JP4260466B2 - フッ素化スルホン酸エステルモノマー - Google Patents

フッ素化スルホン酸エステルモノマー Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池用隔膜、燃料電池用触媒バインダーポリマー、食塩電解用隔膜、リチウムイオンバッテリー用電解質膜等、各種のフッ素系高分子電解質の原料として有用な、スルホン酸誘導体基を有する新規フッ素化モノマー及びそのポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、燃料電池用隔膜、食塩電解用隔膜等の主要成分として、化学式(4)で表されるパーフルオロポリマーが主に採用されている。
【化3】
Figure 0004260466
(式中、pは、0〜1の整数、qは、1〜5の整数。)
このポリマーは、化学式(5)で表されるフッ素化モノマーとテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体を製膜した後、ケン化反応及び酸処理を施すことによって製造される。
【0003】
【化4】
Figure 0004260466
(式中、p及びqは、化学式(4)と同じ。)
【0004】
化学式(5)で表されるフッ素化モノマーの中でも、p=1、かつ、q=2〜3のモノマーから製造されるポリマーが広く用いられている。
p=1、かつ、q=2〜3のモノマーは、下記の反応により製造されている。
【化5】
Figure 0004260466
【0005】
ところで、化学式(4)で表されるポリマーにおいて、 p=0の場合は、p=1の場合と比べて、 主鎖とスルホン酸基の間のスペーサー部が短いため、p=1の場合よりも高いガラス転移温度と高い強度を発現する。したがって、このポリマーは、耐熱性の点で好ましい。
しかしながら、原料である、化学式(5)において、p=0であるモノマーの合成が困難であるという問題がある。すなわち、化学式(5)において、p=0であるモノマーを合成することを目的として、中間体CF3CF(COF)O(CF2qSO2Fから上記のp=1の場合と同様の脱炭酸ビニル化反応を行うと、環化反応が主反応となり、目的の短側鎖構造のフッ素化モノマーの収率が極めて低くなることが知られている。例えば、q=3の場合、フッ素化モノマーは得られるものの、副反応である環化反応が起こるために、その収率は高々50%程度であり、q=2の場合に至っては、環化反応のみが進行し、全くフッ素化モノマーは得られていなかった。
【0006】
化学式(5)において、p=0であるモノマーの他の合成法として、特許文献1には、塩素原子含有フルオロエポキシドを用いて合成する方法が開示されているが、この場合、原料である塩素原子含有フルオロエポキシドの合成が繁雑であり、その収率も低いために実用的ではない。
化学式(5)において、p=0であるモノマーの合成上の課題を解決するために、−SO2F基以外の構造の、スルホン酸に誘導可能なスルホン酸前駆体基を有するフッ素化モノマーの提案がなされている。例えば、特許文献2には、CF3CF(COF)OCF2CF2SO2FをNaOHと反応させて、カルボン酸フルオリド及びスルホン酸フルオリドをともにNa塩に変換した後、脱炭酸ビニル化反応を行い、化学式(6)で示すフッ素化モノマーを製造する方法が記載されている。
【0007】
CF2=CFOCF2CF2SO3Na (6)
化学式(6)のモノマーの他の製造法としては、CF3CF(COF)OCF2CF2SO2Fの脱炭酸反応で得られる環化生成物をNaOCH3と反応させる方法が、特許文献3に記載されている。
しかしながら、これらの方法で得られる化学式(6)で表されるフッ素化モノマーは、スルホン酸塩構造であるために蒸留精製ができない。そのため、高純度品を得ることが困難であり、さらに、重合後の製膜が困難であるという問題点がある。
【0008】
化学式(5)で表されるフッ素化モノマーは、さらに以下のような問題点も抱えている。
a)化学式(5)で表されるような、−SO2F基含有モノマー又はその重合体は、各種の条件下で有害なフッ化水素酸又はその前駆物質であるフッ素イオンを発生する危険性があるため、保存又は取り扱いに注意が必要である。例えば、このモノマー又はその重合体は、保存時、重合時又は成膜時等において、水、各種金属塩、各種オニウム塩、各種酸性物質、各種塩基性物質等の多様な種類の不純物や添加物質との反応により、又は反応器等の装置材質(及び水)との作用により−SO2F基が分解して、フッ化水素酸又はフッ素イオンを発生する場合がある。
【0009】
b)上記の合成反応のように、ヘキサフルオロプロペンオキシド(HFPO)を合成原料とする場合、合成時に副生するHFPOオリゴマー誘導体CF3CF2CF2[OCF(CF3)CF2tOCF=CF2(t=0〜3)と、目的とするフッ素化モノマーの構造及び沸点が類似しているために、両者を分離する工程が繁雑であり、さらに、収率低下の原因ともなる。
したがって、化学式(5)で表されるフッ素化モノマーと同等の重合性を有し、さらに、化学式(5)で表されるフッ素化モノマーの抱えている上記の合成・精製時の問題点及び取り扱い時の問題点を解決する新タイプのスルホン酸前駆体基含有モノマーはこれまで報告されていなかった。
【0010】
【特許文献1】
特開昭57−28024号公報
【特許文献2】
国際公開第98/43952号パンフレット
【特許文献3】
特公昭47−2083号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解消するものであり、1)化学式(5)で表されるフッ素化モノマーと同等の重合性を有し、2)化学式(5)におけるp=0相当の構造のモノマーを容易に製造でき、3)モノマー精製を阻害するような副生物がなく、4)モノマーやそのポリマーの取り扱い時にフッ酸の発生がなく、5)ポリマーにしたときに容易にスルホン酸基に誘導できるスルホン酸前駆体基を有する、新タイプのスルホン酸前駆体基含有モノマー、及びそのポリマーを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造のスルホン酸前駆体基を有するフッ素化モノマーが、化学式(5)で表されるフッ素化モノマーと同等の重合性を有し、かつ、そのポリマー中のスルホン酸エステル基を容易にスルホン酸基に誘導できることを見出し、さらには、このモノマーが、化学式(5)で表されるフッ素化モノマーの合成・精製時、又は取り扱い時の問題点を解決するものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0013】
(1) 化学式(1)で表されるフッ素化スルホン酸エステルモノマー。
【化6】
Figure 0004260466
(式中、nは、0〜2の整数、mは、1〜5の整数、Rfは、炭素数2〜9の全フッ素化炭化水素基、部分フッ素化炭化水素基、エーテル結合を含む全フッ素化炭化水素基或いは部分フッ素化炭化水素基の何れかである
(2) 該Rfは、
−CH 2 CF 3 、−CF 2 CH 3 、−CH 2 CHF 2 、−CH 2 CF 2 CF 3
−CH 2 CF 2 CHF 2 、−CH(CF 3 2 、−CH 2 CF 2 CF 2 CF 3
−C(CF 3 3 、−C 6 6 、−CH 2 CF 2 CHFCF 3
−CH 2 CF 2 CF 2 CF 2 CHF 2
−CH 2 CF 2 CF 2 CF 2 CF 2 CF 2 CHF 2
−CH 2 CH 2 CF 2 CF 2 CF 2 CF 3
−CH 2 CF(CF 3 )OCF 2 CF 2 CF 3
−CH 2 CF(CF 3 )OCF(CF 3 2 、−CH 2 CF 2 OCF 2 CF 3
、−CH 2 CF 2 CF 2 CH 2 OCH 2 CH 2 OCH 2 CH 2 OCH 3
の中から選ばれることを特徴とする(1)に記載のフッ素化スルホン酸エステルモノマー。
(3) 化学式(1)において、Rfは、−CR12CHR34(R1、R2、R3及びR4は、それぞれ、フッ素原子、水素原子から選ばれる基であり、 1 、R 2 、R 3 及びR 4 の内、少なくとも1個はフッ素原子である)である(1)記載のフッ素化スルホン酸エステルモノマー。
(4) 化学式(1)において、n=0である(1)〜(3)のいずれかに記載のフッ素化スルホン酸エステルモノマー。
(5) テトラフルオロエチレンと化学式(1)で表されるフッ素化スルホン酸エステルモノマーとを共重合させたフッ素化スルホン酸エステル基含有ポリマー。
(6) 化学式(2)で表されるスルホン酸と、
【化7】
Figure 0004260466
(式中、n及びmは、化学式(1)と同じ)
化学式(3)で表されるフルオロオレフィン
CR12=CR34 (3)
(式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ、フッ素原子、水素原子から選ばれる基であり、 1 、R 2 、R 3 及びR 4 の内、少なくとも1個はフッ素原子である
とを反応させることを特徴とする(3)記載のフッ素化スルホン酸エステルモノマーの製造方法。
(7) 化学式(2)で表されるスルホン酸と、化学式(3)で表されるフルオロオレフィンとを、0.01〜3MPaの圧力範囲、かつ、30〜200℃の温度範囲で反応させることを特徴とする(6)記載のフッ素化スルホン酸エステルモノマー製造方法。
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
一般に、フルオロスルホン酸のアルキルエステルは非常に不安定で、空気中の水分とも容易に反応して加水分解する。そのため、このような反応性の高さを利用して、フルオロスルホン酸のアルキルエステルは、むしろアルキル化剤として用いられているほどである。
しかしながら、化学式(1)で表される本発明のフッ素化スルホン酸エステルモノマーのように、アルキルエステル構造の替わりにフッ素化炭化水素基エステル構造とすることによって、スルホン酸エステル基の安定性が格段に向上し、モノマー取り扱い時、重合操作時、ポリマーの製膜時のいずれの場合にも安定に取り扱うことが可能になった。
【0018】
本発明のフッ素化スルホン酸エステルモノマーから製造されるポリマー中のスルホン酸エステル基は、上記のように安定であるにもかかわらず、化学式(5)で表されるフッ素化モノマーの重合体中の−SO2F基と同様の方法で、スルホン酸塩基やスルホン酸基に誘導することができる。
本発明のフッ素化スルホン酸エステルモノマーにおける−SO3Rf基は、化学式(5)で表されるフッ素化モノマー中の−SO2F基とは異なり、もし、保存中又は取り扱い中に何らかの理由で分解しても、有害なフッ化水素酸を発生する危険性は少ない。
【0019】
本発明のフッ素化スルホン酸エステルモノマーは、一般に、同一構造の−SO2F誘導体よりも高い沸点を示す。したがって、本発明のモノマーの場合には、化学式(5)のフッ素化モノマーの場合に問題となるHFPOオリゴマー誘導体CF3CF2CF2[OCF(CF3)CF2tOCF=CF2(t=0〜3)との分離は容易である。
さらに、後に述べるように、本発明のモノマーは、化学式(5)のモノマーと違って、p=0の場合でも、各種の合成方法により、良好な収率で合成することができる。
【0020】
本発明のフッ素化スルホン酸エステルモノマーにおいて、Rf基は、フッ素化炭化水素基又はその置換体である。フッ素化炭化水素基又はその置換体の例としては、a)全フッ素化炭化水素基、b)部分フッ素化炭化水素基、c)a)又はb)の基中にエーテル結合を含む基、d)a)、b)又はc)の基に塩素原子及び臭素原子から選ばれる少なくとも1つの原子を1個又は2個含有するもの等が挙げられる。
【0021】
Rf基が水素原子の置換体である場合、[水素原子の数]/[炭素原子の数]の比は、水素原子の位置にも依存するが、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下である。[水素原子の数]/[炭素原子の数]の比が大きすぎると、−SO3Rf部の耐加水分解性が低下しやすくなる。
Rf基にエーテル結合を含む場合、[エーテル結合の数]/[炭素原子の数]の比は、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.35以下、さらに好ましくは0.25以下、最も好ましくは0.2以下である。[エーテル結合の数]/[炭素原子の数]の比が大きすぎると、Rf基部分の安定性が低下しやすくなる。
【0022】
Rf基を構成する炭素原子数には制約は無いが、操作性の点からは1〜12個の範囲が好ましく、2〜9個がより好ましく、2〜6個がさらに好ましく、2〜4個が最も好ましい。
Rf基の構造の具体例を以下に示す。
−CH2CF3、−CF2CH3、−CH2CHF2、−CH2CF2CF3
−CH2CF2CHF2、−CH(CF32、−CH2CF2CF2CF3
−C(CF33、−C66、−CH2CF2CHFCF3
−CH2CF2CF2CF2CHF2
−CH2CF2CF2CF2CF2CF2CHF2
−CH2CH2CF2CF2CF2CF3
−CH2CF(CF3)OCF2CF2CF3
−CH2CF(CF3)OCF(CF32、−CH2CF2OCF2CF3
、−CH2CF2CF2CH2OCH2CH2OCH2CH2OCH3
化学式(1)において、nは、0〜2の整数であるが、交換基密度を高くしても充分な強度を保てるので、nは、0又は1が好ましく、0がより好ましい。mは、1〜5の整数であるが、化合物の安定性、原料製造の容易さ、重合体の性能等を勘案すると、mは、2又は3が好ましく、2がより好ましい。
【0023】
化学式(1)で表されるエステルモノマーの製造方法には制約はない。例えば、以下に示すような方法が挙げられる。
1)エステル化→ビニル化法
化学式(7)で表される酸フルオリドを、炭酸ナトリウム等の炭酸塩と反応させて、
【化8】
Figure 0004260466
【0024】
(式中、n及びmは、化学式(1)と同じ)
【0025】
化学式(8)で表されるカルボン酸塩に変換した後、
【化9】
Figure 0004260466
(式中、Mは、Na、K等のアルカリ金属等、n及びmは、化学式(1)と同じ)
【0026】
塩基の存在下で、相当するフルオロアルコール(RfOH)と反応させるか、相当するフルオロアルコールのアルカリ金属アルコキシドと反応させて化学式(9)で表されるエステルを製造し、
【化10】
Figure 0004260466
(式中、Mは、化学式(8)と同じ、n、m及びRfは、化学式(1)と同じ)
加熱、脱炭酸反応により化学式(1)で表されるビニルモノマーとする方法。
【0027】
2)ビニル体のエステル化法
化学式(10)
【化11】
Figure 0004260466
(式中、Xは、F、Cl等のハロゲン原子、n及びmは、化学式(1)と同じ)
で表されるスルホン酸ハライドと、塩基の存在下、相当するフルオロアルコール(RfOH)とを反応させてエステル体を得る方法。 又は最初に、化学式(10)で表される化合物中のビニル基の2重結合を、塩素や臭素等のハロゲン付加で保護しておいてから、フルオロアルコール又はそのアルコキシドと反応させ、最後に亜鉛等を用いて脱ハロゲン化反応を行い、ビニル基を再生することもできる。
【0028】
3) スルホン酸塩からの製造法
化学式(7)で表される化合物をアルカリで処理して、まず化学式(11)で表される塩に変換した後、加熱、脱炭酸して、
【化12】
Figure 0004260466
(式中、MはNa、K等のアルカリ金属等、n及びmは化学式(1)と同じ)
化学式(12)で表されるスルホン酸塩に変換し、
【0029】
【化13】
Figure 0004260466
(式中、Mは、化学式(11)と同じ、n及びmは、化学式(1)と同じ)
次いで、リン塩素化物等で塩素化してスルホン酸クロリドとし、最後に2)の方法でエステル体を得る方法。
この方法は、2)の方法の一部であるが、n=0のエステル体を得る場合に特に有用である。
【0030】
4)スルホン酸へのフルオロオレフィンの付加反応
化学式(2)で表されるスルホン酸と、
【化14】
Figure 0004260466
(式中、n及びmは、化学式(1)と同じ)
化学式(3)で表されるフルオロオレフィンとを反応させる方法。
CR12=CR34 (3)
(式中、R1、R2、R3及びR4は、いずれも、フッ素原子、水素原子、アルキル基及びフルオロアルキル基から選ばれる基であり、分子内には、少なくとも1個のフッ素原子を有する)
【0031】
この場合、Rf=−CR12CHR34の化合物が製造される。
この方法で用いられる、化学式(3)で表されるフルオロオレフィンの具体例としては、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、3,3,3−トリフルオロプロペン等が挙げられ、中でもフッ化ビニリデンが好ましい。
この方法における反応条件としては、化学式(2)で表されるスルホン酸と、化学式(3)で表されるフルオロオレフィンとを、0.01〜3MPaの圧力範囲、好ましくは0.1〜2MPaの圧力範囲で加圧混合するものであり、好ましくは30〜200℃、より好ましくは50〜150℃の温度で行う。
【0032】
また、予め、化学式(2)で表されるスルホン酸中のビニル基の2重結合を、塩素や臭素等のハロゲン付加で保護しておいてから、化学式(3)で表されるフルオロオレフィンと反応させ、最後に亜鉛等を用いて脱ハロゲン化反応を行い、ビニル基を再生することもできる。この場合、フルオロオレフィンとの反応温度は制限されるものではないが、通常、−20〜200℃、好ましくは0〜150℃である。
本発明の化学式(1)で表されるフッ素化スルホン酸エステルモノマーは、化学的に安定であり、室温及び大気下で安定に取り扱える。
【0033】
本発明のフッ素化スルホン酸エステルモノマーは、単独重合させてもよいが、他のラジカル重合性のモノマーと共重合させてもよい。機械的強度の高い高重合体を製造するためには、共重合の方が好ましい。本発明のモノマーを共重合させる場合、共重合モノマーとしては、1種又は2種以上のフッ素化オレフィン、1種又は2種以上の非フッ素化オレフィン(例えば、エチレン)、フッ素化オレフィンと非フッ素化オレフィン(例えば、アルキルビニルエーテル)の組み合わせ等、いずれでもよい。各種の共重合モノマーの中でも、化学的安定性の観点からは、フッ素化オレフィンが好ましく、パーフルオロ(クロロ)オレフィンがより好ましく、テトラフルオロエチレン(TFE)及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)がさらに好ましく、TFEが最も好ましい。
【0034】
共重合モノマーとして使用されるフッ素化オレフィンとしては、例えば、テトラフルオロエチレンの他、トリフルオロクロロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル等が挙げられる。共重合モノマーとして使用されるフッ素化オレフィンとしては、スルホンアミド基、スルホンイミド基、スルホニルフルオリド基、カルボン酸エステル基等の極性基を含むものでもよい。これらの各種の共重合モノマーは複数の種類を組み合わせて使用することもでき、共重合体の性質を調節する目的で特定の共重合モノマーを少量添加して用いてもよい。
【0035】
本発明のフッ素化スルホン酸エステル基含有ポリマーの主たる目的は、燃料電池用隔膜等の高分子電解質としての用途である。このポリマーから誘導されるスルホン酸基は、例えば、疎水性フッ素ポリマーの場合には、これを親水化する効果を有し、ポリマー物性の改質の目的に用いることもできる。したがって、このポリマーが共重合体の場合、ポリマー中のフッ素化スルホン酸エステルモノマー単位の割合は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、最も好ましくは5モル%以上である。
【0036】
特に、このポリマーを燃料電池用隔膜等の高分子電解質として用いる場合には、スルホン酸エステル基の含有量は、スルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換したときの交換基容量(スルホン酸基1mol当たりのポリマー重量)で表すと、500〜1500g/molの範囲が好ましく、600〜1200g/molの範囲がより好ましい。
本発明のフッ素化スルホン酸エステルモノマーの単独重合及び共重合は、一般的にはラジカル重合、放射線重合等により行われる。具体的な重合方法としては、特開昭57−92026号公報等に記載されているような溶液重合、水等を媒体とした懸濁重合及び乳化重合の他に、塊状重合、ミニエマルジョン重合、マイクロエマルジョン重合等、いずれの方法も採用可能である。重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤の他、パーフルオロ過酸化物等を用いることができる。
【0037】
以上の方法で製造されたフッ素化スルホン酸エステル基含有ポリマーは新規物質であり、良好な溶融製膜性を有する。ポリマー中のスルホン酸エステル基は、容易にスルホン酸基に変換されることができる。特に、製膜後の膜をスルホン酸に変換する際、従来の−SO2F基を有するポリマーから変換するよりも変換前後の寸法変化が少ないという特徴を有する。したがって、このポリマーは、上記の方法のほか、従来の−SO2F基を有するポリマーをエステル化する等の方法で製造したものであっても、本発明の範囲に含まれるものである。
【0038】
上記スルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換する際には、従来の−SO2F基を有するポリマーと同様の条件を採用することができる。すなわち、このポリマーをアルカリ性物質及び/又は酸で処理することにより、高分子電解質に変換される。本発明のスルホン酸エステル基を含む重合体は、アルカリ性物質で処理してケン化することによってスルホン酸塩型の高分子電解質となり、酸で処理することによってスルホン酸型の高分子電解質にできる。
【0039】
スルホン酸型の高分子電解質を製造する際は、通常は、温和な条件で効率的に反応を進行させるために、一旦、アルカリ性物質で処理してスルホン酸塩型とし、次いで、酸で処理することによりスルホン酸型とする場合が多い。
ここで使用されるアルカリ性物質としては、NaOHやKOHのような無機アルカリ物質のほかに、各種の有機アミン化合物と水との混合物(例えば、トリエチルアミン・水系混合物、ジエチルアミン・水系混合物)が含まれる。アルカリ性物質で処理する条件は、従来の−SO2F基含有ポリマーを処理する場合と同様でよく、例えば、NaOH水溶液又はKOH水溶液中、室温〜100℃で行われる。この際、アルコール、水溶性エーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒を混合してもよい。
【0040】
酸で処理する場合は、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の強酸の水溶液中、室温〜100℃で行われる。最後に充分水洗することにより、目的のスルホン酸型高分子電解質が得られる。
本発明のフッ素化スルホン酸エステルモノマーは、化学式(5)で表されるフッ素化モノマーと同等の重合性を有し、化学式(5)におけるp=0相当の構造のモノマーも容易に製造でき、精製を阻害するような副生物もなく、フッ酸の発生源となる基も有さないことから、化学式(5)で表されるフッ素化モノマーの取り扱い容易な代替モノマーとして有用である。またこのモノマー単位を含有するフッ素化スルホン酸エステル基含有ポリマーは、そのスルホン酸エステル基を容易にスルホン酸基に誘導することができることから、燃料電池用隔膜、燃料電池用触媒バインダーポリマー、リチウムイオンバッテリー用電解質膜や食塩電解用隔膜等の各種のフッ素系高分子電解質の原料として有用である。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0042】
【実施例1】
化学式(13)
【化15】
Figure 0004260466
で表されるビニル化合物22.3gを20gのジメトキシエタンに溶かし、これに10.1gのトリエチルアミンを加えた。次に、この溶液を氷冷し、その中に16.8gの(CF32CHOHを40分間かけて滴下した。そのまま0℃で1.5時間攪拌を続け、ガスクロマトグラフィーにより化学式(13)で示されるビニル化合物がほぼ消失したことを確認した後、反応溶液を氷水中に注ぎ、下層を分離した。下層を数回水洗した後、化学式(14)
【0043】
【化16】
Figure 0004260466
で表されるエステルモノマー24.7g(収率83%)を得た。
得られたモノマーの沸点は80℃/2.7×103Paであった。
【0044】
モノマーの構造を19F−NMRにより確認した。
19F−NMR δ(CFCl3基準):−146.8(q,1F)、−138.7(ddt,1F)、−124.7(dd,1F)、−117.3(dd,1F)、−114.8(s,2F)、−86.9(s,2F)、−82.5(s,3F)、−80.5(ABq,2F)、−75.8ppm(d,6F)
【0045】
【実施例2】
化学式(13)で表されるビニル化合物44.6gを30gのジメトキシエタンに溶かし、20.2gのトリエチルアミンを加えた。次に、この溶液を氷冷し、その中に20.0gのCF3CH2OHを30分間で滴下した。そのまま0℃で30分間攪拌を続け、ガスクロマトグラフィーにより化学式(13)で示されるビニル化合物が消失したことを確認した後、反応溶液を氷水中に注ぎ、下層を分離した。下層を数回水洗した後、化学式(15)
【化17】
Figure 0004260466
で表されるエステルモノマー48.5g(収率92%)を得た。得られたモノマーの沸点は85℃/2.7×103Paであった。
【0046】
モノマーの構造を19F−NMRで確認した。
19F−NMR δ(CFCl3基準):−146.6(q,1F)、−138.6(ddt,1F)、−124.4(dd,1F)、−116.9(dd,1F)、−115.9(s,2F)、−86.7(s,2F)、−82.2(s,3F)、−80.9(ABq,2F)、−77.5ppm(t,3F)
【0047】
【実施例3】
化学式(13)で表されるビニル化合物44.6gを30gのジメトキシエタンに溶かし、15.2gのトリエチルアミンを加えた。次に、この溶液を氷−食塩浴で冷却し、その中に19.8gのCHF2CF2CH2OHを40分間かけて滴下した。そのまま30分間攪拌を続けた後、反応溶液を氷水中に注ぎ、下層を分離した。下層を数回水洗した後、化学式(16)
【化18】
Figure 0004260466
で表されるエステルモノマー48.6g(収率87%)を得た。得られたモノマーの沸点は103℃/2.7×103Paであった。
【0048】
モノマーの構造を19F−NMRで確認した。
19F−NMR δ(CFCl3基準):−146.7(s,1F)、−139.7(d,2F)、−138.7(dd,1F)、−126.5(t,2F)、−124.4(dd,1F)、−117.0(dd,1F)、−115.9(s,2F)、−86.7(s,2F)、−82.3(s,3F)、−81.0ppm(ABq,2F)
【0049】
【実施例4】
国際公開第98/43952号パンフレットに記載の方法にしたがって合成した13.6gのCF2=CFOCF2CF2SO3Naを、17.6gの五塩化リンと混合し、窒素気流中、150℃に加熱した。そのまま常圧で留出物を捕集し、17.2gの油状物を得た。
得られた油状物の15.9gに対して、15gの臭素を加え、室温で27時間攪拌した。常圧で190℃まで加熱して留出物を除き、残った液を減圧蒸留(沸点90℃/1.3×103Pa)して5.4gのスルホン酸クロリドCF2BrCFBrOCF2CF2SO2Clを得た。
【0050】
得られたスルホン酸クロリドの構造を19F−NMRで確認した。
19F−NMR δ(CFCl3基準):−110.7(s,2F)、−84.1(d,1F)、−79.8(d,1F)、−72.9(s,1F)、−64.8ppm(s,2F)
窒素気流中、0.48gの水素化ナトリウムディスパージョン(水素化ナトリウム含有率60%)をヘキサンで洗浄後、10mlのジメトキシエタンを加え、0℃に冷却しておき、1.1gのCF3CH2OHを滴下した。この溶液を0℃で0.5時間攪拌後、次に、5.0gの上記スルホン酸クロリドを滴下した。さらに0℃で1.5時間攪拌後、水を加え、CFC43−10meeで抽出した。溶媒を減圧留去後、5.4gの無色油状物を得た。この油状物は19F−NMRからエステル体CF2BrCFBrOCF2CF2SO3CH2CF3であることが確認された。
【0051】
19F−NMR δ(CFCl3基準):−115.5(s,2F)、−85.9(d,1F)、−81.6(d,1F)、−76.2(s,3F)、−73.0(s,1F)、−64.8ppm(s,2F)
上記エステル体5.0g、亜鉛粉末0.83g及びN−メチルピロリドン15mlを混合し、80℃で1時間加熱攪拌した。反応混合物をクーゲルロール蒸留装置に仕込み、そのまま常圧で200℃まで加熱し、留出物を捕集し、1.6gの油状物を得た。この油状物は19F−NMRからエステルモノマーCF2=CFOCF2CF2SO3CH2CF3であることが確認された。
19F−NMR δ(CFCl3基準):−135.2(dd,1F)、−123.8(dd,1F)、−118.4(s,2F)、−115.8(dd,1F)、−84.7(s,2F)、−77.2ppm(t,3F)
【0052】
【実施例5】
窒素気流中、1.76gの水素化ナトリウムディスパージョン(水素化ナトリウム含有率60%)をヘキサンで洗浄後、40mlのジメトキシエタンを加え、−30℃に冷却し、8.8gの(CF32CHOHを滴下した。この溶液を0℃に昇温して0.5時間攪拌後、実施例4と同様の方法で合成した、20gのスルホン酸クロリドCF2BrCFBrOCF2CF2SO2Clを滴下した。0℃で1.5時間攪拌後、水を加え、CFC43−10meeで抽出した。溶媒を減圧留去後、22.8gの無色油状物を得た。
【0053】
上記油状物に、亜鉛粉末3.6g及びN−メチルピロリドン50mlを混合し、80℃で1時間加熱攪拌した。反応混合物から減圧で揮発成分を回収し、さらに再蒸留して10.2gの油状物を得た。沸点は35℃/46Paであった。この油状物は19F−NMRからエステルモノマーCF2=CFOCF2CF2SO3CH(CF32であることが確認された。
19F−NMR δ(CFCl3基準):−137.5(dd,1F)、−122.5(dd,1F)、−114.7(dd,1F)、−113.9(s,2F)、−84.4(s,2F)、−74.6ppm(d,6F)
【0054】
【実施例6】
窒素気流中、1.98gの水素化ナトリウムディスパージョン(水素化ナトリウム含有率60%)をヘキサンで洗浄後、20mlのジメトキシエタンを加え、0℃に冷却し、4.5gのCF3CH2OHを10mlのジメトキシエタンに溶かした溶液を滴下した。この溶液を室温で2.5時間攪拌し、CF3CH2ONa溶液を調製した。一方、別容器に5.3gの炭酸ナトリウムを20mlのジメトキシエタンに分散させ、CF3CF(COF)OCF2CF2SO2Fを、温度が40℃以下になるように保持しながら滴下した。40℃で1時間攪拌を続けた後、この溶液を0℃に冷却し、その中に上記CF3CH2ONa溶液を滴下した。室温で1日攪拌を続けた後、溶媒を減圧で留去して28gの粗エステルCF3CF(CO2Na)OCF2CF2SO3CH2CF3を調製した。
【0055】
次に、5.0gの上記粗エステルを20mlのジグライムに溶解し、150℃で1時間加熱した。この溶液をガスクロマトグラフィー及び19F−NMRで分析したところ、実施例4で得られたものと同じCF2=CFOCF2CF2SO3CH2CF3が生成していることが確認された。
【0056】
【実施例7】
ステンレス製200ml耐圧容器に、実施例1で得られたエステルモノマー(使用前に回転バンド蒸留装置で精留したもの)15g、30gのHFC43−10mee及び重合開始剤として(CF3CF2CF2COO)2の5%HFC43−10mee溶液0.64gを入れ、容器内を充分に窒素置換した後、TFEで0.3MPaに加圧した。25℃で攪拌しながら、内圧を0.3MPaに保つよう適宜TFEを追加圧入した。3時間反応させた後、放圧し、白色の膨潤した固形物を得た。この固形物をアセトンで洗浄、乾燥して3.7gの白色粉末を得た。この粉末は280℃でプレス製膜可能であり、得られた厚さ80μmのフィルムのIRスペクトルからエステル基の吸収(1460cm-1)が確認された。
【0057】
得られた重合体フィルムを、KOH/ジメチルスルホキシド/水(3:6:11/質量比)中、90℃で1時間浸漬して加水分解反応を行った。水洗後、次に4N硫酸中、90℃で1時間浸漬し、水洗、乾燥してスルホン酸型のフィルムに変換した。
【0058】
【実施例8】
エステルモノマーとして、実施例2で得られたもの(使用前に回転バンド蒸留装置で精留した)を用いた以外、実施例6と同様に重合を行った。3.5時間反応させた後、放圧し、白色の膨潤した固形物を得た。この固形物をアセトンで洗浄、乾燥して3.2gの白色粉末を得た。この粉末は270℃でプレス製膜可能であり、得られた厚さ80μmのフィルムのIRスペクトルからエステル基の吸収(1460cm-1)が確認された。
【0059】
【実施例9】
化学式(13)
【化19】
Figure 0004260466
で表されるビニル化合物162gを120mlのHFC43−10meeに溶解させ、室温で61gの臭素を滴下した。室温でしばらく攪拌を続けた後、過剰の臭素と溶媒を留去した後、減圧蒸留(沸点110℃/6.7kPa)を行うことによって201gの無色液体が得られた。この液体は、19F−NMRより、化学式(17)で表される臭素付加体
【0060】
【化20】
Figure 0004260466
であることが確認された(収率91%)。
【0061】
19F−NMR:δ(CFCl3基準)−146.6(s,1F)、−114.0(s,2F)、−87.5(dd,1F)、−83.6(dd,1F)、−81.5(s,3F)、−81.0(ABq,2F)、−73.0(d,1F)、−65.0(s,2F)、43.4ppm(s,1F)
【0062】
次に、水酸化ナトリウム25.2gを溶解させた200mlのエタノール溶液を0℃に冷却し、得られた化学式(17)で表される臭素付加体182.1gを滴下し、0℃で1時間、室温で1.5時間、さらに60℃で1時間攪拌させた。この反応溶液を室温まで冷却させ、セライトを使ってこの溶液を濾過した後、濾液を減圧濃縮すると、淡黄色固体176.2gが得られた。この固体は、19F−NMRより化学式(18)で表されるスルホン酸ナトリウム塩
【化21】
Figure 0004260466
であることが確認された(収率94%)。
【0063】
19F−NMR:δ(CFCl3基準)−145.9(d,1F)、−118.2(s,2F)、−86.0(dd,1F)、−82.2(dd,1F)、−80.5(s,3F)、−80.0(ABq,2F)、−73.2(s,1F)、−65.0ppm、(s,2F)
【0064】
得られたスルホン酸ナトリウム塩(18)26.5gに濃硫酸30mlを加えて溶解後、減圧蒸留(沸点125〜130℃/0.13kPa)を行うことにより17.7gの無色液体が得られた。この液体は、19F−NMR、1H−NMRより、化学式(19)で表されるスルホン酸
【化22】
Figure 0004260466
であることが確認された(収率69%)。
【0065】
19F−NMR:δ(CFCl3基準)−146.6(s,1F)、−116.9(s,2F)、−87.5(t,1F)、−83.0(t,1F)、−81.5(s,3F)、−80.6(ABq,2F)、−73.2(d,1F)、−65.0ppm(s,2F)
1H−NMR:δ(Me4Si基準)12.5ppm(s,1H)、
【0066】
ステンレス製100ml耐圧容器に、化学式(19)で表される上記スルホン酸14.4gを入れ、フッ化ビニリデンで0.4MPaに加圧した。25℃で攪拌しながら内圧を0.4MPaに保つように適宜フッ化ビニリデンを追加圧入した。フッ化ビニリデンの圧力低下が収まってから、さらに30分間、内圧を0.4MPaに保った後、放圧することによって15.4gの無色液体が得られた。この液体は19F−NMR、1H−NMRより、化学式(20)で表されるスルホン酸エステル
【化23】
Figure 0004260466
であることが確認された(収率97%)。
【0067】
19F−NMR:δ(CFCl3基準)−146.6(s,1F)、−115.0(s,2F)、−87.4(t,1F)、−83.0(t,1F)、−81.3(s,3F)、−80.6(ABq,2F)、−72.8(d,1F)、−64.9(s,2F)、―59.6ppm(s,2F)
1H−NMR:δ(Me4Si基準)1.8ppm(t,3H)
【0068】
窒素気流下、化学式(20)で表される上記エステル体11.3g、亜鉛粉末2.2g及びアセトニトリル40mlを混合し、50℃で5分攪拌後、この反応混合物を濾過した。濾液を減圧濃縮後、減圧蒸留する(沸点66〜67.5℃/0.8kPa)ことにより、5.3gの無色液体が得られた。この液体は、19F−NMR、1H−NMR、ガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GC−MASS)より、化学式(21)で表されるスルホン酸エステルモノマー
【化24】
Figure 0004260466
であることが確認された(収率62%)。
【0069】
19F−NMR:δ(CFCl3基準)−146.5(s,1F)、−138.6(dd,1F)、−124.3(dd,1F)、―116.8(dd,1F)、−115.5(s,2F)、−86.5(q,2F)、−82.1(s,3F)、−80.8(q,2F)、−60.1ppm(s,2F)
1H−NMR:δ(Me4Si基準)2.0ppm(t,3H)
EI−MS:m/z 100、97、81、65
CI−MS:526(M+NH4 +
【0070】
【実施例10】
ステンレス製200ml耐圧容器に、実施例9で得られた化学式(21)で表されるスルホン酸エステルモノマー5g、15gのHFC43−10mee及び重合開始剤として(CF3CF2CF2COO)2の5%HFC43−10mee溶液0.12gを入れ、容器内を充分に窒素置換した後、TFEで0.3MPaに加圧した。23℃で攪拌しながら内圧を0.3MPaに保つように適宜TFEを追加圧入した。1時間反応させた後、放圧することによって白色の膨潤した固形物を得た。この固形物をメタノールで洗浄、乾燥して、3.3gの白色粉末を得た。この粉末は280℃でプレス製膜可能であり、得られたフィルムのIRスペクトルからエステル基の吸収(1415cm-1)が確認された。
【0071】
【実施例11】
国際公開第98/43952号パンフレットに記載の方法にしたがって合成した15.0gのCF2=CFOCF2CF2SO3Naを、21mlの濃硫酸と混合し、減圧蒸留を行う(沸点90〜130℃/0.13kPa)ことにより、5.2gの無色液体が得られた。この液体は19F−NMR、1H−NMRより、CF2=CFOCF2CF2SO3Hであることが確認された(収率30%、純度80%)。
【0072】
19F−NMR:δ(CFCl3基準)−137.7(dd,1F)、−124.2(dd,1F)、―118.9(s,2F)、−116.8(dd,1F)、−86.0ppm(s,2F)
1H−NMR:δ(Me4Si基準)10.5ppm(s,1H)
ステンレス製100ml耐圧容器に、CF2=CFOCF2CF2SO3H1.0gを入れ、フッ化ビニリデンで0.5MPaに加圧した。100℃で攪拌しながら内圧を0.5MPaに保つように適宜フッ化ビニリデンを追加圧入した。5時間反応させた後、放圧することによって、1.25gの油状物が得られた。この油状物は19F−NMR、ガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GC−MASS)より、CF2=CFOCF2CF2SO3CF2CH3であることが確認された。
【0073】
19F−NMR:δ(CFCl3基準)−137.2(dd,1F)、−122.8(dd,1F)、―115.5(dd,1F)、−114.3(s,2F)、−84.5(s,2F)、−58.9ppm(s,2F)
EI−MS:m/z 100、97、81、65
CI−MS:360(M+NH4 +
【0074】
【発明の効果】
本発明のフッ素化スルホン酸エステルモノマーは、化学式(5)で表されるフッ素化モノマーと同等の重合性を有し、化学式(5)におけるp=0相当の構造のモノマーも容易に製造することができ、精製を阻害するような副生物もなく、フッ酸の発生源となる基も有さないことから、化学式(5)で表されるフッ素化モノマーの取り扱い容易な代替モノマーとして有用である。
【0075】
また、このモノマー単位を含有するフッ素化スルホン酸エステル基含有ポリマーは、そのスルホン酸エステル基を容易にスルホン酸基に誘導できることから、燃料電池用隔膜、燃料電池用触媒バインダーポリマー、リチウムイオンバッテリー用電解質膜、食塩電解用隔膜等の各種のフッ素系高分子電解質の原料として有用である。

Claims (7)

  1. 化学式(1)で表されるフッ素化スルホン酸エステルモノマー。
    Figure 0004260466
    (式中、nは、0〜2の整数、mは、1〜5の整数、Rfは、炭素数2〜9の全フッ素化炭化水素基、部分フッ素化炭化水素基、エーテル結合を含む全フッ素化炭化水素基或いは部分フッ素化炭化水素基の何れかである
  2. 該Rfは、
    −CH 2 CF 3 、−CF 2 CH 3 、−CH 2 CHF 2 、−CH 2 CF 2 CF 3
    −CH 2 CF 2 CHF 2 、−CH(CF 3 2 、−CH 2 CF 2 CF 2 CF 3
    −C(CF 3 3 、−C 6 6 、−CH 2 CF 2 CHFCF 3
    −CH 2 CF 2 CF 2 CF 2 CHF 2
    −CH 2 CF 2 CF 2 CF 2 CF 2 CF 2 CHF 2
    −CH 2 CH 2 CF 2 CF 2 CF 2 CF 3
    −CH 2 CF(CF 3 )OCF 2 CF 2 CF 3
    −CH 2 CF(CF 3 )OCF(CF 3 2 、−CH 2 CF 2 OCF 2 CF 3
    、−CH 2 CF 2 CF 2 CH 2 OCH 2 CH 2 OCH 2 CH 2 OCH 3
    の中から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のフッ素化スルホン酸エステルモノマー。
  3. 化学式(1)において、Rfは、−CR12CHR34(R1、R2、R3及びR4は、それぞれ、フッ素原子、水素原子から選ばれる基であり、 1 、R 2 、R 3 及びR 4 の内、少なくとも1個はフッ素原子である)である請求項1記載のフッ素化スルホン酸エステルモノマー。
  4. 化学式(1)において、n=0である請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素化スルホン酸エステルモノマー。
  5. テトラフルオロエチレンと化学式(1)で表されるフッ素化スルホン酸エステルモノマーとを共重合させたフッ素化スルホン酸エステル基含有ポリマー。
  6. 化学式(2)で表されるスルホン酸と、
    Figure 0004260466
    (式中、n及びmは、化学式(1)と同じ)
    化学式(3)で表されるフルオロオレフィン
    CR12=CR34 (3)
    (式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ、フッ素原子、水素原子から選ばれる基であり、 1 、R 2 、R 3 及びR 4 の内、少なくとも1個はフッ素原子である
    とを反応させることを特徴とする請求項3記載のフッ素化スルホン酸エステルモノマーの製造方法。
  7. 化学式(2)で表されるスルホン酸と、化学式(3)で表されるフルオロオレフィンとを、0.01〜3MPaの圧力範囲、かつ、30〜200℃の温度範囲で反応させることを特徴とする請求項6記載のフッ素化スルホン酸エステルモノマー製造方法。
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