1.転写シート
本開示の転写シートは、少なくとも、転写層と、転写用基材と、凹部賦形層とがこの順に積層された転写シートであって、凹部賦形層は、多段状に形成されていることを特徴とする。本開示の転写シートでは、このような構成を有することにより、樹脂成形品に転写させる転写層の表面に好適に凹凸形状を賦形できる。さらに、後述の通り、多段状の凹部賦形層の段数や高さなどを調整することによって、転写層の表面に賦形される凹部形状にバリエーション(例えば、凹部の形状が多段状、円錐状、角錐状など)を設けることができる。なお、後述の通り、本開示の転写シートは、装飾層などを有していなくてもよく、例えば透明であってもよい。以下、本開示の転写シートについて詳述する。
本明細書において、「以上」、「以下」と明記している箇所を除き、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
転写シートの積層構造
本開示の転写シート10は、少なくとも、転写層9と、転写用基材1と、凹部賦形層2とをこの順に有する。凹部賦形層2の形状は、多段状である。転写層に形成された凹凸形状によって様々な意匠を表現する観点から、凹部賦形層2は、転写用基材1の上に複数配置されていることが好ましい。転写シート10の転写によって、転写シート10に設けられた複数の凹部賦形層2が転写基材層1に埋没し、転写層9の表面に凹部賦形層2に対応する凹部が複数形成されることで、凹凸形状を利用した様々な意匠を樹脂成形品表面に付与することができる。また、前記の通り、多段状の凹部賦形層2の段数や高さなどを調整することによって、転写層9の表面に賦形される個々の凹部の形状を、多段状(図9)、円錐状、角錐状(図10)などとすることができ、様々な凹部形状を利用した多様な意匠を樹脂成形品表面に付与することができる。
転写用基材1と転写層9との間には、転写用基材1と転写層9との剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて、離型層3を設けてもよい。また、転写調基材1と凹部賦形層2との間には、転写シートのブロッキングを防止するため、ブロッキング防止層4を有していてもよい。本開示の転写シート10においては、転写用基材1、凹部賦形層2、必要に応じて設けられる離型層3、必要に応じて設けられるブロッキング防止層4は、支持体を構成しており、当該支持体は、転写シート10を転写し、転写層9を成形樹脂層12に積層させた後に、剥離除去される。
後述の通り、凹部賦形層2は、転写シート10の転写の際に、転写層9の表面に凹部を形成するための層である。すなわち、転写シート10を金型内に配置し、転写層9側から金型100内に流動状態の樹脂を射出し、樹脂を固化させて、射出成型と同時に樹脂成形物(成形樹脂層12)の外表面に転写シート10を一体化させる転写工程において、転写シート10に設けられた凹部賦形層2が転写基材層1に埋没し、転写層9の表面に凹部賦形層2の形状に対応する凹部11が形成される(図9、10を参照)。したがって、本開示の転写シート10においては、転写層9の表面に凹凸形状を形成するために、金型に当該凹凸形状に対応した凹凸形状を設ける必要が無い。
転写層9は、保護層5、プライマー層6、装飾層7、接着層8などのうち少なくとも1層を含むことができる。転写層9は、少なくとも保護層5を含むことが好ましい。保護層5の密着性を向上させる観点から、保護層5の転写用基材1側とは反対側に、プライマー層6を含むことが好ましい。また、本開示の転写シート10は、転写シート10に装飾性を付与することなどを目的として、装飾層7を含んでもよい。また、成形樹脂層12の密着性を高めることなどを目的として、転写層9の転写用基材1側とは反対側の表面に、必要に応じて、接着層8を有していてもよい。本開示の転写シート10において、転写層9が成形樹脂層12に転写されて本開示の樹脂成形品20となる。
本開示の転写シートの積層構造として、保護層/転写用基材/凹部賦形層がこの順に積層された積層構造;保護層/離型層/転写用基材/凹部賦形層がこの順に積層された積層構造;保護層/離型層/転写用基材/ブロッキング防止層/凹部賦形層がこの順に積層された積層構造;プライマー層/保護層/離型層/転写用基材/ブロッキング防止層/凹部賦形層がこの順に積層された積層構造;装飾層/プライマー層/保護層/離型層/転写用基材/ブロッキング防止層/凹部賦形層がこの順に積層された積層構造;接着層/装飾層/プライマー層/保護層/離型層/転写用基材/ブロッキング防止層/凹部賦形層がこの順に積層された積層構造などが挙げられる。図1に、本開示の転写シートの積層構造の一態様として、保護層/転写用基材/凹部賦形層がこの順に積層された転写シートの一形態の断面構造の模式図を示す。また、図3に、本開示の転写シートの積層構造の一態様として、保護層/離型層/転写用基材/凹部賦形層がこの順に積層された転写シートの一形態の断面構造の模式図を示す。また、図4に、本開示の転写シートの積層構造の一態様として、保護層/離型層/転写用基材/ブロッキング防止層/凹部賦形層がこの順に積層された転写シートの一形態の断面構造の模式図を示す。また、図5に、本開示の転写シートの積層構造の一態様として、プライマー層/保護層/離型層/転写用基材/ブロッキング防止層/凹部賦形層がこの順に積層された転写シートの一形態の断面構造の模式図を示す。また、図6に、本開示の転写シートの積層構造の一態様として、装飾層/プライマー層/保護層/離型層/転写用基材/ブロッキング防止層/凹部賦形層がこの順に積層された転写シートの一形態の断面構造の模式図を示す。また、図7に、本開示の転写シートの積層構造の一態様として、接着層/装飾層/プライマー層/保護層/離型層/転写用基材/ブロッキング防止層/凹部賦形層がこの順に積層された転写シートの一形態の断面構造の模式図を示す。なお、「/」は、層間の区切りを意味している。
転写シートを形成する各層の組成
[支持体]
本開示の転写シートは、支持体として、転写用基材1及び凹部賦形層2を有しており、必要に応じて、離型層3、ブロッキング防止層4をさらに有する。転写用基材1の上に形成された、保護層5、プライマー層6、装飾層7、接着層8などのうち少なくとも1層が転写層9を構成する。本開示においては、転写シートと成形樹脂を一体成形した後に、支持体と転写層9の界面が引き剥がされて、樹脂成形品が得られる。
(凹部賦形層2)
凹部賦形層2は、転写用基材1の上(転写層9側とは反対側)に配置されている。本開示において、凹部賦形層2は、転写シート10の転写の際に、転写層9の表面に凹部11を形成するための層である。すなわち、転写シート10を金型100内に配置し(図11(a))、転写層9側から金型100内に流動状態の樹脂を射出し(図11(b))、樹脂を固化させて、射出成型と同時に樹脂成形物(成形樹脂層12)の外表面に転写シート10を一体化させる(図11(c))転写工程において、転写シート10に設けられた凹部賦形層2が転写基材層1に埋没し、転写層9の表面に凹部賦形層2の形状に対応する凹部11が形成される(図9、10を参照)。したがって、本開示の転写シート10においては、転写層9の表面に凹凸形状を形成するために、金型に当該凹凸形状に対応した凹凸形状を設ける必要が無い。
樹脂成形品20の意匠性の観点から、凹部賦形層2は、転写用基材1の上に複数配置されていることが好ましい。転写シート10の転写によって、転写シート10に設けられた複数の凹部賦形層2が転写基材層1に埋没し、転写層9の表面に凹部賦形層2に対応する凹部が複数形成されることで、凹凸形状による意匠を樹脂成形品表面に付与することができる。また、前記の通り、多段状の凹部賦形層2の段数や高さなどを調整することによって、転写層9の表面に賦形される個々の凹部の形状を、多段状(図9)、円錐状、角錐状(図10)などとすることができ、様々な凹部形状による意匠を樹脂成形品表面に付与することができる。
図2には、図1の転写シートを平面視した場合の模式図を示しており、凹部賦形層2の段数は3段、凹部賦形層2の全体の高さH、1段目の高さh1、2段目の高さh2、3段目の高さh3、1段目の幅w1、2段目の幅w2、3段目の幅w3である場合を例示している。
凹部賦形層2の段数については特に制限されないが、転写層9の表面に賦形される個々の凹部の形状を多段状とする場合には、各段の幅w、高さhなどにもよるが、例えば2~5段程度とすることが好ましい。また、転写層9の表面に賦形される個々の凹部の形状を円錐状や角錐状(凹部賦形層2の各段の形状が凹部に反映されずに、凹部11が滑らかな斜面になる。図10参照)とする場合には、各段の幅wにもよるが、例えば10段以上とすることが好ましい。
転写シート10の転写によって転写層9の表面に好適に凹部11を賦形する観点から、凹部賦形層2の高さH(全体の高さ)は、好ましくは約20μm以上、より好ましくは約30μm以上、好ましくは約35μm以上である。また、凹部賦形層2の高さHは、好ましくは約300μm以下、より好ましくは約250μm以下、好ましくは約200μm以下である。凹部賦形層2の高さHの好ましい範囲としては、20~300μm程度、20~250μm程度、20~200μm程度、30~300μm程度、30~250μm程度、30~200μm程度、35~300μm程度、35~250μm程度、35~200μm程度などが挙げられる。
凹部賦形層2の各段の高さhについては特に制限されないが、転写層9の表面に賦形される個々の凹部の形状を多段状とする場合には、各段の高さhは、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上、さらに好ましくは約20μm以上である。また、この場合、各段の高さhは、好ましくは約35μm以下、より好ましくは約30μm以下、さらに好ましくは約25μm以下である。この場合の各段の高さhの好ましい範囲としては、10~35μm程度、10~30μm程度、10~25μm程度、15~35μm程度、15~30μm程度、15~25μm程度、20~35μm程度、20~30μm程度、20~25μm程度が挙げられる。また、転写層9の表面に賦形される個々の凹部の形状を円錐状や角錐状とする場合には、各段の高さhは、好ましくは約30μm以下、より好ましくは約25μm以下、さらに好ましくは約20μm以下である。また、この場合、各段の高さhは、例えば好ましくは約10μm以上である。この場合の各段の高さhの好ましい範囲としては、10~30μm程度、10~25μm程度、10~20μm程度が挙げられる。
また、凹部賦形層2の各段の幅wについても特に制限されないが、転写層9の表面に賦形される個々の凹部の形状を多段状とする場合には、各段の幅wは、好ましくは約450μm以上、より好ましくは約800μm以上、さらに好ましくは約900μm以上である。また、この場合、各段の幅wは、好ましくは約2000μm以下、より好ましくは約1500μm以下、さらに好ましくは約1000μm以下である。この場合の各段の幅wの好ましい範囲としては、450~2000μm程度、450~1500μm程度、450~1000μm程度、800~2000μm程度、800~1500μm程度、800~1000μm程度、900~2000μm程度、900~1500μm程度、900~1000μm程度が挙げられる。また、転写層9の表面に賦形される個々の凹部の形状を円錐状や角錐状とする場合には、各段の幅wは、好ましくは約100μm以上、より好ましくは約150μm以上、さらに好ましくは約200μm以上である。また、この場合、各段の幅wは、好ましくは約450μm以下、より好ましくは約300μm以下、さらに好ましくは約250μm以下である。この場合の各段の幅wの好ましい範囲としては、100~450μm程度、100~300μm程度、100~250μm程度、150~450μm程度、150~300μm程度、150~250μm程度、200~450μm程度、200~300μm程度、200~250μm程度が挙げられる。
本開示においては、多段状の凹部賦形層2の段数、高さ、幅を例えば上記の範囲で調整することによって、転写層9の表面に賦形される個々の凹部の形状を、多段状、円錐状、角錐状などとすることができ、様々な凹部形状による意匠を樹脂成形品表面に付与することができる。例えば、凹部賦形層2の各段の高さhが小さければ、形成される凹部に段が形成されにくく、円錐状や角錐状など、凹部の斜面が滑らかになりやすい。
なお、図1~図7には、各凹部賦形層2が互いに独立して配置されている態様を例示しているが、各凹部賦形層2は、少なくとも一部において互いに連結されていてもよい。各凹部賦形層2が連結されている態様として、各凹部賦形層2を構成する複数の凸部(多段状の凸部)が互いに連結されて凹凸形状の1つの層を構成している態様が挙げられる。
各凹部賦形層2が配置されるパターンについては、特に制限されない。例えば、多数の各凹部賦形層2をマトリックス状に配置することにより、表面に凹部11がマトリックス状に形成された樹脂成形品20が得られる。
凹部賦形層2は、硬化性樹脂の硬化物により形成されていることが好ましい。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化性ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
上記樹脂には、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤を添加できる。例えば、硬化剤としてはイソシアネート、有機スルホン酸塩等を不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等に添加でき、有機アミン等をエポキシ樹脂に添加できる。メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、及びアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤は、不飽和ポリエステル樹脂に添加できる。
また、凹部賦形層2を形成する電離放射線硬化性樹脂については、後述する保護層5で詳述するものを使用することができる。凹部賦形層2は、電離放射線硬化性樹脂の硬化物により形成されていることが好ましい。
凹部賦形層2は、硬化性樹脂を、ロールコート法、グラビアコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法や、インクジェットプリンターを利用した印刷法で塗布し、乾燥及び硬化させることにより形成することができる。これらの中でも、各段の幅の狭い凹部賦形層2を形成する観点から、インクジェットプリンターを利用した印刷法が特に好ましい。
(転写用基材1)
本開示において、転写用基材1は、転写シートにおいて支持部材としての役割を果たす支持体として用いられる。本開示で用いられる転写用基材1は、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが使用される。該熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂);塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
転写シート10の転写によって、樹脂成形品12に転写させる転写層9の表面に好適に凹部11を賦形する観点から、本開示においては、転写用基材1として、ポリエステルシートを用いることが好ましい。ポリエステルシートを構成するポリエステル樹脂とは、多価カルボン酸と、多価アルコールとから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを示し、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などを好ましく挙げることができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)が、耐熱性や寸法安定性の点で特に好ましい。
本開示で転写用基材1として好適に用いられるポリエステルシートは、例えば以下のように製造される。まず上記のポリエステル系樹脂とその他の原料をエクストルーダーなどの周知の溶融押出装置に供給し、当該ポリエステル系樹脂の融点以上の温度に加熱し溶融する。次いで溶融ポリマーを押出しながら、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるよう急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。このシートを2軸方向に延伸してシート化し、熱固定を施すことで得られる。この場合、延伸方法は逐次2軸延伸でも同時2軸延伸でもよい。また、必要に応じ、熱固定を施す前又は後に再度縦及び/又は横方向に延伸してもよい。本開示においては十分な寸法安定性を得るため延伸倍率を面積倍率として7倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましく、3倍以下がさらに好ましい。この範囲内であれば、得られるポリエステルシートを転写シートに用いた場合、該転写シートが成形樹脂を射出する際の温度域で再び収縮せず、当該温度域で必要なシート強度を得ることができる。なお、ポリエステルシートは、上記のように製造してもよいし、市販のものを用いてもよい。
また、転写用基材1は、後述する離型層3を設ける場合、当該離型層3との密着性を向上させる目的で、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、転写用基材1の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。また、転写用基材1は、転写用基材1とその上に設けられる層との層間密着性の強化などを目的として、易接着層を形成するなどの処理を施してもよい。なお、ポリエステルシートとして市販のものを用いる場合には、該市販品は予め上記したような表面処理が施されたものや、易接着剤層が設けられたものも用いることができる。
転写シート10の転写によって、樹脂成形品12に転写させる転写層9の表面に好適に凹部11を賦形する観点から、転写用基材1の厚みは、好ましくは通常50~100μm程度であり、さらに好ましくは60~75μm程度である。転写用基材1としては、これら樹脂の単層シート、あるいは同種又は異種樹脂による複層シートを用いることができる。
(離型層3)
離型層3は、転写用基材1と転写層9との剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて、転写用基材1の転写層9が積層される側の表面に設けられる。離型層3は、全面を被覆(全面ベタ状)しているベタ離型層であってもよいし、一部に設けられるものであってもよい。通常は、剥離性を考慮して、ベタ離型層が好ましい。
離型層3は、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル-メラミン系樹脂が含まれる。)、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、電離放射線硬化性樹脂、あるいはこれらの樹脂を(メタ)アクリル酸やウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂組成物を用いて形成することができる。なかでも、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、これらの樹脂を形成するモノマーの共重合体、及びこれらをウレタン変性したものが好ましく、より具体的には、アクリル-メラミン系樹脂単独、アクリル-メラミン系樹脂含有組成物、ポリエステル系樹脂とエチレン及びアクリル酸の共重合体をウレタン変性したものとを混合した樹脂組成物、アクリル系樹脂とスチレン及びアクリルとの共重合体のエマルションとを混合した樹脂組成物などが挙げられる。これらの内、アクリル-メラミン系樹脂単独又はアクリル-メラミン系樹脂を50質量%以上含有する組成物で離型層3を構成することが特に好ましい。
(電離放射線硬化性樹脂)
離型層3の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで、電離放射線とは、後述の[保護層5]の欄に記載の通りである。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやカプロラクトン系ポリオールとポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらの中でも、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電離放射線硬化性樹脂を用いて離型層3を形成する場合、離型層3の形成は、例えば、微粒子と電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
本開示においては、調製された塗布液を、前記厚みとなるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて離型層3を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70~300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、離型層3の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと離型層3の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、離型層3の下に位置する層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による各層の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、離型層3の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5~300kGy(0.5~30Mrad)、好ましくは10~50kGy(1~5Mrad)の範囲で選定される。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190~380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈、紫外線発光ダイオード(LED-UV)等が挙げられる。
離型層3の厚みは、通常、0.01~5μm程度であり、好ましくは、0.05~3μm程度である。
[ブロッキング防止層4]
本開示の転写シートにおいて、ブロッキング防止層4は、転写シート及び樹脂成形品の製造工程におけるブロッキングを効果的に抑制するために、転写用基材1と凹部賦形層2との間に設けられる層である。ブロッキング防止層4は、微粒子と熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により形成することが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのアクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂);アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂;などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
微粒子としては、特に制限されず、ブロッキング防止剤として公知のものを用いることができる。微粒子としては、例えば、無機粒子、樹脂粒子などの粒子が挙げられる。
無機粒子としては、無機化合物により形成された粒子であれば、特に制限されず、例えば、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、アルミナ粒子、ガラスバルーン粒子が挙げられ、これらの中でも好ましくはシリカ粒子が挙げられる。無機粒子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、樹脂粒子としては、樹脂により形成された粒子であれば、特に制限されず、例えば、ウレタンビーズ、ナイロンビーズ、アクリルビーズ、シリコーンビーズ、スチレンビーズ、メラミンビーズ、ウレタンアクリルビーズ、ポリエステルビーズ、ポリエチレンビーズなどが挙げられる。樹脂粒子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
微粒子の粒子径としては、例えば0.5μm以上、好ましくは0.5~20μm程度、より好ましくは1~10μm程度が挙げられる。なお、本開示において、微粒子の粒子径は、島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2100を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する、噴射型乾式測定方式により測定される値である。
ブロッキング防止層4の微粒子の含有量としては、特に制限されないが、好ましくは1~15質量%程度、より好ましくは3~10質量%程度が挙げられる。
また、ブロッキング防止層4の厚みとしては、特に制限されないが、例えば10μm以下、好ましくは1~10μm程度、より好ましくは2~5μm程度が挙げられる。なお、本開示において、ブロッキング防止層4の厚みは、微粒子による凸部が存在していない部分における厚みを意味する。
微粒子の粒子径は、ブロッキング防止層4の厚みよりも大きいことが好ましい。例えば、微粒子の粒子径は、ブロッキング防止層4の厚みの1.1~5倍であることが好ましく、1.3~3倍であることがより好ましい。
[転写層9]
本開示の転写シートにおいては、支持体の上に形成された、保護層5、プライマー層6、装飾層7、接着層8、透明樹脂層7などのうち少なくとも1層が転写層9を構成している。本開示においては、転写シートと成形樹脂を一体成形した後に、支持体と転写層9の界面が引き剥がされ、転写シートの転写層9が成形樹脂層12に転写された樹脂成形品が得られる。以下、これらの各層について詳述する。
(保護層5)
保護層5は、樹脂成形品の耐傷付き性、耐薬品性などを高めるために、必要に応じて、樹脂成形品の表面に位置するようにして、転写層9に設けられる層である。保護層5を形成する樹脂としては、特に制限されず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを両立させる観点からは、電離放射線硬化性樹脂が好ましい。
保護層5を形成する熱硬化性樹脂としては、特に制限されず、例えば、アクリルポリオール;ポリエステルポリオール;ポリエステルウレタンポリオール、アクリル-ウレタンポリオールなどのウレタンポリオール;ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどのポリオレフィンポリオール;などのポリオール樹脂と硬化剤とを含む樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
保護層5を形成する熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂);アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂;などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
(電離放射線硬化性樹脂)
保護層5の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、保護層5の形成において好適に使用される。
なお、本開示の積層体において、保護層5の形成に電離放射線硬化性樹脂を用いる場合、積層体の状態での保護層5は硬化したものであってもよいし、未硬化または半硬化であってもよい。積層体の状態での保護層5が未硬化または半硬化である場合には、積層体を形成した後、保護層5を硬化させる。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであるポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやカプロラクトン系ポリオールとポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらの中でも、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート(ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなど)、ウレタン(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記した電離放射線硬化性樹脂の中でも、優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを両立させる観点からは、ポリカーボネート(メタ)アクリレート(ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなど)を用いることが好ましく、ポリカーボネート(メタ)アクリレート(ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなど)と、該ポリカーボネート(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートを併用することが特に好ましい。
ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールの水酸基の一部又は全てを(メタ)アクリレート(アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル)に変換して得られる。このエステル化反応は、通常のエステル化反応によって行うことができる。例えば、1)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとを、塩基存在下に縮合させる方法、2)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸無水物又はメタクリル酸無水物とを、触媒存在下に縮合させる方法、あるいは3)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸とを、酸触媒存在下に縮合させる方法などが挙げられる。
上記のポリカーボネートポリオールは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端あるいは側鎖に2個以上、好ましくは2~50個の、より好ましくは3~50個の水酸基を有する重合体である。このポリカーボネートポリオールの代表的な製造方法は、ジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とから重縮合反応による方法である。原料として用いられるジオール化合物(A)は、一般式 HO-R1-OHで表される。ここで、R1は、炭素数2~20の2価炭化水素基であって、基中にエーテル結合を含んでいてもよい。例えば、直鎖、又は分岐状のアルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基である。
ジオール化合物(A)の具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらジオールは、それを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
また、3価以上の多価アルコール(B)の例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトールなどのアルコール類を挙げることができる。さらに、これらの多価アルコールの水酸基に対して、1~5当量のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、あるいはその他のアルキレンオキシドを付加させた水酸基を有するアルコール類であってもよい。多価アルコールは、これらを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
カルボニル成分となる化合物(C)は、炭酸ジエステル、ホスゲン、又はこれらの等価体の中から選ばれるいずれかの化合物である。その具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの炭酸ジエステル類、ホスゲン、あるいはクロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニルなどのハロゲン化ギ酸エステル類などが挙げられる。これらは、単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
ポリカーボネートポリオールは、前記したジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とを、一般的な条件下で重縮合反応することにより合成される。例えば、ジオール化合物(A)と多価アルコール(B)との仕込みモル比は、50:50~99:1の範囲にあることが好ましく、また、カルボニル成分となる化合物(C)のジオール化合物(A)と多価アルコール(B)に対する仕込みモル比は、ジオール化合物及び多価アルコールの持つ水酸基に対して、0.2~2当量であることが好ましい。
前記の仕込み割合で重縮合反応した後のポリカーボネートポリオール中に存在する水酸基の当量数(eq./mol)は、1分子中に平均して3以上、好ましくは3~50、より好ましくは3~20である。この範囲であると、後述するエステル化反応によって必要な量の(メタ)アクリレート基が形成され、またポリカーボネート(メタ)アクリレート樹脂に適度な可撓性が付与される。なお、このポリカーボネートポリオールの末端官能基は、通常はOH基であるが、その一部がカーボネート基であってもよい。
以上説明したポリカーボネートポリオールの製造方法は、例えば、特開昭64-1726号公報に記載されている。また、このポリカーボネートポリオールは、特開平3-181517号公報に記載されているように、ポリカーボネートジオールと3価以上の多価アルコールとのエステル交換反応によっても製造することができる。
本開示に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートの分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。さらに好ましくは、2,000以上50,000以下であり、特に好ましくは、5,000~20,000である。
電離放射線硬化性樹脂組成物において、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、該ポリカーボネート(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートと共に用いることが好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートと該多官能(メタ)アクリレートの質量比としては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート:多官能(メタ)アクリレート=98:2~50:50であることがより好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が98:2より小さくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が、2成分の合計量に対して98質量%以下であると)、前述の耐久性、及び耐薬品性がさらに向上する。一方、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が50:50より大きくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が、2成分の合計量に対して50質量%以上となると)、三次元成形性がさらに向上する。好ましくは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が95:5~60:40である。
本開示においてポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される、該ポリカーボネート(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。ここで、2官能とは、分子内にエチレン性不飽和結合{(メタ)アクリロイル基}を2個有することをいう。官能基数としては、好ましくは2~6程度が挙げられる。
また、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでもよいが、優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを両立させる観点からは、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
ポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される上記の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される他の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
また、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される上記の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。以上述べた多官能(メタ)アクリレートオリゴマー及び多官能(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本開示においては、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される前記多官能(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本開示の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
保護層5を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中におけるポリカーボネート(メタ)アクリレートの含有量としては、特に制限されないが、優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを両立させる観点からは、好ましくは98~50質量%程度、より好ましくは90~65質量%程度が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂を用いて保護層5を形成する場合、保護層5の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
本開示においては、調製された塗布液を、所望の厚みとなるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて保護層5を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70~300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、保護層5の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと保護層5の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。また、転写用基材層の上に形成された離型層3と、保護層5と共に電子線によって硬化させる場合には、電子線の透過深さと離型層3及び保護層5の合計厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、離型層3の下に位置する転写用基材層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による転写用基材層の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、保護層5の架橋密度が十分な値となる量であり、好ましくは30~300kGy(3~30Mrad)、より好ましくは30~100kGy(3~10Mrad)が挙げられる。照射線量をこのよう範囲に設定することにより、保護層5を透過した電離放射線による保護層5の下に位置する層の劣化を抑制することができる。なお、上記例は多官能(メタ)アクリレートの官能基数を2とした場合であり、官能基数に応じて適切な照射線量が必要である。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190~380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈、紫外線発光ダイオード(LED-UV)等が挙げられる。
保護層5の厚みについては、特に制限されないが、好ましくは1~30μm程度、より好ましくは2~20μm程度、さらに好ましくは3~15μm程度が挙げられる。このような範囲の厚みを満たすと、積層体が優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを効果的に発揮し得る。また、保護層5を電離放射線硬化性樹脂により形成する場合、電離放射線硬化性樹脂組成物に対して電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。
[プライマー層6]
プライマー層6は、保護層5の密着性を向上させることなどを目的として、必要に応じて転写層9に設けられる層である。プライマー層6は、保護層5に隣接するように設けられることが好ましい。プライマー層6は、プライマー層形成用樹脂組成物により形成することができる。
プライマー層形成用樹脂組成物に用いる樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリオール及び/又はその硬化物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、好ましくは、ポリオール及び/又はその硬化物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びアクリルウレタン樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本開示において、プライマー層6は、ポリオールとウレタン樹脂を含む樹脂組成物により形成することが好ましい。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であればよく、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられ、好ましくはアクリルポリオールが挙げられる。
プライマー層6の形成にポリオールとウレタン樹脂とを使用する場合、これらの質量比(ポリオール:ウレタン樹脂)としては、好ましくは5:5~9.5:0.5程度、より好ましくは7:3~9:1程度が挙げられる。
ポリオールの硬化物としては、例えばウレタン樹脂が挙げられる。ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。
イソシアネートとしては、具体的には、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート;4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが挙げられる。イソシアネートを硬化剤として用いる場合、プライマー層形成用樹脂組成物におけるイソシアネートの含有量は特に制限されないが、密着性の観点や、後述の意匠層3などを積層する際の印刷適正の観点からは、上記のポリオール100質量部に対して3~45質量部が好ましく、3~25質量部がより好ましい。
上記ウレタン樹脂の中でも、架橋後の密着性の向上等の観点から、好ましくは、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせ;さらに好ましくは、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせが挙げられる。
上記アクリル樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂として、より具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
アクリルウレタン樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル-ウレタンブロック共重合が挙げられ、具体的には例えばアクリル-ポリエステルウレタンブロック共重合体が挙げられる。アクリル-ウレタンブロック共重合体におけるアクリルとウレタン比の比率については、特に制限されないが、例えば、アクリル/ウレタン比(質量比)として、9/1~1/9、好ましくは8/2~2/8が挙げられる。
プライマー層6の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.1~10μm程度、好ましくは1~10μm程度(すなわち、塗布量が例えば0.1~10g/m2程度、好ましくは1~10g/m2)が挙げられる。プライマー層6がこのような厚みを充足することにより、保護層5の密着性を効果的に高めることができる。
プライマー層6を形成する組成物には、備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができ、例えばマット剤としてはシリカ粒子や水酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
プライマー層6は、プライマー層形成用樹脂組成物を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法とは、薄いシート(フィルム基材層)にプライマー層6や接着層の塗膜を形成し、その後に積層体中の対象となる層表面に被覆する方法である。
プライマー層6を保護層5の表面に形成する際には、硬化後の保護層5の上に形成してもよい。また、保護層5を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物の層の上にプライマー層形成用組成物からなる層を積層してプライマー層6を形成した後、電離放射線硬化性樹脂からなる層に電離放射線を照射し、電離放射線硬化性樹脂からなる層を硬化させて保護層5を形成してもよい。
[装飾層7]
装飾層7は、樹脂成形品に装飾性を付与するために、必要に応じて設けられる層である。装飾層7は、通常、絵柄層及び/又は隠蔽層により構成される。ここで、絵柄層は、模様や文字等とパターン状の絵柄を表現するために設けられる層であり、隠蔽層は、通常全面ベタ層であり成形樹脂等の着色等を隠蔽するために設けられる層である。隠蔽層は、絵柄層の絵柄を引き立てるために絵柄層の内側に設けてもよく、また隠蔽層単独で装飾層7を形成してもよい。
絵柄層の絵柄については、特に制限されないが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字等からなる絵柄が挙げられる。
装飾層7は、着色剤、バインダー樹脂、及び溶剤又は分散媒を含む印刷インキを用いて形成される。
装飾層7の形成に用いられる印刷インキの着色剤としては、特に制限されないが、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、錫、チタン、リン化鉄、銅、金、銀、真鍮等の金属、合金、又は金属化合物の鱗片状箔粉からなるメタリック顔料;マイカ状酸化鉄、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、二酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料;アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸バリウム、硫化亜鉛、硫化カルシウム等の蛍光顔料;二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色無機顔料;亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノンイエロー、ハンザイエローA、キナクリドンレッド、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む)等が挙げられる。これらの着色剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、装飾層7の形成に用いられる印刷インキのバインダー樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、装飾層7の形成に用いられる印刷インキの溶剤又は分散媒としては、特に制限されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等が挙げられる。これらの溶剤又は分散媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、装飾層7の形成に使用される印刷インキには、必要に応じて、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、滑剤等が含まれていてもよい。
装飾層7は、例えば保護層5やプライマー層6上など隣接する層の上に、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の印刷法によって形成することができる。また、装飾層7を絵柄層及び隠蔽層の組み合わせとする場合には、一方の層を積層させて乾燥させた後に、もう一方の層を積層させて乾燥させればよい。
装飾層7の厚さについては、特に制限されないが、例えば、1~40μm、好ましくは3~30μmが挙げられる。
装飾層7は金属薄膜層であってもよい。金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。金属薄膜層の形成方法は特に制限されず、例えば上記の金属を用いた、真空蒸着法などの蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。また、隣接する層との密着性を向上させるため、金属薄膜層の表面や裏面には公知の樹脂を用いたプライマー層を設けてもよい。
[接着層8]
接着層8は、転写層9と成形樹脂層12との密着性を向上させることなどを目的として、装飾層7などの裏面(成形樹脂層12側)に必要に応じて設けられる層である。接着層8を形成する樹脂としては、これらの層間の密着性や接着性を向上させることができるものであれば、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層8は必ずしも必要な層ではないが、本開示の転写シートを、例えば後述する真空圧着法など、予め用意された樹脂成形体上へ貼着による加飾方法に適用することを想定した場合は、設けられていることが好ましい。真空圧着法に用いる場合、上記した各種の樹脂のうち、加圧又は加熱により接着性を発現する樹脂として慣用のものを使用して接着層8を形成することが好ましい。
接着層8の厚みは、特に制限されないが、例えば、0.1~30μm程度、好ましくは0.5~20μm程度、さらに好ましくは1~8μm程度が挙げられる。
2.樹脂成形品及びその製造方法
本開示の樹脂成形品は、本開示の転写シートと成形樹脂層とを一体化させることにより成形されてなるものである。具体的には、当該転写シートの支持体とは反対側に成形樹脂層12を転写することにより、少なくとも成形樹脂層12と、転写層9と、転写用基材1と、凹部賦形層2とがこの順に積層された、転写用基材付き樹脂成形品21が得られる(例えば図8を参照)。次に、転写用基材付き樹脂成形品21から支持体を剥離することにより、少なくとも成形樹脂層12と転写層9とが積層された本開示の樹脂成形品が得られる(例えば図9を参照)。
本開示の樹脂成形品において、転写シート10の凹部賦形層の高さ(μm)に対する、樹脂成形品の転写層(例えば保護層)に形成にされた凹部(凹部賦形層が転写によって転写層側に埋没することにより形成された凹部)の深さ(μm)の割合(賦形率)(%)としては、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。転写シート10の凹部賦形層の高さ(μm)と、樹脂成形品の転写層(例えば保護層)に形成にされた凹部の深さ(μm)とが同一であれば、賦形率は100%となる。
本開示の樹脂成形品は、以下の工程を備える製造方法により製造することができる。
転写シートを金型内に配置し(図11(a))、転写層側から金型内に流動状態の樹脂を射出し(図11(b))、樹脂を固化させて、射出成型と同時に樹脂成形物の外表面に転写シートを一体化させる(図11(c))転写工程。
転写工程において、転写シートに設けられた凹部賦形層が転写基材層に埋没し、転写層の表面に凹部賦形層の形状に対応する凹部11が形成される。
転写工程で得られた転写用基材付き樹脂成形品21から、転写用基材を剥離することにより、転写層の表面に凹部11が形成された樹脂成形品(図9)を得る。
転写シートを例えば射出成形同時転写加飾法に適用する場合、本開示の樹脂成形品の製造方法としては、例えば以下の工程(1)~(5)を含む方法が挙げられる。
(1)まず、上記転写用転写シートの転写層9側(凹部賦形層2側とは反対側)を金型内に向けて、熱盤によって転写層9側から転写シートを加熱する工程、
(2)該転写シートを金型内形状に沿うように予備成形(真空成形)して金型内面に密着させて型締する工程、
(3)樹脂を金型内に射出する工程、
(4)該射出樹脂を冷却した後に金型から樹脂成形品(転写用基材付き樹脂成形品)を取り出す工程、及び
(5)樹脂成形品から転写用基材(支持体ごと)を剥離する工程。
上記両工程(1)及び(2)において、転写シートを加熱する温度は、転写用基材1のガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(又は融点)未満の範囲であることが好ましい。通常はガラス転移温度近傍の温度で行うことが、より好ましい。なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲を指し、転写用基材1として好適なポリエステルフィルムを使用する場合には、一般に70~130℃程度である。なお、あまり複雑でない形状の金型を用いる場合は、転写シートを加熱する工程や、転写シートを予備成形する工程を省略し、後記する工程(3)において、射出樹脂の熱と圧力によって転写シートを金型の形状に成形してもよい。
上記両工程(3)において、後述する成形用樹脂を溶融させて、キャビティ内に射出して該転写シートと成形用樹脂とを一体化させる。成形用樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、成形用樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を室温又は適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる。これによって、転写シートが、形成された樹脂成形体と一体化して貼り付き、転写用基材付き樹脂成形品となる。成形用樹脂の加熱温度は、成形用樹脂の種類によるが、一般に180~320℃程度である。
このようにして得られた転写用基材付き樹脂成形品は、工程(4)において冷却した後に金型から取り出した後、工程(5)において支持体を保護層5から剥離することにより樹脂成形品を得る。また、支持体を保護層5から剥離する工程は、加飾樹脂成形品を金型から取り出す工程と同時に行われてもよい。すなわち、工程(5)は工程(4)に含まれるものであってもよい。
さらに、樹脂成形品の製造は、真空圧着法により行うこともできる。真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本開示の転写シート及び樹脂成形体を、転写シートが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ転写シートの成形樹脂層12を積層する側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1の真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を転写シートに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、転写シートを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、支持体を剥離し、必要に応じて転写シートの余分な部分をトリミングすることにより、本開示の樹脂成形品を得ることができる。
真空圧着法においては、上記の成形体を転写シートに押し当てる工程の前に、転写シートを軟化させて成形性を高めるため、転写シートを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、転写シートを構成する樹脂の種類や、転写シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、例えば転写用基材1としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常60~200℃程度とすることができる。
本開示の樹脂成形品において、成形樹脂層12は、用途に応じた樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂層12を形成する成形用樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、転写用基材付き樹脂成形品において、転写用基材は、樹脂成形品の保護シートとしての役割を果たすので、転写用基材付き樹脂成形品の製造後に剥離させずにそのまま保管しておき、用時に支持体を剥がしてもよい。このような態様で使用することにより、輸送時の擦れ等によって樹脂成形品に傷付きが生じるのを防止することができる。
本開示の樹脂成形品は、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し本開示は実施例に限定されるものではない。
<転写シートの製造>
転写用基材として、一方面に易接着剤層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)を用いた。ポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着剤層が形成された面とは反対側の面に、ブロッキング防止層(シリカ粒子1%を含有するアクリル樹脂 厚み1.5μm)を塗布した。ポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着剤層の面に、メラミン系樹脂を主成分とする塗工液をグラビア印刷にて印刷して離型層(厚さ1μm)を形成した。次いで、離型層の上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を、硬化後の厚さが2μm(すなわち、保護層の厚さが2μm)となるようにバーコーダーにより塗工し、保護層形成用塗布膜を形成した。電離放射線硬化性樹脂組成物は、ウレタンアクリレートである。
次に、この塗膜上から加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、保護層形成用塗布膜を硬化させて保護層を形成した。この保護層の上に、プライマー層形成用の樹脂組成物(アクリルポリオール)をグラビア印刷により塗工し、プライマー層(厚み1.5μm)を形成した。更に、プライマー層上に、バインダー樹脂(アクリル樹脂50質量%、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体樹脂50質量%)を含む装飾層形成用黒色系インキ組成物を用いて、全面黒単色の装飾層(厚さ5μm)をグラビア印刷により形成した。更に、装飾層上に、アクリル系樹脂(軟化温度:125℃)を含む接着層形成用の樹脂組成物を用いて、接着層(厚さ1.5μm)をグラビア印刷により形成することにより、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体を得た。さらに、ブロッキング防止層の上に、インクジェットプリンターを用いて、表1に記載の凹部賦形層(平面視形状は正六角形であり、六角柱が多段状に積層された形状である。段数、全体の高さ、各段の高さ、各段の幅(各段の端部から上の段までの距離(図2参照)))をマトリックス状に形成した。凹部賦形層の形成に用いた樹脂組成物は、光重合開始剤を添加したウレタンアクリレートであり、インクジェットプリンターに付属の紫外線照射装置により硬化させた。
<樹脂成形品の製造>
得られた各転写シートを金型に入れて、赤外線ヒーターで350℃、7秒間加熱し、真空成形で金型内の形状(板状)に沿うように予備成形して型締した(最大延伸倍率50%)。その後、射出樹脂(ABS樹脂)を金型のキャビティ内に射出し、該転写シートと射出樹脂とを一体化成形し、金型から取り出すと同時に支持体(凹部賦形層が埋没した転写用基材、ブロッキング防止層、及び離型層)を剥離除去することにより、樹脂成形品を得た。
<賦形率の測定>
転写シートの凹部賦形層側の表面について、凹凸形状をキーエンス社製の形状解析レーザ顕微鏡「VK-X1000」で計測し、凹部賦形層の全体の高さH、各段の高さh、各段の幅wを測定した。また、樹脂成形品の転写用基材を剥離した保護層の表面についても、同様にして計測し、保護層に形成された凹部の深さを測定した。転写シートの凹部賦形層の全体の高さH(μm)に対する、樹脂成形品の保護層に形成にされた凹部の深さ(μm)の割合を賦形率(%)として算出した。結果を表1に示す。
<樹脂成形品の表面に形成された各凹部の形状>
キーエンス社製の形状解析レーザ顕微鏡「VK-X1000」を用いて、得られた樹脂成形品の表面に形成された各凹部の形状を観察した。結果を表1に示す。