとしては、ABS樹脂フィルム(厚さ350μm)を用い、具体的な積層条件は以下の通りとした。結果を表1に示す。加飾シートと支持体シートを、ポリエステルポリオール及びイソシアネート硬化剤からなるポリエステル系2液硬化型の接着剤を用いたドライラミネートにより、加飾シートの端部が密着しないようにして積層し、その後、40℃、72時間養生して、前記の端部から加飾シートを手で剥離させた。
〇:加飾シートと支持体シートが全く剥がれない
×:端部より剥離が生じる
(樹脂)
AE:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂の混合樹脂(質量比50:50)
AP:アクリルポリオール樹脂+イソシアネート化合物(硬化剤)
(微粒子)
3S:粒子径3μmのシリカ粒子
4S:粒子径4μmのシリカ粒子
一方、ブロッキング防止層の代わりにヒートシール層を設けた比較例1~2の加飾シートでは、射出樹脂や支持体シートとの密着性には優れていたが、製造工程におけるブロッキングを防止できなかった。特に、基材層にアクリル樹脂を用いた比較例1では、ブロッキング防止性能が非常に低かった。
また、ブロッキング防止層を2液硬化型樹脂により構成した比較例3~4の加飾シートでは、ブロッキングは効果的に防止できたが、射出樹脂や支持体シートとの密着性に劣っていた。特に、基材層にアクリル樹脂を用いた比較例3では、射出樹脂との密着性が特に劣っていた。
2…ブロッキング防止層
3…保護層
31…第1の保護層
32…第2の保護層
4…絵柄層
5…プライマー層
6…透明フィルム層
7…成形樹脂層
Claims (11)
- 少なくとも、ブロッキング防止層と、基材層と、保護層とをこの順に備える積層体からなり、
前記保護層は、前記基材層側から順に、第1の保護層、及び前記第1の保護層上に部分的に設けられ前記保護層の表面に凹凸形状を形成する第2の保護層を有し、
前記ブロッキング防止層は、微粒子と熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物により構成されており、前記熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含み、前記熱可塑性樹脂中の前記アクリル樹脂の割合は、20~70質量%である、加飾シート。 - 前記ブロッキング防止層の厚みが、10μm以下である、請求項1に記載の加飾シート。
- 前記微粒子の粒子径が、0.5μm以上である、請求項1または2に記載の加飾シート。
- 前記基材層が、アクリル樹脂またはABS樹脂により構成されている、請求項1~3のいずれかに記載の加飾シート。
- 前記基材層と前記保護層との間に絵柄層を有する、請求項1~4のいずれかに記載の加飾シート。
- 前記第1の保護層は、艶消し剤を含む、請求項1~5のいずれかに記載の加飾シート。
- 前記ブロッキング防止層側の表面に、さらに支持体シートが積層されている、請求項1~6のいずれかに記載の加飾シート。
- 射出成形同時加飾法またはインサート成形法に用いるための、請求項1~7のいずれかに記載の加飾シート。
- 少なくとも、ブロッキング防止層と、基材層と、未硬化の保護層とをこの順に備える積層体からなり、
前記保護層は、前記基材層側から順に、第1の保護層、及び前記第1の保護層上に部分的に設けられ前記保護層の表面に凹凸形状を形成する第2の保護層を有し、
前記ブロッキング防止層は、微粒子と熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成されており、前記熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含み、前記熱可塑性樹脂中の前記アクリル樹脂の割合は、20~70質量%である、加飾シート原反。 - 少なくとも、微粒子と熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物により構成されているブロッキング防止層と、基材層と、未硬化の保護層とがこの順となるように積層して加飾シート原反を得る工程1と、
前記加飾シート原反を巻き取って巻取体を得る工程2と、
前記巻取体から加飾シート原反を巻き出して、前記未硬化の保護層を硬化させる工程3と、
を備えており、
前記ブロッキング防止層に含まれる前記熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含み、
前記熱可塑性樹脂中の前記アクリル樹脂の割合は、20~70質量%であり、少なくとも、ブロッキング防止層と、基材層と、保護層とをこの順に備え、
前記保護層は、前記基材層側から順に、第1の保護層、及び前記第1の保護層上に部分的に設けられ前記保護層の表面に凹凸形状を形成する第2の保護層を有する加飾シートの製造方法。 - 少なくとも、成形樹脂層と、ブロッキング防止層と、基材層と、保護層とをこの順に備える積層体からなり、
前記保護層は、前記基材層側から順に、第1の保護層、及び前記第1の保護層上に部分的に設けられ前記保護層の表面に凹凸形状を形成する第2の保護層を有し、
前記ブロッキング防止層は、微粒子と熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成されており、
前記ブロッキング防止層に含まれる前記熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含み、
前記熱可塑性樹脂中の前記アクリル樹脂の割合は、20~70質量%である、加飾樹脂成形品。
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