JP4258926B2 - 黒色鋼板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は黒色鋼板に関し、より詳しくは、クロムを含有しない塗料組成物を用いて、耐食性に特に優れ、かつ黄色化・緑色化・白色化等の色調変化、低光沢化を引き起こさず、耐傷つき性、耐指紋性にも優れた黒色鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より黒色鋼板は、パソコン、複写機などの事務機、エアコンなどの家電製品、自動車部品、内装建材等において、表面を黒色化処理した鋼板が広く使用されている。黒色鋼板は亜鉛系めっき鋼板表面に黒色塗料を塗布したり、Zn−Niめっき鋼板のめっき面を黒色化処理(例えば、陽極電解、陰極処理、交番電解法、陽極酸化)して製造される場合がある。しかし、前者の場合は下地を十分に隠蔽するために、膜厚を厚くする必要があり、プレス成形時に皮膜が破壊した場合に耐食性が劣るし、後者の場合は、黒色化処理までは光沢がなく、また耐食性に劣るため、クロメート処理し、さらにクリヤー塗装を施したり、あるいは樹脂/クロメート混合型塗料を塗布する必要があった。
【0003】
しかし、クロメート皮膜や樹脂/クロメート薬液を塗布して得た皮膜の場合は、耐食性や塗装密着性に優れているものの、6価クロムを含有するので、クロメート被覆工程において水質汚染防止法に規定される特別な排水処理を行う必要があり、コストアップになる欠点を有していた。さらに、クロムイオンによる鋼板表面の色調が黄色、緑色に変化することを防止することは不可能であった。このため、鋼板、特に亜鉛系めっき鋼板の白錆の発生を防止するために、クロムを用いない表面処理技術が求められ、例えば、下記のように数多く提案されている。
【0004】
▲1▼特開平5−195244号公報には、(a)少なくとも4個のフッ素原子と、チタン、ジルコニウム等の少なくとも1個の元素とからなる陰イオン成分(例えば、(TiF6 2- )で示されるフルオロチタン酸)、(b)コバルト、マグネシウム等の陽イオン成分、(c)PH調節のための遊離酸および(d)有機樹脂を含有するが、クロムを含有しない組成物からなる金属の表面処理方法が提案されている。
【0005】
▲2▼特開平9−241856号公報には、(a)水酸基含有共重合体、(b)リン酸および(c)銅、コバルト、鉄、マンガン等の金属のリン酸塩を含有するが、クロムを含有しない金属の表面処理剤組成物が提案されている。
【0006】
▲3▼特開平11−50010号公報には、(a)ポリヒドロキシエーテルセグメントと不飽和単量体の共重合体セグメントを有する樹脂、(b)リン酸および(c)カルシウム、コバルト、鉄、マンガン、亜鉛等の金属のリン酸塩を含有するが、クロムを含有しない表面処理剤組成物が提案されている。
【0007】
▲4▼特開平11−106945号公報には、(a)マンガン、コバルト、亜鉛等の多価金属イオン、(b)フルオロ酸、リン酸、酢酸等の酸、(c)シランカップリング剤および(d)重合単位2〜50の水溶性重合体を水性媒体に溶解した水性表面処理剤が提案されている。
【0008】
前記▲1▼〜▲4▼の方法において、金属板に十分な付着量の表面処理剤(塗料)を被覆した場合、すなわち、十分な膜厚の皮膜を施した場合には、まずまずの耐食性が得られるが、例えば、金属板の凸部などの一部が露出するような皮膜が施されていたり、膜厚が薄過ぎる場合には、耐食性が極めて不十分であった。つまり、金属板に対する表面処理剤の被覆率が100%の場合にのみ、耐食性があるが、被覆率が100%未満の場合には耐食性が不十分であった。逆に、これを全面的に厚く被覆すると、プレス成形後の外観が白色化する問題があった。
【0009】
さらに、前記▲1▼〜▲3▼の従来技術は、いずれもリン酸塩を含むが、乾燥後の皮膜中にリン酸化合物が固体として残留した場合、鋼板表面の色調、特に光沢度や白色度が著しく変化するという問題を有している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、表面処理剤(塗料)の被覆工程および得られた黒色鋼板の使用の際に特別な排水処理が不要で、従来の黒色鋼板が有する欠点を改良し、耐食性に優れ、さらに黒色化処理後の鋼板表面の色調変化が少なく、光沢の低下がなく、かつ耐傷つき性、耐指紋性にも優れた表面処理皮膜を有する黒色鋼板を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記目的を達成するため、鋭意検討した結果、Zn−Niめっき鋼板の黒色化処理表面に、クロムを使用しない水溶性有機樹脂、金属イオン、水分散性有機樹脂および酸を含有する水性塗料組成物を塗布することによって、極薄い皮膜を形成して、耐食性に優れ、色調と光沢を確保できることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明は、黒色化処理されたZn−Niめっき鋼板表面に、(a)金属イオン、(b)水溶性有機樹脂、(c)水分散性有機樹脂および(d)酸を含有する塗料組成物を塗布して形成された皮膜を有する黒色鋼板である。
【0013】
好ましい本発明は、前記塗料組成物において、(c)/[(a)+(b)+(c)+(d)]で示される組成比が50〜98重量%であることを特徴とする黒色鋼板である。
【0014】
また、好ましい本発明は、前記(a)金属イオンがAlイオン、MgイオンおよびMnイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンであることを特徴とする黒色鋼板である。
【0015】
また、好ましい本発明は、前記(b)水溶性有機樹脂が、カルボキシル基含有単量体の重合体の少なくとも1種および/またはカルボキシル基含有単量体とその他の重合性単量体との共重合体の少なくとも1種であることを特徴とする黒色鋼板である。
【0016】
また、好ましい本発明は、前記(d)酸がリン酸、酢酸、硝酸およびフッ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする黒色鋼板である。
【0017】
また、好ましい本発明は、前記塗料組成物が多価フェノールカルボン酸を含有することを特徴とする黒色鋼板である。
【0018】
また、好ましい本発明は、前記塗料組成物が、Alイオン、MgイオンおよびMnイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンの他に、さらにZn,Co,Ti,Sn,Ni,Fe,Zr,Sr,Y,Nb,Cu,Ca,VおよびBaからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンを含有することを特徴とする黒色鋼板である。
【0019】
また、好ましい本発明は、前記塗料組成物が、リン酸、酢酸、硝酸およびフッ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸の他に、さらに2価以上の金属に配位可能である有機酸を含有することを特徴とする黒色鋼板である。
【0020】
さらに、好ましい本発明は、前記塗料組成物がカップリング剤を含有することを特徴とする黒色鋼板である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の黒色鋼板について、詳細に説明する。
本発明の水溶性有機樹脂、水分散性有機樹脂、金属イオンおよび酸を含有する水性塗料組成物を、Zn−Niめっき表面を黒色化処理した鋼板に塗布することにより、めっき層の上に、耐食性を有し、色調に優れた皮膜が形成される。
【0022】
このような皮膜は、水溶性有機樹脂と水分散性有機樹脂に、好ましくは、特定の複数の金属イオンと酸を配合させた結果、該金属イオンが水溶性有機樹脂、めっき層と反応して形成されたものである。
Zn−Niめっき鋼板の黒色化処理には、陽極電解処理、陰極処理、交番電解処理があり、特に、陽極電解処理は低コストで、良好な黒色度が得られるので、好ましい。
【0023】
本発明の塗料組成物に配合される水溶性有機樹脂は、カルボキシル基含有単量体の重合体、カルボキシル基含有単量体とその他の重合性単量体との共重合体から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、重合体の少なくとも1種、共重合体の少なくとも1種、重合体の少なくとも1種と共重合体の少なくとも1種の混合体である。
【0024】
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸とその誘導体をあげることができる。エチレン性不飽和カルボン酸は、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのジカルボン酸である。誘導体としてはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩などをあげることができる。好ましいのはアクリル酸、メタアクリル酸の誘導体である。
【0025】
カルボキシル基含有重合体と共重合する単量体は、水酸基含有単量体、各種のアクリル酸エステル類、メタアクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物、その他のビニル化合物などであり、スルフォン酸基含有ビニル化合物、リン酸基含有ビニル化合物なども使用できる。好適な単量体は、スチレン、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸メチルなどのメタアクリル酸エステル類などである。
【0026】
また、カルボキシル基含有単量体を、(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体、エポキシ樹脂、エステル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂などに共重合または付加したものを配合することができる。
さらに、多価フェノールカルボン酸を配合するのが好ましい。これにより、耐食性をさらに改善できる。多価フェノールカルボン酸としては、タンニン酸、没食子酸などが好適であり、塗料組成物の固形分の0.1〜20重量%の割合で配合するのがよい。
さらに本発明の目的を損なわない限り、各種樹脂用添加物を配合することができる。
【0027】
カルボキシル基含有単量体とその他の重合性単量体との共重合体の場合、カルボキシル基含有単量体の含有量が全共重合体の0.5重量%以上であるのが好ましい。カルボキシル基含有単量体が0.5重量%以上であると、皮膜の緻密性が増大するため、耐食性が向上する。
また共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、1万〜数十万程度である。
【0028】
本発明の塗料組成物は、水分散性有機樹脂を含有することにより、塗装後の色調変化と低光沢化の防止を可能にする。
水分散性有機樹脂には、カルボキシル基、水酸基含有単量体以外の不飽和単量体を使用し、カルボキシル基含有単量体と共重合して得た共重合体を使用することが可能である。前者の好適な単量体としては、スチレン、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸メチル等のメタアクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。後者の好適な単量体としては、アクリル酸、メタアクリル酸が挙げられる。
【0029】
水分散性有機樹脂としては、さらに、酸性水溶液(pH1〜3)中で安定に均一分散することができる樹脂が使用可能である。例えば、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系の従来の金属材料の表面処理に使用されていたものが挙げられる。これらは2種以上併用することもできる。
【0030】
塗料組成物中に占める水分散性有機樹脂の混合比率(固形分重量比)、すなわち、(c)水分散性有機樹脂/{(a)金属イオン+(b)水溶性有機樹脂+(c) 水分散性有機樹脂+(d)酸}で示される比率が、50〜98重量%であることが好ましい。水分散性有機樹脂の混合比率が50重量%未満であると、塗料組成物の塗布による色調変化が生じるし、逆に98重量%を超えると耐食性が低下する。該混合比率は60〜95重量%であるのが好ましく、75〜95重量%であるの特に好ましい。
また、塗料組成物に上記(a)金属イオン、(b)水溶性有機樹脂、(c) 水分散性有機樹脂および(d)酸以外の成分を含有する場合は、これら成分以外の成分を合わせた固形分の合計量に対する(c)水分散性有機樹脂の混合比率が上記範囲であるのが好ましい。
【0031】
水分散性有機樹脂は粒径が1μm以下であるのが好ましい。粒径が1μmを超えると、水分散性有機樹脂が乾燥し、成膜した後でも、皮膜表面に凹凸が残存し、光沢度が低下するためである。
水分散性有機樹脂のガラス転移温度(Tg)は20〜100℃であるのが好ましい。Tgが20℃未満であると、皮膜を乾燥させた後でも耐ブロッキング性に劣るし、Tgが100℃を超えると、加工時の鋼板変形に皮膜が追従せずに皮膜破壊が起こり、加工後耐食性が劣化するためである。
【0032】
本発明の塗料組成物には、塗装時の発光性防止、塗料安定性の点から界面活性剤を配合してもよい。界面活性剤としては、pH1〜3の酸性環境下で安定なものであればよく、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0033】
本発明の塗料組成物に含有される金属イオンは、Al,Mg,Mn,Zn,Co,Ti,Sn,Ni,Fe,Zr,Sr,Y,Nb,Cu,Ca,V,Baなどの金属のイオンであり、アルミニウムイオンAl3+、マグネシウムイオンMg2+およびマンガンイオンMn2+の3種が好ましい。3種の金属イオンが好ましいのは、皮膜形成時に、広いpH領域での疑似架橋反応を生じさせることが可能で、緻密な皮膜となり、薄くても十分な耐食性が得られると同時に、優れた耐傷つき性、耐指紋性等が得られ、金属イオンとして該3種を含まない場合に比べて、飛躍的に耐食性が向上するためである。特に、カルボキシル基含有有機樹脂との組合せによって、さらにその効果が増大する。
【0034】
金属イオンとして、Alイオン、MgイオンおよびMnイオンの3種からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンに、Zn,Co,Ti,Sn,Ni,Fe,Zr,Sr,Y,Nb,Cu,Ca,VおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属のイオンをリン酸、硝酸、炭酸、硫酸などの無機塩、酢酸などの有機塩、または水酸化物を溶解した状態で、付加して使用するのが好ましい。より好ましいのは、Znのリン酸塩、酢酸塩などの水溶液を付加した場合である。
【0035】
金属イオンは、リン酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、フッ酸塩などの塩、または酸化物、水酸化物、金属を溶解して供給される。好ましいのは、Al、Mg、Mnのリン酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物の溶液である。これらの金属塩を構成する酸は、本発明の塗料組成物の成分の一つである(d)酸の供給源ともなり得る。
【0036】
塗料組成物の固形分に占める金属イオンの含有量は0.1〜50重量%が好ましく、0.1〜20重量%が特に好ましい。0.1重量%未満では、耐食性が劣り、50重量%を超えると溶接性が劣化する傾向がある。金属塩を複数使用する場合は、各金属塩は0.5〜40重量%の範囲とするのが好ましい。
【0037】
本発明の塗料組成物に含有される酸は、黒色化処理後の鋼板の表面をエッチングし、塗料組成物によって形成される皮膜の鋼板との密着性をさらに向上させ、皮膜剥離を防止し、耐食性を上げる作用の他に、塗料組成物のpHを1.0〜3.0に調整する作用をする。酸は、リン酸、酢酸、硝酸およびフッ酸から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。酸は前記したように、金属塩として供給してもよい。
【0038】
また、酸として2価以上の金属に配位可能である有機酸も使用される。特に前記例示した4種の酸に、該有機酸の少なくとも1種を、さらに併用させると、耐食性がさらに向上する。該有機酸は、黒色化処理後の鋼板のエッチングを促進する上、金属イオンに配位し、皮膜をより緻密にする。有機酸としては、例えば、オキサル酢酸、トリカルバリル酸、クエン酸、イソクエン酸、コハク酸、リンゴ酸、グルタル酸などをあげることができる。該有機酸の含有量は特に限定されないが、塗料組成物の固形分に対して1〜10重量%であるのが好ましい。1重量%未満であると、その効果が十分でなく、未架橋点が増大し、かえって皮膜の緻密化を妨げる虞がある。逆に、10重量%を超えると、塗料組成物としての安定性が保持できない。
【0039】
塗料組成物の固形分に占める酸の含有量は特に限定されないが、1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%である。1重量%未満であると、pHを前記範囲に調整することができないので、黒色化処理後の鋼板のエッチングが不十分になり、耐食性が低下する。逆に、20重量%を超えると、黒色化処理後の鋼板の溶解が早過ぎ、表面に外観むらが生じる傾向がある。
【0040】
本発明の塗料組成物に、カップリング剤を含有させると、鋼板表面の耐指紋性を向上させることができる。
カップリング剤は、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基およびメタアクリロキシ基から選ばれた少なくとも1種の反応性官能基を有するカップリング剤であることが好ましい。特に好ましいのは、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤であり、これらから選ばれる少なくとも1種である。
カップリング剤の含有量は、従来金属材料を表面処理する際に、表面処理剤(組成物)、塗料に添加される量と同程度であれば、十分である。
【0041】
シランカップリング剤としては、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、N−[2−(ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0042】
チタンカップリング剤としては、例えばジ−イソプロポキシビス(アセチルアセトナトチタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、ジイソプロポキシ−ビス−(2,4−ペンタジオネート)チタニウム、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネートなどをあげることができる。
【0043】
ジルコニウムカップリング剤としては、例えばアセチルアセトンジルコニウムブチレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムアセテートなどをあげることができる。
【0044】
皮膜の緻密性を上げるため、本発明の塗料組成物に金属酸化物を含有させることができる。金属酸化物は、シリカ(SiO2 )、MgO、ZrO2 、Al2 3 、SnO2 ,Sb2 3 ,Fe2 3 およびFe3 4 からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
金属酸化物は、従来金属材料を表面処理する際の表面処理剤(組成物)、塗料に添加されている量と同程度使用すれば十分な効果を発揮することができる。
【0045】
本発明の塗料組成物は水性媒体に溶解ないし分散して使用される。該溶液ないし分散液は固形分濃度が5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%に調整される。
水性媒体は、水または水と混合可能な有機溶剤または無機溶剤との混合媒体である。混合媒体の混合比率は特に制限されないが、固形分濃度は5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%に調整される。有機溶剤としては、ブチルセロソルブが好ましい。
【0046】
本発明の塗料組成物に、その他の性能を付与するためにワックスやその他の通常使用される各種添加剤を含有させてもよい。
【0047】
本発明の黒色鋼板を製造するためには、Zn−Niめっき表面を黒色化処理した鋼板の上に、前記した塗料組成物を、塗布または接触させ、リンガーロールで押圧し、乾燥して、皮膜を形成・硬化させる。該塗料組成物を塗布するには、ロールコート、スプレー塗装、刷毛塗り、浸漬塗装、カーテンフローなどの方法を用いることもできる。
【0048】
形成される皮膜の膜厚は0.1〜3.0μmであるのが好ましく、より好ましいのは0.5〜1.5μmである。0.1μm未満であると、皮膜が黒色化処理後の鋼板を被覆しきれず、耐食性が劣化する。逆に、3.0μmを超えると、プレス成形後、外観が白色化するまたは曲げ部に塗膜クラックが発生する問題がある。
【0049】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳しく説明する。
[実施例1〜24、比較例25〜27]
下記Zn−Niめっき鋼板を黒色化処理した鋼板A〜Cに、下記の水溶性有機樹脂A〜E、多価フェノールカルボン酸A〜B、5種の金属塩(パターンA〜I)、酸A〜D、有機酸A〜C、水分散性有機樹脂A〜Dおよびカップリング剤A〜Cを、第1表に記載した割合で混合して得られた水性塗料組成物をロールコート塗布し、15秒で鋼板温度が170℃となるように加熱して乾燥・硬化させて、所定の膜厚の皮膜を形成させ、黒色鋼板の試験片を作製した。
【0050】
黒色鋼板A〜C:
板A: 陽極電解処理鋼板(板厚:0.7mm)
板B: 陰極処理鋼板(板厚:0.7mm)
板C: 交番電解処理鋼板(板厚:0.7mm)
【0051】
水溶性有機樹脂A〜E:
樹脂A〜Eの数値は共重合体の重合単位の重量比率である。
樹脂A: アクリル酸/マレイン酸=90/10(分子量2万)
樹脂B: アクリル酸/イタコン酸=70/30(分子量1.5万)
樹脂C: メタアクリル酸/イタコン酸=60/40(分子量2.5万)
樹脂D: メタアクリル酸ブチル/アクリル酸/2HBA=20/40/40(分子量:3万)
2HBAはアクリル酸2−ヒドロキシブチルである。
樹脂E: スチレン/メタアクリル酸ブチル/アクリル酸=40/30/30(分子量:3万)
【0052】
多価フェノールカルボン酸A〜B
樹脂A: タンニン酸
樹脂B: 没食子酸
【0053】
金属イオンA〜G:
パターンの数値は金属イオンの重量比率である。
パターンA: Mg2+/Mn2+/Al3+/Men+=1/1/1/0
パターンB: Mg2+/Mn2+/Al3+/Men+=1/1/1/1
パターンC: Mg2+/Mn2+/Al3+/Men+=2/1/1/1
パターンD: Mg2+/Mn2+/Al3+/Me1 n+/Me2 n+=1/1/1/1/1
パターンE: Mg2+/Mn2+/Al3+/Me1 n+/Me2 n+=2/1/1/1/1
パターンF: Mg2+/Mn2+/Al3+/Men+=1/1/0/0
パターンG: Mg2+/Mn2+/Al3+/Me1 n+/Me2 n+=0/1/0/1/1
パターンH: Mg2+/Mn2+/Al3+/Men+=0/0/0/1
パターンI: Mg2+/Mn2+/Al3+/Men+=0/0/1/1
【0054】
金属塩:
塩A: 酢酸塩
塩P: リン酸塩
塩C: 炭酸塩
塩N: 硝酸塩
H: 水酸化物
【0055】
酸の種類
A: リン酸
B: 酢酸
C: フッ酸
D: 硝酸
【0056】
有機酸A〜C:
有機酸A: トリカルバリル酸
有機酸B: クエン酸
有機酸C: コハク酸
【0057】
水分散性有機樹脂A〜C:
エマルジョンA: アクリルエマルジョン(固形分40重量%)
エマルジョンB: ポリエステルエマルジョン(固形分40重量%)
エマルジョンC: ウレタン−エポキシエマルジョン(固形分40重量%)
【0058】
シランカップリング剤A〜C:
シランA: γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(“KBM403”:信越化学工業社製)
シランB: γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(“KBM402”:信越化学工業社製)
シランC: γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(“KBM603”:信越化学工業社製)
【0059】
各試験片について下記の特性(平面部耐食性、色調変化、光沢値、ブロッキング性、耐曲げ性、耐指紋性および耐傷つき性)を下記の試験方法に従って評価した。
<平板部耐食性>
試験片を50mm×100mmの大きさに剪断後、端面部をシールし、塩水噴霧試験(JIS Z−2371)を行い、48時間後の白錆発生面積率を、下記の評価基準に従って評価した。結果を第2表に示した。
◎: 5%以下
○: 5%超 10%以下
△: 10%超 20%以下
×: 20%超
【0060】
<色調変化>
鋼板表面に、塗料組成物を塗布する前後の色調(L*)の変化(ΔL*)を分光式色差計(“SQ2000”:日本電色社製)を用いて測定し、下記の評価基準に従って評価した。結果を第2表に示した。
◎: ΔL*が20未満
△: ΔL*が20以上 25以下
×: ΔL*が25超
【0061】
<光沢値>
鋼板表面に塗料組成物を塗布後の光沢(G値)を分光式色差計(“SQ2000”:日本電色社製)を用いて測定し、下記の評価基準に従って評価した。結果を第2表に示した。
◎: 光沢 10超 30以下
△: 光沢 5超 10以下
×: 光沢 5以下
【0062】
<ブロッキング性>
皮膜面同士を内側にして重ね合わせた2枚の試験片を、2.94×105 N・mのトルクで締めつけた状態で、40℃の恒温槽に6時間浸漬した。試験片を剥がし、剥がした際の粘着状況により耐ブロッキング性を3段階評価した。結果を第2表に示した。
◎: 粘着なし(試験片の自重により剥離)
△: 若干粘着あり(試験片の自重により剥離しないが、容易に引き剥がし可能)
×: 粘着あり(剥離困難)
【0063】
<耐曲げ性>
試験片を100mm×20mmに剪断後、OT曲げを実施し、曲げ部を実体顕微鏡(倍率20倍)で観察し、皮膜のクラックの有無について評価した。結果を第2表に示した。
◎: クラックなし
△: クラック若干あり(幅方向でクラック面積20%未満)
×: クラック発生大(幅方向でクラック面積20%以上)
【0064】
<耐指紋性>
試験片に白色ワセリンを塗布前後の色調(L値、a値、b値)の変化を分光式色差計(“SQ2000”:日本電色社製)を用いて測定し、下記式で示されるΔEで評価した。結果を第2表に示した。
◎: ΔEが1以下
○: ΔEが1超 2以下
△: ΔEが2超 3以下
×: ΔEが3超
【0065】
【数1】
Figure 0004258926
【0066】
<耐傷つき性>
試験片(20mm×200mm)について、荷重9.8MPa、摺動速度20mm/秒、摺動温度25℃の条件で摺動試験を行い、実体顕微鏡(倍率:10倍)で観察した。結果を第2表に示した。
◎: 傷つきなし(巾方向で傷つき面積5%未満)
△: 傷つき多め(巾方向で傷つき面積5%以上 20%未満)
×: 傷つき多い(巾方向で傷つき面積20%以上)
【0067】
【表1】
Figure 0004258926
【0068】
【表2】
Figure 0004258926
【0069】
【表3】
Figure 0004258926
【0070】
【表4】
Figure 0004258926
【0071】
【表5】
Figure 0004258926
【0072】
【発明の効果】
本発明の黒色鋼板はクロムを含有しない、いわゆる無公害のノンクロメート表面処理鋼板であり、特に耐食性、色調、光沢、耐傷つき性と耐指紋性に優れた黒色鋼板である。

Claims (9)

  1. 黒色化処理されたZn−Niめっき鋼板表面に、(a)金属イオン、(b)水溶性有機樹脂、(c)水分散性有機樹脂および(d)酸を含有する塗料組成物を塗布して形成された皮膜を有する黒色鋼板。
  2. 前記塗料組成物において、(c)/[(a)+(b)+(c)+(d)]で示される組成比が50〜98重量%であることを特徴とする請求項1に記載の黒色鋼板。
  3. 前記(a)金属イオンがAlイオン、MgイオンおよびMnイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の黒色鋼板。
  4. 前記(b)水溶性有機樹脂が、カルボキシル基含有単量体の重合体の少なくとも1種および/またはカルボキシル基含有単量体とその他の重合性単量体との共重合体の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の黒色鋼板。
  5. 前記(d)酸がリン酸、酢酸、硝酸およびフッ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の黒色鋼板。
  6. 前記塗料組成物が多価フェノールカルボン酸を含有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の黒色鋼板。
  7. 前記塗料組成物が、Alイオン、MgイオンおよびMnイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンの他に、さらにZn,Co,Ti,Sn,Ni,Fe,Zr,Sr,Y,Nb,Cu,Ca,VおよびBaからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンを含有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の黒色鋼板。
  8. 前記塗料組成物が、リン酸、酢酸、硝酸およびフッ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸の他に、さらに2価以上の金属に配位可能である有機酸を含有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の黒色鋼板。
  9. 前記塗料組成物がカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の黒色鋼板。
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