JP4262528B2 - (−)−ビボ−クエルシトールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医農薬品の製造原料として有用な(−)−ビボ−クエルシトールの新規な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
クエルシトールは狭義には(+)−プロト−クエルシトールを指すが、広義にはシクロヘキサンペントールの総称であって、理論的には4種類のメソ体と6対の光学異性体からなる計16種類の異性体が存在しうる。そのうち次の3種類、すなわちドングリなど広く植物界に存在する(+)−プロト−クエルシトール、ユーカリの葉に存在する(−)−プロト−クエルシトール、及びガガイモ科の葉から単離された(−)−ビボ−クエルシトールが植物界から見出されている。その他では10種類の光学活性体と4種のラセミ体が化学的に合成されている。
【0003】
上記の広義のクエルシトール、すなわちシクロヘキサンペントール類の薬理作用としては、肺結核患者の心臓障害改善(例えば、非特許文献1参照)あるいは抗結核剤の心毒作用の改善(例えば、非特許文献2参照)などが報告されている。また、水酸遊離基補足作用を有する(例えば、非特許文献3参照)との報告もある。
【0004】
クエルシトールの中でもビボ−クエルシトールは、各種の医農薬の合成用中間体として有用性が期待されるデオキシイノサミンあるいはデオキシイノサミジンの合成原料として知られており(例えば、非特許文献4、非特許文献5参照。)、また光学活性体の(−)−ビボ−クエルシトールはそれ自体が血糖値低下効果を有することも知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
(−)−ビボ−クエルシトールを得る方法としては、次の2つの方法が知られている。第1にはガガイモ科等の植物の葉に微量に含まれている(−)−ビボ−クエルシトールを抽出し精製する方法(例えば、非特許文献6参照。)が知られている。第2にはミオ−イノシトールにアグロバクテリウム属またはサルモネラ属に属する微生物を作用させて、前記ミオ−イノシトールをクエルシトール((+)−プロト−クエルシトール、(−)−ビボ−クエルシトール、及び(+)−エピ−クエルシトールからなる群から選ばれるもの)へ変換させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかし、上記第1の植物から(−)−ビボ−クエルシトールを抽出する方法は、植物体中における含有量が少ないため、抽出と精製が困難であり、収率も低かった。具体的には、ガガイモ科植物の葉1kgからメタノール抽出、クロロホルム抽出、カラムクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーを経て、22mgの(−)−ビボ−クエルシトールが得られたに過ぎなかった。
【0007】
また、上記第2の方法は、副生成物として(+)−プロト−クエルシトール及び(+)−エピ−クエルシトールが生産されるため、(−)−ビボ−クエルシトールのみを得るためには精製操作が必要であり、また(−)−ビボ−クエルシトールの収量の面においても改善の余地があった。
【0008】
一方で、(−)−ビボ−クエルシトールの光学異性体である(+)−ビボ−クエルシトールの合成法として、L−ミオ−イノソースを出発原料とする方法(例えば、非特許文献7参照。)が知られている。しかし、かかる方法では、光学異性体の(+)−ビボ−クエルシトールが得られるものの、(+)体を(−)体に変換する方法は知られていない。また、ラセミ体である(±)−ビボ−クエルシトールについては、ミオ−イノシトールを出発原料として合成する方法が知られている(例えば、非特許文献8参照。)。かかる方法では、ラセミ体が得られるが、このラセミ体を光学活性体に変える方法及びラセミ体を光学分割する方法は知られていない。
【0009】
【特許文献1】
特開平11-12210号公報
【非特許文献1】
「プロブレミー・ツベルクレザ(Problemy Tuberkuleza)」,(ロシア), 1986年, 第64巻,第12号, p.35-38
【非特許文献2】
「パトロジチェスカヤ・フィジオロジヤ・イ・エクスペリメンタルナヤ・テラピヤ(Patologicheskaya Fiziologiya i Eksperimentalnaya Terapiya)」,(ロシア), 1986年, 第30巻, 第2号, p.68-71
【非特許文献3】
「プロシーディング・オブ・ザ・ロイヤル・ソサエティー・オブ・エジンバラ(Proceedings of the Royal Society of Edinburgh)」,(英国), 1994年, 第102B巻, p.269-272
【非特許文献4】
「ブレティン・オブ・ザ・ケミカル・ソサエティー・オブ・ジャパン(Bulletion of the Chemical Society of Japan)」, 1966年, 第39巻, p.1931
【非特許文献5】
「ブレティン・オブ・ザ・ケミカル・ソサエティー・オブ・ジャパン(Bulletion of the Chemical Society of Japan)」, 1971年, 第44巻, p.2804-2807
【非特許文献6】
「フィトケミストリー(Phytochemistry)」,(英国), 1998年, 第47巻, p.1297−1301
【非特許文献7】
「ヘルヴェティカ・チミカ・アクタ(Helvetica Chimica Acta)」,(スイス), 1950年, 第33巻, p.1594
【非特許文献8】
「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(Journal of the American Chemical Society)」,(米国), 1953年, 第75巻, p.402O-4026
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、それ自体が医薬品として有用であり、また医農薬品の製造原料としても有用な(−)−ビボ−クエルシトールを簡単な操作で大量かつ選択的に製造することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討を行った。その結果、ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換することのできる微生物を土壌から多数分離し、その中でも特に変換能の高い微生物を選抜し、その微生物を用いて(−)−ビボ−クエルシトールを効率よく製造する方法を確立することに成功して、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) エンテロバクター属に属する微生物であって、ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換する能力を有する微生物にミオ−イノシトールを作用させて、ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換することを特徴とする、(−)−ビボ−クエルシトールの製造方法。
(2) ミオ−イノシトールを含有する液体培地中で前記微生物を培養して、ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換し、得られた(−)−ビボ−クエルシトールを液体培地中に蓄積させて、該液体培地から(−)−ビボ−クエルシトールを採取することを特徴とする、(1)の方法。
(3) 前記微生物を培養することにより得られた菌体またはその破砕物を、ミオ−イノシトールを含む溶液中でミオ−イノシトールに作用させることを特徴とする、(1)の方法。
(4) 前記微生物がエンテロバクター・エスピーAB10114株(FERM P−19319)である、(1)〜(3)のいずれかの方法。
(5) ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換する能力を有する、エンテロバクター・エスピーAB10114株(FERM P−19319)またはその変異株。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明の(−)−ビボ−クエルシトールの製造方法は、エンテロバクター属に属する微生物であって、ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換する能力を有する微生物にミオ−イノシトールを作用させて、ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換することを特徴とする製造方法である。
【0015】
本製造方法によって得られる生成物は、(−)−ビボ−クエルシトールが100%である必要はないが、全生成物中の(−)−ビボ−クエルシトールの割合が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0016】
製造原料であるミオ−イノシトールは、動植物および微生物に広く分布しているもので、特に、穀物中に六燐酸エステルのCa、Mg塩であるフィチン酸として多量に存在している。したがって、例えば、公知の方法(ジャパンフードサイエンス、1985年、第24巻、第3号、p.73−80)により米糠等をアルカリ加水分解し、精製することによって得ることができる。
【0017】
本発明において使用する微生物は、エンテロバクター属に属する微生物であって、該微生物をミオ−イノシトールを含有する液体培地中で培養した場合に、ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換することができ、培養後に、全生成クエルシトール量に対して70%以上、好ましくは80%以上の量の(−)−ビボ−クエルシトールを含む培養液を提供できる菌株であればいずれの菌株でもよい。微生物は菌体そのものを用いてもよいし、菌体の破砕物を用いてもよい。
【0018】
ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換することのできるエンテロバクター属に属する微生物は多種存在するが、例えば、本発明者らによって同定された、以下のエンテロバクター・エスピーAB10114株(FERM P−19319)は、本発明において好適に用いることのできる菌株の例である。
【0019】
尚、菌株の同定の当たっては、新細菌培地学講座(第2版、近代出版)、医学細菌同定の手引き(第2版、近代出版)、細菌学実習提要(丸善)に準じて実験を行い、そして得られた実験結果を「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology」第1巻(1984年)を参考に判断して、細菌の同定を行った。
【0020】
AB10114株の菌学的性質は以下の通り。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
以上の通り、AB10114株の主性状は、グラム陰性の運動性短桿菌で、大きさは0.5〜0.8×0.7〜4.0μmである。嫌気条件下でも生育し、発酵的に糖から酸を産生し、オキシダーゼ陰性、カタラーゼ陽性という性質からEnterobacteriaceae科に属する細菌と判断される。さらに硫化水素を産生せず、アミノ酸デカルボキシラーゼが陰性という性質から、本細菌はエンテロバクター(Enterobacter)属に属する一菌株であると判断される。
【0026】
「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology」第1巻(1984年)465頁〜469頁によると、エンテロバクター属はエンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター・サカザキイ(Enterobacter sakazakii)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・ゲーゴビアエ(Enterobacter gergoviae)、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)の5つの種(species)から構成されている。AB10114株の菌学的性状を上記の既知の種と比較検討すると、AB10114株はエンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)に最も近縁の種とであると考えられる。しかし、糖から酸の生成試験において、アドニトール及びミオーイノシトールから酸を生成する点など、本菌株の有するいくつかの菌学的性質において、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)の性状とは一致しないので、公知のものと区別するために、本AB10114株は、エンテロバクター・エスピーAB10114株と命名され、産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−19319として寄託されている(寄託日は平成15年4月18日)。
【0027】
尚、本発明においては、ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換する能力を有する限り、エンテロバクター・エスピーAB10114株の変異株も好適に用いることができる。変異株は、例えば、エンテロバクター・エスピーAB10114株を紫外線照射、または、ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、メチルメタンスルフォネート(MMS)等によって処理することによって得ることができる。
【0028】
本発明の製造方法おけるミオ−イノシトールの(−)−ビボ−クエルシトールへの変換は、例えば、以下で述べるように、ミオ−イノシトールを含有する液体培地中で前記微生物を培養することによって行うことができる。培養によって生成し、液体培地中に蓄積した(−)−ビボ−クエルシトールを、該液体培地から採取することにより、(−)−ビボ−クエルシトールを製造することができる。
【0029】
ここで、用いる液体培地の組成は、目的を達することができる限り何等特別の制限はなく、合成培地・天然培地のいずれであってもよいが、炭素源、窒素源、有機栄養源、無機塩類等を含有する培地が好ましい。液体培地には炭素源として、原料のミオ−イノシトールを0.1〜20%、好ましくは5〜20%添加し、窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、あるいは尿素等を0.01%〜1.0%、好ましくは0.05〜0.5%添加するのが望ましい。また、有機栄養源として、酵母エキス、ペプトン、カザミノ酸を適量(0.005〜1.0%)添加すると、菌株によっては有効な場合がある。
【0030】
その他必要に応じ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、マンガン、亜鉛、鉄、銅、モリブデン、リン酸、硫酸等のイオンを生成することができる無機塩類を培地中に添加することが有効である。培養液の水素イオン濃度は特に調整せずとも培養できる場合が多いが、pH6〜10、好ましくはpH7〜9に調整して培養すると、効率よく(−)−ビボ−クエルシトールを得ることができる。
【0031】
培養条件は、菌株や培地の種類によっても異なるが、培養温度は5〜40℃、好ましくは20〜38℃であり、培養期間は通常1〜7日、好ましくは2〜5日である。また、培養は液体培地を振とうしたり、液体培地中に空気を吹き込むなどして好気的に行うことが好ましい。
【0032】
培養液から目的物を採取する方法は、通常の水溶性中性物質を単離精製する一般的な方法を応用することができる。例えば、培養液を活性炭やイオン交換樹脂などで処理することにより、クエルシトール異性体以外の不純物のほとんどを除くことができる。その後、再結晶法等の方法を用いることにより、目的物を単離することができる。
【0033】
本発明において主に用いる再結晶法に関しては、再結晶法に用いる溶媒等の種類によって結晶化の条件は異なるが、例えば、クエルシトールを水に溶解し、低級アルコールを上記0.5〜2倍の量加えることによって、混合溶媒系中で容易に結晶化することができる。具体的には、エタノールを用いて結晶化を行なう場合、温度や不純物の量により多少条件は変化するが、(−)−ビボ−クエルシトールの濃度を20〜50%に調製し、該溶液の体積に対し、0.5〜2倍のエタノールを加えればよい。生じた結晶は、ガラスフィルターや濾紙で母液より分離することができる。
【0034】
本発明の方法によれば、(−)−ビボ−クエルシトール以外のクエルシトールの量は非常に少なく、再結晶法により簡単にのぞくことができるが、設備等の事情により、イオン交換樹脂のカラムクロマトグラフィーを用いる方法などを用いてもよい。この場合、例えば、カーボハイドレイト リサーチ(Carbohydrate Research)、第166巻、第171頁〜第180頁(1987年)や、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサエティー(Journal of Chemical Society)、第73巻、第2399頁〜第2340頁(1951)に記載されている手法、すなわちホウ酸型強塩基性イオン交換樹脂カラムを調製し、ホウ酸の濃度を徐々に高めて流すことにより、クエルシトール異性体の各成分を分離する方法を応用することが有効である。このカラムを用いて、(+)−プロト−クエルシトール、(−)−ビボ−クエルシトール、及び(+)−エピ−クエルシトールなどのクエルシトール立体異性体の混合物をカラムに供すると、(+)−プロト−クエルシトール及び(−)−ビボ−クエルシトールは樹脂に保持されることなくカラムを素通りし、(+)−エピ−クエルシトールは、0.5M程度のホウ酸溶液を流すことにより溶出する。
【0035】
また、強塩基性陰イオン交換樹脂(OH-型)のカラムクロマトグラフィーもクエルシトール分離に有効である。例えば、(+)−プロト−クエルシトール及び(−)−ビボ−クエルシトールの混合溶液を本カラムに供し、イオン交換水を流すと、まず、(−)−ビボ−クエルシトールが溶出し、次いで、(+)−プロト−クエルシトールが溶出する。このようにしてカラムクロマトグラフィーで得られる溶出液を任意に分画し、カラムクロマトグラフィーを幾度か繰り返すか、または組み合わせることにより、純粋な(−)−ビボ−クエルシトール溶液を得ることができる。この(−)−ビボ−クエルシトール溶液から、上述のように再結晶させることにより、純粋な(−)−ビボ−クエルシトール結晶を得ることができる。
【0036】
生成するクエルシトール立体異性体の量および存在比は、菌の種類や培養日数により異なるが、上述した分離方法を単独あるいは組み合わせて、必要に応じて繰り返し用いることにより、培養液または反応液からクエルシトール立体異性体を適宜純粋な物質として単離することができる。
【0037】
本発明の製造方法におけるミオ−イノシトールの(−)−ビボ−クエルシトールへの変換はまた、前記微生物を培養することにより得られた菌体またはその破砕物を、ミオ−イノシトールを含む溶液中でミオ−イノシトールに作用させることによっても行うことができる。かかる反応により生成し、溶液中に蓄積した(−)−ビボ−クエルシトールを該溶液から採取することにより、(−)−ビボ−クエルシトールを製造することができる。
【0038】
ここで、菌体としては、(−)−ビボ−クエルシトールの製造に用いられた微生物を培養液から分離して集めた菌体を再度用いてもよく、また、前記微生物を別途適当な培養条件で培養して得たものを用いてもよい。集菌は、培養液から遠心分離、濾過など公知の方法により行えばよい。破砕物としては、培養によって得られた菌体を緩衝液中で超音波破砕等により破砕したものを使用することができる。
【0039】
ミオ−イノシトールを含む溶液としては、ミオ−イノシトールを含む液体培地または緩衝液などを挙げることができる。ミオ−イノシトールを含む液体培地としては、前記微生物を培養することによって(−)−ビボ−クエルシトールを製造した際に用いた培地と同様のものを用いてもよく、また別途前記微生物を培養した液体培地にミオ−イノシトールを加えて用いてもよい。ミオ−イノシトールを含む緩衝液としてはリン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド(Good’s)のCHES緩衝液などを10〜500mM、好ましくは20〜100mMの濃度で用い、溶液中のミオ−イノシトールの濃度は0.1〜5%程度とするのが好ましい。反応条件は、菌株や培地、緩衝液の種類によって異なるが、反応温度は15〜60℃、好ましくは25〜55℃であり、反応時間は1〜50時間、好ましくは3〜48時間であり、液体培地または緩衝液のpHは6〜10、好ましくは7〜9である。液体培地または緩衝液からの(−)−ビボ−クエルシトールの採取は、前記の培養液からの採取と同様の方法で行うことができる。
【0040】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、生成物の構造確認はNMRによって行った。また、生成物の純度は、一定濃度の溶液を作成し、高速液体クロマトグラフィーにより分析して、標準品と比較することにより算出した。
【0041】
【実施例1】
(−)−ビボ−クエルシトールの製造例
ミオ−イノシトール 10.0%(4000g)、酵母エキス1%、(NH4)2SO4 0.1%、K2HPO4 0.7%、KH2PO4 0.2%、MgSO4・7H2O 0.01%を含むpH無調整の液体培地40Lを、ジャーファンメーターでオートクレーブ滅菌した。該ジャーファンメーターにAB10114株を接種し、27℃で3日間培養した。培養液を連続遠心分離(8000rpm)し、上清を培養上清液とした。
【0042】
培養上清液を強酸性陽イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)C−20(H+型)(住友化学社製)4Lを充填したカラムに通過させ、その後このカラムに12Lのイオン交換水を通過させて洗浄した。この通過液および洗浄液を、強塩基性陰イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)A116(OH-型)(住友化学社製) 8Lを充填したカラムに通過させ、その後このカラムに24Lのイオン交換水を通過させて洗浄した。
【0043】
得られた通過液および水洗浄液中を減圧下で3Lまで濃縮し、エタノール3Lを加え、(−)−ビボ−クエルシトール粗結晶(1190g、純度98%以上、ペールホワイト)を得た。該粗結晶をイオン交換水25Lに再溶解し、エタノール2.5Lを加え、(−)−ビボ−クエルシトール結晶(1040g、純度98%以上、白色)を得た。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、医農薬品の製造原料として有用な(−)−ビボ−クエルシトールを、簡便な操作で大量かつ選択的に製造することができる。
Claims (5)
- エンテロバクター属に属する微生物であって、ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換する能力を有する微生物にミオ−イノシトールを作用させて、ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換することを特徴とする、(−)−ビボ−クエルシトールの製造方法。
- ミオ−イノシトールを含有する液体培地中で前記微生物を培養して、ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換し、得られた(−)−ビボ−クエルシトールを液体培地中に蓄積させて、該液体培地から(−)−ビボ−クエルシトールを採取することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記微生物を培養することにより得られた菌体またはその破砕物を、ミオ−イノシトールを含む溶液中でミオ−イノシトールに作用させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記微生物がエンテロバクター・エスピーAB10114株(FERM P−19319)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- ミオ−イノシトールを(−)−ビボ−クエルシトールに変換する能力を有する、エンテロバクター・エスピーAB10114株(FERM P−19319)またはその変異株。
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