JP4257134B2 - 抵抗体組成物およびそれを用いた抵抗器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、電流検出回路等における電流検出用抵抗器に使用する抵抗体組成物、およびその組成物を用いた抵抗器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
機器等の電子回路や電源回路における電流検出等の用途のため、低抵抗値であり、かつ低TCR(Temperature Coefficient of Resistance:抵抗値の温度係数)特性を有する抵抗器の要求が高まっている。例えば、特許文献1および特許文献2に記載の抵抗器(抵抗素子)は、銀(Ag)−パラジウム(Pd)、銅(Cu)−ニッケル(Ni)、あるいは、銅−マンガン(Mn)合金からなる抵抗体ペーストを使用して低抵抗特性を得ている。
【0003】
また、広い範囲のシート抵抗値を有する抵抗体組成物として、例えば、特許文献3には、クロム化合物、金属ホウ化物、ガラスフリット、および有機ビヒクルを成分とする抵抗体製造用組成物が開示されている。さらに、特許文献4に記載の低抵抗材料は、金属酸化物(MnO,NiO、Cr2O3)の粉末に、Cu,Mn,Co,Zn,Ni等の遷移金属粉末の1つを加え、これらにガラス粉末、および有機ビヒクルを添加してなる低抵抗厚膜サーミスタ材料である。
【0004】
一方、特許文献5には、銀粉に、Ni,Cr,Mn,Cu,Co,Fe、あるいはこれらの金属酸化物の1または2種以上を加え、これらに硼珪酸系のガラスフリットを添加してなる低抵抗の導電塗料が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−83969号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平9−213503号公報
【0007】
【特許文献3】
特開平2−211601号公報
【0008】
【特許文献4】
特開平5−101905号公報
【0009】
【特許文献5】
特公昭53−33752号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した抵抗体組成物等は、低抵抗であっても良好なTCR(抵抗値の温度係数)特性が得られず、特に、銅−ニッケルを導電成分とした抵抗体ペーストの場合、そのペーストを用いた抵抗器の電極に使用している銅に対する熱起電力が高い(例えば、46μV/K)。これによって、これらの抵抗体ペーストを使用した抵抗器を電流検出に用いると検出誤差の原因となり、所望の特性(電流検出精度)が得られないという問題がある。
【0011】
さらには、銅−ニッケルからなる従来の抵抗体ペーストの場合、その抵抗率が高く(0.65μΩm)、近年において要求される抵抗値に対応できないという問題がある。例えば、銅−ニッケルの配合を60/40とした場合、シート抵抗値は35mΩ/□で、TCRは50×10-6/Kとなる。また、銅−ニッケルの配合を90/10とした場合、シート抵抗値は15mΩ/□で、TCRは1200×10-6/Kとなる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、低い対銅熱起電力を有するとともに、体積抵抗率が従来と同程度、あるいは、それよりも低く、かつ、低TCR(例えば、±100×10-6/K以内)の抵抗体組成物およびそれを用いた抵抗器を提供することである。
【0013】
かかる目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として、例えば、以下の構成を備える。すなわち、本発明に係る電流検出用抵抗器の製造方法は、電気絶縁性の基板を準備する工程と、前記基板に表面電極を形成する工程と、金が97乃至99wt%、クロムが1乃至3wt%からなる導電性金属混合材料と、その導電性金属混合材料の全体量に対して、ガラス粉体と銅酸化物粉体の少なくともいずれかを10重量部を超えない範囲で含むとともに、樹脂を含むビヒクルを10乃至15重量部含んでなる抵抗体ペーストを印刷して前記表面電極間に抵抗体を形成する工程と、前記表面電極間に絶縁膜としての保護膜を形成する工程と、前記保護膜形成後の基板を個片に分割する工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
例えば、上記銅酸化物は、CuOとCu2Oのいずれかよりなることを特徴とする。また、例えば、上記ビヒクルは、さらに溶剤を含むことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面および表を参照して、本発明に係る実施の形態例を詳細に説明する。本実施の形態例に係る抵抗体ペーストは、例えば、金の粉体とクロムの粉体からなる導電性金属混合粉体と、この金属混合粉体に混合するガラス粉体および/または銅酸化物粉体(酸化銅粉体)と、樹脂および/または溶剤からなるビヒクルとから抵抗体組成物である抵抗体ペーストを作製し、この抵抗体ペーストを用いて抵抗器を製造する。
【0021】
上記抵抗体ペーストの金属混合粉体は、金属成分として、例えば、97〜99wt%の金(Au)と、1〜3wt%のクロム(Cr)とを混合してなる。また、これらの金属成分の全体量(100重量部)に対して、例えば、上述したガラス粉体を0〜10重量部、銅酸化物粉体を0〜10重量部含む。
【0022】
ガラス粉体は、後述する基板との密着成分のうち、物理的密着を目的として使用するものであり、その割合が10重量部を越えると抵抗率が大きくなる。また、銅酸化物粉体については、基板との密着成分のうち、化学的密着を目的として使用しており、その割合が10重量部を越えると抵抗膜が多孔質状になり、抵抗膜の平滑性が損なわれる。
【0023】
なお、本実施の形態例に係る抵抗体ペーストでは、これらの密着成分として、少なくともガラス粉体と銅酸化物粉体のいずれかを含むものとする。ただし、ガラス粉体と銅酸化物粉体の両方を0重量部とする組み合わせのペーストでは、基板との密着性がなくなる。
【0024】
さらに、本実施の形態例では、抵抗体をペースト化するため、例えば、樹脂と溶剤を含むビヒクルを10〜15重量部配合して、抵抗体ペーストを印刷に適した粘度とすることが好ましい。また、印刷性によっては、この範囲を超えた配合量としてもよい。
【0025】
本実施の形態例に係る抵抗体ペーストにおいて、金およびクロムの各粉体を混合してなる金属混合粉体以外に、これらの金属の合金粉体を含む金属粉体を導電性の金属混合粉体として用いてもよいし、これら両方の粉体を使用してもよい。いずれの場合においても、最終的に合算した金とクロムの混合比率が上記の比率であれば、抵抗体ペーストとしての抵抗値やTCR、および対銅熱起電力において所望の特性が得られる。
【0026】
抵抗体ペーストの導電性金属混合材料である金属粉体(金、クロムの各粉体)は、基板上へのスクリーン印刷法で使用可能な範囲の粒径を有することが好ましく、例えば、粒径0.1μm〜20μmの範囲にあることが好ましい。
【0027】
本実施の形態例に係る抵抗体ペーストに使用するガラス粉体は、その抵抗体ペーストで抵抗体層を形成する絶縁性基体との密着性、および抵抗体としての必要な種々の安定性を有するだけでなく、作業性の観点から軟化点が500〜1000℃で、その組成として、耐酸性、耐水性を有する硼珪酸系ガラスが好ましい。
【0028】
よって、ガラス粉体として、例えば、硼珪酸バリウム系ガラス、硼珪酸カルシウム系ガラス、硼珪酸バリウムカルシウム系ガラス、硼珪酸亜鉛系ガラス、硼酸亜鉛系ガラス等を用いることができる。また、ガラス粉体の粒径は、スクリーン印刷で使用できる範囲内にあることが好ましく、例えば、粒径0.1μm〜20μmが好ましい。特に、平均粒径2μm以下のものがより好ましい。
【0029】
本実施の形態例において、銅酸化物粉体の銅酸化物は、抵抗体ペーストで抵抗体層を形成する絶縁性基体との密着性、および抵抗体としての必要な種々の安定性を有する材料が好ましく、例えば、CuO(酸化第二銅)とCu2O(酸化第一銅)のいずれをも用いることができる。また、銅酸化物粉体の粒径は、スクリーン印刷で使用できる範囲にある粒径であることが好ましく、例えば、粒径0.1μm〜20μmが好ましい。特に、平均粒径2μm以下のものがより好ましい。
【0030】
一方、本実施の形態例に係る抵抗体ペーストにおいて、樹脂と溶剤を含むビヒクルに使用される樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂等を、単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。より具体的には、例えば、エチルセルロース、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート等を挙げることができる。
【0031】
また、抵抗体ペーストにおける樹脂と溶剤からなるビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、テルペン系溶剤、エステルアルコール系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤等を、単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。より具体的には、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、テキサノール、キシレン、イソプロピルベンゼン、トルエン、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
【0032】
なお、ビヒクルの構成は、上記の樹脂と溶剤に限らず、抵抗体ペーストの特性を向上させるために、種々の添加剤を加えてもよい。
【0033】
図1は、本実施の形態例に係る抵抗体組成物である抵抗体ペーストの製造工程を示している。図1のステップS1では、抵抗体ペーストの導電性金属混合材料としての金属粉体を混合する。ここでは、金、クロム(Au−Cr)の各粉体を混合する。
【0034】
なお、抵抗体ペーストの導電性金属混合材料としては、金粉体およびクロム粉体からなる金属混合粉体と、金およびクロムからなる合金粉体を含む、金およびクロムからなる金属混合粉体とによって金属粉体を構成してもよい。
【0035】
また、抵抗体ペーストの導電性金属混合材料として、金粉体およびクロム粉体からなる金属混合粉体、または、金およびクロムからなる合金粉体を含む、金およびクロムからなる金属混合粉体によって金属粉体を構成してもよい。
【0036】
金属粉体の具体的な配合比は、例えば、金粉体(例えば、平均粒径10μm)を97〜99wt%、クロム粉体(例えば、平均粒径10μm)を1〜3wt%の割合で混合する。
【0037】
ステップS2において、上記のステップS1で混合された金属混合粉体に、ガラス粉体および/または銅酸化物粉体を混合する。ここでは、Au−Crの金属粉体全量に対して、例えば、ガラス粉体を0〜10重量部、銅酸化物粉体を0〜10重量部それぞれ混合する。
【0038】
ステップS3では、ビヒクルの混合を行う。すなわち、上記のAu−Crの金属混合粉体と、ガラス粉体および/または銅酸化物粉体とを混合した全体量に対して、有機樹脂と溶剤からなるビヒクル(例えば、エチルセルロース2.5重量パーセント含有テキサノール溶液)を10〜15重量部加え、3本ロールで混練して抵抗体ペーストを作製する。
【0039】
本実施の形態例では、得られた抵抗体ペーストを、アルミナ96wtパーセントのアルミナ基板上にあらかじめ形成しておいた銅電極に架かるように印刷し、それを乾燥させた後、窒素(N2)雰囲気中において、例えば、980℃で10分間焼成して抵抗体を作製した。
【0040】
表1は、上述のように焼成して得た抵抗体の特性を示している。本実施の形態例では、Au−Crの金属混合粉体を、表1中の配合比(単位は、重量パーセント(wt%))で混合し、それにガラス粉体(5重量パーセント)、および酸化銅粉体(5重量パーセント)を加えて十分に混合し、さらに、ビヒクルを加えて抵抗体ペーストを作製した。
【0041】
すなわち、表1は、上述の抵抗体ペーストを焼成して得た各抵抗体(資料No.1〜17)、および比較例(銅−ニッケルからなる抵抗体ペースト)の特性値である、抵抗率(μΩm)、抵抗温度係数(TCR)、および対銅熱起電力(μV/K)を示している。これらの抵抗率等は、25℃と125℃において測定した。
【0042】
【表1】
【0043】
ここで、本実施の形態例に係る抵抗体ペーストの実施例(表1の資料No.4の抵抗体)について説明する。この実施例に係る抵抗体の抵抗体ペーストは、金粉体98wt%、クロム粉体2wt%を計り取って混合し、その混合粉体に酸化銅粉体5重量部、およびガラス粉体5重量部を加え、それを十分に混合して、さらに、この混合粉体にビヒクル12重量部を加え、3本ロールで混練して得た抵抗体ペーストである。
【0044】
得られた抵抗体ペーストについては、上述した焼成を行って抵抗体を作製し、その抵抗体の抵抗値を測定して、抵抗率と抵抗温度係数、および対銅熱起電力を求めた。実施例(資料No.4)の抵抗体の場合、その抵抗率は0.42μΩm、抵抗温度係数は22×10-6/K、対銅熱起電力は9μV/Kであった。
【0045】
なお、比較例として、以下の抵抗体を作製した。すなわち、銅粉体57.0重量部、ニッケル粉体43.0重量部を計り取り、混合した粉体に、酸化銅粉体5重量部、およびガラス粉体5重量部を加え、それを十分に混合した。さらに、この混合粉体にビヒクル12重量部を加え、3本ロールで混練して抵抗体ペーストを得た。
【0046】
そして、このような、銅−ニッケルからなる抵抗体ペーストを焼成して得た抵抗体について、その特性を測定したところ、抵抗率は0.65μΩm、抵抗温度係数は80×10-6/K、対銅熱起電力は46μV/Kであった。
【0047】
図2は、本実施の形態例に係る抵抗体の特性を示す図である。すなわち、図2は、Au−Crの配合比に対する抵抗率と抵抗温度係数をプロットして示したものである。また、図2において、太線の矢印で示す範囲内にあるAu−Crの配合比(クロム含有率)が、所望の低抵抗値と低抵抗温度係数、および対銅熱起電力の抵抗体を得るための、好ましい金属成分の組成範囲である。
【0048】
すなわち、図2に示す“好ましい範囲”を越える部分における抵抗体は、その抵抗率が、銅−ニッケルからなる従来の抵抗体ペーストで作製した抵抗体(上述した比較例を参照)の抵抗率0.65μΩmよりも、かなり大きくなるか、あるいは、その抵抗温度係数が、目標とする値(±100×10-6/K以下)よりも大きくなるため、適当ではない。
【0049】
図3は、本実施の形態例に係る抵抗体ペーストを使用した角型チップ抵抗器(以下、単にチップ抵抗器という)の一例についての断面構成を示している。同図において、基板1は、所定サイズのチップ形状を有する、例えば、電気絶縁性のセラミックス基板(絶縁性基体)である。基板1上には、上述した金属混合粉体を配合してなる抵抗体ペーストを、例えば、スクリーン印刷等で塗布した後、焼成して、抵抗層2を形成する。
【0050】
抵抗層2の上部は、プリガラス7で覆われ保護されている。さらに、プリガラス7の上には、絶縁膜として機能する保護膜3が配されている。基板1の両端部であって抵抗層2の両端には、それと電気的に接触する上部電極(表面電極)4a,4bが形成されている。また、基板下部の端部には下部電極(裏面電極)5a,5bが形成されている。そして、基板1の各端部側面には、上部電極4a,4bと下部電極5a,5bを電気的に接続するため、これらの電極間に端部電極6a,6bが配設されている。
【0051】
さらに、下部電極5aと端部電極6aを覆うように外部電極8aが、例えば、めっき等によって形成されている。同様に、下部電極5bと端部電極6bを覆うように外部電極8bが、めっき等によって形成されている。
【0052】
このような抵抗器で用いる絶縁性基体としては、例えば、アルミナ系基板、フォルステライト系基板、ムライト系基板、窒化アルミニウム系基板、ガラスセラミック系基板等を用いることができる。
【0053】
また、抵抗層2には、その導電性金属成分として、上述した比率で配合した金、クロムの各金属粉体を混合した金属混合粉体、または、金、クロムの合金粉体を使用する。なお、金、クロムの各粉体を混合して使用する場合には、焼成時に合金化している。
【0054】
次に、以上の構成を備える本実施の形態例に係る抵抗器の製造工程を説明する。図4は、本実施の形態例に係る抵抗器の製造工程を説明するための工程図である。まず、図4のステップS11において、上述した基板1を製造する工程を実行する。なお、ここでは、基板としてアルミナ96wt%のアルミナ基板を使用する。
【0055】
基板形状としては、例えば、製造単位の大きさの、矩形の基板を製造するが、製造する基板の大きさは任意であり、1つの抵抗器毎の大きさの基板であっても、あるいは、多数個分の抵抗器の大きさの基板を同時に製造してもよい。
【0056】
続くステップS12において、基板1の下面(抵抗器実装時のはんだ面)に、スクリーン印刷により裏面電極の厚膜印刷をし、焼成することにより下部電極(裏面電極)5a,5bを形成する。具体的には、アルミナ基板の裏面に銅ペースト(Cuペースト)を印刷し、その後、それを乾燥させて、窒素(N2)雰囲気中において、例えば、960℃で10分間焼成して裏面電極を形成する。
【0057】
次に、ステップS13において、基板1の上面(抵抗体を形成する側)に、スクリーン印刷により表面電極の厚膜印刷をし、焼成することにより上部電極(表面電極)4a,4bを形成する。具体的には、アルミナ基板の表面に銅ペーストを印刷し、その後、それを乾燥させて、窒素雰囲気中で、例えば、960℃で10分間焼成して表面電極を形成する。
【0058】
なお、上部電極(表面電極)4a,4bと下部電極(裏面電極)5a,5bの焼成を同時に行ってもよい。
【0059】
本実施の形態例では、例えば、裏面および表面ともに厚膜印刷する電極材料として銅ペーストを使用することで、従来の抵抗器のように、銀のエレクトロニックマイグレーションによる信頼性低下の問題を回避している。また、不活性雰囲気である窒素(N2)雰囲気中で焼成するのは、電極である銅の酸化を防止するためである。なお、焼成温度は960℃に限定されず、例えば、980℃で焼成してもよい。
【0060】
ステップS14では、例えば、上述した抵抗体ペーストを上部電極(表面電極)4a,4b間に一部が上部電極(表面電極)4a,4bに重なるように塗布し、抵抗体ペースト厚膜を形成する。そして、この抵抗体ペースト厚膜を、窒素(N2)雰囲気の下、例えば、960℃で焼成する。なお、焼成温度は980℃でもよい。
【0061】
本実施の形態例において、抵抗体ペーストへの銅酸化物および/またはガラス(例えば、ZnBSiOx系ガラス)の添加により、基板と抵抗体との良好な接着が得られ、かつ、ガラスによって抵抗体膜の強度が得られる。ビヒクルは、印刷時において有機バインダーによる印刷適正が得られるよう機能する。
【0062】
ステップS15では、このようにして形成された抵抗体層2の上にプリガラスコート厚膜を印刷等で形成し、乾燥した後、焼成を行う。ここでは、抵抗体層上に、例えば、ZnBSiOx系ガラスペーストを印刷し、その後、それを乾燥させて、窒素雰囲気中で、例えば、670℃で10分間焼成してプリガラスコートを形成する。
【0063】
なお、焼成温度は690℃であってもよい。また、ガラスペーストは、ZnBSiOx系ガラスペーストに限るものではなく、上述した硼珪酸バリウム系ガラス、硼珪酸カルシウム系ガラス、硼珪酸バリウムカルシウム系ガラス、硼珪酸亜鉛系ガラス、硼酸亜鉛系ガラス等を用いることができる。
【0064】
次に、ステップS16において、必要に応じて抵抗体のトリミング(抵抗値調整)を行う。このトリミングは、例えば、レーザビームやサンドブラスト等によって、抵抗体のパターンに切れ込みを入れることによって抵抗値を調整する。
【0065】
そして、ステップS17において、例えば、プリガラスコートと上部電極4a,4bの少なくとも一部を覆うようにエポキシ系樹脂をスクリーン印刷等によって形成し、それを硬化させて、絶縁膜としての機能をも有する保護膜3であるオーバーコートを形成する。
【0066】
なお、保護膜3は、エポキシ系樹脂に限るものではなく、変性エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。
【0067】
その後、必要に応じてオーバーコート(保護膜)上に着色したエポキシフェノール系樹脂等を印刷し、それを硬化させて、抵抗値等を表示するための表示部を形成する。
【0068】
さらに、ステップS18において、Aブレイク(1次ブレーク)を行い、アルミナ基板を短冊状に分割する。続くステップS19で、短冊上のアルミナ基板の端面にスッパタリング法によりNiCr合金膜を形成し、端部電極6a,6bを形成する。なお、NiCr合金膜の形成は、スパッタリング法に限定されるものではなく、蒸着等により形成してもよい。
【0069】
次に、ステップS20でBブレイク(2次ブレーク)を行い、端部電極6a,6bを形成した短冊状のアルミナ基板をさらに分割し、個片(チップ)にする。得られた個片(チップ)の大きさは、例えば、3.2mm×1.6mmである。そして、ステップS21において、上部電極4a,4bのうち、保護膜3で覆われていない部分と、下部電極5a,5bおよび端部電極6a,6b上に外部電極8a,8bを形成する。
【0070】
外部電極8a,8bは、例えば、順に電解ニッケル(Ni)めっき−電解銅(Cu)めっき−電解ニッケル(Ni)めっき−電解錫(Sn)めっきを施し、Ni膜―Cu膜―Ni膜―Sn膜が積層した状態とする。
【0071】
以上のようにして製造されたチップサイズ3.2mm×1.6mmの抵抗器は、例えば、基板厚さ470μm、上面電極厚さ20μm、下面電極厚さ20μm、抵抗体層厚さ30〜40μm、プリコート厚さ10μm、保護膜厚さ30μm、端部電極厚さ0.05μm、外部電極厚さは、順にNi膜厚さ3〜7μm、Cu膜厚さ20〜30μm、Ni膜厚さ3〜12μm、Sn膜厚さ3〜12μmに形成されている。
【0072】
本実施の形態例の抵抗体ペーストを用いて抵抗器を製造する場合における、抵抗体ペーストの焼成方法と焼成後の抵抗体については、抵抗体ペーストを中性雰囲気中または不活性雰囲気中(例えば、窒素雰囲気中)において600℃〜1000℃で焼成するのが好ましい。なお、上記抵抗体ペーストの焼成時間は任意に設定することができる。これにより、金−クロム系抵抗体、より好ましくは、金−クロム合金抵抗体を得ることができる。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態例によれば、抵抗体ペーストの材料として、金−クロム(Au−Cr)の導電性金属粉体を混合したものに、ガラス粉体および/または銅酸化物粉体を混合し、それを焼成して抵抗体を作製することで、銅−ニッケルからなる抵抗体ペーストより作製した抵抗体に比べて抵抗率を低くすることができ、それと同時に、その抵抗体のTCR、および対銅熱起電力をも低くすることができる。
【0074】
また、このような特性を有する抵抗体ペーストを使用して製造したチップ抵抗器は、例えば、電源回路やモータ回路の電流検出抵抗器(シャント抵抗器)等、低抵抗率、および低TCRの抵抗器を必要とする用途に最適なチップ抵抗器となる。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、低抵抗値で低TCR、かつ、対銅熱起電力の小さい抵抗体組成物および抵抗器を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態例に係る抵抗体ペーストの製造工程を示すフローチャートである。
【図2】実施の形態例に係る抵抗体の特性を示す特性図である。
【図3】実施の形態例に係るチップ抵抗器の断面構成を示す図である。
【図4】実施の形態例に係る抵抗器の製造工程を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 基板
2 抵抗層
3 保護膜
4a,4b 上部電極(表面電極)
5a,5b 下部電極(裏面電極)
6a,6b 端部電極
7 プリガラス
8a,8b 外部電極(めっき)
Claims (3)
- 電気絶縁性の基板を準備する工程と、
前記基板に表面電極を形成する工程と、
金が97乃至99wt%、クロムが1乃至3wt%からなる導電性金属混合材料と、その導電性金属混合材料の全体量に対して、ガラス粉体と銅酸化物粉体の少なくともいずれかを10重量部を超えない範囲で含むとともに、樹脂を含むビヒクルを10乃至15重量部含んでなる抵抗体ペーストを印刷して前記表面電極間に抵抗体を形成する工程と、
前記表面電極間に絶縁膜としての保護膜を形成する工程と、
前記保護膜形成後の基板を個片に分割する工程とを備えることを特徴とする電流検出用抵抗器の製造方法。 - 前記銅酸化物は、CuOとCu2Oのいずれかよりなることを特徴とする請求項1記載の電流検出用抵抗器の製造方法。
- 前記ビヒクルは、さらに溶剤を含むことを特徴とする請求項1記載の電流検出用抵抗器の製造方法。
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