JP4259831B2 - マグネタイト粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネタイト粒子の製造方法に関し、詳しくは特定のチタン塩を添加する工程を導入することにより、マグネタイト粒子表面のFeO量が高いことに起因して、黒色度や色相に優れ、耐環境性に優れており、特に静電複写磁性トナー用材料粉、塗料用黒色顔料粉等の用途に好適なマグネタイト粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
最近、電子写真複写機、プリンター等の磁性トナー用材料として、水溶液反応によるマグネタイト粒子に代表される酸化鉄粒子が広く利用されている。磁性トナーとしては各種の一般的現像特性が要求されるが、近年、電子写真技術の発達により、特にデジタル技術を用いた複写機、プリンターが急速に発達し、要求特性がより高度になってきた。
【0003】
すなわち、従来の文字以外にもグラフィックや写真等の出力も要求されており、特にプリンターの中には1インチ当たり1200ドット以上の能力のものも現れ、感光体上の潜像はより緻密になってきている。そのため、現像での細線再現性の高さが強く要求されている。
【0004】
それに伴い、複写機、プリンターに使用されるトナー粒径が小粒径化してきている。さらに、それに伴い、トナー中に含まれる酸化鉄粒子も小粒径で黒色度や色相に優れ、かつ耐環境性に優れたものが望まれている。
【0005】
また、塗料用黒色顔料粉用途においても、塗膜や樹脂組成物の黒色度や耐老化性を改善する上で、やはり小粒径で黒色度や色相に優れ、かつ耐環境性に優れたものが望まれている。
【0006】
従来、酸化鉄粒子、特に、マグネタイト粒子等のFeO(あるいはFe2+)を含有する酸化鉄粒子の黒色度や色相は、FeOの含有量に左右されることが良く知られている(例えば特許文献1参照)。しかし、この酸化鉄粒子中のFeO含有量は、製造後の酸化による経時劣化が進むにつれて低下し、その結果黒色度や色相が劣化するという現象を伴う。この経時劣化は、酸化鉄粒子のおかれる環境により大きく左右され、高温高湿下での経時劣化が抑制された酸化鉄粒子が求められていることは言うまでもない。
【0007】
かかる黒色度や色相に優れ、かつ耐環境性に優れている酸化鉄粒子を得るために、従来から各種元素を酸化鉄粒子に添加する技術が開示されている。例えば、Coを含む複合酸化鉄被覆を有する酸化鉄粒子(特許文献2及び3参照)、Znを含む複合酸化鉄被覆を有する酸化鉄粒子(特許文献4参照)、Mn、Zn、Cu、Ni、Co、Mg等を含む複合酸化鉄を含有する酸化鉄粒子(特許文献5参照)等が挙げられる。
【0008】
これらの添加元素の役割は、FeOが直接外部の雰囲気に触れないように粒子を添加元素酸化物で被覆したり、FeOの代わりに黒色度が低下しないような添加元素酸化物に置き換えることにより、黒色度や色相の劣化を抑制させているものと考えられる。
【0009】
しかし、このような方法で得られた酸化鉄粒子では、黒色度及び色相の不良を防ぎ、その経時劣化を改善することができるものの、重金属が酸化鉄粒子中に多く含まれることとなり、昨今、問題となっている環境負荷に対する影響度が大きい。また、添加元素の種類にもよるが、酸化鉄粒子に要求されるその他特性への悪影響も無視できない。例えば、添加元素による化合物が非磁性酸化物である場合、磁気特性を劣化させるし、黒色度や色相を低下させることもある。それを考慮して、添加量を減じれば、添加元素不足により、黒色度の低下や経時劣化の抑制は困難となる。
【0010】
従って、本発明の目的は、環境負荷の低いマグネタイト粒子でありながら、黒色度や色相に優れ、耐環境性に優れたマグネタイト粒子の効率的な製造方法を提供することにある。
【0011】
【特許文献1】
特開平3−201509号公報
【特許文献2】
特開平6−100317号公報
【特許文献3】
特開平8−133744号公報
【特許文献4】
特開平8−133745号公報
【特許文献5】
特開平4−162050号公報
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、粒子表面のFeO量が高く、耐環境性に優れたマグネタイト粒子を製造するためには、第一鉄塩水溶液とアルカリ溶液とを中和混合して得られた水酸化第一鉄スラリーを酸化してマグネタイト粒子を製造する方法において、4価のチタン塩及び/又はチタン酸塩を添加する工程を導入することにより、上記目的が達成し得ることを知見した。
【0013】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、第一鉄塩水溶液とアルカリ溶液とを中和混合して得られた水酸化第一鉄スラリーを酸化してマグネタイト粒子を製造する方法において、第一鉄塩水溶液のpHを1.5以下、かつ温度を70℃以下に調整して、チタンが、マグネタイト粒子総量に対して、0.3〜1.5質量%となるように、4価のチタン塩及び/又はチタン酸塩を、該第一鉄塩水溶液に添加、混合することにより得られた水酸化第一鉄スラリーを使用することを特徴とするマグネタイト粒子の製造方法を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明でいうマグネタイト粒子とは、FeOの高いマグネタイトを主成分とするものである。また、マグネタイト粒子というときには、その内容によって個々の粒子又はその集合のいずれも意味する。
【0015】
本発明のマグネタイト粒子の製造方法は、第一鉄塩水溶液とアルカリ溶液とを中和混合して得られた水酸化第一鉄スラリーを酸化してマグネタイト粒子を製造する方法において、第一鉄塩水溶液のpHを1.5以下、かつ温度を70℃以下に調整して、4価のチタン塩及び/又はチタン酸塩を、該第一鉄塩水溶液に添加、混合することにより得られた水酸化第一鉄スラリーを使用することが重要である。
【0016】
ここで、特に重要なのは、4価のチタン塩及び/又はチタン酸塩が加水分解しないように、第一鉄塩水溶液のpHを1.5以下、かつ温度を70℃以下に調整した上で、4価のチタン塩及び/又はチタン酸塩を、該第一鉄塩水溶液に添加、混合することにある。
上記第一鉄塩水溶液のpHを1.5以下、かつ温度を70℃以下に調整する理由は、添加する4価のチタン塩及び/又はチタン酸塩が加水分解しないように行うものである。この方法によれば、粒子の核生成から最終的な粒子成長完了に至るまで、価数4価のチタン成分が粒子内に均一に含有され、粒子表面においてもFe2+が安定して生成されることとなる。
【0017】
ここで用いられる第一鉄塩は、硫酸第一鉄、塩化第一鉄等の水可溶性塩ならば特に限定されない。また、添加されるチタン塩やチタン酸塩としては、硫酸チタン(IV)、塩化チタン(IV)、硫酸チタニル、硝酸チタニル等が挙げられる。
【0018】
次に、得られた4価のチタン成分を含む第一鉄塩水溶液とアルカリ溶液とを中和混合して水酸化第一鉄スラリーを生成させる。
水酸化第一鉄スラリーを生成させる際のアルカリ溶液量は、得られるマグネタイト粒子の形状に応じて適宜調整すればよい。具体的には、水酸化第一鉄スラリーのpHを8.0未満となるようにすれば、球状粒子が得られ、pHを8.0〜9.5となるようにすれば、六面体状粒子が得られ、pHを9.5を超えるようにすれば、八面体状粒子が得られる。
使用されるアルカリ溶液は、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等の水酸化アルカリ水溶液を用いることができる。
【0019】
こうして得られた水酸化第一鉄スラリーよりマグネタイト粒子を得るために、常法により酸素含有ガス、好ましくは空気をスラリー中に吹き込みながら酸化反応を行い、酸化反応終了後のスラリーを常法により濾過、洗浄、乾燥、粉砕処理を行う。
また、本発明のマグネタイト粒子の製造方法においては、酸化反応終了時のスラリー中の未反応のFe2+濃度を1〜2g/lとするのが好ましい。
本発明のマグネタイト粒子の製造方法は、チタン塩及び/又はチタン酸塩を含む水酸化第一鉄スラリーに酸素含有ガス、好ましくは空気を通気して酸化反応を進めるが、反応終点においては、反応スラリー中の未反応のFe2+濃度が低くなり、FeOよりもFe3+の析出が起こり易くなる。
【0020】
これを抑制するために、ある程度未反応のFe2+濃度がある状態、すなわち未反応のFe2+濃度が1〜2g/lとなった時点で酸化反応を終了させると、過酸化状態を防ぐのに好都合である。この未反応のFe2+濃度が1g/l未満の場合には、目的とする粒子表面のFeO比の高いマグネタイト粒子を得にくく、2g/lを超える場合には、反応スラリー中の未反応のFe2+が高すぎ、製品の歩留まりが悪くなり、不経済である。
【0021】
また、本発明のマグネタイト粒子の製造方法においては、添加する価数4価のチタン塩及び/又はチタン酸塩量は、最終的なマグネタイト粒子総量に対してチタンが0.3〜1.5質量%となるように調整する。
【0022】
本発明においては、価数4価の状態を保持したチタン塩を添加することが重要であるが、チタン塩添加量が0.3質量%未満では、粒子表面近傍のチタン含有量が少なくなる傾向にあり、得られるマグネタイト粒子表面のFeO量を高くしにくく、1.5質量%を超える場合には、粒子表面近傍のチタン含有量が過剰となる傾向にあり、チタン含有量が高過ぎて、磁気特性や黒色度、色相等他の特性不良を惹き起こすおそれがある。
【0023】
このチタン含有量は、チタン含有量をより減らし、かつ粒子表面のFeOが低下しないように調整する上で、0.4〜1.2質量%とするのがさらに好ましく、0.4〜0.8質量%とするのが特に好ましい。
【0024】
また、本発明のマグネタイト粒子の製造方法では、マグネタイト粒子のBET法による比表面積が10〜15m2 /gになるように調整することが好ましく、静電複写磁性トナー用材料粉、塗料用黒色顔料粉等の用途に好適である。本来、粒径の小さなマグネタイト粒子は耐環境性の点で劣るが、本発明をもってすれば、そのようなマグネタイト粒子でも耐環境性の改善が可能なので、昨今の磁性トナーや塗料の微粒化を鑑みれば、10〜15m2 /gが好ましい。また、本発明においては、マグネタイト粒子の平均粒径が0.1〜1μm程度になるように調整するのが好ましい。
【0025】
また、本発明のマグネタイト粒子の製造方法では、上述のように、球状、六面体状、多面体状等に代表されるような粒状粒子となるように調整すれば良く、特に黒色度が高い八面体状であることが好ましい。
【0026】
また、得られるマグネタイト粒子の形状は、上述した通り、水酸化第一鉄スラリーを生成する際のアルカリ溶液量を調整すればよい。
【0027】
また、本発明のマグネタイト粒子の製造方法では、Al、Si、P、S、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Mgを随伴不純物として含むことがあるが、その総含有量が1質量%以下となるように調整するのが好ましい。Mn、Zn、Cu、Ni、Co、Mg等については従来技術で述べた通り、環境負荷軽減上、含有量が低い方が好ましい。また、Si、Alは酸化鉄粒子の分散性や流動性の改良等に使用されることが多いが、磁気特性等他の特性不良を惹き起こすおそれがあるので、Mn等の上記添加元素と同様に、含有量が低い方が好ましい。これら添加元素については、原料由来の不可避成分として含有されることを考慮して、総含有量が1質量%を望ましい上限とした。
【0028】
酸化反応終了後のスラリーは常法により濾過、洗浄、乾燥、粉砕を行うが、乾燥後に不活性ガス雰囲気中、150〜300℃で0.5〜3時間熱処理するか、酸化反応終了後のスラリーをオートクレーブ中で処理を行うのが好ましい。オートクレーブ処理における運転条件は、昇温速度2〜5℃/分、処理温度100〜150℃、処理時間20〜60分がより好ましい。
上記処理を行う理由は、上記処理によってマグネタイト粒子表面層の結晶性が上がり、耐酸化性も向上すると考えられるからである。
【0029】
【実施例】
以下、実施例等に基づき本発明を具体的に説明する。
【0030】
〔実施例1〕
表1に示されるように、2mol/lの硫酸第一鉄水溶液50リットルに、0.14mol/lの硫酸チタニル水溶液5リットルを、pH1、温度50℃の条件下で混合させ、十分撹拌する。このチタン塩含有硫酸第一鉄水溶液と、5 mol/lの水酸化ナトリウム水溶液43リットルを混合し、水酸化第一鉄スラリーを得る。この水酸化第一鉄スラリーをpHを12に維持し、80〜90℃にて空気を吹き込み酸化反応を行った。得られたマグネタイト粒子を含むスラリーを常法により濾過、洗浄、乾燥、粉砕を行い、マグネタイト粒子を得た。
【0031】
下記に示す方法にて、得られたマグネタイト粒子の平均粒径、比表面積、チタン含有量、その他金属の含有量、磁気特性、黒色度及び色相、質量に換算して粒子表面から10質量%中におけるFe量に対するFeO比、60℃、90%RHでの1週間曝露前後のFeO含有量及び劣化率について評価し、その結果を表2に示す。
【0032】
<評価方法>
(1)平均粒径
走査型電子顕微鏡(30000倍)の写真を撮影し、フェレ径により算出した。
(2)比表面積
島津−マイクロメリティックス製2200型BET計にて測定した。
(3)チタン含有量、その他金属の含有量
試料を溶解し、ICPにて測定した。
(4)磁気特性
東英工業製振動試料型磁力計VSM−P7を使用し、外部磁場796kA/m及び79.6kA/mにて測定した。
(5)黒色度及び色相
試料2.0gにヒマシ油1.4ccを加え、フーバー式マーラーで練り込む。この練り込んだサンプル2.0gにラッカー7.5gを加え、さらに練り込んだ後、これをミラーコート紙上に4milのアプリケータを用いて塗布し、乾燥後、色差計(東京電色社製カラーアナライザーTC−1800型)にて測定した。
(6)質量に換算して粒子表面から10質量%中におけるFe量に対するFeO比
3.8リットルの脱イオン水に試料25gを加え、ウォーターバスで35〜40℃を保ちながら、撹拌速度200rpmで撹拌する。このスラリー中に特級塩酸試薬424mlを溶解した塩酸水溶液(脱イオン水)1250mlを加え、溶解を開始する。
溶解開始からすべて溶解して透明になるまで、10分毎に50mlサンプリングし、0.1μmメンブランフィルターで濾過して、濾液を採取する。
採取した濾液の内25mlをICPによって鉄元素の定量を行う。
鉄元素溶解率(%)=〔採取サンプル中の鉄元素濃度(mg/l)〕/〔完全に溶解した時の鉄元素の濃度(mg/l)〕×100
各サンプルのFeO含有量は、残りの濾液25mlに脱イオン水約75mlを加えて試料を調製して、指示薬としてジフェニルアミンスルホン酸ナトリウムを加えて、0.1N重クロム酸カリウムを用いて酸化還元滴定し、該試料が青紫色に着色したところを終点として滴定量を求め、下記式によりFeOの鉄元素に対する比率(質量%)を求めた。
FeO(質量%)=〔滴定量から計算したFe2+(mg/l)〕×〔FeOの原子量(71.85)〕/〔鉄の原子量(55.85)〕/〔サンプル中の鉄元素量(mg/l)〕×100
表面のFeO含有量は、鉄元素溶解率10%までに含有されるFeO含有量を該部分に含有されるFe量に対する割合(質量%)で求めた。
(7)60℃、90%RHでの1週間曝露前後のFeO含有量及び劣化率
過マンガン酸カリウム標準液による酸化還元滴定法を用いて、予め試料のFeO含有率を測定した。次に試料を時計皿に入れ、通風型乾燥機(タバイエスペック製オーブン、PH−201型)にて、60℃、90%RHの環境下で7日間曝露し、再びFeO含有率を測定し、下式に従ってFeO維持率を算出した。
FeO劣化率(%)={〔曝露前FeO含有率(質量%)〕−〔曝露後FeO含有率(質量%)〕}/〔曝露前FeO含有率(質量%)〕×100
【0033】
〔実施例2〕
表1に示されるように、硫酸チタニルの代わりに、硫酸チタン(IV)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でマグネタイト粒子を製造した。また、実施例1と同様に各種性状及び特性を評価した結果を表2に示す。
【0034】
〔実施例3〕
表1に示されるように、酸化反応終了時のスラリー中の未反応のFe2+濃度を1.5g/lとした以外は、実施例1と同様の方法でマグネタイト粒子を製造した。また、実施例1と同様に各種性状及び特性を評価した結果を表2に示す。
【0035】
〔実施例4〕
表1に示されるように、実施例1の工程で酸化反応後のスラリーを、常法の濾過、洗浄、乾燥後、得られたマグネタイト粒子を窒素ガス雰囲気中、200℃で2時間熱処理を行った後、常法により粉砕を行い、マグネタイト粒子を得た。また、実施例1と同様に各種性状及び特性を評価した結果を表2に示す。
【0036】
〔実施例5〕
表1に示されるように、実施例1の工程で酸化反応後のスラリーを、オートクレーブ中、昇温速度3℃/分、処理温度120℃、処理時間30分で処理を行った後、常法の洗浄、乾燥、粉砕を行い、マグネタイト粒子を得た。また、実施例1と同様に各種性状及び特性を評価した結果を表2に示す。
【0037】
〔比較例1〕
表1に示されるように、硫酸チタニル水溶液を用いない以外は、実施例1と同様にマグネタイト粒子を製造した。また、実施例1と同様に各種性状及び特性を評価した結果を表2に示す。
【0038】
〔比較例2〕
表1に示されるように、硫酸チタニル水溶液を硫酸第一鉄水溶液に混合する際のpHと温度を変更した以外は、実施例1と同様にマグネタイト粒子を製造した。また、実施例1と同様に各種性状及び特性を評価した結果を表2に示す。
【0039】
〔比較例3〕
表1に示されるように、硫酸チタニル水溶液を用いない以外は、実施例3と同様にマグネタイト粒子を製造した。また、実施例1と同様に各種性状及び特性を評価した結果を表2に示す。
【0040】
〔比較例4〕
表1に示されるように、硫酸チタニル水溶液を用いない以外は、実施例4と同様にマグネタイト粒子を製造した。また、実施例1と同様に各種性状及び特性を評価した結果を表2に示す。
【0041】
〔比較例5〕
表1に示されるように、硫酸チタニル水溶液を用いない以外は、実施例5と同様にマグネタイト粒子を製造した。また、実施例1と同様に各種性状及び特性を評価した結果を表2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
表2から明らかな通り、実施例1〜5のマグネタイト粒子は、粒子表面のFeOが高く、黒色度や色相に優れ、かつ高温高湿下でのFeO劣化も抑制されたものであった。
【0045】
これに対し、比較例1のマグネタイト粒子は、チタン成分を含有していないため、粒子表面のFeOが低く、色相が劣り、高温高湿下でのFeO劣化も大きかった。
【0046】
また、比較例2のマグネタイト粒子は、チタン酸塩を添加する第一鉄塩水溶液のpHが高かったため、チタン成分が加水分解し、粒子内での価数4価のチタン成分の均一化が行えず、その結果、粒子表面のFeOが低く、色相不良で、高温高湿下でのFeO劣化も大きかった。
【0047】
また、比較例3のマグネタイト粒子は、チタン成分を添加する代わりに、酸化反応終了時のスラリー中の未反応のFe2+濃度を1.5g/1としたため、粒子表面のFeOは比較例1より高いものの、実施例レベルには及ばず、かつ高温高湿下でのFeO劣化率は劣った。
【0048】
また、比較例4及び5のマグネタイト粒子は、チタン成分を添加する代わりに、窒素ガス雰囲気中で熱処理、又はオートクレーブ中で処理したため、高温高湿下でのFeO劣化率は比較例1より良好だが、実施例レベルには及ばず、かつ粒子表面のFeOは低かった。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、第一鉄塩水溶液とアルカリ溶液とを中和混合して得られた水酸化第一鉄スラリーを酸化してマグネタイト粒子を製造する方法において、4価のチタン塩及び/又はチタン酸塩を添加する工程を導入することにより、マグネタイト粒子表面のFeO量が高いことに起因して、黒色度や色相に優れ、耐環境性に優れた、特に静電複写磁性トナー用材料粉、塗料用黒色顔料粉等の用途に好適なマグネタイト粒子が効率的に製造できる。
Claims (7)
- 第一鉄塩水溶液とアルカリ溶液とを中和混合して得られた水酸化第一鉄スラリーを酸化してマグネタイト粒子を製造する方法において、第一鉄塩水溶液のpHを1.5以下、かつ温度を70℃以下に調整して、チタンが、マグネタイト粒子総量に対して、0.3〜1.5質量%となるように、4価のチタン塩及び/又はチタン酸塩を、該第一鉄塩水溶液に添加、混合することにより得られた水酸化第一鉄スラリーを使用することを特徴とするマグネタイト粒子の製造方法。
- 酸化反応終了時のスラリー中の未反応のFe2+濃度を1〜2g/lとする請求項1に記載のマグネタイト粒子の製造方法。
- BET法による比表面積が10〜15m2 /gである請求項1又は2に記載のマグネタイト粒子の製造方法。
- 粒子形状が八面体状である請求項1〜3のいずれかに記載のマグネタイト粒子の製造方法。
- Al、Si、P、S、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Mgを随伴不純物として含み、その総含有量が1質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のマグネタイト粒子の製造方法。
- 後工程として、不活性ガス雰囲気中、150〜300℃で0.5〜3時間熱処理する請求項1〜5のいずれかに記載のマグネタイト粒子の製造方法。
- 後工程として、オートクレーブ中で処理する請求項1〜5のいずれかに記載のマグネタイト粒子の製造方法。
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