JP5278649B2 - 中空重合体粒子を含む水性分散液及びその製造方法 - Google Patents

中空重合体粒子を含む水性分散液及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、白紙光沢、白色度、不透明度、ドライピック強度及び印刷光沢が優れる塗被紙を与える水性分散液及びその製造方法に関する。
近年、書籍、雑誌等の出版物;チラシ、パンフレット、ポスター等の商業広告物等の印刷物の印刷方法が多様化されている。広範な用途における単色印刷及び多色印刷への適応性の観点から、塗被紙の白紙光沢、白色度、不透明度、ドライピック強度及び印刷光沢の向上が要求されている。
従来、中空重合体粒子を含有する塗被紙用組成物が、塗被紙の製造において使用されてきた。酸性基含有単量体20〜60重量%およびこれと共重合可能な他の単量体80〜40重量%からなる単量体混合物(a)が、特定の界面活性剤の存在下で共重合されて形成された芯重合体(A)と、酸性基含有単量体0〜15重量%およびこれと共重合可能な他の単量体100〜85重量%からなる単量体混合物(b)が共重合されて形成された、前記芯重合体(A)を包囲する外層重合体(B)を有し、かつ、芯重合体(A)に含まれる酸性基の中和によって形成されたボイドを有する中空重合体粒子を含む水性分散液が検討された(例えば、特許文献1参照)。当該中空重合体粒子は、当該水性分散液の長期間の保存中に沈降してしまった。
一方、(a)5〜100重量%の親水性モノエチレン性不飽和モノマーと0〜95重量%のノニオン性モノエチレン性不飽和モノマーから形成された親水性コアポリマー、及び(b)90〜99.9重量%のノニオン性モノエチレン性不飽和モノマーと0.1〜10重量%の酸官能性モノエチレン性不飽和モノマーから形成された疎水性シェルポリマーを含み、前記シェルポリマーが前記コアポリマーを完全にカプセル化している多段ポリマー粒子(multistaged polymer particles)を含む水性分散液が検討された(例えば、特許文献2参照)。当該水性分散液が塗布された塗被紙の白紙光沢は十分に高くなかった。更に、塗被紙の印刷光沢の向上が検討されたが、有効な解決策は見出されていなかった。
特開2005−206752号公報 特開平8−81506号公報
本発明が解決しようとする課題は、白紙光沢、白色度、不透明度、ドライピック強度及び印刷光沢が優れる塗被紙を与える水性分散液の提供である。本発明が解決しようとする別の課題は、当該水性分散液の製造方法の提供である。
本発明は、(1)酸性基含有単量体35〜50質量%及びこれと共重合可能な単量体65〜50質量%からなる単量体混合物(a)が共重合され、コア重合体粒子(A)が形成される工程、(2)酸性基含有単量体1〜10質量%及びこれと共重合可能な単量体99〜90質量%からなる単量体混合物(b)が、当該コア重合体粒子(A)の存在下で共重合され、当該コア重合体粒子(A)を実質的に包囲するシェル層(B)が形成される工程、(3)アクリル酸単量体0.2〜2.5質量%及びこれと共重合可能な単量体99.8〜97.5質量%からなる単量体混合物(c)が、当該シェル層(B)により実質的に包囲された当該コア重合体粒子(A)の存在下で共重合され、当該シェル層(B)を実質的に包囲するシェル層(C)が形成される工程、(4)塩基が、少なくとも上記コア重合体粒子(A)、シェル層(B)及びシェル層(C)の3層構造を有する重合体粒子を含有する水性分散液に添加され、当該水性分散液のpHが7以上にされる工程、が行われる、中空重合体粒子を含む水性分散液の製造方法である。
更に、本発明は、上記製造方法により製造される中空重合体粒子を含む水性分散液である。
本発明の水性分散液は、白紙光沢、白色度、不透明度、ドライピック強度及び印刷光沢が優れる塗被紙を与える。更に、本発明の水性分散液の製造方法は、上記塗被紙を与える水性分散液を提供する。
本発明の水性分散液に含まれる中空重合体粒子は、少なくともコア重合体粒子(A)、シェル層(B)及びシェル層(C)の3層構造を有する。
コア重合体粒子(A)は、酸性基含有単量体35〜50質量%及びこれと共重合可能な単量体65〜50質量%からなる単量体混合物(a)の共重合により形成される。

酸性基含有単量体は、酸性を示す官能基を有する単量体である。酸性基含有単量体の具体例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物;スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体;等である。1種又は2種以上の酸性基含有単量体が使用される。
過度に親水性が高い酸性基含有単量体が使用される場合、酸性基がコア層(A)の外側に局在し易く、シェル層(B)によるコア重合体粒子(A)の包囲が困難になり、更に重合体粒子内での空隙の形成が困難になる。好ましい酸性基含有単量体はエチレン性不飽和モノカルボン酸であり、より好ましい酸性基含有単量体は、メタクリル酸である。
酸性基含有単量体と共重合可能な単量体の具体例は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ハロゲン化スチレンなどの芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン単量体;酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル単量体;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル単量体;塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン単量体;ビニルピリジン;等である。1種又は2種以上の単量体が使用される。好ましい単量体は、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体であり、更に好ましい単量体はメチル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレートである。
好ましいコア層(A)は、メチルメタクリレート35〜77質量%、ブチルアクリレート3〜15質量%及びメタクリル酸20〜50質量%からなる単量体混合物から形成される。より好ましいコア層(A)は、メチルメタクリレート42〜71質量%、ブチルアクリレート4〜13質量%及びメタクリル酸25〜45質量%からなる単量体混合物から形成される。更に好ましいコア層(A)は、メチルメタクリレート50〜65質量%、ブチルアクリレート5〜10質量%及びメタクリル酸30〜40質量%からなる単量体混合物から形成される。
ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの架橋性単量体が、当該単量体混合物(a)の共重合時に使用され得る。ただし、多量の架橋性単量体が使用されると、当該コア層内部の空隙の形成が困難になるので、その量は安定な空隙形成が維持できる範囲にとどめられる必要がある。
単量体混合物(a)の共重合は、通常、水性媒体中で行なわれる。通常、水が水性媒体として用いられ、製造時の重合体粒子の分散安定性を損なわない範囲で、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒も併用され得る。水性媒体の使用量は、単量体混合物(a)100質量部に対して、通常、100〜1000質量部、好ましくは200〜600質量部である。水性媒体の使用量が少なすぎると、重合時の凝集物発生量が増加する傾向にあり、水性媒体の使用量が多すぎると、中空重合体粒子の生産性が劣る傾向にある。
当該単量体混合物(a)の共重合方法は、通常、乳化重合法である。重合方式は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方式でもよい。重合圧力、重合温度および重合時間は格別限定されず、公知の条件が採られる。
乳化重合反応に一般に使用される、例えば、界面活性剤、重合開始剤、連鎖移動剤、キレート剤、電解質、脱酸素剤などの各種添加剤が、重合用副資材として使用され得る。
当該単量体混合物(a)の共重合時に使用される界面活性剤としては、一般に公知の界面活性剤が併用され得る。具体的には、ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム等のロジン酸塩;オレイン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリルスルホン酸;などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどのアルキルエーテル硫酸塩;ポリエチレングリコールのアルキルエステル、アルキルエーテル又はアルキルフェニルエーテルなどのノニオン性界面活性剤、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の親水性合成高分子物質;ゼラチン、水溶性でんぷん等の天然親水性高分子物質;カルボキシメチルセルロース等の親水性半合成高分子物質;などの分散安定剤などが挙げられる。
これらの界面活性剤は、1種又は2種以上が使用される。
中でも、重合安定性が良好であるため、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどのアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。
界面活性剤の使用量は、当該単量体混合物(a)の全量に対して、0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%である。この使用量が過小であると凝集物が生成し易く、逆に過大であると中空重合体粒子の空隙率が低くなる。
当該単量体混合物(a)の共重合は、望ましくは、シードの存在下で行われる。シードの使用は、生成する重合体粒子の径の制御を容易にする。シードの組成は格別限定されない。重合反応における単量体混合物(a)の重合転化率は、通常、90質量%以上、好ましくは97質量%以上である。生成する共重合体の組成は、単量体混合物(a)の組成とほぼ同じである。
界面活性剤の添加方法は、特に限定されない。当該界面活性剤は、反応器に一括で、分割して、又は連続的に添加される。製造時の凝集物発生量がより少なくなる点で、好ましくは、界面活性剤が反応系に連続的に添加される。単量体混合物(a)と界面活性剤は、混合して反応系に添加されても、別々に反応系に添加されてもよい。好ましくは、単量体混合物(a)と上記界面活性剤と水性媒体が混合されて得られる乳化物が、反応系に添加される。
単量体混合物(a)は、好ましくは、少量の無機塩の存在下に共重合される。界面活性剤と無機塩が併用されると、凝集物の生成が抑制され、粒径分布が狭い中空重合体粒子を含む水性分散液が得られる。
無機塩は、特に限定されない。無機塩の具体例は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩;塩化カルシウム、硫酸バリウムなどのアルカリ土類金属塩;硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムである。なかでも、アルカリ金属塩が好ましく、トリポリリン酸ナトリウムがより好ましい。
無機塩の使用量は、単量体混合物(a)の全量に対して、0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%である。使用量が過小であると、その効果が発現しにくく、逆に過大であると、凝集物の発生が助長される傾向にある。無機塩の添加方法は、特に限定されない。無機塩は、反応系に一括で、分割して、又は連続的に添加される。
コア重合体粒子(A)の酸性基含有単量体単位の半径方向の分布は、特に限定されない。単量体混合物(a)の組成が逐次変化させられて重合反応系に添加されながら、共重合が行われ得る。このような重合方法によって、酸性基含有単量体単位の含有量の半径方向の分布がコア重合体粒子(A)中に生じる場合、酸性基含有単量体単位の最も少ない部分が、当該部分を形成する全単量体単位に対して酸性基含有単量体単位を10質量%以上、好ましくは15質量%以上含有する。この割合が10質量%未満では、中空重合体粒子の空隙の中に小粒子が生成し、空隙率が低くなることがある。
コア層(A)の体積平均粒子径は、好ましくは100〜600nm、より好ましくは250〜500nmである。この粒子径が小さすぎると、空隙率が高くかつ粒子径が大きい中空重合体粒子の製造が困難になる傾向があり、逆に当該粒子径が大きすぎると、シェル層(B)によるコア重合体粒子(A)の被覆が困難になり、コア重合体粒子(A)内の空隙の形成が困難になる傾向がある。
シェル層(B)は、実質的にコア重合体粒子(A)を包囲している。酸性基含有単量体1〜10質量%及びこれと共重合可能な単量体99〜90質量%からなる単量体混合物(b)が、当該コア重合体粒子(A)の存在下で共重合され、当該コア重合体粒子(A)を実質的に包囲するシェル層(B)が形成される。
単量体混合物(b)に含まれる酸性基含有単量体は、単量体混合物(a)に含まれる酸性基含有単量体と同様である。単量体混合物(b)に含まれる好ましい酸性基含有単量体はエチレン性不飽和モノカルボン酸であり、より好ましい当該酸性基含有単量体はアクリル酸及びメタクリル酸である。
単量体混合物(b)に含まれる酸性基含有単量体と共重合可能な単量体は、単量体混合物(a)に含まれる酸性基含有単量体と共重合可能な単量体と同様である。
好ましいシェル層(B)は、メチルメタクリレート68〜89質量%、ブチルアクリレート10〜22質量%、メタクリル酸及び/又はアクリル酸1〜10質量%からなる単量体混合物から形成され、より好ましいシェル層(B)は、メチルメタクリレート71〜85質量%、ブチルアクリレート12〜20質量%、メタクリル酸及び/又はアクリル酸3〜9質量%からなる単量体混合物から形成され、更に好ましいシェル層(B)は、メチルメタクリレート74〜81質量%、ブチルアクリレート14〜18質量%、メタクリル酸及び/又はアクリル酸5〜8質量%からなる単量体混合物から形成される。
単量体混合物(b)の共重合は、単量体混合物(b)の全量に対して、連鎖移動剤0.1〜2質量%、より好ましくは0.1〜1.5質量%、特に好ましくは0.2〜1質量%の存在下に行なわれる。連鎖移動剤の量が過小であると、得られる中空重合体粒子の空隙率が低くなる傾向にあり、逆に連鎖移動剤の量が過大になると、重合時の凝集物発生量が増加する傾向があるだけでなく、空隙率も低くなる傾向にある。
一般の乳化重合に使用されている公知の連鎖移動剤が使用される。連鎖移動剤の具体例は、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタンなどのメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどのキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類;ジフェニルエチレン、ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマーなどの炭化水素類;アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテンである。1種又は2種以上の連鎖移動剤が使用される。好ましい連鎖移動剤はメルカプタン類およびα−メチルスチレンダイマーであり、より好ましい連鎖移動剤はメルカプタン類であり、特に好ましい連鎖移動剤はt−ドデシルメルカプタンである。
シェル層(C)は、実質的にシェル層(B)を包囲している。アクリル酸単量体0.2〜2.5質量%及びこれと共重合可能な単量体99.8〜97.5質量%からなる単量体混合物(c)が、当該シェル層(B)により実質的に包囲された当該コア層(A)の存在下で共重合され、当該シェル層(B)を実質的に包囲するシェル層(C)が形成される。
単量体混合物(c)に含まれるアクリル酸と共重合可能な単量体は、単量体混合物(a)に含まれる酸性基含有単量体と共重合可能な単量体と同様である。好ましい当該単量体は芳香族ビニル単量体、エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体であり、より好ましい当該単量体はスチレンである。芳香族ビニル単量体以外の単量体が併用される場合、好ましくは、単量体混合物(c)に含まれる単量体の全量に対し90質量%以上の芳香族ビニル単量体が使用される。
好ましいシェル層(C)は、アクリル酸0.3〜2.2質量%及びスチレン97.8〜99.7質量%からなる単量体混合物から形成され、より好ましいシェル層(C)は、アクリル酸0.4〜1.8質量%及びスチレン98.2〜99.6質量%からなる単量体混合物から形成され、更に好ましいシェル層(C)は、アクリル酸0.6〜1.5質量%及びスチレン98.5〜99.4質量%からなる単量体混合物から形成される。
単量体混合物(a)、単量体混合物(b)及び単量体混合物(c)の質量比(質量部)は、好ましくは1〜25/2〜25/40〜65であり、より好ましくは3〜20/3〜20/44〜60であり、更に好ましくは5〜15/5〜15/48〜55の範囲である。単量体混合物(a)の割合が少なすぎると、空隙率の高い中空重合体粒子が得られ難い傾向があり、逆に単量体混合物(a)の割合が多すぎると、塩基処理の際に凝集物発生量が増大する傾向にある。
シェル層(B)及びシェル層(C)の形成は、通常、乳化重合により行なわれる。重合方式として、回分式、半連続式、連続式のいずれの方式も採用される。重合圧力、重合温度および重合時間は格別限定されず、公知の条件が採られる。
コア重合体粒子(A)の形成において例示された重合用副資材が使用される。界面活性剤の種類は特に限定されず使用される。水性媒体が追加添加され得る。水性媒体の追加添加量は、通常、少なくとも3層構造を有する重合体粒子の固形分濃度が、10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%となる範囲内である。
塩基が、コア重合体粒子(A)、シェル層(B)及びシェル層(C)の少なくとも3層構造を有する重合体粒子を含有する水性分散液に添加され、当該水性分散液のpHが7以上とされ、コア重合体粒子(A)に含まれる酸性基の少なくとも一部が中和されて形成された少なくとも一つの空隙を有する中空重合体粒子が得られる。当該空隙は水性分散液を形成する水性媒体で充満されている。
当該塩基は、揮発性塩基及び/又は不揮発性塩基である。揮発性塩基の具体例は、アンモニア、水酸化アンモニウム、モルホリン、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。不揮発性塩基の具体例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどのアルカリ金属(重)炭酸塩;炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムなどの(重)炭酸アンモニウム塩である。好ましい塩基は揮発性塩基であり、より好ましい塩基はアンモニア、水酸化アンモニウムである。
塩基の使用量は、前記コア重合体粒子(A)の酸性基の少なくとも一部を中和して、前記水性分散液のpHを7以上とする量である。塩基は、添加時の凝集物発生の抑制の観点から、好ましくは水溶液の状態で添加され、その濃度は、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。更に、上記観点から、塩基が添加される前に、アニオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤が添加され得る。
重合体粒子内部の酸性基が、塩基の水性分散液への添加により中和されるためには、塩基が重合体粒子内部に拡散する時間が必要である。従って、望ましくは、塩基の添加後、時間をかけた攪拌が行われる。好ましい塩基処理温度は、重合体粒子が十分に軟化される温度以上である。塩基添加後の塩基処理時間は、通常、5〜120分、好ましくは10〜90分間である。
塩基が、特開平3−26724号公報に開示されている方法に準じて、有機溶剤の存在下に添加され得る。重合体粒子は有機溶剤の使用によって軟化され、塩基の拡散が促進される。有機溶剤の具体例は、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール類、エーテル類、ケトン類、飽和カルボン酸エステル類である。有機溶剤は、前記重合体粒子100質量部に対して、通常、0.1〜1000質量部の範囲で使用される。使用された有機溶剤は、塩基処理後、蒸発させられ、除去される。
上記有機溶剤のかわりに、重合性単量体が使用され得る。重合性単量体には酸性基を含む単量体を含んでも良く、前記重合体粒子100質量部に対して、通常、1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部の範囲で使用される。重合性単量体は新たに添加され得る。重合性単量体がシェル層(B)及びシェル層(C)の形成時に過剰に添加され、重合禁止剤または還元剤等の添加により重合反応が停止された状態で上記塩基処理が行われ得る。過剰の重合性単量体は、塩基処理後に重合開始剤を追加添加することにより重合される。
コア重合体粒子(A)の形成、シェル層(B)の形成、シェル層(C)の形成および塩基処理は、同一の反応器内で段階的に行なわれてもよく、前段階の工程後、前段階の生成物が別の反応器に移送され、その反応器内で次段階の工程が行なわれてもよい。
中空重合体粒子を含有する水性分散液の重合反応は、重合系の冷却、重合禁止剤の添加等により停止される。その後、所望により、未反応単量体が除去され、水性分散体のpH及び固形分濃度が調整され、本発明の中空重合体粒子を含む水性分散液が得られる。
本発明の水性分散液中の中空重合体粒子の数平均粒子径は、好ましくは0.6〜1.5μm、より好ましくは0.8〜1.4μm、更に好ましくは0.9〜1.3μmである。当該数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による中空重合体粒子200個各々の最大粒子径が単純平均された値である。
中空重合体粒子の空隙率は、好ましくは40〜65%、より好ましくは44〜60%、更に好ましくは48〜55%である。当該空隙率は、透過型電子顕微鏡による中空重合体粒子200個各々の最大粒子径と空隙の最大径の数値から計算により求められる空隙率が単純平均された値である。
以下、実施例により本発明が詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
水性分散液及び中空重合体粒子の物性は以下のように測定された。
(1)中空重合体粒子の数平均粒子径
中空重合体粒子の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による中空重合体粒子200個各々の最大粒子径が単純平均されて求められた。
(2)中空重合体粒子の空隙率
中空重合体粒子200個各々の最大粒子径と空隙の最大径が、透過型電子顕微鏡H−7500(日立製作所製)により測定され、以下の式により計算される空隙率が単純に平均された値が、中空重合体粒子の空隙率とされた。
Figure 0005278649
(3)水性分散液の耐沈降性
水性分散液100mlが100mlメスシリンダーに入れられ、30日間静置された。次いで、メスシリンダー内に沈降した中空重合体粒子がデカンテーションにより分離され、当該中空重合体粒子の沈降量が測定された。水性分散液の耐沈降性が、以下に示す基準で評価された。
沈降物なし :○
中空重合体粒子の沈降量が3ml未満:△
中空重合体粒子の沈降量が3ml以上:×
(4)水性分散液のB型粘度
イオン交換水及び10質量%水酸化ナトリウム水溶液が水性分散液に添加され、固形分濃度26質量%、pH8.5の粘度測定用試料に調製された。次いで、当該粘度測定用試料の粘度がB型粘度計((株)東京計器製)により測定された。
(5)白紙光沢(75°)
リン酸エステル化デンプン(日本食品加工(株)製MS−4600)2.5質量部及びカルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(日本ゼオン(株)製Nipol LX407F)9質量部が、カオリンクレイ(エンゲルハード社製ウルトラホワイト−90 45質量部、イメリス社製KCS 20質量部)65質量部及び炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT90)35質量部からなる無機顔料100質量部に添加され、次いで、中空重合体粒子8質量部を含む水性分散液及びイオン交換水が、得られた混合物に混合され、攪拌され、固形分濃度61質量%の塗被紙用組成物が得られた。その後、当該塗被紙用組成物が、坪量65g/m2の原紙両面に、片面13g/m2の量で塗布され、130℃で乾燥され、塗被紙が得られた。
上記塗被紙表面の光の反射率が、グロスメーター((株)村上色彩技術研究所製GM−26D)により、入射角75度、反射角75度の条件で測定された。数値が大きいほど、白紙光沢が優れている。
(6)白色度
上記塗被紙のISO白色度が、JIS P8148−1993に規定された方法に従い、分光色彩白色度計(日本電色工業(株)製PF10)により測定された。数値が大きいほど、白色度が優れている。
(7)不透明度
上記塗被紙の不透明度が、JIS P8138−1976に規定された方法に従い、分光色彩白色度計(日本電色工業(株)製PF10)により測定された。数値が大きいほど、不透明度が優れている。
(8)ドライピック強度
印刷インク(タック値20)0.4cm3がRIテスター((株)明石製作所製)のゴムロールに付着された。その後、4度の重ね刷りが当該RIテスターにより、上記塗被紙に対して行われた。次いで、紙面の剥がれ(ピッキング)状態が観察された。剥がれがない場合が5点とされ、ドライピック強度が評価された。点数が高いほど、ドライピック強度が高い。
(9)印刷光沢(重色60°)
藍、紅、黄の三色のプロセスインク(東洋インキ製造(株)製TKマークV)が、それぞれ、異なるゴムロールに付着されたRIテスター((株)明石製作所製)が準備された後、べた刷りが、上記塗被紙に対して当該RIテスターにより行われた。その後、ベタ刷りされた塗被紙が、20℃、65%RHの恒温恒湿室に24時間放置され、当該塗被紙の印刷光沢が、グロスメーター((株)村上色彩技術研究所製GM−26D)により、入射角60度の条件で測定された。数値が大きいほど、印刷光沢が優れている。
実施例1
コア重合体粒子(A)の形成
メタクリル酸メチル(MMA)60質量部、アクリル酸ブチル(BA)5質量部、メタクリル酸(MAA)35質量部ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム0.9質量部、トリポリリン酸ナトリウム0.15質量部及びイオン交換水85質量部が、攪拌装置付き耐圧容器に添加され、次いで攪拌されて、コア重合体粒子(A)形成用単量体混合物(a)の乳化物が調製された。
攪拌装置付き反応容器に、イオン交換水800質量部、MMA100質量部、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム5質量部、過硫酸カリウム5質量部が添加され、次いで攪拌された。反応容器が80℃に昇温されて反応を行ない、体積平均粒径82nmのシードラテックスを得た。
イオン交換水40質量部及び前記シードラテックス0.28質量部(固形分として)が、攪拌装置付き耐圧容器に添加され、次いで85℃に昇温された。3質量%の過硫酸カリウム水溶液1.63質量部が、シードラテックス水性分散液に添加され、その後、前記単量体混合物(a)の乳化物の7質量%が、3時間に亘り、反応系に連続的に添加され、更に反応が1時間行われた。その後、イオン交換水250質量部及び3質量%の過硫酸カリウム水溶液18.6質量部が反応系に添加され、反応温度が85℃に保たれながら、前記単量体混合物(a)の乳化物の残部が、3時間に亘り、反応系に連続的に添加され、更に反応が2時間行われた。反応系が室温まで冷却され、コア重合体粒子(A)を含む水性分散液が得られた。重合転化率は99%以上であった。コア重合体粒子(A)の動的光散乱法粒子測定装置N4(コールター社製)による体積平均粒径は420nmであった。
シェル層(B)及びシェル層(C)の形成
MMA7.8質量部、BA1.6質量部、MAA0.6質量部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.03質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム0.02質量部及びイオン交換水16質量部が、攪拌装置付き耐圧容器に添加され、次いで攪拌されて、シェル層(B)形成用単量体混合物(b)の乳化物が調製された。
一方、スチレン(ST)89.37質量部、アクリル酸(AA)0.63質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリム0.4質量部及びイオン交換水130質量部が、攪拌装置付き耐圧容器に添加され、次いで攪拌されて、シェル層(C)形成用単量体混合物(c)の乳化物が調製された。
イオン交換水130質量部、及び前記コア重合体粒子(A)を含む水性分散液が、コア重合体粒子(A)の質量が10質量部となる量、攪拌装置付き耐圧容器に添加され、次いで85℃に昇温された。4質量%の過硫酸カリウム水溶液10質量部が、反応系に添加され、単量体混合物(b)の乳化物が、20分間に亘り、反応系に連続的に添加された。その後、単量体混合物(c)の乳化物が、2時間に亘り、反応系に連続的に添加された。
塩基処理
5質量%アンモニア水25質量部が反応系に添加され、塩基処理が90℃で1時間行われた。反応液のpHは1時間に渡って7以上であった。その後、4質量%過硫酸カリウム水溶液10質量部が反応系に添加され、更に反応が2時間行なわれた。反応系が室温まで冷却され、中空重合体粒子を含む水性分散液が得られた。重合転化率は99%以上であった。結果が表1に示されている。
実施例2及び3、比較例1〜3
単量体混合物(a)〜(c)の組成が表1に示されるように変更された以外は、実施例1と同じ操作が行われた。結果が表1に示されている。
Figure 0005278649
実施例1〜3の水性分散液の耐沈降性は高く、これらの水性分散液の塗被紙用組成物としての粘度は適当であった。更に、これらの水性分散液は、白紙光沢、白色度、不透明度、ドライピック強度及び印刷光沢が優れる塗被紙を与えた。
アクリル酸に代わりメタクリル酸を含む単量体混合物(c)が使用された比較例1の水性分散液の耐沈降性は低かった。更に、当該水性分散液が使用されて得られた塗被紙の白紙光沢及び印刷光沢は低かった。
2.5質量%を超えるアクリル酸を含む単量体混合物(c)が使用された比較例2の水性分散液の耐沈降性はあまり高くなかった。更に、当該水性分散液が使用されて得られた塗被紙の白紙光沢及び印刷光沢は低かった。
10質量%を超える酸性基含有単量体を含む単量体混合物(b)が使用された比較例3の水性分散液の粘度は大きすぎ、塗被紙用組成物の調製が不可能だった。
比較例4
ST99.9質量部及びAA0.1質量部からなる単量体混合物(c)が使用された以外は、実施例2と同じ操作が行われた。得られた水性分散液に含まれる重合体粒子は密実であり、中空重合体粒子を含む水性分散液は得られなかった。
本発明の中空重合体粒子水性分散液は、紙、インキ、繊維、皮革等のコーティング;塗料等の用途における有機顔料、光散乱剤又は光散乱助剤、インクジェット紙の吸収性充填剤、製紙工程の内添充填剤、修正インキ又は修正リボン用の高隠蔽性顔料、マイクロカプセル材料、電子写真に用いられるトナーの中間材料、樹脂、セメント、コンクリートなどへの内添による軽量化などの空気による軽量化を利用する用途、半導体封止材料等に添加され、空気の低誘電性を利用する用途などに用いることができる。本発明の中空重合体粒子水性分散液は、紙塗工組成物に好適であり、塗工紙の不透明度を向上させるのみならず、高光沢な塗工紙の製造を可能にする。

Claims (2)

  1. (1)酸性基含有単量体35〜50質量%及びこれと共重合可能な単量体65〜50質量%からなる単量体混合物(a)が共重合され、コア重合体粒子(A)が形成される工程、
    (2)酸性基含有単量体1〜10質量%及びこれと共重合可能な単量体99〜90質量%からなる単量体混合物(b)が、当該コア重合体粒子(A)の存在下で共重合され、当該コア重合体粒子(A)を実質的に包囲するシェル層(B)が形成される工程、
    (3)アクリル酸単量体0.2〜2.5質量%及びこれと共重合可能な単量体99.8〜97.5質量%からなる単量体混合物(c)が、当該シェル層(B)により実質的に包囲された当該コア重合体粒子(A)の存在下で共重合され、当該シェル層(B)を実質的に包囲するシェル層(C)が形成される工程、
    (4)塩基が、少なくとも上記コア重合体粒子(A)、シェル層(B)及びシェル層(C)の3層構造を有する重合体粒子を含有する水性分散液に添加され、当該水性分散液のpHが7以上にされる工程、
    が行われる、中空重合体粒子を含む水性分散液の製造方法。
  2. 請求項1に記載された製造方法により製造される、中空重合体粒子を含む水性分散液。
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