JP4260175B2 - タイヤ摩擦楕円を考慮した車両の設計方法 - Google Patents
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Description
特に車両の走行シミュレーションを行う際、タイヤは、路面から受ける力を車両に伝達する唯一の構成部品であり、車両の性能に大きな影響を与える部品である。このため、タイヤの発生力は正確に定める必要がある。
このタイヤの発生力として、タイヤのコーナリング中に発生する横力とセルフアライニングトルクのスリップ角依存性を表す特性曲線、制駆動中に発生する前後力の特性曲線、さらには制駆動中かつコーナリング中に発生する前後力と横力とセルフアライニングトルクの特性曲線を、下記式(20)の基本式で代表される「Magic Formula」で近似することが提案されている。
Y(x)=Dsin[Ctan−1{Bx−E(Bx−tan−1(Bx))}] (20)
「Magic Formula」は、式(20)内の各パラメータB〜Eの値を決定することによってタイヤ特性を表す非線形近似式を用いた非解析モデルである。さらに、このモデルにおいて、例えば「横力のスリップ角依存性の、スリップ率Sによる変化」といった複合的な特性を表す場合の横力Fyは、上記式(20)で表されるスリップ率が印加されていない条件下での横力Fy0に対して、下記式(21)のように修正が加えられる。前後力及びセルフアライニングトルクについても横力と同様に上記修正が加えられる。
Fy = Gyk・Fy0 + Svyk (21)
(Gyk:スリップ率Sと関係付けられる係数、Svyk:スリップ率Sと関係付けられる係数)
この「Magic Formula」のパラメータB〜E、Gyk、Svyk等(以降、「Magic Formula」のパラメータという)の値を用いて、車両の走行シミュレーションを行うことが一般的に行われている。
まず、車両の開発初期段階において、所望の車両諸元(ホイールベースや重心高さや車両の前後輪の重量配分等)を設定して車両モデルを生成するとともに、同時にタイヤの「Magic Formula」のパラメータの値を設定して車両モデルに与える。次に、車両の走行シミュレーションのための走行条件を設定し、この走行条件に応じて車両の走行シミュレーションを行う。走行条件は、評価する性能に応じて異なっており、例えば性能評価が耐久性評価の場合には車両の走行速度、路面の粗さ等のプロファイルデータが走行条件として設定される。緊急回避性能評価の場合には車両の走行速度、操舵角及び制駆動方向のスリップ率を含むスリップ率の制駆動データ、或いは実際の路面のプロファイルデータ等が走行条件として設定される。
一方、車両モデルは、例えばADAMS(米国MDI社製)をはじめとする機構解析ソフトウェアで用いられる機構解析モデルや、CarSim(Mechanical Simulation Corporation製)やさらにはMatLab(The MathWorks, Inc.製)等の制御設計用ソフトウェアを組み合わせた車両運動解析ソフトウェアにおいて用いられる解析モデルが挙げられる。
自動車製作業者は、この決定に従って構成部品の詳細設計に移行する。自ら設計できないタイヤの場合、決定されたタイヤの要求特性、すなわち「Magic Formula」のパラメータの値がタイヤ製造業者への要求項目の1つとして提示され、タイヤの納品を発注する。
タイヤ製造業者は、上記「Magic Formula」のパラメータの値を実現するタイヤの構造設計及びタイヤの材料設計を行い、提示された要求項目に合うようにタイヤの試作を繰り返す。
具体的には、タイヤを設計値に基づいて有限要素でモデル化して、タイヤの走行シミュレーションを行い、このシミュレーションにより、タイヤ特性データを獲得し、このタイヤ特性データを用いて車両の走行シミュレーションを行う。この方法では、タイヤを有限要素で細かくモデル化するため、修正の対象となる部分が極めて多数あり、どこを修正すればよいか不明な場合が多く、熟練した設計者に頼らざるを得ない。又タイヤの走行シミュレーション及び車両の走行シミュレーションを多数繰り返す必要があり、満足な性能を実現する設計値を効率よく見出すことは難しい。
しかし、タイヤに発生する横力及び前後力は構造力学の点から見て独立なメカニズムにより発生する力ではなく、密接に関連した力であるため、上記タイヤの要求特性は、実際のタイヤでは実現できないものである場合も多い。
車両諸元の情報を用いて車両モデルを作成するモデル作成ステップと、
前記特性曲線から、複数のタイヤ力学要素パラメータで構成されるタイヤ力学モデルに基づいて、前記特性曲線を定めるタイヤ力学要素パラメータの値を導出すると共に、前記特性曲線を非線形近似式で近似して得られる、非線形近似式を規定する近似式パラメータの値を前記車両モデルに付与して、スリップ率を与えた走行条件で走行シミュレーションを行い、この走行シミュレーションの結果を用いて車両の性能評価を行う性能評価ステップと、
前記性能評価ステップにおける前記性能評価において、車両モデルが目標性能を満足しない場合、前記車両諸元の情報を修正し、修正した車両諸元の情報を用いて、車両モデルを生成して、生成された車両モデルを用いて、前記走行シミュレーション及び前記車両の性能評価を行う車両諸元修正ステップと、
前記車両諸元修正ステップにおける前記性能評価において、車両モデルが所定の目標性能を満足しない場合、前記近似式パラメータの値を修正し、修正した近似式パラメータの値によって規定される非線形近似式から、前記スリップ率依存性を表す特性曲線を算出し、算出されたこの特性曲線から、前記複数のタイヤ力学要素パラメータで構成される前記タイヤ力学モデルに基づいて、この特性曲線を定めるタイヤ力学要素パラメータの値を導出すると共に、前記修正した近似式パラメータの値を前記車両モデルに付与して前記走行シミュレーションを行い、この走行シミュレーションの結果を用いて前記車両の性能評価を行うタイヤ特性修正ステップと、
前記車両モデルが目標性能を満足する場合、前記近似式パラメータの値および前記タイヤ力学要素パラメータの値をタイヤ要求特性として決定するタイヤ特性決定ステップと、を有し、
前記タイヤ力学モデルは、制駆動方向のスリップ率が与えられたとき、前記タイヤ軸力として発生する前後力によってタイヤの路面に対する接地面の位置が前後方向に移動するように、発生する前後力に応じて接地面の中心位置が移動するモデルであって、
前記タイヤ特性修正ステップは、前記車両諸元修正ステップを少なくとも1回行った後、前記車両諸元の情報を修正しても、前記車両諸元修正ステップにおける前記性能評価において、車両モデルが目標性能を達成できない場合に、行われることを特徴とする。
本発明におけるスリップ率とは、スリップ角及び制駆動方向のスリップ率の両方を含む。スリップ角をαとするとき、横方向のスリップ率をtanαとして、制駆動方向のスリップ率と統合して表すことができる。したがって、本発明におけるスリップ率依存性の特性曲線は、制駆動方向のスリップ率依存性の特性曲線の他、スリップ角依存性の特性曲線を含む。
また、「タイヤ摩擦楕円を考慮した」とは、タイヤに与えるスリップ角及び制駆動方向のスリップ率によって生じるタイヤ特性を考慮することを意味する。
又、前記タイヤ軸力は、前記タイヤにスリップ率が与えられて、タイヤ回転軸に対して平行な方向に作用する横力を少なくとも含み、前記タイヤ特性修正ステップにおいて、前記特性曲線を算出する際、前記横力の前記スリップ率依存性を表す特性曲線の他に、前記路面との間で作用する横力及び前後力により生じる、セルフアライニングトルクのスリップ率依存性の特性曲線を算出することが好ましい。
前記タイヤ特性修正ステップにおいて導出されるタイヤ力学要素パラメータの値は、タイヤのトレッド部材と路面との間の凝着摩擦係数及び滑り摩擦係数と接地圧分布の形状を規定する形状規定係数を含むことが好ましい。
前記タイヤ力学モデルは、前後力、横力及びセルフアライニングトルクを算出するとき、接地面内の滑り領域におけるタイヤの滑り方向が、与えられたスリップ角と制駆動方向のスリップ率とによって定められ、この滑り方向を用いて前後力、横力、セルアライニングトルクを算出することが好ましい。
装置1は、車両諸元のデータ(ホイールベース、重心高さ、車両の総重量、車両の前後輪の重量配分等)と車両の構成部品であるタイヤに制駆動を与えたときのタイヤの動特性(タイヤのコーナリング特性及び制駆動特性)(以降、この特性を制駆動条件下の動特性という)の情報とから、所望の性能を有する車両を実現する車両諸元及びタイヤの要求特性を決定する装置である。
設定プログラム9は、車両諸元のデータ及び「Magic Formula」のパラメータの値を設定する。車両走行シミュレーションプログラム10は、車両モデルを用いて車両の走行シミュレーションを行う。「Magic Formula」データ・パラメータ算出プログラム11は、「Magic Formula」のパラメータの値が与えられると、タイヤの制駆動条件下の動特性の特性曲線のデータを算出し、又制駆動条件下の動特性の特性曲線が与えられると、「Magic Formula」のパラメータの値を算出する。タイヤ力学モデルプログラム群12は、制駆動条件下の動特性の特性曲線が与えられると、後述するタイヤ力学モデルに基づいて複数のタイヤ力学要素パラメータ(以降、力学要素パラメータという)の値を導出し、あるいは、タイヤ力学モデルにおける力学要素パラメータの値が与えられると、タイヤ力学モデルを用いて前後力、横力及びセルフアライニングトルク(以降、トルクという)の動特性の特性曲線を算出する。統合・管理プログラム13は、上記プログラムの制御、管理を統合して行い、シミュレーション結果に応じて「Magic Formula」のパラメータの値を修正し、又シミュレーション結果から車両の性能評価を行う。
ここで、制駆動条件下の動特性の特性曲線とは、制駆動方向のスリップ率及び負荷荷重を一定値としたときの横力、トルクのスリップ角依存性を表す曲線、或いはスリップ角及び負荷荷重を一定値としたときの、タイヤの制駆動方向のスリップ率依存性を表す曲線である。
なお、「Magic Formula」のパラメータは、動特性の特性曲線を上記式(20)に示される非線形近似式で近似したときの、非線形近似式を規定する近似式パラメータである。なお、本発明における非線形近似式は、式(20)で表される「Magic Formula」に限られない。例えば、指数関数や多項式を用いた非線形近似式であってもよい。
車両走行シミュレーションプログラム10は、車両諸元のデータに従って車両モデルを作成し、操作入力系5から与えられた走行シミュレーション条件、あるいは、メモリ4に記憶された走行条件を呼び出し、生成された車両モデルに設定された「Magic Formula」のパラメータの値を付与して、車両の走行シミュレーションを行う部分である。「Magic Formula」のパラメータの値は、例えば、複数の制駆動方向のスリップ率と負荷荷重が設定され、制駆動方向のスリップ率及び負荷荷重毎に、スリップ角依存性の特性曲線を近似するものであり、あるいは、複数のスリップ角と負荷荷重が設定され、制駆動方向のスリップ率及び負荷荷重毎に、制駆動方向のスリップ率依存性の特性曲線を近似するものである。
走行シミュレーション条件は、制駆動を含んだ車両の走行速度、操舵角、路面のプロファイル形状等であり、評価しようとする性能に応じて異なる走行シミュレーション条件が設定される。
走行シミュレーションは、機構解析ソフトウェアADAMSにて行われる。また、運動解析ソフトウェアCarSimや制御系設計ソフトウェアMatLabにて走行シミュレーションの演算が行われてもよい。
タイヤ力学モデルプログラム群12については、以降で詳述する。
(a)タイヤトレッド部の横方向の剪断剛性によって定められる横剛性Ky、
(b)タイヤトレッド部の前後方向(制駆動方向)の剪断剛性によって定められる前後剛性Kx、
(c)タイヤトレッド部のタイヤ中心軸周りのねじり剛性Ay、
(d)路面とタイヤ間の静止係数μs、
(e)路面とタイヤ間の動係数μd(μd0,bV)、
(f)ベルト部材の横方向曲げ係数ε、
(g)タイヤのタイヤ中心軸周りのねじり剛性の逆数であるねじりコンプライアンス(1/Gmz)、
(h)横力発生中の接地面の接地圧力分布を規定する係数n、
(i)接地圧力分布の偏向の程度を表す係数Cq、
(j)タイヤの接地面の中心位置の前後方向への移動の程度を示す移動係数Cxc、
(k)横力発生時の実効接地長l、等である。
小スリップ角条件パラメータ算出プログラム20は、スリップ角1度のときの前後力、横力、及びセルフアライニングトルクの荷重依存性の曲線から上記力学要素パラメータの値を決定する。Fx/Fy/Mzパラメータ算出プログラム22は、与えられた前後力、横力及びセルフアライニングトルクの特性曲線から上記力学要素パラメータの値を決定する。小スリップ角条件Fx/Fy/Mzデータ算出プログラム24は、タイヤ力学モデルで力の釣り合い状態にあるスリップ角1度における前後力、横力及びセルフアライニングトルクの算出データを得る。Fx/Fy/Mzデータ算出プログラム26は、タイヤ力学モデルで力の釣り合い状態にある前後力、横力及びトルクの算出データを得る。
なお、小スリップ角条件パラメータ算出プログラム20、Fx/Fy/Mzパラメータ算出プログラム22、小スリップ角条件Fx/Fy/Mzデータ算出プログラム24及びFx/Fy/Mzデータ算出プログラム26、のより詳細な機能については、後述する。
図2、図3、図4、図5(a)〜(e)、図6(a)〜(d)、図7(a)〜(c)及び図8はタイヤ力学モデルを説明する図である。
制動の場合、図3に示すように、横剛性Kyやねじり剛性Ay等の線形パラメータ及びベルト部材の横方向曲げ係数εや係数Cq等の非線形パラメータからなる力学要素パラメータの値が設定され、スリップ角α、制動時のスリップ率S、走行速度Vr、及び前後力Fx、横力Fy、トルクMzを入力することで、図3中の式(1)〜(8)によって処理された前後力、横力及びトルクの値(以降、前後力Fx’、横力Fy’、トルクMz’とする)が算出されるように構成されている。勿論、入力された前後力Fx、横力Fy及びトルクMzの値と、処理された前後力Fx’、横力Fy’及びトルクMz’の値との誤差が所定値以下、すなわち略一致した(収束した、タイヤ力学モデルで力が釣り合い状態となった)場合にのみ、前後力Fx’、横力Fy’及びトルクMz’の値が力の釣り合い状態を実現するタイヤの前後力、横力及びトルクの値として決定される。
なお、線形パラメータとは、式(6)〜(8)において線形の形式で表されている力学要素パラメータをいい、非線形パラメータとは、式(6)〜(8)において非線形の形式で表されている力学要素パラメータをいう。
ここで、関数Dgsp(t;n,q)中の係数nは横力発生中の接地面の接地圧分布を規定するもので、図6(c)に示すように接地圧分布の踏込み端及び蹴りだし端付近で角張る(曲率が大きくなる)ように接地圧分布を規定する係数である。また、図6(d)に示すように係数qが0から1になるにしたがって接地圧分布のピーク位置は踏込み端側に移動するように設定されている。このように係数q及び係数nは、接地圧分布の形状を規定する形状規定係数である。
図7(a)〜(c)に示される最大摩擦曲線は、凝着摩擦係数μsに接地圧分布p(t)を乗算したものである。踏込み端で路面と接地したタイヤのトレッド部材は、蹴りだし端に移動するにつれてスリップ角αによって徐々に路面から横方向の剪断を受け、トレッド部材に横方向剪断力(凝着摩擦力)が発生する。さらに、路面の移動速度(タイヤの走行速度)とタイヤの回転速度と差によって生じる制駆動方向のスリップ率Sによって、トレッド部材は徐々に路面から前後方向に剪断を受け、トレッド部材に前後方向剪断力(凝着摩擦力)が発生する。タイヤと路面との間に発生する剪断力は、横方向剪断力と前後方向剪断力との合力により表される。
この剪断力の合力は、徐々に大きくなって最大摩擦曲線に達すると、路面に凝着していたタイヤトレッド部材は滑り出し、滑り摩擦係数μdに接地圧分布p(t)を乗算した滑り摩擦曲線に従って滑り摩擦力が発生する。図7(a)では、境界位置(lh/l)より踏込み端側の領域がタイヤトレッド部材が路面に凝着した凝着域となり、蹴りだし側の領域がタイヤトレッド部材が路面に対して滑る滑り域となる。境界位置(lh/l)は、式(4)により定まる。
図7(b)は、スリップ角αが図7(a)に示すスリップ角αよりも大きくなった状態を示している。境界位置(lh/l)は図7(a)に比べて踏込み端側に移動している。さらに、スリップ角αが大きくなると、図7(c)に示すように接地面の踏込み端の位置から滑り摩擦が発生する状態となる。
同様に、前後方向についても、凝着域及び滑り域の前後方向摩擦力、すなわち前後力成分をタイヤ幅方向に沿って積分することによって前後力Fx’を算出することができる。
式(6)では、上述の凝着域及び滑り域に分けて前後力Fx’を算出し、さらに式(7),(8)では、実効スリップ角αeを用いて横力Fy’及びトルクMz’を算出する。
なお、滑り摩擦係数μdは、式(5)に示すように、滑り速度依存性を有するように規定されている。滑り速度依存性を表す係数は、スリップ角αと制駆動方向のスリップ率Sに応じて変化する。
図5(a)は、上述したように、スリップ角αが付与された際、スリップ角αによって生じるトルクによってスリップ角αを減ずるようにタイヤ自身に作用し、実効スリップ角αeとなっている状態を示している。図5(b)は、この実効スリップ角αeによって生じる横方向変位とベルトの横曲げ変形によって生じる横方向変位の関係を示している。図5(c)はタイヤの接地面が前後力によって前後方向に移動することを示している。
式(6)は、2つの項(2つの前後力成分)の和によって前後力Fx’を算出する。第1項は積分範囲が0〜(lh/l)の積分結果であって、凝着域に発生する凝着前後力成分を表す。第2項は積分範囲が(lh/l)〜1の積分であって滑り域に発生する滑り前後力成分を表す。
式(7)では2つの項(2つの横力成分)の和によって横力Fy’を算出する。第1項は積分範囲が0〜(lh/l)の積分であって、凝着域に発生する凝着横力成分を表す。第2項は積分範囲が(lh/l)〜1の積分であって滑り域に発生する滑り横力成分を表す。式(7)中の第1項の凝着横力成分は凝着域における横力であり、式(7)では、実効スリップ角αeによって生じるトレッド部材の横方向変位がベルトの横曲げ変形によって緩和された状態を表すことによって凝着横力成分を算出する。第2項の滑り横力成分は滑り域における横力であり、式(7)では、実効スリップ角αeによって生じる接地圧分布p(t)の形状を関数Dgsp(t;n,q)で表して滑り横力成分を算出する。
又、式(6)〜(8)中で用いられるβは、制動時における接地面の滑り域における滑り方向の角度を表し、スリップ角と制駆動方向のスリップ率とによって定められる。この滑り方向に対して摩擦力が働くため、式(6)では滑り方向に対する前後力のcos成分が、式(7)では滑り方向に対する横力のsin成分が、式(8)では、トルクに寄与する横力のsin成分がそれぞれ、前後力Fx’、横力Fy’及びトルクMz’に寄与する。すなわち、この滑り方向の角度βを用いて前後力Fx’、横力Fy’及びトルクMz’を算出する。
滑り域における滑り方向は、制駆動方向の滑りとスリップ角αによる滑りが同時に発生するため、必ずしもスリップ角αの方向及び制駆動方向の滑りにならない。具体的には、図5(e)に示すように、タイヤの走行速度Vwとタイヤの回転速度Vrの向きが異なり、この向きの違いから、滑り速度Vs、滑り方向の角度βが定められる。このときの滑り方向の角度βが、式(6)〜(8)、又式(16)〜(18)の括弧内に定義される。式(6)〜(8)と式(16)〜(18)におけるβの定義が異なるのは、後述するように制動時と駆動時における制駆動方向のスリップ率Sの定義が異なることによる。
式(14)、式(15)、式(16)〜(18)のそれぞれは、図3中の式(4)、式(5)、式(6)〜(8)と異なるが、この違いは、スリップ率の定義の違いに拠るものである。具体的には、制動時のスリップ率Sは、S=(Vrcosα−Vw)/Vrcosα(タイヤの走行速度Vr、タイヤの回転速度Vw、スリップ角α)で定義され、駆動時のスリップ率Sは、S=(Vrcosα−Vw)/Vwで定義される。このため、タイヤに発生する力を考えるとき、上記スリップ率で定義されるタイヤ側の移動速度(上記定義における右辺の分母)が異なるため、式(14)、式(15)、式(16)〜(18)のそれぞれは、図3中の式(4)、式(5)、式(6)〜(8)と異なっている。その他の式は、図3中の対応する式と同じである。従って、これらの式の説明は省略する。
小スリップ角条件パラメータ算出プログラム20は、「Magic Formula」にて設定された、或いは修正されたパラメータの値を用いて求められたスリップ角1度における前後力Fx、横力Fy及びトルクMzの特性曲線が供給されると、前後力Fx、横力Fy及びトルクMzと、タイヤ力学モデル演算プログラム14にて算出される前後力Fx’、横力Fy’及びトルクMz’との誤差が所定値以下となるように、すなわち、タイヤ力学モデルにおいて前後力、横力及びトルクが力の釣り合い状態になるように、上述の線形パラメータ及び非線形パラメータを導出するプログラムである。スリップ角α=1度における特性曲線は、負荷荷重、制駆動方向のスリップ率S毎に供給される。
具体的には、スリップ角α=1度における特性曲線の前後力Fx、横力Fy及びトルクMzのデータと、負荷荷重Fz、負荷荷重Fzにおける非転動状態におけるタイヤの接地長l及び接地幅wのデータを予め取得する(ステップS100)。これらのデータは、メモリ4に記憶されているデータでありメモリ4から呼び出される。あるいは、入力操作系5から指示入力されたものであってもよい。
さらに、横方向曲げ係数ε、ねじりコンプライアンス(1/Gmz)等の非線形パラメータを所定の値に初期設定する(ステップS102)。
ここで、非線形パラメータは所定の値に設定されているので、線形パラメータについての正規方程式を定めることができ、この正規方程式を解くことによって線形パラメータの値を一意的に算出することができる。具体的には、式(6)、式(7)、式(8)によって算出される前後力Fx’、横力Fy’,トルクMz’が、供給された前後力F x 、横力Fy,トルクMzに最適に回帰するように、設定された非線形パラメータを用いて二乗残差和の式から線形パラメータに関する正規方程式を作成し、この正規方程式を解くことによって旋回パラメータの値を算出する。ここで、正規方程式とは残差二乗和を定める式をそれぞれの線形パラメータで偏微分して偏微分値を0とした方程式であって、線形パラメータの個数分作成される線形パラメータに関する方程式である。
gx=1/σx 2
gy=1/σy 2
gm=1/σm 2
すなわち、複合二乗残差和Qcは特性曲線の値のばらつきの情報である分散の逆数を重み付け係数とし、前後力、横力及びトルクのそれぞれの二乗残差和を重み付け加算したものである。
ここで、複合二乗残差和を用いるのは、非線形パラメータの算出において複数の条件の前後力Fx’と横力Fy’とトルクMz’とを、対応する前後力Fxと横力FyとトルクMzとに最適に一致させるためである。
収束していないと判別されると、先に設定された非線形パラメータの値の調整を行う(ステップS110)。この非線形パラメータの値の調整は、例えばNewton-Raphson法に従って行なわれる。具体的には、複合二乗残差和を非線形パラメータに関して2次の偏微分を行なうことにより、行列と非線形パラメータの調整量とを関係付けた方程式を求め、この方程式を上記調整量に関して解くことにより、非線形パラメータの値の調整量を算出する。この算出方法については、本願出願人により出願された特願2001−242059号の公開公報(特開2003−57134号公報)に詳細に記載されている。
複合二乗残差和が所定値以下になると、線形最小二乗回帰で算出された線形パラメータの値及び非線形パラメータの値をパラメータとして決定する(ステップS112)。パラメータの値は供給された条件ごとに決定される。決定されたパラメータの値はメモリ20に記憶される。あるいは、パラメータの値は出力装置7に出力される。
以上が、小スリップ角条件パラメータ算出プログラム20が行なう、タイヤ力学モデルを用いたスリップ角α=1度における線形パラメータ及び非線形パラメータの算出の流れである。
図10は、Fx/Fy/Mzパラメータ算出プログラム22において行われる処理の流れを示している。
図10に示すように、まず、Fx/Fy/Mzパラメータ算出プログラム22に、一定の負荷荷重において制駆動方向のスリップ率を種々変えた複数の条件の下、スリップ角を0〜20度変化させたときの前後力Fx、横力Fy及びトルクMzの特性曲線が供給され、取得される(ステップS202)。あるいは、一定の負荷荷重においてスリップ角を種々変えた複数の条件の下、制駆動方向のスリップ率を−1〜1の範囲で変化させたときの前後力Fx、横力Fy及びトルクMzの特性曲線が供給され、取得される。
次に、非線形パラメータである横方向曲げ係数ε、ねじりコンプライアンス(1/Gmz)、係数n等が所定の値に初期設定される(ステップS204)。
こうして初期設定された非線形パラメータの値及び正規方程式を用いて算出された線形パラメータの値及び前後力Fx、横力Fy及びトルクMzの特性曲線のデータをタイヤ力学モデル演算プログラム14に付与する。この付与によって図8のブロック図の流れに従って対応算出データである前後力Fx’、横力Fy’及びトルクMz’が算出される。
gx=1/σx 2
gy=1/σy 2
gm=1/σm 2
すなわち、複合二乗残差和Qcは特性曲線の値のばらつきの情報である分散の逆数を重み付け係数とし、前後力、横力及びトルクのそれぞれの二乗残差和を重み付け加算したものである。
複合二乗残差和は、所定値以下となって収束しているか否かを判別する(ステップS210)。
収束していないと判別すると、ステップS204で初期設定された非線形パラメータの調整を行う(ステップS212)。この非線形パラメータの調整は、例えばNewton-Raphson法に従って行なわれる。
以上が、Fx/Fy/Mzパラメータ算出プログラム22において行われる、タイヤ力学モデルを用いた線形パラメータ及び非線形パラメータの値の算出の流れである。
図11は、小スリップ角条件Fx/Fy/Mzデータ算出プログラム24において、負荷荷重を変化させて前後力Fx’、横力Fy’、トルクMz’のデータを算出するときの処理の流れを示している。
さらに、負荷荷重Fzにおける前後力Fx、横力Fy及びトルクMzを初期設定する(ステップS302)。
この後、スリップ角α=1度及び初期設定された前後力Fx、横力Fy及びトルクMzとともに線形パラメータ及び非線形パラメータをタイヤ力学モデル演算プログラム14に付与する。タイヤ力学モデル演算プログラム14では、付与された線形パラメータ及び非線形パラメータと、初期設定された前後力Fx、横力Fy及びトルクMzが用いられて図3中の式(6)〜(8)或いは図4中の式(16)〜(18)に従って前後力Fx’、横力Fy'、トルクMz’が算出される(ステップS304)。
収束していないと判別すると、先に設定された横力Fy及びトルクMzの設定値が調整される(ステップS310)。調整された前後力Fx、横力Fy及びトルクMzは、線形パラメータ及び非線形パラメータとともに再度タイヤ力学モデル演算プログラム14に付与される。
こうして、複合二乗残差和が所定値以下となって収束するまで前後力Fx、横力Fy及びトルクMzの設定値を調整する。この設定値の調整は、例えば上述したNewton-Raphson法に従って行なわれる。こうして、収束した前後力Fx’、横力Fy'及びトルクMz'を決定する(ステップS312)。
こうして、負荷荷重Fzを順次一定方向に変化し、所定荷重となるまで繰り返し変更する(ステップS316)。負荷荷重Fzの変更の度に前後力Fx’、横力Fy’及びトルクMz’を算出し、収束する前後力Fx’、横力Fy’及びトルクMz’を決定する。決定された前後力Fx’、横力Fy’及びトルクMz’はメモリ20に記憶される。
このようにして、制駆動方向のスリップ率Sを一定値として、負荷荷重Fzに依存するスリップ角α=1度における曲線を求める。勿論、負荷荷重Fzを一定値として、制駆動方向のスリップ率Sに依存するスリップ角α=1度における曲線を求めることもできる。
以上が、小スリップ角条件Fx/Fy/Mzデータ算出プログラム24において行われる、タイヤ力学モデルを用いた処理の流れである。
Fx/Fy/Mzデータ算出プログラム26は、まず、導出された線形パラメータの値及び非線形パラメータの値をメモリ4から読み出して設定する(ステップS400)。
さらに、負荷荷重Fzにおける前後力Fx、横力Fy及びトルクMzを初期設定する(ステップS402)。
この後、スリップ角依存性を表す特性曲線を算出する場合、設定されたスリップ角α=Δαとともに線形パラメータ及び非線形パラメータ及び初期設定された前後力Fx、横力Fy及びトルクMzをタイヤ力学モデル演算プログラム14に付与する。タイヤ力学モデル演算プログラム14では、付与された線形パラメータ及び非線形パラメータと、初期設定された前後力Fx、横力Fy及びトルクMzが用いられて式(6)〜(8)又は式(16)〜(18)に従って前後力Fx’、横力Fy'、トルクMz’が算出される(ステップS404)。
次に、算出された複合二乗残差和が所定値以下となって収束しているか否かを判別する(ステップS408)。
収束していないと判別すると、先に設定された前後力Fx、横力Fy及びトルクMzの設定値を調整する(ステップS410)。この調整された前後力Fx、横力Fy及びトルクMzと線形パラメータ及び非線形パラメータとが再度タイヤ力学モデル演算プログラム14に付与される。
スリップ角αが所定のスリップ角以下であると判別した場合、スリップ角αの条件が変更される(α→α+Δα)(ステップS414)。そして、変更されたスリップ角αにおける前後力Fx、横力Fy、トルクMzの初期値が設定され(ステップS402)、前後力Fx’、横力Fy'及びトルクMz’が算出され(ステップS404)、複合二乗残差和が算出され(ステップS406)、この複合二乗残差和の収束が判別される(ステップS408)。
こうして、スリップ角αが所定スリップ角となるまで繰り返し変更される(ステップS416)。このスリップ角の変更の度に前後力Fx’、横力Fy’及びトルクMz’を算出し、収束する前後力Fx’、横力Fy’及びトルクMz’を決定する。決定された前後力Fx’、横力Fy’及びトルクMz’のデータはメモリ4に記憶される。あるいは、これらのデータは出力装置7に出力される。
まず、設定プログラム9において、車両諸元のデータ及びタイヤの「Magic Formula」のパラメータの値が設定される(ステップS600,602)。これらの設定は、メモリ4から所定のデータを呼び出して設定してもよいし、入力操作系5によって指示入力されたものであってもよい。「Magic Formula」のパラメータは、例えば基準とされるタイヤにおける値を用いる。
さらに、走行シミュレーション条件の下、設定された「Magic Formula」のパラメータの値と車両モデルとを用いて走行シミュレーションが行われる(ステップS608)。
走行シミュレーション結果は、メモリ4に記憶される。
なお、性能評価データが目標値を満足せず、さらに車両諸元のデータがこれ以上修正不可能な場合、例えば車両のホイールベースが規制された長さを超える等の場合、車両諸元のデータに替わり「Magic Formula」のパラメータの値の修正が行われる(ステップS618)。パラメータの値の修正方法は、特に限定されず、例えば予め定められた幅でパラメータの値を順次変えていく。パラメータは、例えば制駆動方向のスリップ率S及び負荷荷重毎に値を有するので、これらのパラメータの値について修正される。
このように、タイヤ特性の修正処理は、車両諸元のデータを修正して走行シミュレーション及び車両の性能評価を行う処理を少なくとも1回行った後に行うので、車両諸元では目標性能の達成できない部分をタイヤ特性で効率よく達成させることができ、タイヤを含めた車両の設計を効率よく行うことができる。
ステップS612における判別で肯定されると、車両諸元のデータは決定され、さらに「Magic Formula」のパラメータの値及びタイヤの力学要素パラメータの値がタイヤの要求特性として決定される(ステップS622)。
こうして決定された車両諸元のデータに基づいて、サスペンション等の構成部品の詳細設計が行われるとともに、タイヤは、決定された力学要素パラメータがタイヤの要求特性として提示されて、タイヤ製造業者にタイヤの発注がなされる(ステップS624)。
図14(a)は、負荷荷重及び制駆動方向のスリップ率Sを一定値に固定し、スリップ角αを変化させたときの、前後力Fx、横力Fy、トルクMzの特性曲線を示す。図15(b)は、負荷荷重及びスリップ角αを一定値に固定し、制駆動方向のスリップ率Sを変化させたときの、前後力Fx、横力Fy、トルクMzの特性曲線を示す。ただし、これらの図において、「Magic Formula」の定義にあわせて「制動側のスリップ率と前後力を負」、「スリップ率S=0で正のスリップ角αを印加したときの初期トルクMzが負」としてある。
タイヤの力学要素パラメータの値は、n=4、Cq=0.04(1/kN)、Cxc=0.04(1/kN)、l=0.117(m)(負荷荷重Fz=4kN)、Kx=Ky=109.7(kN),Ay=2.08(kN・m)、ε=0.06(1/(kN・m))、Gmz=12.0(kN・m/rad)、μs=1.8、μd=1.1、bv=0.008とした。
ε ∝ (EIz)(−3/2)
又、図20(c)におけるサイドウォール剛性kyは、非線形パラメータε、Gmzと以下の関係を有するものである。
ε ∝ ky (−1/4)
Gmz ∝ ky
図20(d)は、タイヤの接地面の中心位置を、前後力Fxに応じて変化する移動係数Cxcを所定の値に設定した現在の設定値(100%)の50%、0%に変化させたときのタイヤ摩擦楕円を示している。これより、移動係数Cxcを大きくすることにより、前後力Fx=0を中心として線対称形状の摩擦楕円の駆動側の値が大きくなり、制動側の値が小さくなり、これにより摩擦楕円は負の勾配を示すことがわかる。
このように、タイヤ力学要素パラメータの値を変えることで、摩擦楕円が変化することがわかる。このようなタイヤ摩擦楕円の情報を、特性曲線を介して「Magic Formula」のパラメータの値に反映することができ、車両の開発に有効に用いることができる。
2 CPU
3 バス
4 メモリ
5 入力操作系
6 インターフェース
7 出力装置
8 プログラム群
9 設定プログラム
10 車両走行シミュレーションプログラム
11 「Magic Formula」データ・パラメータ算出プログラム
12 タイヤ力学モデルプログラム群
13 統合・管理プログラム
14 タイヤ力学モデル演算プログラム
20 小スリップ角条件パラメータ算出プログラム
22 Fx/Fy/Mzパラメータ算出プログラム
24 小スリップ角条件Fx/Fy/Mzデータ算出プログラム
26 Fx/Fy/Mzデータ算出プログラム
Claims (7)
- タイヤにスリップ率が与えられたときのタイヤ回転軸に作用するタイヤ軸力及びトルクのうち、少なくとも一方のスリップ率依存性を表す特性曲線の情報と、車両諸元の情報とを用いて車両の走行シミュレーションを行うことによって、所望の車両性能を有する車両を設計する、タイヤ摩擦楕円を考慮した車両の設計方法であって、
車両諸元の情報を用いて車両モデルを作成するモデル作成ステップと、
前記特性曲線から、複数のタイヤ力学要素パラメータで構成されるタイヤ力学モデルに基づいて、前記特性曲線を定めるタイヤ力学要素パラメータの値を導出すると共に、前記特性曲線を非線形近似式で近似して得られる、非線形近似式を規定する近似式パラメータの値を前記車両モデルに付与して、スリップ率を与えた走行条件で走行シミュレーションを行い、この走行シミュレーションの結果を用いて車両の性能評価を行う性能評価ステップと、
前記性能評価ステップにおける前記性能評価において、車両モデルが目標性能を満足しない場合、前記車両諸元の情報を修正し、修正した車両諸元の情報を用いて、車両モデルを生成して、生成された車両モデルを用いて、前記走行シミュレーション及び前記車両の性能評価を行う車両諸元修正ステップと、
前記車両諸元修正ステップにおける前記性能評価において、車両モデルが所定の目標性能を満足しない場合、前記近似式パラメータの値を修正し、修正した近似式パラメータの値によって規定される非線形近似式から、前記スリップ率依存性を表す特性曲線を算出し、算出されたこの特性曲線から、前記複数のタイヤ力学要素パラメータで構成される前記タイヤ力学モデルに基づいて、この特性曲線を定めるタイヤ力学要素パラメータの値を導出すると共に、前記修正した近似式パラメータの値を前記車両モデルに付与して前記走行シミュレーションを行い、この走行シミュレーションの結果を用いて前記車両の性能評価を行うタイヤ特性修正ステップと、
前記車両モデルが目標性能を満足する場合、前記近似式パラメータの値および前記タイヤ力学要素パラメータの値をタイヤ要求特性として決定するタイヤ特性決定ステップと、を有し、
前記タイヤ力学モデルは、制駆動方向のスリップ率が与えられたとき、前記タイヤ軸力として発生する前後力によってタイヤの路面に対する接地面の位置が前後方向に移動するように、発生する前後力に応じて接地面の中心位置が移動するモデルであって、
前記タイヤ特性修正ステップは、前記車両諸元修正ステップを少なくとも1回行った後、前記車両諸元の情報を修正しても、前記車両諸元修正ステップにおける前記性能評価において、車両モデルが目標性能を達成できない場合に、行われることを特徴とするタイヤ摩擦楕円を考慮した車両の設計方法。 - 前記タイヤ力学モデルは、タイヤにスリップ角が与えられたときの横力を算出するとともに、セルフアライニングトルクを、タイヤの接地面に作用する横力によって生じる横力トルク成分と、タイヤの接地面に作用する前後力によって生じる前後力トルク成分とに分けてセルフアライニングトルクを算出するモデルである請求項1に記載のタイヤ摩擦楕円を考慮した車両の設計方法。
- 前記タイヤ軸力は、前記タイヤにスリップ率が与えられて、タイヤ回転軸に対して平行な方向に作用する横力を少なくとも含み、
前記タイヤ特性修正ステップにおいて、前記特性曲線を算出する際、前記横力の前記スリップ率依存性を表す特性曲線の他に、前記路面との間で作用する横力及び前後力により生じる、セルフアライニングトルクのスリップ率依存性の特性曲線を算出する請求項1又2に記載のタイヤ摩擦楕円を考慮した車両の設計方法。 - 前記タイヤ特性修正ステップにおいて前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出する際、前記前後力の特性曲線と前記タイヤ力学モデルで算出される前後力の対応する曲線との二乗残差和と、前記横力の特性曲線と前記タイヤ力学モデルで算出される横力の対応する曲線との二乗残差和と、前記セルフアライニングトルクの特性曲線と前記タイヤ力学モデルで算出されるセルフアライニングトルクの対応する曲線との二乗残差和とを、重み付け係数を用いて重み付け加算した値であって、前記重み付け係数として、前記前後力、前記横力及び前記セルフアライニングトルクのそれぞれの特性曲線の、スリップ率に依存して変化する値のばらつきの情報から求められる係数を用いた複合二乗残差和の値が、所定値以下となるように、前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出する請求項3に記載のタイヤ摩擦楕円を考慮した車両の設計方法。
- 前記タイヤ特性修正ステップにおいて、前記特性曲線から、前記タイヤ力学モデルに基づいて、前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出する際、セルフアライニングトルクにより発生するタイヤの捩じり変形によって、付与されるスリップ角が修正された実効スリップ角を用いてタイヤ力学要素パラメータの値を導出する請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ摩擦楕円を考慮した車両の設計方法。
- 前記タイヤ特性修正ステップにおいて導出されるタイヤ力学要素パラメータの値は、タイヤのトレッド部材と路面との間の凝着摩擦係数及び滑り摩擦係数と接地圧分布の形状を規定する形状規定係数を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ摩擦楕円を考慮した車両の設計方法。
- 前記スリップ率として、スリップ角と制駆動方向のスリップ率が与えられているとき、
前記タイヤ力学モデルは、前後力、横力及びセルフアライニングトルクを算出するとき、接地面内の滑り領域におけるタイヤの滑り方向が、与えられたスリップ角と制駆動方向のスリップ率とによって定められ、この滑り方向を用いて前後力、横力、セルアライニングトルクを算出する請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイヤ摩擦楕円を考慮した車両の設計方法。
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