JP5113397B2 - マグネタイト粒子粉末 - Google Patents

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Description

本発明は、粒度分布上、粉末全体における粒子の凝集が単に小さいだけでなく、凝集粗粒が少なく、易分散性、黒色度、色相、電気特性にも優れることを特徴とする、特に静電複写磁性トナー用材料粉、静電潜像現像用キャリア用材料粉、塗料用黒色顔料粉等の用途に用いられるマグネタイト粒子粉末に関する。
マグネタイト粒子粉末は、電子複写機、プリンター等の磁性トナー用等の原材料として広く利用されており、主に水溶性鉄塩を反応に適した適切なpH、温度等調整後、酸素含有ガス等好適な酸化剤を用いて製造される。主用途である磁性トナー用マグネタイト粒子粉末には、各種の一般的現像特性が要求されるが、近年、電子写真技術の発達により、特にデジタル技術を用いた複写機、プリンターが急速に発達し、要求特性がより高度なものとなっている。
マグネタイト粒子粉末に限らず、各種粉末は粉末中に含まれる一次粒子が単分散していることはまれであり、凝集粒子を形成している。磁性トナー等、樹脂等有機系材料中にマグネタイト粒子粉末を分散させようとする際、前記凝集粒子は均一な分散を妨げることは言うまでもなく、粒子粉末全体の凝集の程度が低いことが要求される。また、たとえ凝集がある程度あったとしても、トナー化の際に易分散するものであることが好ましいのは言うまでもない。
このような要求に対し、たとえば特許文献1には、一次粒子の平均粒子径(Dp50)が0.05〜0.3μmのマグネタイト粒子であり、前記マグネタイト粒子の二次粒子の平均粒子径(Da50)が0.055〜0.9μmであり、且つ、二次粒子の平均粒子径(Da50)と一次粒子の平均粒子径(Dp50)との比(Da50/Dp50)が1.1〜3.0であることを特徴とするマグネタイト粒子粉末の開示がある。
また、前記特許文献1には、凝集抑制の為に、マグネタイト粒子粉末に物理処理を加える技術の開示がある。
また、磁性トナー等、樹脂等有機系材料中にマグネタイト粒子粉末を分散させた際、電気は、磁性トナー材料中、最も電気抵抗が低いマグネタイト粒子部分を流れるものと考えられる。通常、トナー中のマグネタイト粒子の分散がすすむほど電気抵抗は高くなり、トナーに低電気抵抗が要求されるタイプの現像システムにおいては、トナーの電気抵抗が低いことが要求されるので、使用されるマグネタイト粒子もそれに見合った電気特性を満たすものが要求される。
特開2005−320231号公報
前記したように、マグネタイト粒子粉末全体の粒子凝集の程度が低いことは、他原料中に分散させる上で重要である。しかし、前記易分散性もさることながら、凝集粒子が粗大であり、その凝集粒子が粉末中に占める割合が大きい場合、分散性はある程度確保できたとしても、分散物中に凝集が解除し切れずに残存することが考えられる。磁性トナーを例に取ると、前記凝集粒子がトナー中に残存し、細線再現性を阻害する等の不具合をもたらす。
前記特許文献1には、二次粒子の平均粒子径や、二次粒子の平均粒子径と一次粒子の平均粒子径との比等が特定されたマグネタイト粒子粉末が示されており、このような粉末は、マグネタイト粒子粉末全体の粒子凝集の程度が低いことを示すものの、過負荷な凝集抑制のため、黒色度、色相の面で劣り、また低電気抵抗を維持することは困難である。
本発明の目的は、かかる従来技術では達成し得なかった、凝集粗粒が少なく、易分散性、色相や電気特性に優れることを特徴とするマグネタイト粒子粉末を提供することにある。
本発明者等は鋭意検討の結果、粉末の粒度分布解析におけるD90値が小さく、かつ粉末を構成する粒子において、粒子表面近傍のFe(2価)が、十分高い特徴を有するマグネタイト粒子粉末であれば、上記課題を解決することを知見し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、粒子の中心から表面にわたって連続してケイ素を含有しており、一次粒子平均径が0.10〜0.30μmであり、レーザー回折散乱式粒度分布測定によるD90値が0.40〜1.00μmであり、かつ粒子表面から10質量%中における総Fe量に対するFe(2価)の割合(A%)と、残りの90質量%中における総Fe量に対するFe(2価)の割合(B%)との比A/Bが0.70〜1.30であるマグネタイト粒子からなることを特徴とするマグネタイト粒子粉末を提供するものである。

本発明のマグネタイト粒子粉末は、粉末全体における粒子の凝集が単に小さいだけでなく、凝集粗粒が少なく、黒色度、色相のみならず電気特性に優れていることから、特に静電複写磁性トナー用材料粉、静電潜像現像用キャリア用材料粉、塗料用黒色顔料粉等の用途に好適である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明のマグネタイト粒子粉末は、一次粒子平均径が0.10〜0.30μmであり、好ましくは0.10〜0.20μmである。一次粒子平均径をこの範囲内に設定することで、マグネタイト粒子粉末の黒色度及び着色力が十分に高いものとなる。一次粒子平均径は、マグネタイト粒子を走査型電子顕微鏡(倍率40000倍)で観察し、200個の粒子のフェレ径を計測した平均値である。後述する実施例において例証されるように、本発明のマグネタイト粒子は、微粒でありながら色相が良好なものである。尤も、一次粒子平均径が小さくなり過ぎると粒子が赤みを帯びる傾向にある。逆に大きすぎると着色力が低下する傾向にある。
また、本発明のマグネタイト粒子粉末は、レーザー回折散乱式粒度分布測定によるD90値が0.40〜1.00μmであり、好ましくは0.40〜0.80μmである。D90およびD10値は、磁性酸化鉄粉末試料0.1gを0.1重量%ヘキサメタりん酸水溶液100mlに入れ、超音波バス(ブランソニック社製 B2200型)にて5分間混合して水分散スラリーを作成し、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LS-230(ベックマンコールター社製)にて個数分布を測定から求められる。
このD90値は小さいほど、粉末中に含まれる粗粒が小さいレベルにあることを示す。このD90値が1.00μmを超える場合、マグネタイト粒子粉末を用いて磁性トナー化した際に、粗大凝集粒子の存在により、細線再現性を阻害する等の不具合をもたらす。また、D90値が0.40μm未満とすることは困難であるのみならず、中心となる粒度の粒子も微細化し、磁気特性や黒色度の低下を招くおそれがある。
また、マグネタイト粒子の磁気特性は、東英工業製の振動試料型磁力計VSM−P7を用い、温度25℃、外部磁場795.8kA/mで測定される。
また、本発明のマグネタイト粒子粉末は、粒子表面から10質量%中における総Fe量に対するFe(2価)の割合(A%)と、残りの90質量%中における総Fe量に対するFe(2価)の割合(B%)との比A/Bが0.70〜1.30であることを特徴とする。
A/Bの値は、マグネタイト粒子の表面に近い領域におけるFe(2価)の割合と、該粒子の中心に近い領域におけるFe(2価)に割合との比であるところ、このA/Bの値が前記の範囲内であることは、マグネタイト粒子表面近傍のFe(2価)含有量が十分高いことを意味している。マグネタイト粒子表面近傍のFe(2価)含有量が十分高いことにより、マグネタイト粒子間の接触電気抵抗を低くなり、マグネタイトを樹脂中へ分散させた際の電気抵抗増加を抑えることができる。
これによって本発明のマグネタイト粒子粉末は、耐熱性が高いことに加えて、着色力や黒色度も高くなる。前記のA/Bの値が0.70〜1.30、特に1.00〜1.30であると、着色力や黒色度が一層高くなるので好ましい。なおA/Bの値が1.30超のマグネタイト粒子粉末を製造することは困難である。
Fe(2価)/総Feの比Aの具体的な測定方法は次のとおりである。3.8リットルの脱イオン水に、試料であるマグネタイト粒子25gを加える。ウォーターバスで40℃に保ちながら、撹拌速度200rpmで撹拌する。このスラリー中に、特級塩酸試薬424mLを脱イオン水に溶解して得た塩酸水溶液1250mLを加える。これによってマグネタイト粒子の溶解を開始する。マグネタイト粒子の溶解開始から該粒子がすべて溶解してスラリーが透明になるまでの間、10分毎に50mLの液をサンプリングする。サンプリングした液を0.1μmメンブランフィルターで濾過して、濾液を採取する。採取した濾液のうち25mLを用い、プラズマ発光分析(ICP)によって鉄元素の定量を行う。そして、鉄元素溶解率(重量%)を以下の式(1)から算出する。
鉄元素溶解率(重量%)=採取サンプル中の鉄元素濃度(mg/L)/完全溶解時の鉄元素濃度(mg/L)×100…式(1)
Fe(2価)の量は、前記の濾液のうちの残りの25mLを用いて測定する。この25mLの液に脱イオン水約75mLを加えて試料を調製する。試料に指示薬としてジフェニルアミンスルホン酸ナトリウムを加える。そして試料を0.1N重クロム酸カリウムを用いて酸化還元滴定する。試料が青紫色に着色したところを終点として滴定量を求め、滴定量からFe(2価)の濃度(mg/L)を計算する。上述の方法で求めた鉄元素溶解率10重量%のときの鉄元素の濃度(mg/L)と、そのときの滴定量から求めたFe(2価)の濃度(mg/L)とを用いて、Fe(2価)/総Feの比Aを求める。
本発明において、マグネタイト粒子中のFe(2価)/総Feの比Aを求めるにあたり、その基準を該粒子に含まれる総Fe量に対して10重量%のFeが溶解した時点とした理由は、10重量%のFeが溶解するまでの部位は、粒子表面から約3.5%の厚みに相当し、該部位が電気特性に大きな影響を及ぼすためである。
また、前記のBの値は以下の方法で測定される。即ち、上述したAの測定において、鉄元素が完全に溶解したときの鉄元素濃度(mg/L)と、鉄元素溶解率10重量%の時の鉄元素濃度(mg/L)の差を、残り90重量%中における鉄元素濃度(mg/L)とする。これとは別に、鉄元素が完全に溶解したときのFe(2価)の濃度を上述した割合Xの測定と同様の方法で求める。そして、鉄元素が完全に溶解したときのFe(2価)の濃度(mg/L)と、鉄元素溶解率10重量%の時のFe(2価)の濃度(mg/L)との差を、残り90重量%中におけるFe(2価)の濃度(mg/L)とする。このようにして求めた残り90重量%中におけるFe(2価)の濃度(mg/L)を、残り90重量%中における鉄元素濃度の濃度で除すことで、Bを算出する。
また、本発明のマグネタイト粒子粉末は、粉末を構成する粒子中にケイ素を含有することが重要である。本発明においては、マグネタイト
粒子中にケイ素が含有されていることと水酸化第一鉄の酸化の進行に連れて酸化性ガスの吹き込み量を漸次減少させることを併用することが、マグネタイト 粒子の比A/Bが0.70〜1.30となることに大きく関与している。このケイ素含有量が0.3質量%未満では、粒子表面近傍のケイ素含有量が少なくなる傾向にあり、水溶液反応により得られるマグネタイト
粒子の比A/Bが低くなる。1.5質量%を超える場合には、粒子表面近傍のケイ素含有量が過剰となる傾向にあり、ケイ素含有量が高過ぎて、磁気特性や黒色度、色相等の他の特性不良を惹き起こすおそれがある。
粒子中にケイ素が含まれることにより、粒子表面のFe(2価)が高いこととあいまって、Fe(2価)の低下が抑制され、黒色度、色相の劣化を防ぎ、樹脂中において高分散かつ低電気抵抗を維持することが出来る。
ケイ素はコア粒子の中心から表面にわたって連続して且つ概ね均一に存在しているのが好ましく、含有量については、マグネタイト粒子全体の重量に対し、Siとして0.30〜1.50重量%であることが好ましく、0.40〜1.00重量%であることがより好ましい。
このようなケイ素含有量であれば、マグネタイト粒子粉末の磁気特性、特に飽和磁化を低下させることなく、Fe(2価)の低下が抑制でき、黒色度、色相に優れ、樹脂中において高分散かつ低電気抵抗を維持することが出来る。
また、本発明のマグネタイト粒子粉末は、粉末を構成する一次粒子の形状が八面体形状を呈することが好ましい。
粒子形状が八面体形状であると、マグネタイト粒子粉末中のFe(2価)を高めることができ、前記A/B、即ち粒子外側のFe(2価)を高めるのに好適であるのみならず、マグネタイト粒子粉末の低電気抵抗確保にも有利である。
また、本発明のマグネタイト粒子粉末は、粉末を構成する粒子表面にケイ素又はアルミニウムを含有した被覆層を有したものであることが好ましく、ケイ素及びアルミニウムを含有した被覆層を有したものであることがより好ましい。上記のような被覆層を粒子表面に設けることにより、コアとなるマグネタイト粒子外側のFe(2価)が高いという特徴を保護することができ、より黒色度、色相を維持でき、低電気抵抗とすることができる、
なお、前記被覆層に含有させるケイ素の重量は、マグネタイト粒子粉末全体の重量に対し、Siとして0.05〜0.50重量%、特に0.05〜0.35重量%に設定することが好ましい。また、被覆層に含有されているアルミニウムの重量は、マグネタイト粒子粉末全体の重量に対し、Alとして0.05〜0.50重量%、特に0.05〜0.35重量%に設定することが好ましい。粒子表面の被覆層に含まれるケイ素、又はアルミニウムの量は、以下の方法で測定される。
まず、試料であるマグネタイト粒子粉末0.900gを秤量し、これに1NのNaOH溶液25mLを加える。液を攪拌しながら45℃に加温する。これによって粒子表面の被覆層を溶解させ、それに含まれるケイ素、又はアルミニウム成分を溶解させる。未溶解物(=コア粒子)を濾過した後、溶出液を純水で125mLにメスアップする。次に、溶出液に含まれるケイ素をICPで定量し、溶出液に含まれるケイ素、又はアルミニウムの濃度(g/L)を求める。この濃度に0.125を乗じて、粒子表面の被覆層に含まれるケイ素、又はアルミニウムの重量(g)が算出される。ケイ素、又はアルミニウムの重量を、試料の重量である0.900gを除し、更に100を乗じることで、マグネタイト粒子粉末全体の重量に対する、粒子表面の被覆層に含有されているケイ素、又はアルミニウムの重量の割合が算出される。
本発明のマグネタイト粒子は、樹脂中において易分散かつ低電気抵抗のものである。易分散性と樹脂混練物の体積電気抵抗は、以下に述べる方法で測定される。
マグネタイト粒子、熱可塑性樹脂(三洋化成社製 TB-1000F)をそれぞれ重量比100:100にて計量し、ヘンシェルミキサにて混合、さらにバッチ式の2軸の混練機(ブラベンダー社製 プラスチコーダーPL2000)にて180℃での溶融混練を20分間行い 電力-時間曲線を観察した。混練開始の電力の第一ピークとフィラーが樹脂へ初期分散が完了したといわれる電力第二ピークまでのかかる時間BIT値(Black Incorporation Time)を計測した。BIT値はマグネタイト粒子の樹脂への分散時間完了時間を示し、短時間で分散完了するものほど易分散性である。
マグネタイト粒子、スチレン−アクリル系熱可塑性樹脂(三洋化成社製、TB−1000F)、帯電制御剤(オリエント化学製、ボントロン S−34)及びワックス(三洋化成社製、ビスコール 550P)をそれぞれ、重量比100:100:1:2にて計量し、ヘンシェルミキサーにて混合し、さらに2軸のニーダーを使用して180℃にて溶融混練を行った。得られた混練物を冷却し、板状混練物を得た。得られた板状混練物を10cm角板ガラスの間に挟み、80℃1時間加温、平滑面を持つ樹脂混練物を得た。この試料を直径50mm円形電極で挟み、アドバンテスト製ハイメガオームメーターTR-8601で体積抵抗を測定し、樹脂厚みで除し体積抵抗率を求めることができる。
次に、本発明のマグネタイト粒子粉末の好ましい製造方法について説明する。 本発明のマグネタイト粒子粉末は、pHが9.5以上である水酸化第一鉄のスラリーに酸化性ガスを吹き込み、液中に二価鉄イオンが存在しなくなるまで水酸化第一鉄を酸化させる際に、酸化性ガスの吹き込み量を下記のように制御することで、製造できる。
水酸化第一鉄の50%が酸化されるまで(10〜80L/min、特に10〜50L/min)、水酸化第一鉄が50%超且つ75%以下酸化されるまで(5〜50L/min、特に5〜30L/min)、水酸化第一鉄が75%超且つ90%以下酸化されるまで(1〜30L/min、特に2〜20L/min)、水酸化第一鉄が90%超酸化された状態(1〜15L/min、特に2〜8L/min)
出発原料である二価鉄源としては、第一鉄を含む水溶性鉄塩が用いられる。その例としては、硫酸第一鉄や塩化第一鉄等が挙げられる。二価鉄源は水溶液として、総Fe濃度を0.5〜2.5mol/Lとすれば良い。
生成するマグネタイト粒子中にケイ素を含有させる場合は、二価鉄源にケイ素源を加えておく等の操作を行う。ケイ素源としては、ケイ素を含む水溶性化合物が用いられる。その例としては、ケイ酸ナトリウム等が挙げられる。水酸化第一鉄を含むスラリーを湿式酸化して、マグネタイト粒子を生成させる際にケイ素を含む水溶性化合物が共存していると、粒子間の凝集が抑制されるため、凝集が小さなマグネタイト粉末を得ることができる。
また、二価鉄源に対し、ケイ素源量は、Fe(2価)1モルに対してSiが0.002〜0.050モル、特に0.005〜0.030モルとなるようにすれば良い。
次に、二価鉄源水溶液と、アルカリ、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物水溶液とを混合し、液をアルカリ性にする。これによって水酸化第一鉄を含むスラリーが得られる。アルカリの添加量は、アルカリとして例えばアルカリ金属水酸化物を用いる場合には、Fe(2価)1モルに対してアルカリ金属水酸化物が2.00〜3.00モル、特に2.02〜2.50モルとなるようにすることが好ましい。
このようにして得られた水酸化第一鉄を含むスラリーを湿式酸化して、マグネタイト粒子を生成させる。この場合、スラリーのpHを9.5以上にすることが必要である。pHが9.5未満である場合には、スラリー中に含まれるケイ素源のケイ素が、マグネタイト粒子結晶中に取り込まれにくくなる。スラリーのpHを9.5以上にするためには、例えばアルカリ金属水酸化物などのアルカリをスラリーに適量添加すれば良い。スラリーのpHが9.5以上であることを条件として、このpHの範囲内でpHを低めに設定すると、一次粒子径が比較的小さい粒子が得られる。逆にpHを高めに設定すると、一次粒子径が比較的大きな粒子が得られる。
水酸化第一鉄のスラリーの湿式酸化は、酸素含有ガスにて行う。酸素含有ガスとしては、例えば酸素ガスや、空気等を用いることができる。
本発明のマグネタイト粒子粉末を製造するには、前記湿式酸化の程度を制御することが重要である。具体的には、水酸化第一鉄の酸化の進行に連れて酸化性ガスの吹き込み量を漸次減少させて、マグネタイト粒子の表面に近い部位ほどFe(2価)に対して酸素が不足した状態にする。例えば、以下のように制御すると良い。また、酸化速度を以下のように制御することにより、マグネタイト粒子内部に取り込まれるケイ素成分と成長中のマグネタイト粒子の凝集抑止に寄与する液中のケイ素成分のバランスを保ち、凝集粗粒の少ないマグネタイト粉末を得ることができる。
水酸化第一鉄の50%が酸化されるまで(10〜80L/min、特に10〜50L/min)、水酸化第一鉄が50%超且つ75%以下酸化されるまで(5〜50L/min、特に5〜30L/min)、水酸化第一鉄が75%超且つ90%以下酸化されるまで(1〜30L/min、特に2〜20L/min)、水酸化第一鉄が90%超酸化された状態(1〜15L/min、特に2〜8L/min)
空気の吹き込み量を上述のとおりに制御することを条件として、空気の吹き込み量を多くすると、一次粒子径が比較的小さな粒子が得られる。逆に空気の吹き込み量を少なくすると、一次粒子径が比較的大きな粒子が得られる。このように酸素含有ガス量を制御して製造したマグネタイト粒子は、粒子表面近傍でのFe(2価)の存在率が高いという特性を有する。
なお、酸素含有ガス吹き込み中はスラリーを加熱して、60〜100℃、特に80〜95℃に保つことが、適切な反応速度を得る点から好ましい。
酸化反応は、液中に二価鉄イオンが存在しなくなるまで行い、マグネタイト粒子を含むスラリーが得られる。
マグネタイト粒子表面に、ケイ素やアルミニウムを含有した被覆層を形成したい場合は、ケイ素源やアルミニウム源を、マグネタイト粒子を含むスラリーに添加する。
ケイ素源としては前記出発原料添加の場合と同様のものを用いることができ、アルミニウム源としては、アルミニウムを含む水溶性化合物、例えば硫酸アルミニウム等を用いることができる。スラリー中におけるケイ素源の濃度は、Si換算で0.001〜0.050重量%、特に0.002〜0.020重量%とすることが好ましい。一方、スラリー中におけるアルミニウム源の濃度は、Al換算で0.001〜0.050重量%、特に0.002〜0.020重量%とすることが好ましい。
ケイ素源やアルミニウム源をマグネタイト粒子を含むスラリーへ添加したら、該スラリーのpHを5〜9、好ましくは5〜7に調整する。このpH調整によってケイ素及び/又はアルミニウムを含む被覆層がコア粒子の表面に形成される。このときの温度は室温から90℃の間とすることができる。このようにして形成された被覆層においては、上述のとおりケイ素やアルミニウムがそれらの水酸化物の形態で存在していると推測される。
被覆層が形成されてなるマグネタイト粒子を含むスラリーの場合、その被覆層を安定化させる目的で、湿式機械処理に付すことが好ましい。この処理により、得られるマグネタイト粒子粉末中の凝集塊が少なくなり、分散性の良好な粉末となすことができる。湿式機械処理には、例えば湿式ジェットミルや湿式メディアミル、乳化分散機等を用いることができる。
以上、湿式反応、もしくは更に被覆層処理を経たマグネタイト粒子を含むスラリーは、常法の脱水、洗浄、ろ過、乾燥、解砕を経て、最終的なマグネタイト粒子粉末となる。
このようにして得られたマグネタイト粒子粉末は、例えばその易分散性や優れた電気特性などの特性を生かして、静電複写用のトナーの原料や、静電潜像現像用のキャリアの原料として好適に用いられる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
二価鉄源として硫酸第一鉄を用いた。またケイ素源としてケイ酸ナトリウムを用いた。Fe(2価)を2.0mol/L含有する水溶液50リットルに、Si(4価)を0.23mol/L含有する水溶液を10.0リットル添加した。この水溶液と、水酸化ナトリウムを5.0mol/L含有する水溶液42リットルと撹拌混合し、水酸化第一鉄スラリーを得た。水酸化ナトリウム水溶液を用いてこの水酸化第一鉄スラリーのpHを12に調整した。次に、このスラリーを90℃に加熱した状態下に、50L/minで空気を吹き込み水酸化第一鉄の湿式酸化を行った。水酸化第一鉄の酸化が50%を超えた時点で、空気の吹き込み量を15L/minに減少させた。更に、水酸化第一鉄の酸化が75%を超えた時点で、空気の吹き込み量を5L/minに減少させた。そして、水酸化第一鉄の酸化が90%を超えた時点で、空気の吹き込み量を3L/minに減少させ、液中に2価鉄イオンが存在しなくなるまで湿式酸化を行った。酸化反応を終えたマグネタイト粒子を含むスラリーに、常法の脱水、洗浄、ろ過、乾燥、解砕を施し、マグネタイト粒子粉末を得た。
〔実施例2〕
実施例1で得られた酸化反応終了スラリーに、ケイ酸ナトリウムの水溶液(Si品位13.4重量%)120gと、硫酸アルミニウムの水溶液(Al品位4.2重量%)380gとを同時に添加した。次に、80℃においてスラリーのpHを希硫酸によって5〜9に調整し、粒子表面にケイ素及びアルミニウムを含む被覆層を形成した。得られたマグネタイト粒子を含むスラリーに、常法の脱水、洗浄、ろ過、乾燥、解砕を施し、マグネタイト粒子粉末を得た。
〔実施例3ないし4、および比較例1ないし3〕
表1に示す製造条件以外は、実施例1ないし2と同様にしてマグネタイト粒子粉末を得た。
〔評価1〕
実施例及び比較例で得られたマグネタイト粒子粉末の諸特性を、上述の方法に従い測定した。その結果を以下の表2に示す。
〔評価2〕
実施例及び比較例で得られたマグネタイト粒子粉末について、上述の方法で易分散性と樹脂混練物の体積電気抵抗率を評価した。また以下に述べる方法で、着色力及び色相を測定した。それらの結果を以下の表3に示す。
〔着色力及び色相〕
マグネタイト粒子粉末0.5gと酸化チタン(石原産業社製R800)1.5gにヒマシ油1.3ccを加え、フーバー式マーラーで練り込む。この練り込んだサンプル2.0gにラッカー4.5gを加え、更に練り込んだ後、これをミラーコート紙上に4milのアプリケータを用いて塗布する。乾燥後、色差計(東京電色社製カラーアナライザーTC−1800型)にて、着色力(L値)及び色相(a値、b値)を測定する。
表3に示す結果から明らかなとおり、各実施例のマグネタイト粒子は、各比較例のものよりもBIT値が高く易分散性であることが判る。またBIT値が低いことから、より短時間で分散が完了することが判る。良好に分散しているにも関わらず樹脂混練物の体積電気抵抗率は低く維持できている。更に黒色度に優れ、着色力が高く、色味が良好である。実施例2と比較例1との対比から明らかなように、水酸化第一鉄の酸化の進行に連れて酸化性ガスの吹き込み量を漸次減少させると、Fe(2価)の割合X/Yの値が高くなる。また、実施例1と比較例2の対比から明らかなように、ケイ素を含有するとD90が小さくなる。

Claims (3)

  1. 粒子の中心から表面にわたって連続してケイ素を含有しており、一次粒子平均径が0.10〜0.30μmであり、レーザー回折散乱式粒度分布測定によるD90値が0.40〜1.00μmであり、かつ粒子表面から10質量%中における総Fe量に対するFe(2価)の割合(A%)と、残りの90質量%中における総Fe量に対するFe(2価)の割合(B%)との比A/Bが0.70〜1.30であるマグネタイト粒子からなることを特徴とするマグネタイト粒子粉末。
  2. 前記ケイ素含有量が、マグネタイト粒子全体の重量に対し、Siとして0.30〜1.50重量%であることを特徴とする請求項1記載のマグネタイト粒子粉末。
  3. 粉末を構成する一次粒子の形状が八面体形状を呈することを特徴とする請求項1又は2記載のマグネタイト粒子粉末。
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