JP4259320B2 - 中空重合体粒子水性分散液の製造方法 - Google Patents
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1.(1)水性媒体中、酸性基含有単量体20〜60重量%およびこれと共重合可能な他の単量体80〜40重量%からなる単量体混合物(a)を共重合することによって芯重合体粒子(A)を含む水性分散液(I)を調製する芯重合体粒子形成工程と、
(2)前記芯重合体粒子(A)の存在下、酸性基含有単量体0〜15重量%およびこれと共重合可能な他の単量体100〜85重量%からなる単量体混合物(b)を共重合することによって、実質的に前記芯重合体粒子(A)を包囲する少なくとも1層の外層重合体を形成し、少なくとも2層構造を有する重合体粒子(B)を含む水性分散液(II)を調製する外層重合体形成工程と、
(3)前記水性分散液(II)に塩基を添加して前記水性分散液(II)のpHを7以上にし、前記芯重合体粒子(A)中の酸性基の少なくとも一部が中和されることによって形成された少なくとも一つのボイドを有する中空重合体粒子を含む水性分散液(III)を調製する塩基処理工程と、を含む中空重合体粒子水性分散液の製造方法であって、
前記塩基処理工程において、前記水性分散液(II)を攪拌する攪拌所要動力を0.2kW/m3以下とすることを特徴とする中空重合体粒子水性分散液の製造方法。
芯重合体粒子形成工程においては、水性媒体中、酸性基含有単量体20〜60重量%、好ましくは30〜50重量%およびこれと共重合可能な他の単量体80〜40重量%、好ましくは70〜50重量%からなる単量体混合物(a)を共重合することによって芯重合体粒子(A)を含む水性分散液(I)を調製する。酸性基含有単量体の量が過小であると、塩基処理工程において重合体粒子中に塩基が浸透し難くなり、重合体粒子内のボイドの形成が困難となる。また、その量が過大であると、芯重合体が外層重合体の外側へ移動し易くなり、各工程での安定性が損なわれ、凝集物発生量が多くなる。
過度に親水性が強い酸では酸性基が重合体粒子の外側に局在し易く、外層重合体による芯重合体粒子の被覆が困難となったり、重合体粒子内のボイドの形成が困難になる。酸性基含有単量体の中でもエチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
水性媒体としては、通常、水が用いられ、製造時の重合体粒子の分散安定性を損なわない範囲で、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。水性媒体の使用量は、単量体混合物(a)100重量部に対して、通常、100〜1000重量部、好ましくは200〜600重量部である。この使用量が少なすぎると、重合時の凝集物発生量が増加する傾向にあり、逆に多すぎると中空重合体粒子の生産性が劣る傾向にある。
また、本工程においては、シードを用いて重合を行うことが望ましい。シードを使用すれば生成する重合体粒子の径を制御することが容易となる。シードの組成は格別限定されない。重合反応における単量体混合物(a)の重合転化率は、通常、90重量%以上、好ましくは97重量%以上であり、生成する共重合体の組成は使用した単量体混合物(a)の組成とほぼ同じである。
外層重合体形成工程においては、上記芯重合体粒子(A)の存在下、酸性基含有単量体0〜15重量%、好ましくは0.2〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%およびこれと共重合可能な単量体100〜85重量%、好ましくは99.8〜90重量%、さらに好ましくは99.5〜95重量%からなる単量体混合物(b)を共重合することによって、実質的に上記芯重合体粒子(A)を包囲する少なくとも1層の外層重合体を形成し、少なくとも2層構造を有する重合体粒子(B)を含む水性分散液(II)を調製する。
また、これと共重合可能な他の単量体の具体例としては、芯重合体粒子(A)の形成に用いる他の単量体として例示したものと同様の単量体を挙げることができる。
単量体混合物(a)の使用量が少なすぎると、空隙率の高い中空重合体粒子が得られ難い傾向があり、逆に多すぎると、塩基処理の際に凝集物発生量が増大する傾向にある。
まず、第1段階においては、酸性基含有単量体0〜15重量%、好ましくは1〜12重量%、より好ましくは3〜9重量%およびこれと共重合可能な他の単量体100〜85重量%、好ましくは99〜88重量%、より好ましくは97〜91重量%からなる単量体混合物(b1)を共重合する。
単量体混合物(b1)の酸性基含有単量体の割合が過大であると、塩基処理工程における条件制御が困難となる場合がある。一方、その割合が過小であると中空重合体粒子の空隙率を高める効果が十分に得られない場合がある。
単量体混合物(b1)に用いる酸性基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、芯重合体粒子(A)の形成に用いる他の単量体として例示したものと同様の単量体を挙げることができる。中でも、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体が好ましく、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体がより好ましい。
ここで使用する連鎖移動剤の量が過小であると、得られる中空重合体粒子の空隙率が低くなる傾向にあり、逆に過大になると、重合時の凝集物発生量が増加する傾向があるだけでなく、空隙率も低くなる傾向にある。
このような連鎖移動剤としては、具体的には、例えば、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタンなどのメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどのキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類;ジフェニルエチレン、ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマーなどの炭化水素類;およびアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテンなどを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち、メルカプタン類およびα−メチルスチレンダイマーが好ましく、メルカプタン類がより好ましく、t−ドデシルメルカプタンが特に好ましく使用できる。
なお、空隙率をより高くできる点から、単量体混合物(b2)中の酸性基含有単量体の割合を、単量体混合物(b1)中の酸性基含有単量体の割合より小さくすることが好ましい。
単量体混合物(b2)に用いる酸性基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、芯重合体粒子(A)の形成に用いる他の単量体として例示したものと同様の単量体を挙げることができる。中でも、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体が好ましく、芳香族ビニル単量体がより好ましく、スチレンが特に好ましく使用できる。芳香族ビニル単量体以外の他の単量体も用いる場合には、芳香族ビニル単量体を単量体混合物(b2)全量の90重量%以上の割合で使用することが好ましい。
単量体混合物(b1)の使用量が少なすぎると、空隙率の高い中空重合体粒子が得られ難い傾向があり、逆に多すぎると、塩基処理の際に凝集物発生量が増大する傾向にある。
一方、未反応単量体の含有量の上限は、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下である。未反応単量体の含有量が過大であると、塩基処理工程で凝集物発生量が増加する傾向がある。
重合方法としては、通常、乳化重合法が採られる。重合方式としては、回分式、半連続式、連続式などのいずれの方式を採用してもよい。重合圧力、重合温度および重合時間は格別限定されることなく、公知の条件が採られる。
なお、水性媒体をさらに追加添加することもでき、その場合の添加量は、水性分散液(II)中の固形分濃度が、通常、10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%となる範囲内である。
塩基処理工程においては、前記水性分散液(II)に塩基を添加して前記水性分散液(II)のpHを7以上にし、上記芯重合体粒子(A)中の酸性基の少なくとも一部が中和されることによって形成された少なくとも一つのボイドを有する中空重合体粒子を含む水性分散液(III)を調製する。
揮発性塩基としては、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、モルホリン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
不揮発性塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどのアルカリ金属(重)炭酸塩;炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムなどの(重)炭酸アンモニウム塩;などが挙げられる。
塩基の中でも、揮発性塩基が好ましく、アンモニアおよび水酸化アンモニウムがより好ましく使用できる。
塩基の使用量は、前記芯重合体の酸性基の少なくとも一部を中和して、前記水性分散液(II)のpHを7以上とする量である。
塩基は、添加の際の凝集物発生を抑制する観点から、水溶液の状態で添加することが好ましく、その濃度は、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
塩基の添加の際の凝集物発生を抑制する観点から、塩基を添加する前に、アニオン界面活性剤や非イオン界面活性剤を単独または併用して添加することもできる。
該攪拌所要動力が過大であると、ボイド形成時の凝集物発生量が増加する。一方、攪拌所要動力の下限は、特に限定されるものではないが、低すぎると攪拌が不十分となり重合体粒子が分離したり、反応完了までに長時間を要したりすることがあるので、実用上、0.02kW/m3以上であることが好ましい。
また、塩基処理における処理温度は、重合体粒子を十分に軟化させうる温度以上が好ましく、好ましくは70〜100℃、より好ましくは80〜95℃である。
この場合、水性分散液(II)中に重合開始剤が残留していれば、所定の時間で、未反応単量体の含有量が減少する。また、所望に応じて、重合開始剤を追加添加して、未反応単量体の含有量を減少させることも可能である。塩基の添加を完了した時点から、上記水性分散液(II)中の全重合体に対する未反応単量体の量が2重量%に達するまでの時間は、重合処方によっても変化するが、通常、5〜120分間、好ましくは10〜90分間である。
中空重合体粒子水性分散液中の中空重合体粒子の数平均粒子径は、通常、0.2〜3μm、好ましくは0.4〜2μm、より好ましくは0.8〜1.5μmである。この粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて、中空重合体粒子200個の最大粒子径を測定し、単純平均した値である。
また、中空重合体粒子の空隙率は、通常、45〜60%、好ましくは50〜55%である。なお、空隙率は、透過型電子顕微鏡を用いて、中空重合体粒子200個について、各粒子における最大粒子径とボイドの最大径とを測定し、その数値から計算して求められる空隙率を単純平均した値である。
(1)体積平均粒子径
シードラテックスおよび芯重合体粒子の体積平均粒子径は、光散乱回折粒径測定装置(LS−230:コールター社製)を用いて、重合体粒子の体積基準の粒度分布に基き、算術平均して計算される平均粒子径(「体積平均粒子径」という。)として求めた。
(2)未反応単量体量
反応液の一部を採取し、ガスクロマトグラフィー分析により、未反応単量体量を測定し、該反応液中に含まれる全重合体に対する割合(%またはppm)で示す。
総固形分量が150gに相当する中空重合体粒子を含有する水性分散液を、325メッシュの金網でろ過し、金網上の残存物を水洗した後、105℃で4時間乾燥した。総固形分量150gに対する、金網上の残存物の乾燥重量の割合を百分率で求めた。
(4)数平均粒子径
透過型電子顕微鏡を用いて、中空重合体粒子200個の最大粒子径を測定し、それらを単純平均して求めた。
(5)空隙率(%)
透過型電子顕微鏡を用いて、中空重合体粒子200個について、各粒子における最大粒子径とボイドの最大径とを測定し、その数値から以下のように計算して求められる空隙率を単純平均して得た。
(芯重合体粒子形成工程)
攪拌装置を備えた耐圧容器に、メタクリル酸メチル(MMA)50部、アクリル酸ブチル(BA)10部、メタクリル酸(MAA)40部、界面活性剤I(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム:アルキル基=C12H35、エチレンオキサイド付加数=18)0.9部、トリポリリン酸ナトリウム0.15部およびイオン交換水80部を添加し、攪拌して芯重合体粒子形成用の単量体混合物(a)の乳化物を調製した。
次いで、過硫酸カリウム3%水溶液1.63部を添加し、前記の乳化物の7%を、3時間に亘り、反応器に連続的に添加した後、さらに1時間反応させた。
重合系を室温まで冷却して、芯重合体粒子を含む水性分散液を得た。この芯重合体粒子の体積平均粒径は350nmであった。
攪拌装置を備えた耐圧容器に、MMA7.8部、BA1.6部、MAA0.6部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.03部、界面活性剤Iを0.02部およびイオン交換水16部を添加し、攪拌して単量体混合物(b1)の乳化物を調製した。
別の攪拌装置を備えた耐圧容器に、スチレン(ST)79.44部、MAA0.56部、界面活性剤Iを0.4部およびイオン交換水130部を添加し、攪拌して単量体混合物(b2)の乳化物を調製した。
次いで、4%過硫酸カリウム水溶液10部を添加し、前記の単量体混合物(b1)の乳化物を20分間に亘り、連続的に反応器に添加した。引き続き、前記の単量体混合物(b2)の乳化物を、120分間に亘り、連続的に反応器に添加した。
単量体混合物(b2)の乳化物の添加を完了した後の未反応単量体の含有率は、7.1%であった。
攪拌回転数を50rpmで維持したまま、5%アンモニア水25部を添加し、反応温度を90℃に昇温した。アンモニア水の添加を完了した後の反応液量は3.0m3であり、該反応液のpHは7以上であった。
60分間塩基処理を行なった。この時点の未反応単量体の含有率は、0.9%であった。攪拌所要動力を表1に示す。
さらに、4%過硫酸カリウム水溶液10部を添加した後、2時間反応を継続した。重合転化率は99%以上であり、未反応単量体の含有率は、300ppm以下であった。
重合系を室温まで冷却して、中空重合体粒子水性分散液Aを得た。
凝集物発生量、並びに中空重合体粒子の数平均粒子径および空隙率を測定した。その結果を表1に示す。
外層重合体形成工程以降において、耐圧反応器Aを耐圧反応器B(内容積14m3、傾斜パドル3段)に代え、外層重合体形成工程の単量体混合物組成を表1に記載の量に変更し、かつ攪拌回転数を30rpmとする以外は、実施例1と同様にして中空重合体粒子水性分散液Bを得た。
凝集物発生量、並びに中空重合体粒子の数平均粒子径および空隙率を測定した。その結果を表1に示す。
外層重合体形成工程以降において、耐圧反応器Aを耐圧反応器C(内容積44m3、傾斜パドル5段)に代え、攪拌回転数を20rpmとする以外は、実施例1と同様にして中空重合体粒子水性分散液Cを得た。
凝集物発生量、並びに中空重合体粒子の数平均粒子径および空隙率を測定した。その結果を表1に示す。
外層重合体形成工程における攪拌回転数を37rpmとし、塩基処理工程以降における攪拌回転数を20rpmとする以外は、実施例3と同様にして中空重合体粒子水性分散液Dを得た。
凝集物発生量、並びに中空重合体粒子の数平均粒子径および空隙率を測定した。その結果を表1に示す。
外層重合体形成工程以降において、攪拌回転数を90rpmに変更する以外は、実施例1と同様にして中空重合体粒子水性分散液Dを得た。
凝集物発生量、並びに中空重合体粒子の数平均粒子径および空隙率を測定した。その結果を表1に示す。
外層重合体形成工程以降において、攪拌回転数を45rpmに変更する以外は、実施例3と同様にして中空重合体粒子水性分散液Eを得た。
凝集物発生量、並びに中空重合体粒子の数平均粒子径および空隙率を測定した。その結果を表1に示す。
MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸ブチル
MAA:メタクリル酸
TDM:t−ドデシルメルカプタン
ST:スチレン
これに対し、上記攪拌所要動力が0.2kW/m3を超えると、凝集物発生量が著しく増加し、中空重合体粒子の空隙率も低くなる(比較例1、2)。
Claims (1)
- (1)水性媒体中、酸性基含有単量体20〜60重量%およびこれと共重合可能な他の単量体80〜40重量%からなる単量体混合物(a)を共重合することによって芯重合体粒子(A)を含む水性分散液(I)を調製する芯重合体粒子形成工程と、
(2)前記芯重合体粒子(A)の存在下、酸性基含有単量体0〜15重量%およびこれと共重合可能な他の単量体100〜85重量%からなる単量体混合物(b)を共重合することによって、実質的に前記芯重合体粒子(A)を包囲する少なくとも1層の外層重合体を形成し、少なくとも2層構造を有する重合体粒子(B)を含む水性分散液(II)を調製する外層重合体形成工程と、
(3)前記水性分散液(II)に塩基を添加して前記水性分散液(II)のpHを7以上にし、前記芯重合体粒子(A)中の酸性基の少なくとも一部が中和されることによって形成された少なくとも一つのボイドを有する中空重合体粒子を含む水性分散液(III)を調製する塩基処理工程と、を含む中空重合体粒子水性分散液の製造方法であって、
前記塩基処理工程において、前記水性分散液(II)を攪拌する攪拌所要動力を0.2kW/m3以下とすることを特徴とする中空重合体粒子水性分散液の製造方法。
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