以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
<三次元成形用転写シート>
以下、図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る三次元成形用転写シートについて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る三次元成形用転写シートの構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る三次元成形用転写シート1は、第1主面S1及び第1主面S1の反対側に位置する第2主面S2を有する転写基材層2と、転写基材層2の第1主面S1に設けられた盛上部3と、転写基材層2の第2主面S2に設けられた転写層4とを備える。なお、「三次元成形用」には、三次元成形体(立体的形状を有する成形体)を製造する用途に加えて、二次元成形体(シート形状を有する成形体)を製造する用途も包含される。
転写基材層
図1に示すように、転写基材層2は、第1主面S1及び第1主面S1の反対側に位置する第2主面S2を有し、第1主面S1において盛上部3を支持し、第2主面S2において転写層4を支持する。
転写基材層2は、転写層4(本実施形態では、転写層4を構成する層のうち、最も転写基材層2側に位置する表面保護層41)から剥離可能となっている。
図1に示すように、転写基材層2は、基材シート21と、基材シート21の一方の主面(盛上部3側の主面)に設けられた樹脂層22と、基材シート21の他方の主面(転写層4側の主面)に設けられた離型層23とを有する。
[基材シート]
基材シート21は、一方の主面(盛上部3側の主面)において樹脂層22を支持し、他方の主面(転写層4側の主面)において離型層23を支持する。
基材シート21は、真空成形適性等を考慮して適宜選択することができる。基材シート21としては、例えば、熱可塑性樹脂シートを使用することができる。基材シート21は、単層シートであってもよいし、複層シートであってもよい。複層シートを構成する2以上の樹脂層は、同種の樹脂で構成されていてもよいし、異種の樹脂で構成されていてもよい。熱可塑性樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン(高密度、中密度又は低密度)、ポリプロピレン(アイソタクチック型又はシンジオタクチック型)、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
基材シート21としては、耐熱性、寸法安定性、成形性、汎用性等の観点から、ポリエステル樹脂シートを使用することが好ましい。ポリエステル樹脂シートを構成するポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーであり、その具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられ、これらのうち、耐熱性、寸法安定性等の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
ポリエステル樹脂シートは、例えば、次のように製造することができる。まず、ポリエステル系樹脂及びその他の原料をエクストルーダー等の公知の溶融押出装置に供給し、当該ポリエステル系樹脂の融点以上の温度に加熱して溶融する。次いで、溶融ポリマーを押出しながら、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるよう急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。このシートを2軸方向に延伸してシート化し、熱固定を施すことにより、ポリエステル樹脂シートが得られる。延伸方法は、逐次2軸延伸であってもよいし、同時2軸延伸であってもよい。必要に応じて、熱固定を施す前又は後に、再度縦及び/又は横方向に延伸してもよい。十分な寸法安定性を得る観点から、延伸倍率を面積倍率として7倍以下に調整することが好ましく、5倍以下に調整することがさら好ましく、3倍以下に調整することがさらに一層好ましい。この範囲内であれば、転写シート1を使用して加飾樹脂成形品を製造する際、射出樹脂の温度域で基材シート21が再び収縮せず、当該温度域で必要なシート強度を得ることができる。なお、ポリエステル樹脂シートは、上記のように製造したものを使用してもよいし、市販のものを使用してもよい。
基材シート21は、少なくとも一方の主面に凹凸形状を有していてもよい。基材シート21が、少なくとも一方の主面に凹凸形状を有する場合、転写シート1を使用したインモールド成形により加飾樹脂成形品を製造する際、基材シート21の凹凸形状が表面保護層41に転写されるので、表面保護層41に基材シート21の凹凸形状に対応した凹凸形状を形成することができる。例えば、表面保護層41に微細な凹凸形状を形成することにより、表面保護層41にマット(低光沢)な意匠感を付与することができる。なお、基材シート21の凹凸形状は、転写層4を構成する層のうち少なくとも表面保護層41に転写されればよく、転写層4を構成する層のうち表面保護層41以外の層には、転写されてもよいし、転写されなくてもよい。
基材シート21の主面に凹凸形状を形成する方法としては、例えば、サンドブラスト加工、ヘアライン加工、レーザー加工、エンボス加工等の物理的方法、溶剤等の薬品による腐食処理等の化学的方法、基材シート21に微粒子を含有させる方法等が挙げられる。表面保護層41に微細な凹凸形状を付与してマット(低光沢)な意匠感を表現する場合には、基材シート21に微粒子を含有させる方法を好適に使用することができる。
微粒子としては、例えば、合成樹脂粒子、無機粒子等が挙げられるが、三次元成形性を良好とする観点からは、合成樹脂粒子を使用することが好ましい。合成樹脂粒子としては、例えば、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、シリコーンビーズ、ナイロンビーズ、スチレンビーズ、メラミンビーズ、ウレタンアクリルビーズ、ポリエステルビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。これらの合成樹脂粒子の中でも、耐傷性に優れた凹凸形状を表面保護層41に形成する観点から、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、シリコーンビーズ等が好ましい。無機粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、カオリン等が挙げられる。これらの微粒子は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。微粒子の粒子径は、好ましくは0.3〜25μm程度、さらに好ましくは0.5〜5μm程度である。なお、微粒子の粒子径は、島津レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100−WJA1を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する噴射型乾式測定方式により測定された粒子径を指す。
基材シート21に含有される微粒子の量は、表面保護層41に所望の凹凸形状を形成し得る限り特に制限されるものではないが、基材シート21に含有される樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部程度、さらに好ましくは5〜80質量部程度である。
基材シート21には、必要に応じて、安定剤、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、蛍光増白剤等の1種又は2種以上の添加剤を配合することができる。
基材シート21の一方又は両方の主面には、酸化法、凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を施してもよい。これにより、基材シート21と、基材シート21の一方又は両方の主面に設けられる層との密着性を向上させることができる。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材シート21の種類に応じて適宜選択することができるが、一般的には、コロナ放電処理法が、効果、操作性等の観点から好ましく使用される。層間密着性の強化等を目的として、基材シート21の一方又は両方の主面に接着層を形成してもよい。なお、基材シート21としては、上記のような表面処理が施された市販品や、接着層が設けられた市販品を使用してもよい。
基材シート21の厚みは、通常10〜150μm程度、好ましくは10〜125μm程度、さらに好ましくは10〜80μm程度である。
[樹脂層]
樹脂層22は、必要に応じて、基材シート21の一方の主面(盛上部3側の主面)に設けられる層である。樹脂層22は、場合により省略可能である。樹脂層22は、例えば、基材シート21と盛上部3との密着性を向上させる目的で設けることができる。樹脂層22は、転写基材層2を構成する層のうち、最も盛上部3側に位置し、転写基材層2の第1主面S1を形成している。樹脂層22が省略される場合、転写基材層2の第1主面S1は、基材シート21の盛上部3側の主面により形成される。
樹脂層22は、樹脂組成物により形成することができる。樹脂組成物に含有される樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が挙げられる。樹脂組成物に含有される樹脂は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)等のポリエステル樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂);アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリオール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。ポリオール樹脂としては、例えば、アクリルポリオール;ポリエステルポリオール;ポリエステルウレタンポリオール、アクリルウレタンポリオール等のウレタンポリオール;ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール等が挙げられる。熱硬化性樹脂には、必要に応じて、熱硬化性樹脂の硬化反応に関与する成分、例えば、触媒、硬化剤(架橋剤、重合開始剤、重合促進剤等を含む)等を配合してもよい。電離放射線硬化性樹脂の具体例は、盛上部3に関する説明中で列挙する具体例と同様であるので、ここでの説明を省略する。
樹脂層22は、基材シート21の一方の主面に樹脂組成物を塗布することにより形成することができる。塗布方法としては、例えば、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート、シルクスクリーン等が挙げられる。
樹脂層22は、盛上部3側の主面に凹凸形状を有していてもよい。樹脂層22が、その主面に凹凸形状を有する場合、転写シート1を使用したインモールド成形により加飾樹脂成形品を製造する際、樹脂層22の凹凸形状が表面保護層41に転写されるので、表面保護層41に樹脂層22の凹凸形状に対応した凹凸形状を形成することができる。例えば、表面保護層41に微細な凹凸形状を形成することにより、表面保護層41にマット(低光沢)な意匠感を付与することができる。なお、樹脂層22の凹凸形状は、転写層4を構成する層のうち少なくとも表面保護層41に転写されればよく、転写層4を構成する層のうち表面保護層41以外の層には、転写されてもよいし、転写されなくてもよい。
樹脂層22の表面に凹凸形状を形成する方法としては、例えば、サンドブラスト加工、ヘアライン加工、レーザー加工、エンボス加工等の物理的方法、溶剤等の薬品による腐食処理等の化学的方法、樹脂層22に微粒子を含有させる方法等が挙げられる。表面保護層41に微細な凹凸形状を付与してマット(低光沢)な意匠感を表現する場合には、樹脂層22に微粒子を含有させる方法を好適に使用することができる。樹脂層22に含有させる微粒子の具体例は、基材シート21に関する説明中で列挙した具体例と同様であるので、ここでの説明を省略する。
樹脂層22に含有される微粒子の量は、表面保護層41に所望の凹凸形状を形成し得る限り特に制限されないが、樹脂層22に含有される樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部程度、さらに好ましくは5〜80質量部程度である。
樹脂層22の厚みは、通常0.5〜30μm程度、好ましくは0.5〜5μm程度である。
[離型層]
離型層23は、転写基材層2と転写層4(本実施形態では、転写層4を構成する層のうち、最も転写基材層2側に位置する表面保護層41)との剥離性を向上させることを目的として、必要に応じて、基材シート21の転写層4側の主面に設けられる層である。離型層23は、場合により省略可能である。離型層23は、転写基材層2を構成する層のうち、最も転写層4側に位置し、転写基材層2の第2主面S2を形成している。離型層23が転写基材層2の第2主面S2を形成していることにより、転写基材層2と転写層4(表面保護層41)との剥離性を向上させることができる。離型層23が省略される場合、転写基材層2の第2主面S2は、基材シート21の転写層4側の主面により形成される。
離型層23は、基材シート21の転写層4側の主面の一部に設けられる層であってもよいが、転写基材層2と転写層4(表面保護層41)との剥離性を向上させる観点から、基材シート21の転写層4側の主面全体を被覆する(すなわち、全面ベタ状に設けられる)ベタ層であることが好ましい。
離型層23は、例えば、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂(アクリル−メラミン系樹脂を含む)、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿等の熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、電離放射線硬化性樹脂、あるいは、これらの樹脂を(メタ)アクリル酸又はウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂組成物を使用して形成することができる。なかでも、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、これらの樹脂を形成するモノマーの共重合体、又は、これらをウレタン変性したものが好ましい。より具体的には、アクリル−メラミン系樹脂単独、アクリル−メラミン系樹脂含有組成物、ポリエステル系樹脂とエチレン及びアクリル酸の共重合体をウレタン変性したものとを混合した樹脂組成物、アクリル系樹脂とスチレン及びアクリルとの共重合体のエマルションとを混合した樹脂組成物等が挙げられる。
離型層23の厚みは、通常0.01〜5μm程度であり、好ましくは0.05〜3μm程度である。
盛上部
図1に示すように、盛上部3は、転写基材層2の第1主面S1の一部に設けられている。転写基材層2の第1主面S1のうち、盛上部3が設けられていない部分は、露出している。盛上部3は、転写基材層2の第1主面S1から突出する凸部として形成されており、転写基材層2の第1主面S1のうち、盛上部3が設けられていない部分は、相対的に凹部となっている。これより、転写シート1の盛上部3側の主面には、凹凸形成が形成されている。転写シート1を使用したインモールド成形により加飾樹脂成形品を製造する際、転写シート1の盛上部3側の主面に形成された凹凸形状により、転写基材層2及び転写層4は凹凸賦形される。
盛上部3のマルテンス硬度は、50N/mm2以上150N/mm2以下である。盛上部3のマルテンス硬度が50N/mm2以上であると、転写シート1を使用したインモールド成形により加飾樹脂成形品を製造する際、盛上部3が射出成形用金型に対して押圧されることにより生じ得る盛上部3の射出成形用金型への貼り付きを防止することができる。また、盛上部3のマルテンス硬度が150N/mm2以下であると、転写シート1を使用したインモールド成形により加飾樹脂成形品を製造する際、転写シート1が射出成形用金型の成形面に沿って変形することにより生じ得る盛上部3の割れを防止することができる。盛上部3のマルテンス硬度は、50N/mm2以上150N/mm2以下の範囲内で適宜調整することができるが、好ましくは60N/mm2以上140N/mm2以下、さらに好ましくは80N/mm2以上120N/mm2以下である。
盛上部3のマルテンス硬度は、表面皮膜物性試験機(PICODENTOR HM−500、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を使用して、温度23℃及び相対湿度38%の環境下で測定される。具体的には、図5Aに示す対面角136°のダイヤモンド圧子(ビッカース圧子)を使用して、盛上部3にダイヤモンド圧子を押し込み、押し込み荷重Fと押し込み深さh(圧痕深さ)から、次式:
マルテンス硬度=F/(26.43×h2)
により、マルテンス硬度を求める。押し込みは、温度23℃及び相対湿度38%の環境下、盛上部3に対して、図5Bに示すように、まず0〜2mNまでの負荷を2秒間で加え、次に2mNの負荷で5秒間保持し、最後に2〜0mNまでの除荷を2秒間で行う。1つの盛上部について、10点のマルテンス硬度を測定し、その平均値を当該盛上部のマルテンス硬度とする。
転写基材層2の第1主面S1に設けられる盛上部3の個数は、特に限定されず、加飾樹脂成形品に付与すべき形状等に応じて適宜調整可能である。盛上部3の個数は、通常、複数である。隣接する盛上部3は、互いに離間していてもよいし、端部同士が連結していてもよい。
盛上部3は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成することができる。この場合、盛上部3のマルテンス硬度は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される電離放射線硬化性樹脂の種類、含有比等を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
以下、電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される電離放射線硬化性樹脂について、説明する。なお、別段規定する場合を除き、電離放射線硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂組成物に関する以下の説明は、盛上部3以外の部分又は部材で使用され得る電離放射線硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂組成物にも適用される。
[電離放射線硬化性樹脂]
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が使用されるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、安定な硬化特性が得られる点で好ましい。
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合、カチオン重合性官能基等を分子中に有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー等の1種以上を使用することができる。電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される電離放射線硬化性樹脂は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられ、特に、多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよく、特に限定されない。多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを併用してもよい。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられ、特に、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端又は側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート等であってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも使用することができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコン(メタ)アクリレートとは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコンの末端又は側鎖に(メタ)(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらの中でも、成形時における当該盛上部の割れを効果的に抑制し、さらに、成形後における盛上部の凹凸形状による意匠性、耐傷付き性をより一層高める観点からは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。これらのオリゴマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量の下限値は、好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上であり、上限値は、好ましくは80000以下、さらに好ましくは50000以下である。電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、樹脂組成物の粘度を、塗布に適した粘度に調整しやすい。なお、「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質に用いて測定される値である。
電離放射線硬化性樹脂組成物には、電離放射線硬化性樹脂の他、必要に応じて、1種又は2種以上の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。
盛上部3の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物は、多官能性モノマーを含有することが好ましい。この場合、盛上部3のマルテンス硬度は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含有される多官能性モノマーの官能数、含有量等を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。電離放射線硬化性樹脂組成物における多官能性モノマーの含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物100質量部あたり、好ましくは30質量部以上70質量部以下、さらに好ましくは40質量部以上60質量部以下、さらに一層好ましくは50質量部以上60質量部以下である。すなわち、電離放射線硬化性樹脂組成物は、好ましくは30質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上60質量%以下、さらに一層好ましくは50質量%以上60質量%以下の多官能性モノマーを含有する。多官能性モノマーは、重合性不飽和基又はカチオン重合性官能基を2個以上有する限り特に限定されないが、3官能以上のモノマーが好ましく、4官能以上モノマーがさらに好ましい。多官能性モノマーとしては、例えば、上記した多官能性(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
盛上部3は、例えば、電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、転写基材層2に塗布し、架橋硬化することにより形成することができる。塗布方法としては、例えば、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等が挙げられる。このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して未硬化樹脂層を硬化させて盛上部3を形成することができる。
電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させるための電離放射線として紫外線を使用する場合には、紫外線源として、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源を使用することができる。紫外線の波長は、例えば、190〜380nm程度である。電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させるための電離放射線として電子線を使用する場合には、電子線源として、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線加速器を使用することができる。電子線のエネルギーは、好ましくは100〜1000keV程度、さらに好ましくは100〜300keV程度である。電子線の照射量は、好ましくは2〜15Mrad程度である。
盛上部3の高さは、特に制限されないが、通常5μm以上50μm以下、好ましくは10μm以上40μm以下、さらに好ましくは20μm以上30μm以下である。なお、盛上部3の高さ(盛上部3の厚み)は、転写基材層2の第1主面S1を基準とし、盛上部3のうち最も高い部分の高さとして測定される。
転写基材層2の第1主面S1のうち、1個の盛上部3が設けられる領域の面積(盛上部3の底面積)は、特に制限されず、加飾樹脂成形品に付与すべき形状等に応じて適宜設定可能であるが、例えば、90mm2以下、好ましくは20mm2、より好ましくは5mm2以下である。面積の下限値は、特に制限されないが、視覚的に認識可能な凹凸形状を形成する観点から、0.01mm2以上であることが好ましい。盛上部3が設けられる2以上の領域の面積は、同一であってもよいし、異なってもよい。
転写基材層2の第1主面S1の面積に対する、盛上部3が設けられる領域の総面積の割合は、特に制限されないが、通常90%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下である。
盛上部3の平面視形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、多角形、星形、線状、円弧状、幾何学模様、文字状等が挙げられる。異なる盛上部3の平面視形状は、同一であってもよいし、異なってもよい。盛上部3は、全体として絵柄を形成していてもよい。
転写層
図1に示すように、転写層4は、転写基材層2側から順に、表面保護層41、プライマー層42、装飾層43及び接着層44を有する。転写シート1を使用したインモールド成形により加飾樹脂成形品を製造する際、転写基材層2は、最終的には剥離除去され、加飾樹脂成形品には、転写層4が残る。
図1に示すように、転写層4は、第1主面T1と、第1主面T1の反対側に位置する第2主面T2とを有する。転写層4の第1主面T1は、転写基材層2の第2主面S2と接しており、転写基材層2と転写層4との界面を形成している。
[表面保護層]
表面保護層41は、加飾樹脂成形品の耐傷性、耐候性、耐薬品性等を向上させることを目的として、必要に応じて設けられる層である。表面保護層41は、場合により省略可能である。表面保護層41は、転写層4を構成する層のうち、最も転写基材層2側に位置しており、転写層4の第1主面T1を形成している。表面保護層41は、転写基材層2の第2主面S2と接するように設けられており、転写基材層2と転写層4との界面を形成する。転写シート1を使用したインモールド成形により製造された加飾樹脂成形品において、表面保護層41は、加飾樹脂成形品の最も外側に位置し、加飾樹脂成形品の表面を形成する。
表面保護層41は、例えば、樹脂組成物により形成することができる。樹脂組成物に含有される樹脂は、加飾樹脂成形品の耐傷性、耐候性、耐薬品性等を向上させることができる限り特に制限されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が挙げられ、これらのうち、電離放射線硬化性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)等のポリエステル樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂);アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリオール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。ポリオール樹脂としては、例えば、アクリルポリオール;ポリエステルポリオール;ポリエステルウレタンポリオール、アクリルウレタンポリオール等のウレタンポリオール;ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。熱硬化性樹脂には、必要に応じて、熱硬化性樹脂の硬化反応に関与する成分、例えば、触媒、硬化剤(架橋剤、重合開始剤、重合促進剤等を含む)等を配合してもよい。電離放射線硬化性樹脂の具体例は、盛上部3に関する説明中で列挙した具体例と同様であるので、ここでの説明を省略する。
表面保護層41は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で形成されていてもよいし、電離放射線硬化性樹脂組成物の未硬化物又は半硬化物で形成されていてもよい。表面保護層41が、電離放射線硬化性樹脂組成物の未硬化物又は半硬化物で形成されている場合、表面保護層41は、例えば、転写シート1を使用したインモールド成形により加飾樹脂成形品を製造する過程又は製造した後に、盛上部3と同様にして硬化させることができる。
表面保護層41は、転写基材層2の上に、又は、表面保護層41の下側に位置する層の上に、例えば、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の方法で塗布することにより形成することができる。表面保護層41を電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により形成する場合には、盛上部3と同様にして、未硬化樹脂層を形成した後、未硬化樹脂層を硬化させることにより表面保護層41を形成することができる。
表面保護層41を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、所望により、1種又2種以上の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等が挙げられる。
表面保護層41の厚みは、特に制限されないが、通常1〜1000μm程度、好ましくは1〜50μm程度、さらに好ましくは1〜10μm程度である。
[プライマー層]
プライマー層42は、例えば、表面保護層41とその下側(転写基材層2とは反対側)に位置する層との密着性を向上させることを目的として、必要に応じて設けられる層である。プライマー層42は、場合により省略可能である。
プライマー層42は、樹脂組成物により形成することができる。樹脂組成物に含有される樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられ、これらのうち、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂等が好ましい。樹脂組成物に含有される樹脂は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
上記ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用することができる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であればよく、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イソシアネートとしては、具体的には、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート;4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが挙げられる。イソシアネートを硬化剤として用いる場合、プライマー層形成用樹脂組成物におけるイソシアネートの含有量は特に制限されないが、密着性の観点や、後述の装飾層43等を積層する際の印刷適正の観点からは、上記のポリオール100質量部に対して3〜45質量部が好ましく、3〜25質量部がより好ましい。
上記ウレタン樹脂の中でも、架橋後の密着性の向上等の観点から、好ましくは、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋材としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートの組み合わせ;さらに好ましくは、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせが挙げられる。
上記アクリル樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂として、より具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が挙げられる。また、硬化剤としては、前述する各種イソシアネートが用いられる。アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂におけるアクリルとウレタン比の比率については、特に制限されないが、例えば、アクリル/ウレタン比(質量比)として、9/1〜1/9、好ましくは8/2〜2/8が挙げられる。
プライマー層42を形成する組成物には、1種又は2種以上の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等が挙げられる。
プライマー層42は、プライマー層形成用樹脂組成物を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法とは、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に三次元成形用転写シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
プライマー層42は、硬化後の表面保護層41の上に形成してもよい。また、表面保護層41を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物の層の上にプライマー層形成用組成物からなる層を積層してプライマー層42を形成した後、電離放射線硬化性樹脂からなる層に電離放射線を照射し、電離放射線硬化性樹脂からなる層を硬化させて表面保護層41を形成してもよい。
プライマー層42の厚みは、特に制限されないが、例えば0.1〜10μm程度、好ましくは1〜10μm程度が挙げられる。
[装飾層]
装飾層43は、例えば、加飾樹脂成形品に装飾性を付与することを目的として、必要に応じて設けられる層である。装飾層43は、場合により省略可能である。
装飾層43としては、着色層、絵柄層、これらの組み合わせ等が挙げられる。
着色層は、三次元成形用転写シート1を使用して製造される加飾樹脂成形品に所望の色を付与する。着色層は、例えば、樹脂成形体等の着色を隠蔽するために、着色層の下層の表面全体を被覆する(すなわち、全面ベタ状に設けられる)ベタ層である。着色層の色は、通常、不透明色であるが、透明色であってもよい。着色層の形成方法としては、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等のコーティング法が挙げられる。着色層は、後述する印刷法により形成してもよい。
絵柄層は、三次元成形用転写シート1を使用して製造される加飾樹脂成形品に所望の絵柄を付与する。絵柄層は、例えば、印刷層である。絵柄層を構成する模様としては、例えば、年輪断面の春材領域及び秋材領域、導管部等から構成される木目模様、レザー(皮シボ)模様、大理石、花崗岩、砂岩等の石材表面の石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄層の形成に使用される印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。
装飾層43の形成に使用されるインキは、例えば、着色剤、バインダー樹脂等の成分と、溶剤又は分散媒との混合物である。
インキに含まれる着色剤としては、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、錫、チタン、リン化鉄、銅、金、銀、真鍮等の金属、合金、又は金属化合物の鱗片状箔粉からなるメタリック顔料;マイカ状酸化鉄、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、二酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料;アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸バリウム、硫化亜鉛、硫化カルシウム等の蛍光顔料;二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色無機顔料;亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノンイエロー、ハンザイエローA、キナクリドンレッド、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む)等が挙げられる。着色剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキに含まれるバインダー樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキに含まれる溶剤又は分散媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等が挙げられる。溶剤又は分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
装飾層43の形成に使用されるインキには、必要に応じて、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、滑剤等が含まれていてもよい。
装飾層43は、例えば、隣接する層(例えば、プライマー層42等)の上に、上記した方法によって形成することができる。装飾層43を絵柄層及び着色層の組み合わせとする場合には、一方の層を形成して乾燥させた後に、もう一方の層を積層して乾燥させればよい。
装飾層43は金属薄膜層であってもよい。金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金等が挙げられる。金属薄膜層の形成方法としては、例えば、上記金属を使用した、真空蒸着法等の蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。また、隣接する層との密着性を向上させるため、金属薄膜層の表面や裏面には公知の樹脂を用いたプライマー層を設けてもよい。
装飾層43の厚さは、特に限定されないが、例えば1〜40μm、好ましくは3〜30μmである。
[接着層]
接着層44は、転写シート1と被転写体(例えば、樹脂成形体)との密着性を向上させることを目的として、必要に応じて設けられる層である。接着層44は、場合により省略可能である。接着層44は、転写層4の第2主面T2を形成している。
接着層44を形成する樹脂としては、密着性又は接着性を向上させることができるものであれば、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層44の厚みは、特に制限されないが、例えば、0.1〜30μm程度、好ましくは0.5〜20μm程度、さらに好ましくは1〜8μm程度が挙げられる。
[透明樹脂層]
転写層4が装飾層43を有しない場合、例えば、プライマー層42と接着層44との密着性を向上させることを目的として、必要に応じて透明樹脂層(不図示)を設けてもよい。透明樹脂層は、三次元成形用転写シート1を透明性が要求される加飾樹脂成形品の製造に使用する場合に特に有用である。透明樹脂層は、透明性を有する限り特に限定されるものではなく、透明には、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含まれる。透明樹脂層を形成する樹脂としては、例えば、装飾層43に関して例示したバインダー樹脂等を使用することができる。
透明樹脂層には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の添加剤の1種又は2種以上が含まれていてもよい。
透明樹脂層は、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の印刷法によって形成することができる。
透明樹脂層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1〜10μm、好ましくは1〜10μmである。
<加飾樹脂成形品>
以下、図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る加飾樹脂成形品について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る加飾樹脂成形品の構成を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る加飾樹脂成形品10は、転写層4と、転写層4と一体化された樹脂成形体5とを備える。なお、加飾樹脂成形品10は、転写基材層2を有しない。図2に示すように、転写層4は凹凸賦形されており、転写層4の第2主面T2には、転写層4の第1主面T1に形成された凹部と対応する位置に凸部が形成されているとともに、転写層4の第1主面T1に形成された凸部と対応する位置に凹部が形成されている。樹脂成形体5は、転写層4の第2主面T2側において、転写層4と一体化されており、樹脂成形体5の表面には、転写層4の第2主面T2の凹凸形状と対応する凹凸形状が形成されている。
加飾樹脂成形品10は、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等の、様々な用途に使用することができる。
加飾樹脂成形品10は、例えば、転写シート1を使用したインモールド成形により製造することができる。インモールド成形では、射出成形用金型内において、射出成形と転写とが同時に行われる。転写シート1を使用したインモールド成形により、転写シート1と、転写シート1の転写層4と一体化された樹脂形成体5とを備える、加飾樹脂成形品10を製造するための中間体11を製造することができ、中間体11から転写基材層2を剥離することにより、加飾樹脂成形品10を製造することができる。
転写シート1を使用したインモールド成形により加飾樹脂成形品を製造する方法の一実施形態は、以下の工程:
(a)転写シート1を射出成形用金型に、転写シート1の盛上部3側の主面が射出成形用金型の成形面と対向するように配置する工程、
(b)工程(a)の後、射出成形用金型を型締めして形成されたキャビティ内に流動状態の樹脂を射出し、転写シート1と、転写シート1の転写層4と一体化された樹脂成形体5とを備える中間体11を形成する工程、及び
(c)工程(b)の後、中間体11から転写基材層2を剥離し、転写層4と、転写層4と一体化された樹脂成形体5とを備える加飾樹脂成形品10を得る工程
を含む。
工程(a)では、転写シート1を射出成形用金型6に、転写シート1の盛上部3側の主面が射出成形用金型6の成形面60と対向するように配置する(図3参照)。射出成形用金型は、例えば、固定型と可動型とから構成される。固定型と可動型とから構成される射出成形用金型が使用される場合、図3に示す射出成形用金型6は固定型であり、転写シート1は固定型側に配置され、射出成形に使用される成形材料は固定型側から供給される。固定型としては、例えば、射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型を使用することができる。
工程(a)の後であって工程(b)の前に、転写シート1を加熱して軟化させてもよい。一実施形態では、転写シート1を射出成形用金型6に、転写シート1の盛上部3側の主面が射出成形用金型6の成形面60と対向するように配置した後、熱盤により転写シート1を転写層4側から加熱して軟化させる。転写シート1を加熱する温度は、溶融温度(又は融点)未満の範囲で適宜調整可能であるが、基材シート21のガラス転移温度近傍の温度であることが好ましい。ガラス転移温度近傍の温度は、ガラス転移温度±5℃程度の範囲を指し、基材シート21として好適なポリエステルフィルムを使用する場合には、通常70〜130℃程度である。
工程(a)の後であって工程(b)の前に、転写シート1の盛上部3側の主面を射出成形用金型6の成形面60に沿って密着させ、転写シート1を予備成形(オンライン予備成形)してもよい。一実施形態では、転写シート1を射出成形用金型6に、転写シート1の盛上部3側の主面が射出成形用金型6の成形面60と対向するように配置した後、熱盤により転写シート1を転写層4側から加熱して軟化させ、軟化させた転写シート1を射出成形用金型6の成形面60側から真空吸引して射出成形用金型6の成形面60に沿って密着させることにより予備成形(オンライン予備成形)を行う。予備成形は、転写シート1を加熱して軟化させた後に行うことが好ましいが、射出成形用金型6の成形面60の形状が複雑ではない場合、転写シート1を加熱せずに予備成形を行ってもよい。
工程(b)では、図3に示すように、工程(a)の後、射出成形用金型6を型締めして形成されたキャビティ内に流動状態の樹脂7を射出する。キャビティ内に充填された樹脂は固化して、転写シート1の転写層4と一体化された樹脂成形体を形成する。なお、図3中の矢印は、樹脂7が射出される方向を示す。
工程(b)では、図4に示すように、射出される樹脂7の熱及び圧力により、転写基材層2及び転写層4が凹凸賦形される。具体的には、図4に示すように、転写基材層2及び転写層4のうち、射出成形用金型6の成形面60との間に盛上部3が介在していない部分は、射出成形用金型6の成形面60に向けて押圧され、射出成形用金型6の成形面60に向けて凸状に賦形される。この結果、転写基材層2及び転写層4のうち、射出成形用金型6の成形面60との間に盛上部3が介在している部分は、相対的に凹状に賦形される。こうして、図4に示すように、転写シート1と、転写シート1の転写層4と一体化された樹脂成形体5とを備える中間体11が形成される。なお、中間体11は、射出成形用金型6内で形成される。中間体11は、加飾樹脂成形品10を製造するための中間体である。中間体11おいて、転写基材層2及び転写層4は凹凸賦形されており、凹凸賦形により形成された転写基材層2の凹部には盛上部3が位置している。中間体11において、樹脂成形体5の転写層4側の表面には、転写層4の凹凸形状に対応した凹凸形状が形成されている。
樹脂7(樹脂成形体5を構成する樹脂)は、加飾樹脂成形品10の用途に応じて適宜選択することができる。樹脂7としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。樹脂7は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
樹脂7が熱可塑性樹脂である場合には、加熱溶融によって流動状態とした樹脂が使用され、樹脂7が熱硬化性樹脂である場合には、未硬化の液状組成物が室温又は適宜加熱されて使用される。成形用樹脂の加熱温度は、樹脂の種類によるが、一般に180〜320℃程度である。
工程(c)では、工程(b)の後、中間体11から転写基材層2を剥離し、転写層4と、転写層4と一体化された樹脂成形体5とを備える加飾樹脂成形品10を得る。中間体11から転写基材層2を剥離すると、転写基材層2とともに盛上部3も除去され、加飾樹脂成形品10には転写層4が残る。離型層23が転写基材層2の第2主面S2を形成している場合、転写基材層2と転写層4(表面保護層41)との剥離性を向上させることができる。中間体11から転写基材層2を剥離することにより、表面保護層41が露出し、表面保護層41によって加飾樹脂成形品10の表面が形成される。工程(c)は、例えば、加飾樹脂成形品10を射出成形用金型から取り出す際に行うことができる。
<実施例1>
[三次元成形用転写シートの製造]
基材シートとして、一方の面に易接着剤層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)を用いた。基材シートの易接着剤層側の面に、メラミン系樹脂を主成分とする塗工液をグラビア印刷にて印刷して離型層(厚さ1μm)を形成した。次いで、離型層の上に、ポリカーボネートウレタンアクリレートを主成分とする電離放射線硬化性樹脂組成物を、硬化後の厚さが3μmとなるようにバーコーダーにより塗工し、表面保護層形成用塗布膜を形成した。次に、この塗膜上から加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、表面保護層形成用塗布膜を硬化させて表面保護層を形成した。この表面保護層の上に、プライマー層形成用の樹脂組成物をグラビア印刷により塗工し、プライマー層(厚み1.5μm)を形成した。更に、プライマー層上に、アクリル系樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂をバインダー樹脂(アクリル樹脂50質量%、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂50質量%)として含む装飾層形成用黒色系インキ組成物を用いて装飾層(厚さ5μm)をグラビア印刷により形成した。更に、装飾層上に、アクリル系樹脂(軟化温度:125℃)を含む接着層形成用の樹脂組成物を用いて、接着層(厚さ4μm)をグラビア印刷により形成した。こうして、基材シート/離型層/表面保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体を製造した。
次に、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物を用いて、基材シートの裏面側(離型層と反対側)に、平面視円形状の盛上部が多数配列したパターンを形成するように(1つの盛上部の底面積1.8mm2、基材シートの表面積に対する盛上部の総面積の割合約31%)、盛上部をスクリーン印刷にて積層した。次に、盛上部の上から、紫外線を160W/cmの条件で照射して印刷版の版形状を保ったまま硬化させた。こうして、基材シート上に、高さ30μmの盛上部を多数形成した。なお、盛上部の高さ(インキ膜厚)は、膜厚計(ニコン社製デジマイクロカウンタMFC−101)を用いて測定した。
以上の手順により、盛上部/基材シート/離型層/表面保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された三次元成形用加飾シートを製造した。
[電離放射線硬化性樹脂組成物]
盛上部の形成に使用した電離放射線硬化性樹脂の組成は、次の通りに調整した。
感光性ウレタンアクリレートオリゴマー:35質量%
感光性多官能モノマー:53質量%
光重合開始剤:8質量%
シリコン系高濃度泡消剤:3質量%
スリップ剤(有機変性ポリシロキサン):0.5質量%
硬化促進剤(光重合開始剤):0.5質量%
[盛上部のマルテンス硬度の測定]
上記で製造した三次元成形用転写シートについて、盛上部のマルテンス硬度を測定した。盛上部のマルテンス硬度は、表面皮膜物性試験機(PICODENTOR HM−500、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を使用して、温度23℃及び相対湿度38%の環境下で測定した。具体的には、図5Aに示す対面角136°のダイヤモンド圧子(ビッカース圧子)を使用して、盛上部にダイヤモンド圧子を押し込み、押し込み荷重Fと押し込み深さh(圧痕深さ)から、次式:
マルテンス硬度=F/(26.43×h2)
により、マルテンス硬度を求めた。押し込みは、温度23℃及び相対湿度38%の環境下、盛上部に対して、図5Bに示すように、まず0〜2mNまでの負荷を2秒間で加え、次に2mNの負荷で5秒間保持し、最後に2〜0mNまでの除荷を2秒間で行った。1つの盛上部について、10点のマルテンス硬度を測定し、その平均値を当該盛上部のマルテンス硬度とした。
[加飾樹脂成形品の製造]
上記で製造した三次元成形用転写シートを金型に、該転写シートの盛上部側の主面が金型の成形面と対向するように配置し、型締した。その後、射出樹脂を金型のキャビティ内に射出し、三次元成形用転写シートと射出樹脂とを一体化成形して、三次元成形用転写シートと、該転写シートの転写層と一体化された樹脂成形体とを備える中間体を形成した。転写層と一体化された樹脂成形体を金型から取り出す際に、中間体から転写基材層(基材シート及び離型層)を剥離し、転写層と、該転写層と一体化された樹脂成形体とを備える加飾樹脂成形品を得た。
[金型への貼り付きの評価]
転写層と一体化された樹脂成形体を金型から取り出す際、剥離された転写基材層が金型に貼り付いているか否かを目視にて確認し、剥離された転写基材層が金型に貼り付いていない場合を「A」、剥離された転写基材層が金型に貼り付いていないが盛り上げインキの汚れが金型に転写されている場合を「B」、剥離された転写基材層が金型に貼り付いており実用上問題ある場合を「C」と評価した。
[パターン伸びの評価]
成形時に三次元成形用転写シートが金型の成形面に沿って変形することにより生じる盛上部の割れに起因して、加飾樹脂成形品の転写層の凹凸形状に不良箇所(所望の凹凸形状が形成されていない箇所)が存在するか否かを目視で確認し、不良箇所が存在しない場合を「A」、不良箇所が存在するが実用上問題ない場合を「B」、不良箇所が存在しており実用上問題ある場合を「C」と評価した。
<実施例2>
盛上部の高さを40μmに変更した以外は、実施例1と同様に、三次元成形用転写シート及び加飾樹脂成形品の製造並びに各種測定・評価を行った。
<実施例3>
感光性多官能モノマーの配合比を53質量%から58質量%に変更し、感光性ウレタンアクリレートオリゴマーの配合比を35質量%から30質量%に変更した以外は、実施例1と同様に、三次元成形用転写シート及び加飾樹脂成形品の製造並びに各種測定・評価を行った。
<実施例4>
感光性多官能モノマーの配合比を53質量%から63質量%に変更し、感光性ウレタンアクリレートオリゴマーの配合比を35質量%から25質量%に変更した以外は、実施例1と同様に、三次元成形用転写シート及び加飾樹脂成形品の製造並びに各種測定・評価を行った。
<比較例1>
感光性多官能モノマーの配合比を53質量%から48質量%に変更し、感光性ウレタンアクリレートオリゴマーの配合比を35質量%から40質量%に変更した以外は、実施例1と同様に、三次元成形用転写シート及び加飾樹脂成形品の製造並びに各種測定・評価を行った。
<比較例2>
感光性多官能モノマーの配合比を53質量%から48質量%に変更し、感光性ウレタンアクリレートオリゴマーの配合比を35質量%から40質量%に変更し、盛上部の高さを40μmに変更した以外は、実施例1と同様に、三次元成形用転写シート及び加飾樹脂成形品の製造並びに各種測定・評価を行った。
実施例1〜4及び比較例1〜2の結果を表1に示す。なお、表1には、測定された10点のマルテンス硬度の平均値とともに、測定された10点のマルテンス硬度のうちの最大値及び最小値も示す。
表1に示すように、多官能モノマー配合比を調整することにより、盛上部のマルテンス硬度を調整することができ、盛上部のマルテンス硬度を50N/mm2以上150N/mm2以下に調整することにより、インモールド成形の際に生じ得る盛上部の金型への貼り付き及び盛上部の割れを防止することができた。